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特許7127702付加硬化性シリコーンゴム組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】付加硬化性シリコーンゴム組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220823BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220823BHJP
   C08L 5/16 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L5/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020561329
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2019048224
(87)【国際公開番号】W WO2020129744
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2018235957
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 野歩
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102716104(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107189156(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108504102(CN,A)
【文献】特開2012-25923(JP,A)
【文献】特開2000-230078(JP,A)
【文献】特開2015-134881(JP,A)
【文献】特開平6-157912(JP,A)
【文献】特表2007-513514(JP,A)
【文献】米国特許第5106939(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、かつ分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子にアルケニル基が結合したオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)γ-シクロデキストリン:1~80質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:ケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)と、全組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基の総量とのモル比(Si-H基/Si-アルケニル基)が0.5~5.0となる量、及び
(D)付加反応触媒:触媒量
を含有する付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(A)成分の一部又は全部と(B)成分とが包接錯体を形成している、請求項1記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(A)成分が、分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子のみにアルケニル基が結合し、分子鎖両末端以外のケイ素原子に結合した置換基が、全てメチル基であるオルガノポリシロキサンである、請求項1又は2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(A)成分が、分子鎖片末端又は分子鎖両末端が、ジメチルアルケニルシロキシ基封鎖されたオルガノポリシロキサンである、請求項1又は2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(A)成分が、直鎖状のオルガノポリシロキサンである、請求項1~4のいずれか1項記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
(A)成分が、JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃における粘度が5,000~200,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンである、請求項1~5のいずれか1項記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
(1)(B)成分と水とを混合し、得られた混合物に(A)成分を加えて混合し、(A)成分と(B)成分との包接錯体を形成させる工程、
(2)形成された包接錯体に、(C)成分を加えて混合する工程、及び
(3)さらに(D)成分を加えて混合する工程
を含む、請求項2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物を製造する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化性シリコーンゴム組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、安全性、外観の良さ(透明性)、肌触りの良さ、更には耐久性の良さから、哺乳瓶用乳首や食品用等のヘルスケア材料、車載用のホース、ガスケット材料、建築部材、繊維のコーティング材料等、幅広い分野で使用されている。
【0003】
通常シリコーンゴムは摩擦係数が高く、摺動性に問題がある場合があった。この問題を解決するため、硬化後にゴム表面に潤滑剤がブリードするよう、シリコーンゴム組成物中に、フェニル基を有し、反応性置換基を有さないシリコーンオイルを添加する方法が提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、この場合、硬化物表面が潤滑剤の油膜で覆われており、外部への潤滑剤の汚染や、素手で触れた場合に不快感を与える場合があった。また、アルケニル基を有さない高粘度のポリオルガノシロキサンを添加することで、該シリコーンゴム組成物を硬化してなるシリコーンゴムの摩擦係数が低下することが開示されている(特許文献3)。この方法では、油膜の形成は抑制できるものの、硬さが低いゴムの場合、十分に摩擦係数を低下させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-93186号公報
【文献】特開2009-185254号公報
【文献】特開2008-195939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、ゴム表面に油膜を形成させず、また、ゴムの硬度に依存せずに低摩擦係数のシリコーンゴムを与えることが可能な付加硬化性シリコーンゴム組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、分子鎖片末端又は分子鎖両末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、γ-シクロデキストリンとを組み合わせることにより、該オルガノポリシロキサンをγ-シクロデキストリンが包接することで、ゴム硬度に依存せずに低摩擦係数のシリコーンゴムを与えることが可能な付加硬化性シリコーンゴム組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は下記発明を提供する。
