(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ベローズ式ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/08 20060101AFI20220823BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20220823BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20220823BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
F16F9/08
F16F15/023 A
F16J3/04 B
F16J15/52 Z
(21)【出願番号】P 2018092859
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】境 久嘉
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101725587(CN,A)
【文献】特開2018-071740(JP,A)
【文献】特開平07-217697(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02428326(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第105041942(CN,A)
【文献】特開昭60-004640(JP,A)
【文献】特開平07-027162(JP,A)
【文献】実開昭60-099343(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00 - 9/58
15/00 -15/36
F16J 3/00 - 3/06
15/16 -15/32
15/324-15/3296
15/46 -15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空洞に流体が満たされ、軸方向に伸縮自在な第一のベローズと、
内部空洞に流体が満たされ、軸方向に伸縮自在な第二のベローズと、
前記第一のベローズの軸方向一端側に設けられ、前記第一のベローズの内部空洞の軸方向一端側の開口を閉じる第一のエンドプレートと、
オリフィスを有し、前記第一のベローズの軸方向他端側と前記第二のベローズの軸方向一端側との間に設けられ、前記第一のベローズと前記第二のベローズとを同軸で連結する
中間プレートと、
前記第二のベローズの軸方向他端側に設けられ、前記第二のベローズの内部空洞の軸方向他端側の開口を閉じる第二のエンドプレートと、
を備え、
前記第一のベローズの内部空洞は、前記オリフィスによって前記第二のベローズの内部空洞と連通し、
前記第一のベローズ及び前記第二のベローズの内部空洞は密閉され、
前記第一のベローズの有効断面積は、前記第二のベローズの有効断面積と異なり、
軸方向一端側から軸方向他端側に向けて、前記第一のエンドプレート、前記第一のベローズ、前記中間プレート、前記第二のベローズ、前記第二のエンドプレートの順に配置され、
前記第一のエンドプレートと前記第二のエンドプレートとの間で減衰能を発揮する、
ことを特徴とするベローズ式ダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載のベローズ式ダンパであって、
前記第二のエンドプレートは、前記第二のベローズの内部空洞に連通する開口と該開口を塞ぐプラグとを有する、
ことを特徴とするベローズ式ダンパ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベローズ式ダンパであって、
前記第一のベローズ及び前記第二のベローズの内部空洞に満たされた流体は、非圧縮性流体である、
ことを特徴とするベローズ式ダンパ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のベローズ式ダンパであって、
前記第一のベローズ及び前記第二のベローズの内部空洞に満たされた流体は、粘性流体である、
ことを特徴とするベローズ式ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を減衰するベローズ式ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
精密測定機器や半導体製造装置などにおいては、可動体に対して1μm未満の精密位置決めが要求される。このような精密測定機器や半導体製造装置などでは、装置内に構成される精密位置決め機構における摩擦や振動を排除することが重要である。
