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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】風向制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20220822BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20220822BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20220822BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20220822BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20220822BHJP
   H04R 23/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B60H1/34 671A
F24F13/24
F24F13/06 A
F24F13/06 E
F24F13/08 A
F24F13/02 D
B60H1/34 611Z
H04R23/00 330
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019060932
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157993
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝
(72)【発明者】
【氏名】磯部 良彦
(72)【発明者】
【氏名】越田 信義
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-172857(JP,A)
【文献】特開2013-024480(JP,A)
【文献】特開昭57-033743(JP,A)
【文献】特開平11-300274(JP,A)
【文献】特開2004-180262(JP,A)
【文献】特開2009-253493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/24
F24F 13/06
F24F 13/08
F24F 13/02
H04R 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管(20)の開口端(22)が向く方向である開口方向(Do)に対して交差する方向(Dr)に向かって、超音波を放射することにより、前記開口方向に流れる風の風速(V1)および前記開口方向に対して交差する方向に流れる風の風速(V2)を制御する風速制御部(40)を備える風向制御装置。
【請求項2】
前記風速制御部は、前記開口端に接している請求項1に記載の風向制御装置。
【請求項3】
前記風速制御部は、前記配管の内部に位置している請求項1または2に記載の風向制御装置。
【請求項4】
前記風速制御部は、基板(41)と、前記基板に形成される断熱層(42)と、前記断熱層上に形成されており、電力が供給されるとき、発熱する発熱層(44)とを有し、前記発熱層が発熱するとき、前記超音波を放射する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の風向制御装置。
【請求項5】
外部に露出している前記発熱層の面(441)の面積(S)を前記超音波の波長(λ)で除算した長さをレイリー長(Lr)とし、前記開口方向に対して垂直な方向における前記配管の互いに対向する第1内面(25)から第2内面(26)までの距離を内面距離(Li)とすると、
前記風速制御部は、前記レイリー長が前記内面距離以上になる前記超音波を放射する請求項4に記載の風向制御装置。
【請求項6】
前記配管は、ブロワ(10)から流れる風の流路(23)を形成しており、
前記ブロワから流れる風の速さ(Vb)に基づいて、前記発熱層に供給する電力(We)を制御する電力制御部(50)をさらに備える請求項4または5に記載の風向制御装置。
【請求項7】
前記電力制御部は、前記ブロワから流れる風の速さが大きくなるにつれて、前記発熱層に供給する電力を大きくする請求項6に記載の風向制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風向制御装置に関する。
