IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物 図1
  • 特許-伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物 図2
  • 特許-伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物 図3
  • 特許-伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220823BHJP
   C08F 287/00 20060101ALI20220823BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220823BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220823BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F287/00
H05K3/28 G
H05K3/28 D
H05K3/28 C
H01L23/30 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018547725
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2017038518
(87)【国際公開番号】W WO2018079608
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2016211837
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智章
(72)【発明者】
【氏名】植原 聡
(72)【発明者】
【氏名】池田 綾
(72)【発明者】
【氏名】大竹 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 知典
(72)【発明者】
【氏名】天童 一良
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-047308(JP,A)
【文献】特開平06-192350(JP,A)
【文献】特開昭60-118653(JP,A)
【文献】特開昭60-013861(JP,A)
【文献】特開平07-090228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2、251-289、291-297
C08L、C09D、C09J
H05K3/28、H01L23
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリスチレン鎖を有するエラストマ、
(B)単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレート、
(C)脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレート、
(D)2個以上のエチレン性不飽和基を有する2官能以上の化合物、及び
(E)重合開始剤
を含有する、伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物であって、
当該伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物を硬化させることによって半導体装置の伸縮性樹脂層を形成するために用いられる、伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物
【請求項2】
(A)ポリスチレン鎖を有するエラストマが、水素添加されたポリジエン鎖を更に有する共重合体である、請求項1に記載の伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物。
【請求項3】
(E)重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である、請求項1又は2に記載の伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物。
【請求項4】
(B)単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレートの直鎖アルキル基の炭素数が12以下である、請求項1~3いずれか一項に記載の伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物。
【請求項5】
(D)2個以上のエチレン性不飽和基を有する2官能以上の化合物の含有量が、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量に対して、0.3~20質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物。
【請求項6】
縮性樹脂層を備え、前記伸縮性樹脂層が請求項1~5いずれか一項に記載の伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物の硬化物である、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性樹脂層を形成する硬化性組成物、及び、伸縮性樹脂層を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェアラブル機器の要望が高まっている。ウェアラブル機器は、小型化に加え、身体の曲面への装着のし易さ、及び脱着にともなう接続不良の抑制のためのフレキシブル性及び伸縮性を有することが求められている。フレキシブル性及び伸縮性が求められる部材は、一般に、液状シリコーン又は液状ポリウレタンによって形成することができる。
