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特許7128162付加硬化型シリコーン組成物及び光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン組成物及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220823BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220823BHJP
   C08G 77/52 20060101ALI20220823BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220823BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220823BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20220823BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08G77/52
H01L23/30 F
H01L33/56
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019157013
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021031655
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 将太
(72)【発明者】
【氏名】小林 之人
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114963(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194159(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08G 77/52
H01L 23/29
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO)(R SiO)(RSiO3/2CH SiO3/2(SiO4/2(O1/2SiR -R-SiR 1/2 (1)
(式中、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基を有しない置換または非置換の一価炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基であり、Rはアリーレン基、下記式(2)で表される基または下記式(3)で表される基である。a、b、c、d、e、f、g、hは、それぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0,f0,g≧0およびh>0を満たす数であり、但し、b+c+e>0、e+f+g>0であり、かつ、a+b+c+d+e+f+g+h=1を満たす数である。)
【化1】
(式中、破線は結合手を表す)
(B)下記平均組成式(4)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、
SiO(4-i-j)/2 (4)
(式中、Rは、それぞれ独立に、脂肪族不飽和基以外の置換又は非置換の、ケイ素原子結合一価炭化水素基であり、iおよびjは、0.7≦i≦2.1、0.001≦j≦1.0、かつ0.8≦i+j≦3.0を満たす数である。)
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
を含むものであることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項2】
前記Rがメチル基またはフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項3】
前記Rが前記式(2)で表される基または前記式(3)で表される基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項4】
c=0,d=0,e=0,g=0であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーン硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載のシリコーン硬化物で封止されたものであることを特徴とする光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物、その硬化物、及び該硬化物で封止された光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)を封止する封止材料として、優れた耐熱性を有する観点からシリコーン樹脂組成物が使用されている。特に、付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物は、加熱により短時間で硬化するため生産性がよく、LEDの封止材料として適している(特許文献1)。加えて、高い屈折率と強度を有するジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体又はポリメチルフェニルシロキサンを含む組成物(特許文献2)は、耐熱変色性に優れ、従来のシリコーン樹脂よりも高い耐硫化性を有し、硫化水素によるLEDの銀基板の腐食を抑制することが可能であるが、この耐硫化性は未だ不充分なものであった。また、ジフェニルシロキシ基を有するオルガノポリシロキサン組成物は機械強度に劣り、LED封止材にクラックが発生し、信頼性を損ねる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-292714号公報
【文献】特開2010-132795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐硫化性を有し、かつ引張強度が高く耐クラック性に優れた硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物、その硬化物、および該硬化物によって封止された信頼性の高い光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO)(R SiO)(RSiO3/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2SiR -R-SiR 1/2 (1)
