(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】シャワーヘッドおよびガス処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20220819BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220819BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220819BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20220819BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H01L21/31 C
C23C16/455
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2018224855
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正樹
(72)【発明者】
【氏名】島村 貴春
(72)【発明者】
【氏名】大森 貴史
(72)【発明者】
【氏名】南 雅人
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-069514(JP,A)
【文献】特開2017-022356(JP,A)
【文献】特開2008-010579(JP,A)
【文献】特開2011-228343(JP,A)
【文献】特開2007-059567(JP,A)
【文献】特開平10-050663(JP,A)
【文献】特開2012-238656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/455
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にガス処理を施すガス処理装置において、基板が配置されるチャンバー内に、腐食性の処理ガスを供給するシャワーヘッドであって、
ベース部材と、
処理ガスを吐出する複数のガス吐出孔を有するシャワープレートと、
前記ベース部材と前記シャワープレートの間の一部に設けられ、前記処理ガスが導入され、前記複数のガス吐出孔に連通するガス拡散空間と、
を備え、
前記シャワープレートは、基材が金属で構成さ
れ、前記シャワープレートの前記ガス拡散空間および前記ガス吐出孔に面した部分は、耐食性金属材または耐食性皮膜で覆われてお
り、
前記ベース部材は、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金で構成された基材と、前記ガス拡散空間に面した部分に前記基材を覆うように設けられた、耐食性金属材で構成されたカバー部材とを有し、
前記ベース部材および前記シャワープレートの、前記ガス拡散空間よりも外側の部分が接触し、シール部材でシールされた状態で固定されており、前記カバー部材の端部には、前記シャワープレートの表面に接触しない状態で折り曲げられた折り曲げ部が形成され、前記シール部材は、前記シャワープレートの前記耐食性金属材または耐食性皮膜に接触し、かつ前記折り曲げ部により押し付けられた状態で保持される、シャワーヘッド。
【請求項2】
基板にガス処理を施すガス処理装置において、基板が配置されるチャンバー内に、腐食性の処理ガスを供給するシャワーヘッドであって、
ベース部材と、
処理ガスを吐出する複数のガス吐出孔を有するシャワープレートと、
前記ベース部材と前記シャワープレートの間の一部に設けられ、前記処理ガスが導入され、前記複数のガス吐出孔に連通するガス拡散空間と、
を備え、
前記シャワープレートは、基材が金属で構成され、前記シャワープレートの前記ガス拡散空間および前記ガス吐出孔に面した部分は、耐食性金属材または耐食性皮膜で覆われており、
前記ベース部材は、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金で構成された基材と、前記ガス拡散空間に面した部分に前記基材を覆うように設けられた、耐食性金属材で構成された構成されたカバー部材とを有し、
前記ベース部材および前記シャワープレートの、前記ガス拡散空間よりも外側の部分が接触し、シール部材でシールされた状態で固定されており、前記シール部材は、前記カバー部材および前記シャワープレートの前記耐食性金属材または耐食性皮膜に接触し、かつ前記ガス拡散空間の端部に設けられたリング状の耐食性樹脂により保持されている、シャワーヘッド。
【請求項3】
基板にガス処理を施すガス処理装置において、基板が配置されるチャンバー内に、腐食性の処理ガスを供給するシャワーヘッドであって、
ベース部材と、
処理ガスを吐出する複数のガス吐出孔を有するシャワープレートと、
前記ベース部材と前記シャワープレートの間の一部に設けられ、前記処理ガスが導入され、前記複数のガス吐出孔に連通するガス拡散空間と、
を備え、
前記シャワープレートは、基材が金属で構成され、前記シャワープレートの前記ガス拡散空間および前記ガス吐出孔に面した部分は、耐食性金属材または耐食性皮膜で覆われており、
前記ベース部材は、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金で構成され、前記ガス拡散空間に対応する凹部を有する基材と、前記基材の前記ガス拡散空間の上面側の面を覆うように形成された耐食性皮膜と、前記基材の前記ガス拡散空間の側面側の面を覆うように設けられた、耐食性金属材で構成されたリング状部材とを有する、シャワーヘッド。
【請求項4】
