(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】粉体回収装置および粉体回収方法
(51)【国際特許分類】
B04B 5/12 20060101AFI20220819BHJP
B65G 53/60 20060101ALI20220819BHJP
B01D 45/14 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B04B5/12
B65G53/60
B01D45/14
(21)【出願番号】P 2018074826
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226954
【氏名又は名称】日清エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】江間 秋彦
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-000428(JP,A)
【文献】特開2009-006235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
B01D 45/00-45/18
B65G 53/00-53/28
B65G 53/32-53/66
B07B 1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1μm以下である粉体と気体との固気二相状態から、前記粉体を分離する粉体回収装置であって、
一方の端に開口部を有する容器と、
前記容器の中央部に配置され、前記粉体を前記容器の底部に供給する供給管と、
前記開口部に対向する底面に接続され前記容器を前記底面に垂直な軸を回転軸として回転させる駆動部と、
前記容器の前記開口部側から前記気体を回収する気体回収部と、
前記容器と前記供給管とを収納するケーシングとを有し、
前記粉体が気体とともに前記容器の内部に供給され、前記ケーシングの内部は圧力が大気圧であり、
前記粉体が前記気体とともに前記容器の前記内部に供給された状態で前記駆動部により、大気圧下で前記容器を回転させ、前記粉体を前記容器の内壁で回収して前記気体と前記粉体を分離して前記粉体を回収することを特徴とする粉体回収装置。
【請求項2】
前記容器の前記開口部に設けられ、前記供給管が通る開口を有する蓋と、
前記容器内、かつ前記供給管の周囲に設けられる円板状の中板とのうち、少なくとも一方が設けられている請求項1に記載の粉体回収装置。
【請求項3】
前記蓋と、前記中板とが設けられている請求項2に記載の粉体回収装置。
【請求項4】
前記中板は、前記供給管の軸線に沿って、複数設けられている請求項2または3に記載の粉体回収装置。
【請求項5】
前記供給管に接続され、前記粉体を、前記供給管を経て前記容器内に供給する供給部を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の粉体回収装置。
【請求項6】
前記粉体は、画像法による面積相当の粒子径が1μm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の粉体回収装置。
【請求項7】
粒子径が1μm以下である粉体と気体との固気二相状態から、前記粉体を分離する粉体回収方法であって、
一方の端に開口部を有する容器を、前記開口部と対向する底面に垂直な軸を回転軸として回転させ、前記容器が回転している間に、前記容器の中央部に配置された供給管により、前記粉体を前記容器の底部に供給し、前記粉体を前記容器の内壁で回収するものであり、
前記容器と前記供給管とを収納するケーシングを有し、
前記粉体が気体とともに前記容器の内部に供給され、前記ケーシングの内部は圧力が大気圧であり、
前記粉体が前記気体とともに前記容器の前記内部に供給された状態で前記容器は大気圧下で回転される、ことを特徴とする粉体回収方法。
【請求項8】
前記容器の前記開口部に設けられ、前記供給管が通る開口を有する蓋と、
前記容器内、かつ前記供給管の周囲に設けられる円板状の中板とのうち、少なくとも一方が設けられている請求項7に記載の粉体回収方法。
【請求項9】
前記蓋と、前記中板とが設けられている請求項8に記載の粉体回収方法。
【請求項10】
前記中板は、前記供給管の軸線に沿って、複数設けられている請求項8または9に記載の粉体回収方法。
【請求項11】