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、メインダクトに対してサブダクトに流れる風をメインダクトに流れる風に当てることによって、メインダクトを流れる風の方向を変化させる装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0253107A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、サブダクトを流れる風によって、メインダクトを流れる風の風向が変化する。しかし、特許文献1の構成では、風向を変化させるためのダクトが複数必要であるため、装置の体格が大きくなる。この装置の体格が大きくなると、例えば、この装置を車両に搭載することがしにくくなる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みて、小型化可能な風向制御装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、配管(20)の開口端(22)が向く方向である開口方向(Do)に対して交差する方向(Dr)に向かって、超音波を放射することにより、開口方向に流れる風の風速(V1)および開口方向に対して交差する方向に流れる風の風速(V2)を制御する風速制御部(40)を備える風向制御装置である。
【0007】
これにより、風向を変化させるためのダクトを複数配置する必要がなくなる。このため、風向制御装置の体格を小さくすることができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の風向制御装置の構成図。
図2】本実施形態の風向制御装置の超音波素子の断面図および上面図。
図3】本実施形態の風向制御装置の電力制御部50の処理を説明するためのフローチャート。
図4】本実施形態の風向制御装置の電力制御部50の処理を説明するためのブロワ風速および素子電力の関係図。
図5】本実施形態の風向制御装置の電力制御部50の処理を説明するための時刻、電圧波形、電流波形および超音波波形の関係図。
図6】本実施形態の風向制御装置による第1風速および第2風速の変化を示す図。
図7】本実施形態の風向制御装置の超音波素子からの距離および超音波の音圧レベルの関係図。
図8】本実施形態の風向制御装置による第1風速および第1風速の低減率の関係図。
図9】他の実施形態の風向制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
図1に示すように、風向制御装置1は、ブロワ10、配管20、ブロワ風速計30、第1風速計31、第2風速計32、超音波素子40、素子電源45および電力制御部50を備えている。
【0012】
ブロワ10は、配管20に対向して配置されており、図示しない電源からの電力によって、配管20に向かって送風する。ここでは、ブロワ10からの風の速さであるブロワ風速Vbは、0.5-50m/sに調整される。なお、図において、ブロワ10からの風が二点鎖線で示されている。
【0013】
配管20は、四角筒状であって、ブロワ10側に第1開口端21を有し、ブロワ10とは反対側に第2開口端22を有しており、ブロワ10からの風が通過する流路23を形成している。
【0014】
ブロワ風速計30は、配管20内の第1開口端21側に配置されており、ブロワ風速Vbを測定する。
【0015】
第1風速計31は、第2開口端22が向く方向である開口方向Doに流れる風の速さである第1風速V1を測定する。
【0016】
第2風速計32は、開口方向Doに交差する方向である交差方向Drに流れる風の速さである第2風速V2を測定する。ここでは、交差方向Drは、開口方向Doに対して垂直な方向としている。
【0017】
風速制御部に対応する超音波素子40は、第2開口端22から開口方向Doに延びる搭載部24に配置されており、第2開口端22に接している。また、超音波素子40は、発熱することによって、超音波を放射する素子である。具体的には、超音波素子40は、図2に示すように、基板41、断熱層42、電極層43および発熱層44を有する。
【0018】
基板41は、例えば、シリコン単結晶で形成されている。
【0019】
断熱層42は、基板41に形成されており、例えば、基板41をフッ化水素溶液中にて電流を流すことにより、多孔質シリコンに形成されている。断熱層42は、多孔質であることによって、発熱層44から基板41への熱を伝わりにくくする。ここでは、断熱層42の膜厚は、1-50μmになっている。
【0020】
電極層43は、発熱層44の一部を覆うように積層されており、発熱層44に通電するために、アルミニウム等の金属で一対に形成されている。これにより、電極層43は、後述の素子電源45からの電力を発熱層44に供給する。
【0021】
発熱層44は、電極層43に覆われていない部分が外部に露出するように断熱層42上に積層されており、発熱層44の露出面441は、交差方向Drを向いている。また、発熱層44は、例えば、タングステン等の電気抵抗体で形成されている。発熱層44は、電気抵抗体であるため、電極層43を介して供給される電力によって、発熱する。発熱層44が発熱するとき、発熱層44の近傍の空気が膨張するため、空気の疎密波が形成される。これにより、超音波が交差方向Drに向かって放射される。なお、ここでは、発熱層44の露出面441の一辺は、0.005-200mmになっている。また、発熱層44の抵抗値は、1-200Ωになっている。さらに、超音波は、10kHzから200kHzまでの周波数を含む音波であって、超音波の音圧レベルは、60-120dBに調整される。
【0022】
素子電源45は、電極層43に接続されており、電極層43を介して、電力を発熱層44に供給する。以下、便宜上、素子電源45から電極層43を介して発熱層44に供給される電力を素子電力Weと記載する。ここでは、素子電力Weは、1-1000Wに設定される。
