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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】食用油
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20220823BHJP
   B65D 1/02 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
A23D9/00 506
B65D1/02 111
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018000371
(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公開番号】P2019118306
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】將野 喜之
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-302441(JP,A)
【文献】特開2002-095412(JP,A)
【文献】特開2017-060505(JP,A)
【文献】特開2001-226693(JP,A)
【文献】特開2000-309794(JP,A)
【文献】特開2002-291408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを含有し、残余が170以上のヨウ素価を有する油である、食用油であって、
前記170以上のヨウ素価を有する油と前記中鎖脂肪酸含有トリグリセリドとを、97:3~55:45の質量比で含有し、
前記170以上のヨウ素価を有する油に占める、アマニ油、シソ油、エゴマ油、チアシード油から選ばれる1種以上のコールドプレス油の含有量が90~100質量%であり、
前記中鎖脂肪酸含有トリグリセリドに占める中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が90~100質量%である、
食用油(ただし、
グリセロールの1位または3位の少なくとも一方がγ-リノレン酸残基であるグリセリン脂肪酸エステルと、中鎖トリグリセリドとを95:5~5:95の比率(質量比)で含有する態様、および、
共役トリエン構造を有する共役高度不飽和脂肪酸グリセリドを含有する態様、
を除く)。
【請求項2】
前記中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを構成する中鎖脂肪酸の全量に占めるカプリン酸の含有量が、20~100質量%である、請求項1に記載の食用油。
【請求項3】
請求項1または2に記載の食用油を含む食品。
【請求項4】
請求項1または2に記載の食用油がキャップ付き容器に充填された状態である、容器充填食用油。
【請求項5】
前記キャップ付き容器がデラミ容器である、請求項4に記載の容器充填食用油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度不飽和脂肪酸を含み、生食に適した食用油に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康や健康寿命への関心の高まりから、スーパーフードや健康油が注目され、ちょっとしたブームになっている。従来親しまれている健康油は、胡麻油である。地中海食がブームになると、オリーブ油が健康油として注目されるようになった。最近では、ココナッツオイルのブームがあり、エゴマ油・アマニ油などのω3オイルへの関心も高い(例えば、非特許文献1)。
【0003】
健康油の中でも、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、EPA、DHAなどの高度不飽和脂肪酸を含有する油は、極めて酸化されやすい。したがって、一般的に、高度不飽和脂肪酸を含有する油は、激しい酸化が起こる加熱調理には不向きである。そのため、エゴマ油・アマニ油などの植物由来の油は、新鮮なコールドプレス油をそのまま、サラダなどの食材に掛けて食べられることが多い。
【0004】
また、高度不飽和脂肪酸を含有する油は、保存時においても酸化を受けやすいので、包装容器も工夫されている。例えば、アマニ油は、多くの場合、遮光容器に充填される。最近では、内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性に富む内容器を備えた、いわゆるデラミ容器に充填されたアマニ油なども販売されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】リビングくらしHOW研究所 女性(2016/全国)「食用油・料理についてのアンケート」 インターネット:http://www.kurashihow.co.jp/admin/wp-content/uploads/2016/02/b1b1e12982839dc5d4ad37c3fc7fce4b.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高度不飽和脂肪酸を含有する油の酸化速度は非常に速いので、常温に置き忘れたり、しばらく使用しなかったりすると、キャップなどに僅かに付着した油が酸化し、粘性が増したり、異臭を発したりすることが懸念される。
【0007】
本発明の課題は、使用後にキャップなどに付着して残る油の量が少なくなる、高度不飽和脂肪酸を含有する食用油を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、高度不飽和脂肪酸を含有する油に中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを特定の比率で調合することにより、使用後に、キャップなどに付着して残る油の量が減少することを見出した。これにより、本発明は完成された。