前記粉体は、画像法による面積相当の粒子径が1μm以下である請求項7~10のいずれか1項に記載の粉体回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体と粉体との固気二相状態から、粉体を回収する粉体回収装置および粉体回収方法に関し、特に、粉体のうち、サブミクロンオーダの粉体を高い回収率で回収する粉体回収装置および粉体回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、酸化物微粒子、窒化物微粒子、および炭化物微粒子等の微粒子は、半導体基板、プリント基板、各種電気絶縁部品等の電気絶縁材料、切削工具、ダイス、軸受等の高硬度高精度の機械工作材料、湿度センサ等の機能性材料、精密焼結成形材料等の焼結体の製造、エンジンバルブ等の高温耐摩耗性が要求される材料等の溶射部品製造、更には燃料電池の電極、電解質材料および各種触媒等の分野で用いられている。このような微粒子を用いることにより、焼結体および溶射部品等における異種セラミックス同士または異種金属同士の接合強度および緻密性、更には機能性を向上させている。
【0003】
上述の微粒子は、各種のガス等を高温で化学反応させる化学的方法、または電子ビームもしくはレーザ等のビームを照射して物質を分解・蒸発させ、微粒子を生成する物理的方法等により製造される。上述の製造方法で、製造された微粒子は、製造直後は粉体と気体との固気二相状態となっており、上述の用途に微粒子を利用するに際して、気体と分離して粉体を回収する必要がある。
そこで、気体と粉体とを分離するものとして、バグフィルタを用いたもの、サイクロンを用いたもの等、各種の方式の粉体回収装置が利用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、含塵ガスを濾布室に導入するダクトのダストが溜まり易いダクトの上向き屈曲部やダクトの立上り部の下部にダスト溜まりと、上記ダスト溜まりと濾布室下部のダストホッパとの間に、ダスト排出弁を有するダスト排出管が設けられているバグフィルタ式集塵装置を用いて、上記ダスト溜まりに堆積したダストの排出を、ダストホッパからの通常のダスト排出に連動させて自動的に行うことが記載されている。
また、特許文献2のような円錐形の壁布が設けられたサイクロン型の集塵器もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-000929号公報
【文献】実開昭50-044974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1のバグフィルタ式集塵装置、および特許文献2のサイクロン型の集塵器は、いずれも気体と粉体とに分離することができるが、一般に粒径が小さくなるほど回収が難しくなることが知られている。最近では、特にサブミクロンオーダの微粉体の回収率の更なる向上が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、サブミクロンオーダの粉体の回収率が高い粉体回収装置および粉体回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、粒子径が1μm以下である粉体と気体との固気二相状態から、粉体を分離する粉体回収装置であって、一方の端に開口部を有する容器と、容器の中央部に配置され、粉体を容器の底部に供給する供給管と、開口部に対向する底面に接続され容器を底面に垂直な軸を回転軸として回転させる駆動部と、容器の開口部側から気体を回収する気体回収部とを有し、駆動部により、容器を回転させ、粉体を容器の内壁で回収して気体と粉体を分離して粉体を回収することを特徴とする粉体回収装置を提供するものである。
【0009】
容器の開口部に設けられ、供給管が通る開口を有する蓋と、容器内、かつ供給管の周囲に設けられる円板状の中板とのうち、少なくとも一方が設けられていることが好ましい。
蓋と、中板とが設けられていることがより好ましい。
中板は、供給管の軸線に沿って、複数設けられていることが好ましい。
供給管に接続され、粉体を、供給管を経て容器内に供給する供給部を有することが好ましい。
粉体は、画像法による面積相当の粒子径が1μm以下であり、好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは1~100nmである。
【0010】
本発明は、粒子径が1μm以下である粉体と気体との固気二相状態から、粉体を分離する粉体回収方法であって、一方の端に開口部を有する容器を、開口部と対向する底面に垂直な軸を回転軸として回転させ、容器が回転している間に、容器の中央部に配置された供給管により、粉体を容器の底部に供給し、粉体を容器の内壁で回収することを特徴とする粉体回収方法を提供するものである。
容器の開口部に設けられ、供給管が通る開口を有する蓋と、容器内、かつ供給管の周囲に設けられる円板状の中板とのうち、少なくとも一方が設けられていることが好ましい。
蓋と、中板とが設けられていることが好ましい。
中板は、供給管の軸線に沿って、複数設けられていることが好ましい。
