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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220822BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20220822BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 M
H01L21/78 V
B23K26/53
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018082509
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019192736
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晃司
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216344(JP,A)
【文献】特開2014-037035(JP,A)
【文献】特開2015-195264(JP,A)
【文献】特開2012-084618(JP,A)
【文献】特開2007-123404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物のレーザ加工方法であって、
基材と、該基材上に積層された糊層と、からなるテープを該被加工物の裏面に貼着するテープ貼着ステップと、
該テープ貼着ステップを実施する前にバイトで該基材を切削することで、該テープの少なくとも該被加工物が貼着される領域の該基材を平坦化するテープ平坦化ステップと、
該テープ貼着ステップと該テープ平坦化ステップとを実施した後、該被加工物の表面側を保持手段で保持するとともに、該被加工物と該テープに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を該被加工物の内部に位置付けた状態で、該テープを介して該レーザビームを該被加工物に照射して、該被加工物の内部に変質領域を形成するレーザビーム照射ステップと、
を備えたレーザ加工方法。
【請求項2】
少なくとも該レーザビーム照射ステップを実施するまでに、該被加工物の該裏面に接着フィルムを貼着して該被加工物と該テープとの間に該レーザビームを透過させる該接着フィルムを介在させる接着フィルム貼着ステップを更に備えた請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
該テープ平坦化ステップにおいて、該基材の表面粗さ(Ra)を0.05[μm]より大きく、かつ、0.4[μm]以下の値に加工する請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物のレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハ(被加工物)の内部に集光点を合わせて、このウエーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層(変質領域)を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割するレーザ加工方法が知られている。
【0003】
この種のレーザ加工方法において、改質層形成のためのレーザビームの照射は、表面の分割予定ラインの幅が狭いウエーハにも対応できるなどの観点から、ウエーハの裏面側から行われることがある。その場合、ウエーハの表面をエキスパンドテープ等のような基材上に糊層が積層されたテープに貼着し、裏面側からレーザビームを照射することも可能であるが、分割加工後の個々のチップをピックアップするために、全チップを新たに別のテープに貼り替えなければならない。そこで、かかる貼り替えを回避してプロセスを簡略化するために、テープにウエーハの裏面を貼着し、該テープ越しにレーザビームをウエーハの裏面側から照射することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-109338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、テープ越しにウエーハへレーザビームを照射して、ウエーハの内部に改質層を形成する際、テープの品種によって形成される改質層に差が生じる場合がある。このため、テープの品種によっては、改質層(変質領域)が正常に形成されずに、外力を付与してもウエーハが分割できない分割不良が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、使用するテープの品種によらず、被加工物の分割不良を抑制できる被加工物のレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被加工物のレーザ加工方法であって、基材と、該基材上に積層された糊層と、からなるテープを該被加工物の裏面に貼着するテープ貼着ステップと、該テープ貼着ステップを実施する前にバイトで該基材を切削することで、該テープの少なくとも該被加工物が貼着される領域の該基材を平坦化するテープ平坦化ステップと、該テープ貼着ステップと該テープ平坦化ステップとを実施した後、該被加工物の表面側を保持手段で保持するとともに、該被加工物と該テープに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を該被加工物の内部に位置付けた状態で、該テープを介して該レーザビームを該被加工物に照射して、該被加工物の内部に変質領域を形成するレーザビーム照射ステップと、を備えたものである。