【0009】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
[1]130以上のヨウ素価を有する油と中鎖脂肪酸含有トリグリセリドとを、97:3~30:70の質量比で含有する食用油。
[2]前記中鎖脂肪酸含有トリグリセリドに占める中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が、30~100質量%である、[1]の食用油。
[3]前記中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを構成する中鎖脂肪酸の全量に占めるカプリン酸の含有量が、20~100質量%である、[1]または[2]の食用油。
[4]前記130以上のヨウ素価を有する油が、植物性油糧原料のコールドプレス油である、[1]~[3]の何れか1つの食用油。
[5][1]~[4]の何れか1つの食用油を含む食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、使用後にキャップなどに付着して残る油の量が少なくなる、高度不飽和脂肪酸を含有する食用油を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において特に説明のない場合、A(数値)~B(数値)は、A(数値)以上B(数値)以下を意味する。
【0012】
(130以上のヨウ素価を有する油)
本発明の食用油は、130以上のヨウ素価を有する油を含有する。ここで、130以上のヨウ素価を有する油(以下、高度不飽和脂肪酸含有油ともいう)は、本発明の食用油において後述の中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを含まない(除いた)部分である。高度不飽和脂肪酸含有油は、好ましくは130以上のヨウ素価を有する植物油(以下、高度不飽和脂肪酸含有植物油ともいう)を含む。具体的には、大豆油、グレープシードオイル、ひまわり油、サフラワー油、くるみ油、松の実油、カメリナ油、ヘンプシードオイル、ラズベリーシードオイル、カシス油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、チアシード油、ザクロ油、微細藻類油などが挙げられる。高度不飽和脂肪酸含有植物油は、好ましくは、アマニ油、シソ油、エゴマ油、チアシード油である。高度不飽和脂肪酸含有植物油は、1種または2種以上が使用されてもよい。本発明の食用油に含まれる高度不飽和脂肪酸含有油に占める高度不飽和脂肪酸含有植物油の含有量は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは60~100質量%であり、さらに好ましくは80~100質量%であり、ことさらに好ましくは90~100質量%である。
【0013】
上記の、高度不飽和脂肪酸含有油および高度不飽和脂肪酸含有植物油のヨウ素価は、好ましくは160以上であり、より好ましくは170以上であり、さらに好ましくは180以上であり、ことさら好ましくは185以上である。上限は特に限定はないが、好ましくは250以下であり、より好ましくは240以下であり、さらに好ましくは220以下であり、ことさら好ましくは210以下である。高度不飽和脂肪酸含有油および高度不飽和脂肪酸含有植物油のヨウ素価の下限と上限は任意の組み合わせを選択し得る。高度不飽和脂肪酸含有油のヨウ素価は、2種以上の油の混合により調整されてもよい。例えば、ヨウ素価が130未満の油とヨウ素価が150以上の油を混合し、ヨウ素価が130以上となるように調整してもよい。
なお、ヨウ素価は、例えば、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」の方法に準じて測定できる。
【0014】
上記の高度不飽和脂肪酸含有植物油は、130以上のヨウ素価を有し、食用に適する限り、精製度は限定されない。高度不飽和脂肪酸含有植物油は、焙煎された油糧原料から得られた焙煎油であってもよい。また、油糧原料をコールドプレスして得られた油であってもよい。しかし、高度不飽和脂肪酸含有植物油は、好ましくはコールドプレスで得られる。コールドプレスにおける油糧原料の温度は、好ましくは90℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、さらに好ましくは50℃以下であり、ことさら好ましくは40℃以下である。コールドプレスは、好ましくは、工程で発生する摩擦熱などを除き、油糧原料を意図的に加熱する工程を有さない。コールドプレス温度の下限は特に限定されない。しかし、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは10℃以上である。コールドプレス温度の上限と下限は任意の組合せを選択し得る。また、圧搾(プレス)方法は、特に限定されない。バッチ式圧搾法や連続式圧搾法など、公知の圧搾方法が適用できる。バッチ式圧搾法では、例えば、プレートプレス、玉締機、ポットプレスなどの各種圧搾機が使用できる。連続式圧搾法では、例えば、スクリュープレスのメカニズムを利用したエキスペラーなどが使用できる。圧搾された油は、必要に応じて、ろ過および/または静置により、夾雑物を取り除いてもよい。また、水洗いなど軽度の精製をしてもよい。
【0015】
(中鎖脂肪酸含有トリグリセリド)
本発明の食用油は、中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを含有する。ここで、中鎖脂肪酸含有トリグリセリド(以下、MTGとも表す)は、トリグリセリドを構成する脂肪酸の一部もしくは全部が中鎖脂肪酸であるトリグリセリドである。構成脂肪酸の全部が中鎖脂肪酸であるトリグリセリドは、中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTとも表す)であり、MTGに含まれる。また、ここで、中鎖脂肪酸は、炭素数6~10の脂肪酸であり、好ましくは、直鎖の飽和脂肪酸である。具体的には、n-ヘキサン酸(カプロン酸)、n-オクタン酸(カプリル酸)、n-デカン酸(カプリン酸)が挙げられる。
