(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220822BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220822BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220822BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/304 601Z
H01L21/304 601H
B23K26/53
B23K26/00 M
(21)【出願番号】P 2021508875
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008615
(87)【国際公開番号】W WO2020195567
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2019064378
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-049161(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044588(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235843(WO,A1)
【文献】特開2016-215231(JP,A)
【文献】特開2017-022283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/53
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理体を処理する処理装置であって、
処理体を保持する保持部と、
前記保持部に保持された処理体の内部にレーザ光を照射して、面方向に沿って改質層を形成する改質部と、
前記保持部と前記改質部を相対的に回転させる回転機構と、
前記保持部と前記改質部を相対的に水平方向に移動させる移動機構と、
前記保持部、前記改質部、前記回転機構及び前記移動機構を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記回転機構により前記改質部に対して前記保持部に保持された処理体を相対的に回転させながら、前記改質部から処理体の内部に前記レーザ光を周期的に照射し、さらに前記移動機構により前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させて、前記改質層を形成するにあたり、
前記改質層の周方向間隔が所望閾値となる、前記レーザ光の径方向の境界位置を算出し、
前記境界位置から前記改質部の移動方向において、前記改質層の径方向間隔を小さくする、及び/又は、前記レーザ光の周波数を小さくするように、
前記保持部、前記改質部、前記回転機構及び前記移動機構を制御する、処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させるに伴い、前記改質部に対する前記保持部の相対的な回転速度を最大回転速度まで上昇させて、前記改質層の周方向間隔を一定にすることと、
前記改質部に対して前記保持部を前記最大回転速度で相対的に回転させながら、前記レーザ光が前記境界位置に到達するまで前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させることと、
前記境界位置から前記改質部の移動方向において、前記改質層の径方向間隔を小さくする、及び/又は、前記レーザ光の周波数を小さくすることと、を実行するように、
前記保持部、前記改質部、前記回転機構及び前記移動機構を制御する、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記改質部に対する前記保持部の相対的な回転速度と、前記改質層の周方向間隔との関係を変更して、前記改質層の周方向間隔が前記所望閾値となる、前記レーザ光の径方向位置を前記境界位置と算出する、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記所望閾値は、前記レーザ光のエネルギに応じて決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記改質部に対して前記保持部に保持された処理体を相対的に1周回転させながら、前記改質部から処理体の内部に前記レーザ光を周期的に照射して、環状の前記改質層を形成し、
その後、前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させ、
前記環状の改質層の形成と前記改質部の径方向への移動とを繰り返し行って、面方向に前記改質層を形成するように、
前記保持部、前記改質部、前記回転機構及び前記移動機構を制御する、請求項1~4のいずか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記改質部に対して前記保持部に保持された処理体を相対的に回転させながら、前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させつつ、前記改質部から処理体の内部に前記レーザ光を周期的に照射して、前記改質部の移動方向に螺旋状の前記改質層を形成するように、
前記保持部、前記改質部、前記回転機構及び前記移動機構を制御する、請求項1~4のいずか一項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記処理体は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板であり、
前記保持部は、前記第2の基板側から前記重合基板を保持し、
前記改質部は、前記第1の基板の内部にレーザ光を照射して、面方向に沿って前記改質層を形成する、請求項1~6のいずか一項に記載の処理装置。
【請求項8】
処理体を処理する処理方法であって、
保持部で処理体を保持することと、
レーザ光を照射する改質部に対して前記保持部に保持された処理体を相対的に回転させながら、前記改質部から処理体の内部に前記レーザ光を周期的に照射し、さらに前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させて、面方向に沿って改質層を形成することと、を有し、
前記改質層の周方向間隔が所望閾値となる、前記レーザ光の径方向の境界位置を算出し、
前記境界位置から前記改質部の移動方向において、前記改質層の径方向間隔を小さくする、及び/又は、前記レーザ光の周波数を小さくする、処理方法。
【請求項9】
前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させるに伴い、前記改質部に対する前記保持部の相対的な回転速度を最大回転速度まで上昇させて、前記改質層の周方向間隔を一定にすることと、
