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特許7127754無機フィラー分散安定化剤、無機フィラー含有樹脂組成物、成形品及び添加剤
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  • 特許-無機フィラー分散安定化剤、無機フィラー含有樹脂組成物、成形品及び添加剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】無機フィラー分散安定化剤、無機フィラー含有樹脂組成物、成形品及び添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20220823BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220823BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220823BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K3/00
C08L101/00
C08G63/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022509470
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008355
(87)【国際公開番号】W WO2021192883
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020054256
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 洋志
(72)【発明者】
【氏名】田尻 裕輔
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141550(JP,A)
【文献】特開2013-095758(JP,A)
【文献】特開2001-019734(JP,A)
【文献】特開2019-074761(JP,A)
【文献】特開昭62-004433(JP,A)
【文献】特開平11-349842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00
C08K 3/00
C08L 101/00
C08G 63/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリエステルである無機フィラー分散安定化剤。
【化1】
(前記一般式(1)中、
は、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基である。
及びAは、それぞれ独立に、炭素原子数2~12の脂肪族多塩基酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族多塩基酸残基である。
及びGは、それぞれ独立に、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基である。
mは、繰り返し数を表し、1~20の範囲の整数である。
pは、Aの脂肪族多塩基酸又は芳香族多塩基酸の塩基酸官能基の数から1つ減じた整数である。
qは、Aの脂肪族多塩基酸又は芳香族多塩基酸の塩基酸官能基の数から1つ減じた整数である。
括弧で括られた繰り返し単位毎にA及びGはそれぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
酸価が20~400mgKOH/gの範囲である請求項1に記載の無機フィラー分散安定化剤。
【請求項3】
数平均分子量が300~5,000の範囲である請求項1又は2に記載の無機フィラー分散安定化剤。
【請求項4】
樹脂、無機フィラー及び請求項1~のいずれかに記載の無機フィラー分散安定化剤を含有する無機フィラー含有樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機フィラーが、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、チタン酸バリウム、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種以上である請求項に記載の無機フィラー含有樹脂組成物。
【請求項6】
減粘剤をさらに含有する請求項又はに記載の無機フィラー含有樹脂組成物。
【請求項7】
前記減粘剤が、ポリカルボン酸アルキルアンモニウム塩、高級脂肪酸アマイド、ポリエステル酸不飽和ポリアミノアマイド塩、片末端にのみカルボキシル基を有するポリエステルからなる群から選択される1種以上である請求項に記載の無機フィラー含有樹脂組成物。
【請求項8】
可塑剤をさらに含有する請求項のいずれかに記載の無機フィラー含有樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリサルファイド、ポリ塩化ビニル、変成ポリサルファイド、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル及び不飽和ポリエステルからなる群から選択される1種以上である請求項のいずれかに記載の無機フィラー含有樹脂組成物。
【請求項10】
請求項のいずれかに記載の無機フィラー含有樹脂組成物の成形品。
【請求項11】
ポリウレタン、炭酸カルシウム、減粘剤及び請求項1~のいずれかに記載の無機フィラー分散安定化剤を含む防水材。
【請求項12】
可塑剤と請求項1~のいずれかに記載の無機フィラー分散安定化剤を含有する添加剤。
【請求項13】
無機フィラーを含有する組成物に請求項1~のいずれかに記載の無機フィラー分散安定化剤を添加する無機フィラーを含む組成物の貯蔵安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機フィラー分散安定化剤、無機フィラー含有樹脂組成物、成形品及び添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建材、自動車用部材、衛生吸収物品、ストーンペーパー等は、無機フィラーを含む樹脂組成物から成形されており、無機フィラーによって耐衝撃性、耐屈曲性、寸法安定性、透湿性等の様々な機能が付与されている。
【0003】
上記成形品の機能性を高めるため及び増量によるコストダウンを図るため、無機フィラーの充填量をさらに増やすことが求められている。しかしながら樹脂組成物中の無機フィラーの充填量を増やすと、樹脂組成物の流動性が低下し、成形性が低下するという問題があった。
例えばウレタン防水床材用途では、無機フィラーとして炭酸カルシウムが一般的に用いられるが、炭酸カルシウムの充填量を増やすことによって、粘度が上昇し、成形性及びハンドリング性が悪くなる問題があった。
【0004】
樹脂組成物の無機フィラー含有量を増加させる方法としては、減粘剤を添加するという方法がとられており、種々の減粘剤が提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-079935号公報
【文献】特許昭54-34009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記減粘剤は、無機フィラーの表面を被覆することで、無機フィラー間の相互作用を抑制し、組成物の粘度を低下させている。一方で、組成物の粘度を低下させることによって、時間の経過に伴って無機フィラーが沈降して、無機フィラーを含む凝集体(ハードケーキ)を形成してしまい、貯蔵安定性が著しく損なわれてしまう問題があった。
また、前記減粘剤は組成物に含まれるバインダー樹脂の種類によっては減粘効果を示すことができない場合があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、無機フィラーを含有する組成物の粘度を低下させ、貯蔵安定性を向上させることができる無機フィラー分散安定化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するポリエステルによって、無機フィラーを含む樹脂組成物の粘度を低下させ、貯蔵安定性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルである無機フィラー分散安定化剤に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、無機フィラーを含有する組成物の粘度を低下させ、無機フィラーを含有する組成物の貯蔵安定性を向上させることができる無機フィラー分散安定化剤が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例3で製造した分散安定化剤CのMALDI-TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析)の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
[無機フィラー分散安定化剤]
本発明の無機フィラー分散安定化剤は、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルである。以下、本発明の無機フィラー分散安定化剤を「本発明の分散安定化剤」という場合があり、本発明の無機フィラー分散安定化剤であるポリエステルを「本発明のポリエステル」という場合がある。
本発明において「分散安定化剤」とは、無機フィラーを含有する組成物に添加することで、組成物中の無機フィラーが凝集して沈降することを防ぐ成分を意味する。
【0014】
本発明のポリエステルでは、両末端のカルボキシル基のうち一方のカルボキシル基が無機フィラーに吸着し、他方のカルボキシル基が別の無機フィラーに吸着することで、ポリエステルと無機フィラーからなる3次元ネットワークが形成されると考えられる。
組成物を保存する際のようなせん断力が非常に小さい状態では、前記3次元ネットワークはその形態が維持されて、系の粘度を高めて無機フィラーの沈降を抑制する一方で、組成物を使用する際のようなせん断力が大きい状態では、せん断力によって3次元ネットワークは一旦破壊されて分散し、系の粘度を低下させることができると考えられる。この効果は、組成物に用いられる様々なバインダー樹脂の影響を受けずに期待できる。
【0015】
本発明のポリエステルは、好ましくは下記一般式(1-1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(1-2)で表される繰り返し単位とを有するポリエステル、又は、下記一般式(1-1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(1-2)で表される繰り返し単位と、下記一般式(1-3)で表される繰り返し単位とを有するポリエステルであって、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルである。
【0016】
【化1】
(前記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)中、
Aは、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基であり、