【0008】
この構成によれば、テープの少なくとも被加工物が貼着される領域の基材を平坦化するテープ平坦化ステップを備えるため、基材が平坦化されたテープを介して、レーザビームを被加工物に照射することにより、被加工物の内部に正常な変質領域を形成することができる。このため、使用するテープの品種によらず、被加工物の分割不良を抑制することができる。
【0009】
この構成において、少なくとも該レーザビーム照射ステップを実施するまでに、該被加工物の該裏面に接着フィルムを貼着して該被加工物と該テープとの間に該レーザビームを透過させる該接着フィルムを介在させる接着フィルム貼着ステップを更に備えてもよい。
【0010】
また、該テープ平坦化ステップにおいて、該基材の表面粗さ(Ra)を0.05[μm]より大きく、かつ、0.4[μm]以下の値に加工してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テープの少なくとも被加工物が貼着される領域の基材を平坦化するテープ平坦化ステップを備えるため、基材が平坦化されたテープを介して、レーザビームを被加工物に照射することにより、被加工物の内部に正常な変質領域を形成することができる。このため、使用するテープの品種によらず、被加工物の分割不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、加工対象である被加工物の一例であるウエーハの斜視図である。
図2図2は、図1に示すウエーハを備えるフレームユニットの一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るウエーハのレーザ加工方法の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、平坦化ステップを実行するバイト切削装置の一例を示す斜視図である。
図5図5は、テープ平坦化ステップの概要を示す側面図である。
図6図6は、保持ステップの概要を示す側面図である。
図7図7は、レーザビーム照射ステップの概要を示す側面図である。
図8図8は、分割ステップにおけるウエーハ分割前の状態を示す側断面図である。
図9図9は、分割ステップにおけるウエーハ分割後の状態を示す側断面図である。
図10図10は、実施形態2に係るウエーハのレーザ加工方法の手順を示すフローチャートである。
図11図11は、図1に示すウエーハを備えるフレームユニットの他の例を示す斜視図である。
図12図12は、テープ平坦化ステップの概要を示す側面図である。
図13図13は、別の実施例に係るレーザビーム照射ステップの概要を示す側面図である。
図14図14は、シールドトンネルの構造を模式的に示す断面図である。
図15図15は、シールドトンネルの構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
[実施形態1]
実施形態1に係る被加工物のレーザ加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、加工対象である被加工物の一例であるウエーハの斜視図である。図2は、図1に示すウエーハを備えるフレームユニットの一例を示す斜視図である。図3は、実施形態1に係るウエーハのレーザ加工方法の手順を示すフローチャートである。
【0015】
本実施形態では、図1に示すウエーハ1が個々のチップに分割加工される。ウエーハ1は、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素又はSiC(炭化ケイ素)などを基板2とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハ1は、図1に示すように、表面5の互いに交差する複数の分割予定ライン3で区画された各領域にそれぞれ、例えばIC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等のデバイス4が形成されている。なお、被加工物は、半導体ウエーハや光デバイスウエーハの他に、ガラスやサファイア(Al)系の無機材料基板等であってもよい。また、被加工物は、上記したデバイス4の有無に限定されるものではない。
【0016】
ウエーハ1の裏面6には、図2に示すように、エキスパンドテープ(テープ)7が貼着され、エキスパンドテープ7の外周に環状フレーム8が貼着される。これにより、ウエーハ1とエキスパンドテープ7と環状フレーム8とを備えたフレームユニット9が構成される。
【0017】
実施形態1に係るレーザ加工方法は、図3に示すように、テープ平坦化ステップST1と、テープ貼着ステップST2と、保持ステップST3と、レーザビーム照射ステップST4と、分割ステップST5とを備える。テープ平坦化ステップST1では、図4に示すバイト切削装置100を用いる。
【0018】
次に、バイト切削装置100について説明する。図4は、平坦化ステップを実行するバイト切削装置の一例を示す斜視図である。バイト切削装置100は、図4に示すように、装置基台101と、チャックテーブル110と、切削ユニット120と、加工送りユニット130と、切り込み送りユニット140とを備える。
