(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】シタラビンを含む抗腫瘍剤、シタラビンと併用される抗腫瘍効果増強剤、抗腫瘍用キット、およびシタラビンと併用される抗腫瘍剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7068 20060101AFI20220819BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220819BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220819BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20220819BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/4196
A61K31/455
(21)【出願番号】P 2020549428
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038117
(87)【国際公開番号】W WO2020067412
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018184218
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】北澤 諭
(72)【発明者】
【氏名】石井 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 耕一
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/136741(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/117372(WO,A1)
【文献】特開2018-150292(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037022(WO,A1)
【文献】BROWN, Kristin K. et al.,Adaptive Reprogramming of De Novo Pyrimidine Synthesis Is a Metabolic Vulnerability in Triple-Negati,CANCER DISCOVERY,2017年,Vol.7,pp.391-399,ISSN:2159-8274, 特に、アブストラクト、
図3、4、第393頁右欄第4行~第396頁右欄第2行
【文献】WU, Dang et al.,Pharmacological inhibition of dihydroorotate dehydrogenase induces apoptosis and differentiation in,Haematologica,2018年06月07日,Vol.103(9),pp.1472-1483,ISSN:0390-6078, 特に、アブストラクト、
図3、4
【文献】JANZER, Andreas et al.,Abstract DDT02-04:BAY 2402234: A novel, selective dihydroorotate dehydrogenase(DHODH) inhibitor for,Cancer Res.,2018年07月,Vol.78(13 Suppl),DOI:10.1158/1538-7445.AM2018-DDT02-04, ISSN:1538-7445, 特に、アブストラクト
【文献】HEROLD, Nikolas et al.,SAMHD1 protects cancer cells from various nucleoside-based antimetabolites,CELL CYCLE,2017年,Vol.16(11),pp.1029-1038,ISSN:1538-4101
【文献】KODIGEPALLI, Karthik M. et al.,SAMHD1 modulates in vitro proliferation of acute myeloid leukemia-derived THP-1 cells through the PI,CELL CYCLE,2018年07月18日,Vol.17(9),pp.1124-1137,ISSN:1538-4101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シタラビンとジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物とを含む抗腫瘍剤
であって、前記ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物が、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸(FLA3527)、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)およびBAY2402234(N-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-4-[4-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-5-フルオロ-2-{[(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル]オキシ}ベンズアミド)から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩であって、前記腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)または慢性骨髄性白血病(CML)である、抗腫瘍剤。
【請求項2】
前記シタラビンの一日投与量が、1g/m
2~10g/m
2である、請求項
1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項3】
シタラビンと併用される、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を含む抗腫瘍効果増強剤
であって、前記ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物が、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸(FLA3527)、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)およびBAY2402234(N-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-4-[4-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-5-フルオロ-2-{[(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル]オキシ}ベンズアミド)から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩であって、前記腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)または慢性骨髄性白血病(CML)である、抗腫瘍効果増強剤。
【請求項4】
シタラビンを含む製剤と、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を含む製剤とを含む抗腫瘍用キット
であって、前記ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物が、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸(FLA3527)、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)およびBAY2402234(N-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-4-[4-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-5-フルオロ-2-{[(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル]オキシ}ベンズアミド)から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩であって、前記腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)または慢性骨髄性白血病(CML)である、抗腫瘍用キット。
【請求項5】
シタラビンと併用される、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を含む抗腫瘍剤
であって、前記ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物が、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸(FLA3527)、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)およびBAY2402234(N-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-4-[4-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-5-フルオロ-2-{[(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル]オキシ}ベンズアミド)から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩であって、前記腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)または慢性骨髄性白血病(CML)である、抗腫瘍剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シタラビン(以下、Ara-Cともいう)とジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物(以下、DHODH阻害化合物ともいう)とを含む組み合わせ医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
