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特許7127036カソード材料の製造方法、及び当該方法を行うことに適する反応器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】カソード材料の製造方法、及び当該方法を行うことに適する反応器
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20220822BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220822BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220822BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220822BHJP
   C23C 16/442 20060101ALI20220822BHJP
   B01J 8/18 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
C23C16/442
B01J8/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019539891
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018050718
(87)【国際公開番号】W WO2018134125
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】17152579.3
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ガレラ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】シュトレゲ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】リープシュ,ティルマン
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-243107(JP,A)
【文献】特表2015-520297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/00
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
C23C 16/442
B01J 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にコーティングされた粒子材料の製造方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド及び層状リチウム遷移金属オキシドから選択された粒子材料を供給する工程と、
(b)流動床中で、工程(a)で供給された粒子材料を金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物で処理する工程と、
(c)流動床中で、工程(b)で得られた材料を湿気で処理する工程と、
任意に、一連の工程(b)及び(c)を繰り返す工程と、を含み、
工程(b)及び(c)において、前記流動床中で、反応器の内表面に関するガス速度であるガス空塔速度が、反応器の高さの増加に伴って低減する、方法。
【請求項2】
アルキル金属化合物又は金属アルコキシド又は金属アミドが、それぞれ、M(R、M(R、M(R4-y、M(OR、M(OR、M(OR、M[NR及びメチルアルモキサン、
(式中、Rが、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
が、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
がMg及びZnから選択され、
がAl及びBから選択され、
がSi、Sn、Ti、Zr及びHfから選択され、
変数yが0~4から選択される)
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
層状リチウム遷移金属オキシドが一般式(I)、

Li(1+x)[NiaCobMncM4 d](1-x)O2 (I)

(式中、MがMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、
0≦x≦0.2、
0.1≦a≦0.8、
0≦b≦0.5、
0.1≦c≦0.6、
0≦d≦0.1、及び
a+b+c+d=1)