【0023】
電力制御部50は、マイコン等を主体として構成されており、CPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスライン等を備えている。電力制御部50は、ブロワ風速計30および素子電源45に接続されており、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、ブロワ風速Vbに基づいて、素子電力Weを制御する。
【0024】
以上のように、風向制御装置1は、構成されている。このように構成される風向制御装置1は、電力制御部50によって制御された素子電力Weを発熱層44に供給することにより放射される超音波によって、第1風速V1および第2風速V2を制御する。
【0025】
具体的に、図3のフローチャートを参照して、電力制御部50の制御について説明する。
【0026】
ステップS101において、電力制御部50は、ブロワ風速計30によって測定されるブロワ風速Vbを取得する。その後、処理は、ステップS102に移行する。
【0027】
ステップS102において、電力制御部50は、ステップS101にて取得したブロワ風速Vbに基づいて、素子電力Weを算出する。
【0028】
具体的には、電力制御部50は、図4に示すようなブロワ風速Vbと素子電力Weとの予め設定された関係図を用いて、レイリー長Lrが内面距離Li以上となる超音波を放射するための素子電力Weを算出する。図4では、後述するように、ブロワ風速Vbが大きくなるにつれて、素子電力Weが大きくなっている。したがって、電力制御部50は、ステップS101にて取得したブロワ風速Vbが大きくなるにつれて、素子電力Weを大きくして、レイリー長Lrが内面距離Li以上となる超音波を放射するための素子電力Weを算出する。なお、ブロワ風速Vbと素子電力Weとの予め設定された関係図は、実験やシミュレーションによって設定される。また、レイリー長Lrとは、図2のドット柄で示されている発熱層44の露出面441の面積Sを放射される超音波の波長λで除算した長さのことである。また、内面距離Liとは、図1に示すように、交差方向Drにおける配管20の互いに対向する第1内面25から第2内面26までの距離である。ここでは、内面距離Liは、1-15mmになっている。
【0029】
続いて、ステップS103において、電力制御部50は、ステップS102にて算出した素子電力Weを、素子電源45から電極層43を介して発熱層44に供給させる。素子電力Weが発熱層44に供給されるとき、超音波が交差方向Drに向かって放射される。
【0030】
具体的には、電力制御部50は、図5に示すように、出力電力がステップS102にて算出した素子電力Weとなるように、スイッチング周期Tsに対する、発熱層44に印加する電圧の時間であるオン時間Tonを変化させるPWM制御を行う。また、電力制御部50は、このPWM制御とともに、発熱層44に印加する出力電圧を変化させるPAM制御を行う。なお、PWMは、Pulse Width Modulationの略である。また、PAMは、Pulse Amplitude Modulationの略である。
【0031】
そして、電力制御部50は、このレイリー長Lrが内面距離Li以上となる超音波を放射するための素子電力Weを素子電源45から電極層43を介して発熱層44に供給させる。この素子電力Weが発熱層44に供給されるとき、発熱層44は、素子電力Weのオン時間Tonの周期と同期して発熱する。これにより、レイリー長Lrが内面距離Li以上である超音波が、素子電力Weのオン時間Tonの周期と同期しつつ、交差方向Drに向かって、放射される。その後、処理は、ステップS101に戻る。
【0032】
このように、電力制御部50によるステップS101からS103までの処理が繰り返し行われる。
【0033】
そして、本実施形態では、超音波素子40は、交差方向Drに向かって超音波を放射することにより、第1風速V1および第2風速V2を制御する。以下、超音波素子40による第1風速V1および第2風速V2の制御について説明する。
【0034】
超音波素子40は、断熱層42によって、断熱層42の膜厚方向および平面方向に対して、比較的高い熱絶縁性と比較的低い熱容量を有する。これにより、電力が発熱層44に供給されたときに生じる発熱層44の熱は、一様かつ高速に変化する。このため、発熱層44の電力に応じて発熱層44の表面温度が変化し、電力が発熱層44に供給されたときに生じる発熱層44の熱は、直ちに、発熱層44の露出面441の近傍の空気に熱交換される。この発熱層44と発熱層44の露出面441の近傍の空気との熱交換によって、疎密波および音圧が発生する。このため、発熱層44に接している空気層がピストンのように働き、超音波が発生する。この発熱層44の熱によって生じる超音波の指向性は、振動によって生じる超音波の指向性と同等である。また、この発熱層44の熱によって生じる超音波には、機械振動が伴われないため、共振がない。このため、この発熱層44の熱によって生じる超音波の周波数応答は、広帯域にわたって平坦になっている。したがって、PWM制御およびPAM制御された電圧の電力による超音波素子40の駆動であっても、理想的な超音波が放射される。