【0019】
チャックテーブル110は、旋回切削対象物であるエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9のウエーハ1が載置されて吸引される保持面111と、この保持面111の外周側に複数配置されてフレームユニット9の環状フレーム8を固定するクランプ部112とを有している。チャックテーブル110は、保持面111を構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、真空吸引経路(不図示)を介して真空吸引源(不図示)と接続され、保持面111に載置されたエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9のウエーハ1を吸引することで保持する。また、チャックテーブル110は、加工送りユニット130により装置基台101上をY軸方向(加工送り方向)に移動自在であるとともに、回転駆動源(不図示)によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。また、チャックテーブル110として、保持面111を構成する部分が金属(例えばニッケル)製のピン等から形成された円盤形状のピンチャックテーブルを用いることもできる。
【0020】
切削ユニット120は、スピンドル121の先端に装着されたバイトであるバイト工具122を含むバイトホイール123でチャックテーブル110に保持されたエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9が備えるエキスパンドテープ7を旋回切削するものである。切削ユニット120は、切り込み送りユニット140を介して装置基台101に立設するコラム115に支持され、かつスピンドル121をZ軸方向と平行な軸心回りに回転させるモーター124を備える。切削ユニット120は、モーター124でスピンドル121を回転させて、バイトホイール123をZ軸方向と平行な軸心回りに回転させる。なお、Z軸方向は、鉛直方向と平行である。また、切削ユニット120は、切削時に加工点に向けて切削液(例えば水)を供給する切削液供給ノズル125を備える。
【0021】
加工送りユニット130は、装置基台101上に設置され、チャックテーブル110を保持面111と平行な加工送り方向であるY軸方向に移動させるものである。加工送りユニット130は、チャックテーブル110を支持した支持基台114をY軸方向に移動させることで、チャックテーブル110を切削ユニット120から離間した搬出入位置と切削ユニット120の下方の加工位置とに亘って移動させる。
【0022】
切り込み送りユニット140は、装置基台101に立設するコラム115に固定され、切削ユニット120を保持面111と直交する切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させるものである。切り込み送りユニット140は、切削ユニット120を下降させてバイト工具122を加工位置のチャックテーブル110に保持されたエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9が備えるエキスパンドテープ7に近付け、切削ユニット120を上昇させてバイト工具122を加工位置のチャックテーブル110に保持されたエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9が備えるエキスパンドテープ7から遠ざける。
【0023】
加工送りユニット130及び切り込み送りユニット140は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ141、ボールねじ141を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ142及びチャックテーブル110又は切削ユニット120をY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール143を備える。
【0024】
また、バイト切削装置100は、カセット102,103と、位置合わせユニット104と、搬入ユニット105と、搬出ユニット106と、洗浄ユニット107と、搬出入ユニット108と、制御ユニット109とを備えている。
【0025】
カセット102,103は、エキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9を収容するための収容器であり、装置基台101の搬出入位置寄りの端部に設置される。一方のカセット102は、旋回切削加工前のエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9を収容し、他方のカセット103は、旋回切削加工後のエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9を収容する。この図1では、カセット102,103には、それぞれ旋回切削加工前後のエキスパンドテープ7が収容されているが、エキスパンドテープ7に代えてフレームユニット9を収容することもできる。また、位置合わせユニット104は、カセット102から取り出された旋回切削対象物であるエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9が仮置きされて、その中心位置合わせを行うためのテーブルである。