の材料である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)及び(c)における前記流動床が噴流床である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)、及び必要な場合に工程(c)において、前記反応器の入口での前記ガス空塔速度が、20~100m/sの範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド又は層状リチウム遷移金属オキシドの粒子がそれぞれ、凝集性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)が15~1000℃の範囲の温度で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)と(c)との間に、前記反応器が不活性ガスでフラッシュされる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)及び(c)が、円錐形の流動床反応器で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)及び(c)が、パルスガス流を有する噴流床で行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記流動床のための前記反応器が、反応ゾーンの下で合流する少なくとも3つの入口を有し、そのうち、1つが一次流動化ガスの導入に使用され、1つが粒子の出口として使用され、1つがパルスガスに使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの円錐形部分、及び任意に少なくとも1つの一定の直径を有する部分を含む管状反応器であって、前記管状反応器が、反応ゾーンの下で合流する少なくとも4つの合流入口を有し、そのうち、1つが反応性ガスの入口として使用され、1つがフィルターパージガスの入口として使用され、1つが一次流動化ガスの導入に使用され、1つが粒子の出口として使用され、前記管状反応器が請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を行うことに適する、管状反応器。
【請求項13】
壁材が、酸化アルミニウムでコーティングすることが可能であるセラミック材料及びステンレス鋼から選択される、請求項12に記載の管状反応器。
【請求項14】
さらなるガス分配要素がない、請求項12又は13に記載の管状反応器。
【請求項15】
粒子材料を化学的にコーティングする方法に、請求項12から14のいずれか一項に記載の管状反応器を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的にコーティングされた粒子材料を製造する方法に関し、当該方法は、以下の工程:
(a)リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド及び層状リチウム遷移金属オキシドから選択された粒子材料を供給する工程と、
(b)流動床中で、前記カソード活物質を金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物で処理する工程と、
(c)流動床中で、工程(b)で得られた材料を湿気(moisture)で処理する工程と、
任意に、一連の工程(b)及び(c)を繰り返す工程と、を含み、
工程(b)及び(c)において、前記流動床におけるガス空塔速度(superficial gas velocity)が、反応器の高さの増加に伴って低減する。
【0002】
さらに、本発明は、本発明の方法に適する反応器に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池は、エネルギーを貯蔵するための最新の装置である。携帯電話及びラップトップコンピューターなどの小型の装置からカーバッテリー及び他のE-モビリティ(e-mobility)用バッテリーまで、多くの応用分野が考えられてきた。電解質、電極材料及びセパレーターなどの様々な電池の構成要素は、電池の性能に関して重要な役割を有する。カソード材料には特に注目されている。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトオキシド、及びリチウムニッケルコバルトマンガンオキシドが提案されてきた。広範な研究調査が行われてきているが、これまでに見出された解決策は未だに改善の余地がある。
【0004】
リチウムイオン電池の1つの問題は、カソード活物質の表面での望ましくない反応にある。このような反応は、電解質若しくは溶媒又はその両方の分解であり得る。したがって、充電及び放電中のリチウム交換を妨げることなく、表面を保護することが試みられた。例は、例えばアルミニウムオキシド又はカルシウムオキシドでカソード活物質をコーティングする試みである(例えば、US 8,993,051参照)。
【0005】
他の材料特性と組み合せたそれらの粒径が原因で、多くのカソード活物質は凝集体を形成する傾向がある。したがって、十分に均一なコーティングを達成することは容易ではない。存在する場合に粒子接触の領域では、反応物の流れに直接に曝される粒子の領域と比較して、通常、コーティング効率の低下が観察された。
【0006】
WO 2013/140021には、その場で生成されたアルミナで特定の材料をコーティングするための反応器システムが開示されている。トリメチルアルミニウム、水及び空気は、3つの異なる入口によって反応器に直接供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US 8,993,051
