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特許7128194アルコキシル化ポリアルキレンイミンを作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】アルコキシル化ポリアルキレンイミンを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/26 20060101AFI20220823BHJP
   C08G 73/04 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08G65/26
C08G73/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019543386
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018052609
(87)【国際公開番号】W WO2018146005
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】17155821.6
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フーファー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ホルカム,トーマス ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】ミルチン,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ディートシェ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ヤン ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア マルコス,アレハンドラ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-535183(JP,A)
【文献】特開2014-162995(JP,A)
【文献】特表2012-530163(JP,A)
【文献】特開昭62-131020(JP,A)
【文献】特開平06-322253(JP,A)
【文献】特開2003-020585(JP,A)
【文献】特開2003-342361(JP,A)
【文献】特表2002-518584(JP,A)
【文献】特表2016-515148(JP,A)
【文献】特表2017-532407(JP,A)
【文献】特表平10-500717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/04
C08G 65/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシル化ポリアルキレンイミンを製造する方法であって、
(a)ポリアルキレンイミン(A)を用意するステップ、
(b)前記ポリアルキレンイミン(A)を、N-H官能基当たり0.5~1.3モルのプロピレンオキシド又はブチレンオキシドと100~150℃の範囲の温度で反応させるステップ、及び
(c)ステップ(b)の生成物を、エチレンオキシドと反応させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(c)が有機溶媒中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)が、ナトリウム及びカリウムのC1~C10-アルカノレートから選択される触媒を用いて実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリアルキレンイミン(A)がポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒がC1~C10-アルカノールから選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)が70~200℃で実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が触媒を用いずに実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)が、ポリアルキレンイミン(A)に対して0.1~4.0重量%の水の存在下で実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
得られるアルコキシル化ポリアルキレンイミンが、0.1~2.5重量%の範囲のポリエチレングリコールを含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)において、ステップ(b)の生成物を、ポリアルキレンイミン骨格のN-H官能基当たり3~50モルのエチレンオキシドと反応させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシル化ポリアルキレンイミンを製造する方法であって、
(a)ポリアルキレンイミン(A)を用意するステップ、
(b)前記ポリアルキレンイミン(A)を、N-H官能基当たり0.5~1.3モルのプロピレンオキシド又はブチレンオキシドと100~150℃の範囲の温度で反応させるステップ、及び