基板にガス処理を施すガス処理装置において、基板が配置されるチャンバー内に、腐食性の処理ガスを供給するシャワーヘッドであって、
ベース部材と、
処理ガスを吐出する複数のガス吐出孔を有するシャワープレートと、
前記ベース部材と前記シャワープレートの間の一部に設けられ、前記処理ガスが導入され、前記複数のガス吐出孔に連通するガス拡散空間と、
を備え、
前記シャワープレートは、基材が金属で構成され、前記シャワープレートの前記ガス拡散空間および前記ガス吐出孔に面した部分は、耐食性金属材または耐食性皮膜で覆われており、
前記ベース部材は、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金で構成され、前記ガス拡散空間に対応する凹部を有する基材と、前記基材の前記ガス拡散空間の上面側の面を覆うように形成された耐食性金属材で構成されたカバー部材と、前記基材の前記ガス拡散空間の側面側の面を覆うように設けられた、耐食性金属で構成されたリング状部材とを有する、シャワーヘッド。
【請求項5】
前記カバー部材と前記リング状部材は一体に形成されている、請求項
4に記載のシャワーヘッド。
【請求項6】
前記リング状部材と前記ベース部材との間、および前記リング状部材と前記シャワープレートとの間に設けられた、シール部材をさらに有する、請求項
3から請求項
5のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項7】
基板にガス処理を施すガス処理装置において、基板が配置されるチャンバー内に、腐食性の処理ガスを供給するシャワーヘッドであって、
ベース部材と、
処理ガスを吐出する複数のガス吐出孔を有するシャワープレートと、
前記ベース部材と前記シャワープレートの間の一部に設けられ、前記処理ガスが導入され、前記複数のガス吐出孔に連通するガス拡散空間と、
を備え、
前記ベース部材および前記シャワープレートは、基材が金属で構成され、
前記ベース部材の前記ガス拡散空間に面した部分は、耐食性皮膜で覆われており、
前記シャワープレートの、前記ガス拡散空間に面した部分は、耐食性皮膜で覆われており、前記ガス吐出孔に面した部分は、耐食性金属材または耐食性被膜で覆われており、
前記ベース部材側の前記耐食性皮膜と、前記シャワープレート側の耐食性皮膜は、前記ガス拡散空間よりも外側の部分に延びて、これらが互いに接触しない状態であり、前記ガス拡散空間よりも外側の部分に、前記ベース部材側の前記耐食性皮膜と前記シャワープレート側の耐食性皮膜との間に形成されたシール部材を有する、シャワーヘッド。
【請求項8】
前記耐食性金属材は、ニッケル含有金属で構成されている、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項9】
前記ニッケル含有金属は、ステンレス鋼またはニッケル基合金である、請求項
8に記載のシャワーヘッド。
【請求項10】
前記耐食性皮膜は、セラミックス溶射皮膜である、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項11】
前記セラミックス溶射皮膜は、アルミナ溶射皮膜である、請求項
10に記載のシャワーヘッド。
【請求項12】
前記セラミックス溶射皮膜は、合成樹脂からなる封孔材で封孔されている、請求項
10または請求項
11に記載のシャワーヘッド。
【請求項13】
前記シャワープレートは、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金で構成された基材と、前記ガス拡散空間に面した部分に前記基材を覆うように設けられた耐食性皮膜と、前記基材に嵌め込まれ、前記複数のガス吐出孔を覆うように設けられた複数のスリーブとを有する、請求項1から請求項
12のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項14】
前記ガス処理装置は、前記チャンバー内に処理ガスのプラズマを生成してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であり、前記シャワープレートは、前記プラズマが接触する面に形成された、耐プラズマ性皮膜を有する、請求項1から請求項
13のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項15】
基板にガス処理を施すガス処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内で基板を載置する載置台と、
前記チャンバー内に、前記載置台と対向するように設けられ、プラズマを生成するための腐食性の処理ガスを前記チャンバー内に供給する、請求項1から請求項
14のいずれか1項に記載のシャワーヘッドと、
を具備する、ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャワーヘッドおよびガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)製造工程においては、矩形状のガラス基板の所定の膜にプラズマエッチング等のプラズマ処理を行う工程が存在する。このようなプラズマ処理装置としては、高真空度で高密度のプラズマを得ることができるという大きな利点を有する誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)処理装置が注目されている。
【0003】