シタラビンは、主に急性骨髄性白血病(AML)の治療に使用される抗腫瘍剤であり、代謝拮抗薬でもある。シタラビンは、長きにわたり標準治療方法として使用されているが、より安全でより治療効果が期待できる新たな組み合わせ医薬や治療方法が求められている。
【0003】
一方、DHODH阻害化合物は、免疫抑制作用と抗増殖作用を有することが知られている。そのため、DHODH阻害化合物は、慢性関節リウマチのような自己免疫疾患、炎症性疾患および増殖性疾患の処置剤として使用が期待されている。
【0004】
これまでにシタラビンとMDM2-p53相互作用の阻害化合物とを含む組み合わせ医薬やDHODH阻害化合物とメトトレキサートとを含む組み合わせ医薬などが文献に記載されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-539160号公報
【文献】特表2012-515737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、抗腫瘍剤を単独で投与するのではなく、併用療法が広く行われている。しかしながら、いかなる薬剤を組み合わせて使用した場合に、それらの抗腫瘍効果が増強されるのか、あるいは効果が相殺されるのかについては予測することは非常に困難である。
本発明の課題は、新たな抗腫瘍剤として、シタラビンとDHODH阻害化合物とを含む組み合わせ医薬を提供することにある。本発明の別の課題は、シタラビンと併用される抗腫瘍効果増強剤、抗腫瘍用キット、およびシタラビンと併用される抗腫瘍剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シタラビンとDHODH阻害化合物とを併用することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は下記を提供する。
(1)シタラビンとジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物とを含む抗腫瘍剤。
(2)前記腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、急性未分化白血病(AUL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、前リンパ球性白血病(PML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、成人T細胞(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)または成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)である、(1)に記載の抗腫瘍剤。
(3)前記腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)または慢性骨髄性白血病(CML)である、(1)または(2)に記載の抗腫瘍剤。
(4)前記ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物が、ブレキナー(Brequinar)、ビドフルジムス(Vidofludimus)、テリフルノミド(Teriflunomide)、レフルノミド(Leflunomide)、N-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-4-[4-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-5-フルオロ-2-{[(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル]オキシ}ベンズアミド、(S)-4-クロロフェニル 6-クロロ-1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール-2(9H)-カルボキシレートおよび一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩である、(1)~(3)のいずれか一に記載の抗腫瘍剤;
【化1】
(式中、
G
1は、CHまたは窒素原子であり;
R
1は、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいC
1-6アルキル基または置換されてもよいC
3-8シクロアルキル基であり;
R
2は、置換されてもよいアリール基または置換されてもよい二環式複素環基である)。
(5)前記ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物が、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)および5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩である、(1)~(3)のいずれか一に記載の抗腫瘍剤。
(6)前記シタラビンの一日投与量が、1g/m
2~10g/m
2である、(1)~(5)のいずれか一に記載の抗腫瘍剤。
(7)シタラビンと併用される、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を含む抗腫瘍効果増強剤。
(8)シタラビンを含む製剤と、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を含む製剤とを含む抗腫瘍用キット。
(9)シタラビンと併用される、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を含む抗腫瘍剤。
【0009】
(A)シタラビンとジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物とを対象に投与することを含む、腫瘍を処置する方法。
(B)腫瘍の処置において使用するための、シタラビンとジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物との組み合わせ。
(C)抗腫瘍剤の製造のための、シタラビンとジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物との使用。
(D)シタラビンと併用して、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を、対象に投与することを含む、抗腫瘍効果を増強する方法。
(E)抗腫瘍効果を増強する処置において、シタラビンと併用して使用するための、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物。
(F)シタラビンと併用される抗腫瘍効果増強剤の製造のための、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物の使用。
(G)シタラビンと併用して、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物を、対象に投与することを含む、腫瘍を処置する方法。
(H)腫瘍の処置において、シタラビンと併用して使用するための、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物。
(I)シタラビンと併用される抗腫瘍剤の製造のための、ジヒドロオロト酸脱水素酵素阻害化合物の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシタラビンとDHODH阻害化合物とを含む組み合わせ医薬は、新たな抗腫瘍剤であり、優れた抗腫瘍効果を有する。本発明のシタラビンと併用される抗腫瘍効果増強剤、抗腫瘍用キット、およびシタラビンと併用される抗腫瘍剤によれば、優れた抗腫瘍効果を発揮できる。
また、本発明のシタラビンとDHODH阻害化合物とを含む組み合わせ医薬は、シタラビンの活性体であるAra-CTPを不活性体であるAra-Cに変換する酵素(例えば、SAMHD1)発現が高いがん細胞において、特に優れた抗腫瘍効果を発揮できる。例えば、SAMHD1発現が高いがん細胞を有する患者に対し、本発明のシタラビンとDHODH阻害化合物とを含む組み合わせ医薬は、特に優れた抗腫瘍効果を発揮できる。即ち、本発明のシタラビンとDHODH阻害化合物との併用において、SAMHD1は、バイオマーカーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各DHODH阻害化合物(FLA3527,ASLAN003)の酵素反応阻害作用の結果を示す。
【
図2】ヒト骨髄性白血病細胞株THP1における、シタラビンとDHODH阻害化合物(FLA3527,ASLAN003)との組み合わせによる増殖阻害作用の結果を示す。
【
図3】ヒト末梢血単核球PBMCにおける、シタラビンとDHODH阻害化合物(FLA3527)との組み合わせによる増殖阻害作用の結果を示す。
【
図4】DHODH阻害化合物(FLA3527)の処理による、CTP濃度とAra-CTP濃度の変化を示す。
【
図5】ヒト骨髄性白血病細胞株THP1における、シタラビンとDHODH阻害化合物(BAY2402234)との組み合わせによる増殖阻害作用の結果を示す。
【
図6】AML細胞間のAra-C GI50とSAMHD1のmRNA levelとの相関関係の結果を示す。
【
図7】ヒト骨髄性白血病細胞株MV4-11における、シタラビンとDHODH阻害化合物(FLA3527)との組み合わせによる増殖阻害作用の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明に使用される%は、特に断らない限り、質量百分率を意味する。本発明において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。さらに本発明において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明に使用される「g/m2」は、体表面積当たりの投与量を意味する。
【0013】
予防とは、発症の阻害、発症リスクの低減または発症の遅延などを意味する。
治療とは、対象となる疾患または状態の改善または進行の抑制などを意味する。
処置とは、各種疾患に対する予防または治療などを意味する。
【0014】
腫瘍とは、良性腫瘍または悪性腫瘍を意味する。