前記改質部に対して前記保持部を前記最大回転速度で相対的に回転させながら、前記レーザ光が前記境界位置に到達するまで前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させることと、
前記境界位置から前記改質部の移動方向において、前記改質層の径方向間隔を小さくする、及び/又は、前記レーザ光の周波数を小さくすることと、を有する、請求項8に記載の処理方法。
【請求項10】
前記改質部に対する前記保持部の相対的な回転速度と、前記改質層の周方向間隔との関係を変更して、前記改質層の周方向間隔が前記所望閾値となる、前記レーザ光の径方向位置を前記境界位置と算出する、請求項8又は9に記載の処理方法。
【請求項11】
前記所望閾値は、前記レーザ光のエネルギに応じて決定される、請求項8~10のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項12】
前記改質部に対して前記保持部に保持された処理体を相対的に1周回転させながら、前記改質部から処理体の内部に前記レーザ光を周期的に照射して、環状の前記改質層を形成し、
その後、前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させ、
前記環状の改質層の形成と前記改質部の径方向への移動とを繰り返し行って、面方向に前記改質層を形成する、請求項8~11のいずか一項に記載の処理方法。
【請求項13】
前記改質部に対して前記保持部に保持された処理体を相対的に回転させながら、前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させつつ、前記改質部から処理体の内部に前記レーザ光を周期的に照射して、前記改質部の移動方向に螺旋状の前記改質層を形成する、請求項8~11のいずか一項に記載の処理方法。
【請求項14】
前記処理体は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板であり、
前記保持部は、前記第2の基板側から前記重合基板を保持し、
前記改質部は、前記第1の基板の内部にレーザ光を照射して、面方向に沿って前記改質層を形成する、請求項8~13のいずか一項に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層型半導体装置の製造方法が開示されている。この製造方法では、2以上の半導体ウェハを積層して積層型半導体装置を製造する。この際、各半導体ウェハは、他の半導体ウェハに積層された後、所望の厚みを持つように裏面研削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、処理体の薄化処理のスループットを向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、処理体を処理する処理装置であって、処理体を保持する保持部と、前記保持部に保持された処理体の内部にレーザ光を照射して、面方向に沿って改質層を形成する改質部と、前記保持部と前記改質部を相対的に回転させる回転機構と、前記保持部と前記改質部を相対的に水平方向に移動させる移動機構と、前記保持部、前記改質部、前記回転機構及び前記移動機構を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記回転機構により前記改質部に対して前記保持部に保持された処理体を相対的に回転させながら、前記改質部から処理体の内部に前記レーザ光を周期的に照射し、さらに前記移動機構により前記保持部に対して前記改質部を相対的に径方向に移動させて、前記改質層を形成するにあたり、前記改質層の周方向間隔が所望閾値となる、前記レーザ光の径方向の境界位置を算出し、前記境界位置から前記改質部の移動方向において、前記改質層の径方向間隔を小さくする、及び/又は、前記レーザ光の周波数を小さくするように、前記保持部、前記改質部、前記回転機構及び前記移動機構を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理体の薄化処理のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかるウェハ処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図2】重合ウェハの構成の概略を示す側面図である。
【
図3】重合ウェハの一部の構成の概略を示す側面図である。
【
図6】搬送アームの構成の概略を示す縦断面図である。
【
図7】本実施形態にかかるウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
【
図8】本実施形態にかかるウェハ処理の主な工程の説明図である。
【
図9】処理ウェハに周縁改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図10】処理ウェハに周縁改質層を形成した様子を示す説明図である。
【
図11】処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図12】処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図13】処理ウェハから裏面ウェハを分離する様子を示す説明図である。
【
図14】処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図15】処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図16】処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図17】他の実施形態において処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程においては、例えば特許文献1に開示された方法のように、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成された半導体ウェハ(以下、ウェハという)に対し、当該ウェハの裏面を研削加工して、ウェハを薄化することが行われている。
【0009】
ウェハの裏面の研削加工は、例えば当該裏面に研削砥石を当接させた状態で、ウェハと研削砥石をそれぞれ回転させ、さらに研削砥石を下降させて行われる。かかる場合、研削砥石が摩耗し、定期的な交換が必要となる。また、研削加工においては、研削水を使用し、その廃液処理も必要となる。
【0010】
そこで、ウェハの内部に面方向に沿ってレーザ光を照射して改質層を形成し、当該改質層を起点にウェハを分離する。かかる場合、レーザ光を照射する際に用いられるレーザヘッドは経時的に劣化しにくく、消耗品が少なくなるため、メンテナンス頻度を低減することができる。また、レーザ光を用いたドライプロセスであるため、研削水や廃液処理が不要となる。しかしながら、このレーザ光を用いた薄化処理には、スループットの観点で改善の余地がある。
【0011】