従来の誘導結合プラズマ処理装置は、高周波アンテナと処理室との間に被処理基板に対応した矩形状の誘電体窓が介在されているが、基板の大型化にともない、近時、金属窓を用いた誘導結合プラズマ処理装置が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、矩形状の金属窓を分割し、分割された金属窓どうしを絶縁することで、処理室の天壁を構成し、金属窓を構成する複数の分割片にガスを吐出するシャワーヘッドの機能を持たせて、処理ガスをチャンバー内に導入する。このような装置によりプラズマエッチングを行う場合には、Cl2ガスのような腐食性の高いガスが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高腐食性の処理ガスを用いても腐食を抑制することができるシャワーヘッドおよびガス処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るシャワーヘッドは、基板にガス処理を施すガス処理装置において、基板が配置されるチャンバー内に、腐食性の処理ガスを供給するシャワーヘッドであって、ベース部材と、処理ガスを吐出する複数のガス吐出孔を有するシャワープレートと、前記ベース部材と前記シャワープレートの間の一部に設けられ、前記処理ガスが導入され、前記複数のガス吐出孔に連通するガス拡散空間と、を備え、前記シャワープレートは、基材が金属で構成され、前記シャワープレートの前記ガス拡散空間および前記ガス吐出孔に面した部分は、耐食性金属材または耐食性皮膜で覆われており、前記ベース部材は、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金で構成された基材と、前記ガス拡散空間に面した部分に前記基材を覆うように設けられた、耐食性金属材で構成されたカバー部材とを有し、前記ベース部材および前記シャワープレートの、前記ガス拡散空間よりも外側の部分が接触し、シール部材でシールされた状態で固定されており、前記カバー部材の端部には、前記シャワープレートの表面に接触しない状態で折り曲げられた折り曲げ部が形成され、前記シール部材は、前記シャワープレートの前記耐食性金属材または耐食性皮膜に接触し、かつ前記折り曲げ部により押し付けられた状態で保持される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高腐食性の処理ガスを用いても腐食を抑制することができるシャワーヘッドおよびガス処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るシャワーヘッドが適用されたプラズマ処理装置の一例を示す断面図である。
【
図2】シャワーヘッドの第1の例を示す断面図である。
【
図3】シャワーヘッドの第2の例を示す断面図である。
【
図4】シャワーヘッドの第3の例を示す断面図である。
【
図5】シャワーヘッドの第4の例を示す断面図である。
【
図6】シャワーヘッドの第5の例を示す断面図である。
【
図7】シャワーヘッドの第6の例を示す断面図である。
【
図8】シャワーヘッドの第7の例を示す断面図である。
【
図9】シャワーヘッドの第8の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
<プラズマ処理装置>
最初に、一実施形態に係るシャワーヘッドが適用されたプラズマ処理装置について説明する。
図1は、一実施形態に係るシャワーヘッドが適用されたプラズマ処理装置の一例を示す断面図である。
【0010】
図1に示すプラズマ処理装置は、誘導結合プラズマ処理装置として構成され、矩形基板、例えば、FPD用ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成する際の金属膜のエッチングに好適に用いることができる。
【0011】
この誘導結合プラズマ処理装置は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる角筒形状の気密な本体容器1を有する。この本体容器1は分解可能に組み立てられており、接地線1aにより電気的に接地されている。
【0012】
本体容器1は、本体容器1と絶縁されて形成された矩形状のシャワーヘッド2により上下に区画されており、上側がアンテナ室を画成するアンテナ容器3となっており、下側が処理室を画成するチャンバー(処理容器)4となっている。シャワーヘッド2は金属窓として機能し、チャンバー4の天壁を構成する。
【0013】
アンテナ容器3の側壁3aとチャンバー4の側壁4aとの間には、本体容器1の内側に突出する支持棚5、および支持梁6が設けられている。支持棚5および支持梁6は導電性材料、望ましくはアルミニウム等の金属で構成される。シャワーヘッド2は絶縁部材7を介して複数に分割されて構成されている。そして、複数に分割されたシャワーヘッド2の分割部分は、絶縁部材7を介して支持棚5および支持梁6に支持される。支持梁6は、複数本のサスペンダ(図示せず)により本体容器1の天井に吊された状態となっている。なお、支持梁6を設ける代わりに、シャワーヘッド2を複数本のサスペンダ(図示せず)により本体容器1の天井から吊り下げるようにしてもよい。
【0014】
金属窓となるシャワーヘッド2の各分割部50は、後述するように、基材が非磁性体の金属で構成され、ベース部材52と、複数のガス吐出孔54を有するシャワープレート53と、ベース部材52とシャワープレート53との間の一部に設けられた箱型のガス拡散空間51とを有している。ベース部材52の中央部に凹部を有し、ベース部材52の凹部の外側部分とシャワープレート53とがネジ止めされ、ベース部材52の凹部とシャワープレート53に囲まれた領域がガス拡散空間51となる。ガス拡散空間51には処理ガス供給機構20からガス供給管21を介して処理ガスが導入される。ガス拡散空間51は複数のガス吐出孔54に連通し、ガス拡散空間51から複数のガス吐出孔54を介して処理ガスが吐出される。
【0015】
