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  • 特許-複合銅箔 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】複合銅箔
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20220823BHJP
   C25D 5/34 20060101ALI20220823BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20220823BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20220823BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220823BHJP
   H05K 1/09 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
C23C18/18
C25D5/34
C25D7/06 A
H01B5/02 A
H01B13/00 501Z
H05K1/09 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019552410
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2018041705
(87)【国際公開番号】W WO2019093494
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2017217777
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018069608
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 牧子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理
(72)【発明者】
【氏名】小畠 直貴
(72)【発明者】
【氏名】小鍛冶 快允
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-151096(JP,A)
【文献】特開平07-314603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/18,22/52
C25D 5/34,7/00,7/06
H01B 5/02,13/00
H05K 1/09,3/18,3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔の少なくとも一部の表面に、銅以外の金属層が形成されている複合銅箔であって、
少なくとも一部の前記複合銅箔の表面に凸部があり、
前記複合銅箔の断面において、前記凸部の高さが10nm以上1000nm以下である、複合銅箔。
【請求項2】
深さ6nmにおける全金属量に対するCuの割合が80%以下であり、酸素を含まない深さにおける全金属量に対するCuの割合が90%以上である、請求項1に記載の複合銅箔。
【請求項3】
前記凸部の高さが50nm以上500nm以下である、請求項1または2に記載の複合銅箔。
【請求項4】
前記複合銅箔の断面において、高さ50nm以上の凸部が3.8μm当たり平均15個以上100個以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合銅箔。
【請求項5】
前記凸部の高さが、走査電子顕微鏡による断面の撮影像において、凸部の両側の凹部の極小点を結んだ線分について、その中点と凸部の極大点との距離として測定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合銅箔。
【請求項6】
前記金属層が、一様で粒子がない、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合銅箔。
【請求項7】
Cuの割合が40atom%である深さにおけるCu/O比が0.9以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合銅箔。
【請求項8】
前記銅以外の金属が、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、AuおよびPtからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属である、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合銅箔。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の複合銅箔の製造方法であって、
銅箔表面を酸化する第1の工程と、
酸化した前記銅表面にめっき処理する第2の工程と、
を含む複合銅箔の製造方法。
【請求項10】
第1の工程の前に、アルカリ水溶液を用いてアルカリ処理が行われる、請求項9に記載の複合銅箔の製造方法。
【請求項11】
第1の工程において、酸化された前記銅箔表面が溶解剤で溶解される、請求項9または10に記載の複合銅箔の製造方法。
【請求項12】