本開示にかかる技術は、ウェハの薄化処理の時間を短縮して効率よく行う。以下、薄化処理を効率よく行う本実施形態にかかる処理装置としての改質装置を備えたウェハ処理システム、及び処理方法としてのウェハ処理方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
先ず、本実施形態にかかるウェハ処理システムの構成について説明する。
図1は、ウェハ処理システム1の構成の概略を模式的に示す平面図である。
【0013】
ウェハ処理システム1では、
図2及び
図3に示すように第1の基板としての処理ウェハWと第2の基板としての支持ウェハSとが接合された、重合基板としての重合ウェハTに対して所望の処理を行う。そしてウェハ処理システム1では、処理ウェハWの周縁部Weを除去し、さらに当該処理ウェハWを薄化する。以下、処理ウェハWにおいて、支持ウェハSに接合された面を表面Waといい、表面Waと反対側の面を裏面Wbという。同様に、支持ウェハSにおいて、処理ウェハWに接合された面を表面Saといい、表面Saと反対側の面を裏面Sbという。なお、本実施形態では処理ウェハWが、本開示における処理体に相当する。
【0014】
処理ウェハWは、例えばシリコン基板などの半導体ウェハであって、表面Waに複数のデバイスを含むデバイス層(図示せず)が形成されている。また、デバイス層にはさらに酸化膜F、例えばSiO2膜(TEOS膜)が形成されている。なお、処理ウェハWの周縁部Weは面取り加工がされており、周縁部Weの断面はその先端に向かって厚みが小さくなっている。また、周縁部Weはエッジトリムにおいて除去される部分であり、例えば処理ウェハWの外端部から径方向に1mm~5mmの範囲である。
【0015】
なお、
図2においては、図示の煩雑さを回避するため、酸化膜Fの図示を省略している。また、以下の説明で用いられる他の図面においても同様に、酸化膜Fの図示を省略する場合がある。
【0016】
支持ウェハSは、処理ウェハWを支持するウェハであって、例えばシリコンウェハである。支持ウェハSの表面Saには酸化膜(図示せず)が形成されている。また、支持ウェハSは、処理ウェハWの表面Waのデバイスを保護する保護材として機能する。なお、支持ウェハSの表面Saの複数のデバイスが形成されている場合には、処理ウェハWと同様に表面Saにデバイス層(図示せず)が形成される。
【0017】
ここで、処理ウェハWの周縁部Weにおいて、処理ウェハWと支持ウェハSが接合されていると、周縁部Weを適切に除去できないおそれがある。そこで、処理ウェハWと支持ウェハSの界面には、酸化膜Fと支持ウェハSの表面Saが接合された接合領域Aaと、接合領域Aaの径方向外側の領域である未接合領域Abとを形成する。このように未接合領域Abが存在することで、周縁部Weを適切に除去できる。なお、接合領域Aaの外側端部は、除去される周縁部Weの内側端部より若干径方向外側に位置する。
【0018】
なお、未接合領域Abは、例えば接合前に形成される。すなわち接合前に、酸化膜Fの外周部には、支持ウェハSの表面Saに対して接合強度を低下させる処理が行われる。具体的には、外周部の表層を研磨やウェットエッチングなどを行って除去してもよい。あるいは、外周部の表面を疎水化してもよいし、レーザで荒らしてもよい。
【0019】
また、未接合領域Abは、例えば接合後に形成してもよい。例えば接合後、酸化膜Fの外周部にレーザ光を照射することで、支持ウェハSの表面Saに対する接合強度を低下させることも可能である。
【0020】
図1に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ステーション2と処理ステーション3を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション2は、例えば外部との間で複数の重合ウェハTを収容可能なカセットCtが搬入出される。処理ステーション3は、重合ウェハTに対して所望の処理を施す各種処理装置を備えている。
【0021】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。図示の例では、カセット載置台10には、複数、例えば3つのカセットCtをY軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台10に載置されるカセットCtの個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0022】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10のX軸負方向側において、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送装置20が設けられている。ウェハ搬送装置20は、Y軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されている。また、ウェハ搬送装置20は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム22、22を有している。各搬送アーム22は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム22の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置20は、カセット載置台10のカセットCt、及び後述するトランジション装置30に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0023】
搬入出ステーション2には、ウェハ搬送装置20のX軸負方向側において、当該ウェハ搬送装置20に隣接して、重合ウェハTを受け渡すためのトランジション装置30が設けられている。
【0024】
処理ステーション3には、例えば3つの処理ブロックG1~G3が設けられている。第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2、及び第3の処理ブロックG3は、X軸正方向側(搬入出ステーション2側)から負方向側にこの順で並べて配置されている。
【0025】
第1の処理ブロックG1には、エッチング装置40、洗浄装置41、及びウェハ搬送装置50が設けられている。エッチング装置40と洗浄装置41は、積層して配置されている。なお、エッチング装置40と洗浄装置41の数や配置はこれに限定されない。例えば、エッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれX軸方向に延伸し、平面視において並列に並べて載置されていてもよい。さらに、これらエッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれ、積層されていてもよい。
【0026】
エッチング装置40は、後述する加工装置80で研削された処理ウェハWの裏面Wbをエッチング処理する。例えば、裏面Wbに対して薬液(エッチング液)を供給し、当該裏面Wbをウェットエッチングする。薬液には、例えばHF、HNO3、H3PO4、TMAH、Choline、KOHなどが用いられる。