シャワーヘッド2の上のアンテナ容器3内には、シャワーヘッド2のチャンバー4側とは反対側の面に面するように高周波アンテナ13が配置されている。高周波アンテナ13は導電性材料、例えば銅などからなり、絶縁部材からなるスペーサ(図示せず)によりシャワーヘッド2から離間して配置されており、矩形状のシャワーヘッド2に対応する面内で、例えば渦巻き状に形成される。また、環状に形成されていてもよく、アンテナ線は一本でも複数本でもよい。
【0016】
高周波アンテナ13には、給電線16、整合器17を介して第1の高周波電源18が接続されている。そして、プラズマ処理の間、高周波アンテナ13に第1の高周波電源18から延びる給電線16を介して、例えば13.56MHzの高周波電力が供給される。これにより、後述するように金属窓として機能するシャワーヘッド2に誘起されるループ電流を介して、チャンバー4内に誘導電界が形成される。そして、この誘導電界により、チャンバー4内のシャワーヘッド2直下のプラズマ生成空間Sにおいて、シャワーヘッド2から供給された処理ガスがプラズマ化され、誘導結合プラズマが生成される。すなわち、高周波アンテナ13および第1の高周波電源18がプラズマ生成機構として機能する。
【0017】
チャンバー4内の底部には、シャワーヘッド2を挟んで高周波アンテナ13と対向するように、被処理基板として、矩形状のFPD用ガラス基板(以下単に基板と記す)Gを載置するための載置台23が絶縁体部材24を介して固定されている。載置台23は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。載置台23に載置された基板Gは、静電チャック(図示せず)により吸着保持される。
【0018】
載置台23の上部周縁部には絶縁性のシールドリング25aが設けられ、載置台23の周面には絶縁リング25bが設けられている。載置台23には基板Gの搬入出のためのリフターピン26が、本体容器1の底壁、絶縁体部材24を介して挿通されている。リフターピン26は、本体容器1外に設けられた昇降機構(図示せず)により昇降駆動して基板Gの搬入出を行うようになっている。
【0019】
本体容器1外には、整合器28および第2の高周波電源29が設けられており、載置台23には給電線28aにより整合器28を介して第2の高周波電源29が接続されている。この第2の高周波電源29は、プラズマ処理中に、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が3.2MHzの高周波電力を載置台23に印加する。このバイアス用の高周波電力により生成されたセルフバイアスによって、チャンバー4内に生成されたプラズマ中のイオンが効果的に基板Gに引き込まれる。
【0020】
さらに、載置台23内には、基板Gの温度を制御するため、ヒータ等の加熱手段や冷媒流路等からなる温度制御機構と、温度センサーとが設けられている(いずれも図示せず)。これらの機構や部材に対する配管や配線は、いずれも本体容器1の底面および絶縁体部材24に設けられた開口部1bを通して本体容器1外に導出される。
【0021】
チャンバー4の側壁4aには、基板Gを搬入出するための搬入出口27aおよびそれを開閉するゲートバルブ27が設けられている。また、チャンバー4の底部には、排気管31を介して真空ポンプ等を含む排気装置30が接続される。この排気装置30により、チャンバー4内が排気され、プラズマ処理中、チャンバー4内が所定の真空雰囲気(例えば1.33Pa)に設定、維持される。
【0022】
載置台23に載置された基板Gの裏面側には冷却空間(図示せず)が形成されており、一定の圧力の熱伝達用ガスとしてHeガスを供給するためのHeガス流路41が設けられている。このように基板Gの裏面側に熱伝達用ガスを供給することにより、真空下において基板Gのプラズマ処理による温度上昇や温度変化を抑制することができるようになっている。
【0023】
この誘導結合プラズマ処理装置は、さらに制御部100を有している。制御部100は、コンピュータからなり、プラズマ処理装置の各構成部を制御するCPUからなる主制御部と、入力装置と、出力装置と、表示装置と、記憶装置とを有している。記憶装置には、プラズマ処理装置で実行される各種処理のパラメータが記憶されており、また、プラズマ処理装置で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体がセットされるようになっている。主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいてプラズマ処理装置に所定の処理を実行させるように制御する。
【0024】
<シャワーヘッド>
次に、一実施形態に係るシャワーヘッド2についてさらに詳細に説明する。
誘導結合プラズマは、高周波アンテナに高周波電流が流れることにより、その周囲に磁界が発生し、その磁界により誘起される誘導電界を利用して高周波放電を起こし、それにより生成するプラズマである。チャンバー4の天壁として1枚の金属窓を用いる場合、面内で周方向に周回されるように設けられた高周波アンテナ13では、渦電流および磁界が金属窓の裏面側、すなわちチャンバー4側に到達しないため、プラズマが生成されない。このため、本実施形態では、高周波アンテナ13に流れる高周波電流によって生じる磁界および渦電流がチャンバー4側に到達するように、金属窓として機能するシャワーヘッド2を、絶縁部材7で複数に分割された構造とする。
【0025】
シャワーヘッド2の分割部50は、ベース部材52の基材およびシャワープレート53の基材が非磁性の金属で構成され、少なくともベース部材52の基材は、例えばアルミニウム(またはアルミニウム含有合金)で構成されている。ベース部材52とシャワープレート53との間は、シール部材(