第2の工程において、前記めっき処理が触媒を用いた無電解めっきである、請求項9~11のいずれか1項に記載の複合銅箔の製造方法。
【請求項13】
第2の工程において、前記めっき処理が電解めっきである、請求項9~12のいずれか1項に記載の複合銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板に使用される銅箔は、樹脂との密着性が要求される。この密着性を向上させるため、エッチングなどで銅箔の表面を粗面化処理し、物理的接着力を上げる方法が用いられてきた。しかし、プリント配線板の高密度化に伴い、銅箔表面の平坦化が要求されるようになってきた。それらの相反する要求を満たすため、酸化工程と還元工程を行うなどの銅表面処理方法が開発されている(WO2014/126193公開公報)。それによると、銅箔をプリコンディショニングし、酸化剤を含有する薬液に浸漬することで銅箔表面を酸化させて酸化銅の凹凸を形成した後、還元剤を含有する薬液に浸漬し、酸化銅を還元することで表面の凹凸を調整して表面の粗さを整える。さらに、酸化・還元を利用した銅箔の処理における密着性の改善方法として、酸化工程において表面活性分子を添加する方法(特表2013-534054号公報)や、還元工程の後にアミノチアゾール系化合物等を用いて銅箔の表面に保護皮膜を形成する方法(特開平8-97559号公報
)が開発されている。また、絶縁基板上の銅導体パターンの表面を粗化し、酸化銅層を形成した表面上に、離散的に分布する金属粒子を有するめっき膜を形成する方法(特開2000-151096号公報)が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、新規な複合銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施態様は、銅箔の少なくとも一部の表面に、銅以外の金属層が形成されている複合銅箔であって、少なくとも一部の前記複合銅箔の表面に凸部があり、前記複合銅箔の断面において、前記凸部の高さが10nm以上1000nm以下である、複合銅箔である。前記凸部の高さは、走査電子顕微鏡による断面の撮影像において、凸部の両側の凹部の極小点を結んだ線分について、その中点と凸部の極大点との距離として測定されてもよい。また、深さ6nmにおける全金属量に対するCuの割合が80%以下であり、酸素を含まない深さにおける全金属量に対するCuの割合が90%以上であってもよい。前記凸部の高さが50nm以上500nm以下であってもよい。また、前記複合銅箔の断面において、高さ50nm以上の凸部が3.8μm当たり平均15個以上100個以下であってもよい。前記金属層が、一様で粒子がなくてもよい。Cuの割合が40atom%である深さにおけるCu/O比が0.9以上であってもよい。前記銅以外の金属が、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、CrvFe、Co、Ni、Pd、AuおよびPtからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属であってもよい。
【0005】
本発明の他の実施態様は、銅箔表面を酸化する第1の工程と、酸化した前記銅表面にめっき処理する第2の工程と、を含む複合銅箔の製造方法である。第1の工程の前に、アルカリ水溶液を用いてアルカリ処理が行われてもよい。第1の工程において、酸化された前
記銅箔表面が溶解剤で溶解されてもよい。第2の工程において、前記めっき処理が触媒を用いた無電解めっきであってもよい。第2の工程において、前記めっき処理が電解めっきであってもよい。
【0006】
==関連文献とのクロスリファレンス==
本出願は、2017年11月10日付で出願した日本国特許出願2017-217777及び2018年3月30日付で出願した日本国特許出願2018-069608及びに基づく優先権を主張するものであり、当該基礎出願を引用することにより、本明細書に含めるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例2~8、比較例1~2において、複合銅箔の断面を示した走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0009】
==複合銅箔==
本発明の一実施態様は、銅箔の少なくとも一部の表面に、銅以外の金属層が形成されている複合銅箔である。この複合銅箔には、少なくとも一部の金属層の表面に凸部がある。
【0010】
この凸部の高さの平均が、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましく、また1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。この凸部の高さは、例えば、集束イオンビーム(FIB)によって作成された複合銅箔の断面を観察した走査型電子顕微鏡(SEM)像において、凸部を挟んで隣り合う凹部の極小点を結んだ線分の中点と、凹部の間にある凸部の極大点との距離とすることができる。
【0011】
物体の表面に、高さ50nm以上の凸部が3.8μmあたり、平均15個以上であることが好ましく、30個以上であることがより好ましく、50個以上であることがさらに好ましい。また、100個以下であることが好ましく、80個以下であることがより好ましく、60個以下であることがさらに好ましい。凸部の数は、例えば、集束イオンビーム(FIB)によって作成された複合銅箔の断面を観察した走査型電子顕微鏡(SEM)像において、高さが50nm以上のものの3.8μmあたりの数を計測することによって数えることができる。高さは、上述のようにして測定することができる。