【0027】
洗浄装置41は、後述する加工装置80で研削された処理ウェハWの裏面Wbを洗浄する。例えば裏面Wbにブラシを当接させて、当該裏面Wbをスクラブ洗浄する。なお、裏面Wbの洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置41は、処理ウェハWの裏面Wbと共に、支持ウェハSの裏面Sbを洗浄する構成を有していてもよい。
【0028】
ウェハ搬送装置50は、例えばエッチング装置40と洗浄装置41に対してY軸負方向側に配置されている。ウェハ搬送装置50は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム51、51を有している。各搬送アーム51は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム51の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置50は、トランジション装置30、エッチング装置40、洗浄装置41、及び後述する改質装置60に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0029】
第2の処理ブロックG2には、改質装置60及びウェハ搬送装置70が設けられている。なお、改質装置60の数や配置は本実施形態に限定されず、複数の改質装置60が積層して配置されていてもよい。
【0030】
改質装置60は、処理ウェハWの内部にレーザ光を照射し、周縁改質層及び内部面改質層を形成する。改質装置60の具体的な構成は後述する。
【0031】
ウェハ搬送装置70は、例えば改質装置60に対してY軸正方向側に配置されている。ウェハ搬送装置70は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム71、71を有している。各搬送アーム71は、多関節のアーム部材72に支持され、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。搬送アーム71の具体的な構成は後述する。そして、ウェハ搬送装置70は、洗浄装置41、改質装置60、及び後述する加工装置80に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0032】
第3の処理ブロックG3には、加工装置80が設けられている。なお、加工装置80の数や配置は本実施形態に限定されず、複数の加工装置80が任意に配置されていてもよい。
【0033】
加工装置80は、処理ウェハWの裏面Wbを研削する。そして、内部面改質層が形成された裏面Wbにおいて、当該内部面改質層を除去し、さらに周縁改質層を除去する。
【0034】
加工装置80は、回転テーブル81を有している。回転テーブル81は、回転機構(図示せず)によって、鉛直な回転中心線82を中心に回転自在に構成されている。回転テーブル81上には、重合ウェハTを吸着保持するチャック83が2つ設けられている。チャック83は、回転テーブル81と同一円周上に均等に配置されている。2つのチャック83は、回転テーブル81が回転することにより、受渡位置A0及び加工位置B0に移動可能になっている。また、2つのチャック83はそれぞれ、回転機構(図示せず)によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0035】
受渡位置A0では、重合ウェハTの受け渡しが行われる。加工位置B0では、研削ユニット84が配置される。研削ユニット84では、処理ウェハWの裏面Wbを研削する。研削ユニット84は、環状形状で回転自在な研削砥石(図示せず)を備えた研削部85を有している。また、研削部85は、支柱86に沿って鉛直方向に移動可能に構成されている。そして、チャック83に保持された処理ウェハWの裏面Wbを研削砥石に当接させた状態で、チャック83と研削砥石をそれぞれ回転させ、裏面Wbを研削する。
【0036】
以上のウェハ処理システム1には、制御部としての制御装置90が設けられている。制御装置90は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述のウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置90にインストールされたものであってもよい。
【0037】
次に、上述した改質装置60について説明する。
図4は、改質装置60の構成の概略を示す平面図である。
図5は、改質装置60の構成の概略を示す側面図である。
【0038】
改質装置60は、重合ウェハTを上面で保持する、保持部としてのチャック100を有している。チャック100は、処理ウェハWが上側であって支持ウェハSが下側に配置された状態で、当該支持ウェハSを吸着保持する。チャック100は、エアベアリング101を介して、スライダテーブル102に支持されている。スライダテーブル102の下面側には、回転機構103が設けられている。回転機構103は、駆動源として例えばモータを内蔵している。チャック100は、回転機構103によってエアベアリング101を介して、鉛直軸回りに回転自在に構成されている。スライダテーブル102は、その下面側に設けられた移動機構104によって、基台106に設けられY軸方向に延伸するレール105に沿って移動可能に構成されている。なお、移動機構104の駆動源は特に限定されるものではないが、例えばリニアモータが用いられる。
【0039】
チャック100の上方には、改質部としてのレーザヘッド110が設けられている。レーザヘッド110は、レンズ111を有している。レンズ111は、レーザヘッド110の下面に設けられた筒状の部材であり、チャック100に保持された処理ウェハWにレーザ光を照射する。
【0040】
レーザヘッド110は、レーザ光発振器(図示せず)から発振された高周波のパルス状のレーザ光であって、処理ウェハWに対して透過性を有する波長のレーザ光を、処理ウェハWの内部の所望位置に集光して照射する。これによって、処理ウェハWの内部においてレーザ光が集光した部分が改質し、周縁改質層及び内部面改質層が形成される。
【0041】
レーザヘッド110は、支持部材112に支持されている。レーザヘッド110は、鉛直方向に延伸するレール113に沿って、昇降機構114により昇降自在に構成されている。またレーザヘッド110は、移動機構115によってY軸方向に移動自在に構成されている。なお、昇降機構114及び移動機構115はそれぞれ、支持柱116に支持されている。
【0042】
チャック100の上方であって、レーザヘッド110のY軸正方向側には、マクロカメラ120とマイクロカメラ121が設けられている。例えば、マクロカメラ120とマイクロカメラ121は一体に構成され、マクロカメラ120はマイクロカメラ121のY軸正方向側に配置されている。マクロカメラ120とマイクロカメラ121は、昇降機構122によって昇降自在に構成され、さらに移動機構123によってY軸方向に移動自在に構成されている。
