(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】エアロゲル前駆体およびそれを用いて製造したエアロゲル
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20220823BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20220823BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20220823BHJP
C08G 77/18 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/544
C08K5/541
C08G77/18
(21)【出願番号】P 2020527782
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2018015571
(87)【国際公開番号】W WO2019112393
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-05-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0167918
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ジュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヒョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・レ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・フン・ジャン
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-524739(JP,A)
【文献】D. Fischer et al.,Monitoring of the Sol-Gel Synthesis of Organic-inorganic Hybrids by FTIR Transmission, FTIR/ATR, NIR and Raman Spectroscopy,Macromol. Symp.,2008年,265,134-143
【文献】Ying Li et al.,Coordination assembly and characterization of europium(III) complexes covalently bonded to SBA-15 directly functionalized by modified polymer,RSC Adv.,2013年,3,14057-14065
【文献】Xiaofei Qiao et al.,Molecular construction and photophysics of luminescent covalently bonded hybrids by grafting the lanthanide ions into the silicon-oxygen networks and carbon chains,Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry,2008年,199,188-196
【文献】Zhigang Ma et al.,Preparation and characterization of inorganic-organic hybrid proton exchange membranes based on phosphorylated PVA and PEG-grafted silica particles,J Sol-Gel Sci Technol,2008年,48,267-271
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン化合物、または前加水分解されたアルコキシシラン化合物を準備するステップと、
線状シラン架橋剤を添加して重合させるステップと、を含み、
前記アルコキシシラン化合物は、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトライソプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート、テトラターシャリーブチルオルトシリケート、テトラヘキシルオルトシリケート、テトラシクロヘキシルオルトシリケート、テトラドデシルオルトシリケートからなる群から選択される1種以上であり、
前記線状シラン架橋剤は、PEG(ポリエチレングリコール;polyethylene glycol)由来単位を含み、
前記線状シラン架橋剤は、下記化学式1で表されるものであり、
【化1】
(前記化学式1中、nは3~24である。)
前記線状シラン架橋剤は、前記アルコキシシラン化合物、または前加水分解されたアルコキシシラン化合物の総モル数に対して、0.5~20モル%で添加する、疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体の製造方法。