良性腫瘍とは、腫瘍細胞及びその配列がその由来する正常細胞に近い形態をとり、浸潤性または転移性のない腫瘍を意味する。
悪性腫瘍とは、腫瘍細胞の形態やその配列がその由来する正常細胞と異なっており、浸潤性または転移性を示す腫瘍を意味する。
【0015】
本発明の抗腫瘍剤は、好ましくは抗悪性腫瘍剤であり、血液がんの処置剤として使用することが好ましい。
【0016】
血液がんとしては、例えば、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、急性未分化白血病(AUL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、前リンパ球性白血病(PML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、成人T細胞(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)が挙げられる。本発明の抗腫瘍剤は、シタラビンの適応疾患の処置剤として使用することが好ましく、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)または慢性骨髄性白血病(CML)の処置剤として使用することがより好ましく、急性骨髄性白血病(AML)の処置剤として使用することが更に好ましい。
【0017】
本発明の組み合わせ医薬においては、シタラビンとDHODH阻害化合物とは、同一の医薬組成物として提供されてもよいし、別個の医薬組成物として提供されてもよい。同一の医薬組成物として提供されるとは、シタラビンとDHODH阻害化合物とが、一つの医薬組成物に含まれている形態において提供されることを言う。
本発明においては、シタラビンとDHODH阻害化合物とは、シタラビンを含む製剤と、DHODH阻害化合物を含む製剤とを含む抗腫瘍用キットとして提供されてもよい。
【0018】
本発明の優れた抗腫瘍効果について、推定される作用機序を以下に説明する。
【0019】
ピリミジンヌクレオチドの合成経路には新生経路(デノボ経路)と再利用経路(サルベージ経路)がある。一般的に増殖の盛んな癌細胞はサルベージ経路のみならず、デノボ経路を用いてDNA、RNA合成の基質となるdCTP、dTTP、CTP、UTPを合成することが知られている。デノボ経路で働くDHODH阻害化合物でデノボ経路によるピリミジン合成を阻害することで、ピリミジンヌクレオチドを枯渇させると、フィードバック効果によりサルベージ経路が活性化されることが想定される。その結果、サルベージ経路により細胞内に取り込まれるシタラビン(Ara-C)は、その活性代謝物Ara-CTPへの変換効率が増加すると考えられ、シタラビン耐性白血病細胞のシタラビン感受性を回復することにおいて、DHODH阻害化合物とシタラビンの併用療法が有益であることが想定され、本研究を行った。
【0020】
シタラビン非感受性のTHP1細胞において、DHODH阻害化合物とシタラビンとを併用することで、THP1細胞のシタラビン感受性は顕著に増加した。シナジー効果をCombination Index(CI:1以下でシナジーを示す。)により計算すると、強いシナジー(例えば、0.2~0.4)を示すことが認められた。一方で、正常のヒト末梢血単核球PBMCでは併用効果は全く認められなかった。
細胞内のCTP濃度を調べると、DHODH阻害化合物の処理により、CTPの顕著な減少が認められた。一方、細胞内のAra-CTP濃度を調べると、Ara-C単剤と比べて、DHODH阻害化合物の処理によりAra-CTP濃度は数倍程度上昇した。以上より、DHODH阻害化合物はデノボピリミジン合成を抑制することで、シタラビン耐性白血病細胞内でAra-CからAra-CTPへの変換を増加させ(サルベージ経路を活性化させ)、Ara-C感受性を亢進させることに有用であると考えられる。DHODH阻害化合物とシタラビンの併用療法は正常細胞に大きな影響を与えず、癌細胞のシタラビン感受性を回復させることに有益であることが示唆された。
【0021】
[1]シタラビン
シタラビンの一日投与量は、好ましくは1g/m2~10g/m2であり、より好ましくは2g/m2~6g/m2であり、さらに好ましくは3g/m2~5g/m2である。
【0022】
シタラビンは、5日間以上投与することが好ましく、6日間以上投与することが好ましい。
シタラビンは、5~6日間の投与期間とその後の休薬期間とを1サイクルとして、複数回のサイクルで投与することが好ましい。休薬期間は、7日間~28日間であればよく、14日間~28日間でもよく、18日間~24日間でもよい。
【0023】
複数回のサイクルとしては、好ましくは、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも12回、または少なくとも15回である。
【0024】
シタラビンの投与の一例としては、1回2g/m2を5%ブドウ糖液あるいは生理食塩液に混合して300~500mLとし、12時間毎に3時間かけて点滴で最大6日間連日静脈内投与することができる。
【0025】
シタラビンは、公知の製造法等を用いて製造または入手することができる。
【0026】
[2]DHODH阻害化合物
DHODH阻害化合物としては、たとえば、ブレキナー(Brequinar)、ビドフルジムス(Vidofludimus)、テリフルノミド(Teriflunomide)、レフルノミド(Leflunomide)、N-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-4-[4-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-5-フルオロ-2-{[(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル]オキシ}ベンズアミド(国際公開第2018/077923のExample 121に記載の化合物であり、BAY2402234ともいう)、(S)-4-クロロフェニル 6-クロロ-1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール-2(9H)-カルボキシレート(国際公開第2010/138644の式(X)に記載の化合物であり、PTC299ともいう)および一般式(1)で表される化合物またはその塩が挙げられる。
【0027】
【化2】
(式中、
G
1は、CHまたは窒素原子であり;
R
1は、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいC
1-6アルキル基または置換されてもよいC
3-8シクロアルキル基であり;
R
2は、置換されてもよいアリール基または置換されてもよい二環式複素環基である)。
【0028】
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
C3-6アルキル基とは、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分枝鎖状のC3-6アルキル基を意味する。
C1-6アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分岐鎖錠のC1-6アルキル基を意味する。
C2-6アルケニル基、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、1,3-ブタジエニル、ペンテニルおよびヘキセニル基などの直鎖状または分枝鎖状のC2-6アルケニル基を意味する。
C3-8シクロアルキル基とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基などのC3-8シクロアルキル基を意味する。
C3-8シクロアルケニル基とは、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘキサンジエニル基などのC3-8シクロアルケニル基を意味する。
C3-8シクロアルキルC1-6アルキル基とは、シクロプロピルメチル、2-(シクロプロピル)エチル、シクロブチルメチル、2-(シクロブチル)エチル、シクロペンチルメチルおよびシクロヘキシルメチル基などのC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基を意味する。
【0029】
アリール基とは、フェニル基、二環式縮合炭化水素環基または三環式縮合炭化水素環基を意味する。
アルC1-6アルキル基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはイソプロポキシ基を意味する。
アシル基とは、ホルミル基、スクシニル基、グルタリル基、マレオイル基、フタロイル基、C2-12アルカノイル基、アロイル基、複素環カルボニル基または(α-置換)アミノアセチル基を意味する。
【0030】
C2-12アルカノイル基とは、アセチル、プロピオニル、バレリル、イソバレリルおよびピバロイル基などの直鎖状または分枝鎖状のC2-12アルカノイル基を意味する。
アロイル基とは、ベンゾイルまたはナフトイル基を意味する。
複素環カルボニル基とは、ニコチノイル、テノイル、ピロリジノカルボニルまたはフロイル基を意味する。
(α-置換)アミノアセチル基とは、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリンおよびヒドロキシプロリンなどのアミノ酸が挙げられる。)から誘導されるN末端が保護されてもよい(α-置換)アミノアセチル基を意味する。
【0031】
二環式縮合炭化水素環基とは、ペンタレニル、インダニル、インデニルおよびナフチル基などの一部分が水素化されてもよい2環の縮合炭化水素環を意味する。
三環式縮合炭化水素環基とは、ビフェニレニル、アセナフテニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニルおよびアントラセニル基などの一部分が水素化されてもよい3環の縮合炭化水素環を意味する。
【0032】
複素環基とは、単環の複素環基、二環式複素環基または三環式複素環基を意味する。
単環の複素環基とは、単環の含窒素複素環基、単環の含酸素複素環基、単環の含硫黄複素環基、単環の含窒素・酸素複素環基または単環の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
単環の含酸素複素環基とは、テトラヒドロフラニル、フラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニルまたはピラニル基を意味する。
単環の含硫黄複素環基とは、チエニル基を意味する。