粉体は、画像法による面積相当の粒子径が1μm以下であり、好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは1~100nmである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微粉体の回収率が高い粉体回収装置を提供することができ、特にサブミクロンオーダの微粉体の回収率が優れた粉体回収装置および粉体回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の粉体回収装置の第1の例を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の粉体回収装置の第2の例を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態の粉体回収装置の第3の例を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態の粉体回収装置の第4の例を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の粉体回収装置の第5の例を示す模式図である。
【
図6】実施例に用いたシリカのSEMによる観察結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の粉体回収装置および粉体回収方法を詳細に説明する。
本発明の粉体回収装置は、気体と粉体との固気二相状態から、粉体を回収するものである。粉体回収装置は、粒子径が1μm以下である粉体と気体との固気二相状態から、粉体を分離するものである。本発明の粉体回収装置は、粉体は粒子径が小さいもの、特に粒子径がサブミクロンオーダの粉体に適しており、画像法による面積相当の粒子径が1μm以下であり、好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは1~100nmである。
【0014】
図1は本発明の実施形態の粉体回収装置の第1の例を示す模式図である。
例えば、
図1に示す粉体回収装置10は、一方の端に開口部12aを有する容器12と、容器12の中央部に配置され、粉体Psを容器12の底部12bに供給する供給管14と、開口部12aに対向する底部12bの底面12eに接続され容器12を、容器12の底部12bの底面12eに垂直な軸Cbを回転軸として回転させる駆動部16とを有する。粉体回収装置10は、粉体Psから分離された気体を回収する気体回収部18に接続されている。
【0015】
容器12は、円筒状であり、上述のように一方の端が開口しており、一方の端に開口部12aを有し、他方の端が閉塞されて底部12bが構成されている。
供給管14は、その軸線Cを容器12の底部12bの底面12eの中心(図示せず)に一致させて配置されている。例えば、供給管14の軸線Cと、容器12の底部12bの底面12eの中心を通り、かつ底部12bの底面12eに垂直な軸Cbとを一致させて、供給管14と容器12とが配置されている。
また、供給管14は、底部12bと対向する端部に開口14bが形成されている。一方、上部14aには接続管21を介して供給部20が接続されている。
【0016】
供給管14の軸線Cと、容器12の底部12bの底面12eに垂直な軸Cbと、駆動軸17の軸線Csとを一致させて、容器12の底板13(底面12e)に駆動軸17が接続されている。駆動軸17は駆動部16に接続されている。この構成により、駆動部16により容器12を、容器12の底部12bの底面12eに垂直な軸Cbを回転軸として回転させることができる。すなわち、駆動部16により容器12が、上述の容器12の軸Cbを回転軸として回転される。
なお、容器12を回転させる構成としたが、これに限定されるものではなく、供給管14を、軸線Cを回転軸として回転させる構成でもよい。さらには、容器12および供給管14の両方を回転させる構成でもよい。この場合、容器12と供給管14とは回転方向を互いに同じ、または逆にする。
【0017】
容器12と供給管14とは、例えば、ケーシング19内に収納されており、密閉空間に配置されている。粉体Psの分離は、ケーシング19の内部19a、すなわち、密閉空間内で行われる。
ケーシング19の内部19aは、例えば、大気雰囲気であり、圧力も大気圧である。
ケーシング19の内部19aは、大気雰囲気に限定されるものではなく、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とすることもでき、ケーシング19内に旋回流ができるような条件であれば、陽圧でも陰圧でもケーシング19の内部19aの雰囲気を適宜変更することができる。
【0018】
供給部20は、粉体Psを気体との固気二相状態で、容器12の内部12dに供給するものである。供給部20は、粉体Psを気体とともに、接続管21を介して供給管14に供給する。供給管14の開口14bから粉体Psが気体とともに容器12の内部12dに供給され、この状態で容器12を回転させる。
【0019】