(c)ステップ(b)の生成物を、ステップ(b)で使用したアルキレンオキシドとは異なるC2~C4-アルキレンオキシドと反応させるステップ
を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシル化ポリアルキレンイミンには多くの用途があり、その例としては、限定するものではないが、顔料を分散させる他に、解乳化剤及び消泡剤としての用途が挙げられる。顔料分散剤としての特性は、金属表面洗浄を含む硬質表面洗浄、自動食器洗い等の用途の他に、繊維洗浄、及び油田における用途、例えば油の解乳化(例えば、US 4,935,162及びUS 5,445,765を参照)等で利用することができる。
【0003】
アルコキシル化ポリアルキレンイミンは、通常は、ポリアルキレンイミン、例えばポリプロピレンイミン、又は特にポリエチレンイミンをアルコキシル化、例えば、エトキシル化又はプロポキシル化することによって合成される。
【0004】
一部の用途では、無色のアルコキシル化ポリアルキレンイミンが望ましいが、これは、多くの最終消費者が濃色の生成物を汚れによるものと考えるためである。しかしながら、多くの工程は、特に高温で実施する場合には、茶色がかった生成物を生じ、また特に、高分子量生成物は、濃色の外観を有する。
【0005】
まずポリアルキレンイミンを、NH-官能基当たり約1当量のアルキレンオキシドと反応させ(いわゆる初期アルコキシル化)、その後さらなるアルキレンオキシドを用いて変換することが発見されているが(例えば、特許文献1及び2)、得られる生成物の色は、やはりかなり濃い。さらに、多くのエトキシル化生成物は、かなりの量のポリアルキレングリコール、例えば、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールを含有するが、これは、多くの用途において望ましくない場合がある。アルコキシル化ポリアルキレンイミンからポリエチレングリコールを除去するのは、面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第3118241号明細書
【文献】国際公開第2016/135000号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記の不都合を回避して、アルコキシル化ポリアルキレンイミンを製造する方法を提供することであった。さらに、純度及び色数等の特性が改善されたアルコキシル化ポリアルキレンイミンを提供することも目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それに応じて、冒頭に記載の方法が規定された。
【0009】
本発明において、冒頭に規定した方法は、「本発明の方法」又は「本発明による方法」とも称される。本発明の方法は、
(a)ポリアルキレンイミン(A)を用意するステップ、
(b)前記ポリアルキレンイミン(A)を、N-H官能基当たり0.5~1.3モルのプロピレンオキシド又はブチレンオキシドと100~160℃の範囲の温度で反応させるステップ、及び
(c)ステップ(b)の生成物を、ステップ(b)で使用したアルキレンオキシドとは異なるC2~C4-アルキレンオキシドと反応させるステップ
を含み、以下において、場合によってこれらのステップは、ステップ(a)、ステップ(b)、又はステップ(c)とも称される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ステップ(a)、ステップ(b)、及びステップ(c)について、以下においてより詳しく記載する。
【0011】
ステップ(a)は、ポリアルキレンイミン(A)を用意するステップである。ポリアルケンイミンは、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、並びに高級ジアミンのポリマー、例えば、1,4-ブタンジアミン及び1,6-ヘキサンジアミン等のα,ω-ジアミンから選択される。本発明において、ポリアルキレンイミンは、好ましくは、分子1個当たり少なくとも平均5個の窒素原子を有する。上記のようなポリエチレンイミンは、以下、ポリエチレンイミン(A)と称されることもあり、また、上記のようなポリプロピレンイミンは、以下、ポリプロピレンイミン(A)と称されることもある。
【0012】
本発明の一実施形態では、ポリアルキレンイミン(A)は、少なくとも3.5、好ましくは3.5~10の範囲、より好ましくは4~9の範囲、さらに好ましくは4.0~5.5の多分散度Q=Mw/Mnを示す。本発明の他の実施形態では、ポリアルキレンイミン(A)は、最大3.4、例えば1.1~3.0の範囲、より好ましくは1.3~2.5の範囲、さらに好ましくは1.5~2.0の多分散度Q=Mw/Mnを示す。
【0013】
ポリアルキレンイミン(A)の平均分子量Mwは、550~100,000g/molの範囲、好ましくは最大50,000g/mol、より好ましくは800~最大25,000g/molである。ポリアルキレンイミン(A)の平均分子量Mwは、溶離液として1.5重量%のギ酸水溶液、固定相として架橋ポリヒドロキシエチルメタクリレートを用い、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0014】