Gは、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基であり、
Lは、炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基である。)
【0017】
本発明のポリエステルは、より好ましくは前記一般式(1-1)で表される繰り返し単位と、前記一般式(1-2)で表される繰り返し単位とを有するポリエステルであって、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルである。
【0018】
前記一般式(1-1)で表される繰り返し単位と、前記一般式(1-2)で表される繰り返し単位と、前記一般式(1-3)で表される繰り返し単位とを有するポリエステルの重合形式は特に限定されず、これら繰り返し単位のランダム共重合体でもよく、こられ繰り返し単位のブロック共重合体でもよい。
【0019】
本発明のポリエステルは、さらに好ましくは下記一般式(1)で表されるポリエステルである。
【0020】
【化2】
(前記一般式(1)中、
は、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基である。
及びAは、それぞれ独立に、炭素原子数2~12の脂肪族多塩基酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族多塩基酸残基である。
及びGは、それぞれ独立に、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基である。
mは、繰り返し数を表し、1~20の範囲の整数である。
pは、Aの脂肪族多塩基酸又は芳香族多塩基酸の塩基酸官能基の数から1つ減じた整数である。
qは、Aの脂肪族多塩基酸又は芳香族多塩基酸の塩基酸官能基の数から1つ減じた整数である。
括弧で括られた繰り返し単位毎にA及びGはそれぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。)
【0021】
本発明において「二塩基酸残基」とは、二塩基酸から塩基酸官能基を除いた有機基である。例えば二塩基酸残基がジカルボン酸残基である場合、前記ジカルボン酸残基とは、ジカルボン酸が有するカルボキシル基を除いた残りの有機基を示すものである。ジカルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
本発明において「多塩基酸残基」とは、2以上の塩基酸官能基を有する多塩基酸から塩基酸官能基を除いた有機基である。例えば多塩基酸残基がジカルボン酸残基、トリカルボン酸残基又はテトラカルボン酸残基である場合、前記ジカルボン酸残基、前記トリカルボン酸残基又は前記テトラカルボン酸残基とは、これらが有するカルボキシル基を除いた残りの有機基を示すものである。ジカルボン酸残基、トリカルボン酸残基及びテトラカルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
本発明において「ジオール残基」及び「アルコール残基」とは、ジオール及びアルコールから水酸基を除いた残りの有機基を示すものである。
本発明において「ヒドロキシカルボン酸残基」とは、ヒドロキシカルボン酸から水酸基及びカルボキシル基をそれぞれ除いた残りの有機基を示すものである。ヒドロキシカルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
【0022】
A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、脂環構造を含んでもよい。
A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基であり、当該炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基としては、コハク酸残基、アジピン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、シクロヘキサンジカルボン酸残基、ドデカンジカルボン酸残基、ヘキサヒドロフタル酸残基等が挙げられる。
【0023】
A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数4~10の脂肪族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは炭素原子数5~10の脂肪族ジカルボン酸残基であり、さらに好ましくはセバシン酸残基又はドデカンジカルボン酸残基である。
【0024】
及びAの炭素原子数2~12の脂肪族多塩基酸残基は、脂環構造を含んでもよい。
及びAの炭素原子数2~12の脂肪族多塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基であり、当該炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基としては、コハク酸残基、アジピン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、シクロヘキサンジカルボン酸残基、ドデカンジカルボン酸残基、ヘキサヒドロフタル酸残基、マレイン酸残基等が挙げられる。
【0025】
及びAの炭素原子数6~15の芳香族多塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数6~15の芳香族ジカルボン酸残基、炭素原子数6~15の芳香族トリカルボン酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族テトラカルボン酸残基であり、これらとしては、フタル酸残基、トリメリット酸残基、ピロメリット酸残基等が挙げられる。
【0026】
G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基としては、エチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、1,5-ペンタンジオール残基、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)残基、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロ-ルペンタン)残基、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)残基、3-メチル-1,5-ペンタンジオール残基、1,6-ヘキサンジオール残基、2,2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオール残基、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール残基、2-メチル-1,8-オクタンジオール残基、1,9-ノナンジオール残基等が挙げられる。
【0027】
G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基は、脂環構造及び/又はエーテル結合を含んでもよい。
前記脂環構造を含む炭素数2~9の脂肪族ジオール残基としては、例えば、1,3-シクロペンタンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジオール残基、1,3-シクロヘキサンジオール残基、1,4-シクロヘキサンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジメタノール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基等が挙げられる。
前記エーテル結合を含む炭素数2~9の脂肪族ジオール残基としては、例えば、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、テトラエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、トリプロピレングリコール残基等が挙げられる。
【0028】
G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基は、好ましくは炭素原子数3~8の脂肪族ジオール残基であり、より好ましくは2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロピレングリコール、プロピレングリコール残基又はジエチレングリコール残基である。
【0029】
Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基としては、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の炭素原子数3~19の脂肪族カルボン酸の脂肪鎖に水酸基が1つ置換したヒドロキシカルボン酸の残基が挙げられ、具体例としては乳酸残基、9-ヒドロキシステアリン酸残基、12-ヒドロキシステアリン酸残基、6-ヒドロキシカプロン酸残基等が挙げられる。
【0030】
Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基は、好ましくは炭素原子数4~18の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基であり、より好ましくは12-ヒドロキシステアリン酸残基である。
【0031】
pは、Aの脂肪族多塩基酸又は芳香族多塩基酸の塩基酸官能基の数から1つ減じた整数である。同様にqは、Aの脂肪族多塩基酸又は芳香族多塩基酸の塩基酸官能基の数から1つ減じた整数である。従って、A及びAが、それぞれ独立に、炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族ジカルボン酸残基である場合、A及びAが有する塩基酸官能基(カルボキシル基)の数はそれぞれ2となり、p及びqはそれぞれ1となって、前記一般式(1)は下記で表される。
【0032】
【化3】
【0033】
本発明のポリエステルは、例えば、前記一般式(1)中の各残基及びmの値の少なくとも1つが互いに異なる2種以上のポリエステルの混合物として使用されてもよい。このとき、mの平均値は好ましくは2~15の範囲である。
尚、mの平均値はポリエステルの数平均分子量から確認できる。
【0034】
本発明のポリエステルの数平均分子量(Mn)は、例えば100~6,000の範囲であり、好ましくは300~5,000の範囲であり、より好ましくは500~5,000の範囲の範囲であり、さらに好ましくは800~4,500の範囲である。
上記数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値であり、実施例に記載の方法により測定する。
【0035】
本発明のポリエステルの酸価は、好ましくは20~400mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは30~150mgKOH/gの範囲であり、さらに好ましく40~150mgKOH/gの範囲である。
上記ポリエステルの酸価は実施例に記載の方法にて確認する。
【0036】
本発明のポリエステルの性状は、数平均分子量や組成などによって異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0037】