供給部20は、特定の装置である必要はなく、気体に粉体が分散した固気二相状態を生成するものであれば、限定されない。例えば、各種の粉体製造設備、または粉塵が発生する設備等が挙げられる。
【0020】
気体回収部18は、例えば、バグフィルタ22と、ブロワ24とで構成される。バグフィルタ22は、ケーシング19の上面19bに接続された接続管25に接続されている。ブロワ24によりバグフィルタ22の内部が吸引されて、粉体回収装置10で回収しきれなかった粉体を含む気体が接続管25を経てバグフィルタ22に到達し、バグフィルタ22にて粉体回収装置10で回収しきれなかった粉体を捕集する。
また、実験等により粉体回収装置10で回収しきれなかった粉体が無視できるものであれば、バグフィルタ22を省略することもできる。
【0021】
粉体回収装置10は、駆動部16により容器12が、上述の容器12の軸Cbを回転軸として回転される。容器12の内部12dに粉体Psが気体とともに、固気二相状態で供給される。このとき、容器12に発生する遠心力により、気体よりも密度が大きい粉体が容器12の内壁12cに向って移動して内壁12cで粉体が回収される。
容器12の内壁12cで回収された粉体は、ケーシング19をあけて、容器12から取り出す。
なお、例えば、容器12の内壁12cに密着する袋(図示せず)を予め設けておくことにより、粉体を袋内に回収でき、袋を取り出すことにより、粉体をまとめて回収することができる。
【0022】
回収率とは、容器12で回収された粉体と、粉体回収装置10の容器12で回収しきれずバグフィルタ22で捕集された粉体との合計質量に対する容器12で回収された粉体の割合のことである。容器12で回収された粉体の占める量が多ければ多い程、粉体の回収率が高いことになる。
また、バグフィルタ方式はろ布の交換が必要であることに対して、本発明の粉体回収装置ではろ布の交換が不要であるため、メンテナンス性も良好であり、ろ布からのコンタミネーションもないため有利である。
【0023】
次に、粉体回収装置の第2の例について説明する。
粉体回収装置10は
図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、
図2に示す粉体回収装置10aでもよい。
図2は本発明の実施形態の粉体回収装置の第2の例を示す模式図である。
図2に示す粉体回収装置10aにおいて、
図1に示す粉体回収装置10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図2に示す粉体回収装置10aは、
図1に示す粉体回収装置10に比して、容器12の開口部12aに、供給管14が通る開口28aを有する蓋28が設けられている点が異なり、それ以外の構成は
図1に示す粉体回収装置10と同様の構成である。
図2に示す粉体回収装置10aは、
図1に示す粉体回収装置10と同じ効果を得ることができる。
【0024】
粉体回収装置10aでは、粉体Psが気体とともに固気二相状態で供給された場合、容器12の、上述の容器12の軸Cbを回転軸とする回転により、容器12の内壁12cに粉体(図示せず)が回収され、気体が開口28aを経て開口部12aに移動する。このとき、容器12の内部12dに存在する粉体が開口部12aに移動しても、粉体は蓋28により規制され、粉体のバグフィルタ22への移動が抑制される。このように、容器12の開口部12aに蓋28を設けることにより、粉体のバグフィルタ22への移動が抑制され、粉体の回収率を向上させることができる。
なお、蓋28の開口28aの形状は、粉体のバグフィルタ22への移動を抑制する観点から供給管14の外形状と相似であることが好ましい。また、開口28aの内径は、小さい方が粉体のバグフィルタ22への移動を規制できるため好ましい。容器12と供給管14とは相対的に回転するため、蓋28と供給管14との接触を避けるために開口28aと供給管14とは隙間がある必要があり、開口28aの内径は、供給管14の外径よりも大きい必要がある。
【0025】
次に、粉体回収装置の第3の例について説明する。
図3は本発明の実施形態の粉体回収装置の第3の例を示す模式的断面図である。
図3に示す粉体回収装置10bにおいて、
図1に示す粉体回収装置10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図3に示す粉体回収装置10bは、
図1に示す粉体回収装置10に比して、中板30が設けられている点が異なり、それ以外の構成は
図1に示す粉体回収装置10と同様の構成である。
図3に示す粉体回収装置10bは、
図1に示す粉体回収装置10と同じ効果を得ることができる。
【0026】
中板30は、容器12の内部12dに設けられ、かつ供給管14の周囲に設けられるものである。粉体のバグフィルタ22への移動を抑制する観点から中板30の外形状は、容器12の内形状と相似であることが好ましい。このため、容器12が円筒状であることから、中板30は、外形が円の部材で構成される。中板30は、例えば、円板状の部材で構成される。
