(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】学習装置、推論装置及び学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
H01L 21/00 20060101AFI20220819BHJP
G06N 99/00 20190101ALI20220819BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H01L21/00
G06N99/00 180
H01L21/31 Z
(21)【出願番号】P 2018171015
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 康介
(72)【発明者】
【氏名】福留 誉司
(72)【発明者】
【氏名】板橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】伏見 直茂
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和愛
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-149221(JP,A)
【文献】特開2018-026558(JP,A)
【文献】特開2016-058465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00
H01L 21/31
G06N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力層に入力されたデータを用いて学習モデルに基づき機械学習を行う学習装置であって、
半導体製造プロセスを行う処理容器内の環境情報を設定し、前記処理容器に設けられる所定のパーツを変数にして半導体製造プロセスのシミュレーションを行った結果のシミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴量を算出する算出部と、
算出した前記所定個の特徴量を前記入力層に入力する入力部と、
を有する学習装置。
【請求項2】
前記算出部は、ガスに関する前記環境情報を設定して前記パーツのガスの流れに関する半導体製造プロセスのシミュレーションを行った結果のシミュレーションデータと、前記XY座標とを関連づけた所定個の特徴量を算出する、
請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記ウエハ面に平行に等間隔に点在する所定個のXY座標と、該所定個のXY座標のウエハ面上の前記シミュレーションデータとを関連づけた所定個の特徴量を算出する、
請求項1又は2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記算出部は、半導体製造プロセスの工程毎にプロセス条件を設定して前記シミュレーションを行った結果のシミュレーションデータを工程毎に記憶した記憶部を参照して、工程毎に所定個の特徴量を算出する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記処理容器に設けられる新たな前記パーツを用いて半導体製造プロセスのシミュレーションを行った結果のシミュレーションデータと、前記XY座標とを関連づけた所定個の特徴量を算出する処理を繰り返し、
前記入力部は、前記処理を繰り返す度に、算出した前記所定個の特徴量を前記入力層に入力する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項6】
前記入力層に入力した前記所定個の特徴量を教師データとして用いてニューラルネットワークに基づく半導体製造プロセスのシミュレーションを行う処理部を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項7】
前記所定個の特徴量は、同一個数である、
請求項5又は6に記載の学習装置。
【請求項8】
前記シミュレーションデータは、ウエハ面画像データである、
請求項1~7のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記ウエハ面画像データのX方向及びY方向のサイズに応じた2次元配列の形式に該ウエハ面画像データを加工して所定個の特徴量を算出する、
請求項8に記載の学習装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の学習装置により学習された学習済みモデルを搭載する推論装置であって、
半導体製造プロセスを行う処理容器内の環境情報を設定し、前記処理容器に設けられる所定のパーツを変数にして半導体製造プロセスのシミュレーションを行った結果のシミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴量を算出する算出部と、
算出した前記所定個の特徴量を前記入力層に入力する入力部と、
前記入力層に入力した前記所定個の特徴量を用いて前記学習済みモデルにより半導体製造プロセスのシミュレーションを行う実行部と、
を有する推論装置。
【請求項11】
前記シミュレーションを行ったプロセス結果のデータを出力する出力部を有する、