【0026】
搬入ユニット105は、吸着パッドを有し、位置合わせユニット104で位置合わせされた旋回切削加工前のエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9を吸着保持して搬出入位置に位置するチャックテーブル110上に搬入する。搬出ユニット106は、吸着パッドを有し、搬出入位置に位置するチャックテーブル110上に保持された旋回切削加工後のエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9を吸着保持して洗浄ユニット107に搬出する。
【0027】
洗浄ユニット107は、旋回切削加工後のエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9を洗浄する。搬出入ユニット108は、例えばU字型ハンドを備えるロボットピックであり、U字型ハンドによってエキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9を吸着保持して搬送する。制御ユニット109は、バイト切削装置100を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。即ち、制御ユニット109は、エキスパンドテープ7もしくはフレームユニット9が備えるエキスパンドテープ7に対する旋回切削加工動作をバイト切削装置100に実行させるものである。制御ユニット109は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0028】
制御ユニット109の演算処理装置は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、バイト切削装置100を制御するための制御信号を生成する。制御ユニット109の演算処理装置は、生成した制御信号を入出力インタフェース装置を介してバイト切削装置100の各構成要素に出力する。また、制御ユニット109は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットや、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットと接続されている。入力手段は、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0029】
次に、実施形態1に係るフレキシブル配線板の製造方法の各ステップを説明する。
【0030】
(テープ平坦化ステップ)
図5は、テープ平坦化ステップの概要を示す側面図である。エキスパンドテープ7は、図5に示すように、基材71と基材71上に積層された糊層72とを備えて構成される。また、糊層72には使用時に剥離されて糊層72を露出する剥離紙73が設けられている。この基材71は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、もしくは、PET(ポリエチレンテレフタラート)等の合成樹脂からなる。後述するテープ貼着ステップST2を実施する前にテープ平坦化ステップST1を実施する場合、基材71は、PET(ポリエチレンテレフタラート)のように、ある程度の硬度を持った材料で形成されるのが好ましい。また、エキスパンドテープ7は、基材71上にDAF(Die Attach Film)として機能する糊層72を備えた構成としてもよい。この場合、DAFとしての糊層72は、後述する分割ステップST5において、ウエーハ1と共に分割される。
【0031】
テープ平坦化ステップST1は、レーザビーム照射ステップST4を実施する前に、エキスパンドテープ7の基材71の上面(被切削面)71Aをバイト工具122で旋回切削して平坦化するステップである。本実施形態では、基材71の上面(被切削面)71Aの全体を平坦化しているが、エキスパンドテープ7における少なくともウエーハ1が貼着される領域の基材71の上面71Aを平坦化してもよい。テープ平坦化ステップST1では、チャックテーブル110の保持面111にエキスパンドテープ7を吸引保持し、図5に示すように、バイト工具122をZ軸方向の所定の切り込み深さ位置(例えば、切り込み深さが10[μm]程度の位置)に位置付ける。この状態でスピンドル121を介してバイトホイール123を軸心回りに所定の回転速度(例えば、1000-3000[rpm])で回転させながらチャックテーブル110をY軸方向に沿って、所定の送り速度(例えば、1-10[mm/S]程度)で水平方向(Y1方向)に移動させる。この場合、供給された切削液でエキスパンドテープ7がばたつかないように、エキスパンドテープ7の基材71の上面71A上を切削液が流れるように切削液供給ノズル125から切削液を供給することが好ましい。
【0032】
テープ平坦化ステップST1では、バイト切削装置100の制御ユニット109は、バイト工具122をエキスパンドテープ7の基材71の上面71Aに切り込ませて、エキスパンドテープ7の基材71に旋回切削加工を施して、エキスパンドテープ7の基材71の上面71Aを平坦化する。
【0033】