【0035】
そして、本実施形態では、PWM制御およびPAM制御された電圧の電力が発熱層44に供給されたときの熱によって生じるインパルスまたはバースト波の超音波の放射圧力が交差方向Drに出力される。例えば、素子電力Weのパルス幅10μs、素子電力Weの周波数を10kHz、素子電力Weのピーク電力を21Wとすると、パルス幅10μsの時間帯において、発熱層44の露出面441の近傍で発生する超音波の音圧は、約5000Paに達する。この音圧に相当する粒子速度は、約10m/sであり、この空気振動の振幅、すなわち、空気振動の変位は、約2mmである。また、標準状態の空気の密度は、約1.293kg/mであり、内面距離Liを3mm、すなわち、0.003mとする。この場合、第2開口端22から開口方向Doに向かって吹き出す空気の単位面積あたりにかかる重力は、空気の密度に重力加速度および内面距離Liを乗算することによって算出され、約0.038Paになる。したがって、発熱層44の露出面441の近傍で発生する超音波の音圧は、第2開口端22から開口方向Doに向かって吹き出す風に影響を与え得るレベルであって、第2開口端22から開口方向Doに向かって吹き出す風を効果的に制御することができる。
【0036】
よって、図6に示すように、ブロワ風速Vbを固定値とした場合、超音波素子40が交差方向Drに向かって超音波を放射することによって、第1風速V1が減少し、第2風速V2が増加する。なお、図6において、超音波素子40が交差方向Drに向かって超音波を放射するときを、ONと記載しており、超音波素子40が交差方向Drに向かって超音波を放射していないときを、OFFと記載している。
【0037】
以上に記載したように、風向制御装置1は、交差方向Drに超音波を放射することによって、第1風速V1および第2風速V2を制御する。これにより、風向を変化させるためのダクトを複数配置する必要がなくなる。このため、風向制御装置1の体格を小さくすることができる。また、風向制御装置1の体格が小さくなると、風向制御装置1は、車両等に搭載されやすくなる。
【0038】
また、風向制御装置1では、以下[1]-[4]に説明するような効果も奏する。
【0039】
[1]超音波は、人が聞こえにくい音波であるため、風向制御装置1が超音波を放射しても、騒音となりにくい。したがって、風向制御装置1は、騒音を抑制しつつ、第1風速V1および第2風速V2を制御する。
【0040】
[2]超音波素子40は、第2開口端22に接している。これにより、超音波素子40は、第2開口端22から開口方向Doに向かって吹き出す風に比較的近い位置になる。
【0041】
また、超音波素子40から放射される超音波は、空気振動によって放射される。このため、図7に示すように、超音波素子40からの距離が大きくなるにつれて、超音波が減衰するため、超音波の音圧レベルが低下する。すなわち、超音波素子40からの距離が小さくなるにつれて、超音波の音圧レベルが高くなる。
【0042】
したがって、超音波素子40が第2開口端22に接していることによって、第2開口端22から開口方向Doに向かって吹き出す風に比較的近い位置になるため、比較的高い音圧レベルの超音波を開口方向Doに流れる風に当てることができる。このため、開口方向Doに流れる風の向きが変化しやすくなる。これにより、超音波が交差方向Drに放射されるときの第1風速V1および第2風速V2の制御性が向上する。
【0043】
また、超音波素子40が第2開口端22に接していることによって、超音波素子40と第2開口端22との間に空間がない。これにより、超音波素子40と第1開口端21との間の空間を介して流れる風によって生じる外乱の影響がなくなる。この外乱の影響がなくなるため、超音波が交差方向Dr放射されるとき、開口方向Doに流れる風の向きが変化しやすくなる。したがって、超音波が交差方向Drに放射されるときの第1風速V1および第2風速V2の制御性が向上する。
【0044】
さらに、超音波素子40が複数の場合、超音波素子40と第2開口端22との間に空間がないため、超音波素子40から放射される超音波と、超音波素子40および第2開口端22の間を通過する超音波とが共鳴することが抑制される。これにより、複数の超音波素子40から超音波が交差方向Drに放射されるとき、超音波の共鳴による騒音が抑制される。
【0045】
[3]風向制御装置1は、レイリー長Lrが内面距離Li以上である超音波を放射する。超音波素子40からレイリー長Lr以下の範囲で伝播されている超音波は、平面波になっている。超音波が平面波として伝播されているとき、超音波の減衰が小さいため、図7に示すように、超音波の音圧レベルは、比較的高い。したがって、レイリー長Lrが内面距離Li以上である超音波が放射されることによって、比較的高い音圧レベルの超音波を開口方向Doに流れる風に当てることができるので、開口方向Doに流れる風の向きが変化しやすくなる。よって、超音波が交差方向Drに放射されるときの第1風速V1および第2風速V2の制御性が向上する。
【0046】