【請求項2】
前記疎水性エアロゲル前駆体の重量平均分子量(Mw)が500~6,500g/molであることを特徴とする、請求項1に記載の疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記疎水性エアロゲル前駆体は、PEG由来単位を0.2~10重量%で含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記疎水性エアロゲル前駆体は、炭素含量が20重量%以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体の製造方法。
【請求項5】
前記前加水分解されたアルコキシシラン化合物の水和度が50~80%であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体の製造方法。
【請求項6】
アルコキシシラン化合物由来単位と、PEG由来単位と、を含
み、
前記アルコキシシラン化合物由来単位は、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトライソプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート、テトラターシャリーブチルオルトシリケート、テトラヘキシルオルトシリケート、テトラシクロヘキシルオルトシリケート、テトラドデシルオルトシリケートからなる群から選択される1種以上に由来するものであり、
前記PEG由来単位は、下記化学式1:
【化2】
(前記化学式1中、nは3~24である。)で表される化合物に由来するものである、疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体。
【請求項7】
PEG由来単位を0.2~10重量%で含むことを特徴とする、請求項6に記載の疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体。
【請求項8】
炭素含量が20重量%以上であることを特徴とする、請求項6または7に記載の疎水性エアロゲル製造用疎水性エアロゲル前駆体。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法により製造された疎水性エアロゲル前駆体を用いて製造する、疎水性シリカエアロゲルの製造方法。
【請求項10】
表面改質ステップを行わないことを特徴とする、請求項9に記載の疎水性シリカエアロゲルの製造方法。
【請求項11】
請求項6から8の何れか一項に記載の疎水性エアロゲル前駆体由来単位を含む疎水性シリカエアロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月8日付けの韓国特許出願第10-2017-0167918号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、疎水性エアロゲル前駆体およびそれを用いて製造したエアロゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲルは、SiO2ナノ構造体が不織布のように粗く絡み合ってなる、空気が全体積の98%を占める多孔性構造を有する物質のことである。前記エアロゲルは、高い気孔率と1~50nmの範囲の気孔、および高い比表面積を有し、超断熱および低誘電特性を有するため、無機断熱材として用いられている。近年、エアロゲルの均一な気孔率および比表面積を向上させるために、TEOS(テトラエチルオルトシリケート;tetra ethyl ortho silicate)をベースとした、前加水分解された(Pre-hydrolyzed)TEOSがエアロゲルの前駆体として使用されており、高温断熱材としての耐久性を向上させるために、疎水化官能基が導入された前加水分解されたTEOSを適用し、熱安定性の高いエアロゲルが製造されている。
【0004】
エアロゲルの合成時に、前駆体としてTEOS或いは前加水分解されたTEOSが用いられており、H2Oとアルコール、および酸性/塩基性触媒を用いて湿潤ゲル(wet gel)の気孔率を調節し、前記湿潤ゲルの表面を疎水化させる表面改質ステップを経た後、常圧乾燥/超臨界乾燥により、疎水性を示すエアロゲルが製造されている。しかしながら、湿潤ゲルを製造した後、湿潤ゲルの表面を疎水化させる表面改質方法は、液体/固体(liquid/solid)の2相の化学反応であって、1相の液体状態での化学反応よりも反応効率が低い。したがって、湿潤ゲルの表面を疎水化処理する時に、多量の疎水化剤(表面改質剤)を使用するため、残留した疎水化剤により高温耐久性が低下するという欠点がある。
【0005】