【0003】
特許文献1は、スチレン系エラストマを含有する、可撓性樹脂層形成用樹脂組成物を開示している。
【0004】
特許文献2は、ポリスチレン鎖のブロックを含む共重合体ゴムを含む耐熱性防湿絶縁塗料を開示している。特許文献3は、エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物、及び環状脂肪側基を有する光重合性単量体を含有する光硬化性樹脂組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/080346号
【文献】特開2005-162986号公報
【文献】特開2007-308681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えばウェアラブル機器に搭載される半導体素子を封止する封止樹脂層は、高い伸縮性を有することが望ましい。また、ウェアラブル機器等を構成するフレキシブル基材のような伸縮性基材との十分な密着性を有する伸縮性樹脂層も求められている。
【0007】
そこで、本発明の一側面の目的は、十分な伸縮性及び密着性を有する伸縮性樹脂層を形成できる硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、(A)ポリスチレン鎖を有するエラストマ、(B)単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレート、(C)脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレート、(D)2個以上のエチレン性不飽和基を有する2官能以上の化合物、及び(E)重合開始剤を含有する、伸縮性樹脂層形成用硬化性組成物を提供する。言い換えると、本発明の一側面は、上記硬化性組成物の伸縮性樹脂層を製造するための応用又は使用に関する。
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記の特定の成分の組み合わせを含む硬化性組成物が、十分な伸縮性及び密着性を有する伸縮性樹脂層を形成できることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面に係る硬化性組成物は、十分な伸縮性及び密着性を有する伸縮性樹脂層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】伸縮回復率の測定例を示す応力-ひずみ曲線である。
図2】半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
図3】可撓性基板及び回路部品の一実施形態を示す断面図である。
図4】複数の半導体装置を得る工程の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[硬化性組成物]
一実施形態に係る硬化性組成物は、(A)ポリスチレン鎖を有するエラストマ、(B)単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレート、(C)脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレート、(D)2個以上のエチレン性不飽和基を有する2官能以上の化合物、及び(E)重合開始剤を含有する。この硬化性組成物は、活性光線の照射又は加熱によって硬化して、伸縮性を有する硬化物又は硬化膜を形成することができる。
【0014】
本明細書において、「伸縮性」は、引張荷重によってひずみを生じた後、荷重からの解放により元の形状又はそれに近い形状に回復できる性質を意味する。例えば、引張荷重によって50%のひずみを生じた後、元の形状又はそれに近い形状に回復できる材料は、伸縮性を有するということができる。より具体的には、後述の伸縮回復率が80%以上である樹脂層は、伸縮性樹脂層であるといえる。
【0015】
(A)エラストマ
ポリスチレン鎖を有するエラストマ(以下、「スチレン系エラストマ」ということがある。)は、例えば、ハードセグメントとしてのポリスチレン鎖と、ソフトセグメントとしてのポリジエン鎖(例えば、ポリブタジエン鎖、ポリイソプレン鎖)とを有する共重合体であることができる。このようなスチレン系エラストマの市販品としては、例えばJSR(株)「ダイナロンSEBSシリーズ」、クレイトンポリマージャパン(株)「クレイトンDポリマーシリーズ」、アロン化成(株)「ARシリーズ」が挙げられる。
【0016】
スチレン系エラストマのポリジエン鎖の二重結合が、水素添加により飽和していてもよい。水素添加されたポリブタジエン鎖を有するスチレン系エラストマは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(水素添加型スチレンブタジエン共重合ポリマー)であることができる。水素添加されたポリイソプレン鎖を有するスチレン系エラストマは、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(水添スチレンイソプレン共重合ポリマー)であることができる。水素添加されたポリジエン鎖を有するスチレン系エラストマは、耐候性向上に寄与すると考えられる。水素添加されたポリジエン鎖を有するスチレン系エラストマの市販品としては、例えばJSR(株)「ダイナロンHSBRシリーズ」、クレイトンポリマージャパン(株)「クレイトンGポリマーシリーズ」、旭化成(株)「タフテックシリーズ」、(株)クラレ「セプトンシリーズ」が挙げられる。
【0017】
スチレン系エラストマの重量平均分子量は、硬化性組成物の塗工性の観点から、30000~200000、又は50000~150000であってもよい。ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる、標準ポリスチレン換算値を意味する。