本発明のポリエステルは、脂肪族二塩基酸、脂肪族多塩基酸及び/又は芳香族多塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を含む反応原料を用いて得られる。ここで反応原料とは、本発明のポリエステルを構成する原料という意味であり、ポリエステルを構成しない溶媒や触媒を含まない意味である。また、「任意のヒドロキシカルボン酸」とはヒドロキシカルボン酸を用いてもよく、用いなくてもよいという意味である。
本発明のポリエステルの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができ、後述する製造方法により製造することができる。
【0038】
本発明のポリエステルの反応原料は、脂肪族二塩基酸、脂肪族多塩基酸及び/又は芳香族多塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を含めばよく、その他の原料を含んでもよい。
本発明のポリエステルの反応原料は、反応原料の全量に対して好ましくは90質量%以上が脂肪族二塩基酸、脂肪族多塩基酸及び/又は芳香族多塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸であり、より好ましくは脂肪族二塩基酸、脂肪族多塩基酸及び/又は芳香族多塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸のみからなる。
【0039】
本発明のポリエステルの製造に用いる脂肪族二塩基酸は、A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基に対応する脂肪族二塩基酸であり、使用する脂肪族二塩基酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いる脂肪族多塩基酸は、A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族多塩基酸残基に対応する脂肪族多塩基酸であり、使用する脂肪族多塩基酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いる芳香族多塩基酸は、A及びAの炭素原子数6~15の芳香族多塩基酸残基に対応する芳香族多塩基酸であり、使用する芳香族多塩基酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いる脂肪族ジオールは、G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基に対応する脂肪族ジオールであり、使用する脂肪族ジオールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いるヒドロキシカルボン酸は、Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基に対応するヒドロキシカルボン酸であり、使用するヒドロキシカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
使用する反応原料は、上記のエステル化物、上記の酸塩化物、上記の酸無水物等の誘導体も含む。例えばヒドロキシカルボン酸は、ε-カプロラクトン等のラクトン構造を有する化合物も含む。
【0040】
本発明のポリエステルは、本発明のポリエステルの各残基を構成する脂肪族二塩基酸、脂肪族多塩基酸及び/又は芳香族多塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を、反応原料に含まれるカルボキシル基の当量が水酸基の当量よりも多くなる条件下で反応させることによって製造できる。
本発明のポリエステルは、本発明のポリエステルの各残基を構成する脂肪族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を、反応原料に含まれる水酸基の当量がカルボキシル基の当量よりも多くなる条件下で反応させて主鎖の末端に水酸基を有するポリエステルを得た後、得られたポリエステルにさらに脂肪族多塩基酸及び/又は芳香族多塩基酸を反応させることによっても製造できる。
【0041】
本発明のポリエステルの製造において、前記反応原料の反応は、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180~250℃の温度範囲内で10~25時間の範囲でエステル化反応させるとよい。
尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定されず、適宜設定してよい。
【0042】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
【0043】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、反応原料の全量100質量部に対して、0.001~0.1質量部の範囲で使用する。
【0044】
[無機フィラー含有樹脂組成物]
本発明の分散安定化剤は、無機フィラー及び樹脂を含む樹脂組成物(無機フィラー含有樹脂組成物)の無機フィラーの分散安定化剤として機能でき、組成物の粘度を低下させ、組成物を長期間保存した場合に無機フィラーが凝集して沈降することを防ぐことができる。なかでも、無機フィラーを含む凝集体(ハードケーキ)の形成を防ぐことができることから、本発明の分散安定化剤は、無機フィラー含有樹脂組成物の貯蔵安定化剤として特に機能することができる。
以下、本発明の無機フィラー含有樹脂組成物が含む各成分について説明する。
【0045】
(無機フィラー)
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物が含有する無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化マンガン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
前記無機フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記無機フィラーは、好ましくは炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、タルク、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルクからなる群から選択される1種以上である。
【0047】
前記無機フィラーの粒径、繊維長、繊維径等の形状は特に限定されず、目的とする用途に応じて適宜調整するとよい。また、前記無機フィラーの表面処理状態も特に限定されず、目的とする用途に応じて例えば飽和脂肪酸等で表面修飾をしてもよい。
【0048】
本発明の分散安定化剤の含有量は、特に限定されないが、例えば無機フィラー100質量部に対して本発明の分散安定化剤0.1~30質量部の範囲であり、好ましくは無機フィラー100質量部に対して本発明の分散安定化剤0.1~10質量部の範囲であり、より好ましくは無機フィラー100質量部に対して本発明の分散安定化剤0.1~5.0質量部の範囲である。
【0049】
(減粘剤)
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物は、好ましくは減粘剤を含む。
無機フィラー含有樹脂組成物が減粘剤を含むことで、無機フィラーの充填量を増やすことができ、ハンドリング性等も向上させることができる。減粘剤は、組成物の減粘によって、無機フィラーを含む凝集体(ハードケーキ)の形成を誘発するおそれがあるが、本発明の分散安定化剤によってハードケーキの形成は防ぐことができる。従って、本発明の無機フィラー含有樹脂組成物では、本発明の分散安定化剤と減粘剤を併用すると好ましい。
【0050】
前記減粘剤としては、特に制限されず、アニオン系湿潤分散剤、カチオン系湿潤分散剤、高分子系湿潤分散剤等が挙げられる。
前記減粘剤の具体例としては、例えば、アルキルエーテル、ミネラルスピリット、アルキルベンゼン、パラフィン、高級脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸塩(例えばポリカルボン酸アルキルアンモニウム塩)、ポリエステル酸塩(例えばポリエステル酸不飽和ポリアミノアマイド塩)、高級脂肪酸アマイド、酸化ポリエチレン誘導体、硫酸エステル、ハイドロステアリン酸誘導体、ポリアルキレンポリイミンアルキレンオキサイド、ポリアリルアミン誘導体、ポリエーテルエステル酸アミン、ポリエーテル燐酸エステルアミン、ポリエーテル燐酸エステル、ポリカルボン酸ポリエステル、片末端にのみカルボキシル基を有するポリエステル等が使用できる。これらのうち、ポリカルボン酸アルキルアンモニウム塩、高級脂肪酸アマイド、ポリエステル酸不飽和ポリアミノアマイド塩及び片末端にのみカルボキシル基を有するポリエステルが好ましい。
前記減粘剤は1種単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記減粘剤としては市販品を用いることができ、当該市販品としては、ANTI-TERRA-U/U100、ANTI-TERRA-204、ANTI-TERRA-250等のANTI-TERRAシリーズ;DISPERBYK-106、DISPERBYK-108、DISPERBYK-140等のDISPERBYKシリーズ、BYK-9076、BYK-9077等のBYKシリーズ(以上、ビックケミー社製);フローレンDOPA-15B、フローレンDOPA-17HF、フローレンDOPA-22等のフローレンシーズ;フローノンRCM-100等のフローノンシリーズ(以上、共栄社化学製);ソルスパーズ3000、ソルスパーズ20060、ソルスパーズ40000、ソルスパーズ42000、ソルスパーズ85000等のソルスパーズシリーズ(以上、ルーブリゾール社製);ディスパロンDA-234、ディスパロンDA-325、ディスパロンDA-375等のディスパロンシリーズ(以上、楠本化成株式会社製);エスリーム221P、エスリームC2093、エスリームAD-374M、エスリームAD-508E等のエスリームシリーズ;フィラノールPA-085C、フィラノールPA-107P等のフィラノールシリーズ;マリアリムSC-1015F、マリアリムSC-0708A、マリアリムAFB-1521、マリアリムAAB-0851、マリアリムAWS-0851等のマリアリムシリーズ(以上、日油株式会社製);デモールP、デモールEP等のデモールシリーズ;ポイズ520、ポイズ521、ポイズ530等のポイズシリーズ;ホモゲノールL-18等のホモゲノールシリーズ(以上、花王株式会社製);アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881、アジスパーPN411、アジスパーPA111等のアジスパーシリーズ(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)等を挙げることができる。
【0052】
前記減粘剤として片末端にのみカルボキシル基を有するポリエステルを用いる場合、当該ポリエステル減粘剤は、好ましくは下記一般式(I)又は下記一般式(II)で表されるポリエステルである。
【0053】
【化4】
(前記一般式(I)及び(II)中、
11は、炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基である。