本発明において、「ポリエチレンイミン(A)」という用語は、ポリエチレンイミンホモポリマーのみを指すのではなく、NH-CH2-CH2-NH構造要素を他のアルキレンジアミン構造要素、例えばNH-CH2-CH2-CH2-NH構造要素、NH-CH2-CH(CH3)-NH構造要素、NH-(CH2)4-NH構造要素、NH-(CH2)6-NH構造要素、又は(NH-(CH2)8-NH構造要素と一緒に含有するが、NH-CH2-CH2-NH構造要素がモル分率につき過半数を占めるポリアルキレンイミンも指す。好適なポリエチレンイミンは、モル分率につき過半数を占めるNH-CH2-CH2-NH構造要素を含有するが、これは、全アルキレンイミン構造要素に対して、例えば60mol%以上に相当し、より好ましくは少なくとも70mol%に相当する。特定の実施形態では、ポリエチレンイミンという用語は、NH-CH2-CH2-NHとは異なるアルキレンイミン構造要素を分子1個当たり1個のみ有するか、又は全く有さないポリアルキレンイミンを指す。
【0015】
本発明において、「ポリプロピレンイミン(A)」という用語は、ポリプロピレンイミンホモポリマーのみを指すのではなく、NH-CH2-CH(CH3)-NH構造要素を他のアルキレンジアミン構造要素、例えばNH-CH2-CH2-CH2-NH構造要素、NH-CH2-CH2-NH構造要素、NH-(CH2)4-NH構造要素、NH-(CH2)6-NH構造要素、又は(NH-(CH2)8-NH構造要素と一緒に含有するが、NH-CH2-CH(CH3)-NH構造要素がモル分率につき過半数を占めるポリアルキレンイミンも指す。好適なポリプロピレンイミンは、モル分率につき過半数を占めるNH-CH2-CH(CH3)-NH構造要素を含有するが、これは、全アルキレンイミン構造要素に対して、例えば60mol%以上に相当し、より好ましくは少なくとも70mol%に相当する。特定の実施形態では、ポリプロピレンイミンという用語は、NH-CH2-CH(CH3)-NHとは異なるアルキレンイミン構造要素をポリプロピレンイミン分子1個当たり1個のみ有するか、又は全く有さないポリアルキレンイミンを指す。
【0016】
分岐は、アルキレンアミノ基、限定するものではないが、例えば、-CH2-CH2-NH2基又は(CH2)3-NH2-基であってもよい。より長い分岐としては、例えば、-(CH2)3-N(CH2CH2CH2NH2)2基又は-(CH2)2-N(CH2CH2NH2)2基であってもよい。高分岐ポリエチレンイミンは、例えば、分岐度が0.25~0.95の範囲、好ましくは0.30~0.80の範囲、特に好ましくは少なくとも0.5のポリエチレンイミンデンドリマー又は関連分子である。分岐度は、例えば、13C-NMR又は15N-NMR分光法によって、好ましくはD2O中で測定することができ、次のように定義される。
DB=D+T/D+T+L
式中、D(樹状)は、第3級アミノ基部分に相当し、L(直鎖)は、第2級アミノ基部分に相当し、T(末端)は、第1級アミノ基部分に相当する。
【0017】
本発明において、分岐ポリエチレンイミン(A)は、DBが0.25~0.95の範囲、特に好ましくは0.30~0.90%の範囲、とりわけ好ましくは少なくとも0.5のポリエチレンイミン(A)である。
【0018】
本発明において、CH3基は、分岐とみなされない。
【0019】
好適なポリエチレンイミン(A)は、分岐をほとんど又は全く示さないものであり、したがって、主に直鎖状又は直鎖状のポリエチレンイミン骨格である。別の実施形態では、好適なポリエチレンイミン(A)は、分岐ポリエチレンイミン(A)である。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、ポリエチレンイミン(A)は、第1級アミン価が1~1000mg KOH/gの範囲、好ましくは10~500mg KOH/g、最も好ましくは50~300mg KOH/gである。第1級アミン価は、ASTM D2074-07に従って測定することができる。
【0021】
本発明の一実施形態では、ポリエチレンイミン(A)は、第2級アミン価が10~1000mg KOH/gの範囲、好ましくは50~500mg KOH/g、最も好ましくは50~500mg KOH/gである。第2級アミン価は、ASTM D2074-07に従って測定することができる。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、ポリエチレンイミン(A)は、第3級アミン価が1~300mg KOH/gの範囲、好ましくは5~200mg KOH/gの範囲、最も好ましくは10~100mg KOH/gである。第3級アミン価は、ASTM D2074-07に従って測定することができる。
【0023】
第3級N原子のモル分率は、15N-NMR分光法によって測定することができる。第3級アミン価と13C-NMR分光法による結果が一致しない場合、13C-NMR分光法により得られた結果が優先される。
【0024】
ステップ(a)において、ポリアルキレンイミン(A)は、バルク又は溶液として用意することができるが、バルクが好適である。ステップ(b)を実施するために、本発明の好適な実施形態では、ステップ(a)で用意されるポリアルキレンイミン(A)の含水量は、ポリアルキレンイミン(A)に対して水5~25重量%の範囲である。
【0025】