単環の含窒素・酸素複素環基とは、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリルおよびモルホリニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および酸素原子のみを含む単環の含窒素・酸素複素環基を意味する。
単環の含窒素・硫黄複素環基とは、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チオモルホリニル、1-オキシドチオモルホリニルおよび1,1-ジオキシドチオモルホリニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および硫黄原子のみを含む単環の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
【0033】
二環式複素環基とは、二環式の含窒素複素環基、二環式の含酸素複素環基、二環式の含硫黄複素環基、二環式の含窒素・酸素複素環基または二環式の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
【0034】
二環式含窒素複素環基とは、インドリニル、インドリル、イソインドリニル、イソインドリル、ピロロピリジニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロキナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ジヒドロキノキサリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニルおよびキヌクリジニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子のみを含む二環式の含窒素複素環基を意味する。
二環式含酸素複素環基とは、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル、イソクロマニル、1,3-ベンゾジオキソリル、1,3-ベンゾジオキサニルおよび1,4-ベンゾジオキサニル基などの該環を形成する異項原子として酸素原子のみを含む二環式の含酸素複素環基を意味する。
二環式含硫黄複素環基とは、2,3-ジヒドロベンゾチエニルおよびベンゾチエニル基などの該環を形成する異項原子として硫黄原子のみを含む二環式の含硫黄複素環基を意味する。
二環式含窒素・酸素複素環基とは、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾモルホリニル、ジヒドロピラノピリジル、ジヒドロジオキシノピリジルおよびジヒドロピリドオキサジニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および酸素原子のみを含む二環式の含窒素・酸素複素環基を意味する。
二環式含窒素・硫黄複素環基とは、ジヒドロベンゾチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリルおよびベンゾチアジアゾリル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および硫黄原子を含む二環式の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
【0035】
複素環C1-6アルキル基とは、アゼチジニルメチル、アゼチジニルエチル、ピロリジニルメチル、ピロリジニルエチル、ピペリジルメチル、ピペリジルエチル、ピリジルメチル、ピリジルエチル、イミダゾリルメチル、イミダゾリルエチル、ピペラジニルメチルおよびピペラジニルエチル基などの単環の含窒素複素環C1-6アルキル基;テトラヒドロフラニルメチル、テトラヒドロピラニルメチルなどの単環の含酸素複素環C1-6アルキル基;チエニルメチル基などの単環の含硫黄複素環C1-6アルキル基;オキサゾリルメチル、オキサゾリルエチル、イソオキサゾリルメチル、イソオキサゾリルエチル、モルホリニルメチルおよびモルホリニルエチル基などの単環の含窒素・酸素複素環C1-6アルキル基;チアゾリルメチル、チアゾリルエチル、イソチアゾリルメチルおよびイソチアゾリルエチル基などの単環の含窒素・硫黄複素環C1-6アルキル基;インドリルメチル、インドリルエチル、ベンズイミダゾリルメチル、ベンズイミダゾリルエチル、キノリルメチルおよびキノリルエチル基などの二環式含窒素複素環C1-6アルキル基;ベンゾフラニルメチル、イソベンゾフラニルメチルおよびクロマニルメチル基などの二環式の含酸素複素環C1-6アルキル基;ベンゾチエニルメチル基などの二環式含硫黄複素環C1-6アルキル基;ベンゾオキサゾリルメチルおよびベンゾイソオキサゾリルメチル基などの二環式の含窒素・酸素複素環C1-6アルキル基;ベンゾチアゾリルメチルおよびベンゾイソチアゾリルメチル基などの二環式含窒素・硫黄複素環C1-6アルキル基;カルバゾリルメチル基などの三環式含窒素複素環C1-6アルキル基;キサンテニルメチル基などの三環式含酸素複素環C1-6アルキル基ならびにチアントレニルメチル基などの三環式含硫黄複素環C1-6アルキル基を意味する。
【0036】
一般式(1)で表される化合物において、以下の化合物が好ましい。
【0037】
G1は、CHまたは窒素原子であり、窒素原子であることが好ましい。
【0038】
R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいC1-6アルキル基または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基であり、水素原子、塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、塩素原子または置換されてもよいシクロプロピル基であることがより好ましく、水素原子、塩素原子またはシクロプロピル基であることがさらに好ましい。
R1のC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0039】
R2は、置換されてもよいアリール基または置換されてもよい二環式複素環基である。R2のアリール基および二環式複素環基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0040】
R2は、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいアリール基、一般式(3-1)または(3-2)で表される基であることが好ましい。
【0041】
【0042】
式中、X1a、X2a、X3aは、同一または異なって、CR5または窒素原子であり;X4は、CHまたは窒素原子であり;R4aは、置換されてもよいC1-6アルキル基、置換されてもよいC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基、置換されてもよいアリール基または置換されてもよいアルC1-6アルキル基であり;R5は、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいC1-6アルキル基、置換されてもよいC2-6アルケニル基、置換されてもよいC3-8シクロアルキル基、置換されてもよいC3-8シクロアルケニル基、置換されてもよいC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよい複素環式基または置換されてもよいアルC1-6アルキル基である。
あるいは、G1がCHであり、R1が塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基の場合、R2は一般式(4-1)または(4-2)で表される基であることが好ましい。
【0043】
【0044】
式中、X1b、X2b、X3bは、同一または異なって、CHまたは窒素原子であり;R4bは、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいアルC1-6アルキル基で表される基である。
【0045】
R4aのC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基またはイソプロピル基がより好ましく、メチル基またはイソプロピル基がさらに好ましい。
R4aのC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基としては、C3-6シクロアルキルC1-3アルキル基が好ましく、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基またはシクロヘキシルメチル基がより好ましい。
R4aのアリール基としては、フェニル基が好ましい。
R4aのアルC1-6アルキル基としては、フェニルメチル基であることが好ましい。
R4aのC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキルC1-6アルキル基、アリール基およびアルC1-6アルキル基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0046】
R5のハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
R5のC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基またはプロピル基であることがより好ましい。
R5のC2-6アルケニル基としては、C2-4アルケニル基であることが好ましく、1-プロペニル基または2-プロペニル基であることがより好ましく、1-プロペニル基であることがさらに好ましい。
R5のC3-8シクロアルキル基としては、C3-6シクロアルキル基であることが好ましい。
R5のC3-8シクロアルケニル基としては、C3-6シクロアルケニル基であることが好ましく、シクロへキセニル基であることがより好ましい。
R5のC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基としては、C3-6シクロアルキルC1-3アルキル基が好ましい。
R5のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
R5のアルC1-6アルキル基としては、フェニルC1-6アルキル基が好ましい。
R5のC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-8シクロアルキル基、C3-8シクロアルケニル基、C3-8シクロアルキルC1-6アルキル基、アリール基、複素環式基およびアルC1-6アルキル基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0047】