【0018】
(A)成分のスチレン系エラストマの含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量に対して、10~50質量%、又は20~40質量%であってもよい。スチレン系エラストマの含有量が10質量%以上であると、伸縮性が向上しやすくなる傾向にある。スチレン系エラストマの含有量が50質量%以下であると、硬化性組成物の粘度が低くなるため塗工性が向上する傾向にある。
【0019】
(B)単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレート
単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレートは、1個の(メタ)アクリロイル基及び直鎖アルキル基を有するエステル化合物である。通常、単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸と直鎖アルキルアルコールとから形成されたエステル化合物である。直鎖アルキル(メタ)アクリレートが有する直鎖アルキル基の炭素数は、12以下、又は10以下であってもよい。この炭素数が12以下であると、特に水素添加されたポリジエン鎖を有するエラストマを用いたときに、硬化性組成物から形成される硬化物が白濁しにくい傾向がある。直鎖アルキル基の炭素数は、6以上又は8以上であってもよい。
【0020】
単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレートの例としては、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、及びトリデシルアクリレートが挙げられる。これらのうち、炭素数12以下の直鎖アルキル基を有する、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の化合物を選択してもよい。これらの化合物は、単独または2種類以上組み合わせて使用することができ、これらの化合物をその他の単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレートと組み合わせることもできる。
【0021】
(B)成分の単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量に対して、10~50質量%、又は20~40質量%であってもよい。(B)成分の含有量が10質量%以上であると、伸縮性向上の効果が相対的に大きくなる傾向にある。(B)成分の含有量が50質量%以下であると、密着性向上の効果が相対的に向上する傾向にある。
【0022】
(C)脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレート、
脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレートは、通常、(メタ)アクリル酸と、脂環基を有するアルコール化合物とから形成されたエステル化合物である。脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレートは、例えば、シクロヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノ-ル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート(トリシクロデシルアクリレート)、及びテトラヒドロフルフリルアクリレートから選ばれる1種以上の化合物であることができる。これらの化合物は、単独または2種類以上組み合わせて使用することができ、これらの化合物をその他の脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレートと組み合わせることもできる。
【0023】
(C)成分の脂環基を有する単官能の(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量に対して、10~50質量%、又は20~40質量%であってもよい。(C)成分の含有量が10質量%以上であると、密着性向上の効果が相対的に向上する傾向にある。(C)成分の含有量が50質量%以下であると、伸縮性向上の効果が相対的に向上する傾向にある。
【0024】
(D)2個以上のエチレン性不飽和基を有する2官能以上の化合物
2個以上のエチレン性不飽和基を有する2官能以上の化合物が有するエチレン性不飽和基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、又はこれらの組合せであってもよい。2個以上のエチレン性不飽和基を有する2官能以上の化合物として、例えば、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ビニルアミド、アリール化ビニルが挙げられる。これらのうち伸縮性樹脂層の透明性の観点から、(メタ)アクリレート又はアリール化ビニルのうち少なくとも一方を選択してもよい。
【0025】
2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートなどの複素環式(メタ)アクリレート;これらのカプロラクトン変性体;ネオペンチルグリコール型エポキシ(メタ)アクリレートなどの脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、及び水添ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ(メタ)アクリレート;並びに、レゾルシノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAF型エポキシ(メタ)アクリレート、及びフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレートなどの芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0026】