中板30の素材は、粉体Psおよび容器12の内部12dの気体と反応しないものであれば、特に限定されるものではない。供給管14が回転する場合には、回転の容易さから、比重の小さい材料で構成することが好ましい。また、中板30は薄い方が好ましい。
【0027】
また、中板30の外径は、大きい方が粉体のバグフィルタ22への移動を規制できるため好ましい。しかしながら、容器12と供給管14とは相対的に回転するため、中板30の外周と、容器12の内壁12cとの接触を避けるために中板30の外周と、容器12の内壁12cとは隙間がある必要があり、中板30の外径は、容器12の内径よりも小さい必要がある。
また、中板30を設ける位置は、容器12の開口部12aと底部12bとの間であれば、特に限定されるものではない。
【0028】
粉体回収装置10bでは、粉体Psが気体とともに固気二相状態で供給された場合、容器12の、上述の容器12の軸Cbを回転軸とする回転により、容器12の内壁12cに粉体(図示せず)が回収され、気体が、蓋28の開口28aを経て開口部12aに移動する。このとき、容器12の内部12dに存在する粉体が開口部12aに移動しても、粉体は中板30により規制され、粉体のバグフィルタ22への移動が抑制される。このように、中板30を設けることにより、粉体のバグフィルタ22への移動が抑制され、粉体の回収率を向上させることができる。
【0029】
次に、粉体回収装置の第4の例について説明する。
図4は本発明の実施形態の粉体回収装置の第4の例を示す模式的断面図である。
図4に示す粉体回収装置10cにおいて、
図1に示す粉体回収装置10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図4に示す粉体回収装置10cは、
図1に示す粉体回収装置10に比して、蓋28と中板30が設けられている点が異なり、それ以外の構成は
図1に示す粉体回収装置10と同様の構成である。
図4に示す粉体回収装置10cは、
図1に示す粉体回収装置10と同じ効果を得ることができる。
粉体回収装置10cの蓋28は、上述の第2の例の粉体回収装置10aの蓋28と同じ構成であり、粉体回収装置10cの中板30は、上述の第3の例の粉体回収装置10bの中板30と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。
粉体回収装置10cでは、蓋28と中板30とにより、容器12の内部12dの粉体のバグフィルタ22への移動が更に抑制される。これにより、粉体の回収率を更に向上させることができる。
【0030】
次に、粉体回収装置の第5の例について説明する。
図5は本発明の実施形態の粉体回収装置の第5の例を示す模式的断面図である。
図5に示す粉体回収装置10dにおいて、
図1に示す粉体回収装置10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図5に示す粉体回収装置10dは、
図1に示す粉体回収装置10に比して、供給管14の軸線Cに沿って、複数の中板30が設けられている点が異なり、それ以外の構成は
図1に示す粉体回収装置10と同様の構成である。
図5に示す粉体回収装置10dは、
図1に示す粉体回収装置10と同じ効果を得ることができる。
【0031】
粉体回収装置10dは、供給管14の軸線Cに沿って、例えば、4つの中板30が設けられている。なお、粉体回収装置10dの中板30は、上述の第3の例の粉体回収装置10bの中板30と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。粉体回収装置10dに示すように中板30を複数設けてもよい。
粉体回収装置10dのように、複数の中板30を設けた場合でも、上述の第2の例の粉体回収装置10a(
図2参照)のように蓋28(
図2参照)を設ける構成としてもよい。蓋28(
図2参照)を設けることにより、容器12の内部12dの粉体のバグフィルタ22への移動が更に抑制される。これにより、粉体の回収率を更に向上させることができる。
【0032】
上述の第1の例~第5の例の粉体回収装置においては、容器の回転数が大きい程、容器内での粉体と気体との分離状態が良好になり、回収率が向上する。このため、容器の回転数が大きいことが好ましい。
また、上述の第1の例~第5の例の粉体回収装置においては、粉体Psの供給量が少ない程、容器内での粉体と気体との分離状態が良好になり、回収率が向上する。このため、粉体Psの供給量は少ないことが好ましいが、粉体Psの供給量が少ないと、単位時間当りの処理量が少なくなる。