【0012】
銅以外の金属の種類は特に限定されないが、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、AuおよびPtからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属であることが好ましい。
【0013】
銅以外の金属層の厚さは特に限定されないが、6nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、14nm以上であることがさらに好ましい。
【0014】
銅以外の金属層における金属の割合は特に限定されないが、深さ6nmにおける全金属量に対するCuの割合が80重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。また、酸素を含まない深さにおける全金属量に対するCuの割合が90重量%以上であることが好ましく、95重
量%以上であることがより好ましく、99重量%以上であることがさらに好ましい。また、Cuの原子組成の割合が40%である深さにおけるCu/O比は、0.9以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。所定の深さにおける全金属量に対するCuの割合は、例えば、イオンスパッタリングとX線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。
【0015】
金属層は、粒子のない一様な層であることが好ましい。ここで、一様とは、95%以上の面で、好ましくは98%以上の面で、より好ましくは99%以上の面で、その層の厚さが、層の平均の厚さの5倍を超えないか、好ましくは3倍を超えないか、より好ましくは2倍を超えないものをいうこととする。粒子のない一様な金属層を形成することで、熱処理後の密着性を高めることができる。
【0016】
この複合銅箔は、プリント配線板に使用される銅箔として用いることができる。すなわち、複合銅箔を樹脂と層状に接着させることによって積層板を作製し、プリント配線板を製造するのに用いることができる。また、この複合銅箔は、二次電池に使用される集電体として用いることができる。すなわち、黒鉛などの活物質およびポリフッ化ビニリデンなどのバインダ樹脂を含むスラリーを複合銅箔に塗布、乾燥して電極を作製し、二次電池を製造するのに用いることができる。
【0017】
以上のような複合銅箔は、低粗化でありながら良好な密着性、耐熱性を有するという利点がある。
【0018】
==複合銅箔の製造方法==
本発明の一実施態様は、複合銅箔の製造方法であって、銅箔表面を酸化する第1の工程と、酸化した銅表面にめっき処理する第2の工程と、を含む複合銅箔の製造方法である。
【0019】
まず、第1の工程において、銅表面を酸化剤で酸化して、酸化銅の層を形成するとともに、表面に凹凸部を形成する。この酸化工程以前に、エッチングなどの粗面化処理工程は必要ないが、行ってもよい。脱脂洗浄または酸化工程への酸の持ち込みを防止するためのアルカリ処理は行ってもよい。アルカリ処理の方法は特に限定されないが、好ましくは0.1~10g/L、より好ましくは1~2g/Lのアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液で、30~50℃、0.5~2分間程度処理すればよい。
【0020】
酸化剤は特に限定されず、例えば、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム等の水溶液を用いることができる。酸化剤には、各種添加剤(たとえば、リン酸三ナトリウム十二水和物のようなリン酸塩)や表面活性分子を添加してもよい。表面活性分子としては、ポルフィリン、ポルフィリン大員環、拡張ポルフィリン、環縮小ポルフィリン、直鎖ポルフィリンポリマー、ポルフィリンサンドイッチ配位錯体、ポルフィリン配列、シラン、テトラオルガノ‐シラン、アミノエチル‐アミノプロピルートリメトキシシラン、(3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(1‐[3‐(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア)((l-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]urea))、(3‐アミノプロピル)トリエトキシシラン、((3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)、(3‐クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3‐(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2‐メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン‐トリメトキシシラン、アミン、糖などを例示できる。
【0021】