【0043】
マクロカメラ120は、処理ウェハW(重合ウェハT)の外側端部を撮像する。マクロカメラ120は、例えば同軸レンズを備え、可視光、例えば赤色光を照射し、さらに対象物からの反射光を受光する。なお例えば、マクロカメラ120の撮像倍率は2倍である。
【0044】
マイクロカメラ121は、処理ウェハWの周縁部を撮像し、接合領域Aaと未接合領域Abの境界を撮像する。マイクロカメラ121は、例えば同軸レンズを備え、赤外光(IR光)を照射し、さらに対象物からの反射光を受光する。なお例えば、マイクロカメラ121の撮像倍率は10倍であり、視野はマクロカメラ120に対して約1/5であり、ピクセルサイズはマクロカメラ120に対して約1/5である。
【0045】
次に、上述したウェハ搬送装置70の搬送アーム71について説明する。
図6は、搬送アーム71の構成の概略を示す縦断面図である。
【0046】
搬送アーム71は、重合ウェハTより大きい径を有する、円板状の吸着板130を有している。吸着板130の下面には、処理ウェハWの裏面Wbを保持する保持部140が設けられている。
【0047】
保持部140には処理ウェハWを吸引する吸引管141が接続され、吸引管141は例えば真空ポンプなどの吸引機構142に連通している。吸引管141には、吸引圧力を測定する圧力センサ143が設けられている。圧力センサ143の構成は任意であるが、例えばダイヤフラム型の圧力計が用いられる。
【0048】
吸着板130の上面には、当該吸着板130を鉛直軸回りに回転させる回転機構150が設けられている。回転機構150は、支持部材151に支持されている。また、支持部材151(回転機構150)は、アーム部材72に支持されている。
【0049】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。
図7は、ウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
図8は、ウェハ処理の主な工程の説明図である。なお、本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部の接合装置(図示せず)において、処理ウェハWと支持ウェハSが接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
【0050】
先ず、
図8(a)に示す重合ウェハTを複数収納したカセットCtが、搬入出ステーション2のカセット載置台10に載置される。
【0051】
次に、ウェハ搬送装置20によりカセットCt内の重合ウェハTが取り出され、トランジション装置30に搬送される。続けて、ウェハ搬送装置50により、トランジション装置30の重合ウェハTが取り出され、改質装置60に搬送される。改質装置60では、
図8(b)に示すように処理ウェハWの内部に周縁改質層M1が形成され(
図7のステップA1)、さらに
図8(c)に示すように内部面改質層M2が形成される(
図7のステップA2)。周縁改質層M1は、エッジトリムにおいて周縁部Weを除去の際の基点となるものである。内部面改質層M2は、処理ウェハWを薄化するための基点となるものである。
【0052】
改質装置60では先ず、ウェハ搬送装置50から重合ウェハTが搬入され、チャック100に保持される。次に、チャック100をマクロアライメント位置に移動させる。マクロアライメント位置は、マクロカメラ120が処理ウェハWの外側端部を撮像できる位置である。
【0053】
次に、マクロカメラ120によって、処理ウェハWの周方向360度における外側端部の画像が撮像される。撮像された画像は、マクロカメラ120から制御装置90に出力される。
【0054】
制御装置90では、マクロカメラ120の画像から、チャック100の中心Ccと処理ウェハWの中心Cwの第1の偏心量を算出する。さらに制御装置90では、第1の偏心量に基づいて、当該第1の偏心量のY軸成分を補正するように、チャック100の移動量を算出する。チャック100は、この算出された移動量に基づいてY軸方向に移動し、チャック100をマイクロアライメント位置に移動させる。マイクロアライメント位置は、マイクロカメラ121が処理ウェハWの周縁部を撮像できる位置である。ここで、上述したようにマイクロカメラ121の視野はマクロカメラ120に対して約1/5と小さいため、第1の偏心量のY軸成分を補正しないと、処理ウェハWの周縁部がマイクロカメラ121の画角に入らず、マイクロカメラ121で撮像できない場合がある。このため、第1の偏心量に基づくY軸成分の補正は、チャック100をマイクロアライメント位置に移動させるためともいえる。
【0055】
次に、マイクロカメラ121によって、処理ウェハWの周方向360度における接合領域Aaと未接合領域Abの境界を撮像する。撮像された画像は、マイクロカメラ121から制御装置90に出力される。
【0056】
制御装置90では、マイクロカメラ121の画像から、チャック100の中心Ccと接合領域Aaの中心Caの第2の偏心量を算出する。さらに制御装置90では、第2の偏心量に基づいて、接合領域Aaの中心とチャック100の中心が一致するように、周縁改質層M1に対するチャック100の位置を決定する。
【0057】
次に、
図9及び
図10に示すようにレーザヘッド110からレーザ光L1(周縁用レーザ光L1)を照射して、処理ウェハWの周縁部Weと中央部Wcの境界に周縁改質層M1を形成する(
図7のステップA1)。周縁改質層M1は、接合領域Aaの外側端部よりも径方向内側に形成される。
【0058】
上記レーザ光L1によって形成される周縁改質層M1の下端は、薄化後の処理ウェハWの目標表面(
図9中の点線)より上方に位置している。すなわち、周縁改質層M1の下端と処理ウェハWの表面Waとの間の距離H1は、薄化後の処理ウェハWの目標厚みH2より大きい。かかる場合、薄化後の処理ウェハWに周縁改質層M1が残らない。なお、処理ウェハWの内部において、周縁改質層M1からのクラックC1は表面Waまでのみ進展し、裏面Wbには到達しない。
【0059】
ステップA1では、制御装置90で決定されたチャック100の位置に合わせて、接合領域Aaの中心とチャック100の中心が一致するように、回転機構103によってチャック100を回転させると共に、移動機構104によってチャック100をY軸方向に移動させる。この際、チャック100の回転おいてとY軸方向の移動を同期させる。
【0060】
そして、このようにチャック100(処理ウェハW)を回転及び移動させながら、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部にレーザ光L1を照射する。すなわち、第2の偏心量を補正しながら、周縁改質層M1を形成する。そうすると周縁改質層M1は、接合領域Aaと同心円状に環状に形成される。このため、その後、周縁改質層M1を基点に周縁部Weを適切に除去することができる。
【0061】