【0003】
特に、精密位置決め機構における摩擦の影響は非線形な特性を有し、ロストモーションの原因となり位置決めを困難にする。そのため、精密位置決め機構では、駆動機構には転がり要素からなるボールねじや非接触なリニアモータが用いられ、案内機構には非接触な静圧案内が用いられる。しかし、一方でこれらの機構要素を導入することで、外部からの振動外乱や、内部からの微小振動に脆弱になり、位置決め精度が阻害されることがしばしば生じる。
【0004】
従来、内外からの振動を減衰するための装置として粘性ダンパが知られている。この従来の粘性ダンパとしては、例えば、シリンダ内をピストンが移動可能な構成において、シリンダ内に粘性流体を充填し、ピストンの動きに応じて流動する粘性流体の流動抵抗を利用するものが知られている。このタイプの粘性ダンパでは、摺動部から粘性流体が漏れるのを防ぐためパッキンを用いており、摺動摩擦が生じ、ヒステリシスの原因となる。
【0005】
また、別のタイプの粘性ダンパとしては、相対運動を行う平行平板のすきまを流動する粘性流体の粘性抵抗を利用するものが知られている。このタイプの粘性ダンパでは、粘性流体が、外気を初めとする他の流体と抵触することを避けられず、粘性流体の変質や漏れに伴うメンテナンスが必要となる。
【0006】
特許文献1に記載のベローズ式ダンパでは、有効断面積が同じ二つのベローズを、オリフィスを有するフランジ部材で連結した構造を開示している。二つのベローズのそれぞれは、フランジ部材で連結された側と反対側の端部に、端部材を有しており、二つのベローズの端部材どうしの間隔は支持軸によって固定されている。二つのベローズの内部は密閉されて作動オイルが満たされている。フランジ部材は、支持軸に案内されて、二つのベローズの端部材どうしの間で移動可能である。フランジ部材の移動にあたり、フランジ部材が端部材に近づく側のベローズ内の作動オイルは、フランジ部材のオリフィスを通過して、フランジ部材が端部材から遠ざかる側のベローズ内に移動する。
【0007】
特許文献1に記載のベローズ式ダンパでは、作動オイルがオリフィスを通過する際の粘性抵抗により、フランジ部材に連結された振動減衰の対象部材に減衰能を与えることができる。このため、特許文献1に記載のベローズ式ダンパによれば、フランジ部材の移動に際して摺動摩擦が無く、また、作動オイルは、密閉されたベローズ内部に満たされているので外気等との接触が無く、変質や漏れを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のベローズ式ダンパでは、減衰能を与えることができる部位は、フランジ部材と端部材との間であることから、フランジ部材と振動減衰の対象部材とを連結しようとしたとき、フランジ部材の両側のベローズが邪魔になり、連結のための構成が複雑化してしまうという問題があった。
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、振動減衰の対象部材との連結を簡単な構成で行うことができるベローズ式ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ベローズ式ダンパであって、内部空洞に流体が満たされ、軸方向に伸縮自在な第一のベローズと、内部空洞に流体が満たされ、軸方向に伸縮自在な第二のベローズと、前記第一のベローズの軸方向一端側に設けられ、前記第一のベローズの内部空洞の軸方向一端側の開口を閉じる第一のエンドプレートと、オリフィスを有し、前記第一のベローズの軸方向他端側と前記第二のベローズの軸方向一端側との間に設けられ、前記第一のベローズと前記第二のベローズとを同軸で連結する中間プレートと、前記第二のベローズの軸方向他端側に設けられ、前記第二のベローズの内部空洞の軸方向他端側の開口を閉じる第二のエンドプレートと、を備え、前記第一のベローズの内部空洞は、前記オリフィスによって前記第二のベローズの内部空洞と連通し、前記第一のベローズ及び前記第二のベローズの内部空洞は密閉され、前記第一のベローズの有効断面積は、前記第二のベローズの有効断面積と異なり、軸方向一端側から軸方向他端側に向けて、前記第一のエンドプレート、前記第一のベローズ、前記中間プレート、前記第二のベローズ、前記第二のエンドプレートの順に配置され、前記第一のエンドプレートと前記第二のエンドプレートとの間で減衰能を発揮する、ことを特徴とする。
本発明によれば、振動減衰の対象部材との連結を簡単な構成で行うことができるベローズ式ダンパを提供することができる。