図1では図示せず)でシールされている。
【0026】
シャワーヘッド2の処理ガスに接触する部分、すなわち、分割部50のベース部材52のガス拡散空間51に面した部分、ならびにシャワープレート53のガス拡散空間51およびガス吐出孔54に面した部分は、ガス拡散空間51に導入される処理ガスと接触しても腐食されない程度の耐食性を備える耐食性金属材または耐食性皮膜で覆われている。また、シール部材は、処理ガスがベース部材52の基材およびシャワープレート53の基材に直接接触しないように設けられている。
以下にシャワーヘッド2(分割部50)のいくつかの具体例について説明する。
【0027】
[第1の例]
図2は、シャワーヘッド2(分割部50)の第1の例を示す断面図である。本例では、ベース部材52の基材61およびシャワープレート53の基材71はいずれもアルミニウム製である。アルミニウム材としては表面が陽極酸化処理したものを用いることが好ましい。
【0028】
ベース部材52は、ガス拡散空間51に面した部分に、基材61を覆うように設けられた、耐食性金属で構成されたカバー部材62を有している。カバー部材62は、ガス拡散空間51に沿った箱型形状をなしている。カバー部材62を構成する耐食性金属としては、ステンレス鋼やハステロイ等のニッケル基合金等、ニッケル含有金属が好適である。チタン等の他の耐食性金属を用いることもできる。
【0029】
シャワープレート53は、ガス吐出孔54に面した部分に設けられた複数のスリーブ72と、ガス拡散空間51に面した部分に設けられた耐食性皮膜73と、プラズマ生成空間Sに面した部分に設けられた耐プラズマ性皮膜74とを有している。
【0030】
スリーブ72は、基材71に嵌め込まれ、ガス吐出孔54を規定する。スリーブ72は、耐食性金属またはセラミックスからなる。耐食性金属としては、ステンレス鋼やハステロイ等のニッケル基合金等、ニッケル含有金属が好適である。チタン等の他の耐食性金属を用いることもできる。セラミックスとしては、アルミナ、石英等を用いることができる。
【0031】
ガス吐出孔54は、ガス拡散空間51側の大径部と、プラズマ生成空間S側の小径部とを有している。プラズマ生成空間S側を小径部にしたのは、プラズマ生成空間Sからプラズマがガス吐出孔54の奥に入り込むのを防止するためである。
【0032】
耐食性皮膜73は、処理ガスに対して耐食性を有する材料からなる。耐食性皮膜73としては、セラミックス溶射皮膜やテフロン(登録商標)コートが好ましく、アルミナ(Al2O3)溶射皮膜が特に好ましい。溶射皮膜としては、含浸材を含浸させたものがより好ましく、含浸材としてはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂等の合成樹脂が用いられる。
【0033】
耐プラズマ性皮膜74は、プラズマ空間Sに生成される処理ガスのプラズマに対する耐久性を有する材料からなる。耐プラズマ性皮膜74としては、セラミックス溶射皮膜が好ましく、耐プラズマ性の高いイットリア(Y2O3)溶射皮膜またはY-Al-Si-O系混合溶射皮膜(イットリア、アルミナ、およびシリカ(または窒化珪素)の混合溶射皮膜)等のイットリウム含有酸化物溶射皮膜がより好ましい。溶射皮膜としては、含浸材を含浸させたものがより好ましく、含浸材としてはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂等の合成樹脂が用いられる。
【0034】
ベース部材52の基材61とシャワープレート53の基材71とは、ガス拡散空間51の外側で接触するようにネジ止めにより固定されており、その接触部の内側には、両者の間をシールするようにシール部材81が設けられている。カバー部材62の端部にシャワープレート53の表面に接触しない状態で折り曲げられた折り曲げ部62aを有し、折り曲げ部62aは、リング状のシール部材81を押し付けるように接触した状態で設けられている。折り曲げ部62aの先端部は、ベース部材52の表面に接触している。折り曲げ部62aにより、シール部材81が保持される。また、シール部材81は耐食性皮膜73に接触している。これにより、腐食性の処理ガスが、基材61および基材71のガス拡散空間51の外側部分に到達することが阻止される。カバー部材62は、取り付け部材82により、基材61に取り付けられている。取り付け部材82とカバー部材62との間にはシール部材89が設けられ、腐食性の処理ガスが基材61へ到達することが阻止される。また、カバー部材62はシャワープレート53の表面に接触することなく隙間を設けた状態で折り曲げられている。このため、シャワーヘッド2にループ電流が誘起された際に、カバー部材62と基材71との間に局所放電が発生することを抑制できる。さらに、熱膨張差等によりカバー部材62とシャワープレート53との擦れに伴うパーティクルの発生が抑制される。
【0035】
このように、比較的簡易な構成で、ガス拡散空間51およびガス吐出孔54に面している接ガス部分が全て耐食性材料で覆うことができ、既存のシャワーヘッド2の構造を大きく変化させずに、腐食性の処理ガスに対するシャワーヘッド2の腐食を有効に抑制することができる。また、シール部材81によりシールされていることにより、腐食性の処理ガスがベース部材52の基材61およびシャワープレート53の基材71に達することをより効果的に抑制することができる。さらに、シール部材81は腐食性の処理ガスに対して耐食性のあるフッ素ゴム等が用いられているので、シール部材81の腐食も抑制される。
【0036】
[第2の例]