なお、本例においては、第2の偏心量がX軸成分を備える場合に、チャック100をY軸方向に移動させつつ、チャック100を回転させて、当該X軸成分を補正している。一方、第2の偏心量がX軸成分を備えない場合には、チャック100を回転させずに、Y軸方向に移動させるだけでよい。
【0062】
次に、
図11及び
図12に示すようにレーザヘッド110からレーザ光L2(内部面用レーザ光L2)を照射して、面方向に沿って内部面改質層M2を形成する(
図7のステップA2)。なお、
図12に示す黒塗り矢印はチャック100の回転方向を示している。
【0063】
内部面改質層M2の下端は、薄化後の処理ウェハWの目標表面(
図11中の点線)より少し上方に位置している。すなわち、内部面改質層M2の下端と処理ウェハWの表面Waとの間の距離H3は、薄化後の処理ウェハWの目標厚みH2より少し大きい。なお、処理ウェハWの内部には、内部面改質層M2から面方向にクラックC2が進展する。クラックC2は、周縁改質層M1の内側のみに進展する。
【0064】
ステップA2では、チャック100(処理ウェハW)を1周(360度)回転させながら、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部にレーザ光L2を照射して、環状の内部面改質層M2を形成する。その後、レーザヘッド110を処理ウェハWの径方向内側(Y軸方向)に移動させる。これら環状の内部面改質層M2の形成と、レーザヘッド110の径方向内側への移動とを繰り返し行って、面方向に内部面改質層M2を形成する。なお、このステップA2における内部面改質層M2の形成方法の詳細については、後述する。
【0065】
なお、本実施形態では内部面改質層M2を形成するにあたり、レーザヘッド110をY軸方向に移動させたが、チャック100をY軸方向に移動させてもよい。また内部面改質層M2を形成するにあたり、チャック100を回転させたが、レーザヘッド110を移動させて、チャック100に対してレーザヘッド110を相対的に回転させてもよい。
【0066】
次に、処理ウェハWに内部面改質層M2が形成されると、ウェハ搬送装置70によって重合ウェハTが搬出される。
【0067】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により加工装置80に搬送される。加工装置80では、先ず、搬送アーム71からチャック83に重合ウェハTを受け渡す際、
図8(d)に示すように周縁改質層M1と内部面改質層M2を基点に、処理ウェハWの裏面Wb側(以下、裏面ウェハWb1という)を分離する(
図7のステップA3)。この際、処理ウェハWから周縁部Weも除去される。
【0068】
ステップA3では、
図13(a)に示すように搬送アーム71の吸着板130で処理ウェハWを吸着保持しつつ、チャック83で支持ウェハSを吸着保持する。そして、吸着板130を回転させて、周縁改質層M1と内部面改質層M2を境界に裏面ウェハWb1が縁切りされる。その後、
図13(b)に示すように吸着板130が裏面ウェハWb1を吸着保持した状態で、当該吸着板130を上昇させて、処理ウェハWから裏面ウェハWb1を分離する。この際、圧力センサ143で裏面ウェハWb1を吸引する圧力を測定することで、裏面ウェハWb1の有無を検知して、処理ウェハWから裏面ウェハWb1が分離されたか否かを確認することができる。なお、分離された裏面ウェハWb1は、ウェハ処理システム1の外部に回収される。以上のようにステップA3では、裏面ウェハWb1は周縁部Weと一体に分離され、すなわち周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離が同時に行われる。
【0069】
なお、本実施形態では、吸着板130を回転させた後、吸着板130を上昇させて処理ウェハWを分離したが、吸着板130の回転を省略して、吸着板130の上昇だけで処理ウェハWを分離してもよい。
【0070】
続いて、チャック83を加工位置
B0に移動させる。そして、研削ユニット84によって、
図8(e)に示すようにチャック83に保持された処理ウェハWの裏面Wbを研削し、当該裏面Wbに残る内部面改質層M2と周縁改質層M1を除去する(
図7のステップA4)。ステップA4では、裏面Wbに研削砥石を当接させた状態で、処理ウェハWと研削砥石をそれぞれ回転させ、裏面Wbを研削する。なおその後、洗浄液ノズル(図示せず)を用いて、処理ウェハWの裏面Wbが洗浄液によって洗浄されてもよい。
【0071】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により洗浄装置41に搬送される。洗浄装置41では処理ウェハWの研削面である裏面Wbがスクラブ洗浄される(
図7のステップA5)。なお、洗浄装置41では、処理ウェハWの裏面Wbと共に、支持ウェハSの裏面Sbが洗浄されてもよい。
【0072】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置50によりエッチング装置40に搬送される。エッチング装置40では処理ウェハWの裏面Wbが薬液によりウェットエッチングされる(
図7のステップA6)。上述した加工装置80で研削された裏面Wbには、研削痕が形成される場合がある。本ステップA6では、ウェットエッチングすることによって研削痕を除去でき、裏面Wbを平滑化することができる。
【0073】
その後、すべての処理が施された重合ウェハTは、ウェハ搬送装置50によりトランジション装置30に搬送され、さらにウェハ搬送装置20によりカセット載置台10のカセットCtに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0074】
なお、上記実施形態においては、ステップA3において処理ウェハWを分離した後、内部面改質層M2と周縁改質層M1の除去は、ステップA4において処理ウェハWの裏面Wbを研削することで行っていたが、ステップA6におけるウェットエッチングにより行われてもよい。かかる場合、ステップA4を省略することができる。
【0075】
また、ステップA4において処理ウェハWの裏面Wbを研削して内部面改質層M2と周縁改質層M1を除去すれば、ステップA6におけるウェットエッチングを省略してもよい。
【0076】
次に、ステップA2における内部面改質層M2の形成方法について、
図14~
図16を用いて詳細に説明する。ステップA2では、上述したように環状の内部面改質層M2が径方向に複数形成されるが、以下の説明においては、便宜上、各環を加工線という場合がある。また、
図11及び
図12に示すように、加工線上において隣接する内部面改質層M2の周方向の間隔を周方向間隔P(パルスピッチ)といい、径方向に隣接する加工線間の間隔を径方向間隔Q(インデックスピッチ)という。
【0077】
ここで本発明者らは、ステップA2の処理時間を短縮し、生産性を向上させることを検討した。ステップA2の処理時間を短縮するためには、単位時間あたりのレーザ光L2の照射回数を増やせばよいが、レーザヘッド110から照射するレーザ光L2の周波数を向上させるには限界がある。