R4bのアリール基としては、フェニル基が好ましい。
R4bのアルC1-6アルキル基としては、フェニルメチル基であることが好ましい。
R4bのアリール基およびアルC1-6アルキル基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0048】
R2は、一般式(5-1)または(5-2)で表される基であることがより好ましい。
【0049】
【0050】
式中、R4cは、置換されてもよいC1-6アルキル基または置換されてもよいアリール基であり;R5cはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアリール基または置換されてもよい複素環式基である。
あるいは、G1がCHであり、R1が塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基の場合、R2は一般式(6)で表される基であることがより好ましい。
【0051】
【0052】
式中、R4dは、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいアルC1-6アルキル基である。
【0053】
R4cのC1-6アルキル基は、C1-4アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基またはイソプロピル基がより好ましく、メチル基またはイソプロピル基がさらに好ましい。
R4cのアリール基は、フェニル基であることが好ましい。
R4cのC1-6アルキル基およびアリール基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0054】
R5cのハロゲン原子は、フッ素原子であることが好ましい。
R5cのアリール基は、フェニル基であることが好ましい。
R5cのアリール基および複素環式基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0055】
R4dのアリール基としては、フェニル基であることが好ましい。
R4dのアルC1-6アルキル基としては、フェニルメチル基であることが好ましい。
R4dのアリール基およびアルC1-6アルキル基の置換基としては、置換基群αから選ばれる少なくとも1つ以上の基が挙げられる。
【0056】
R2は、一般式(7)で表される基であることがさらに好ましい。
【0057】
【0058】
式中、R4cは、置換されてもよいC1-6アルキル基または置換されてもよいアリール基であり;R5cはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアリール基または置換されてもよい複素環式基である。
ただし、このときG1は窒素原子であることが好ましい。
【0059】
置換基群α:ハロゲン原子、保護されてもよいヒドロキシル基、保護されてもよいカルボキシル基、保護されてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいカルバモイル基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいC1-6アルキル基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいC2-6アルケニル基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいC3-8シクロアルキル基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいC1-6アルコキシ基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいアシル基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいアルコキシカルボニル基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいC1-6アルキルアミノ基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいジ(C1-6アルキル)アミノ基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいC1-6アルキルチオ基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいC1-6アルキルスルホニル基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよいアリール基、置換基群βより選ばれる少なくとも1つ以上の基で置換されてもよい複素環基、オキソ基。
【0060】
置換基群β:ハロゲン原子、保護されてもよい水酸基、保護されてもよいカルボキシル基、保護されてもよいアミノ基、カルバモイル基、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-6アルキル基、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-6アルコキシ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、複素環基、オキソ基。
【0061】
一般式(1)で表される化合物の好ましい化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)、5-クロロ-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピル安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-ピロロ(2,3-b)ピリジン-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピル安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-インダゾール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンゾアート、5-クロロ-2-((1-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((3-ベンジル-2-オキソ-2,3-ジヒドロベンゾ[d]チアゾール-6-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-(シクロヘキシルメチル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-(シクロブチルメチル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-1-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-(1-メチル-3-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-2-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((8-フェニルナフタレン-2-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3-フルオロフェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(4-フルオロフェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3-フルオロベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-4-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-(シクロヘキシルメチル)-1H-インダゾール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-ベンジル-1H-ピロロ(2,3-b)ピリジン-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-ベンジル-6-フルオロ-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-ベンジル-4,6-ジフルオロ-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-(3-クロロベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(4-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、(E)-5-シクロプロピル-2-((7-(3-メトキシプロプ-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3-メトキシプロピル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、(E)-5-シクロプロピル-2-((7-(2-シクロプロピルビニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(2-シクロプロピルエチル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニルイソキノリン-6-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(2-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(3-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-イソブチル-3-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(2-シアノフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(4-シアノフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(3-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(4-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(2-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(3-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-シクロヘキス-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-ベンジル-6-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3、5ージフルオロベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-(シクロペンチルメチル)-1H-インドール-4-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((1-ベンジル-4-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸。