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの脂肪族(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの複素環式(メタ)アクリレート;これらのカプロラクトン変性体;並びに、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、及びクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなどの芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
スチレン系エラストマとの相溶性、透明性、耐熱性、ポリイミド及び銅箔への密着性の観点から、(D)成分は脂環基を有する化合物であってもよく、その例としてはシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
以上例示した化合物は、単独または2種類以上組み合わせて使用することができ、選択された化合物をその他の2官能以上の化合物と組み合わせることもできる。
【0029】
(D)成分の2官能以上の化合物の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量に対して、0.3~20質量%、0.5~10質量%、又は1~5質量%であってもよい。(D)成分の含有量が0.3質量%以上であると、硬化後にタック性が低減する傾向、及び、伸縮性向上の効果が相対的に向上する傾向にある。(D)成分の含有量が20質量%以下であると、伸縮性向上の効果が相対的に向上する傾向にある。
【0030】
(E)重合開始剤
重合開始剤は、加熱又は紫外線などの照射によって重合を開始させる化合物であり、例えば、熱ラジカル重合開始剤、又は光ラジカル重合開始剤であることができる。硬化速度が速く常温硬化が可能なことから、光ラジカル重合開始剤を選択してもよい。
【0031】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、及びメチルシクロヘキサノンパーオキシドなどのケトンパーオキシド;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール;p-メンタンヒドロパーオキシドなどのヒドロパーオキシド;α、α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、及びジ-t-ブチルパーオキシドなどのジアルキルパーオキシド;オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、及びベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、及びジ-3-メトキシブチルパーオキシカーボネートなどのパーオキシカーボネート;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテートなどのパーオキシエステル;並びに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2’-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。硬化性、透明性、及び耐熱性の観点から、熱ラジカル重合開始剤は、上記ジアシルパーオキシド、上記パーオキシエステル、上記アゾ化合物、又はこれらの組合せであってもよい。
【0032】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどのベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンなどのα-ヒドロキシケトン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのα-アミノケトン;1-[(4-フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタジオン-2-(ベンゾイル)オキシムなどのオキシムエステル;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体などの2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、及び2,3-ジメチルアントラキノンなどのキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾインなどのベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタールなどのベンジル化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9、9’-アクリジニルヘプタン)などのアクリジン化合物;N-フェニルグリシン;並びにクマリンが挙げられる。
【0033】
2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体において、2つのトリアリールイミダゾール部位のアリール基の置換基は、同一で対称な化合物を与えてもよく、相違して非対称な化合物を与えてもよい。ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン化合物と3級アミンとを組み合わせてもよい。
【0034】
硬化性、透明性、及び耐熱性の観点から、光ラジカル重合開始剤は、上記α-ヒドロキシケトン、上記ホスフィンオキシド又はこれらの組合せであってもよい。これらの熱及び光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらを適切な増感剤と組み合わせてもよい。