【0078】
そこで本発明者らは、
図11及び
図12に示す周方向間隔Pと径方向間隔Qを大きくすることで、レーザ光L2の照射回数(内部面改質層M2の数)を減少させることを検討した。ステップA3で処理ウェハWから裏面ウェハWb1を適切に分離(剥離)するためには、その分離の基点となるクラックC2を適切に進展させる必要がある。例えば、周方向間隔Pが大き過ぎると、周方向に隣接する内部面改質層M2からのクラックC2が繋がらない。同様に径方向間隔Qが大き過ぎても、径方向に隣接する内部面改質層M2からのクラックC2が繋がらない。そして、本発明者らが鋭意検討した結果、一例として、レーザ光L2のエネルギが18.5μJである場合、周方向間隔Pが
15μm、径方向間隔Qが30μmであれば、クラックC2が適切に進展し、処理ウェハWを分離させることができた。
【0079】
一方、処理ウェハWの中心部では、裏面ウェハWb1を適切に分離できない場合があった。例えばレーザ光L2の周波数が一定の条件において、周方向間隔Pを一定に維持するためには、レーザ光L2の照射位置が径方向外側から内側に移動するにしたがって、チャック100の回転速度を上昇させる必要がある。しかしながら、チャック100の回転速度が上限に達すると、レーザ光L2の照射位置が径方向内側に移動するにつれ、周方向間隔Pは小さくなっていき、中心部では同一加工線上において内部面改質層M2が重なる場合もある。このため、処理ウェハWの中心部を分離できない場合があった。
【0080】
処理ウェハWの中心部を分離できない原因について、さらに詳細に説明する。レーザ光L2の照射によって内部面改質層M2が形成されると、当該内部面改質層M2が膨張する。この膨張の際に発生する応力によって、クラックC2が形成される。しかしながら例えば、内部面改質層M2が重なる場合、1つ目の内部面改質層M2に対して、次の(2回目の)レーザ光L2が照射されるため、径方向にクラックC2が進展し難くなる。また例えば、内部面改質層M2が重ならない場合であっても、周方向間隔Pが所望閾値より小さい場合、1つ目の内部面改質層M2から進展するクラックC2に対して、次の(2回目の)レーザ光L2が照射される。この場合、すでに応力が開放されたクラックC2にレーザ光L2が照射されるので、やはり径方向にクラックC2が進展し難くなる。このように処理ウェハWの中心部ではクラックC2を適切に進展させることができないため、当該中心部を分離できない場合がある。
【0081】
そこで、本発明者らは、処理ウェハWの中心部を分離させるための方法として、以下の2つの方法を想到するに至った。
【0082】
1つ目の方法は、処理ウェハWの中心部において、径方向間隔Qを小さくする方法である。上述したように各内部面改質層M2から径方向に進展するクラックC2の長さが短くなっても、径方向に隣接する内部面改質層M2からのクラックC2が繋がればよい。そこで、径方向間隔Qを小さくする。
【0083】
2つ目の方法は、レーザヘッド110から照射するレーザ光L2の周波数を小さくする方法である。かかる場合、周方向間隔Pを所望閾値以上に維持することができ、その結果、各内部面改質層M2からクラックC2を適切に進展させることができる。周方向間隔Pの所望閾値は、レーザ光L2のエネルギによって決定される。例えば、レーザ光L2のエネルギが18.5μJである場合、所望閾値は7.5μmとなる。
【0084】
以上のように、内部面改質層M2をウェハ面内全面に形成するためには、クラックC2を適切に進展させる必要がある。かかるクラックC2の条件を充足するため、本実施形態では、ステップA2において内部面改質層M2を形成するにあたり、以下の第1のステップA21~第3のステップA23を行う。なお、本実施形態では、例えばレーザヘッド110から照射されるレーザ光L2のエネルギは18.5μJであり、レーザ光L2の周波数は180kHzである。
【0085】
図14は、第1のステップA21の説明図である。第1のステップA21では、処理ウェハWの端部から第1の境界位置B1までの第1の領域R1において、内部面改質層M2を形成する。
【0086】
第1のステップA21では、周方向間隔Pを、所望閾値(例えば7.5μm)以上の第1の周方向間隔P1(例えば15μm)に一定に維持するため、レーザヘッド110を径方向内側に移動させるに伴い、チャック100の回転速度を上昇させる。レーザヘッド110は、レーザ光L2の照射位置が第1の境界位置B1に到達するまで移動する。この第1の境界位置B1は、チャック100の回転速度が最大回転速度(例えば1200rpm)に到達する位置である。
【0087】
第1の境界位置B1は、計算で求めることができる。例えば、レーザ光L2の周波数が180kHzで、チャック100の最大回転速度が1200rpmであって、第1の周方向間隔P1を15μmに一定に維持する場合、第1の境界位置B1は、中心から径方向に43.2mmの位置と算出される。すなわち、第1の周方向間隔P1である15μmを維持するための回転速度は、レーザ光L2の径方向位置に応じて算出でき、その算出される回転速度が最大回転速度に到達する位置を、第1の境界位置B1とする。なお、第1の境界位置B1は、ウェハ処理を行う前に予め算出しておく。
【0088】
なお、第1のステップA21において、径方向間隔Qは、第1の径方向間隔Q1(例えば30μm)である。
【0089】
図15は、第2のステップA22の説明図である。第2のステップA22では、第1の境界位置B1から第2の境界位置B2までの第2の領域R2において、内部面改質層M2を形成する。
【0090】
第2の領域R2では、チャック100の回転速度を最大回転速度(例えば1200rpm)に維持しても、レーザヘッド110を径方向内側に移動させるに伴い、周方向間隔Pは第1の周方向間隔P1(例えば15μm)より小さくなっていく。但し、上述したように周方向間隔Pが、所望閾値である第2の周方向間隔P2(例えば7.5μm)に到達するまでは、クラックC2を進展させることができる。そこで、第2のステップA22では、チャック100を最大回転速度で回転させながら、レーザヘッド110を、レーザ光L2の照射位置が第2の境界位置B2に到達するまで移動させる。この第2の境界位置B2は、周方向間隔Pが第2の周方向間隔P2に到達する位置である。
【0091】
第2の境界位置B2は、計算で求めることができる。例えば、レーザ光L2の周波数が180kHzで、チャック100の最大回転速度が1200rpmである場合、第2の境界位置B2は、中心から径方向に22mmの位置と算出される。すなわち、周方向間隔Pはレーザ光L2の径方向位置に応じて算出でき、その算出される周方向間隔Pが第2の周方向間隔P2に到達する位置を、第2の境界位置B2とする。換言すれば、第2の境界位置B2は、チャック100の回転速度と周方向間隔Pとの関係を変更して、当該周方向間隔Pが第2の周方向間隔P2になる位置に算出される。なお、第2の境界位置B2は、ウェハ処理を行う前に予め算出しておく。
【0092】
なお、第2のステップA22においても、径方向間隔Qは、第1のステップA21と同じ第1の径方向間隔Q1(例えば30μm)である。