図3は、シャワーヘッド2(分割部50)の第2の例を示す断面図である。本例においては、基本構造は第1の例と同じである。本例では、シール部材81がカバー部材62ではなくリング状をなす耐食性固定部材83で保持・固定されている点が第1の例とは異なっている。耐食性固定部材83はPTFE(polytetrafluoroethylene)のような絶縁性の耐食性樹脂からなり、固定部材84で固定されている。固定部材84は、カバー部材62とともに取り付け部材82によって基材61に取り付けられている。取り付け部材82とカバー部材62との間にはシール部材89が設けられ、腐食性の処理ガスが基材61へ到達することが阻止される。また、本例でもシール部材81は、カバー部材62および耐食性皮膜73に接触している。このため、本例も第1の例と同様の効果を得ることができる。また、ベース部材52とシャワープレート53の間に設けたシール部材81を絶縁性の耐食性樹脂からなる耐食性固定部材83にて保持しているので、耐食性固定部材83とシャワープレート53との間で放電が発生することを防ぐことができる。
【0037】
[第3の例]
図4は、シャワーヘッド2(分割部50)の第3の例を示す断面図である。本例では、シャワープレート53は、第1の例と同様、基材71と、複数のスリーブ72と、耐食性皮膜73と、耐プラズマ性皮膜74とを有している。
【0038】
一方、ベース部材52は、基材61のガス拡散空間51上面側の面を覆うように形成された耐食性皮膜63と、基材61のガス拡散空間51側面側の面を覆うように設けられた、耐食性金属からなるリング状部材64を有している。
【0039】
耐食性皮膜63としては、上述の耐食性皮膜73と同様、セラミックス溶射皮膜やテフロン(登録商標)コートが好ましく、アルミナ溶射皮膜が特に好ましい。溶射皮膜としては、含浸材を含浸させたものがより好ましく、含浸材としてはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂等の合成樹脂が用いられる。
【0040】
リング状部材64は、耐食性金属からなる。耐食性金属としては、ステンレス鋼やハステロイ等のニッケル基合金等、ニッケル含有金属が好適である。チタン等の他の耐食性金属を用いることもできる。
【0041】
リング状部材64の上面および下面にはリング状の溝が形成されており、これらの溝にはそれぞれシール部材85および86が嵌め込まれている。シール部材85および86は、それぞれベース部材52の耐食性皮膜63が形成された面、およびシャワープレート53の耐食性皮膜73が形成された面に密着されるようになっている。ベース部材52の基材61とシャワープレート53の基材71とはネジ止めにより固定されており、ベース部材52とリング状部材64との間、およびリング状部材64とシャワープレート53との間は、シール部材85および86によりシールされる。
【0042】
このように、本例においても、比較的簡易な構成で、ガス拡散空間51およびガス吐出孔54に面している接ガス部分が全て耐食性材料で覆うことができ、既存のシャワーヘッド2の構造を大きく変化させずに、腐食性の処理ガスに対するシャワーヘッド2の腐食を有効に抑制することができる。また、シール部材85および86は、耐食性金属で形成されたリング状部材64、耐食性皮膜63、73に密着しているので、リング状部材64との隙間から基材61および基材71に腐食性の処理ガスが到達することも阻止される。また、シール部材85および86は腐食性の処理ガスに対して耐食性のあるフッ素ゴム等が用いられているので、処理ガスによる腐食も抑制される。
【0043】
[第4の例]
図5は、シャワーヘッド2(分割部50)の第4の例を示す断面図である。本例においては、基本構造は第3の例と同じであるが、基材61のガス拡散空間51上面側の面に、第3の例の耐食性皮膜63の代わりに、カバー部材62と同様の、耐食性金属からなるカバー部材65を設けた点が異なる。カバー部材65は、取り付け部材82で基材61に取り付けられている。取り付け部材82とカバー部材65との間にはシール部材89が設けられ、腐食性の処理ガスが基材61へ到達することが阻止される。
【0044】
本例では、第3の例とほぼ同様に、ガス拡散空間51およびガス吐出孔54に面している接ガス部分が全て耐食性材料で覆われており、第3の例と同様の効果を得ることができる。
【0045】
[第5の例]
図6は、シャワーヘッド2(分割部50)の第5の例を示す断面図である。本例においては、第4の例のカバー部材65とリング状部材64とを一体にした一体部材66を設けたものであり、他は第4の例と同様である。一体部材66は、
図4の例と同様、取り付け部材82で基材61に取り付けられている。取り付け部材82と一体部材66との間にはシール部材89が設けられ、腐食性の処理ガスが基材61へ到達することが阻止される。
【0046】
したがって、第4の例と同様の効果が得られる他、第4の例で存在する、カバー部材65とリング状部材64との隙間から処理ガスがベース部材52の基材61側に漏出するおそれをなくすことができる。
【0047】
[第6の例]
図7は、シャワーヘッド2(分割部50)の第6の例を示す断面図である。本例では、シャワープレート53は、第1の例と同様、基材71と、複数のスリーブ72と、耐食性皮膜73と、耐プラズマ性皮膜74とを有している。
【0048】
一方、ベース部材52は、基材61のガス拡散空間51に面した部分の全面に耐食性皮膜67を有している。耐食性皮膜67としては、上述の耐食性皮膜73と同様、セラミックス溶射皮膜やテフロン(登録商標)コートが好ましく、アルミナ溶射皮膜が特に好ましい。溶射皮膜としては、含浸材を含浸させたものがより好ましく、含浸材としてはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂等の合成樹脂が用いられる。