上記の問題を解決するために、TEOSまたは前加水分解されたTEOSと、co-precursorとしてアルキルアルコキシシランを用いて気孔に疎水性を付与する方法があるが、ゲル化制御(gelation control)が困難であり、気孔が均一ではないため、熱伝導度が高くなり、熱安定性が低下するという欠点がある。かかる欠点を解決するために、疎水化官能基を有するモノハライド反応サイト(mono-halide reaction site)を持つゾルゲル形成可能基をエアロゲル前駆体の重合時に単量体として使用し、疎水性のエアロゲル前駆体を製造してエアロゲルを製造する方法があるが、エアロゲル中の疎水化気孔の欠陥(defect)により、機械的耐久性において問題がある。
【0006】
したがって、本発明により、線状シラン架橋剤を導入した前加水分解されたTEOS前駆体を製造し、それを用いてエアロゲルを製造することで、熱安定性および物理的安定性の高いエアロゲルを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許出願公開第2007-0022003A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、エアロゲル前駆体の製造時に、PEG(ポリエチレングリコール;polyethylene glycol)由来単位を含む線状シラン架橋剤を導入して疎水性エアロゲル前駆体を製造することを目的とする。
【0009】
また、前記疎水性エアロゲル前駆体を用いて、改善された高温熱安定性および向上した機械的物性を有する疎水性エアロゲルを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アルコキシシラン化合物、または前加水分解されたアルコキシシラン化合物を準備するステップと、
線状シラン架橋剤を添加して重合させるステップと、を含み、
前記線状シラン架橋剤がPEG由来単位を含むものである、疎水性エアロゲル前駆体の製造方法を提供する。
【0011】
また、アルコキシシラン化合物由来単位と、PEG由来単位と、を含む疎水性エアロゲル前駆体を提供する。
【0012】
また、前記疎水性エアロゲル前駆体から製造された疎水性シリカエアロゲル、およびその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、疎水性エアロゲル前駆体を製造することができ、前記疎水性エアロゲル前駆体を用いて、気孔が均一であり、改善された高温熱安定性および向上した機械的物性を有する疎水性エアロゲルを製造することができる。
【0014】
本発明に係る疎水性エアロゲル前駆体を用いると、エアロゲルの製造時に表面改質ステップを経ることなく疎水性エアロゲルを製造することができるため、高価な表面改質剤の購入コストを低減することができ、長時間を要する表面改質工程を経ないため、総工程時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。この際、本明細書の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0016】
本発明は、疎水性エアロゲル前駆体の製造時に、PEG由来単位を含む線状シラン架橋剤を導入することで、改善された高温熱安定性および向上した機械的物性を有するエアロゲルを製造することを目的とする。
【0017】
そこで、本発明は、アルコキシシラン化合物、または前加水分解されたアルコキシシラン化合物を準備するステップと、
線状シラン架橋剤を添加して重合させるステップと、を含み、
前記線状シラン架橋剤がPEG由来単位を含むものである、疎水性エアロゲル前駆体の製造方法を提供する。
【0018】
以下、前記本発明の疎水性エアロゲル前駆体の製造方法について詳細に説明する。
【0019】
本発明の疎水性エアロゲル前駆体の製造方法では、エアロゲル前駆体として、アルコキシシラン化合物、またはそれを前加水分解させたアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
【0020】
具体的に、本発明で使用可能なアルコキシシラン化合物は、テトラメチルオルトシリケート(tetra methyl ortho silicate;TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(tetra ethyl ortho silicate;TEOS)、メチルトリエチルオルトシリケート(methyl triethyl ortho silicate)、ジメチルジエチルオルトシリケート(dimethyl diethyl ortho silicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetra propyl ortho silicate)、テトライソプロピルオルトシリケート(tetra isopropyl ortho silicate)、テトラブチルオルトシリケート(tetra butyl ortho silicate)、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート(tetra secondarybutyl ortho silicate)、テトラターシャリーブチルオルトシリケート(tetra tertiarybutyl ortho silicate)、テトラヘキシルオルトシリケート(tetra hexyl ortho silicate)、テトラシクロヘキシルオルトシリケート(tetra cyclohexyl ortho silicate)、およびテトラドデシルオルトシリケート(tetra dodecyl ortho silicate)からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的には、テトラエチルオルトシリケート(tetra ethyl ortho silicate;TEOS)であってもよい。