1.(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、かつ分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子にアルケニル基が結合したオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)γ-シクロデキストリン:1~80質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:ケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)と、全組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基の総量とのモル比(Si-H基/Si-アルケニル基)が0.5~5.0となる量、及び
(D)付加反応触媒:触媒量
を含有する付加硬化性シリコーンゴム組成物。
2.(A)成分の一部又は全部と(B)成分とが包接錯体を形成している、1記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
3.(A)成分が、分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子のみにアルケニル基が結合し、分子鎖両末端以外のケイ素原子に結合した置換基が、全てメチル基であるオルガノポリシロキサンである、1又は2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
4.(A)成分が、分子鎖片末端又は分子鎖両末端が、ジメチルアルケニルシロキシ基封鎖されたオルガノポリシロキサンである、1又は2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
5.(A)成分が、直鎖状のオルガノポリシロキサンである、1~4のいずれかに記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
6.(A)成分が、JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃における粘度が5,000~200,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンである、1~5のいずれかに記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
7.(1)(B)成分と水とを混合し、得られた混合物に(A)成分を加えて混合し、(A)成分と(B)成分との包接錯体を形成させる工程、
(2)形成された包接錯体に、(C)成分を加えて混合する工程、及び
(3)さらに(D)成分を加えて混合する工程
を含む、請求項2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物を製造する製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記(A)~(D)成分の特定量の組み合わせにより、ゴム表面に油膜を形成させず、ゴム硬度に依存せずに低摩擦係数のシリコーンゴムを与えることが可能な付加硬化性シリコーンゴム組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、かつ分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子にアルケニル基が結合したオルガノポリシロキサンである。(A)成分は、本発明の付加硬化性シリコーンゴム組成物(以下、組成物と記載する場合がある)の主剤(ベースポリマー)である。ケイ素原子に結合したアルケニル基は、1分子中に少なくとも2個である。
【0010】
(A)成分としては、下記平均組成式(I)で示される、25℃で液状のものを用いることができる。
1 aSiO(4-a)/2 ・・・(I)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1~10非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基であり、分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子にアルケニル基が結合する。aは1.5~2.8の範囲の正数であり、1.8~2.5が好ましく、1.95~2.05がより好ましい。)
【0011】
上記R1で示されるケイ素原子に結合した炭素数1~10、好ましくは1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。全R1の90モル%以上がメチル基であることが好ましく、分子鎖末端以外は全てメチル基であることがより好ましい。
【0012】
1のうち少なくとも2個はアルケニル基である。アルケニル基としては、炭素数2~8のものが好ましく、炭素数2~6のものがより好ましく、ビニル基がさらに好ましい。なお、アルケニル基の含有量は、(A)オルガノポリシロキサン中1.0×10-6mol/g~3.0×10-3mol/gが好ましく、1.0×10-5mol/g~2.0×10-3mol/gがより好ましい。アルケニル基の量がこの範囲内であれば、硬度がより適切な範囲内となり、優れたゴム物性を有する硬化物を得ることができる。
【0013】
本発明の(A)成分は、分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子にアルケニル基が結合する。つまり、分子鎖末端のケイ素原子(即ち、トリオルガノシロキシ基中のケイ素原子)はアルケニル基を有する。分子鎖末端のケイ素原子にアルケニル基を有すると、後述する(B)成分と包接錯体を形成した後に、後述する(C)成分とのヒドロシリル化付加反応(架橋反応)により末端を封鎖することができ、(B)成分が(A)成分から抜け出すことを防止できる。また、分子鎖途中のケイ素原子(即ち、ジオルガノシロキサン単位又はモノオルガノシルセスキオキサン単位中のケイ素原子)に結合したアルケニル基を有していても、していなくてもよいが、有しない方が、後述する(B)成分との包接錯体化が進行しやすくなる。中でも、分子鎖片末端又は分子鎖両末端、好ましくは分子鎖両末端のケイ素原子のみにアルケニル基が結合し(ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖)、分子鎖両末端以外のケイ素原子に結合した置換基(側鎖)が、全てメチル基であるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0014】
また、分子鎖片末端又は分子鎖両末端が、ジメチルアルケニルシロキシ基封鎖されたオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0015】
このオルガノポリシロキサンの構造は直鎖状が好ましく、具体的には、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され(分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子にアルケニル基が結合する)、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状が好ましく、部分的にはモノオルガノシルセスキオキサン単位を有する分岐状構造、環状構造等であってもよい。
【0016】