本発明によれば、内部空洞内の流体は、オリフィスを介して、第一のベローズ内と第二のベローズ内とを行き来することができ、その際に、第一のベローズの伸縮長さと第二のベローズの伸縮長さとが異なるので、第一のエンドプレートと第二のエンドプレートの間で振動を減衰することができ、使い勝手の良いベローズ式ダンパを提供することができる。
本発明によれば、第一のエンドプレートと第二のエンドプレートとの間隔の伸縮の際に摺動摩擦が無いため、ヒステリシスが無い線形な特性を得ることができる。
本発明によれば、第一のベローズ及び第二のベローズ内を密閉するので、内部空洞に満たされた流体は、外気等との接触が無く、変質や漏れを回避することができる。
【0011】
また本発明は、前記第二のエンドプレートは、前記第二のベローズの内部空洞に連通する開口と該開口を塞ぐプラグとを有する、ことを特徴とする。
本発明によれば、第二のエンドプレートの開口から流体を充填した後に、開口をプラグで防ぐことにより、ベローズ式ダンパの内部空洞を密閉することができる。このことから、ベローズ式ダンパの内部空洞を容易に密閉することができ、内部空洞に満たされた流体は、外気等との接触が無く、変質や漏れを回避することができる。
【0012】
また本発明は、前記第一のベローズ及び前記第二のベローズの内部空洞に満たされた流体は、非圧縮性流体である、ことを特徴とする。
本発明によれば、内部空洞が圧縮性流体で満たされている場合と比べて、振動による伸縮を小さくすることができ、振動をより減衰することができる。
【0013】
また本発明は、前記第一のベローズ及び前記第二のベローズの内部空洞に満たされた流体は、粘性流体である、ことを特徴とする。
本発明によれば、粘性流体がオリフィスを通過する際の粘性抵抗によって、振動をより減衰することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振動減衰の対象部材との連結を簡単な構成で行うことができるベローズ式ダンパを提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係るベローズ式ダンパを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したベローズ式ダンパの中心軸Jに沿った面における断面図である。
【
図3】ベローズ式ダンパ1の動作を説明する断面図であって、(a)はベローズ式ダンパ1が基本状態に対して軸方向に圧縮力を受けて、長さが基本状態よりも圧縮された状態を示す図であり、(b)はベローズ式ダンパ1が外力を受けていない基本状態を示す図であり、(c)はベローズ式ダンパ1が引張力を受けて基本状態よりも伸長された状態を示す図である。
【
図4】
図1に示したベローズ式ダンパ1の適用例を説明する図であって、1軸直線運動ステージを示す断面図である。
【0016】
以下、本発明に係るベローズ式ダンパについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺、数等を異ならせる場合がある。
【実施例1】
【0017】
(ベローズ式ダンパ1の構造)
図1は、本発明の実施例1に係るベローズ式ダンパを示す斜視図である。
図2は、
図1に示したベローズ式ダンパの中心軸Jに沿った面における断面図である。ベローズ式ダンパ1は、軸方向に伸縮自在なベローズ11及び12を有する。ベローズ11及び12のそれぞれは、軸方向に沿って伸縮自在な蛇腹構造であって内部空洞を有する円筒形状である。
【0018】
ベローズ12の軸方向一端側(
図2における上側)には、ベローズ12の内部空洞の軸方向一端側の開口を閉じるエンドプレート16が配置されている。ベローズ12の軸方向他端側(
図2における下側)には、ベローズ12の内部空洞の軸方向他端側の開口を閉じる中間プレート13が配置されている。また、ベローズ11の軸方向一端側には、ベローズ11の内部空洞の軸方向一端側の開口を閉じる中間プレート13が配置されている。ベローズ11の軸方向他端側には、ベローズ11の内部空洞の軸方向他端側の開口を閉じるエンドプレート15が配置されている。
【0019】
ベローズ11及び12は、例えば厚さ0.2~0.3mm程度の圧延金属を円環状にプレス成形した薄板部材を重ね合せて、その内外周を交互にYAGレーザなどにより精密に全周を融合溶接して形成される。
【0020】
ベローズ11は、
図2に示すように、複数の円環状の薄板部材111より構成され、各々の薄板部材111は円環の外径部111aと円環の内径部111bとを有する。複数の薄板部材111は積層され、nを自然数としたとき、積層順が(2n-1)番目と2n番目の薄板部材の内径部とを全周に亘って溶接し、2n番目と(2n+1)番目の薄板部材の外径部とを全周に亘って溶接する。これを繰り返すことにより、ベローズ11が形成される。