【文献】WO 2013/140021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、粒子材料を過度に長い反応時間なしに少なくとも部分的にコーティングすることができる方法を提供することを目的とし、ここで、このような粒子材料が凝集物を形成する傾向がある。さらに、本発明は、このような方法を行うための反応器を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、以下に本発明の方法又は(本)発明による方法とも称される、冒頭で定義された方法が見出された。本発明の方法は、少なくとも部分的にコーティングされた粒子材料を製造する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の反応器例示の実施態様を示す。
図2図2は本発明の反応器例示の実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に使用される「少なくとも部分的にコーティングされた」という用語は、粒子材料のバッチの粒子の少なくとも80%がコーティングされること、及びそれぞれの粒子の表面の少なくとも75%、例えば75~99%、好ましくは80~90%がコーティングされることを指す。
【0012】
このようなコーティングの厚さは、非常に薄く、例えば0.1~5nmであり得る。他の実施態様において、厚さは6~15nmの範囲であり得る。さらなる実施態様において、このようなコーティングの厚さは16~50nmの範囲である。本発明における厚さは、粒子表面当たりの厚さの量を計算し、かつ、100%の変換を仮定することにより数学的に決定された平均厚さを指す。
【0013】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、粒子の特定の化学的性質、例えばヒドロキシル基、化学的な制約を有する酸化物部分(これに限定するものではない)などの化学的反応性基の密度、又は吸着水が原因で、粒子のコーティングされていない部分が反応しないと考えられる。
【0014】
本発明の一実施態様において、粒子材料は3~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成されるが、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0015】
本発明の一実施態様において、粒子材料は0.1~1m/gの範囲のBET表面積を有する。BET表面積は、DIN ISO 9277:2010に従って、200℃で30分以上、及びこれを超えてサンプルをガス放出した後の窒素吸着によって決定することができる。
【0016】
本発明の方法は、本発明において工程(a)、工程(b)及び工程(c)とも称される3つの工程(a)、(b)及び(c)を含む。
【0017】
工程(a)は、リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド及びリチウム化層状遷移金属オキシドから選択された粒子材料を供給することを含む。リチウム化層状遷移金属オキシドの例は、LiCoO、LiMnO及びLiNiOである。例は、一般式Li1+x(NiCoMn 1-x(式中、MがMg、Ca、Ba、Al、Ti、Zr、Zn、Mo、V及びFeから選択され、さらなる変数が以下のように定義される:
0≦x≦0.2、
0.1≦a≦0.8、
0≦b≦0.5、
0.1≦c≦0.6、
0≦d≦0.1、及びa+b+c+d=1)の化合物である。
【0018】
好ましい実施態様において、一般式(I)

Li(1+x)[NiaCobMncM4 d](1-x)O2 (I)

による化合物において、MはCa、Mg、Al及びBaから選択され、さらなる変数は上記のように定義される。
【0019】
リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシドの例は、一般式Li[NiCoAl]O2+rの化合物である。r、h、i及びjの典型的な値は以下である:
hが0.8~0.90の範囲にあり、
iが0.15~0.19の範囲にあり、
jが0.01~0.05の範囲にあり、
rが0~0.4の範囲にある。
【0020】
Li(1+x)[Ni0.33Co0.33Mn0.33(1-x)、Li(1+x)[Ni0.5Co0.2Mn0.3(1-x)、Li(1+x)[Ni0.6Co0.2Mn0.2(1-x)、Li(1+x)[Ni0.7Co0.2Mn0.3(1-x)及びLi(1+x)[Ni0.8Co0.1Mn0.1(1-x)(式中、xが上記のように定義される)が特に好ましい。
【0021】
好ましくは、前記粒子材料は、導電性カーボン又はバインダーなどの任意の添加剤を含まず、自由流動性の粉末として供給される。
【0022】
本発明の一実施態様において、リチウム化ニッケル-コバルトアルミニウムオキシド又は層状リチウム遷移金属オキシドなどの粒子材料の粒子はそれぞれ、凝集性(cohesive)である。すなわち、Geldart分類により、粒子材料は流動化するのが困難であり、従ってGeldart C領域に該当することを意味する。しかしながら、本発明の過程において、機械的攪拌は必要とされない。
【0023】
凝集性の製品のさらなる例は、Jenikeによる流動性係数ff≦4、好ましくは1<ff≦4(ff=σ/σ;σ-最大主応力(major principle stress)、σ-一軸降伏強度(unconfined yield strength))を有するもの、又はHausner比f≧1.3、好ましくは1.6≧f≧1.3(f=ρtap/ρbulk;ρtap-揺動体積計で1250ストローク後に測定されたタップ密度、ρbulk-DIN EN ISO 60によるかさ密度)を有するものである。