[4]電力制御部50は、ブロワ風速Vbに基づいて、素子電力Weを制御する。これにより、電力制御部50は、ブロワ風速Vbに基づいて、超音波の音圧レベルを高くできる。したがって、比較的高い音圧レベルの超音波を開口方向Doに流れる風に当てることができるので、第1風速V1および第2風速V2の制御性が向上する。
【0047】
ここでは、ブロワ風速Vbが大きくなるにつれて、開口方向Doに流れる風の速さ、すなわち、第1風速V1が大きくなる。第1風速V1が大きい場合に、超音波が放射されるとき、開口方向Doに流れる風の慣性力が大きいために、開口方向Doに流れる風が変化しにくい。このため、図8に示される比較例のように、超音波の音圧レベルを固定値とした場合に、ブロワ風速Vbが大きくなるにつれて、第1風速V1に対する第1風速V1の低減率ΔV1が減少する。なお、第1風速V1の低減率ΔV1は、超音波が放射されないときの第1風速V1から超音波が放射されたときの第1風速V1を減算した値を超音波が放射されないときの第1風速V1で除算することによって、算出される。
【0048】
そして、比較例に対して、本実施形態では、電力制御部50は、ブロワ風速Vbが大きくなるにつれて、素子電力Weを大きくすることによって、超音波の音圧レベルを大きくできる。これにより、比較的高い音圧レベルの超音波を開口方向Doに流れる風に当てることができるので、開口方向Doに流れる風の向きが変化しやすくなる。したがって、図8に示すように、ブロワ風速Vbが大きくなるにつれて、超音波の音圧レベルを固定値とした場合と比較して、第1風速V1の低減率ΔV1の減少度合が小さくなる。よって、超音波が交差方向Drに放射されるときの第1風速V1および第2風速V2の制御性が向上する。
【0049】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0050】
(1)上記実施形態では、超音波素子40は、配管20の搭載部24に配置されており、第2開口端22に接している。これに対して、超音波素子40は、図9に示すように、配管20の内部に位置し、配管20に埋め込まれてもよい。超音波素子40が配管20の内部に位置しても、上記と同様の効果を奏する。また、この場合、配管20に搭載部24を設ける必要がなくなる。
【0051】
(2)上記実施形態では、配管20は、四角筒状になっている。これに対して、配管20は、他の筒状、例えば、円筒状であってもよい。この場合、電力制御部50は、オン時間Tonを調整して、レイリー長Lrが配管20の内径以上になる超音波を放射するための素子電力Weを生成する。
【0052】
(3)上記実施形態では、電力制御部50は、発熱層44に印加する電圧のPWM制御およびPAM制御を行っている。これに対して、電力制御部50は、発熱層44に印加する電圧のPWM制御のみを行ってもよい。また、電力制御部50は、発熱層44に印加する電圧のPAM制御のみを行ってもよい。
【0053】
(4)上記実施形態では、超音波素子40の発熱層44は、タングステン等の電気抵抗体で形成されている。これに対して、発熱層44は、タンタル、クロム、モリブデン、白金、金、銀、銅等の金属、および、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物等のインジウム酸化物で形成されてもよい。
【0054】
(5)上記実施形態では、超音波素子40の超音波の交差方向Drは、開口方向Doに対して垂直な方向としている。これに対して、超音波素子40の超音波の交差方向Drは、開口方向Doに対して垂直な方向の超音波の成分が含まれるように、設定されてもよい。このように交差方向Drが設定されることによっても、上記と同様の効果を奏する。
【0055】
(6)超音波素子40は、第2開口端22とは離れていてもよい。例えば、超音波素子40は、配管20の外側に配置されつつ、第2開口端22とは離れてもよい。また、超音波素子40は、配管20の第1内面25および第2内面26に配置されつつ、第2開口端22とは離れてもよい。
【0056】
(7)上記実施形態では、風向制御装置1は、ブロワ10から配管20内を通過する風による第1風速V1および第2風速V2を制御している。風向制御装置1は、ブロワ10から配管20内を通過する風による第1風速V1および第2風速V2に限定されない。風向制御装置1は、例えば、車両が走行しているときに生じ、配管20内を通過する走行風の第1風速V1および第2風速V2を制御してもよい。
【0057】
(8)上記実施形態では、超音波素子40のアレイ構造とPWM制御およびPAM制御の条件の組み合わせによって、素子電力Weが調整される。これにより、超音波素子40から放射される超音波の音圧を高くすることができる。超音波素子40から放射される超音波の音圧を高くすることができるので、ブロワ10から配管20内を通過する風を一方向にとどまらない高度な風向制御も可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 ブロワ
20 配管
22 開口端
23 流路
40 風速制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9