(式中、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基を有しない置換または非置換の一価炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基であり、Rはアリーレン基、下記式(2)で表される基または下記式(3)で表される基である。a、b、c、d、e、f、g、hは、それぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0,f≧0,g≧0およびh>0を満たす数であり、但し、b+c+e>0、e+f+g>0であり、かつ、a+b+c+d+e+f+g+h=1を満たす数である。)
【化1】
(式中、破線は結合手を表す)
(B)下記平均組成式(4)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、
SiO(4-i-j)/2 (4)
(式中、Rは、それぞれ独立に、脂肪族不飽和基以外の置換又は非置換の、ケイ素原子結合一価炭化水素基であり、iおよびjは、0.7≦i≦2.1、0.001≦j≦1.0、かつ0.8≦i+j≦3.0を満たす数である。)
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
を含むものであることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【0006】
このような本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、耐硫化性を有し、かつ引張強度が高く耐クラック性に優れた硬化物を与えることができる。
【0007】
この場合、前記Rがメチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0008】
このような付加硬化型シリコーン組成物であれば、耐硫化性、引張強度がより優れた硬化物を与えることができる。
【0009】
また、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、前記Rが前記式(2)で表される基または前記式(3)で表される基であることが好ましい。
【0010】
このような付加硬化型シリコーン組成物であれば、耐硫化性、引張強度がより一層優れた硬化物を与えることができる。
【0011】
また、上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンは、c=0,d=0,e=0,g=0であることが好ましい。
【0012】
このような(A)成分は、本発明のシリコーン組成物の硬化物に引張強度、耐硫化性を与えることができる。
【0013】
また、本発明は、上記付加硬化型シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーン硬化物を提供する。
【0014】
このようなシリコーン硬化物は、耐硫化性を有し、かつ引張強度が高く耐クラック性に優れ、光学素子封止材料に使用することができる。
【0015】
また更に、本発明は、上記シリコーン硬化物で封止された光学素子を提供する。
【0016】
上記硬化物は、耐硫化性を有し、かつ引張強度が高く耐クラック性に優れており、これによって封止された光学素子は信頼性の高いものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化させて得られるレジン、エラストマー等の硬化物は、高透明、高耐硫化性、高引張強度の材料となり、光学素子封止材料に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、耐硫化性を有し、かつ引張強度が高く耐クラック性に優れた硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物、及びその硬化物によって封止された信頼性の高い光学素子の開発が求められていた。
【0019】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、後述する(A)、(B)、及び(C)成分を含む付加硬化型シリコーン組成物であれば、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
即ち、本発明は、(A)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO)(R SiO)(RSiO3/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2SiR -R-SiR 1/2 (1)
(式中、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基を有しない置換または非置換の一価炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基であり、Rはアリーレン基、下記式(2)で表される基または下記式(3)で表される基である。a、b、c、d、e、f、g、hは、それぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0,f≧0,g≧0およびh>0を満たす数であり、但し、b+c+e>0、e+f+g>0であり、かつ、a+b+c+d+e+f+g+h=1を満たす数である。)
【化2】
(式中、破線は結合手を表す)
(B)下記平均組成式(4)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、
SiO(4-i-j)/2 (4)
(式中、Rは、それぞれ独立に、脂肪族不飽和基以外の置換又は非置換の、ケイ素原子結合一価炭化水素基であり、iおよびjは、0.7≦i≦2.1、0.001≦j≦1.0、かつ0.8≦i+j≦3.0を満たす数である。)
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