酸化反応条件は特に限定されないが、酸化剤の液温は40~95℃であることが好ましく、45~80℃であることがより好ましい。反応時間は0.5~30分であることが好
ましく、1~10分であることがより好ましい。
【0022】
第1の工程において、酸化した銅箔表面を溶解剤で溶解して、酸化された銅箔表面の凹凸部を調整してもよい。
【0023】
本工程で用いる溶解剤は特に限定されないが、キレート剤、特に生分解性キレート剤であることが好ましく、エチレンジアミン四酢酸、ジエタノールグリシン、L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、アスパラギン酸ジ酢酸4ナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸ジナトリウム、グルコン酸ナトリウムなどが例示できる。
【0024】
溶解剤のpHは特に限定されないが、アルカリ性であることが好ましく、pH8~10.5であることがより好ましく、pH9.0~10.5であることがさらに好ましく、pH9.8~10.2であることがさらに好ましい。
【0025】
この工程において、酸化銅の溶解率が35~99%、好ましくは77~99%かつCuOの厚さが4~150nm、好ましくは8~50nmになるまで、銅表面を処理する。この条件において、プリプレグとのピール強度が高くなり、処理ムラが低減される。
【0026】
次に、第2の工程において、酸化銅の層に対し、銅以外の金属でめっき処理をすることで、複合銅箔を製造する。めっき処理方法は、公知の技術を使うことができるが、例えば、銅以外の金属として、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Au、Pt、あるいは様々な合金を用いることができる。めっき工程も特に限定されず、電解めっき、無電解めっき、真空蒸着、化成処理などによってめっきすることができる。
【0027】
無電解ニッケルめっきの場合は触媒を用いた処理を行うことが好ましい。触媒としては鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよびそれらの塩を用いることが好ましい。触媒を用いた処理を行うことで、一様で粒子が点在しない金属層を得ることができる。それによって、複合銅箔の耐熱性が向上する。無電解ニッケルめっきの場合は、還元剤として、銅および酸化銅が触媒活性を有しない還元剤を用いることが好ましい。銅および酸化銅が触媒活性を有しない還元剤としては、次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩が挙げられる。
【0028】
このように、銅箔に対して、第1工程及び第2工程を行うことによって、表面が凸部を有する複合銅箔を製造することができる。凸部のRaは特に限定されないが、0.02μm以上が好ましく、0.04μm以上がより好ましく、また、0.20μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。このような酸化銅が得られるように、温度、時間などの条件を設定するのは、当業者には容易である。
【0029】
これらの工程で製造した銅箔に、シランカップリング剤などを用いたカップリング処理やベンゾトリアゾール類などを用いた防錆処理を行ってもよい。
【0030】
また、これらの工程で製造した銅箔とプリプレグの間に接着層を設けてもよい。接着層の形成方法は特に限定されず、例えば接着性樹脂フィルムを積層してもよいし、樹脂ワニスを塗布することによって形成してもよい。
【実施例
【0031】
実施例及び比較例1では、銅箔としてDR-WS(古河電工株式会社製、厚み:18μm)を用い、シャイニー面(光沢面。反対面と比較したときに平坦である面。)に対してめっき処理を行った。比較例2については、電解銅箔F2-WS(古河電工株式会社製、
厚み:18μm)のマット面を用いた。以下に、その工程の詳細を説明する。
【0032】
(1)アルカリ処理
1.2g/Lの水酸化ナトリウム水溶液で40℃、1分間、プレコンディショニングを
行った。これは、酸化処理のムラを軽減することを目的とした脱脂洗浄のためである。なお、比較例2については、アルカリ処理を行わなかった。
【0033】
(2)酸化処理
アルカリ処理を行った銅箔を、酸化処理用水溶液(NaClO2 130g/L-Na
OH 12g/L)で45℃、1分間、酸化処理を行った。なお、比較例2については、酸化処理を行わなかった。これらの処理後、銅箔を水洗した。
【0034】
(3)めっき処理
酸化処理を行った銅箔に対し、実施例1~3については、ニッケルめっき用電解液(スルファミン酸ニッケル470g/L-ホウ酸40g/L)を用いて電解めっきを施した。
実施例5については、クロムめっき用電解液(無水クロム酸100g/L-硫酸1g/L)を用いて電解めっきを施した。実施例6については、亜鉛めっき用電解液(酸化亜鉛10g/L-水酸化ナトリウム115g/L-9500A 5ml/L(日本表面化学株式会社製)-9500B 0.5ml/L(日本表面化学株式会社製)-ハイパーソフト10ml/L(日本表面化学株式会社製))を用いて電解めっきを施した。温度、時間、電流密度などの条件については、表1に記載の通りである。比較例1については、めっき処理の工程は一切行わなかった。実施例4については、センシタイジング溶液(1.0g/L塩化スズ、0.5~3.0mL/L塩酸)で30℃、1分間、アクティベーション溶液(100mg/L塩化パラジウム、0.1mL/L塩酸)で30℃、1分間処理を行った後、Ni-Pめっき溶液(ブルーシューマー、日本カニゼン社)を用いて、90℃、5秒間無電解めっきを施した。