【0093】
図16は、第3のステップA23の説明図である。第3のステップA23では、第2の境界位置B2より径方向内側の第3の領域R3において、内部面改質層M2を形成する。
【0094】
第3のステップA23では、上述したように径方向間隔Qを小さくするか(1つ目の方法)、又はレーザ光L2の周波数を小さくする(2つ目の方法)。あるいは、これら両方を行ってもよい。
【0095】
1つ目の方法について説明する。径方向間隔Qを小さくする場合、第1の領域R1と第2の領域R2の第1の径方向間隔Q1である例えば30μmを、第2の径方向間隔Q2である例えば10μm~15μmに小さくする。かかる場合、径方向間隔Qが小さくなって、各内部面改質層M2から径方向に進展するクラックC2の長さが短くなっても、径方向に隣接する内部面改質層M2からのクラックC2を繋げることができる。したがって、処理ウェハWの中心部も適切に分離することができる。なお、径方向間隔Qをどれだけ小さくするかは、処理ウェハWの中心部が分離できるように、予め設定しておけばよい。
【0096】
2つ目の方法について説明する。レーザヘッド110から照射するレーザ光L2の周波数を小さくする場合、周方向間隔Pを第1の周方向間隔P1に維持することができる。かかる場合、各内部面改質層M2からクラックC2を適切に進展させることができる。したがって、処理ウェハWの中心部も適切に分離することができる。なお、レーザ光L2の周波数をどれだけ小さくするかは、処理ウェハWの中心部が分離できるように、予め設定しておけばよい。
【0097】
ここで、径方向間隔Qを小さくすると、その分、内部面改質層M2を形成する数が増加し、処理時間が長くなる。また、レーザ光L2の周波数を小さくしても、内部面改質層M2を形成する数が増加し、処理時間が長くなる。この点、本実施形態では、径方向間隔Qを小さくするタイミング、又はレーザ光L2の周波数を小さくするタイミングを、レーザ光L2が第2の境界位置B2に到達するタイミングに設定しており、第3の領域R3を最小化することができる。したがって、処理時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0098】
以上の実施形態によれば、第3のステップA23において、径方向間隔Qを小さくする、及び/又は、レーザ光L2の周波数を小さくする(周方向間隔Pを維持する)。その結果、第3の領域R3において、クラックC2を適切に進展させることができ、処理ウェハWから裏面ウェハWb1を適切に分離することができる。
【0099】
第1のステップA21では、周方向間隔Pと径方向間隔Qをできるだけ大きくしているので、処理時間を短縮することができる。また、第2のステップA22では、チャック100の回転速度が最大回転速度に到達するため、周方向間隔Pは小さくなるが、径方向間隔Qとレーザ光L2の周波数をそれぞれ維持するので、処理時間が長くなるのを最小限に抑えることができる。さらに、第3のステップA23では、クラックC2を適切に進展させることを優先させる分、処理時間が長くなるが、第3の領域R3を最小化しているので、やはり処理時間が長くなるのを最小限に抑えることができる。したがって、処理時間を短縮して、スループットを向上させ、さらに生産性を向上させることができる。
【0100】
なお、処理ウェハWでは、シリコンの結晶方位に応じて、クラックC2の進展し易さが異なり、進展する長さも一定ではない。このようにクラックC2の進展長さが異なっていても、本実施形態の方法を用いれば、クラックC2を適切に繋げることができる。
【0101】
以上の実施形態では、ステップA2において環状の内部面改質層M2を複数形成したが、例えば
図17に示すように内部面改質層M2を、径方向外側から内側に螺旋状に形成してもよい。具体的には、チャック100(処理ウェハW)を回転させると共に、レーザヘッド110を処理ウェハWの径方向外側から内側に向けてY軸方向に移動させながら、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部にレーザ光L2を照射する。
【0102】
かかる場合においても、上記実施形態と同様に、予め第1の境界位置B1と第2の境界位置B2を求めておき、第1の領域R1~第3の領域R3において第1のステップA21~第3のステップA23を順次行う。そうすると、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0103】
また、以上の実施形態では、ステップA2において内部面改質層M2を径方向外側から内側に向けて形成したが、径方向内側から外側に向けて形成してもよい。すなわち、レーザヘッド110を処理ウェハWの径方向内側から外側に向けてY軸方向に移動させながら、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部にレーザ光L2を照射してもよい。かかる場合であっても、径方向外側の領域において、径方向間隔Qを小さくする、及び/又は、レーザ光L2の周波数を小さくする(周方向間隔Pを維持する)ことで、クラックC2を適切に進展させることができ、処理ウェハWから裏面ウェハWb1を適切に分離することができる。
【0104】
また、以上の実施形態では、周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離を同時に行っていたが、これらを別々に行ってもよい。かかる場合、ウェハ処理システム1において、周縁部Weを除去する周縁除去装置(図示せず)が、例えば改質装置60に積層して設けられる。周縁除去装置で周縁部Weを除去する方法は特に限定されるものではないが、例えば周縁部に物理的な衝撃を付与して除去してもよい。
【0105】
以上の実施形態では、処理ウェハWと支持ウェハSを直接接合する場合について説明したが、これら処理ウェハWと支持ウェハSは接着剤を介して接合されてもよい。
【0106】
また、以上の実施形態では、重合ウェハTにおける処理ウェハWを薄化する場合について説明したが、1枚のウェハを薄化する場合にも上記実施形態は適用できる。例えば、1枚のウェハに薄化処理を行った後、支持ウェハSと接合して重合ウェハTを形成してもよい。
【0107】
また、以上の実施形態では、処理体がシリコン基板である場合を例に説明を行ったが、処理体の種類はこれに限定されるものではない。例えば処理体としては、シリコン基板に代えて、ガラス基板、単結晶基板、多結晶基板または非晶質基板などが選択されてもよい。また例えば処理体としては、基板に代えて、インゴット、基台または薄板などが選択されてもよい。
【0108】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 ウェハ処理システム
60 改質装置
90 制御装置
100 チャック
103 回転機構
104 移動機構
110 レーザヘッド
115 移動機構
B2 第2の境界位置
M2 内部面改質層
P 周方向間隔
Q 径方向間隔
S 支持ウェハ
T 重合ウェハ
W 処理ウェハ