ところで、本実施形態では、後述するレーザビーム照射ステップST4において、エキスパンドテープ7にウエーハ1の裏面6を貼着し、エキスパンドテープ7越しにレーザビームをウエーハ1の裏面6側から照射することで、ウエーハ1内部に改質層(変質領域)を形成し、後述する分割ステップST5において、改質層を分割起点としてウエーハ1を分割する。ここで、発明者の鋭意研究によれば、エキスパンドテープ7におけるレーザビームが照射される被照射面の平坦度(表面粗さ)によって、ウエーハ1内部に形成される改質層(変質領域)の形成度合いが異なり、平坦度が低いとウエーハ1を分割可能な程度の改質層(変質領域)が形成できないことを見出した。
【0034】
このため、テープ平坦化ステップST1において、エキスパンドテープ7の基材71の上面71Aは、JIS B0601で規定する表面粗さ(Ra)を0.05[μm]より大きく、かつ、0.4[μm]以下の値(0.05[μm]<Ra≦0.4[μm])となるように加工される。表面粗さ(Ra)が0.4[μm]を超える値では、レーザビーム照射ステップST4において、レーザビームを照射してもウエーハ1を分割可能な程度に十分な改質層(変質領域)が形成されなかった。また、表面粗さ(Ra)が0.05[μm]以下にしようとすると、バイト切削では加工時間がかかり現実的でないという問題がある。本実施形態では、表面粗さ(Ra)が0.05[μm]<Ra≦0.4[μm]の範囲に加工することにより、速やかな加工を実現するとともに、エキスパンドテープ7越しにレーザビームを照射してウエーハ1内に該ウエーハ1を分割するに十分な改質層(変質領域)を形成することができる。このため、使用するエキスパンドテープ7の品種によらず、ウエーハ1の分割不良を抑制することができる。
【0035】
(テープ貼着ステップ)
テープ平坦化ステップST1を実施すると、続いて、テープ貼着ステップST2に進む。テープ貼着ステップST2では、平坦化されたエキスパンドテープ7にウエーハ1の裏面6を貼着するとともに、エキスパンドテープ7の外周に環状フレーム8を貼着することで、図2に示すフレームユニット9を形成する。
【0036】
(保持ステップ)
テープ貼着ステップST2を実施すると、続いて、保持ステップST3に進む。図6は、保持ステップの概要を示す側面図である。保持ステップST3は、フレームユニット9をエキスパンドテープ7が上向きとなるように、レーザ加工装置200のチャックテーブル(保持手段)210に保持するステップである。レーザ加工装置200は、ウエーハ1を保持するチャックテーブル210を備える。チャックテーブル210は、フレームユニット9のウエーハ1が載置されて吸引される保持面211と、この保持面211の外周側に複数配置されてフレームユニット9の環状フレーム8を固定するクランプ部212とを有している。チャックテーブル210は、保持面211を構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、真空吸引経路(不図示)を介して真空吸引源(不図示)と接続される。本実施形態では、チャックテーブル210の保持面211とウエーハ1の表面5との間には、多孔性のポーラスシート10が介在され、ウエーハ1の表面5のデバイス4を保護するとともに、保持面211に載置されたウエーハ1を吸引可能としている。なお、ポーラスシート10に代えて、ウエーハ1の表面5に保護テープを貼着してもよい。また、チャックテーブル210は、水平面(XY平面)と平行に回転可能に構成されるとともに、後述するレーザ照射ユニットに対して、加工送り方向(X軸方向)と割り出し送り方向(Y軸方向)とにそれぞれ相対的に移動可能な移動機構(不図示)を備えている。
【0037】
(レーザビーム照射ステップ)
保持ステップST3を実施すると、続いて、レーザビーム照射ステップST4に進む。図7は、レーザビーム照射ステップの概要を示す側面図である。レーザビーム照射ステップST4は、レーザ加工装置200のチャックテーブル210に保持されたフレームユニット9のウエーハ1に対して、エキスパンドテープ7越しにレーザビームを照射して、ウエーハ1内部に改質層20(変質領域)を連続的に形成するステップである。改質層20とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった変質領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0038】
レーザ加工装置200は、チャックテーブル210の上方にレーザ照射ユニット22を備える。レーザ照射ユニット22は、レーザビームを発振する発振器(不図示)と、この発振器により発振されたレーザビームを集光する集光器(不図示)とを備えている。発振器は、加工形態などに応じて、発振するレーザビームの周波数が適宜調整される。集光器は、発振器により発振されたレーザビームの進行方向を変更する全反射ミラーやレーザビームを集光する集光レンズなどを含んで構成される。また、レーザ照射ユニット220は、集光器の集光レンズによって集光されるレーザビームの集光点位置を調整するための集光点位置調整手段(不図示)を備えている。
【0039】
レーザ加工装置200を用いて、ウエーハ1の内部に改質層20を形成する場合、チャックテーブル210をレーザ照射ユニット220の下方に移動し、割り出し送り方向(Y軸方向)に所定間隔で設けられる分割予定ライン3(図1)をレーザ照射ユニット220の直下に位置付ける。そして、集光器の集光レンズによって集光されるレーザビーム220Aの集光点をウエーハ1の内部に位置付けられるように集光点位置調整手段(不図示)を作動して集光器を光軸方向に移動する。