【0024】
本発明の方法の工程(b)において、工程(a)で供給された粒子材料は、流動床中で、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルカリ金属化合物で処理される。流動床は、以下でより詳細に記載される。
【0025】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、15~1000℃、好ましくは15~500℃、より好ましくは20~350℃、さらにより好ましくは50~150℃の範囲の温度で行われる。工程(b)において、場合によって、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物が気相にある温度を選択することが好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、アルキル金属化合物又は金属アルコキシド又は金属アミドはそれぞれ、M(R、M(R、M(R4-y、M(OR、M(OR、M(OR、M[NR及びメチルアルモキサンから選択され、ここで、
が、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
が、同一又は異なり、直鎖又は分岐状のC~C-アルキルから選択され、
がMg及びZnから選択され、
がAl及びBから選択され、
がSi、Sn、Ti、Zr及びHf、好ましくはSn及びTiから選択され、
変数yが、0~4から選択され、特に0及び1である。
【0027】
金属アルコキシドは、アルカリ金属、好ましくはナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属、好ましくはマグネシウム及びカルシウム、アルミニウム、シリコン、並びに、遷移金属のC~C-アルコキシドから選択されてもよい。好ましい遷移金属はチタン及びジルコニウムである。アルコキシドの例として、以下にメトキシドとも称されるメタノラート、以下にエトキシドとも称されるエタノラート、以下にプロポキシドとも称されるプロパノラート、及び以下にブトキシドとも称されるブタノラートが挙げられる。プロポキシドの特定の例は、n-プロポキシド及びイソ-プロポキシドである。ブトキシドの特定の例は、n-ブトキシド、イソブトキシド、sec.-ブトキシド及びtert.-ブトキシドである。アルコキシドの組合せも使用可能である。
【0028】
アルカリ金属アルコキシドの例は、NaOCH、NaOC、NaO-イソ-C、KOCH、KO-イソ-C及びK-O-C(CHである。
【0029】
金属C~C-アルコキシドの好ましい例は、Si(OCH、Si(OC、Si(O-n-C、Si(O-イソ-C、Si(O-n-C、Ti[OCH(CH、Ti(OC、Zn(OC、Zr(OC、Zr(OC、Al(OCH、Al(OC、Al(O-n-C、Al(O-イソ-C、Al(O-sec.-C、及びAl(OC)(O-sec.-Cである。
【0030】
リチウム、ナトリウム及びカリウムから選択されたアルカリ金属の金属アルキル化合物の例には、アルキルリチウム化合物、例えばメチルリチウム、n-ブチルリチウム及びn-ヘキシルリチウムが特に好ましい。アルカリ土類金属のアルキル化合物の例は、ジ-n-ブチルマグネシウム及びn-ブチル-n-オクチルマグネシウム(「BOMAG」)である。アルキル亜鉛化合物の例は、ジメチル亜鉛及び亜鉛ジエチルである。
【0031】
アルミニウムアルキル化合物の例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びメチルアルモキサンである。
【0032】
金属アミドは時に、金属イミドとも称される。金属アミドの例は、Na[N(CH]、Li[N(CH]、及びTi[N(CHである。
【0033】
特に好ましい化合物は、金属C~C-アルコキシド及び金属アルキル化合物から選択され、さらにより好ましくはトリメチルアルミニウムである。
【0034】
本発明の一実施態様において、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物の量は、1kgの特定の材料当たり0.1~1gの範囲にある。
【0035】
好ましくは、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物の量はそれぞれ、1つのサイクル当たり特定の材料上の単分子層の80~200%になるように計算される。
【0036】
本発明の好ましい実施態様において、工程(b)の持続時間は、1秒~2時間、好ましくは1秒から10分以下の範囲である。
【0037】
本発明において工程(c)とも称される第3の任意の工程では、工程(b)で得られた材料は、流動床中で、湿気で処理される。
【0038】
本発明の一実施態様において、工程(c)は50~250℃の範囲の温度で行われる。
【0039】
例えば、工程(b)に従って得られた材料を水分飽和の不活性ガスで、例えば水分飽和の窒素、又は水分飽和の希ガス、例えばアルゴンで流動化させることによって、前記湿気を導入してもよい。
【0040】