【0016】
本発明の食用油に含まれるMTG全量の構成脂肪酸に占める中鎖脂肪酸の含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは50~100質量%であり、さらに好ましくは70~100質量%であり、ことさらに好ましくは90~100質量%である。また、本発明の食用油に含まれるMTGは、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を含んでもよい。上記MTGに占めるMCTの含有量は、好ましくは30~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%であり、さらに好ましくは70~100質量%であり、ことさらに好ましくは90~100質量%である。中鎖脂肪酸トリグリセリドは、前述のとおり、グリセロールに結合する3つの脂肪酸が全て中鎖脂肪酸であるトリグリセリドである。
【0017】
本発明の食用油に含まれるMTGは、MTG全量の構成脂肪酸に含まれる中鎖脂肪酸に占めるカプリン酸の含有量が、好ましくは20~100質量%であり、より好ましくは30~90質量%であり、さらに好ましくは40~80質量%である。また、MTG全量の構成脂肪酸に含まれる中鎖脂肪酸に占めるカプロン酸の含有量は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは0~10質量%である。MTG全量の構成脂肪酸に含まれる中鎖脂肪酸に占めるカプリン酸含有量及びカプロン酸含有量が上記範囲内にあると、天然物由来の油の風味が引き立ちやすい。
【0018】
上記MCTは、従来公知の方法を用いて製造できる。例えば、炭素数6~10の脂肪酸とグリセロールとを、120~180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。この縮合反応は、減圧下で行うのが好ましい。上記縮合反応には、触媒を用いることができる。しかし、無触媒下で、上記縮合反応を行うことが好ましい。
【0019】
本発明の食用油に含まれる中鎖脂肪酸含有トリグリセリド(MTG)は、また、中長鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MLCTとも表す)を含んでもよい。中長鎖脂肪酸トリグリセリド(MLCT)は、グリセロールに結合する3つの脂肪酸のうち、中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸とがそれぞれ少なくとも1つは結合したトリグリセリドである。ここで、長鎖脂肪酸とは、炭素数12以上の脂肪酸であり、好ましくは直鎖の脂肪酸である。より具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。食用油に含まれるMLCT全量の構成脂肪酸に含まれる長鎖脂肪酸は、不飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%である。
【0020】
上記MLCTは、MCTと同様に、エステル合成により調製されてもよい。MLCTは、また、MCTと長鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、LCTとも表す)との混合物をエステル交換することにより調製されてもよい。ここで、長鎖脂肪酸トリグリセリドは、グリセロールに結合する3つの脂肪酸が全て長鎖脂肪酸であるトリグリセリドである。LCTとしては、構成脂肪酸の全量に占める不飽和脂肪酸の含有量が70質量%以上である油脂が好ましい。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、及びこれらの混合油、分別油、エステル交換油などが挙げられる。
【0021】
上記のMCTとLCTとの混合物のエステル交換は、好ましくは、MCTとLCTとが、質量比で、10:90~90:10(より好ましくは20:80~80:20)の割合で混合された混合物のエステル交換である。エステル交換する方法は、特に限定されない。エステル交換は、ナトリウムメトキシドを触媒とした化学的エステル交換や、リパーゼ製剤を触媒とした酵素的エステル交換など、通常行われる方法で行えばよい。
【0022】
(食用油)
本発明の食用油は、130以上のヨウ素価を有する油と中鎖脂肪酸含有トリグリセリドとを、97:3~30:70の質量比で含有する。本発明の食用油は、130以上のヨウ素価を有する油と中鎖脂肪酸含有トリグリセリドとを、好ましくは93:7~40:60の質量比で含有し、より好ましくは83:17~45:55の質量比で含有し、さらに好ましくは73:27~55:45の質量比で含有する。130以上のヨウ素価を有する油と中鎖脂肪酸含有トリグリセリドとの質量比が上記範囲内にあると、容器に充填された食用油を使用した後に、キャップなどに付着して残る油の量が少なくなる。さらに、130以上のヨウ素価を有する油として使用された高度不飽和脂肪酸含有植物油のエグ味・苦味を主とする雑味が弱くなり、好ましい風味(主に香味)が引き立つという副次的な効果や、流動性が高まるので、食材に掛けやすい、食材となじみ易いという副次的な効果が期待できる。なお、上述のとおり、本発明の食用油においては、食用油から中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを除いた部分を、130以上のヨウ素価を有する油とみなす。
【0023】
(食用油の調製)