【0040】
図7に示すように、レーザビーム220Aの集光点Qがウエーハ1の厚み方向の内部に位置付けられたら、レーザ照射ユニット220を作動して、エキスパンドテープ7を介してウエーハ1にレーザビーム220Aを照射し、このウエーハ1の内部に改質層20を形成する。すなわち、レーザ照射ユニット220からウエーハ1及びエキスパンドテープ7に対して透過性を有する波長のレーザビーム220Aを分割予定ライン3(図1)に沿って照射しつつ、チャックテーブル210を図7の加工送り方向(矢印X1方向)に所定の送り速度で移動させる。また、1つの分割予定ライン3へのレーザビーム220Aの照射が終わると、レーザビーム220Aの集光点Qをウエーハ1の厚み方向に変位させて、この位置で、再びウエーハ1にレーザビーム220Aを照射し、このウエーハ1の内部に改質層20を形成する。本実施形態では、1つの分割予定ライン3に対して、ウエーハ1の厚み方向に複数段(例えば3段)の改質層20を形成する。すべての分割予定ライン3に複数段の改質層20が形成されると、レーザビーム照射ステップST4を終了する。
【0041】
なお、改質層20を形成する場合、次に示す加工条件に設定されている。
光源 :YAGパルスレーザ
波長 :1342nm、又は、1064nm
平均出力 :1W~2W
【0042】
(分割ステップ)
レーザビーム照射ステップST4を実施すると、続いて、分割ステップST5に進む。図8は、分割ステップにおけるウエーハ分割前の状態を示す側断面図である。図9は、分割ステップにおけるウエーハ分割後の状態を示す側断面図である。分割ステップST5は、上記した改質層20が形成されることによって強度が低下した分割予定ライン3(図1)に沿って外力を加えることにより、ウエーハ1を分割するステップである。
【0043】
分割ステップST5は、図8及び図9に示すように、拡張分割装置300を用いて行われる。拡張分割装置300は、フレームユニット9のウエーハ1及び環状フレーム8を支持するための支持構造301と、エキスパンドテープ7を拡張するための円筒状の拡張ドラム302とを備えている。拡張ドラム302の内径は、ウエーハ1の直径より大きく、拡張ドラム302の外径は、環状フレーム8の内径より小さい。
【0044】
支持構造301は、環状フレーム8を支持するためのフレーム支持テーブル303を備える。このフレーム支持テーブル303の上面は、環状フレーム8を支持する支持面となっている。フレーム支持テーブル303の外周部分には、環状フレーム8を固定するための複数のクランプ部304が設けられている。
【0045】
支持構造301の下方には、拡張ドラム302に対して、支持構造301を昇降する昇降機構305が設けられている。昇降機構305は、下方の基台(不図示)に固定されたシリンダケース306と、シリンダケース306に挿入されたピストンロッド307とを備えている。ピストンロッド307の上端部には、フレーム支持テーブル303が固定されている。この昇降機構305は、拡張ドラム302の上端に概ね等しい高さの基準位置と、拡張ドラム302の上端より下方の拡張位置との間で、フレーム支持テーブル303の上面(支持面)が移動するように、支持構造301を昇降させる。なお、本実施形態では、拡張ドラム302の上面に対して、フレーム支持テーブル303(支持構造301)を昇降する昇降機構305を設けた構成としたが、これに限るものではなく、例えば、拡張ドラム302を昇降する昇降機構を設け、拡張ドラム302がフレーム支持テーブル303の上面に対して昇降する構成としても良い。
【0046】
分割ステップST5では、図8に示すように、基準位置に移動させたフレーム支持テーブル303の上面に環状フレーム8を載せ、この環状フレーム8をクランプ部304で固定する。これにより、拡張ドラム302の上端は、ウエーハ1と環状フレーム8との間のエキスパンドテープ7に接触する。次に、図9に示すように、昇降機構305で支持構造301を下降(矢印Z1方向)させて、フレーム支持テーブル303の上面を拡張ドラム302の上端より下方の拡張位置に移動させる。その結果、拡張ドラム302はフレーム支持テーブル303に対して相対的に上昇し、エキスパンドテープ7は拡張ドラム302で押し上げられるように径方向に拡張される。ウエーハ1には、エキスパンドテープ7を拡張する方向の力(ウエーハ1の径方向に向かうの力)が作用している。このため、エキスパンドテープ7の拡張によって発生した外力により、ウエーハ1は、改質層20(図8)が形成されている分割予定ライン3(図1)に沿って、複数のデバイスチップ30に分割され、隣接するデバイスチップ30,30間には隙間40が形成される。
【0047】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る被加工物のレーザ加工方法を図面に基づいて説明する。図10は、実施形態2に係る被加工物のレーザ加工方法の手順を示すフローチャートである。この実施形態2では、接着フィルム貼着ステップST11を備えるとともに、テープ貼着ステップST12をテープ平坦化ステップST13の前に実行する点で実施形態1と異なる。保持ステップST3から分割ステップST5については、同一の構成であるため説明を省略する。