請求項10に記載の推論装置。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の学習装置により学習された学習済みモデルであって、
コンピュータ
に、
(a)半導体製造プロセスを行う処理容器内の環境情報を設定し、前記処理容器に設けられる所定のパーツを変数にして半導体製造プロセスのシミュレーションを行った結果のシミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴量を算出
し、算出した前記所定個の特徴量
を入力
として受け付け、
(b)入力された前記所定個の特徴量を用いて半導体製造プロセスのシミュレーションを行い、
(c)前記シミュレーションを行ったプロセス結果のデータを出力する、処理を実行させる学習済みモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、学習装置、推論装置及び学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、エッチングプロセスのシミュレーションを、パラメータを変更しながら繰り返し実行する際に物理量を効率的に推定することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/132759号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、半導体製造プロセスのシミュレーションを効率的に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、入力層に入力されたデータを用いて学習モデルに基づき機械学習を行う学習装置であって、半導体製造プロセスを行う処理容器内の環境情報を設定し、前記処理容器に設けられる所定のパーツを変数にして半導体製造プロセスのシミュレーションを行った結果のシミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴量を算出する算出部と、算出した前記所定個の特徴量を前記入力層に入力する入力部と、を有する学習装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、半導体製造プロセスのシミュレーションを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係るシミュレーションシステムの全体構成の一例を示す図。
【
図2】一実施形態に係る学習装置及び推論装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図3】一実施形態に係るシミュレーション装置が行うシミュレーションを説明する図。
【
図4】一実施形態に係る学習用データの一例を示す図。
【
図5】一実施形態に係るシミュレーションデータ(ウエハ面画像データ)と特徴ベクトルの一例を示す図。
【
図6】一実施形態に係るシミュレーション処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】一実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャート。
【
図8】一実施形態に係る特徴ベクトルを用いた転移学習の一例を示す図。
【
図9】一実施形態に係る特徴ベクトルを用いた転移学習の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0009】
[シミュレーションシステムの全体構成]
はじめに、半導体製造プロセスのシミュレーションを実行するシミュレーションシステムの全体構成について説明する。
図1は、シミュレーションシステムの全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、シミュレーションシステムは、学習装置10、推論装置20及びシミュレーション装置30を有する。なお、本実施形態において、シミュレーションシステムが取り扱う各種データは、主に半導体製造メーカにて取得される。
【0010】
なお、半導体製造プロセスを実行する半導体製造装置は、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のどのタイプでも適用可能である。
【0011】
半導体製造装置は、複数の処理前ウエハ(処理対象)が搬送されると、半導体製造プロセスの各工程(例えば、成膜、エッチング、アッシング、クリーニング)に応じた処理(以下、「ウエハ処理」ともいう。)を実行する。
【0012】
(シミュレーション装置)
シミュレーション装置30は、半導体製造プロセスの条件(以下、「プロセス条件」ともいう。)や半導体製造装置の処理容器内の環境条件を設定して、半導体製造プロセスの各工程をシミュレーションし、その結果であるシミュレーションデータを出力する。シミュレーションデータの一例としては、ウエハ面上の成膜やエッチングの特性を示す画像データや数値データが挙げられる。
【0013】
図1に示すように、シミュレーション装置30は、実行部31及び記憶部32を有する。半導体製造プロセスのシミュレーションは、シミュレーション装置30の実行部31により実行される。実行部31は、半導体製造装置のハードウェア構成に関する情報、環境情報及びプロセス条件を設定して、シミュレーションモデルに従いシミュレーションを実行する。記憶部32には、シミュレーションにて設定する各種のデータが記憶されている。