11及びG12は、それぞれ独立に、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基である。
Xは炭素原子数1~8のジカルボン酸残基である。
Yは水素原子又は炭素原子数1~9のモノカルボン酸残基である。
Zは炭素原子数2~10のモノアルコール残基である。
tは、繰り返し数を表し、0~30の範囲の整数である。
uは、繰り返し数を表し、0~30の範囲の整数である。
括弧で括られた繰り返し単位毎にA11及びG11はそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)
【0054】
前記一般式(I)又は(II)で表されるポリエステルは、ポリエステルの繰り返し単位が本発明のポリエステルと共通しており、同じ原料で製造できる点で好ましい。
【0055】
前記一般式(I)及び(II)において、A11の炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基、並びにG11及びG12の炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基は、本発明のポリエステルと同じである。
【0056】
Xの炭素原子数1~8のジカルボン酸残基としては、脂肪族ジカルボン酸残基、脂環式ジカルボン酸残基及び芳香族ジカルボン酸残基のいずれでもよい。
上記脂肪族ジカルボン酸残基としては、例えば、マロン酸残基、コハク酸残基、グルタル酸残基、アジピン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、マレイン酸残基、フマル酸残基、1,2-ジカルボキシシクロヘキサン残基、1,2-ジカルボキシシクロヘキセン残基等が挙げられる
上記芳香族ジカルボン酸残基としては、例えば、フタル酸残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基等が挙げられる。
Xの炭素原子数1~8のジカルボン酸残基は、好ましくはコハク酸残基、アジピン酸残基、マレイン酸残基又はフタル酸残基である。
【0057】
Yの炭素原子数1~9のモノカルボン酸残基は、脂肪族モノカルボン酸残基、脂環式モノカルボン酸残基、芳香族モノカルボン酸残基のいずれであってもよく、例えば、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ヘキサン酸残基、オクタン酸残基、オクチル酸残基、安息香酸残基、ジメチル安息香酸残基、トリメチル安息香酸残基、テトラメチル安息香酸残基、エチル安息香酸残基、プロピル安息香酸残基、ブチル安息香酸残基、クミン酸残基、パラターシャリブチル安息香酸残基、オルソトルイル酸残基、メタトルイル酸残基、パラトルイル酸残基、エトキシ安息香酸残基、プロポキシ安息香酸残基、アニス酸残基、ナフトエ酸残基等が挙げられる。
Yは、好ましくは水素原子又は安息香酸残基である。
【0058】
Zの炭素原子数2~10のモノアルコール残基は、脂肪族モノアルコール残基及び脂環式モノアルコール残基のいずれでもよい。
Zの炭素原子数2~10のモノアルコール残基としては、例えば、エタノール残基、プロパノール残基、ブタノール残基、ペンタノール残基、ヘキサノール残基、シクロヘキサノール残基、ヘプタノール残基、オクタノール残基、ノナノール残基、デカノール等の残基が挙げられ、これらの中でもオクタノール残基、ノナノール残基、デカノール残基が好ましい。
【0059】
前記一般式(I)で表されるポリエステルは、好ましくはYは水素原子、アセチル基又は安息香酸残基であり、G11及びG12は、それぞれ独立に、プロピレングリコール残基、ネオペンチルグリコール残基又は1,3-プロパンジオール残基であり、A11はアジピン酸残基であり、Xはアジピン酸残基又はマレイン酸残基である。
前記一般式(II)で表されるポリエステルは、好ましくはZはオクタノール残基、ノナノール残基又はデカノール残基であり、G11はプロピレングリコール残基、ネオペンチルグリコール残基又は1,3-プロパンジオール残基であり、A11はアジピン酸残基であり、Xはアジピン酸残基又はマレイン酸残基である。
【0060】
前記一般式(I)で表されるポリエステルは、例えば、前記一般式(I)中の各残基及びtの値の少なくとも1つが互いに異なる2種以上のポリエステルの混合物として使用されてもよい。このとき、tの平均値は好ましくは2~15の範囲である。同様に、前記一般式(II)で表されるポリエステルは、例えば、前記一般式(II)中の各残基及びuの値の少なくとも1つが互いに異なる2種以上のポリエステルの混合物として使用されてもよい。このとき、uの平均値は好ましくは2~15の範囲である。
また、前記一般式(I)で表されるポリエステルと前記一般式(II)で表されるポリエステルの混合物として使用されてもよい。
t及びuの平均値はポリエステルの数平均分子量から確認できる。
【0061】
前記一般式(I)又は(II)で表されるポリエステルの酸価は好ましくは3~50の範囲であり、より好ましくは3~35の範囲である。
上記ポリエステルの酸価は実施例に記載の方法にて確認する。
【0062】
前記一般式(I)又は(II)で表されるポリエステルの数平均分子量(Mn)は、好ましくは300~3,000の範囲であり、より好ましくは400~2,500の範囲であり、さらに好ましくは400~1,500の範囲である。
上記数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値であり、実施例に記載の方法により測定する。
【0063】
前記一般式(I)又は(II)で表されるポリエステルの性状は、数平均分子量や組成などによって異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0064】
前記一般式(I)又は(II)で表されるポリエステルは、本発明のポリエステルと同様にして製造することができる。具体的には、前述のジオール、ジカルボン酸、モノカルボン酸又はモノアルコールを一括で仕込み、エステル化反応を行う方法;ジオールと、ジカルボン酸とを用いて両末端に水酸基を有する化合物を得た後、モノカルボン酸とジカルボン酸をさらに反応させる方法;ジオールと、ジカルボン酸とを用いて両末端にカルボキシル基を有する化合物を得た後、モノアルコールをさらに反応させる方法等が挙げられる。
上記のうち、炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素原子数2~9の脂肪族ジオールと、炭素原子数1~9のモノカルボン酸又は炭素原子数2~10のモノアルコールとの反応物は、本発明の無機フィラー分散安定化剤である前記一般式(1)で表されるポリエステルと前記一般式(I)又は(II)で表されるポリエステルの混合物とすることができ、減粘効果と貯蔵安定化効果の両方に優れるため好ましい。
【0065】
前記減粘剤の含有量は、特に限定されないが、例えば無機フィラー100質量部に対して減粘剤0.1~30質量部の範囲であり、好ましくは無機フィラー100質量部に対して減粘剤0.1~10質量部の範囲である。
【0066】
(可塑剤)
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物は、好ましくは可塑剤を含む。
前記可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル;フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)等のフタル酸エステル;テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)等のテレフタル酸エステル;イソフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOIP)等のイソフタル酸エステル;ピロメリット酸テトラ-2-エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル;アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル;リン酸トリ-2-エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル;ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800~4,000のポリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル;ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル等の脂環式二塩基酸;ジカプリン酸1.4-ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル;アセチルクエン酸トリブチル(ATBC);パラフィンワックスやn-パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン;塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル;オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
使用する可塑剤は目的とする用途に応じて決定すればよく、上記可塑剤を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記可塑剤の含有量は、特に限定されないが、例えば無機フィラー100質量部に対して可塑剤10~300質量部の範囲であり、好ましくは無機フィラー100質量部に対して可塑剤30~200質量部の範囲である。。
【0068】
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物が含有する添加剤は、本発明の無機フィラー分散安定化剤、前記減粘剤、前記可塑剤に限定されず、これら以外のその他添加剤を含んでもよい。
前記その他添加剤としては、例えば、難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、架橋助剤等を例示することができる。
【0069】
(樹脂)
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物が含有する樹脂としては、特に限定されず、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリサルファイド、ポリ塩化ビニル、変成ポリサルファイド、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
使用する樹脂は目的とする用途に応じて決定すればよく、上記樹脂を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物は樹脂を含有するが、樹脂の代わりにアスファルト等の粘性化合物を含有する組成物にも本発明の分散安定化剤を好適に使用することができる。
【0071】
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物は、使用の際に流動性を必要とするペースト状樹脂組成物として好適に使用できる。