本発明の方法のステップ(b)では、前記ポリアルキレンイミン(A)を、N-H官能基当たり0.5~1.3モルのプロピレンオキシド又はブチレンオキシド(プロピレンオキシドが好適である)と100~160℃の範囲の温度で反応させる。
【0026】
ステップ(b)の一実施形態では、ポリアルキレンイミン、特に好ましくはポリエチレンイミン(A)を、使用するC3~C4-アルキレンオキシドの総量のうち、NH部分1モル当たり0.7~1モル、好ましくは0.7~0.95モルに相当するプロピレンオキシド又はブチレンオキシドの一部と反応させる。
【0027】
好ましくは、ステップ(b)は、触媒の不在下で実施される。
【0028】
本発明の一実施形態では、ステップ(b)は、90~150℃、好ましくは125~145℃の反応温度で実施される。
【0029】
本発明の一実施形態では、ステップ(b)は、最大15バール、好ましくは最大10バール、例えば1~8バールの圧力で実施することができる。ステップ(b)を実施するのに好適な容器は、オートクレーブ及び管型反応器である。
【0030】
ステップ(c)では、ステップ(b)の生成物を、ステップ(b)で使用したアルキレンオキシドとは異なるC2~C4-アルキレンオキシドと反応させる。例えば、ステップ(b)でプロピレンオキシドを使用する実施形態では、ステップ(c)において、エチレンオキシドもしくはブチレンオキシド、又はそれらの混合物、特にエチレンオキシドを使用する。別の例として、ステップ(b)でブチレンオキシドを使用する実施形態では、ステップ(c)において、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド、又はそれらの混合物、特にエチレンオキシドを使用する。
【0031】
ステップ(c)は、典型的には、触媒、例えば、塩基又は二重金属シアン化物の存在下で実施される。
【0032】
本発明の一実施形態では、本発明の方法のステップ(c)は、塩基の存在下で実施される。適切な塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウム又はカリウムのアルコキシド、例えばカリウムメチレート(KOCH3)、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド、及びナトリウムメチレート(NaOCH3)であり、好ましくは、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから選択される。触媒のさらなる例は、アルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物、例えば、水素化ナトリウム及び水素化カルシウム、並びにアルカリ金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムである。好ましいのは、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムが好ましい)及びアルカリ金属アルコキシド(t-ブタノール中のカリウムt-ブトキシド、n-ヘキサノール中のナトリウムn-ヘキサノレート、及びn-ノナノール中のナトリウムメタノレートが特に好ましい)である。塩基の典型的な使用量は、ポリエチレンイミン(A)とC2~C4-アルキレンオキシドとの総量に対して0.05~10重量%、特に0.5~2重量%である。
【0033】
本発明の一実施形態では、本発明の方法のステップ(c)は、二重金属シアン化物の存在下で実施される。二重金属シアン化物(以下、二重金属シアン化合物又はDMC化合物とも称する)は、通常、少なくとも2種の異なる金属を含み、そのうち少なくとも1種は遷移金属から選択され、他の1種は、遷移金属及びアルカリ土類金属、並びにシアン化物対イオンから選択される。アルコキシル化に特に適した触媒は、亜鉛、コバルト、もしくは鉄、又はそのうち2つを含有する二重金属シアン化合物である。例えば、ベルリン青は、特に適している。
【0034】
結晶性DMC化合物の使用が好ましい。好適な実施形態では、酢酸亜鉛をさらなる金属塩成分として含むZn-Co型の結晶性DMC化合物が触媒として使用される。そのような化合物は、単斜晶系構造で結晶化し、板状の晶癖を有する。
【0035】
本発明の一実施形態では、本発明の合成は、ヘキサシアノコバルテートから選択される少なくとも1種の二重金属シアン化物の存在下で実施される。
【0036】
本発明の一実施形態では、本発明の合成は、一般式(I)による化合物から選択される少なくとも1種の二重金属シアン化物の存在下で実施される。
M1 a[M2(CN)b(A)c]d・fM1 gXm・h(H2O)・eL・kP (I)
式中、
M1は、Zn2+、Fe2+、Fe3+、Co3+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Sn2+、Pb2+、Mo4+、Mo6+、Al3+、V4+、V5+、Sr2+、W4+、W6+、Cr2+、Cr3+、Cd2+、Hg2+、Pd2+、Pt2+、V2+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、La3+、Ce3+、Ce4+、Eu3+、Ti3+、Ti4+、Ag+、Rh2+、Rh3+、Ru2+、Ru3+からなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンであり、