【0014】
記憶部32には、シミュレーションモデル33としてプロセスの工程毎のシミュレーションモデルが記憶されている。例えば、成膜工程のシミュレーションには成膜プロセス用のシミュレーションモデルが定義される。また、エッチング工程のシミュレーションにはエッチングプロセス用のシミュレーションモデルが定義される。アッシング工程のシミュレーションにはアッシング用のシミュレーションモデル、クリーニング工程のシミュレーションにはクリーニング用のシミュレーションモデルがそれぞれ定義される。
【0015】
環境情報34は、半導体製造装置にてウエハ処理をシミュレーションするときの処理容器内の環境を示すデータである。環境情報34の一例としては、ガスの流れに関するものが挙げられる。この場合、ガス管に対して予め標準化したガスを流してシミュレーションを行うために、ガス管に、例えば密度1のガスAを1sccm流すことを環境データに設定することが挙げられる。このときのガス管は、処理容器に設けられた所定のパーツの一例であり、ガス管の複数の形状について各形状のシミュレーションを行うことができる。環境情報34の他の例としては、処理容器に設けられた所定のパーツの温度に関するもの等が挙げられる。
【0016】
プロセス条件DB35には、各製造プロセスの工程に応じたプロセス条件が設定されている。例えば、プロセス条件には、半導体製造装置の制御情報であるプロセス時間、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、各種のガス流量が設定されてもよい。また、プロセス条件には、処理容器内温度(上部電極温度、処理容器の側壁温度、ウエハW温度、静電チャック温度等)、チラーから出力される冷媒の温度などが設定されてもよい。
【0017】
ガス管データ36は、半導体製造装置の処理容器内の所定のパーツのハードウェア構成を示すデータである。例えば、所定のパーツがガス管である場合、ガス管データ36として、ガス管の長さや管の直径等の形状情報が記憶される。
【0018】
装置ログDB37は、半導体製造装置を使用したときのRF使用時間、圧力、温度等のログデータを記憶する。例えば、半導体製造装置内の経時変化等をシミュレーションで考慮する場合にシミュレーションに応じたログデータが使用される。
【0019】
シミュレーション装置30は、シミュレーションモデル33、環境情報34、プロセス条件DB35から選択されるプロセス条件、ガス管データ36から選択されるガス管の形状情報を設定する。そして、シミュレーション装置30は、処理容器に設けられる所定のパーツを変数にして半導体製造プロセスのシミュレーションを行う。その結果得られたシミュレーションデータは、学習装置10に送信され、シミュレーションデータDB15に格納される。
【0020】
(学習装置)
学習装置10は、入力層に入力されたデータを用いて学習モデルに基づき機械学習を行う。学習装置10は、算出部11、入力部12、処理部13及び記憶部14を有する。学習装置10には、入力データ生成プログラム及び学習プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、学習装置10は算出部11及び処理部13として機能する。
【0021】
算出部11は、記憶部14に記憶されたシミュレーションデータDB15内のシミュレーションデータ(シミュレーション装置30によるプロセス結果のデータ)を読み出し、処理部13が学習する際に適した所定個の特徴ベクトルに加工する。加工後の特徴ベクトルが、学習モデルの入力層に入力される。
【0022】
加工の一例としては、算出部11は、ウエハ面上のシミュレーションデータを、ウエハ面の縦サイズ及び横サイズに応じて、ウエハ面に平行なXY座標の2次元配列の形式に加工してもよい。算出部11は、ウエハ面上のシミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴ベクトルを算出する。算出した所定個の特徴ベクトルは、シミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴量の一例である。
【0023】
なお。処理部13が有する学習モデルは、特徴ベクトルとして、ウエハ面上のプロセス結果を示す数値データの形式になっている入力データを用いてもよいし、画像データの形式になっている入力データを用いてもよい。
【0024】
本実施形態では、加工された特徴ベクトルは、学習用データ16に格納される。ただし、上記データの加工はこれに限られず、シミュレーションデータDB15に格納される際に行われてもよい。この場合、シミュレーションデータDB15には、2次元配列の形式に加工された後のシミュレーションデータが学習用データ16として格納され、算出部11によって読み出される。入力部12は、2次元配列の形式に加工された所定個の特徴ベクトルを、順次、ニューラルネットワークの機械学習を行う際の入力層に入力する。
【0025】
入力部12は、算出部11が算出した所定個の特徴ベクトルを学習モデルの入力層に順次入力する。処理部13は、入力層に入力した所定個の特徴量を教師データとして用いて半導体製造プロセスのシミュレーションを行う。
【0026】
これにより、処理部13では、機械学習により学習済みモデルを生成し、シミュレーション結果を出力する。処理部13により生成された学習済みモデルは、推論装置20に提供され、推論装置20に搭載される。