【0021】
一方、本発明で使用可能な前加水分解されたアルコキシシラン化合物としては、水和度が50~80%、より具体的には、65~75%であるものを用いてもよい。エアロゲル単量体として、アルコキシシラン化合物のようなモノマーを用いる場合より、前加水分解されたアルコキシシラン化合物であるアルコキシジシロキサン系プレポリマーを製造して用いる場合、ゲル化反応時間を制御しやすく、貯蔵安定性に優れるため好ましい。
【0022】
但し、水和度が上記範囲未満である場合は、ゾルゲル反応が円滑に行われないため、分子量が低くなり、安定性が低下するという問題があり、上記範囲を超える場合は、架橋密度が調節されないため、エアロゲルの比表面積が低くなり、気孔面積が減少するという問題があり得る。
【0023】
一方、前記アルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシランを用いる場合、下記反応式1のような加水分解および縮合反応により、ポリエトキシジシロキサン(PEDS-Px)を製造することができる。
【0024】
[反応式1]
Si(OC2H5)4+nH2O->PEDS-Px+溶媒(C2H5OH)
(前記反応式1中、nは、使用される水のモル数であって、n<2である。)
【0025】
水のモル数がn=2である場合、SiO2のシリカ粒子が生成され、n<2である場合、アルコキシジシロキサン系プレポリマーとしてポリエトキシジシロキサン(PEDS-Px)を製造することができる。
【0026】
一方、前記水和度は、n=2を水和度100%と定義する。例えば、n=1は、水和度50%を意味し、投入される水のモル数に比例して水和度を計算することができる。
【0027】
前記PEG由来単位を含む線状シラン架橋剤は、下記反応式2のように、イソシアネートシランとポリエチレングリコール(n=3~24)を反応させて製造することができる。本発明の線状シラン架橋剤を製造するに際し、PEG(ポリエチレングリコール;Polyethylene Glycol)は、分子量によって多様に使用可能である。
【0028】
【0029】
本発明は、前記反応により製造された、下記化学式1で表される線状シラン架橋剤を用いてもよい。
【0030】
【化2】
(前記化学式1中、nは3~24である。)
【0031】
前記線状架橋剤は、PEG由来単位を含むものであって、エアロゲル前駆体の製造時に単量体として添加する場合、エアロゲル前駆体に疎水性官能基を付与し、疎水性気孔を含む疎水化されたエアロゲルを製造することができ、疎水化されたエアロゲル前駆体同士の架橋反応により、高温熱安定性および機械的物性が向上した、疎水化されたエアロゲルを製造することができる効果がある。
【0032】
より具体的に、本発明の線状シラン架橋剤は、分子中に親水性および疎水性をともに有するPEG官能基を有しているため、ゾル-ゲル反応物との相溶性に優れ、他の線状シラン化合物に比べて大きい分子量を有するため、エアロゲル中に十分な疎水性気孔を生成させ、高い気孔率および優れた常温/高温疎水性を有するエアロゲル前駆体を製造することができる。
【0033】
一方、前記線状シラン架橋剤は、前記アルコキシシラン化合物または前加水分解されたアルコキシシラン化合物の総モル数に対して、0.5~20モル%、より具体的には1.0~10モル%で添加することを特徴とする。
【0034】
上記範囲未満で添加する場合、シリカエアロゲルの製造時に疎水化度が高くないため、エアロゲルの熱安定性および機械的物性が低下するという問題があり、上記範囲を超えて添加する場合、エアロゲルの製造時にゲル化反応するシリカ単位の割合が少ないため、ゲル化反応が効率的に行われないという問題があり得る。
【0035】
本発明の前記疎水性エアロゲル前駆体の重量平均分子量(Mw)は、500~6,500g/mol、より具体的には、1,500~3,500g/molであることを特徴とする。重量平均分子量が上記の範囲を満たす場合、耐久性に優れて量産が可能であり、量産後に長期間保管してエアロゲルの製造に利用することができる。
【0036】
一方、重量平均分子量が上記範囲未満である場合は、エアロゲルの製造時に湿潤ゲルの形成時間が長くなり、エアロゲルの耐熱性が低下するという問題があり、上記範囲を超える場合は、エアロゲル前駆体の耐久性が低下するという問題があり得る。
【0037】
また、本発明の前記疎水性エアロゲル前駆体は、PEG由来単位を0.2~10重量%、より具体的には、0.5~10重量%含むことを特徴とする。
【0038】