粉体Psは、画像法による面積相当の粒子径が1μm以下であれば、特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、カーボンブラック等である。なお、上述のように粉体Psは、画像法による面積相当の粒子径が100nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1~100nmである。つまり、本願でいう「サブミクロンオーダ」とは、画像法による面積相当の粒子径が1μm以下のものを指す。
【0033】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の粉体回収装置および粉体回収方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
例えば、容器12の内壁12cは、パンチングメタルまたは網状の素材で製作することもできる。その場合は、容器12の内壁12cで回収された粉体は、さらに遠心力によりパンチングメタル等の空隙を通過して、ケーシング19の内壁に移動する。このようにすれば回収に寄与する場所が増えることで回収量を増やせるだけでなく、回転する容器12よりも回転しないケーシング19の内壁から運転中に粉体を回収することが容易であるため、連続運転が可能となる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、および、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、実施例1~5および比較例1について、シリカの回収率を評価した。シリカの回収率の結果を下記表1に示す。シリカには、Carplex(登録商標) #67(製品名 DSL.ジャパン株式会社製)を用いた。シリカは、BET法を用いて得られたBET径で、粒子径が7.5nmである。
図6に実施例に用いたシリカのSEMによる観察結果を示す。これより、本粉体の画像法による平均粒子径は1μm以下であることがわかる。
【0035】
一部参考のために、実施例1、実施例3および比較例1では小麦粉の回収率を評価した。これを参考例1~3として、小麦粉の回収率の結果を下記表2に示す。小麦粉には質量粒子径64μmのものを用いた。
なお、シリカおよび小麦粉は、いずれもキャリアガスに空気を用い、シリカおよび小麦粉を空気とともに容器内に供給した。
回収率Rc(%)は、バグフィルタで回収された粉体Pfの量Df(g)と、容器で回収された粉体Pcの量Dc(g)との合計を100として、容器で回収された粉体Pcの量Dc(g)の割合を示す値である。すなわち、Rc(%)=Dc/(Df+Dc)で求めた値である。
【0036】
以下、実施例1~5および比較例1を説明する。
実施例1~5は、容器の大きさを同じ大きさとし、大きさを統一した。また、実施例1~5は、シリカの供給量、容器の回転数、およびブロワの流量も同じとし、統一した条件で粉体と気体の分離を実施した。容器の回転数は6700rpmとした。
なお、小麦粉の供給量も実施例1(参考例1)、実施例3(参考例2)および比較例1(参考例3)で同じとした。
(実施例1)
実施例1は、
図1に示す構成の粉体回収装置とした。実施例1は蓋がない構成である。
(実施例2)
実施例2は、
図2に示す構成の粉体回収装置とした。実施例2は蓋がある構成である。
(実施例3)
実施例3は、
図3に示す構成の粉体回収装置とした。実施例3は、蓋がないが、中板が1つある構成である。
【0037】
(実施例4)
実施例4は、
図3に示す構成の粉体回収装置において、中板を2つ設けた構成とした。実施例4は、蓋がないが、中板が2つある構成である。
(実施例5)
実施例5は、
図4に示す構成の粉体回収装置とした。実施例5には蓋があり、かつ中板が1つある構成である。
(比較例1)
比較例1には、サイクロン方式の粉体回収装置を用いた。
【0038】
【0039】
【0040】
上記表1に示すように、実施例1~5は、サイクロン方式の比較例1に比して、シリカの回収率が高い。
表2に示すように、小麦粉でも、参考例1(実施例1)および参考例2(実施例3)は、参考例3(比較例1)よりも回収率が高い。
シリカと小麦粉との回収率の結果から、粒子径が小さいシリカの方が、回収率の向上の効果が大きいことから、本発明は、粒子径が小さい方に適しており、回収率の向上の効果が顕著である。
実施例1~5から、回収率は、実施例1(蓋なし)<実施例3、4(中板あり)<実施例2(蓋あり)<実施例5(蓋あり、中板あり)であった。蓋と中板がある構成が、回収率が優れていた。
【符号の説明】
【0041】
10、10a、10b、10c、10d 粉体回収装置
12 容器
12a 開口部
12b 底部
12c 内壁
12d 内部
12e 底面
13 底板
14 供給管
16 駆動部
17 駆動軸
18 気体回収部
19 ケーシング
20 供給部
21、25 接続管
22 バグフィルタ
24 ブロワ
28 蓋
30 中板
C、Cs 軸線
Cb 軸
Ps 粉体