本発明の分散安定化剤は、組成物の粘度を低減し、ハードケーキの形成を抑制して組成物の貯蔵安定性を向上させることができることから、屋外で使用されることが多い塗料、接着剤、構造材等に適用することが好ましく、塗工前に混合が必要な2液型ウレタン系床材用塗料、フィラー含有率の増加が望まれている構造材(建材)や、フィラーの含有率が特に高いポリサルファイド系シーリング材に好適である。
以下、本発明の無機フィラー含有樹脂組成物をペースト状樹脂組成物として使用する場合の用途別の組成例について説明する。
【0072】
(構造材)
前記構造材に用いる無機フィラー含有樹脂組成物が含有する樹脂としては、ポリオレフィン、ポリウレタン、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
構造材(建材)に用いる樹脂は用途によって異なり、例えば防水材であれば樹脂成分はポリウレタンが主に使用され、人工大理石であれば不飽和ポリエステルが主に使用される。
【0073】
構造材が防水材である場合、防水材に用いる無機フィラー含有樹脂組成物(以下、単に「防水材用樹脂組成物」という場合がある)は、例えばイソシアネート基含有化合物を含む主剤成分と、芳香族ポリアミン、ポリオール、水及び湿分からなる群から選択される1種以上を含む硬化剤成分とを含有するポリウレタン組成物であると好ましい。
【0074】
主剤成分が含むイソシアネート基含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート構造を有するポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーが好ましい。
上記ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。なかでも、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートとからなるイソシアネート混合物が好ましい。
上記ポリオールとしては、ポリオキシプロピレンポリオールが好ましく、ポリオキシポリプロピレンジオール単独もしくはポリオキシプロピレンジオールとポリオキシプロピレントリオールの混合物がより好ましい。
【0075】
上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーにおける、ポリイソシアネートとポリオールとの比は、イソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)で1.8~2.5の範囲が好ましい。また、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーにおける、イソシアネート基含有量(NCO基含有率)は、2~5質量%の範囲が好ましい。
【0076】
硬化剤成分が含む芳香族ポリアミンとしては、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。これらのうち、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)は、「MOCA」として知られ、広く利用されている。
【0077】
硬化剤成分が含むポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリオキシプロピレンポリオールが特に好ましい。このポリオールの官能基数は2~4の範囲が好ましく、2~3の範囲がより好ましい。
【0078】
ポリウレタンが二液硬化型である場合、主剤と硬化剤の混合比は、主剤が含むイソシアネート基と硬化剤が含む活性水素含有基とのモル比(NCO/(NH+OH))が、例えば1.0~2.0の範囲であり、1.0~1.8の範囲が好ましくは、1.0~1.3の範囲がより好ましい。
【0079】
硬化剤成分は、無機フィラーを含むとよく、当該無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、カーボン等が挙げられる。
ポリウレタン組成物における無機フィラーの含有量は、例えば樹脂成分100質量部に対して10~60質量部の範囲とするとよく、20~50質量部の範囲とすると好ましい。無機フィラーの含有量を当該範囲とすることで、組成物の硬化性と得られる防水材の性能とのバランスを良好とすることができる。
【0080】
二液硬化型ポリウレタンの場合、通常、主剤と硬化剤の粘度がいずれも高く(主剤:例えば7~10Pa・Sの範囲、硬化剤:例えば10~30Pa・Sの範囲)、気温が下がる冬場は粘度がさらに上昇することから、無機フィラーの分散性を向上させ、含有量を向上させることができる本発明の分散安定化剤は有用である。
本発明の分散安定化剤は、防水材用樹脂組成物に含まれていればよい。例えば上記二液硬化型ポリウレタンである場合、本発明の分散安定化剤は、主剤成分及び硬化剤成分の少なくとも一方に含まれればよい。
【0081】
ウレタン化反応を促進するため、硬化剤成分は公知の硬化触媒を含んでもよい。当該硬化触媒としては、有機酸鉛、有機酸錫、3級アミン化合物等が挙げられる。
【0082】
硬化剤成分は、無機フィラー及び硬化触媒のほかに、前記減粘剤、前記可塑剤、酸化クロム、酸化チタン、フタロシアニン等の顔料;酸化防止剤、紫外線吸収材、脱水剤等の安定剤等を含んでもよい。
【0083】
防水材用組成物を成形して得られる防水材としては、例えば屋上用防水材が挙げられる。
上記屋上用防水材は、例えば主剤成分と硬化剤成分を混合した組成物を所望の箇所に塗布して塗膜を形成し、反応硬化させることにより得られる。
【0084】
(シーリング材)
前記ポリサルファイド系シーリング材に用いるポリサルファイド系樹脂は、分子内にスルフィド結合を有する樹脂であれば特に制限されるものではなく、例えば、スルフィド結合にアルキル基のような炭化水素基が結合しているものが挙げられる。ポリサルファイド樹脂は、骨格中に例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミド基を有していてもよい。
【0085】
ポリサルファイド系樹脂が骨格内にエーテル結合を有する場合、ポリサルファイドポリエーテル樹脂となる。ポリサルファイド樹脂は片末端または両末端に、例えば、チオール基、ヒドロキシ基、アミノ基等の官能基を有していてもよい。
【0086】
ポリサルファイド系樹脂としては、例えば、主鎖中に-(COCHOC-Sx)-(xは1~5の整数である。)で表される構造単位を含有し、かつ末端に-COCHOC-SHで表されるチオール基を有するものを挙げることができる。
【0087】
ポリサルファイド系樹脂は室温、具体的には25℃で流動性を有するのが好ましい。ポリサルファイド樹脂の数平均分子量(Mn)は通常100~200,000であり、好ましくは400~50,000以下である。
【0088】
また、前記ポリサルファイド系樹脂としては、ポリサルファイドポリエーテル樹脂も挙げられる。ポリサルファイドポリエーテル樹脂としては、具体的には、チオール基含有ポリサルファイドポリエーテル樹脂が挙げられ、例えば、主鎖中に、(1)「-(RO)」(Rは炭素原子数2~4のアルキレン基を表し、nは6~200の整数を示す。)で表されるポリエーテル部分と、(2)「-COCHOC-Sx-」及び(3)「-CHCH(OH)CH-Sx-」(前記xは1~5の整数である。)で示される構造単位を含み、かつ、末端に、(4)「-COCHOC-SH」又は「-CHCH(OH)CH-SH」で表されるチオール基を有するもの等が挙げられる。
【0089】
前記ポリサルファイドポリエーテル樹脂の数平均分子量は通常600~200,000であり、好ましくは800~50,000である。
【0090】
前記ポリサルファイド系樹脂は製造方法に制限はなく、種々の公知の方法により製造したものを用いることができる。また、ポリサルファイド系樹脂は市販品を使用することもできる。ポリサルファイド樹脂の市販品としては、例えば、「チオコールLP-23、LP-32」(東レ・ファインケミカル株式会社製)、「THIOPLASTポリマー」(AKZO NOBEL社製)等が挙げられる。ポリサルファイド系樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
本発明の分散安定化剤を含むポリサルファイド系シーリング材には、その他各種添加剤等を併用することができる。添加剤としては、例えば、前記減粘剤、前記可塑剤、接着性付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、粘着付与樹脂、安定剤、分散剤等が挙げられる。
【0092】
前記接着性付与剤としては、例えば、アミノシランなどのシランカップリング剤が特にガラス面への接着性を向上させる効果に優れ、更に汎用化合物であることから好適に挙げられる。
前記アミノシランとしては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0093】
前記顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等が挙げられる。
【0094】
前記染料としては、例えば、黒色染料、黄色染料、赤色染料、青色染料、褐色染料等が挙げられる。
【0095】
前記老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0096】
前記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0097】
前記帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0098】
前記難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド-ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
前記粘着性付与樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0099】
前記安定剤としては、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。
【0100】
分散剤は、固体を微細な粒子にして液中に分散させる物質をいい、ヘキサメタリン酸ナトリウム、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム、界面活性剤等が挙げられる。
【0101】
前記ポリサルファイド系シーリング材は通常、使用直前に硬化剤と混合し使用される。硬化剤としては、例えば、金属酸化物、金属過酸化物、有機無機の酸化剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等、一般にポリサルファイド樹脂系シーリング材に用いられる硬化剤が使用できる。なかでも二酸化鉛や二酸化マンガン等の金属過酸化物が好ましく、二酸化マンガンがより好ましい。本発明の流動性改質剤は、この硬化剤中に混合して用いることが好ましい。
【0102】
前記硬化剤として二酸化マンガンを使用する場合、その使用量は主剤として用いるポリサルファイド樹脂100質量部に対し、硬化が十分となり、且つ、適性な弾性を有する硬化物が得られることから、2.5~25質量部の範囲であるのが好ましく、3~20質量部の範囲であるのがより好ましい。
【0103】
前記硬化剤にはその他の充填剤、可塑剤、硬化促進剤、シランカップリング剤を含有することもできる。
【0104】