【0027】
(推論装置)
推論装置20は、学習装置により学習された学習済みモデルを使用して半導体製造プロセスのシミュレーションを行う。推論装置20は、算出部21、入力部22、実行部23、出力部24及び記憶部25を有する。推論装置20には、入力データ生成プログラム及び推論プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、推論装置20は算出部21及び実行部23として機能する。
【0028】
算出部21は、記憶部25に記憶された推論対象のシミュレーションデータ26(シミュレーション装置30による推論対象のプロセス結果のデータ)を読み出し、実行部23が実行するシミュレーションの際に適した所定個の特徴ベクトルに加工する。加工後の特徴ベクトルは、学習済みモデルの入力層に入力される。
【0029】
算出部21は、シミュレーションデータ26を、ウエハ面の縦サイズ及び横サイズに応じて、ウエハ面に平行なXY座標の2次元配列の形式に加工する。算出部21は、ガス管データ36を変数にして、推論対象となる新たなパーツ(例えばガス管の新たな形状データ)を設定したときの半導体製造プロセスのシミュレーションを行った結果のシミュレーションデータ26を読み込む。そして、算出部21は、読み込んだシミュレーションデータ26と、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴ベクトルを算出する。算出した所定個の特徴ベクトルは、シミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴量の一例である。
【0030】
実行部23は、入力部22より所定個の特徴ベクトルが順次入力されることで学習済みモデルを実行し、シミュレーション結果を出力する。出力したシミュレーション結果の一例としては、ウエハ面上の成膜やエッチングの特性を示す情報(例えばウエハ面画像データ)が挙げられる。
【0031】
[シミュレーションシステムを構成する各装置のハードウェア構成]
次に、シミュレーションシステムを構成する各装置(学習装置10、推論装置20)のハードウェア構成について
図2を用いて説明する。
図2(a)は、学習装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2(b)は、推論装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、学習装置10と推論装置20のハードウェア構成は概ね同じであることから、ここでは、学習装置10のハードウェア構成について説明し、推論装置20のハードウェア構成の説明は省略する。
【0032】
図2(a)に示すように、学習装置10は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202を有する。また、学習装置10は、RAM(Random Access Memory)203、GPU(Graphics Processing Unit)204を有する。CPU201、ROM202、RAM203、GPU204は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0033】
さらに、学習装置10は、補助記憶装置205、操作装置206、表示装置207、I/F(Interface)装置208、ドライブ装置209を有する。なお、学習装置10の各ハードウェアは、バス210を介して相互に接続される。
【0034】
CPU201は、補助記憶装置205にインストールされた各種プログラム(例えば、入力データ生成プログラム、学習プログラム等)を実行する演算デバイスである。
【0035】
ROM202は、不揮発性メモリであり、主記憶装置として機能する。ROM202は、補助記憶装置205にインストールされた各種プログラムをCPU201が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する。具体的には、ROM202はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する。
【0036】
RAM203は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリであり、主記憶装置として機能する。RAM203は、補助記憶装置205にインストールされた各種プログラムがCPU201によって実行される際に展開される、作業領域を提供する。
【0037】
GPU204は、画像処理用の演算デバイスであり、CPU201により入力データ生成プログラム、学習プログラムが実行される際に、入力データについて並列処理による高速演算を行う。なお、GPU204は、内部メモリ(GPUメモリ)を搭載しており、前記並列処理を行う際に必要な情報を一時的に保持する。
【0038】
補助記憶装置205は、各種プログラムや、各種プログラムがCPU201によって実行される際に、GPU204によって処理される学習用データ16、シミュレーションデータ等を格納する。例えば、シミュレーションデータDB15や記憶部14は、補助記憶装置205において実現される。
【0039】