【0049】
また、ベース部材52の基材61の下面のガス拡散空間51の外側部分には、リング状溝52aが形成されている。耐食性皮膜67は、基材61の下面に沿ってガス拡散空間51の外方に延び、リング状溝52a内にも形成されている。また、シャワープレート53の耐食性皮膜73は、基材71の上面に沿ってガス拡散空間の外方のリング状溝52aに対応する部分まで延びている。
【0050】
ベース部材52の基材61とシャワープレート53の基材71とは、リング状溝52a内にリング状のシール部材87が挿入された状態でねじ止めされる。シール部材87として腐食性の処理ガスに対して耐食性のあるフッ素ゴム等を用いることができる。
【0051】
このように、本例においても、比較的簡易な構成で、ガス拡散空間51およびガス吐出孔54に面している接ガス部分が全て耐食性材料で覆うことができ、既存のシャワーヘッド2の構造を大きく変化させずに、腐食性の処理ガスに対するシャワーヘッド2の腐食を有効に抑制することができる。また、ベース部材52とシャワープレート53の継ぎ目の部分は、耐食性皮膜67および73の間にシール部材87が介在されているので、腐食性の処理ガスによる腐食をより効果的に抑制することができる。
【0052】
[第7の例]
図8は、シャワーヘッド2(分割部50)の第7の例を示す断面図である。本例では、ベース部材52は、第6の例と同様、基材61のガス拡散空間51に面した部分の全面に耐食性皮膜67を有している。耐食性皮膜67は、基材61の下面に沿ってガス拡散空間51の外方に延びている。ただし、ガス拡散空間51の周縁部に傾斜が設けられている点、およびリング状の溝が形成されていない点が第6の例とは異なっている。
【0053】
一方、シャワープレート53は、耐食性金属からなる基材75を有し、基材75のプラズマ生成空間Sに面した部分には、耐プラズマ性皮膜74が形成されている。ガス吐出孔54は、基材75に直接形成されている。基材75は、ガス拡散空間51およびガス吐出孔54に露出している。基材75を構成する耐食性金属としては、ステンレス鋼やハステロイ等のニッケル基合金等、ニッケル含有金属が好適である。チタン等の他の耐食性金属を用いることもできる。シャワープレート53の上面のガス拡散空間51よりも外側部分には、リング状溝53aが形成されている。なお、ベース部材52の耐食性皮膜67は、リング状溝53aよりも外側へ延びている。
【0054】
ベース部材52の基材61とシャワープレート53の基材75とは、リング状溝53a内にリング状のシール部材88が挿入された状態でねじ止めされる。シール部材88として腐食性の処理ガスに対して耐食性のあるフッ素ゴム等を用いることができる。
【0055】
ベース部材52は体積が大きいため、重量制限等によりステンレス鋼等の耐食性金属を用いることが困難であるが、シャワープレート53は体積が小さいため、本例のように、耐プラズマ性皮膜74を除く部分全体をステンレス鋼等の耐食性金属で構成することが可能である。
【0056】
このように、本例においても、比較的簡易な構成で、ガス拡散空間51およびガス吐出孔54に面している接ガス部分が全て耐食性材料で覆うことができ、既存のシャワーヘッド2の構造を大きく変化させずに、腐食性の処理ガスに対するシャワーヘッド2の腐食を有効に抑制することができる。また、ベース部材52とシャワープレート53の継ぎ目の部分は、耐食性皮膜67および耐食性金属からなる基材75によりシールされており、また、これらの間にシール部材88が介在されているので、腐食性の処理ガスによる腐食をより効果的に抑制することができる。
【0057】
また、ガス拡散空間51の周縁部に傾斜が設けられることにより、ガス拡散室51の側面がゆるやか(断面で見た際に鈍角)になるので、例えば溶射により耐食性皮膜67を形成する際に、溶射材粒子の付着密度が高い緻密な膜を形成することができる。
【0058】
[第8の例]
図9は、シャワーヘッド2(分割部50)の第8の例を示す断面図である。本例においては、基本構造は第7の例と同じである。本例では、ベース部材52において、基材61のガス拡散空間51に面した部分の全面に、耐食性皮膜67の代わりに、耐食性金属からなるカバー部材68を設けた点のみが第7の例と異なっている。耐食性金属としては、ステンレス鋼やハステロイ等のニッケル基合金等、ニッケル含有金属が好適である。チタン等の他の耐食性金属を用いることもできる。なお、カバー部材68は、取り付け部材82により基材61に取り付けられている。取り付け部材82とカバー部材68との間にはシール部材89が設けられ、腐食性の処理ガスが基材61へ到達することが阻止される。
【0059】
本例においては、第7の例の耐食性皮膜67が耐食性金属からなるカバー部材68に置き換わっただけであるから、第7の例と同様の効果を得ることができる。
【0060】
<プラズマ処理装置の動作>
次に、以上のように構成される誘導結合プラズマ処理装置を用いて基板Gに対してプラズマ処理、例えばプラズマエッチング処理を施す際の処理動作について説明する。
【0061】
まず、ゲートバルブ27を開にした状態で搬入出口27aから搬送機構(図示せず)により所定の膜が形成された基板Gをチャンバー4内に搬入し、載置台23の載置面に載置する。次いで、静電チャック(図示せず)により基板Gを載置台23上に固定する。そして、排気装置30によりチャンバー4内を真空排気しつつ、圧力制御バルブ(図示せず)により、チャンバー4内を例えば0.66~26.6Pa程度の圧力雰囲気に維持する。この状態で、処理ガス供給機構20からガス供給管21を介して処理ガスを金属窓の機能を有するシャワーヘッド2へ供給し、シャワーヘッド2からチャンバー4内に処理ガスをシャワー状に吐出させる。