シーリング材として用いる場合の硬化条件としては、主剤と硬化剤を混合させた後、通常20~25℃である。また、硬化時間は通常24~168時間の範囲である。
【0105】
本発明の無機フィラー含有樹脂組成物は、上記ペースト状樹脂組成物に限定されず、射出成形、押出し成形等をする成形用樹脂組成物としても好適に使用できる。成形用樹脂組成物の性状は様々で、成形前の段階(常温)で液状であったり、成型時の加熱によって液状としたりするが、本発明の分散安定化剤は、組成物の粘度を低減し、ハードケーキの形成を抑制することができることから、無機フィラーを含むことによる過度な粘度上昇を抑制することができ、成形前に行う溶融混練等をスムーズに行うことができる。
本発明の分散安定化剤は、無機フィラーの添加量を増やすこともできることから、無機フィラーの添加量を増やして物性を向上させることが望まれている、自動車用部材、衛生吸収物品、建材、ストーンペーパー、放熱部材等の成形用樹脂組成物に好適に使用できる。
以下、本発明の無機フィラー含有樹脂組成物を成形用樹脂組成物として使用する場合の用途別の組成例について説明する。
【0106】
(自動車用部材)
自動車用部材に用いる成形用樹脂組成物(以下、単に「自動車部材用樹脂組成物」という場合がある)が含む樹脂成分としては、例えば熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂のなかでも優れた成形性、高い機械的強度、経済性などの特徴を有するポリプロピレン樹脂が好ましい。
上記ポリプロピレンは、特に限定されないが、MFR(230℃,2.16kg)が60~120g/10分のポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0107】
自動車部材用樹脂組成物は、樹脂成分としてオレフィン系熱可塑性エラストマーをさらに含んでもよい。当該オレフィン系熱可塑性エラストマーは、特に限定されないが、エチレン-α-オレフィン共重合体を含むものが好ましい。
【0108】
自動車部材用樹脂組成物が含む無機フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、ウィスカ(前記ウィスカの材質としては、グラファイト、チタン酸カリウム、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ムライト、マグネシア、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ホウ化チタン等)、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カオリンクレー、マイカ等が挙げられる。
【0109】
自動車部材用樹脂組成物は、本発明の分散安定化剤及び無機フィラー以外の各種添加剤を含んでもよく、当該添加剤としては、前記減粘剤、前記可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、着色剤等を挙げることができる。
【0110】
自動車部材用樹脂組成物が含む樹脂成分、無機フィラー、分散安定化剤等の組成比は特に限定されないが、下記物性のうち1つ以上を満たすような組成に調整すると好ましい。
自動車部材用樹脂組成物のMFR(230℃,2.16kg,JIS-K7210-1)は、20g/10分以上であることが好ましく、20~30g/10分の範囲であることがより好ましい。
自動車部材用樹脂組成物の線膨張係数(JIS-K7197)は、5.0×10-5/K以下であることが好ましく、4.0~5.0×10-5/Kであることがより好ましい。
自動車部材用樹脂組成物の引張弾性率(JIS-K7161)は、2.5GPa以上であることが好ましく、2.5~3.0GPaの範囲であることがより好ましい。
自動車部材用樹脂組成物のシャルピー衝撃値(JIS-K7111)は、30kJ/m以上であることが好ましく、30~40kJ/mの範囲であることがより好ましい。
【0111】
自動車部材用樹脂組成物を成形して得られる自動車用部材としては、ボンネットフード、フェンダー、バンパー、ドア、トランクリッド、ルーフ、ラジエータグリル、ホイールキャップ、インストルメントパネル、ピラーガーニッシュ等が挙げられる。
これらの自動車用部材は、自動車部材用樹脂組成物を射出成形することにより製造できる。
【0112】
(衛生吸収物品)
衛生吸収物品に用いる成形用樹脂組成物(以下、単に「衛生吸収物品用樹脂組成物」という場合がある)が含む樹脂成分としては、例えばポリオレフィンであり、当該ポリオレフィンのなかでも、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される1種以上が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
樹脂成分としてポリエチレンを使用する場合、例えば密度が異なる2種以上のポリエチレンを使用してもよい。
【0113】
衛生吸収物品用樹脂組成物の樹脂成分であるポリオレフィンは、特に限定されないが、MFR(190℃,2.16kgf)が0.1~20g/10分の範囲が好ましく、0.5~5g/10分の範囲がより好ましい。
MFRを0.1g/10分以上とすることで、薄膜フィルムの成形性を十分に保持することができ、20g/10分以下とすることで、十分な強度を有することができる。
【0114】
衛生吸収物品用樹脂組成物は、樹脂成分としてポリスチレン系エラストマーをさらに含んでもよい。
上記ポリスチレン系エラストマーとしては、スチレン-オレフィン系(SEP,SEBCなど)、スチレン-オレフィン-スチレン系(SEPS,SEBSなど)、スチレン-ジエン系(SIS,SBSなど)、水添スチレン-ジエン系(HSIS,HSBRなど)のスチレンブロックを含むエラストマーが挙げられる。
これらポリスチレン系エラストマーにおけるスチレン成分は10~40質量%の範囲が好ましく、20~40質量%の範囲がより好ましい。
【0115】
衛生吸収物品用樹脂組成物が含む無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化チタンなどが挙げられ、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムからなる群から選択される1種以上であると好ましい。
これら無機フィラーの形状は特に限定されないが、粒子状であると好ましく、平均粒子径が0.1~10μmの範囲の微粒子であるとより好ましく、平均粒子径が0.3~5μmの範囲の微粒子であるとさらに好ましく、平均粒子径が0.5~3μmの範囲の微粒子であると特に好ましい。
【0116】
衛生吸収物品用樹脂組成物における無機フィラーの含有量は、例えばポリオレフィン:無機フィラー=60~20質量部:40~80質量部であると好ましく、ポリオレフィン:無機フィラー=55~25質量部:45~75質量部であるとより好ましく、ポリオレフィン:無機フィラー=50~30質量部:50~70質量部であるとさらに好ましい。
無機フィラーの含有量が上記範囲であれば、得られる衛生吸収物品の透湿性、通気性及び耐透液性の全てを十分に担保することができる。
【0117】
衛生吸収物品用樹脂組成物は、本発明の分散安定化剤及び無機フィラー以外の各種添加剤を含んでもよく、当該添加剤としては、前記減粘剤、前記可塑剤、相溶化剤、加工助剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、艶消し剤、界面活性剤、抗菌剤、消臭剤、帯電防止剤、撥水剤、撥油剤、放射線遮蔽剤、着色剤、顔料等を挙げることができる。
【0118】
衛生吸収物品用樹脂組成物を成形して得られる成形品は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生吸収物品で使用されるバックシート(通気性及び透湿性を有するが、液体は通さないシート)として好適に用いることができる。
上記バックシートは、例えば衛生吸収物品用樹脂組成物を溶融混練後、Tダイ法又はインフレーション法によってシートとした後、得られたシートを一軸または二軸延伸することにより製造できる。
【0119】
(ストーンペーパー)
ストーンペーパーとは、石灰石に由来する炭酸カルシウムとポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を含んでなるシートであって、シートの成形に水及び木材を必要とせず、原料である石灰石は地球上にほぼ無尽蔵に存在するため、持続可能性に優れるシートである。
ストーンペーパーは、炭酸カルシウムを多量に含むが、本発明の分散安定化剤により炭酸カルシウムの流動性を高めることができるので、シート物性を高めることができる。
【0120】
ストーンペーパーは、例えば炭酸カルシウム、ポリオレフィン及び本発明の分散安定化剤を含むストーンペーパー組成物を溶融混練して、インフレーション成形又は押出し成形することにより製造することができる。
【0121】
ストーンペーパー組成物において、炭酸カルシウムの含有量は、ポリオレフィンと炭酸カルシウムの質量比(ポリオレフィン:炭酸カルシウム)で、例えば85:15~20:80であり、好ましくは85:15~30:70であり、より好ましくは85:15~35:65であり、さらに好ましくは80:20~40:60である。
【0122】
ストーンペーパー組成物は、前記減粘剤、前記可塑剤、発泡剤、色剤、滑剤、カップリング剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、帯電防止剤等を補助剤としてさらに含んでもよい。
【0123】
前記発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロブタン等の脂環式炭化水素化合物;トリフルオロモノクロロエタン、ジフルオロジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。
【0124】
前記滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪族アルコール系滑剤、ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、複合型アミド等の脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸-n-ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス等の脂肪族エステル系滑剤;脂肪酸金属石鹸系族滑剤等を挙げることができる。
【0125】
前記酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤等が使用できる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等の亜リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル等を挙げることができる。
フェノール系の酸化防止剤としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネイトジエチルエステル、及びテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が挙げられる。
【0126】
(放熱部材)