(A)成分のオルガノポリシロキサンとして、具体的には、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体、分子鎖の片末端がジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖で他方の片末端がトリオルガノシロキシ基封鎖であるジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体等が挙げられる。中でも、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体が好ましく、分子鎖両末端アルケニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンが好ましい。なお、上記各シロキサン中の「オルガノ基」とは、式(I)中のR1のうち、アルケニル基を除く非置換又は置換の1価炭化水素基と同様のものを意味するものである。
【0017】
(A)オルガノポリシロキサンの平均重合度は、2,000以下が好ましく、100~1,500がより好ましく、200~1,500がさらに好ましい。上記範囲であると後述する(B)成分との包接錯体が形成しやすく、ペースト状の包接錯体を得ることができる。
なお、本発明中で言及する平均重合度とは、数平均重合度のことを指し、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした平均重合度を指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:1mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:KF-805L×2(Shodex社製)
カラム温度:25℃
試料注入量:30μL(濃度0.2質量%のトルエン溶液)
【0018】
(A)オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は、5,000~200,000mPa・sが好ましく、5,000~150,000mPa・sがより好ましい。この粘度範囲であると、(B)成分との包接錯体化が進行しやすい。なお、本発明においては、粘度は、JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃における粘度であり、BH型回転粘度計した値である。
【0019】
[(B)成分]
(B)成分は、γ-シクロデキストリンである。γ-シクロデキストリンは8つのD-グルコースがα-1,4グリコシド結合によって環状構造をとる化合物である。このγ-シクロデキストリンは、環の外側が親水性、環の内側が疎水性の環境となっており、水を媒体とした疎水性相互作用により、有機分子を環内に取り込み、包接錯体を形成することが可能である。本発明の組成物において(B)成分は、(A)成分の一部又は全部を(B)成分の環内に取り込み包接錯体を形成し、(A)成分の表面状態を変えることで硬化後のゴム特性(摩擦係数低下、耐溶剤性向上)を変化させるために使用される成分である。
【0020】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、1~80質量部であり、好ましくは5~80質量部、より好ましくは10~80質量部である。この範囲であると、容易に(A)成分との包接錯体をより形成されやすくなり、硬化後のゴムの摩擦係数の低減や耐溶剤性向上効果をより発揮できる。
【0021】
本発明において、(A)成分の一部又は全部と(B)成分とが包接錯体を形成する場合があるが、この包接錯体の形成は外観により確認できる。なお、(B)成分は一部が包接錯体の形成に用いられていてもよく、全部が用いられていてもよい。具体的には、(A)成分と(B)成分の包接錯体化が進行すると、(A)成分と(B)成分とからなる混合物の全体が均一な不透明白色ペーストとなり、さらに粒状物として存在していた単体の(B)成分が減少し、粒状物がなくなる。粒状物は、JIS K 5600-5-1999に記載のグラインドメーターを用いた分散度測定により、詳細に確認できる。本発明において、包接錯体が形成されたときの分散度は、グラインドメーター(0~100μmゲージ)で分散度測定をした際に、40μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは検出限界である0μm以下である。
なお、(A)成分と(B)成分の包接錯体の形成方法については、組成物の製造方法において詳細に説明する。
【0022】
[(C)成分]
(C)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(C)成分は、分子中のSi-H基が前記(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。
【0023】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(II)で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上、より好ましくは3~100個、さらに好ましくは3~80個のケイ素原子結合水素原子(Si-H基)を有するものが好適に用いられる。
2cSiO(4-b-c)/2 (II)
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。bは0.7~2.1、cは0.001~1.0、かつb+cは0.8~3.0の範囲の正数である。)
【0024】
式(II)中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1~10、好ましくは1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。R2の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等を挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有さないものが好ましい。
【0025】
bは0.7~2.1、好ましくは0.8~2.0であり、cは0.001~1.0、好ましくは0.01~1.0であり、かつb+cは0.8~3.0、好ましくは1.0~2.5の範囲の正数である。(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0026】
このような(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基等で置換したもの等が挙げられる。
【0027】
ケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)の含有量は、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中、5.0×10-4~1.7×10-2mol/gが好ましく、1.0×10-3~1.7×10-2mol/gがより好ましい。この範囲内であれば、安定な物性を有するゴム硬化物を得ることができる。
【0028】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、0.05~40質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましい。また、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)と、全組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基の総量とのモル比(Si-H基/Si-アルケニル基)が0.5~5.0となる量であり、0.8~3.0となる量が好ましい。この範囲とすることで、組成物の架橋が可能となる。なお、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有する成分が(A)成分のみの場合は、上記は、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)と、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の総量とのモル比(Si-H基/Si-アルケニル基)となる。