実施例7では、実施例2で得られた銅箔に対し、シランカップリング剤(信越シリコーン製KBM-803)1wt%水溶液に室温で1分間浸漬後、70℃の乾燥機内で1分間乾燥して作成した銅箔を用いた。
【0035】
【表1】
【0036】
(4)凸部の高さ及び数、並びに表面粗さの測定
実施例1~6及び比較例1~2で得られた複合銅箔の凸部の高さ及び数、そして表面粗さを測定した。具体的には、共焦点走査電子顕微鏡コントローラ MC-1000A(レーザーテック株式会社製)を用いて測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)画像において、凸部を挟んで隣り合う凹部の極小点を結んだ線分の中点と、凹部の間にある凸部の極大点との距離を凸部の高さとした。5個の独立した場所についてのSEM画像を用い、1画像につき3箇所測定して、その平均値を計算し、凸部の平均の高さとした。次に、5個のSEM画像で、3.8μm当たり、高さが50nm以上の凸部の数を数え、5個の平均値を算出した。表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)として算出した。走査電子顕微鏡の観察結果を図1に、各測定結果を表2に示す。なお、Raの値が低いほど、銅箔表面の表面粗さが小さいことを示す。
【0037】
(5)Cu以外の金属量の測定
めっきを施した実施例1~6の銅箔について、Cu以外の金属量を測定した。具体的には、めっきを施した銅箔とめっきを施していない銅箔を3cm角に切断し、それぞれ12%硝酸水溶液に溶かして、高周波誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって銅箔片面あたりの金属量を測定し、その差をCu以外の金属量とした。その結果を表2に示す。
【0038】
(6)密着性の測定 I ピール強度の測定
実施例1~7及び比較例1~2の各銅箔について、積層後のピール強度及び熱処理後のピール強度を測定した。まず、各銅箔に対し、プリプレグ(R5670KJ(パナソニック株式会社製)を積層し、真空高圧プレス機を用いて真空中で210℃30分間保持することにより、測定試料(Initial)を得た。熱に対する耐性を調べるため、177℃のオーブンに10日間投入し、測定試料(耐熱試験)を得た。これらの測定試料に対して90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)によりピール強度(kgf/cm)を求めた。また、実施例8では、実施例2で得られた銅箔に対し、箔とプリプレグとの間に、接着樹脂層としてフェニレンエーテルオリゴマーおよびエラストマーを主成分とする接着フィルム(ナミックス(株)製、NC0207)を挟み、真空高圧プレス機を用いて真空中で210℃30分間保持することにより測定試料(Initial)を得て、さらに、同様の条件で熱処理後のピール強度を測定した。ピール強度が大きいほど、プリプレグと銅箔の密着性が高いことを示す。その結果を表3に示す。
【0039】
なお、耐熱劣化率は、以下の式で計算した。
【0040】
耐熱劣化率(%)=
100 - ((耐熱試験後のピール強度 / Initialsのピール強度)× 100)
(7)密着性の測定 II 浸み出しの判定
実施例1~6及び比較例1~2の各銅箔について、酸に対する耐性を調べるため、積層後の銅箔をHCl水溶液(4N)に60℃、90分間浸漬し、測定試料を得、90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)を行った。この時に、銅箔側の接着面において、染み出しによる色の変化の有無を調べた。その結果を表3に示す。
【0041】
(8)結果
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
酸化処理もめっき処理も行っていない比較例2については、凸部の高さが極めて高く、表面粗さも際立って粗かった。酸化処理だけ行い、めっき処理を行わなかった比較例1については、表面粗さもピール強度も問題ないレベルであったが、耐酸試験後の染み出しがあり、かつ耐熱劣化率が高かった。
【0045】
一方、酸化処理と適切な強度のめっき処理を行った実施例1~6では、めっき処理の方法や被覆した金属の種類によらず、いずれのファクターも問題ない値であった。めっき処理は、密着性を増すと考えられる。なお、実施例1では、表2に記載したように、凹凸が観察されていないが、表3に記載したように、性能は問題ない。
【0046】
また、実施例7のように、製造した銅箔にカップリング処理を行っても、実施例8のように、製造した銅箔とプリプレグの間に接着層を設けても、表3に記載したように、銅箔の性能は問題ない。
【0047】
このように、酸化処理による表面粗化後にめっき処理をすることによって、ピール強度、耐酸試験後の染み出し、耐熱劣化率に優れた銅箔を作製することができ、この複合銅箔は好適にプリント配線板に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によって、新規な複合銅箔を提供することができるようになった。
図1