前記工程(c)が150℃~600℃、好ましくは250℃~450℃の範囲の温度での熱処理に置き換えられてもよいが、上記のように前記工程を行うことが好ましい。
【0041】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、10秒~2時間、好ましくは1秒~10分の範囲の持続時間を有する。
【0042】
一実施態様において、一連の工程(b)及び(c)は1回のみ行われる。好ましい実施態様において、一連の工程(b)及び(c)は、例えば1回又は2回又は40回以下繰り返される。一連の工程(b)及び(c)を2回~6回行うことが好ましい。
【0043】
本発明の一実施態様において、工程(b)と(c)との間に、本発明の方法を行う反応器は、不活性ガスで、例えば乾燥窒素で又は乾燥アルゴンでフラッシュ又はパージされる。好適なフラッシュ又はパージの時間は1秒~10分である。不活性ガスの量は反応器の内容物を1~15回交換することに十分であることが好ましい。このようなフラッシュ又はパージにより、金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物の水とのそれぞれの反応生成物の別個の粒子などの副生成物の生成を避けることができる。トリメチルアルミニウムと水との組合せの場合、そのような副生成物は、メタン及びアルミナ、又は粒子材料上に堆積していないトリメチルアルミニウムであり、後者は望ましくない副生成物である。
【0044】
工程(b)及び(c)において、流動床中のガス空塔速度は、反応器の高さにわたって勾配を示す。ガスが反応器に入る領域では、その空塔速度は流動床のより高い領域における空塔速度よりも速い。例えば、ガス空塔速度は、1.5~1000倍、好ましくは10~100倍の範囲で低減してもよい。ガス空塔速度は、反応器の内表面に関するガス速度を指し、反応器が管状である場合には「空管速度(empty tube velocity)」とも称される。
【0045】
円筒形管状反応器における最先端の流動床において、ガス空塔速度は通常、反応器の高さの増加と共に増大する。粒子流動床によって引き起こされる圧力降下を克服するために、流動化ガスの密度を低減させ、従って流動化ガスの体積流量が増大する。
【0046】
本発明の一実施態様において、流動床における流入ガスは1つのジェット流(jet stream)の形態で導入される。ジェット流は、反応容器の底部で導入される。ジェット流の直径は、円筒形部分における反応容器の直径よりもかなり小さく、10~100mmの範囲の直径を有してもよい。
【0047】
本発明の好ましい態様において、入口ガス速度は、前記粒子材料の空気輸送を可能にする範囲、例えば20~100m/sの範囲である。反応器の円筒形部分におけるガス速度に対応する出口ガス速度は、10~1000倍小さく、例えば2cm/s~2m/sであってもよい。空気対流が発生する正確な最小入口ガス速度は、粒径だけでなく、粘度、及び従ってガスの温度にも依存する。それはRehの状態図から集められることが可能である。
【0048】
本発明の一実施態様において、入口圧力はより高いが、所望の反応器圧力に近い。ガス入口及び流動床の圧力降下を補う必要がある。
【0049】
本発明の一実施態様において、本発明の方法は大気圧で行われる。
【0050】
本発明の一実施態様において、1つ以上のジェット流は流動床を循環させることを引き起こす。すなわち、工程(b)において、ジェット流は、それぞれ金属アルコキシド又は金属アミド又はアルキル金属化合物と流動化された粒子材料との接触を容易にするだけでなく、ジェット流はまた、反応器内のより高い位置にある粒子材料の粒子が重力により下方へ移動する一方で、反応器の下部から上部へ持ち上げることによって粒子を動き回らせる。
【0051】
本発明の好ましい実施態様において、工程(b)、及び必要な場合に工程(c)は噴流床で行われる。
【0052】
本発明のさらにより好ましい実施態様において、工程(b)、及び必要な場合に工程(c)は、パルスガス流(pulsed gas flow)を有する噴流床で行われる。時に以下で間欠噴流床とも称されるパルスガス流を有する噴流床は、ジェット流又は必要な場合に複数のジェット流がパルス的に(pulse-wisely)行われることを特徴とする。ガスは好ましくは、流動床におけるひび割れ及びチャネル(いわゆる「ラットホール(rat-holes)」)を通って流れ、従って粒子床の他の部分の不流動化をもたらし、パルスは、上記のひび割れ及びチャネルを回避することに関して有用である。パルスは、攪拌又は振動エネルギーなどの流動化の改善を可能にする。
【0053】
本発明の一実施態様において、流動床のための反応器は、反応ゾーンの下で合流する少なくとも3つの合流入口を有し、そのうち、1つが一次流動化ガス(primary fluidization gas)の導入に使用され、1つが粒子の出口として使用され、1つが必要な場合にパルスを引き起こすガス(以下、パルスガスとも称される)に使用される。一次流動化ガスは、不活性ガスであり、好ましくは水を含まない。このような入口は、反応器の周囲に、反応ゾーンの下で合流する。合流入口は混合栓(mixing faucet)又は静的ミキサーとして機能する。
【0054】