【0029】
[(D)成分]
(D)成分の付加反応触媒は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、白金族金属系付加反応触媒が挙げられ、具体的には、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。
【0030】
付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、(A)成分に対し、白金族金属元素質量換算として0.01~1,000ppmが好ましく、0.1~1,000ppmがより好ましく、1~500ppmがさらに好ましい。
【0031】
[任意成分]
本発明の付加硬化性シリコーンゴム組成物に、前記(A)~(D)成分以外にも、発明の効果を損なわない限り、その他の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
[(E)成分]
本発明の(E)成分は、分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子にアルケニル基が結合していないオルガノポリシロキサンである。(E)成分のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(III)で表される、25℃で液状のものが挙げられる。
(R3 3SiO1/22(R4 2SiO2/2d (III)
(式中、R3は互いに同一又は異種の炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。R4は互いに同一又は異種の炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。dは1~1,500、好ましくは10~1,100、より好ましくは10~800の範囲の正数である。)
【0033】
式(III)中、R3は互いに同一又は異種の炭素数1~10、好ましくは1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、上記R2と同様のものが例示される。
【0034】
4は互いに同一又は異種の炭素数1~10、好ましくは1~8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。R4の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0035】
(E)成分は、分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を有さない点で、前記(A)成分のオルガノポリシロキサンとは差別化されるものである。R4にアルケニル基(炭素数2~8のものが好ましく、炭素数2~6のものがより好ましく、ビニル基がさらに好ましい。)を有していても、有していなくてもよい。有する場合、アルケニル基の含有量は、(E)成分中0.00005~0.012mol/gが好ましく、0.00009~0.012mol/gがより好ましい。平均重合度は、通常1,500以下が好ましく、10~1,100がより好ましい。
【0036】
(E)成分のオルガノポリシロキサンとして、具体的には、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体が挙げられる。なお、上記各シロキサン中の「オルガノ基」とは、式(III)中のR3のうち、アルケニル基を除く非置換又は置換の1価炭化水素基と同様のものを意味するものである。
【0037】
(E)オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は、2~200,000mPa・sが好ましく、10~100,000mPa・sがより好ましい。
【0038】
(E)成分は、必要に応じて配合される任意成分であり、配合される場合の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~30質量部であり、好ましくは0.5~20質量部である。また、組成物全体として、(A)成分と(E)成分のケイ素原子結合アルケニル基の総量に対する、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)とのモル比(Si-H基/アルケニル基)が、0.5~5.0が好ましく、0.8~3.0がより好ましい。この範囲とすることで、組成物の架橋が可能となる。
【0039】
その他の成分として、必要に応じて、乾式シリカ、沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムのような充填剤;カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニル基含有環状シロキサン化合物;窒素含有化合物、アセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤;酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤;ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤;接着性付与剤;及びチクソ性付与剤等を配合することができる。その量は本発明の効果を妨げない範囲で、適量を選択できる。
【0040】
[製造方法]
本発明の組成物の製造方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。
上記(A)~(D)成分、さらに必要に応じて(E)成分、その他の任意成分を添加して、撹拌機等で均一に混合することにより、付加硬化性シリコーンゴム組成物を調製することができる。
【0041】
特に、(A)成分と(B)成分との包接錯体を形成させる場合、例えば、以下のような(1)~(3)工程を含む方法が挙げられる。
(1)(B)成分と水とを混合し、得られた混合物に(A)を加えて混合し、(A)成分と(B)成分との包接錯体を形成させる工程、
(2)形成された包接錯体に、(C)成分を加えて混合する工程、及び
(3)さらに(D)成分を加えて混合する工程
【0042】
(1)(B)成分と水とを混合し、得られた混合物に(A)を加えて混合し、(A)成分と(B)成分との包接錯体を形成させる工程
まずは、(B)成分に水を加える。水の量は特に限定されないが、(B)成分100質量部に対し、水を20~100質量部加えて、ペースト化してもよく、(B)成分100質量部に対し、水を300~600質量部加えて、飽和水溶液や懸濁液としてもよい。ペースト化する方法が、使用する水の量を最も減らすことができ、その後の乾燥工程を簡略化できる点で好適である。
【0043】
ペースト化した場合、ペーストに(A)成分を加えて乳鉢や、プラネタリーミキサー等の混練機で、20℃~100℃で、数分~数時間、好ましくは1分~1時間混練する。
飽和水溶液や懸濁液とした場合、飽和水溶液や懸濁液に(A)成分を加え、20~80℃で、ホモジナイザー等で、撹拌を数分から数日間、好ましくは10分~72時間行う。
【0044】