【0062】
また、このとき基板Gの裏面側の冷却空間には、基板Gの温度上昇や温度変化を回避するために、Heガス流路41を介して、熱伝達用ガスとしてHeガスを供給する。
【0063】
次いで、第1の高周波電源18から例えば1MHz以上27MHz以下の高周波を高周波アンテナ13に印加し、これにより金属窓として機能するシャワーヘッド2を介してチャンバー4内に均一な誘導電界を生成する。このようにして生成された誘導電界により、チャンバー4内で処理ガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。このプラズマにより、基板Gに対してプラズマエッチング処理が行われる。
【0064】
処理ガスとしては、従来からフッ素系や塩素系等の腐食性ガスが用いられているが、最近では処理装置の高温化等により、処理ガスの腐食性がより高まっている。このような高腐食性の処理ガスを用いる場合には、特にプラズマ空間Sよりも上流部分のプラズマ化する前の段階の接ガス部分についても十分な腐食対策を行う必要性があることが判明した。
【0065】
特許文献1には、処理ガスが供給されるシャワーヘッド2内部における腐食防止対策については記載されていない。
【0066】
そこで、本実施形態では、シャワーヘッド2(分割部50)の処理ガスに接触する部分、すなわち、ベース部材52のガス拡散空間51に面した部分、ならびにシャワープレート53のガス拡散空間51およびガス吐出孔54に面した部分を、耐食性金属材または耐食性皮膜で覆う。これにより、比較的簡易な構成で、金属製のシャワーヘッドの接ガス部分の腐食を抑制することができる。
【0067】
具体的には、上述した第1~第8の例に示すように、ベース部材52のガス拡散空間51に面した部分に、ステンレス鋼等の耐食性金属からなるカバー部材62、セラミックス溶射皮膜のような耐食性皮膜63,67、耐食性金属からなるリング状部材64を用いる。また、シャワープレート53のガス拡散空間51に面した部分に耐食性皮膜73を設け、ガス吐出孔54に面した部分に耐食性金属またはセラミックスからなるスリーブ72を設けるか、また、シャワープレート53の基材71自体を耐食性金属で構成する。これにより、シャワーヘッド2の高腐食性の処理ガスによる腐食を有効に抑制することができる。
【0068】
また、ベース部材52の基材61およびシャワープレート53の基材71との間は、耐食性金属や耐食性皮膜でシールされ、さらにシール部材81,85,86,87,88でシールされているので、処理ガスが腐食の可能性がある金属部へ到達することが阻止される。
【0069】
耐食性皮膜としては、セラミックス溶射皮膜やテフロン(登録商標)コートが好ましい。特に、Cl2ガス等のハロゲン系の高腐食性の処理ガスを用いる場合には、アルミナ溶射皮膜が好ましい。また、溶射皮膜は含浸材が含浸されたものが好ましい。含浸材を含浸させることにより、溶射皮膜の気孔が封孔され、高腐食性の処理ガスによる腐食をより効果的に抑制することができる。含浸材としてはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂等の合成樹脂が用いられる。これらの樹脂は、主剤と硬化剤の材料を選択することにより、充填性や耐食性を良好にすることができ、封孔による腐食抑制効果をより高めることができる。
【0070】
また、シャワープレート53のプラズマ空間Sに接する面には、処理ガスのプラズマに対して耐プラズマ性を有する耐プラズマ性皮膜74で覆われているので、処理ガスのプラズマに対する耐性も高い。耐プラズマ性皮膜74として、セラミックス溶射皮膜、特に、イットリア(Y2O3)溶射皮膜またはY-Al-Si-O系混合溶射皮膜(イットリア、アルミナ、およびシリカ(または窒化珪素)の混合溶射皮膜)等のイットリウム含有酸化物溶射皮膜がより好ましく、より高い耐プラズマ性を得ることができる。また、一層高い耐プラズマ性を得る観点から、溶射皮膜は含浸材を含浸させて封孔したものがより好ましい。この場合にも、含浸材としては、充填性や耐プラズマ性を良好にすることができるアクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂等の合成樹脂が用いられる。
<他の適用>
【0071】
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0072】
例えば、上記実施形態では、誘導結合プラズマ処理装置を用いた例を示したが、これに限らず、基材が金属のシャワーヘッドであれば、容量結合プラズマ処理装置等の他のプラズマ処理装置であってもよく、プラズマを用いないガス処理であってもよい。また、ベース部材の基材およびシャワープレートの基材を非磁性の金属で構成したが、誘導結合プラズマ処理装置以外であれば、非磁性金属に限らない。
【0073】
また、上記実施形態では、エッチング装置を例にとって説明したが、それに限らず、アッシングやCVD等の腐食性の高いガスを用いるガス処理装置であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1;本体容器
2;シャワーヘッド
3;アンテナ容器
4;チャンバー
5;支持棚
6;支持梁
7;絶縁部材
13;高周波アンテナ
18;第1の高周波電源
20;処理ガス供給機構
50;分割部
51;ガス拡散空間
52;ベース部材
53;シャワープレート
54;ガス吐出孔
61;基材
62,65,68;カバー部材
66;一体部材
63,67;耐食性皮膜
64;リング状部材
71,75;基材
72;スリーブ
73;耐食性皮膜
74;耐プラズマ性皮膜
81,85,86,87,88,89;シール部材
G;基板