本発明の方法の過程において、反応器の形状により、強い剪断力は流動床に導入され、凝集物中の粒子は頻繁に交換され、これにより、粒子表面全体へのアクセスが可能になる。本発明の方法により、粒子材料を短期間内でコーティングすることが可能であり、特に、凝集性粒子を非常に均一にコーティングすることが可能である。
【0055】
本発明の他の態様は、以下に本発明の反応器又は(本)発明による反応器とも称される管状反応器に関し、前記本発明の反応器が、少なくとも1つの円錐形部分、及び任意に少なくとも1つの一定の直径を有する部分を含み、ここで、前記管状反応器が、反応ゾーンの下で合流し、かつ、3つの異なるガス又はエーロゾルの導入に使用される3つの合流入口(そのうち、1つは一次流動化ガスの導入に使用され、1つは粒子の出口として使用され、1つは必要な場合にパルスを引き起こすガスに使用される)を有する。混合栓は、反応ゾーンの下で反応器の円錐形ゾーンに取り付けられており、静的ミキサーとして機能してもよい。
【0056】
本発明の一実施態様において、粒子の出口も合流入口によって達成される。出口は入口のような形をしている。
【0057】
本発明の一実施態様において、本発明の管状反応器は、反応ゾーンの下で合流する少なくとも4つの入口を有し、そのうち、1つが反応性ガスの入口として使用され、1つがフィルターパージガスの入口として使用され、1つが一次流動化ガスの導入に使用され、1つが粒子の出口として使用される。
【0058】
好ましい実施態様において、本発明の反応器は、反応ゾーンの下で合流する少なくとも5つの入口を有する。上述した少なくとも3つの入口に加えて、1つが反応性ガスの入口として使用され、1つがフィルターパージガスの入口として使用される。
【0059】
本発明の一実施態様において、本発明の反応器の円錐形部分の開口角度は、垂直に対して80°~1°の範囲、好ましくは垂直に対して30°~15°の範囲である。
【0060】
本発明の一実施態様において、反応器入口の直径は、1mm~1m、好ましくは5mm~50cmの範囲である。円筒形反応器の直径は、円筒形反応器直径と反応器入口の断面積の比に関する上記のファクターが得られるように選択される。
【0061】
本発明の一実施態様において、本発明の反応器の壁材は、酸化アルミニウムでコーティングすることが可能であるセラミック材料及びステンレス鋼から選択される。コーティング材料は、0.1~10nm、好ましくは0.2~1nmの範囲の平均厚さを有してもよい。好適な鋼の例は、DIN EN 10088-1~10088-3の意味のステンレス鋼である。セラミック材料は、酸化物、非酸化物、及び複合材料から選択されてもよい。本発明のためのセラミック材料として適している酸化物の例は、アルミナ及びジルコニアである。本発明のためのセラミック材料として適している非酸化物の例は、ホウ化物、窒化物及び炭化物、特にSiCである。複合材料の例は、粒子強化セラミック、繊維強化セラミック、及び少なくとも1種の酸化物と少なくとも1種の非酸化物との組合せである。複合材料の好ましい例は、繊維強化アルミナ、及びアルミナとSiCとの組合せである。
【0062】
ほとんどの実施態様において、本発明の反応器は、圧力降下を引き起こし、かつ、流入ガスの方向及び/又は速度に影響を及ぼす、流動床におけるガス分配のための要素、例えば多孔板又はマルチオリフィス板、羽口、キャップ、ノズル、パイプグリッド及びスパージャーを必要としない。したがって、本発明の反応器は、ガス流が止められるか、又は一定の限度未満に低下される場合、反応器から出る固体の重力駆動流(gravity driven flow)を可能にする。
【0063】
一実施態様において、1つ以上のガス又は粒子材料のためのさらなる入口を本発明の反応器の円錐形部分に配置することが可能である。他の実施態様において、本発明の反応器の円錐形部分にさらなる入口を配置しない。
【0064】
好ましくは、本発明の反応器は、オフガスからほこりを取り除くための装置、例えば静電集塵装置に、遠心力集塵装置(cyclone)に、又は濾過ユニットに接続される。
【0065】
本発明の反応器は、本発明の方法を行うことに非常に適している。したがって、本発明の別の態様は、本発明の方法を行うための、さらにより具体的に、例えば原子蒸着によって又は化学蒸着によって、粒子材料を化学的にコーティングするための本発明の反応器の使用方法である。
【0066】
本発明の反応器の特別な利点とは、底部の入口を通って、コーティングされていない粒子材料が落下できないか、又はごくわずかな量しかが落下できないようにガス空塔速度を容易に調節することができることである。反応器の形状により、強い剪断力が流動床に導入され、凝集物中の粒子は頻繁に交換され、これにより、凝集物の粉砕及び粒子表面全体へのアクセスが可能になる。
【0067】
本発明の反応器の例示の実施態様を図1に示す。
【符号の説明】
【0068】
図1及び2の簡単な説明:
1:一次流動化ガスの入口
2:パルスガスの入口
3:コーティングされた粒子の出口
4:流動床
5:反応器の円錐形部分、混合栓での直径d
6:反応器の円筒形部分、直径d
7:任意の:固体-ガスの分離手段、例えばフィルタキャンドル又はフィルターカートリッジ
8:任意の:コーティングされていない粒子の導入のための入口
9:任意の:固体粒子の導入
特定の固体材料は、頂部から、又は入口8により、又は反応器の底部から導入することが可能である。
図1
図2