【0062】
一般式(1)で表される化合物としては、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)、5-クロロ-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピル安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-ピロロ(2,3-b)ピリジン-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピル安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-インダゾール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンゾアート、5-クロロ-2-((1-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((1-ベンジル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((1-(シクロヘキシルメチル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-(シクロブチルメチル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-1-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-2-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((8-フェニルナフタレン-2-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3-フルオロフェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(4-フルオロフェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-4-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-(シクロヘキシルメチル)-1H-インダゾール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-ベンジル-1H-ピロロ(2,3-b)ピリジン-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-ベンジル-6-フルオロ-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-ベンジル-4,6-ジフルオロ-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-(3-クロロベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(4-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、(E)-5-シクロプロピル-2-((7-(3-メトキシプロプ-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3-メトキシプロピル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、(E)-5-シクロプロピル-2-((7-(2-シクロプロピルビニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(2-シクロプロピルエチル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニルイソキノリン-6-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(2-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(3-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-イソブチル-3-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(2-シアノフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(4-シアノフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(3-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(4-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(2-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(3-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-シクロヘキス-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-ベンジル-6-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3、5ージフルオロベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-(シクロペンチルメチル)-1H-インドール-4-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸および5-シクロプロピル-2-((2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)アミノ)安息香酸から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩であることがより好ましい。
【0063】
また、一般式(1)で表される化合物としては、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)、2-((1-ベンジル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピル安息香酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)安息香酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-1-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-2-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(4-フルオロフェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-ベンジル-4,6-ジフルオロ-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(4-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(2-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(3-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(4-シアノフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ー5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(3-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(4-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(2-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(3-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸および2-((7-シクロヘキス-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物またはその塩であることがさらに好ましい。
【0064】
一般式(1)の化合物の塩としては、通常知られているアミノ基などの塩基性基またはフェノール性ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基などの酸性基における塩を挙げることができる。
【0065】
塩基性基における塩としては、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硝酸および硫酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;ならびにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩が挙げられる。
【0066】