パソコン、スマートフォン、テレビ等の電子機器では高性能化に伴って発熱量が増加しており、発生した熱を効率よく放熱するために熱伝導性フィラーを含む放熱部材がよく用いられている。また、電気自動車、ハイブリッド車といった自動車も電子機器を多く備えており、熱伝導性フィラーを含む放熱部材が多く用いられている。
【0127】
放熱部材に用いる成形用樹脂組成物(以下、単に「放熱部材用樹脂組成物」という場合がある)が含む樹脂成分としては、例えば熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂である。
【0128】
放熱部材用樹脂組成物の熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を用いることができ、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂肪鎖変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ポリアルキレングルコール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;(メタ)アクリル樹脂やビニルエステル樹脂等のビニル樹脂:不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0129】
上記熱硬化性樹脂は、硬化剤ととも用いるとよい。
熱硬化性樹脂とともに用いる硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン系化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂等のフェノ-ル系化合物等が挙げられる。
【0130】
放熱部材用樹脂組成物の熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができ、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0131】
放熱部材用樹脂組成物が含有する熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水和金属化合物、溶融シリカ、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化チタン、ダイヤモンド等が挙げられる。
上記熱伝導性フィラーは、シラン系、チタネート系およびアルミネート系カップリング剤などで表面処理をしたものを用いてもよい。
【0132】
熱伝導性フィラーの形状は特に限定されず、球状、針状、フレーク状、樹枝状、繊維状のいずれでもよい。
【0133】
放熱部材用樹脂組成物における熱伝導性フィラーの含有量は用途により適宜調整でき、樹脂成分100質量部に対して、熱伝導性フィラーを30~500質量部の範囲とすることが好ましい。
【0134】
放熱部材用樹脂組成物は、本発明の無機フィラー分散安定化剤及び熱伝導性フィラー以外の各種添加剤を含んでもよく、当該添加剤としては、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等を挙げることができる。
【0135】
放熱部材用樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、放熱部材用樹脂組成物を加熱することで放熱部材を成形することができる。放熱部材用樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合、紫外線や赤外線等の活性エネルギー線を照射することで硬化成形することができる。放熱部材用樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、射出成形、押出成形、プレス成形等の公知の成形方法により放熱部材を得ることができる。
【0136】
放熱部材用樹脂組成物を成形して得られる放熱部材は、ヒートシンクとして用いることができる。放熱部材用樹脂組成物を成形して得られる放熱部材は、放熱させたい部位と金属製放熱部材とを接合する放熱接合部材としても用いることができる。
【0137】
放熱部材用樹脂組成物は半導体封止材料としても用いることができる。
【0138】
以上、無機フィラー含有樹脂組成物について説明したが、本発明の無機フィラー分散安定化剤は、樹脂を含まない無機フィラー含有組成物であっても貯蔵安定性を向上させることができる。
例えば、アセトン等の有機溶剤と無機フィラーを含む組成物に本発明の分散安定化剤を添加することで、無機フィラーの沈降速度を低下させ、無機フィラーを含む凝集体(ハードケーキ)の形成を抑制することができる。
【実施例
【0139】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0140】
本願実施例において、酸価及び水酸基価の値は、下記方法により評価した値である。
[酸価の測定方法]
JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
[水酸基価の測定方法]
JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
【0141】
本願実施例において、ポリエステルの数平均分子量は、GPC測定に基づきポリスチレン換算した値であり、測定条件は下記の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0142】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0143】
(実施例1:分散安定化剤Aの合成)
温度計、攪拌器及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを531.8g、セバシン酸を1235.1g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.0053g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計10時間縮合反応させた。反応終了後、未反応成分を減圧留去することによって、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤A(酸価110、水酸基価0、数平均分子量1,000)を得た。
【0144】
(実施例2:分散安定化剤Bの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを1702.5g、1,12-ドデカン二酸を625.5g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.069g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計10時間縮合反応させた。反応終了後、未反応成分を減圧留去することによって、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤B(酸価108.5、水酸基価0.01、数平均分子量1,000)を得た。
【0145】
(実施例3:分散安定化剤Cの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを1214g、セバシン酸を966g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.07g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計12時間縮合反応させた。反応後、150℃でハイドロキノンを0.11g、無水マレイン酸を203g仕込み、反応を完結させることで、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤C(酸価24.7、水酸基価64、数平均分子量1,700)を得た。
【0146】
分散安定化剤Cに両末端がカルボキシル基であるポリエステルが含まれることは、MALDI-TOF/MS測定により確認した。具体的には、分散安定化剤Cについてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(株式会社島津製作所製AXIMA TOF2)を用いて評価し、セバシン酸、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びマレイン酸を反応原料とするポリエステルにおいて、両末端がカルボキシル基となる場合に観測される分子量621(M+Na)及び905(M+Na)を検出した。
測定結果を図1に示す。
【0147】
(実施例4:分散安定化剤Dの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、プロピレングリコールを395.7g、セバシン酸を809.0g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.07g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計12時間縮合反応させた。反応後、150℃でハイドロキノンを0.06g、無水マレイン酸を109.8g仕込み、反応を完結させることで、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤D(酸価44.8、水酸基価38.0、数平均分子量1,840)を得た。
【0148】
(実施例5:分散安定化剤Eの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを1214g、セバシン酸を966g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.07g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計12時間縮合反応させた。反応後、150℃で無水フタル酸を306.7g仕込み、反応を完結させることで、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤E(酸価49.0、水酸基価48.4、数平均分子量1,170)を得た。
【0149】
(実施例6:分散安定化剤Fの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、1,3-ブタンジオールを459.3g、ネオペンチルグリコールを48.7g、アジピン酸を616.2g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.112g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計10時間縮合反応させた。反応後、150℃でハイドロキノンを0.056g、無水マレイン酸を44.2g仕込み反応を完結させ、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤F(酸価29.1、水酸基価121、数平均分子量900)を得た。
【0150】