を含むものであることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物である。
【0021】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
[付加硬化型シリコーン組成物]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、下記の(A)、(B)、及び(C)成分を含有するものである。また、必要に応じて、(A’)成分(アルケニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン)、反応抑制剤、接着性向上剤等の成分を更に含有することもできる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0023】
<(A)オルガノポリシロキサン>
(A)成分は下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO)(R SiO)(RSiO3/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2SiR -R-SiR 1/2 (1)
(式中、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基を有しない置換または非置換の一価炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基であり、Rはアリーレン基、下記式(2)で表される基または下記式(3)で表される基である。a、b、c、d、e、f、g、hは、それぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0,f≧0,g≧0およびh>0を満たす数であり、但し、b+c+e>0、e+f+g>0であり、かつ、a+b+c+d+e+f+g+h=1を満たす数である。)
【化3】
(式中、破線は結合手を表す)
【0024】
(A)成分は、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物に引張強度、耐硫化性を与えるために必要な成分であり、アルケニル基を含有し(即ち、b+c+e>0)、SiO3/2単位及びSiO4/2単位のいずれか又はその両方を含有する(即ち、e+f+g>0である)分岐状のオルガノポリシロキサン化合物である。なお、以下において、上記式(1)の単位構造(R SiO1/2)、(R SiO1/2)、(RSiO)、(R SiO)、(RSiO3/2)、(RSiO3/2)、(SiO4/2)、(O1/2SiR -R-SiR 1/2)を、それぞれa単位~h単位ともいう。
【0025】
(A)成分は、25℃において、蝋状もしくは固体であることが好ましい。ここで、「蝋状」とは、25℃において、10,000Pa・s以上、特に100,000Pa・s以上の、自己流動性を示さないガム状(生ゴム状)であることを意味する。なお、以下において特に断らない限り、粘度は25℃における回転粘度計による測定値である。
【0026】
また、(A)成分は、(O1/2SiR -R-SiR 1/2)部位(h単位)を含む(即ち、h>0)ことを要する。(A)成分がh単位を含まないと、付加硬化型シリコーン組成物の硬化物は高い引張強度を有するものとならない。
【0027】
で表されるアルケニル基を含まない置換または非置換の一価炭化水素基としては、アルケニル基を有しないものであれば特に限定されるものではないが、炭素数1~8の置換又は非置換の一価炭化水素が好ましい。この一価炭化水素としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、クロロシクロヘキシル基等のハロゲン化炭化水素基等が例示される。好ましくはアルキル基またはアリール基であり、特に好ましくはメチル基またはフェニル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0028】
で表されるアルケニル基としては、特に限定されるものではないが、ビニル基、アリル基等の炭素数2~10、特に2~6のアルケニル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0029】
は、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、クリセニレン基、ピレニレン基などのアリーレン基、下記構造式(2)で表される基または下記構造式(3)で表される基が挙げられ、好ましくは、フェニレン基、下記構造式(2)で表される基または下記構造式(3)で表される基である。Rがアリーレン基、下記構造式(2)又は(3)で表される基のいずれでもないと、耐硫化性を有し、かつ引張強度が高く耐クラック性に優れた硬化物を得られない。
【化4】
(式中、破線は結合手を表す)
【0030】
hは、h>0を満たす数であり、0.01<h<0.1の範囲であることが好ましく、0.02<h<0.05の範囲であることがより好ましい。上記範囲を満たすことで、高い引張強度および高い耐硫化性を有する硬化物が得られる。
【0031】
(A)成分としては、c=0,d=0,e=0,f>0,g=0のものが好ましく、具体例としては下記式で表されるオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0032】
(MeSiO1/20.16(ViMeSiO1/20.08(MeSiO3/20.74(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.02
(MeSiO1/20.14(ViMeSiO1/20.07(MeSiO3/20.74(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.05
(MeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.08(MeSiO3/20.74(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.03
(MeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.07(MeSiO3/20.75(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.03