【0035】
(E)成分の重合開始剤の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部、0.3~7質量部、又は0.5~5質量部であってもよい。(E)成分の含有量が0.1質量部以上であると、硬化が十分に進行し易い。(E)成分の含有量が10質量部以下であると、光透過性が向上する傾向がある。
【0036】
液状又は固形の硬化性組成物をそのまま使用してもよいし、硬化性組成物を有機溶剤で希釈して樹脂ワニスとしてもよい。室温(25℃)で液状の無溶剤の硬化性組成物は、有機溶剤の排出が無い点、局所的な部分に容易に塗布できる点等で有利である。
【0037】
有機溶剤は、硬化性組成物の各成分を溶解し得るものから選択できる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、及びp-シメンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、及び1,4-ジオキサンなどの環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及び4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、及びγ-ブチロラクトンなどのエステル;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートなどの炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンなどのアミドが挙げられる。溶解性及び沸点の観点から、有機溶剤は、トルエン、N,N-ジメチルアセトアミド又はこれらの組合せであってもよい。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
硬化性組成物は、必要に応じて、以上説明した成分に加えて、その他の成分を更に含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤のような添加剤が挙げられる。(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計の含有量は、硬化性組成物のうち有機溶剤以外の成分の総量に対して、例えば85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。
【0039】
[硬化物(伸縮性樹脂層)]
硬化性組成物から形成される硬化物(伸縮性樹脂層)の弾性率は、0.1MPa以上100MPa以下、0.2MPa以上50MPa以下、又は0.3MPa以上30MPa以下であってもよい。硬化物の弾性率が0.1MPa以上であると、ブロッキングにより硬化物同士が貼り付くといった問題が生じ難い傾向にある。硬化物の弾性率が100MPa以下であると、柔軟性及び伸縮性向上の効果が相対的に向上し得る。
【0040】
硬化性組成物から形成される硬化物(伸縮性樹脂層)の引張試験による破断伸び率は、100%以上であってもよい。硬化物の破断伸び率が100%以上であると、より一層優れた伸縮性を得ることができる。同様の観点から、硬化物の破断伸び率は150%以上、又は200%以上であってもよい。
【0041】
硬化性組成物から形成される硬化物(伸縮性樹脂層)は、高い伸縮性を有することができる。伸縮性は、2回の引張試験を含む以下の手順で測定される、伸縮回復性を指標として評価することができる。
1)長さ70mm、幅5mmの短冊状の硬化物を試験片として準備する。
2)試験片を、チャック間距離50mmのチャックで保持した状態で、1回目の引張試験で変位量(ひずみ)Xまで試験片を引張る。
3)チャックを初期位置に戻す。
4)2回目の引張試験を行い、荷重がかかり始める位置(荷重の立ち上がりの位置)の変位量(ひずみ)とXとの差Yを記録する。
5)式:伸縮回復率R=(Y/X)×100によって伸縮回復率を算出する。
引張試験は、25℃の環境下で行われる。Xは変位量25mm(ひずみ50%)に設定することができる。試験機としては、例えばマイクロフォース試験機(Illinois Tool Works Inc、「Instron 5948」)を用いることができる。図1は、伸縮回復性を求めるための引張試験から得られた応力-ひずみ曲線の例である。伸縮回復性を評価するための試験片の厚みは、100±10μmであってもよい。
【0042】
上記伸縮回復率は、繰り返し使用への耐性の観点から、80%以上、85%以上、又は90%以上であってもよい。伸縮回復率の上限は、特に制限されないが100%であってもよい。上述の実施形態に係る硬化性組成物は、通常、80%の伸縮回復率を示す硬化物を容易に形成することができる。
【0043】
硬化性組成物から形成される硬化物(伸縮性樹脂層)は、透明性の観点から、80%以上の全光線透過率、5.0以下のYellowness Index(YI)、及び5.0%以下のヘイズを有していてもよい。全光線透過率、YI及びヘイズは、分光ヘイズメータ(日本電色工業(株)製、分光ヘイズメータ「SH7000」)を用いて測定することができる。全光線透過率が85%以上、YIが4.0以下、ヘイズが4.0%以下であってもよい。全光線透過率が90%以上、YIが3.0以下、ヘイズが3.0%以下であってもよい。
【0044】
硬化性組成物から形成される硬化物(伸縮性樹脂層)は、例えば、ウェアラブル機器を構成する伸縮性の封止樹脂層として応用又は使用できる。
【0045】
[半導体装置]