操作装置206は、学習装置10の管理者が学習装置10に対して各種指示を入力する際に用いる入力デバイスである。表示装置207は、学習装置10の内部状態を表示する表示デバイスである。I/F装置208は、他の装置と接続し、通信を行うための接続デバイスである。
【0040】
ドライブ装置209は記録媒体220をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体220には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体220には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0041】
なお、補助記憶装置205にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体220がドライブ装置209にセットされ、該記録媒体220に記録された各種プログラムがドライブ装置209により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置205にインストールされる各種プログラムは、不図示のネットワークを介してダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0042】
[学習用データの説明]
次に、シミュレーションデータDB15に格納されるシミュレーションデータから生成される学習用データ16について説明する。
図3は、シミュレーションデータDB15に格納されるシミュレーションデータを生成するシミュレーション装置30が行うシミュレーションの一例を示す図である。
図4は、シミュレーション結果を示すシミュレーションデータから生成される学習用データの一例を示す図である。
【0043】
図3に示すように、シミュレーション装置30において環境情報及びプロセス条件を設定することで半導体製造プロセスのシミュレーションにおける処理容器内の環境及びプロセス条件を一定に設定できる。これにより、実行部は、所定のパーツ(例えばガス管)のハードウェア構成(形状データa、b、c・・・)のみを変数にしてそれ以外のシミュレーション条件を固定にして各プロセス用のシミュレーションモデルに基づきシミュレーションを行うことができる。
【0044】
これにより、学習装置10は、所定のパーツのハードウェア構成に一対一に対応するシミュレーション結果のシミュレーションデータ(例えばウエハ面画像データA、B、C・・・)を使用することができる。これにより、所定のパーツのハードウェア構成の特徴量を特徴ベクトルとして入力層に入力することができる。
【0045】
例えば、処理容器内のガスの流れに関する環境を一定に設定し(例えば密度1のガスAを1sccm等)、かつ、プロセス毎のプロセス条件(圧力、温度等)を一定に設定する。その上でガス管のハードウェア構成(長さや管の直径等が異なる形状データ)を変数として与えてプロセス毎のシミュレーションモデルに従いシミュレーションが実行すると、ガス管のハードウェア構成の以外のシミュレーション条件を固定することができる。これにより、例えばウエハ面画像データであるシミュレーションデータから算出した所定個の特徴ベクトルが、ガス管の特定の形状を特徴づける特徴量に一対一の関係として紐付く。これにより、学習装置10において所定のパーツのハードウェア構成の情報を学習モデルの入力データとして入力させ、学習モデルを実行させることで所定のパーツのハードウェア構成に応じたプロセス結果を出力させることができる。
【0046】
図4に、学習装置10の算出部11がシミュレーションデータから算出した所定個の特徴ベクトルを含む学習用データの一例を示す。学習用データには、情報の項目として、「工程」、「(シミュレーション)ID」、「ガス管データ(形状情報)」、「ウエハ面画像データ」、「特徴ベクトル」が含まれる。
【0047】
「工程」には、シミュレーション装置30により実行されるシミュレーションの既知のプロセスが格納される。「ID」には、シミュレーション装置30により実行されるシミュレーションを識別するための識別子が格納される。
【0048】
「ガス管データ」には、ガス管の長さや直径等から定められるガス管の形状情報が格納される。ただし、「ガス管」は、半導体製造装置の処理容器内のパーツの一例であり、半導体製造装置の処理容器内のパーツであればガス管に限られず、いずれのパーツのハードウェア構成の情報に置き換えてもよい。
【0049】
「ウエハ面画像データ」は、シミュレーション装置30によりシミュレーションした結果のプロセス結果を示すシミュレーションデータの一例である。プロセス結果としては、ウエハ面に形成される膜の質、組成比、密度、成膜レート、エッチングレート、ウエハ面に照射される光の屈折率や光吸収係数等の光学定数が挙げられる。
【0050】
「特徴ベクトル」は、所定個のXY座標とシミュレーションデータとを関連付けた各XY座標における特徴量を示す。
図5の例では、ウエハ面に平行なXY座標のうち、等間隔に点在する25個のXY座標(X
1,Y
1)~(X
5,Y
1)~(X
1,Y
5)~(X
5,Y
5)が特定される。そして、25個のXY座標と各XY座標におけるシミュレーションデータ(AR
11~AR
15~AR
51~AR
55)を関連づけた25個の特徴ベクトルが算出される。
図5の例では、(X
1,Y
1,AR
11)~(X
5,Y
1,AR
15)~(X
1,Y
5,AR