(合成例1:減粘剤Aの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、12ヒドロキシステアリン酸を1680g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.252g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら210℃になるまで段階的に昇温することで、合計15時間縮合反応させた。反応終了後、未反応成分を減圧留去することによって、一方の末端にカルボキシル基を有し、他方の末端に水酸基を有するポリエステルである減粘剤A(酸価29.7、水酸基価19.1、数平均分子量1,800)を得た。
【0151】
(実施例7-15及び比較例1-5:炭酸カルシウム含有組成物の調製と評価)
無機フィラーとして炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム株式会社製「スーパーS」)、可塑剤としてDINP(フタル酸ジイソノニル)、活性水素化合物としてDETDA(ジエチルトルエンジアミン)、分散安定化剤及び減粘剤を表1及び2に示す割合で配合し、遊星攪拌装置(THINKY ARV-310)で1000rpm及び0.2Paで2分間撹拌して、ペースト状の無機フィラー含有組成物を得た。
得られたペースト組成物について、下記方法で粘度及び貯蔵安定性を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0152】
[粘度の測定方法]
E型粘度計(東洋産業株式会社製TV-25H)にて、標準ロータ(1°34’×R24、ずり速度[1/S]3.83×N、Nはロータの回転数[rpm])を用いて、得られたペーストの粘度を測定した。具体的には、得られたペーストを測定温度25℃及び回転速度10rpmで処理を行い、3分間処理後の組成物の粘度値を読み取った。
【0153】
[貯蔵安定性の評価]
得られた組成物12gを50ccガラス瓶に保存し、恒温機中に50℃で2週間放置した。
放置後の組成物を目視及び触感で確認し、下記基準で評価した。
〇:無機フィラーの凝集体(ハードケーキ)の存在が確認できない
×:無機フィラーの凝集体(ハードケーキ)の存在が確認できる
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
実施例7-10と比較例4-5の評価結果から、本発明の無機フィラー分散安定化剤と減粘剤の両方を使用したペーストでは、粘度は若干上昇しているものの貯蔵安定性が顕著に改善していることが読み取れる。また、実施例11-15及び比較例1-3の評価結果から、本発明の無機フィラー分散剤安定化剤は、貯蔵安定化効果のみならず減粘効果も十分に示すことできていることが読み取れる。
【0157】
(実施例16-18及び比較例6-8:炭酸カルシウム含有樹脂組成物の調製と評価)
無機フィラーとして炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム株式会社製「スーパーS」)、バインダー樹脂としてポリエチレン(宇部興産株式会社製「UMERIT 2040F」)、分散安定化剤及び減粘剤を表3に示す割合で配合し、バッチ式混練機(東洋精機製作所製「ラボプラストミル4C150」)に投入し、設定温度170℃、ブレード回転数50r/min、混練時間10分で溶融混練を行い、無機フィラー含有樹脂組成物を調製した。
無機フィラー含有樹脂組成物調製時の溶融混練のトルク値と内部温度を評価した。結果を表3に示す。尚、トルク値と内部温度は、混練時間8分での上記混練機の表示値を読み取った値である。
【0158】
【表3】
【0159】
実施例16-18と比較例6-8の評価結果から、本発明の無機フィラー分散安定化剤を含む樹脂組成物はトルク値が低減し、且つ、温度上昇が抑えられており、本発明の無機フィラー分散剤安定化剤によって樹脂組成物が減粘していることが読み取れる。
【0160】
(実施例19及び比較例9-10:タルク含有樹脂組成物の調製と評価)
無機フィラーとしてタルク(富士タルク工業株式会社製「RL217」)10.8g、バインダー樹脂としてポリプロピレン(ポリプロピレンのホモ重合体、株式会社プライムポリマー製「J106G」)36g、分散安定化剤及び減粘剤を表4に示す割合で配合し、バッチ式混練機(東洋精機製作所製「ラボプラストミル4C150」)に投入し、設定温度170℃、ブレード回転数50r/min、混錬時間10分で溶融混練を行い、樹脂組成物を調製した。
溶融混練の際のトルク値と内部温度を評価した。結果を表4に示す。
尚、トルク値と内部温度は、混練8分後の上記混練機の表示値を読み取った値である。
【0161】
【表4】
【0162】
実施例19と比較例9-10の評価結果から、本発明の無機フィラー分散安定化剤を含む樹脂組成物はトルク値が低減し、且つ、温度上昇が抑えられており、本発明の無機フィラー分散剤安定化剤によって樹脂組成物が減粘していることが読み取れる。
【0163】
(実施例20:分散安定化剤Gの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積5リットルの四つ口フラスコに、1,3-ブタンジオールを1,634g、ネオペンチルグリコールを210g、アジピン酸を2,338g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.125g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計16時間縮合反応させた。反応後、125℃で無水マレイン酸を373g仕込み反応を完結させ、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤G(酸価55、水酸基価53、数平均分子量1190)を得た。
【0164】
(実施例21:分散安定化剤Hの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積5リットルの四つ口フラスコに、1,3-ブタンジオールを1,394g、ネオペンチルグリコールを179g、セバシン酸を2,629g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.126g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計17時間縮合反応させた。反応後、125℃で無水マレイン酸を387g仕込み反応を完結させ、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤H(酸価56、水酸基価43、数平均分子量1550)を得た。
【0165】
(実施例22:分散安定化剤Iの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを1,214g、セバシン酸を966g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.07g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計12時間縮合反応させた。反応後、125℃で無水マレイン酸を271g仕込み、反応を完結させることで、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤I(酸価65、水酸基価35、数平均分子量1,540)を得た。
【0166】
(実施例23:分散安定化剤Jの合成)
温度計、攪拌器及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを473g、セバシン酸を850g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.04g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計13時間縮合反応させて、両末端にカルボキシル基を有するポリエステルを含む分散安定化剤J(酸価22、水酸基価1、数平均分子量4320)を得た。
【0167】
(実施例24-27:炭酸カルシウム含有組成物の調製と評価)
無機フィラーとして炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム株式会社製「スーパーS」)、可塑剤としてDINP(フタル酸ジイソノニル)、活性水素化合物としてDETDA(ジエチルトルエンジアミン)、分散安定化剤及び減粘剤を表5に示す割合で配合し、遊星攪拌装置(THINKY ARV-310)で1000rpm及び0.2Paで2分間撹拌して、ペースト状の無機フィラー含有組成物を得た。
得られたペーストについて、上記と同じ方法で粘度及び貯蔵安定性を評価した。結果を表5に示す。
【0168】
【表5】
【0169】
(実施例28-30及び比較例11-16:アルミナ含有組成物の調製と評価)
無機フィラーとしてアルミナ(高純度アルミナ、住友化学株式会社製「AKP-3000」)、バインダー樹脂として脂環型エポキシ樹脂(株式会社ダイセル製「セロキサイド2021P」)又はビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850-S」)、分散安定化剤及び減粘剤を表6に示す割合で配合し、遊星攪拌装置(THINKY ARV-310)で1000rpm及び0.2Paで2分間撹拌して、無機フィラー含有組成物を得た。
得られた組成物について、下記に示す方法で流動性及び複素粘度を評価し、及び上記と同じ方法で貯蔵安定性を評価した。結果を表6及び7に示す。
【0170】
[複素粘度]
得られた組成物について、MCR-302((株)アントンパール社製)を用いて、動的粘弾性測定法による周波数依存測定を行った。具体的には、パラレルプレート(直径:20mm)を用い、測定温度は25℃、せん断ひずみは0.01%、角周波数は0.1~100rad/sの範囲とし、角周波数1rad/sのときの複素粘度を求めた。
【0171】
[流動性の評価]
得られた組成物約0.2gを水平にしたガラス基板上にスポイトで滴下した。滴下後、ガラス基板を水平に対して傾斜角が80°となるように傾斜させ、ガラス基板上の組成物がガラス基板から流れた場合を「○」と評価し、ガラス基板から流れずに留まった場合を「×」と評価した。評価は25℃で行った。
【0172】
【表6】
【0173】
【表7】
【0174】
表6及び7の結果から、減粘剤Aはエポキシ樹脂を含有する組成物では減粘効果を示すことができないことが分かる。
【0175】
(実施例31-32及び比較例17-19:アルミナ含有組成物の調製と評価)
無機フィラーとしてアルミナ(高純度アルミナ、住友化学株式会社製「AKP-3000」)、アセトン、分散安定化剤及び減粘剤を表8に示す割合で配合し、遊星攪拌装置(THINKY ARV-310)で1000rpm及び0.2Paで2分間撹拌して、無機フィラー含有組成物を得た。
得られた組成物について、下記に示す方法で流動性及び貯蔵安定性を評価した。結果を表8に示す。
【0176】
[流動性の評価]
得られた組成物 約0.2gを水平にしたガラス基板上にスポイトで滴下した。滴下後、ガラス基板を水平に対して傾斜角が80°となるように傾斜させ、ガラス基板上の組成物がガラス基板から流れた場合を「○」と評価し、ガラス基板から流れずに留まった場合を「×」と評価した。評価は25℃で行った。
【0177】
[貯蔵安定性の評価]
得られた組成物12gを50ccガラス瓶に保存し、恒温機中に25℃で2週間放置した。
放置後の組成物を目視及び触感で確認し、下記基準で評価した。
〇:無機フィラーの凝集体(ハードケーキ)の存在が確認できない
×:無機フィラーの凝集体(ハードケーキ)の存在が確認できる
【0178】
【表8】
図1