本発明の食用油は、例えば、130以上のヨウ素価を有する油と、中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを含む油脂とを、130以上のヨウ素価を有する油と中鎖脂肪酸含有トリグリセリドとの質量比が、97:3~30:70となるように混合することで調製できる。混合は、温和な加温下で行われてもよい。なお、上記のMCTとLCTとの混合物のエステル交換油、または、合成油は、LCTを含有する場合がある。エステル交換油または合成油に含まれるMTGを除いた部分は、上述のとおり、130以上のヨウ素価を有する油の一部または全部として扱われる。例えば、95質量部の130以上のヨウ素価を有する油と5質量部のMCTとの混合油のエステル交換油は、約20質量%のMTGを含み、残りの約80質量%はLCTである。当該LCTのヨウ素価は130以上なので、130以上のヨウ素価を有する油とみなされる。したがって、本発明は、上記のようなエステル交換油自体の態様を含み得る。
【0024】
本発明の食用油の好ましい実施の形態としては、高度不飽和脂肪酸含有植物油とMCTとを、97:3~30:70の質量比で混合した調合油が挙げられる。本発明の食用油のまた別の好ましい実施の形態としては、高度不飽和脂肪酸含有植物油と、MCTとLCTとを質量比10:90~90:10で混合した混合油のエステル交換油とを、90:10~50:50の質量比で混合した調合油が挙げられる。なお、油に含まれるトリグリセリドを確認、定量する方法としては、ガスクロマトグラフィー法を適用してもよい。例えば、JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993)の方法に準拠して行ってもよい。
【0025】
本発明の食用油は、本発明の構成および特徴を損なわない限りにおいて、必要に応じて通常の食用油に用いられる添加剤を適宜添加してもよい。具体的には、保存安定性向上、酸化安定性向上、熱安定性向上、低温下での結晶析出抑制などを目的として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ジグリセリド、モノグリセリドなどの乳化剤、ビタミンE、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、オリザノール、トコフェロールなどの酸化防止剤、レシチン、シリコーン、着色料、香料など、の添加が挙げられる。添加剤の添加量は、食用油100質量%に対して、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは0~1質量%である。
【0026】
(食用油の用途)
本発明の食用油を含む本発明の食品は、特に限定されない。例えば、マヨネーズ、マーガリン、ファットスプレット、分離型ドレッシング、乳化ドレッシング、アイスクリーム、クリーム等の乳化油脂組成物、カツ、コロッケ、天ぷら、フライドチキン、フライドポテトなどの揚げ物のほか、野菜炒め、チャーハンなどの炒め物、パン類、洋菓子類、麺類、飲料が挙げられる。特に、かけ油やドレッシングなどの生食用の食品が好ましい。これらの食品は、それぞれ通常の製法にて製造できる。
【実施例
【0027】
次に、諸例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明はこれらに限定されない。
【0028】
<原料油>
アマニ油:ヨウ素価191、コールドプレス品(圧搾温度40℃以下)、日清オイリオグループ株式会社製を使用した。
菜種油:ヨウ素価114、通常精製品、日清オイリオグループ株式会社製を使用とした。
MCT1:構成脂肪酸がカプリル酸とカプリン酸であり、その質量比が4:6であるMCT、日清オイリオグループ株式会社製を、MCT1として使用した。
MLCT1:86質量部の菜種油と14質量部のMCT1との混合油のエステル交換油、MTG含有量51質量%、日清オイリオグループ株式会社製を、MLCT1として使用した。
【0029】
<油脂の調製及び評価1>
表1および2に示された配合に従い、例1~例12の食用油を調製した。
注ぎ口がクローバー型にカットされた直径22mmのプロピレン製キャップを有する600ml容のペットボトルを準備した。例1~12の食用油を、それぞれ約200ml、ペットボトルに充填した。キャップのクローバー型の注ぎ口の柄の部分全体から油が流れ出るように、ペットボトルを静かに傾け、約20gの油を注ぎ出した。油を注ぎ出した後、キャップに付着した油を、予め計量したティッシュペーパーで拭き取り、計量し、差分を算出した。同様の操作を5回繰り返し、平均値を算出した。作業温度は室温(22℃)であった。結果を表1および2に示した。
また、以下の評価基準に従って、専門パネラー5名によりテイスティングを行い、合計点により総合評価した。結果を表1および2に示した。

評価基準
5点:アマニ油と比較して、香味の強さは同程度であり雑味が少ない
4点:アマニ油と比較して、香味の強さはやや弱いが雑味も少ない
3点:アマニ油と比較して、香味の強さ、雑味が同程度である
2点:アマニ油と比較して、香味が弱く、雑味を感じる
1点:アマニ油と比較して、香味が弱く、雑味を強く感じる。

総合評価
23~25点(◎◎):アマニ油と比較して、風味が良好である。
19~22点( ◎ ):アマニ油と比較して、風味がやや良好である
15~18点( ○ ):アマニ油と比較して、風味が同程度である
15点未満 ( ▲ ):アマニ油と比較して、風味が劣る。
【0030】
【表1】

*;評価の対象外
【0031】
【表2】

*;評価の対象外
【0032】
<かけ油評価>
40gのサラダに例1と例7の食用油を、各10gかけ、混ぜ合わせて、混ざり具合を観察した。例7の食用油は例1の食用油と比較して、素材とのなじみがよく、混ざりやすかった。
【0033】
<デラミ容器での評価>
145g容のデラミ容器に例1と例7の食用油を充填し、全量を絞り出すことで、絞り出し易さを比較した。例7の食用油は例1の食用油と比較して、最後まで絞り出しやすかった。