(1)工程後に、必要であれば水を除去する工程を有していてもよく、例えば、室温又は加熱下、減圧にて水分を留去する方法が挙げられる。
【0045】
(2)形成された包接錯体に、(C)成分を加えて混合する工程
混合時間及び温度は特に限定されず、例えば、0~80℃で5分~120分混合すればよい。反応制御剤を用いる場合は、この工程で加える。
【0046】
(3)さらに(D)成分を加えて混合する工程
混合時間及び温度は特に限定されず、例えば、0~80℃で1秒~30分混合すればよい。
【0047】
[成形・硬化方法]
付加硬化性シリコーンゴム組成物の成形・硬化方法としては、常法を採用し得るが、成形法として射出成形、トランスファー成形、注入成形、圧縮成形等から目的にあった最適な手段を選択することが可能である。硬化条件としては、40~230℃で3秒~160分間程度の加熱処理(一次加硫)条件を採用し得る。また、必要に応じて任意に40~230℃で10分~24時間程度の二次加硫(ポストキュア)を行ってもよい。
【0048】
[硬化物]
本発明の組成物を120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行って得られた硬化物について、JIS K 6253-3:2012に基づき測定した、デュロメータタイプAにおける硬さは、10~90が好ましく、20~80がより好ましい。
【0049】
下記条件で測定した動摩擦係数(μ’)は、0.01~0.60が好ましく、0.01~0.40がより好ましい。
[動摩擦係数測定条件]
測定方式:水平直線往復摺動運動方式
接触子:鋼球
荷重:100g
速度:10mm/秒
【0050】
本発明の付加硬化性シリコーンゴム組成物は、硬化後に油膜を伴わずに表面すべり性が高く、耐溶剤性に優れたシリコーンゴムを与えるものであり、摺動性が必要な用途や溶剤に接する用途に好適に用いられる。
【実施例
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記例で部は質量部を示す。また、平均重合度は、数平均重合度を示す。
【0052】
[実施例1]
γ-シクロデキストリン291部、水100部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(A-1、粘度:30,000mPa・s、アルケニル基量0.000038mol/g)600部を、プラネタリーミキサーを用いて25℃で20分混合後、80℃に昇温し、20分撹拌した。続いて、100℃、減圧下(1,200Pa)で3時間水分を留去し、均一白色ペーストである包接錯体(IC-1)を得た。この包接錯体(IC-1)について、JIS K 5600-2-5:1999に基づき、ラスター産業株式会社製グラインドメーターPI-901(測定範囲0~100μm)を用いて分散度を測定すると、0μm以下であった。
この包接錯体(IC-1)100部に、架橋剤として両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にSi-H基を平均35個有するメチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン(C-1、平均重合度:100、Si-H基量:0.0055mol/g)を0.88部、反応制御剤として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.10部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
なお、この混合物において、総Si-H基量とSi-ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.3である。
【0053】
このシリコーンゴム混合物中に、(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度1質量%)0.10部を混合してシリコーンゴム組成物とした。該組成物を120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行って得られた硬化物について、JIS K 6253-3:2012に基づき、デュロメータタイプAにおける硬さ、JIS K 6251:2010に基づき、引張強さ及び切断時伸びを測定した。さらに、協和界面科学株式会社製自動摩擦摩耗装置TSf-503を用い、下記条件にて動摩擦係数(μ’)を測定し、指触にて油膜の有無を確認した。結果を表1に示した。
【0054】
[動摩擦係数測定条件]
測定方式:水平直線往復摺動運動方式
接触子:鋼球
荷重:100g
速度:10mm/秒
【0055】
[実施例2]
実施例1の包接錯体(IC-1)100部に、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基を平均10個有する平均重合度200のジメチルポリシロキサン(E-1、粘度:700mPa・s、アルケニル基量0.00065mol/g)4.2部、架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン(C-1)を1.65部、反応制御剤として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.10部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
なお、この混合物において、総Si-H基量とSi-ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.3である。
【0056】
このシリコーンゴム混合物中に、(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度1質量%)0.10部を混合してシリコーンゴム組成物とした。該組成物を実施例1と同様にプレスキュア、及びポストキュアを行い、硬化物を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に測定及び確認を行った。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例3]
実施例1の包接錯体(IC-1)100部に、架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン(C-1)を0.44部、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され側鎖にSi-H基を有さないジメチルポリシロキサン(C-2、平均重合度:20、Si-H基量:0.0014mol/g)1.77部、反応制御剤として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.10部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
なお、この混合物において、総Si-H基量とSi-ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.3である。
【0058】
このシリコーンゴム混合物中に、(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度1質量%)0.10部を混合してシリコーンゴム組成物とした。該組成物を実施例1と同様にプレスキュア、及びポストキュアを行い、硬化物を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に測定及び確認を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例4]