上記範囲未満で含まれた場合は、エアロゲルの製造時に疎水化度が高くないため、熱安定性および機械的物性が低下するという問題があり、上記範囲を超えて含まれた場合は、シリカエアロゲルの製造時にゲル化反応するシリカ単位の割合が少ないため、ゲル化反応が効率的に行われないという問題があり得る。
【0039】
また、本発明の前記疎水性エアロゲル前駆体は、炭素含量が20重量%以上、より具体的には、30重量%以上であることを特徴とする。
【0040】
炭素含量が上記範囲未満である場合は、シリカエアロゲルの製造時に疎水性が高くないため、熱安定性および機械的物性が低下するという問題があり、上記範囲を超える場合は、シリカエアロゲルの製造時にゲル化反応するシリカ単位の割合が少ないため、ゲル化反応が効率的に行われないという問題があり得る。
【0041】
また、本発明は、前記疎水性エアロゲル前駆体の製造方法により製造された、アルコキシシラン化合物由来単位およびPEG由来単位を含む疎水性エアロゲル前駆体を提供する。
【0042】
前記疎水性エアロゲル前駆体の具体的な特徴は、前記疎水性エアロゲル前駆体の製造方法で検討したとおりである。
【0043】
また、本発明は、疎水性エアロゲル前駆体を用いて製造する、疎水性シリカエアロゲルの製造方法を提供する。
【0044】
本発明は、前記疎水性エアロゲル前駆体を用いてシリカゾルを製造した後、塩基性/酸性触媒を添加してゲル化反応させてシリカ湿潤ゲルを製造した後、選択的に熟成ステップを経てから、常圧/超臨界乾燥により疎水性シリカエアロゲルを製造することができる。
【0045】
本発明の疎水性シリカエアロゲルの製造方法は、疎水性エアロゲル前駆体を用いるため、シリカエアロゲルの製造時に、追加の表面改質ステップを含まないことを特徴とする。
【0046】
表面改質剤は高価であるだけでなく、反応効率が高くないため多量の表面改質剤が使用されるが、その場合、残留する表面改質剤も増加し得て、その残留した表面改質剤の洗浄にも高価な多量の溶媒が用いられ、表面改質に長い時間が必要である。そのため、表面改質ステップを経る従来の疎水性シリカエアロゲルの製造方法は、生産性および経済性が良くなかった。
【0047】
本発明は、エアロゲル前駆体自体を疎水化させてエアロゲルの製造に用いるため、追加の表面改質ステップを経ない。これにより、高価な表面改質剤の購入コストを低減することができ、長時間を要する表面改質工程を経ないため、総工程時間を短縮することができる効果がある。
【0048】
また、本発明は、前記PEG由来単位を含む疎水性エアロゲル前駆体由来単位を含む疎水性シリカエアロゲルを提供する。本発明の疎水性シリカエアロゲルは、内部気孔まで疎水性が十分に維持されるため、従来の疎水性シリカエアロゲルに比べて高温熱安定性および機械的物性が向上することを特徴とする。
【0049】
具体的に、本発明の疎水性シリカエアロゲルは、炭素含量が11.0重量%以上、より具体的には、12.5重量%以上であり、比表面積が725m2/g以上、より具体的には、770m2/g以上であり、平均気孔直径が13.7nm以上であり、総気孔体積が3.15cm3/g以上、より具体的には、3.35cm3/g以上であり、圧縮強度が0.025Mpa以上、より具体的には、0.028Mpa以上であってもよい。
【0050】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0051】
製造例1:前加水分解されたアルコキシシラン化合物(アルコキシジシロキサン系プレポリマー)の製造
500mLの反応器に、TEOS150g、エタノール51g、および35%のHCl水溶液0.04gを投入してから撹拌し、70℃まで反応温度を上げた。反応温度が70℃に維持されると、35%の塩酸水溶液0.02gを投入した、酸性化された蒸留水19.4gを、1時間かけてゆっくりと滴下した後、8時間反応を実施した。
【0052】
反応終結後、反応器の温度を室温まで冷却させた。冷却された反応物をフィルターで減圧濾過して不純物を除去し、75%加水分解されたエトキシジシロキサン系プレポリマー(前加水分解されたTEOS)を製造した。
【0053】
製造例2:PEG(ポリエチレングリコール;polyethylene glycol)由来単位を含む線状シラン架橋剤の製造
【0054】
【0055】
1000mlのフラスコに、イソシアネートシラン(KBE-9007、信越社製)19.79g、ポリエチレングリコールPEG-400(韓国、DUKSAN COMPANY製、n=8.2~9.1)12.80gを添加し、KBE-9007に対して3mol%となるようにDBTDL(ジラウリン酸ジブチルスズ;Dibutyltin dilaurate)0.57gを入れ、THF(テトラヒドロフラン)300gで室温で希釈することで、PEG(ポリエチレングリコール;polyethylene glycol)由来単位を含む線状シラン架橋剤を製造した。TLC(薄層クロマトグラフィー;Thin Layer Chromatography)により、反応物が全て消費されたことが確認されるまで常温で撹拌した後、減圧して反応溶媒を全て除去し、ジクロロメタン:メチルアルコール=30:1の展開液の条件下で、カラムクロマトグラフィーにより純度95%以上の液状生成物28gを得た(収率:91%)。