51)~(X
5,Y
5,AR
55)の25個の特徴ベクトルが算出されるが、XY座標の位置及び個数はこれに限られない。
【0051】
算出された特徴ベクトルは、
図4に示すように、プロセス毎にガス管データに対応させて学習用データ16として記憶部14に格納される。かかる手法によれば、シミュレーションデータのウエハ面上へのマッピングにより予め定めた一定個数の特徴ベクトルを算出することができる。つまり、ウエハ面の(X
i,Y
i)(i≧1)を予め定め、標準化することで、モニタ点を固定することができる。これにより、
図5の右側に示す学習モデルの模式図の入力層に入力する特徴ベクトルの個数を揃えることで、効率的な学習が可能になる。
【0052】
また、本手法によれば、所定のパーツのハードウェア構成の以外のシミュレーション条件を固定することが可能である。これにより、シミュレーションデータから抽出した25個の特徴ベクトルを、所定のパーツのハードウェア構成を特徴づける特徴量として学習モデルの入力層に入力させることができる。これにより、ガス管のハードウェア構成に応じた学習が可能になる。
【0053】
ただし、入力層へ入力する特徴ベクトルの個数は一定でなくてもよい。例えば、ウエハ面の(Xi,Yi)は固定でなく、ウエハ面内の可変の位置であってもよい。これにより、学習モデルの入力層へ入力する所定個の特徴ベクトルを可変にできる。
【0054】
また、本実施形態に係るシミュレーションでは、ガス管のハードウェア構成に対してガスの流れをシミュレーションし、プロセス結果をウエハ面画像データとして出力したが、これに限られない。例えば、ウエハを載置する載置台のハードウェア構成に対してウエハ温度のシミュレーションを行い、プロセス結果としてウエハ面上の温度分布を示す画像データを出力する等、様々な製造プロセスに関するシミュレーションに利用できる。
【0055】
また、学習に使用される教師データは、シミュレーションデータに限られず、半導体製造装置を用いて実際に行った実験データを含んでもよい。
【0056】
学習装置10において機械学習を行い、生成される学習済みモデルを推論装置20に搭載することで、推論装置20では、学習済みモデルを用いて新たなパーツに関する既知のプロセスA,Bのプロセス予測が可能になる。加えて、推論装置20では、学習済みモデルを用いて新たなパーツに関する未知のプロセスA'、B'のプロセス予測を行ってもよい。
【0057】
[シミュレーション装置によるシミュレーション処理の流れ]
次に、シミュレーション装置30によるシミュレーション処理の流れについて説明する。
図6は、一実施形態に係るシミュレーション処理の一例を示すフローチャートである。シミュレーションを行う旨の指示が入力されるとシミュレーション装置30では、
図6に示すフローチャートを実行する。
【0058】
はじめに、ステップS10において、実行部31は、半導体製造プロセスを行う処理容器内の環境情報34を設定する。また、実行部31は、シミュレーション対象の工程(例えば成膜工程)のプロセス条件をプロセス条件DB35から選択して設定する。
【0059】
次に、ステップS12において、実行部31は、ガス管データ36から対象のパーツ(ガス管の形状情報)を選択して入力し、シミュレーション対象の工程に対応するシミュレーションモデル33に従いシミュレーションを実行する。
【0060】
次に、ステップS14において、実行部31は、シミュレーション結果のシミュレーションデータを学習装置10に送信し、シミュレーション処理を終了する。これにより、シミュレーションデータが、
図1に示す学習装置10のシミュレーションデータDB15内に格納される。
【0061】
[学習装置による学習処理の流れ]
次に、学習装置10による学習処理の流れについて説明する。
図7は、一実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。機械学習を行う旨の指示が入力されると、学習装置10では、
図7に示すフローチャートを実行する。
【0062】
はじめに、ステップS20において、学習装置10は、シミュレーション装置30からシミュレーションデータを受信し、シミュレーションデータDB15に格納する。
【0063】
次に、ステップS22において、算出部11は、シミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴ベクトルを算出し、学習用データ16に格納する。算出部11は、シミュレーションデータを受信する度に、シミュレーションデータと、前記XY座標とを関連づけた所定個の特徴ベクトルを算出する処理を繰り返し、学習用データ16に格納する。
【0064】
次に、ステップS24において、入力部12は、学習モデルの入力層に、算出した所定個の特徴ベクトルを順次入力する。そして、処理部13は、特徴ベクトルを入力データとし、ウエハ処理の結果を出力データとして、半導体製造プロセスの学習モデルによる機械学習を実行する。
【0065】
次に、ステップS26において、処理部13は、学習した学習モデルである、学習済みモデルを出力し、学習処理を終了する。
【0066】
[推論装置による推論処理の流れ]