(式中、Rは上記のとおりであり、Meはメチル基、Viはビニル基を表す。)
【0033】
(A)成分は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0034】
<(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン>
(B)成分は、下記平均組成式(4)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
SiO(4-i-j)/2 (4)
(式中、Rは、それぞれ独立に、脂肪族不飽和基以外の置換又は非置換の、ケイ素原子結合一価炭化水素基であり、iおよびjは、0.7≦i≦2.1、0.001≦j≦1.0、かつ0.8≦i+j≦3.0を満たす数であり、好ましくは1.0≦i≦2.0、0.01≦j≦1.0、かつ1.5≦i+j≦2.5を満たす数である。)
【0035】
(B)成分は、(A)成分及び後述の(A’)成分中に含まれるアルケニル基とヒドロシリル化反応により架橋する架橋剤として作用する。
【0036】
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、Si-H基)を1分子中に少なくとも2個有し、好ましくは2~200個、より好ましくは3~100個である。
【0037】
(B)成分の25℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは5~100mPa・sの範囲である。
【0038】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数は好ましくは2~300個、より好ましくは3~200個である。
【0039】
(B)成分の具体的例としては、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルフェニルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、片末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0040】
(B)成分の具体例としては、下記構造式で表されるもの等が挙げられる。
【化5】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【0041】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0042】
(B)成分の配合量は、(A)成分および存在する場合には(A’)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(Si-H基)の数が、好ましくは0.1~5.0個、より好ましくは0.5~3.0個、更に好ましくは1.0~3.0個となる量である。このような範囲であれば、シリコーン硬化物に高い引張強度と、耐硫化性を付与することができる。
【0043】
<(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒>
(C)成分の白金族金属を含むヒドロシリル化触媒は、(A)成分および存在する場合には(A’)成分中のアルケニル基と(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子との付加反応を促進するものであれば、特に限定されず、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンまたはアセチレン化合物との配位化合物等の白金化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等が挙げられるが、塩化白金酸をシリコーン変性したものが(A)、(A’)、および(B)成分との相溶性が良好であり、クロル不純物をほとんど含有しないため好ましい。
【0044】
(C)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0045】
(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよいが、(A)、(A’)及び(B)成分の合計量に対して、触媒金属元素に換算して質量基準で1~500ppmの範囲であることが好ましく、1~100ppmの範囲であることがより好ましい。このような範囲であれば、付加反応の反応速度が適切なものとなり、高い引張強度を有する硬化物を得ることができる。
【0046】
<その他の成分>
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、上記(A)~(C)成分以外にも、以下に例示するその他の成分を配合してもよい。
【0047】
(A’)成分(アルケニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン):
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、更に(A’)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサンを含んでいてもよい。
【0048】
(A’)成分は組成物の硬化後に応力緩和をもたらすための任意成分であり、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状の分子構造を有するオルガノポリシロキサンである。
【0049】
(A’)成分の粘度は、付加硬化型シリコーン組成物の取り扱い性、ならびに、硬化物の硬度および接着強度の点から、10~10,000mPa・sであることが好ましい。
【0050】
(A’)成分としては例えば、下記平均組成式(5)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンを用いる事ができる。
SiO(4-k-l)/2 (5)
(式中、Rは、それぞれ独立に、脂肪族不飽和結合を有しない非置換または置換の一価炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、アルケニル基であり、k、lは、1.9≦k≦2.1、0.005≦l≦1.0、かつ、1.95≦k+l≦3.0を満たす数である。)