【0048】
(接着フィルム貼着ステップ及びテープ貼着ステップ)
図11は、図1に示すウエーハを備えるフレームユニットの他の例を示す斜視図である。接着フィルム貼着ステップST11では、図11に示すように、ウエーハ1の裏面6にDAF(接着フィルム)11を貼着する。そして、テープ貼着ステップST12では、このDAF11を介して、ウエーハ1の裏面6側にエキスパンドテープ7を貼着するとともに、エキスパンドテープ7の外周に環状フレーム8を貼着する。このDAF11は、少なくとも、ウエーハ1よりも大きく形成され、ウエーハ1とエキスパンドテープ7との間に介在される。また、DAF11は、上記したレーザビーム200Aを透過する。また、予めエキスパンドテープ7上にDAF11が配設された、いわゆる2in1テープを用いて、接着フィルム貼着ステップST11とテープ貼着ステップST12とを実行する構成としてもよい。なお、接着フィルム貼着ステップST11とテープ貼着ステップST12は、実施形態1の構成においても設けることができる。
【0049】
(テープ平坦化ステップ)
テープ貼着ステップST12に続いて、テープ平坦化ステップST13を実行する。図12は、テープ平坦化ステップの概要を示す側面図である。本実施形態では、フレームユニット9の状態でエキスパンドテープ7の基材71の上面(被切削面)71Aをバイト工具122で旋回切削して平坦化する。図12に示すように、フレームユニット9をエキスパンドテープ7が上向きとなるように、チャックテーブル110の保持面111に載置する。そして、フレームユニット9の環状フレーム8をクランプ部212に固定するとともに、ウエーハ1を吸引保持する。この場合、ウエーハ1の表面5には保護テープ12が貼着されることが好ましい。
【0050】
そして、上記したテープ平坦化ステップST1と同様に、バイト工具122をZ軸方向の所定の切り込み深さ位置(例えば、切り込み深さが10[μm]程度の位置)に位置付ける。この状態でスピンドル121を介してバイトホイール123を軸心回りに所定の回転速度(例えば、1000-3000[rpm])で回転させながらチャックテーブル110をY軸方向に沿って、所定の送り速度(例えば、1-10[mm/S]程度)で水平方向(Y1方向)に移動させる。この場合、エキスパンドテープ7の基材71の上面71A上を切削液が流れるように切削液供給ノズル125から切削液を供給することが好ましい。テープ平坦化ステップST13では、バイト工具122をエキスパンドテープ7の基材71の上面71Aに切り込ませて、エキスパンドテープ7の基材71に旋回切削加工を施すことにより、エキスパンドテープ7における少なくともウエーハ1が貼着される領域7Aの基材71の上面71Aを平坦化する。
【0051】
この実施形態2においても、テープ平坦化ステップST13において、エキスパンドテープ7の基材71の上面71Aは、JIS B0601で規定する表面粗さ(Ra)を0.05[μm]より大きく、かつ、0.4[μm]以下の値(0.05[μm]<Ra≦0.4[μm])となるように加工される。表面粗さ(Ra)が0.4[μm]を超える値では、レーザビーム照射ステップST4において、レーザビームを照射してもウエーハ1を分割可能な程度に十分な改質層(変質領域)が形成されなかった。また、表面粗さ(Ra)が0.05[μm]以下にしようとすると、バイト切削では加工時間がかかり現実的でないという問題がある。本実施形態では、表面粗さ(Ra)が0.05[μm]<Ra≦0.4[μm]の範囲に加工することにより、速やかな加工を実現するとともに、エキスパンドテープ7越しにレーザビームを照射してウエーハ1内に該ウエーハ1を分割するに十分な改質層20(変質領域)を形成することができる。このため、使用するエキスパンドテープ7の品種によらず、ウエーハ1の分割不良を抑制することができる。
【0052】
また、実施形態2では、ウエーハ1の裏面6にDAF11を貼着してウエーハ1とエキスパンドテープ7との間にレーザビームを透過させるDAF11を介在させる接着フィルム貼着ステップST11を備えるため、このDAF11は分割ステップST5においてウエーハ1とともに分割される。このため、分割されたデバイスチップ30(図9)の裏面に分割されたDAFが貼着されることにより、デバイスチップ30の実装を容易に行うことができる。
【0053】
次に、レーザビーム照射ステップの別の実施例について説明する。上記した実施形態では、レーザビーム照射ステップST4として、ウエーハ1に対してエキスパンドテープ7越しにレーザビームを照射して、ウエーハ1内部に改質層20(変質領域)を連続的に形成する構成としたが、この別の実施例では、改質層20に代えてシールドトンネル(変質領域)50を形成する。図13は、別の実施例に係るレーザビーム照射ステップの概要を示す側面図である。図14は、シールドトンネルの構造を模式的に示す断面図であり、図15は、シールドトンネルの構造を模式的に示す斜視図である。
【0054】
シールドトンネル50は、図13に示すように、上記したレーザ加工装置200を用いて形成される。レーザ加工装置200のレーザ照射ユニット22は、上記した集光器(不図示)を備え、この集光器は、球面レンズ、もしくは、複数のレンズの組み合わせによってレーザビーム(パルスレーザ)220Aの集光点Qの位置を、ウエーハ1の厚み方向に延在するように位置付ける球面収差の機能を備えている。そして、集光器によって集光されるレーザビーム220Aの集光点Qがウエーハ1の裏面6から厚み方向の所望の位置に位置付けられるように集光点位置調整手段(不図示)を作動して集光器が光軸方向に移動される。