【0021】
ベローズ12は、
図2に示すように、複数の円環状の薄板部材121により構成され、各々の薄板部材121は円環の外径部121aと円環の内径部121bとを有する。ベローズ12の形成もベローズ11と同様である。なお、ベローズ11及び12は、溶接成形するものに限られるものではなく、必要に応じて圧延性に優れた金属のパイプから一体成形されるものでもよい。
【0022】
エンドプレート16及び15は、平板円板形状である。中間プレート13は、平板円板形状であって、ベローズ12の内部空洞とベローズ11の内部空洞とを連通し、内部空洞内の流体17が通過可能なオリフィス14を有する。中間プレート13は、ベローズ12とベローズ11とを同軸で連結する。ベローズ12の有効断面積は、ベローズ11の有効断面積と異なる。本実施例では、ベローズ12の有効断面積は、ベローズ11の有効断面積よりも小さい。
【0023】
エンドプレート15は、エンドプレート15を軸方向に貫通するねじ穴15aを有する。ベローズ式ダンパ1の内部空洞に流体17を充填する際には、このねじ穴15aを介して流体17を注入する。ねじ穴15aは、ベローズ式ダンパ1の内部空洞に流体17を充填した後に、プラグ18がねじ止めされて封止される。このベローズ式ダンパ1の内部空洞への流体充填作業は、ベローズ式ダンパ1に外力が加わらない状態、すなわちベローズ11及び12が、ばねとしての自由長を保持した状態である基本状態で行う。
【0024】
ベローズ式ダンパ1の内部空洞に充填する流体17は、気体、液体を問わないが、本実施例では、非圧縮性流体であるオイルなどの粘性流体を用いる。ベローズ式ダンパ1の内部空洞が非圧縮性流体で満たされている場合は、内部空洞が圧縮性流体で満たされている場合と比べて、振動による伸縮を小さくすることができ、振動をより減衰することができる。ベローズ式ダンパ1の内部空洞が粘性流体で満たされている場合は、粘性流体がオリフィス14を通過する際の粘性抵抗によって、振動をより減衰することができる。
【0025】
(ベローズ式ダンパ1の動作)
図3は、ベローズ式ダンパ1の動作を説明する断面図であって、(a)はベローズ式ダンパ1が基本状態に対して軸方向に圧縮力を受けて、長さが基本状態よりも圧縮された状態を示す図であり、(b)はベローズ式ダンパ1が外力を受けていない基本状態を示す図であり、(c)はベローズ式ダンパ1が引張力を受けて基本状態よりも伸長された状態を示す図である。
【0026】
ここで、ベローズ11の有効断面積をSaとし、ベローズ11のばね定数をkaとし、ベローズ12の有効断面積をSbとし、ベローズ12のばね定数をkbとする。また、
図3(b)に示すように、ベローズ式ダンパ1の基本状態において、ベローズ11の自由長をlaとし、ベローズ12の自由長をlbとし、エンドプレート16の軸方向一端側の端面からエンドプレート15の軸方向他端側の端面までの長さを基本長L0とする。また、本実施例では、Sb<Saであることを条件とし、ベローズ11内の容積をVaとし、ベローズ12内の容積をVbとしたとき、以下の数1及び数2が成り立つ。
【数1】
【数2】
【0027】
また、数1及び数2に基づき、ベローズ式ダンパ1内に充填された粘性流体の体積Vは、数3で表される。
【数3】
【0028】
ここで、ベローズ式ダンパ1内に充填された粘性流体は非圧縮性流体としているため、ベローズ式ダンパ1内の粘性流体の体積Vは、ベローズ式ダンパ1の伸縮に係わらず一定である。
【0029】
次に、
図3(a)に示すように、エンドプレート16の軸方向一端側の端面とエンドプレート15の軸方向他端側の端面との間を圧縮し、基本長L0が圧縮されてΔLだけ縮むとき、ベローズ11の長さが(la+Δla)になり、ベローズ12の長さが(lb-Δlb)になったとすると、数4及び数5が成り立つ。
【数4】
【数5】
【0030】
数5において、右辺の(Sa×la+Sb×lb)は、数3からVであることがわかり、非圧縮性流体の体積Vはベローズ式ダンパ1の伸縮に係わらず一定であるので、右辺の(Sa×Δla-Sb×Δlb)はゼロであることがわかる。よって、数6及び数7が成り立つ。
【数6】
【数7】
【0031】
このことは、基本長L0が圧縮されてΔLだけ縮むとき、ベローズ12内の体積Sb×Δlb分の粘性流体がオリフィス14を通過し、ベローズ11内に流れ込むことを意味している。なお、