【0051】
の脂肪族不飽和結合を有しない非置換または置換の一価炭化水素基としては、前記Rにおいて例示したものが挙げられ、メチル基が好ましい。
【0052】
のアルケニル基としては、前記Rにおいて例示したものが挙げられ、ビニル基が好ましい。Rは、分子鎖末端および分子鎖側鎖のいずれかに存在していても、これらの両方に存在してもよいが、分子鎖両末端にのみ存在することが好ましい。
【0053】
(A’)成分の具体例としては、下記構造式で表されるもの等が挙げられる。
【化6】

(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【0054】
(A’)成分を用いる場合の使用量は、(A)成分100質量部に対して1~100質量部が好ましい。
【0055】
反応抑制剤:
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、必要に応じて(C)成分の付加反応触媒に対して硬化抑制効果を持つ化合物とされている従来公知の反応抑制剤(反応制御剤)を使用することができる。この反応抑制剤としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;硫黄含有化合物;エチニルメチルデシルカルビノール等のアセチレン系化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が例示される。
【0056】
反応抑制剤による硬化抑制効果の度合いは、反応抑制剤の化学構造によって大きく異なるため、反応抑制剤の配合量は、使用する反応抑制剤ごとに最適な量に調整することが好ましい。通常は、(A)成分、(A’)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して0.001~5質量部が好ましい。
【0057】
接着性向上剤:
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、樹脂に対する接着性を高めるために、接着性向上剤を添加してもよい。接着性向上剤としては、付加反応硬化型である本発明の組成物に自己接着性を付与する観点から、接着性を付与する官能基を含有するシラン、シロキサン等の有機ケイ素化合物、非シリコーン系有機化合物等が用いられる。
【0058】
接着性を付与する官能基の具体例としては、ケイ素原子に結合したビニル基、アリル基等のアルケニル基、水素原子;炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基(例えば、γ-グリシドキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等)や、アクリロキシ基(例えば、γ-アクリロキシプロピル基等)もしくはメタクリロキシ基(例えば、γ-メタクリロキシプロピル基等);アルコキシシリル基(例えば、エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造を1~2個含有してもよいアルキレン基を介してケイ素原子に結合したトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基等)等が挙げられる。
【0059】
接着性を付与する官能基を含有する有機ケイ素化合物は、シランカップリング剤、アルコキシシリル基と有機官能性基を有するシロキサン、反応性有機基を有する有機化合物にアルコキシシリル基を導入した化合物等が例示される。
【0060】
非シリコーン系有機化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート等の有機酸アリルエステル、エポキシ基開環触媒、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等が挙げられる。
【0061】
微粉末シリカ:
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、補強性を向上させるために微粉末シリカを配合してもよい。この微粉末シリカは、比表面積(BET法)が50m/g以上であること好ましく、より好ましくは50~400m/g、特に好ましくは100~300m/gである。
【0062】
微粉末シリカとしては、例えば、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられる。微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、組成物に良好な流動性を付与するため、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のメチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザン等の有機ケイ素化合物で処理したものを使用することが好ましい。補強性シリカは一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0063】
無機充填剤:
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、その他の無機充填剤を配合してもよい。その他の無機充填剤としては、例えば、結晶性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン等の無機充填剤、及びこれらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤等;シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。
【0064】
[硬化物]
さらに、本発明は、付加硬化型シリコーン組成物の硬化物(シリコーン硬化物)を提供する。
本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物は、特に、光透過率が高いことから、光学用途の半導体素子のコーティング材、光学素子封止材、電気・電子用の保護コーティング材などとしても使用することができる。
【0065】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化は、公知の条件で行えばよく、一例としては100~180℃において10分~5時間の条件で硬化させることが出来る。