【0055】
上記のように、レーザビーム200Aの集光点Qがウエーハ1の裏面6から厚み方向の所望の位置に位置付けられたら、レーザ照射ユニット22を作動して集光器からレーザビーム200Aを照射してウエーハ1の厚み方向に細孔と該細孔をシールドする非晶質とからなるシールドトンネル50を形成する。すなわち、集光器からウエーハ1及びエキスパンドテープ7に対して透過性を有する波長のレーザビーム200Aを分割予定ライン3(図1)に沿って照射しつつ、チャックテーブル210を加工送り方向(X1方向)に所定の送り速度で移動させる。
【0056】
ウエーハ1の内部には、図14に示すようにレーザビーム200Aの集光点Q付近から表面に向けて延在する細孔51と該細孔51の周囲に形成された非晶質52が成長し、分割予定ライン3(図1)に対応する領域に沿って所定の間隔(例えば10[μm]の間隔)で非晶質のシールドトンネル50が形成される。シールドトンネル50は、図15に示すように、中心に形成された直径d1が、例えばφ1[μm]程度の細孔51と該細孔51の周囲に形成された直径d2がφ10[μm]の非晶質52とからなり、繰り返し周波数と送り速度を調整することにより、互いに隣接する非晶質52同士がつながるように連接して形成されている。
【0057】
以上、本実施形態に係るウエーハ1のレーザ加工方法は、基材71と、基材71上に積層された糊層72と、からなるエキスパンドテープ7をウエーハ1の裏面6に貼着するテープ貼着ステップST2,ST12と、テープ貼着ステップST2,ST12を実施する前または後に、エキスパンドテープ7の少なくともウエーハ1が貼着される領域7Aの基材71を平坦化するテープ平坦化ステップST1,ST13と、テープ貼着ステップST2,ST12とテープ平坦化ステップST1,ST13とを実施した後、ウエーハ1の表面5をチャックテーブル210で保持するとともに、ウエーハ1とエキスパンドテープ7に対して透過性を有する波長のレーザビーム220Aの集光点Qをウエーハ1の内部に位置付けた状態で、エキスパンドテープ7を介してレーザビーム220Aをウエーハ1に照射して、ウエーハ1の内部に改質層20またはシールドトンネル50を形成するレーザビーム照射ステップST4とを備えた。この構成によれば、エキスパンドテープ7の少なくともウエーハ1が貼着される領域7Aの基材71を平坦化するテープ平坦化ステップST1,ST13を備えるため、基材71が平坦化されたエキスパンドテープ7を介して、レーザビーム220Aをウエーハ1に照射することにより、ウエーハ1の内部に正常な改質層20またはシールドトンネル50を形成することができる。このため、使用するテープの品種によらず、ウエーハ1の分割不良を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、テープ平坦化ステップST1,ST13は、バイト工具122で基材71を切削することで実施されるため、基材71の上面を速やかに平坦化する加工を実現できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、少なくともレーザビーム照射ステップST4を実施するまでに、ウエーハ1の裏面6にDAF11を貼着してウエーハ1とエキスパンドテープ7との間にレーザビームを透過させるDAF11を介在させる接着フィルム貼着ステップST11を備えるため、このDAF11は分割ステップST5においてウエーハ1とともに分割される。このため、分割されたデバイスチップ30の裏面に分割されたDAFが貼着されることにより、デバイスチップ30の実装を容易に行うことができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態では、分割ステップST5では、エキスパンドテープ7を拡張することでウエーハ1を分割しているがこれに限るものではなく、ブレーキング装置など既存の分割技術を用いることができる。また、本実施形態では、テープとしてエキスパンドテープを例示しているが、これに限るものではなく、ダイシングテープなどを用いることができることが勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 ウエーハ(被加工物)
5 表面
6 裏面
7 エキスパンドテープ(テープ)
7A 領域(被加工物が貼着される領域)
8 環状フレーム
9 フレームユニット
11 DAF(接着フィルム)
20 改質層(変質領域)
22 レーザ照射ユニット
30 デバイスチップ
50 シールドトンネル(変質領域)
71 基材
71A 上面
72 糊層
73 剥離紙
100 バイト切削装置
110 チャックテーブル
111 保持面
112 クランプ部
120 切削ユニット
121 スピンドル
122 バイト工具(バイト)
123 バイトホイール
125 切削液供給ノズル
200 レーザ加工装置
200A レーザビーム
210 チャックテーブル(保持手段)
211 保持面
212 クランプ部
220 レーザ照射ユニット
220A レーザビーム
300 拡張分割装置
Q 集光点
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図15