推論装置20による推論処理の流れは、学習済みモデルを用いて処理を行う点で学習装置10による学習処理と異なり、その他の処理は概ね同一である。シミュレーションを行う旨の指示が入力されると、推論装置20では、はじめに、シミュレーション装置30からシミュレーションデータを受信し、記憶部25に格納する。受信するシミュレーションデータは、例えばシミュレーション装置30で実行された、新たなパーツ(例えばガス管の新たな形状)に関するシミュレーション結果のデータである。
【0067】
次に、算出部21は、シミュレーションデータと、ウエハ面に平行なXY座標とを関連づけた所定個の特徴ベクトルを算出する。次に、入力部22は、学習済みモデルの入力層に、算出した所定個の特徴ベクトルを順次入力する。
【0068】
次に、実行部23は、算出した所定個の特徴ベクトルを入力データとして、学習済みモデルを実行させる。出力部24は、学習済みモデルにより出力されたプロセス結果であるウエハ面画像データを出力し、推論処理を終了する。これにより、例えば新たなパーツを用いた場合の半導体製造プロセスのシミュレーション結果を高精度かつ効率的に得ることができる。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態に係るシミュレーション装置30、学習装置10、推論装置20を備えたシミュレーションシステムでは、所定のパーツのハードウェア構成の以外のシミュレーション条件を固定する。これにより、シミュレーションデータから算出した所定個の特徴ベクトルを、所定のパーツのハードウェア構成を特徴づける特徴量として学習モデルの入力層に入力できる。これにより、学習した学習済みモデルを用いて、所定のパーツのハードウェア構成に応じた半導体製造プロセスをシミュレーションできる。これにより、ユーザは、学習済みモデルを用いたシミュレーションの結果である出力ウエハ面画像データに基づき、所定のパーツの形状を変えたときのプロセス結果を高精度かつ効率的に把握することができる。
【0070】
また、シミュレーションデータから抽出する特徴ベクトルの個数を同一にすることで、学習モデルの入力層に入力するデータを揃えることができる。これにより、半導体製造プロセスにかかるシミュレーションについての機械学習を効率的に行うことができる。
【0071】
更に、
図8に示すように、特徴ベクトルを入力して先に学習させた学習済みモデルを使用し、更に他の入力層にプロセス条件データを追加したり、装置ログデータを加えて学習をさせる転移学習を行うことで、学習効率の向上と学習対象の拡大を図ることができる。
【0072】
特に、シミュレーションによるプロセス結果の精度を向上させるためには、どのくらい使用した半導体製造装置であるかについてのデータを入力して学習させることが好ましい。そこで、特徴ベクトルを入力層に入力する部分の学習モデルは学習済みモデルを用いて、更にプロセス条件データとともに装置ログデータを入力層に入力して学習させることで、更に精度の高いシミュレーション結果を得ることができる。
【0073】
また、プロセスの各工程におけるシミュレーションを組み合わせて最終のプロセス結果を把握したい場合がある。例えば、成膜工程、エッチング工程、アッシング工程の各プロセスのシミュレーションを組み合わせて最終のプロセス結果を把握したい場合等が考えらえる。この場合、
図9に示すように、本工程の特徴ベクトルを入力層に入力する部分の学習モデルは学習済みモデルを使用し、更に他の入力層に前工程の特徴ベクトルと後工程の特徴ベクトルを加えて学習をさせる転移学習を行う。これにより、学習効率の向上と組み合わせにかかるプロセス結果を得ることができ、多様な組み合わせにかかる半導体製造プロセスの工程について、高精度なシミュレーション結果を効率的に得ることができる。
【0074】
今回開示された一実施形態に係る学習装置、推論装置及び学習済みモデルは、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0075】
本明細書では、被処理体の一例としてウエハを挙げて説明した。しかし、被処理体は、これに限らず、FPD(Flat Panel Display)に用いられる各種基板、プリント基板等であっても良い。
【0076】
本開示の学習装置10、推論装置20、シミュレーション装置30は、パーソナルコンピュータ、サーバ、タブレット側端末、スマートフォン、ウエラブルデバイス、その他の情報処理装置のいずれで実現されてもよい。また、学習装置10とシミュレーション装置30とは、同一の装置で実現してもよいし、別の装置で実現してもよい。同様に、推論装置20とシミュレーション装置30とは、同一の装置で実現してもよいし、別の装置で実現してもよい。また、学習装置10と推論装置20とは、同一の装置で実現してもよいし、別の装置で実現してもよい。
【0077】
また、本開示の学習装置10はニューラルネットワークに基づき機械学習を行い、推論装置20は学習済みのニューラルネットワークにより実現される場合について説明したが、これに限られず、種々の機械学習モデルにより実現されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 学習装置
11 算出部
12 入力部
13 処理部
14 記憶部
15 シミュレーションデータDB
20 推論装置
21 算出部
22 入力部
23 実行部
24 出力部
25 記憶部
30 シミュレーション装置
31 実行部
32 記憶部
33 シミュレーションモデル
34 環境情報
35 プロセス条件DB
36 ガス管データ
37 装置ログDB