【0066】
[光学素子]
さらに、本発明は、上記シリコーン硬化物で封止されたものである光学素子を提供する。
上記シリコーン硬化物は、耐硫化性を有し、かつ引張強度が高く耐クラック性に優れるうえ、特に、光透過率が高いことから、これで封止された光学素子は信頼性が高く、利用価値が高い。
【実施例
【0067】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。なお、分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)における標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、下記例において、Meはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表す。
【0068】
[合成例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに[SiO1/2(OMe)(Me)][SiO2/2(OMe)(Me)]で表されるオルガノポリシロキサンを76.3g、ヘキサメチルジシロキサン13.1g、テトラメチルジビニルジシロキサン7.4g、下記式(6)で表される化合物6.6gを入れ、攪拌しながらメタノール8.0gを滴下し1時間混合した。次いで、攪拌しながらメタンスルホン酸1.0gを滴下した後、水14.1gを滴下し、23℃で1時間混合した。キシレン76gを加えたのち70℃で5時間反応を行った。さらにキシレン101g、水酸化カリウム0.15gを加え、120℃で5時間混合することで反応を行った。冷却後メタンスルホン酸0.3gを加えることで中和を行った。水洗を行い、170℃・10mmHg以下で1時間減圧濃縮を行うことで、平均構造式(MeSiO1/20.16(ViMeSiO1/20.08(MeSiO3/20.74(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.02で表される(Rはフェニレン基である。)、分子量29,000のオルガノポリシロキサン(A-1)を得た。
【化7】
【0069】
[合成例2]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに[SiO1/2(OMe)(Me)][SiO2/2(OMe)(Me)]で表されるオルガノポリシロキサンを229g、ヘキサメチルジシロキサン38.1g、テトラメチルジビニルジシロキサン23.3g、下記式(7)で表される化合物32.7gを入れ、攪拌しながらメタノール24gを滴下し1時間混合した。次いで、撹拌しながらメタンスルホン酸3.0gを滴下した後、水42.3gを滴下し、23℃で1時間混合した。キシレン241gを加えたのち70℃で5時間反応を行った。さらにキシレン321g、水酸化カリウム0.48gを加え、120℃で5時間混合することで反応を行った。冷却後メタンスルホン酸0.87gを加えることで中和を行った。水洗を行い、170℃・10mmHg以下で1時間減圧濃縮を行うことで、平均構造式(MeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.08(MeSiO3/20.74(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.03で表される(Rは下記式(3)で表される基である。)、分子量17,000のオルガノポリシロキサン(A-3)を得た。
【化8】
(式中、破線は結合手を表す。)
【0070】
[合成例3]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに[SiO1/2(OMe)(Me)][SiO2/2(OMe)(Me)]で表されるオルガノポリシロキサンを76.3g、ヘキサメチルジシロキサン12.6g、テトラメチルジビニルジシロキサン7.9g、下記式(8)で表される化合物12.4gを入れ、攪拌しながらメタノール9.0gを滴下し1時間混合した。次いで、撹拌しながらメタンスルホン酸1.0gを滴下した後、水14.4gを滴下し、23℃で1時間混合した。キシレン82.6gを加えたのち70℃で5時間反応を行った。さらにキシレン109g、水酸化カリウム0.16gを加え、120℃で5時間混合することで反応を行った。冷却後メタンスルホン酸0.3gを加えることで中和を行った。水洗を行い、170℃・10mmHg以下で1時間減圧濃縮を行うことで、平均構造式(MeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.07(MeSiO3/20.75(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.03で表される(Rは下記式(2)で表される基である。)、分子量36,000のオルガノポリシロキサン(A-4)を得た。
【化9】
(式中、破線は結合手を表す。)
【0071】
[比較合成例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに[SiO1/2(OMe)(Me)][SiO2/2(OMe)(Me)]で表されるオルガノポリシロキサンを229g、ヘキサメチルジシロキサン38.1g、テトラメチルジビニルジシロキサン23.3g、下記式(9)で表される化合物31.9gを入れ、攪拌しながらメタノール9.0gを滴下し1時間混合した。次いで、撹拌しながらメタンスルホン酸1.0gを滴下した後、水14.4gを滴下し、23℃で1時間混合した。キシレン82.6gを加えたのち70℃で5時間反応を行った。さらにキシレン109g、水酸化カリウム0.16gを加え、120℃で5時間混合することで反応を行った。冷却後メタンスルホン酸0.3gを加えることで中和を行った。水洗を行い、170℃・10mmHg以下で1時間減圧濃縮を行うことで、平均構造式(MeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.08(MeSiO3/20.74(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.03で表される(Rは下記式(10)で表される基である。)、分子量10,000のオルガノポリシロキサン(A-5)を得た。
【化10】
(式中、破線は結合手を表す。)