酸性基における塩としては、たとえば、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;ならびにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミンおよびN,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどの含窒素有機塩基との塩などが挙げられる。
【0067】
上記の塩の中で好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられる。
【0068】
一般式(1)で表わされる化合物において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、本発明は、それらの異性体を包含し、また、溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶を包含するものである。
【0069】
一般式(1)で表わされる化合物は、例えば、国際公開第2014/069510に記載の製造方法にしたがって製造することができるが、これに限定されない。
【0070】
DHODH阻害化合物としては、1種の化合物を使用してもよいし、2種以上の化合物を使用してもよい。
【0071】
DHODH阻害化合物の一日投与量は、好ましくは1mg~500mgであり、より好ましくは10mg~400mgであり、さらに好ましくは50mg~300mgである。
【0072】
DHODH阻害化合物は、一日1回、一日2回、一日3回等、投与することができ、一日1回または一日2回投与することが好ましい。
【0073】
DHODH阻害化合物の投与レジメンは、シタラビンの投与レジメンに応じて適宜調整することができ、また用いるDHODH阻害化合物の種類に応じて適宜調整することもできる。DHODH阻害化合物の投与は、シタラビンの投与よりも先であるか、または同時であることが好ましい。
【0074】
DHODH阻害化合物は、シタラビンと併用される、DHODH阻害化合物を含む抗腫瘍効果増強剤として提供することができる。
DHODH阻害化合物は、シタラビンと併用される、DHODH阻害化合物を含む抗腫瘍剤として提供することができる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、有効成分である化合物またはその塩以外に、製剤化に使用される添加剤などの製剤補助剤を適宜混合した組成物とすることができる。
本発明の医薬組成物は、他の有効成分を含んでいてもよく、また他の有効成分を含む医薬と共に用いることができる。
【0076】
添加剤としては、たとえば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、矯味剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、コーティング剤および可塑剤などが挙げられる。
賦形剤としては、たとえば、エリスリトール、マンニトール、キシリトールおよびソルビトールなどの糖アルコール類;白糖、粉糖、乳糖およびブドウ糖などの糖類;α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムなどのシクロデキストリン類;結晶セルロースおよび微結晶セルロースなどのセルロース類;ならびにトウモロコシデンプン、バレイショデンプンおよびアルファー化デンプンなどのでんぷん類が挙げられる。
崩壊剤としては、たとえば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポピドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび部分α化デンプンなどが挙げられる。
結合剤としては、たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウムおよびメチルセルロースなどが挙げられる。
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸およびショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
矯味剤としては、たとえば、アスパルテーム、サッカリン、ステビア、ソーマチンおよびアセスルファムカリウムなどが挙げられる。
着色剤としては、たとえば、二酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用赤色102号、食用黄色4号および食用黄色5号などが挙げられる。
着香剤としては、たとえば、オレンジ油、レモン油、ハッカ油およびパインオイルなどの精油;オレンジエッセンスおよびペパーミントエッセンスなどのエッセンス;チェリーフレーバー、バニラフレーバーおよびフルーツフレーバーなどのフレーバー;アップルミクロン、バナナミクロン、ピーチミクロン、ストロベリーミクロンおよびオレンジミクロンなどの粉末香料;バニリン;ならびにエチルバニリンが挙げられる。
界面活性剤としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリソルベートおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
コーティング剤としては、たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLDおよびメタクリル酸コポリマーSなどが挙げられる。
可塑剤としては、たとえば、クエン酸トリエチル、マクロゴール、トリアセチンおよびプロピレングリコールなどが挙げられる。
これらの添加物は、いずれか一種または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
配合量は、特に限定されず、それぞれの目的に応じ、その効果が充分に発現されるよう適宜配合すればよい。
これらは、常法にしたがって、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、課粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、紛体製剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、軟膏剤または注射剤などの形態で、経口または非経口で投与することができる。また、投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0078】
本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
試験化合物として、DHODH阻害化合物である5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸(FLA3527ともいう)、ASLAN003(2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸)およびBAY2402234(N-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)-4-[4-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-5-フルオロ-2-{[(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル]オキシ}ベンズアミド)を用いた。FLA3527は、国際公開第2014/069510に記載の製造方法にしたがって製造した。ASLAN003は、国際公開第2008/077639に記載の製造方法にしたがって製造した。BAY2402234は、国際公開第2018/077923に記載の製造方法にしたがって製造した。
【0080】
試験例1 酵素反応阻害試験
DHODH酵素アッセイは、「Benjamin Bader, Wolfgang Knecht, Markus Fries, and Monika Loffler. Expression, Purification, and Characterization of Histidine-Tagged Rat and Human Flavoenzyme Dihydroorotate Dehydrogenase. Protein Expression and Purification, 1998, 13, 414-422.」を参考にした。
DHODH活性は、青色に発色する色素2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP 、MP BIOMEDICALS、MP150118)が消光するアッセイとカップリングさせる酵素アッセイ系を用いて評価した。精製された組換えヒトDHODH (DHODH, 31-395aa, Human, His tag, E.coli, ATGP1615)をATGenから購入した。酵素アッセイは、100 mM Hepes(同仁化学研究所、342-01375)、400 mM NaCl(富士フイルム和光純薬、191-01665)、10%Glycerol(富士フイルム和光純薬、075-00616)、0.05% TritonX-100(Sigma-Aldrich、T8787-100ML)、0.2 mM、Ubiquinone-10(富士フイルム和光純薬、216-00761)、0.1 mM DHO(Sigma-Aldrich、D7128)、0.5% DMSO(富士フイルム和光純薬、047-29353)、0.175 μg/mL DHODH及び0.12 mM DCIPに5N 水酸化カリウム(富士フイルム和光純薬、168-21815)を加えてpH 8.0に調整した緩衝液を用いて、384ウェルプレート中で行った。BiomekNX(ベックマン・コールター社)を用いて所定濃度の試験化合物を添加し、基質の添加により酵素反応を開始した。酵素活性は、Envision plate-reading spectrophotometer(パーキンエルマー社)を用いて、DCIP吸光度(600 nm)の減少を50分間測定することで評価した。
【0081】
各試験化合物濃度における酵素反応阻害率を求め、XLfitを用いて50% 酵素反応阻害濃度[IC50(μmol/L)]を算出した。
酵素反応阻害率(%)=(試験化合物添加ウェル発光量)÷(DMSO添加ウェル発光量)×100
【0082】
図1のとおり、各試験化合物は、優れた酵素反応阻害作用を示した。
【0083】
試験例2:細胞増殖試験