M2は、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Mn2+、Mn3+、V4+、V5+、Cr2+、Cr3+、Rh3+、Ru2+、Ir3+からなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンであり、
ここで、M1及びM2は同一ではなく、
A及びXは、互いに独立して、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸、炭酸、シアン化物、チオシアン酸、イソシアン酸、シアン酸、カルボン酸、シュウ酸、硝酸、ニトロシル、硫酸水素、リン酸、リン酸二水素、リン酸水素、又は炭酸水素からなる群から選択されるアニオンであり、
Lは、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、ポリエーテル、エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素、アミド、第1級、第2級及び第3級アミン、ピリジン窒素を有する配位子、ニトリル、硫化物、リン化物、亜リン酸、ホスファン、ホスホン酸、並びにリン酸からなる群から選択される配位子であり、
kは、ゼロ以上6以下である。変数kは、整数であっても分数であってもよい。
Pは、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアルキレングリコールソルビタンエステル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、ポリアクリル酸、ポリ(アクリルアミド-co-マレイン酸)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリ(N-ビニルピロリドン-co-アクリル酸)、ポリビニルメチルケトン、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリ(アクリル酸-co-スチレン)、オキサゾリンポリマー、マレイン酸とマレイン酸無水物とのコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアセテート、イオン性表面活性及び界面活性化合物、胆汁酸又はその塩、エステル又はアミド、多価アルコール及びグリコシドのカルボン酸エステルから選択される有機添加剤である。
a、b、c、d、g、及びnは、化合物(I)の電気的中性が確保されるように選択され、このときf及びcは、それぞれ0であってもよく、
eは、配位子分子の数、例えば、ゼロを超える分数もしくは整数、又はゼロであり、
f及びhは、互いに独立して、ゼロを超える分数もしくは整数、又はゼロである。
【0037】
一実施形態では、e、f、及びhの上限値は、それぞれ6である。
【0038】
二重金属シアン化合物は、粉末、ペースト、もしくは懸濁液として使用しても、成形して成形物を得ても、成形物や発泡体等に組み込んでも、成型物や発泡体等に塗布してもよい。
【0039】
好ましくは、ステップ(c)で使用するDMC化合物の濃度は、ステップ(b)で得た生成物に対して、5~2000ppm(すなわち、生成物1kg当たりの触媒のmg数)、好ましくは1000ppm未満、特に500ppm未満、特に好ましくは100ppm未満、例えば50ppm未満又は35ppm未満、特に好ましくは25ppm未満である。このとき、ppmは、ステップ(b)で得た化合物中の質量ppm(百万分率)を指す。
【0040】
ステップ(c)は、実施形態(i)としてバルクで、又は実施形態(ii)として有機溶媒中で実施することができる。実施形態(i)では、ステップ(b)で得た生成物から水を除去してもよい。そのような水の除去は、0.01~0.5バールの範囲の減圧下で80~150℃の範囲の温度まで加熱し、水を留去することによって行うことができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、ステップ(c)は、70~200℃の範囲、好ましくは100~180℃の反応温度で実施される。
【0042】
本発明の一実施形態では、ステップ(c)は、最大10バール、特に最大8バール、例えば1~8バールの圧力で実施される。
【0043】
本発明の一実施形態では、ステップ(c)の反応時間は、一般に、0.5~12時間の範囲である。
【0044】
ステップ(c)の実施形態(ii)に適した有機溶媒の例は、非極性及び極性非プロトン性有機溶媒である。特に適した非極性非プロトン性溶媒の例には、脂肪族及び芳香族炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、及びキシレンがある。特に適した極性非プロトン性溶媒の例は、エーテル、特に環状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサン、さらにN,N-ジアルキルアミド、例えば、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド、並びにN-アルキルラクタム、例えば、N-メチルピロリドンである。また、上記の有機溶媒のうち少なくとも2種の混合物を使用することもできる。好適な有機溶媒は、キシレン及びトルエンである。
【0045】