図2は、一実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る半導体装置100は、伸縮性を有する可撓性基板1と、回路部品2と、伸縮性樹脂層3とで構成される回路基板を備える。可撓性基板1は、伸縮性樹脂層であってもよい。回路部品2は、可撓性基板1上に実装されている。伸縮性樹脂層3は、上述の実施形態に係る硬化性組成物から形成された硬化物(硬化膜)であることができる。伸縮性樹脂層3は、成膜された硬化性組成物を硬化させることにより形成される。伸縮性樹脂層3は、可撓性基板1及び回路部品2を封止しており、回路基板の表面を保護している。
【0046】
可撓性基板1の構成材料は、目的に応じて選択される。可撓性基板1の構成材料は、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂及びポリエチレングリコール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。この中でも、伸縮性に更に優れる観点から、可撓性基板1の構成材料は、シロキサン構造、脂肪族エーテル構造又はジエン構造を有するポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、長鎖アルキル鎖(例えば、炭素数1~20のアルキル鎖)を有するビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、及び、ロタキサン構造を有するポリエチレングリコール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。さらに、伸縮性に更に優れる観点から、可撓性基板1の構成材料は、シロキサン構造又は脂肪族エーテル構造又はジエン構造を有するポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、及び、長鎖アルキル鎖を有するビスマレイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。可撓性基板1の構成材料として、これらの樹脂から選ばれる1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
回路部品2は、例えば、メモリーチップ、発光ダイオード(LED)、RFタグ(RFID)、温度センサ、加速度センサ等の実装部品である。1個の可撓性基板1上に、1種類の回路部品が実装されていてもよく、2種類以上の回路部品が混在して実装されていてもよい。1個の可撓性基板1上に、1個又は複数個の回路部品2が実装されていてもよい。
【0048】
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0049】
(工程1:実装工程)
まず、図3に示すように、可撓性基板1の上に回路部品2を実装する。
【0050】
(工程2:封止工程)
次に、可撓性基板1及び回路部品2を封止部材としての硬化性組成物で封止する。可撓性基板1及び回路部品2は、例えば、封止部材を可撓性基板1に積層すること、封止部材を可撓性基板1に印刷すること、又は、封止部材に可撓性基板1を浸漬し、乾燥することにより封止することができる。封止は、印刷法、ディスペンス、ディッピング法等によって行うことができる。この中でも、Roll to Rollのプロセスで使用できる方法は、製造工程を短縮できる。
【0051】
(工程3:硬化工程)
封止工程において可撓性基板1及び回路部品2を封止部材で封止した後、封止部材(硬化性組成物)を硬化させることにより伸縮性樹脂層3を形成し、伸縮性樹脂層3を有する回路基板を得る。これにより、図1に示される半導体装置100が得られる。硬化は、加熱による熱硬化、又は、露光による光硬化であることができる。
【0052】
(工程4:切断工程)
半導体装置の製造方法は、必要に応じて、例えば、図4に示すように、回路基板を切断し分離することにより、回路部品を有する複数の半導体装置を得る工程を備えることができる。これにより、複数の半導体装置を一度に大面積で製造することが可能となり、製造工程を減らすことが容易となる。
【実施例
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
1.樹脂ワニス(硬化性組成物)の調製
実施例1
(A)成分として、水添スチレンイソプレン共重合ポリマー((株)クラレ製「セプトン2002」)30質量部、(B)成分として、イソデシルアクリレート(アルケマ(株)製「サートマーSR395」)30質量部、(C)成分として4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート(アルケマ(株)製「サートマーSR217」)37質量部、(D)成分としてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業(株)製「NKエステルA-DCP」)2質量部、及び、(E)成分としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASF社製「イルガキュア819」)1質量部を、500mlフラスコ内で60℃で攪拌しながら混合して、樹脂ワニスを得た。
【0055】
実施例2~10、及び比較例1~3
表1に示す配合比(質量部)に従い、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを得た。
【0056】
2.評価
[弾性率、伸び率]
各実施例、比較例の樹脂ワニスを、表面離型処理PETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製「ピューレックスA31」、厚み25μm)の離型処理面に、ナイフコータ((株)康井精機製「SNC-350」)を用いて塗布した。樹脂ワニスの塗膜に対して紫外線露光機(ミカサ(株)製「ML-320FSAT」)によって紫外線(波長365nm)を2000mJ/cmの露光量で照射し、物性評価用の硬化膜(伸縮性樹脂層、厚さ100μm)を形成させた。
【0057】