ヒト骨髄性白血病細胞株U-937(ATCC, CRL-1593.2)、 MOLM-13(DSMZ, ACC 554)、HL60(ATCC, CRL-240)、SKM-1(JCRB細胞バンク, JCRB0118)、OCI-M2(DSMZ, ACC 619)、NOMO-1 (JCRB細胞バンク, IFO050474)、MV4-11(ATCC, CRL-9591)、THP1(ATCC, TIB-202)、及びヒト末梢血単核球PBMC (CTL, CTL-UP-1)を用いて、細胞増殖試験を行った。U-937細胞、MOLM-13細胞、HL60細胞、SKM-1細胞、OCI-M2細胞、NOMO-1細胞、MV4-11細胞及びTHP1細胞の培養液はRPMI1640 (富士フイルム和光純薬株式会社, 189-02025)に10%Fetal Bovine Serum (Thermo Fisher Scientific社, 10437-028) および1% Penicillin-Streptomycin (10,000U/mL, Thermo Fisher Scientific社, 15140-122) を加えたものを使用した。PBMC細胞の培養液はRPMI1640 (Thermo Fisher Scientific社, 11875-093)に10% Fetal Bovine Serum (Thermo Fisher Scientific社, 10427-028) および1%Penicillin-Streptomycin (10,000U/mL, Thermo Fisher Scientific社, 15140-122)を加えたものを使用した。U-937細胞、 MOLM-13細胞、HL60細胞、SKM-1細胞、OCI-M2細胞、NOMO-1細胞、MV4-11細胞、THP1細胞、PBMC細胞を1000 cells/20 μL/well で、384wellプレート(Corning, 4588)に播種した。一晩培養後、所定濃度のFLA3527、ASLAN003、BAY2402234、Cytarabine(Ara-C, C2035, 東京化成工業株式会社)を5 μL添加し、3日後にCell Titer-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay (Promega, G7573)を25 μL添加し、Envisionプレートリーダー(PerkinElmer社)を用いて発光量を測定した。発光量は、細胞内のアデノシン三リン酸(ATP)濃度に比例するため、発光量を生細胞数の指標とした。各化合物濃度における増殖阻害濃度を下式にて算出した。
【0084】
各化合物濃度における増殖阻害率を求め、XLfitを用いて50%増殖阻害濃度[GI50(μmol/L)]を算出した。
増殖阻害率(%)=(試験化合物添加ウェル発光量)÷(DMSO添加ウェル発光量)×100
【0085】
Ara-CとDHODH阻害化合物の併用効果を示すCIはBiosoft社のソフトウェアCalcuSynを用いて、算出した。
【0086】
図2および
図5のとおり、Ara-Cと各試験化合物との組み合わせは、ヒト骨髄性白血病細胞株THP1において、CIが1以下であり、優れた増殖阻害作用(相乗効果)を示した。
【0087】
図3のとおり、Ara-Cと各試験化合物との組み合わせは、正常細胞であるヒト末梢血単核球PBMCに大きな影響を与えず、優れた安全性を示した。
【0088】
試験例3:細胞内代謝物の抽出
THP-1細胞(2.5 x 106 cells in 5 ml medium)を20 μM FLA3527またはvehicle(DMSO)に24 h曝露し、最後の4 hに10 μM [13C3]AraC(Cytarabine-13C3, C998102, TORONTO RESEARCH CHEMICALS INC.)を添加した。THP-1細胞懸濁液を1,000 rpm、5 min (スイングローターLC-200、TOMY)遠心し、上清を除いた。洗浄のために細胞を10 ml PBSに再懸濁し、1,000 rpm、5 min 遠心し、上清を除いた。次に細胞に1 ml PBSを加えて再懸濁し、このうち60 μlを1.5 mlチューブに取り分け細胞数測定用のサンプルとした。残りの細胞懸濁液から1 mlを代謝物抽出用に1.5 mlチューブに取り分けた。取り分けた細胞懸濁液を2,000 × g、4℃、2 min遠心し上清900 μlを除いた。次に代謝物を抽出するために、懸濁液に500 μlメタノールを加えてよく懸濁した。さらに190 μl 蒸留水、及び10 μl 内部標準(IS)混合液(それぞれ100 μMの[13C10,15N5]dATP、[13C10,15N5]dGTP 、[13C9,15N3]dCTP、[13C10,15N2]dTTP、[13C10,15N5]ATP、[13C10,15N5]GTP、[13C9,15N3]CTP、[13C9,15N2]UTP) を加えて懸濁した。その後この懸濁液を10,000 × g、4℃、15 min遠心し、上清700 μlを新しい1.5 mlチューブに回収した。回収した上清を、遠心エバポレーターCVE-3100(EYELA)を用いて37℃で蒸発乾固させた。サンプルはその後LC/MS/MS分析に用いた。
【0089】
[細胞数の測定]
PBSで10倍希釈したサンプルと、9.5 ml Coulter isoton II diluent(Beckman)を混合し、このうち500 μlを用いてZ2 Coulter counter(Beckman)により細胞密度を測定した。代謝物抽出用に用いた細胞数は以下の式で算出した。
【0090】
代謝物抽出用に用いた細胞数
=細胞密度×2(counts/ml)× 100(Isotonの希釈率)×10(PBSの希釈率)×1(ml、抽出用に取り分けた細胞懸濁液)
【0091】
[高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC/MS/MS)分析]
蒸発乾固させたサンプルに100 μl溶解液(10 mM 重炭酸アンモニウムとアセトニトリルの体積比が35 : 65の混合液)を加え、ボルテックスで溶解させた。その後15,000 rpm(MX-301、TOMY)で5 min遠心し、上清70 μlをバイアルに回収した。LC/MS/MS分析にはAcquity TQ-Detector(Waters)を用いた。10 μlサンプルをSeQuant ZIC-pHILIC 5 μm 150 × 4.6 mm PEEK coated HPLC colum(Millipore)に流速0.5 ml/minで展開し、その後以下のように溶出した(溶離液A, 10 mM 重炭酸アンモニウム/0.05% アンモニア水、溶離液B, アセトニトリル)。0-5 min, 65%Bから40%Bへの直線勾配、5-7 min, 0%Bへの直線勾配、7-9 min, 0%Bアイソクラティック、9-9.1 min, 65%Bへの直線勾配、9.1-15 min, 65%Bアイソクラティック。MS分析のMultiple reaction monitoring(MRM)条件は表1に示した。各代謝物の量は、代謝物とそのISのピークエリア比から算出した。検量線の作成には各代謝物の標準品とそのISを用いた。[13C3]AraCTPの定量には、標準品がないために検量線を用いず、[13C3]AraCTP とCTP ISのピークエリア比で相対定量を行った。
【0092】
図4のとおり、DHODH阻害化合物の処理により、CTP濃度の顕著な減少が認められた。また、Ara-CとDHODH阻害化合物との併用の場合にも、DHODH阻害化合物の単独処理時のCTP濃度の減少と同様の効果が認められた。一方、DHODH阻害化合物の処理により、Ara-C単剤の場合と比べて、Ara-CTP濃度は2.5倍程度上昇した。
【0093】
試験例4:Quantitative PCR(qPCR)法を用いたRNA定量試験
U-937細胞、MOLM-13細胞、HL60細胞、SKM-1細胞、OCI-M2細胞、NOMO-1細胞、MV4-11細胞、THP1細胞を6 Well Plate(Corning, 3506)に1.2 × 106 cells/wellで播種し、24時間後にPBSで洗浄後、回収した。RNAをRNeasy kit(Qiagen, 74106)を用いて抽出し、Nanodrop(ThermoFisher SCIENTIFIC, ND-1000)でRNA濃度を測定した。抽出したRNAをSuper Script VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrogen, 11754-250)を用いて、指定のプロトコール通りにcDNA合成した。PCR反応は25℃ 10分、42℃ 60分、85℃ 5分で行った。
合成したcDNAとTaqman Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems, 4369016)及びSAMHD1 mRNA(cDNA)に対するTaqman Probe(Applied Biosystems, Hs00210019_m1)を混合して、MX3000P リアルタイム定量PCRシステム(Stratagene)でqPCR測定した。内部標準遺伝子としてGAPDH Taqman Probe(ThermoFisher SCIENTIFIC, 4310884E)を用いた。mRNAの定量には相対定量法(ΔΔCt法)を用い、サンプル間の相対発現量を比較した。
【0094】
図6のとおり、AML細胞間のAra-CGI50とSAMHD1のmRNA levelを比較したところ、様々なAra-C感受性、SAMHD1発現パターンを示した。種々細胞株において、Ara-C GI50をLog変換しX軸に、SAMHD1のmRNA levelをY軸にプロットしたところ、相関係数R
2 = 0.8029と強い相関関係を示した。なお、AML細胞株において、SAMHD1発現とAra-Cの薬効が逆相関することは、Nature Medicine volume 23, pages 251-255 (2017)のp251 Figure1で知られている。本試験結果より、SAMHD1発現とAra-C薬効の相関性を確認できた。
【0095】
図7のとおり、SAMHD1発現レベルは中程度で、Ara-Cに感受性を示すヒト骨髄性白血病細胞株MV4-11において、Ara-CとDHODH阻害化合物との併用は、CIが1以下(0.56)であり、相乗効果が認められた。SAMHD1発現レベルが最も高いTHP1細胞におけるCI(0.2-0.4、
図2))と比べると、相乗効果は低いことより、SAMHD1発現がAra-CとDHODH阻害化合物との併用効果と相関することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のシタラビンとDHODH阻害化合物とを含む組み合わせ医薬は、新たな抗腫瘍剤として有用である。