図3(c)に示す、エンドプレート16の軸方向一端側の端面とエンドプレート15の軸方向他端側の端面との間を伸長し、基本長L0が伸長されてΔLだけ伸びるときの動作も同様であるので詳しい説明は省略する。
【0032】
したがって、粘性流体がオリフィス14を通過するときの流動の抵抗が振動などの減衰能として作用することで、本実施例のベローズ式ダンパ1のダンパの機能が発揮される。
【0033】
なお、ベローズ11からベローズ12への粘性流体の流動は、圧縮に関わる力Fによりベローズ11内およびベローズ12内の粘性流体に圧力差ΔPを生じることによる。このΔPは数8に示すものである。
【数8】
【0034】
また、圧縮に関わる力Fは、圧力差ΔPの解消と共に、ベローズ式ダンパ1を構成するベローズ11及びベローズ12が有するばね定数と変位量との積による力とバランスする。すなわち、数9が成り立つ。
【数9】
【0035】
(ベローズ式ダンパ1の適用例)
図4は、
図1に示したベローズ式ダンパ1の適用例を説明する図であって、1軸直線運動ステージを示す断面図である。本適用例の1軸直線運動ステージ100は、ベースフレーム22に収容されたステージ21を有して構成される。ステージ21は、エアベアリング25で案内されベースフレーム22に沿って移動可能である。ステージ21の一端(
図4における右端)はボイスコイルモータ24に接しており、ステージ21は、ボイスコイルモータ24の駆動により、
図4の左右方向に移動する。
【0036】
ステージ21の他端(
図4における左端)は、二つのベローズ式ダンパ1のエンドプレート16に固定されている。また、二つのベローズ式ダンパ1のエンドプレート15は、ベースフレーム22に固定されている。
【0037】
ステージ21の他端側にはリニアエンコーダ23が設けられている。ステージ21の他端にはリニアエンコーダ23を構成するスケール231が配置され、ベースフレーム22のスケール231と対向する位置には、検出器232が配置されている。ステージ21の移動とともにスケール231が移動し、スケール231の移動距離を検出器232で検出する。この構成により、リニアエンコーダ23はステージ21の移動距離を検出する。例えば、リニアエンコーダ23による検出結果を、ボイスコイルモータ24の駆動制御にフィードバックすることで、ステージ21の位置制御を行うことができる。
【0038】
図4に示すように、ステージ21の他端には二つのベローズ式ダンパ1が固定して配置されており、二つのベローズ式ダンパ1のエンドプレート16とエンドプレート15との間で減衰能を発揮する。これにより、ボイスコイルモータ24の駆動によりステージ21を移動させたときの振動を吸収し、ステージ21の精密な位置制御が可能となる。
【0039】
また、本実施例のベローズ式ダンパ1は、エンドプレート16とエンドプレート15との間で減衰能を発揮することができることから、
図4に示すように、ベローズ式ダンパ1の軸方向をステージ21の移動方向に合わせてベローズ式ダンパ1を配置し、ベローズ式ダンパ1の両端をベースフレーム22とステージ21とに固定すればよく、振動減衰の対象部材との連結を簡単な構成で行うことができる。
【0040】
以上説明した本発明によれば、以下のような効果を奏する。
(1)ベローズ式ダンパ1のエンドプレート16とエンドプレート15との間の長さの変位に際して摺動摩擦が無いため、減衰能を付与する対象にヒステリシスを与えることが無い。
(2)ベローズ式ダンパ1に充填される粘性流体は密閉状態にあり、外気との抵触が無いため、粘性流体の変質や漏れを回避することができ、メンテナンス性に優れる。
(3)有効断面積が異なる二つのベローズ11、12を同軸に連結するという簡単な構成であるのでベローズ式ダンパ1をコンパクトに構成できる。
(4)ベローズ式ダンパ1の両端で減衰能を得ることができるので、減衰能を付与すべき振動対象部材との連結が極めて容易である。
(5)ヒステリシスの無い減衰能を必要とする機械装置への転用として、ベローズ11、12のばね定数やオリフィス14の径の選定によっては、精密機械装置の特性にチューニングされた様々な仕様の除振台として用いることも可能である。
【0041】
なお、上述の実施例のベローズ11、12は、部材として円環状薄板金属(薄板部材11a及び11b、薄板部材12a及び12b)の溶接ベローズとしたが、本発明で用いるベローズは、これに限られるものではなく、一体成形による金属や樹脂であってもよい。
【0042】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…ベローズ式ダンパ、11、12…ベローズ、13…中間プレート、14…オリフィス、15、16…エンドプレート、17…流体、18…プラグ。