硬化膜から、長さ40mm、幅10mmの短冊状の試験片を切り出した。この試験片の引張試験を、25℃の環境下、オートグラフ((株)島津製作所製「EZ-S」)を用いて行った。得られた応力-ひずみ曲線から、硬化膜の弾性率及び伸び率を求めた。引張試験は、チャック間距離20mm、引張速度50mm/minの条件で行った。弾性率は荷重0.5~1.0Nの範囲における応力-ひずみ曲線の傾きから求めた。伸び率は硬化膜が破断した時点のひずみ(破断伸び率)から求めた。
【0058】
[伸縮回復率]
上記の評価用の硬化膜から、長さ70mm、幅5mmの短冊状の試験片を切り出した。この試験片の回復率を、25℃の環境下、マイクロフォース試験機(Illinois Tool Works Inc、「Instron 5948」)を用いた2回の引張試験によって測定した。1回目の引張試験で変位量(ひずみ)Xまで試験片を引張り、その後チャックを初期位置に戻してから2回目の引張試験を行った。2回目の引張試験において荷重が掛かり始める位置(荷重の立ち上がりの位置)の変位量(ひずみ)とXとの差をYとしたときに、伸縮回復率Rは、式:R=(Y/X)×100によって計算される値である。本測定では初期長さ(チャック間の距離)を50mm、Xを25mm(ひずみ50%)とした。
【0059】
[全光線透過率、YI、ヘイズ]
上記の評価用の硬化膜から、長さ30mm、幅30mmの試験片を切り出した。この試験片の全光線透過率、YI及びヘイズを、25℃の環境下、分光ヘイズメータ(日本電色工業(株)「SH7000」)を用いて測定した。
【0060】
[密着性の評価]
厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトン100H」)上に、ナイフコータ((株)康井精機製「SNC-350」)を用いて樹脂ワニスを塗布した。樹脂ワニスの塗膜に対して紫外線露光機(ミカサ(株)「ML-320FSAT」)によって紫外線(波長365nm)を2000mJ/cmの露光量で照射して、ポリイミドフィルム上に硬化膜(伸縮性樹脂層、厚さ100μm)を形成させた。ポリイミドフィルムと硬化膜の積層体から長さ50mm、幅10mmの短冊状の試験片を切り出した。この試験片の硬化膜側を接着剤(セメダイン(株)製「セメダインスーパーXゴールド」を用いて銅板に固定した。25℃の環境の下、オートグラフ((株)島津製作所「EZ-S」)を用いて、銅板に固定した硬化膜から、ポリイミドフィルムを、硬化膜と90度の角度を成す方向に50mm/minの速度で引き剥がした。このときの単位幅当たりの引張り応力(N/cm)の最大値に基づいて、密着性を評価した。
【0061】
【表1】
【0062】
(A)エラストマ
1)セプトン2002(水添スチレンイソプレン共重合ポリマー、(株)クラレ、重量平均分子量:55,000)
2)クレイトンMD6951(水素添加型スチレンブタジエン共重合ポリマー、クレイトンポリマージャパン(株)、重量平均分子量:60,000)
3)カヤフレックスBPAM-155(ゴム変性ポリアミド、日本化薬(株)、重量平均分子量:31,000)
(B)単官能の直鎖アルキル(メタ)アクリレート
4)SR395(イソデシルアクリレート、アルケマ(株)、「サートマーSR395」)
5)SR440(イソオクチルアクリレート、アルケマ(株)、「サートマーSR440」)
6)LA(ラウリルアクリレート、大阪有機化学工業(株))
(C)脂環式基を有する単官能の(メタ)アクリレート
7)SR217(4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート、アルケマ(株)、「サートマーSR217」)
8)SR420(3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート(アルケマ(株)、「サートマーSR420」)
9)FA-513AS(ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成(株)、「ファンクリルFA-513AS」)
10)ブレンマーCHA(シクロヘキシルアクリレート、日油(株))
(D)2官能以上の化合物
11)A-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業(株)、「NKエステルA-DCP」)
12)CD406(シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルケマ(株)、「サートマーCD406」)
13)FA-129AS(ノナンジオールジアクリレート(日立化成(株)、「ファンクリルFA-129AS」)
(E)重合開始剤
14)イルガキュア819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、BASFジャパン(株))
【0063】
表1は、評価結果を示す。各実施例の樹脂ワニス(硬化性組成物)から形成された硬化膜(伸縮性樹脂層)は、十分に優れた伸縮性及び密着性を示した。一方、(C)成分を含まない比較例1の樹脂ワニスから形成された硬化膜は、低い密着性を示した。(B)成分を含まない比較例2の樹脂ワニスから形成された硬化膜は、伸縮性が低く、伸び率も低かった。エラストマとしてゴム変性ポリアミドを含む比較例3の樹脂ワニスから形成された硬化膜は、伸縮性が低く、また、光学特性の点でも十分なものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の硬化性組成物から形成される硬化物(伸縮性樹脂層)は、優れた伸縮性及び密着性を示すことから、例えば、ウェアラブル機器の回路基板を保護するための封止層として応用又は使用することができる。本発明の硬化性組成物から形成される伸縮性樹脂層は、高湿度環境下での長期信頼性の点でも優れた性能を有し得る。
【符号の説明】
【0065】
1…可撓性基板、2…回路部品、3…伸縮性樹脂層、100…半導体装置。
図1
図2
図3
図4