【0056】
実施例1
前記製造例1で製造したプレポリマー溶液を0℃に冷却させた後、製造例2の線状シラン架橋剤3.5g(製造例1で製造したプレポリマーの0.5モル%)をエタノール40gに希釈させ、1時間かけてゆっくりと滴下した後、4時間激しく撹拌して反応させた。反応終結後、反応器の温度を室温まで冷却させ、疎水性エアロゲル前駆体を製造した。
【0057】
前記疎水性エアロゲル前駆体に、エタノール、蒸留水、およびアンモニア水を混合したものを徐々に添加してゲル化反応させた。この際、反応は室温(23±5℃)で行い、ここで、疎水性エアロゲル前駆体:エタノール:蒸留水:アンモニア水の混合重量比は3:8:1:40.1であった。10分程度撹拌してから静置し、湿潤ゲルを得た。得られた湿潤ゲルに対して、40℃、80気圧の条件で超臨界乾燥を行い、疎水性エアロゲルを製造した。
【0058】
実施例2
500mLの反応器に、TEOS150g、エタノール51g、製造例2の線状シラン架橋剤3.5g(TEOSの0.5モル%)、および35%のHCl水溶液0.04gを投入してから撹拌し、70℃まで反応温度を上げた。反応温度が70℃に維持されると、35%の塩酸水溶液0.02gを投入した、酸性化された蒸留水19.4gを、1時間かけてゆっくりと滴下した後、8時間反応を実施した。反応終結後、反応器の温度を室温まで冷却した。冷却された反応物をフィルターで減圧濾過して不純物を除去し、疎水性エアロゲル前駆体を製造した。
【0059】
前記疎水性エアロゲル前駆体に、エタノール、蒸留水、およびアンモニア水を混合したものを徐々に添加して反応させた。この際、反応は室温(23±5℃)で行い、ここで、疎水性エアロゲル前駆体:エタノール:蒸留水:アンモニア水の混合重量比は3:8:1:40.1であった。10分程度撹拌してから静置し、湿潤ゲルを得た。得られた湿潤ゲルに対して、40℃、80気圧の条件で超臨界乾燥を行い、疎水性エアロゲルを製造した。
【0060】
実施例3
前記実施例1において、製造例2の線状シラン架橋剤を0.35g(製造例1で製造したプレポリマーの0.05モル%)使用したことを除き、実施例1と同様の方法により疎水性エアロゲル前駆体および疎水性エアロゲルを製造した。
【0061】
実施例4
前記実施例1において、製造例2の線状シラン架橋剤を175g(製造例1で製造したプレポリマーの25モル%)使用したことを除き、実施例1と同様の方法により疎水性エアロゲル前駆体および疎水性エアロゲルを製造した。
【0062】
比較例1
前記製造例1で製造したプレポリマー溶液を0℃に冷却させた後、クロロトリメチルシラン3.9g(TEOSの5モル%)をエタノール40gに希釈させ、1時間かけてゆっくりと滴下した後、4時間激しく撹拌して反応させた。反応終結後、反応器の温度を室温まで冷却させ、疎水性エアロゲル前駆体を製造した。
【0063】
前記疎水性エアロゲル前駆体に、エタノール、蒸留水、およびアンモニア水を混合したものを徐々に添加して反応させた。この際、反応は室温(23±5℃)で行い、ここで、疎水性エアロゲル前駆体:エタノール:蒸留水:アンモニア水の混合重量比は3:8:1:40.1であった。10分程度撹拌してから静置し、湿潤ゲルを得た。得られた湿潤ゲルに対して、40℃、80気圧の条件で超臨界乾燥を行い、疎水性エアロゲルを製造した。
【0064】
【0065】
実験例
前記実施例および比較例で製造したそれぞれのシリカエアロゲルに対して下記物性を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0066】
1)タップ密度
タップ密度は、タップ密度測定機(TAP-2S、Logan Instruments co.製)を用いて分析した。
【0067】
2)比表面積(BET表面積、m2/g)、平均気孔直径(Dp、nm)、および総気孔体積(Vp、cm3/g)
比表面積、平均気孔直径、および気孔体積は、MicrometricsのASAP 2010機器を用いて、部分圧(0.11<p/po<1)による、窒素の吸着/脱着量から分析した。
【0068】
3)炭素含量(carbon content、wt%)
炭素含量は、EltraのCarbon/Sulfur Analyzer(CS-800)を用いて測定した。
【0069】
4)圧縮強度(Mpa)
UTM(H10K-C、Hounsfield、U.K)を用いて、等しい高さ(12mm)に表面を研磨した円筒状試験片に対して、5mm/minのクロスヘッド速度(down cross head Speed)で一軸加圧(uniaxial pressing)することによる変形程度から評価した。
【0070】
【0071】
前記表1に示されたように、実施例のシリカエアロゲルは、比表面積に優れており、総気孔体積が大きいことから、断熱性能に優れていると予想され、圧縮強度も比較例に比べて優れていることを確認することができた。
【0072】
上述の本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができるであろう。したがって、以上で述べた実施例らは、総ての点から例示的なものであり、限定的ではないと理解すべきである。