【0072】
[実施例1~4、比較例1~3]
表1に示す配合量で下記の各成分を混合し、付加硬化型シリコーン組成物を調製した。
なお、表1における各成分の数値は質量部を表す。[Si-H]/[Si-Vi]値は、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)の数の比(モル比)を表す。
【0073】
(A)以下のオルガノポリシロキサン
(A-1)合成例1で得られたオルガノポリシロキサン
(A-2)(MeSiO1/20.14(ViMeSiO1/20.07(MeSiO3/20.74(O1/2SiMe-R-SiMe1/20.05 で表されるオルガノポリシロキサンであって、Rがフェニレン基であるもの
(A-3)合成例2で得られたオルガノポリシロキサン
(A-4)合成例3で得られたオルガノポリシロキサン
(A-5)比較合成例1で得られたオルガノポリシロキサン
(A-6)(MeSiO1/20.16(ViMeSiO1/20.07(PhSiO)0.02(MeSiO3/20.75で表されるオルガノポリシロキサン
(A-7)(MeSiO1/20.21(ViMeSiO1/20.10(MeSiO3/20.69で表されるオルガノポリシロキサン
【0074】
(B)下記構造式(11)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化11】
【0075】
(C)六塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの反応生成物を、白金含有量1.0質量%となるように粘度600mPa・sのポリジメチルシロキサンで稀釈した白金触媒を、更に粘度60mPa・sのポリジメチルシロキサンで4重量%に稀釈したもの。
【0076】
(D)エチニルメチルデシルカルビノール
(E)トリアリルイソシアヌレート
(F)下記構造式(12)で表される接着性付与成分
【化12】
【0077】
実施例1~4、比較例1~3で得られた付加硬化型シリコーン樹脂組成物について、下記の評価を行い、結果を表2に示した。
【0078】
(屈折率)
ATAGO製デジタル屈折計RX-5000を用いて、波長589nmの光の屈折率を25℃で測定した。
【0079】
(硬さ)
組成物を2mm厚になるよう型に流し込み、150℃×2時間の条件で硬化させた硬化物のTypeD硬度をJIS K6253-3:2012に準拠して測定した。
【0080】
(引張強度)
組成物を2mm厚になるよう型に流し込み、150℃×2時間の条件で硬化させた硬化物の引張強度をJIS K6251:2017に準拠して測定した。
【0081】
(水蒸気透過率)
組成物を外径100mmΦ、1mm厚になるように型に流し込み、150℃×2時間の条件で硬化させた。その硬化物をLYSSY社製L80-5000型水蒸気透過度計を用いて、水蒸気透過率を測定した。数値が低いほど、ガスバリア性に優れ、耐硫化性の高い材料となる。
【0082】
(光半導体パッケージ(PKG)の作製)
LED用パッケージ基板として、光半導体素子を載置する凹部を有し、その底部に銀メッキされた第1のリードと第2のリードが設けられたLED用パッケージ基板[SMD5050(I-CHIUN PRECISION INDUSTRY CO.社製)]、光半導体素子として、EV-B35A(SemiLEDs社製)を、それぞれ用意した。
【0083】
ダイボンダー(ASM社製AD-830)を用いて、パッケージ基板の銀メッキされた第1のリードに、信越化学工業社製のダイボンド材KER-3000-M2をスタンピングにより定量転写し、その上に光半導体素子を搭載した。次にパッケージ基板をオーブンに入れ、ダイボンド材を加熱硬化させ(150℃、2時間)、光半導体素子の下部電極と第1のリードを電気的に接続した。次いでワイヤーボンダーを用いて、該光半導体素子が搭載された該LED用パッケージ基板を光半導体素子の上部電極と第2のリードに対して金ワイヤー(田中電子工業社製 FA 25μm)を用いて電気的に接続し、光半導体素子が搭載されたLED用パッケージ基板各1枚を得た。
【0084】
(硫化試験)
組成物を所定のPKGに封入し、150℃×2時間の条件で硬化させた。次に100g瓶に硫黄粉末0.1gを入れ、樹脂を封入したPKGを入れたのちに密閉した。70℃×48時間後にPKGを取り出し、銀基板の色を目視観察することにより、耐硫化性を評価した。PKGの銀基板が黒く変色していれば×、変色していなければ○とし、○であれば耐硫化性が優れていることとなる。
【0085】
(耐クラック試験)
組成物を所定のPKGに封入し、100℃×1時間の後、150℃×2時間の条件で硬化させた。その後、各PKGを-40℃で15分、100℃で15分を1サイクルとする熱衝撃試験機に入れ、100サイクル後の各PKGの硬化物のクラック状態を確認した。目視観察で硬化物にクラックが認められれば×とし、認められなければ〇とした。○であれば耐クラック性が優れていることとなる。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表2に示されるように、実施例1~4のシリコーン硬化物は高い引張強度、高耐クラック性を有し、かつ耐硫化性に優れるものであった。
一方、比較例1は、(A)成分のオルガノポリシロキサンが本発明のRと異なる上記式(10)で表される基を有するものであるため、硫化試験において銀基板の変色がなく耐硫化性には優れるものの、耐クラック性が低いため信頼性に劣る。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンが本発明のh単位(O1/2SiR -R-SiR 1/2)を有さない(即ち、h=0である)比較例2では、水蒸気透過率は低いものの、耐クラック性が低く、これに伴い耐硫化性に劣るものであることが確かめられた。さらに、(A)成分がa,b,f単位のみで構成されるオルガノポリシロキサンである比較例3は耐クラック性が高いものの、耐硫化性に劣ることが確認された。
以上のことから、本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、高い引張強度、高耐クラック性に加え、高い耐硫化性を有する、LED用途に好適なものであることが実証された。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。