γ-シクロデキストリン437部、水150部、実施例1のジメチルポリシロキサン(A-1)600部をプラネタリーミキサーを用いて25℃で20分混合後、80℃に昇温し、20分撹拌した。続いて、100℃、減圧下(1,200Pa)で3時間水分を留去し、均一白色ペーストである包接錯体(IC-2)を得た。この包接錯体(IC-2)について、実施例1と同様に分散度を測定すると、0μm以下であった。
この包接錯体(IC-2)100部に、架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン(C-1)を0.79部、反応制御剤として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.10部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
なお、この混合物において、総Si-H基量とSi-ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.3である。
【0060】
このシリコーンゴム混合物中に、(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度1質量%)0.10部を混合してシリコーンゴム組成物とした。該組成物を実施例1と同様にプレスキュア、及びポストキュアを行い、硬化物を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に測定及び確認を行った。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例5]
実施例4の包接錯体(IC-2)77.5部、実施例1のジメチルポリシロキサン(A-1)22.5部、架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン(C-1)を0.88部、反応制御剤として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.10部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
なお、この混合物において、総Si-H基量とSi-ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.3である。
【0062】
このシリコーンゴム混合物中に、(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度1質量%)0.10部を混合してシリコーンゴム組成物とした。該組成物を実施例1と同様にプレスキュア、及びポストキュアを行い、硬化物を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に測定及び確認を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例6]
γ-シクロデキストリン291部、水100部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が1,100であるジメチルポリシロキサン(A-2、粘度:100,000mPa・s、アルケニル基量0.000025mol/g)600部をプラネタリーミキサーを用いて25℃で20分混合後、80℃に昇温し、20分撹拌した。続いて、100℃、減圧下(1,200Pa)で3時間水分を留去し、均一白色ペーストである包接錯体(IC-3)を得た。この包接錯体(IC-3)について、実施例1と同様に分散度を測定すると、0μm以下であった。
この包接錯体(IC-3)100部に、架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン(C-1)を0.64部、反応制御剤として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.10部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
なお、この混合物において、総Si-H基量とSi-ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.3である。
【0064】
このシリコーンゴム混合物中に、(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度1質量%)0.10部を混合してシリコーンゴム組成物とした。該組成物を実施例1と同様にプレスキュア、及びポストキュアを行い、硬化物を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に測定及び確認を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
実施例1のジメチルポリシロキサン(A-1)100部、架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン(C-1)を1.18部、反応制御剤として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.10部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
なお、この混合物において、総Si-H基量とSi-ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.3である。
【0066】
このシリコーンゴム混合物中に、(D)成分として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度1質量%)0.10部を混合してシリコーンゴム組成物とした。該組成物を実施例1と同様にプレスキュア、及びポストキュアを行い、硬化物を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に測定及び確認を行った。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例2]
α-シクロデキストリン(6つのD-グルコースがα-1,4グリコシド結合によって環状構造をとる化合物)291部、水100部、実施例1のジメチルポリシロキサン(A-1)600部を、プラネタリーミキサーを用いて25℃で20分混合後、80℃に昇温し、20分撹拌した。続いて、100℃、減圧下(1,200Pa)で3時間水分を留去した。この場合、得られた生成物は粒状物が多数みられる不均一半透明オイルであり、包接錯体が得られなかった。なお、ここで得られた生成物について、実施例1と同様に分散度を測定すると、100μm以上であった。
【0068】
[比較例3]
γ-シクロデキストリン600部、水200部、実施例1のジメチルポリシロキサン(A-1)600部を、ニーダーを用いて25℃で40分混合後、80℃に昇温し、30分撹拌した。続いて、100℃に昇温し、減圧下(1,200Pa)で4時間乾燥を行い、白色ペーストである包接錯体(IC-4)を得た。この包接錯体(IC-4)について、実施例1と同様に分散度を測定すると、0μm以下であった。しかし、生成した包接錯体の粘度が高すぎため、これ以上の操作ができなかった。
【0069】
【表1】
【0070】
[耐溶剤性]
実施例1で得られた硬化物及び比較例1で得られた硬化物について、JIS K6258に基づき、水、エタノール、アセトン、トルエン、n-ヘキサンにそれぞれ25℃で70時間浸漬した時の体積変化率を測定した結果を表2に示した。
【0071】
【表2】