実施形態(ii)では、最初のステップで得た溶液を、触媒及び溶媒を添加する前又は後に、脱水してからアルキレンオキシドに接触させるが、この脱水は、好ましくは窒素気流下、120~180℃の範囲の温度で水を除去することによって有利には行われる。その後のアルキレンオキシドとの反応は、実施形態(i)の場合と同様に達成することができる。実施形態(i)では、本発明によるアルコキシル化ポリアルキレンイミンは、直接バルクで得られるが、これは、所望であれば、水に溶解させてもよい。実施形態(ii)では、後処理のために、有機溶媒を典型的には水で置き換える。本発明によるアルコキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、代替方法として、バルクで単離することもできる。
【0046】
「任意」の後処理ステップには、ステップ(c)で使用した触媒の失活を含めてもよい。
【0047】
本発明の方法は、漂白ステップ又は不純物の還元除去を必要としない。
【0048】
本発明の方法によって、純度及び色数等の特性が改善されたアルコキシル化ポリアルキレンイミンが得られる。具体的には、本発明の方法によれば、形成されるポリエチレングリコールはより少量である。
【0049】
本発明の別の態様は、以下において本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)とも称されるエトキシル化ポリアルキレンイミンに関する。本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、0.1~2.5重量%の範囲のポリアルキレングリコールを含有する。そのようなポリアルキレングリコールの大部分は、ポリエチレングリコールである。したがって、ポリエチレングリコール以外のポリアルキレングリコールは、本発明において通常は無視され、そのようなポリアルキレングリコールもポリエチレングリコールと称される。そのような純粋なエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、さまざまな用途で特に有用である。ポリエチレングリコールの含有量は、例えば、指示薬としてドラーゲンドルフ試薬を用い、高性能薄層クロマトグラフィーによって測定することができる。特定の実施形態では、本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、0.1~2.5重量%の範囲のポリエチレングリコールを含有し、ポリエチレングリコール以外には、測定可能な量のポリアルキレングリコールを含有しない。
【0050】
本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、ポリアルキレンイミン骨格のN-H官能基当たり0.5~1.3モルのプロピレンオキシド又はブチレンオキシドを有する。好ましくは、本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、さらに、ポリアルキレンイミン骨格のN-H官能基当たり3~50のエチレンオキシド単位を有し、好ましくは5~30単位である
【0051】
本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、好ましくは、本発明の方法に従って作製される。
【0052】
本発明の好適な実施形態では、本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、DIN ISO 6271、ASTM D 1209に従って測定したハーゼン色数が10~350の範囲である。ハーゼン色数は、好ましくは、分光光度法によって10重量%の水溶液で測定することができる。
【0053】
本発明の好適な実施形態では、本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、DIN 6162:2014-09に従って10重量%の水溶液で測定したヨウ素価が約0~2の範囲である。
【0054】
本発明の好適な実施形態では、本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミン(B)は、エトキシル化ポリエチレンイミン(B)及びエトキシル化ポリプロピレンイミン(B)から選択される。
【0055】
本発明の一実施形態では、本発明のエトキシル化ポリエチレンイミン(B)の平均分子量Mwは、2,500~1,500,000g/molの範囲、好ましくは最大500,000g/mol、より好ましくは最大100,000g/molである。本発明のエトキシル化ポリエチレンイミン(B)の平均分子量Mwは、溶離液として1.5重量%のギ酸水溶液、固定相として架橋ポリヒドロキシエチルメタクリレートを用い、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0056】
本発明のエトキシル化ポリアルキレンイミンは、限定するものではないが、例えば、洗濯洗剤及び硬質表面洗浄剤等の洗浄剤に特に適している。
【実施例
【0057】
全般的注釈:ハーゼン色数は、DIN ISO 6271、ASTM D 1209に従って、分光光度検出によって測定した(2°視野標準観測者、標準光、層厚11mm、蒸留水を対照液とする)。
【0058】
ポリエチレングリコールの含有量は、DGF Einheitsmethoden zur Untersuchung von Fetten, Tensiden und verwandten Stoffenに従って、高性能薄層クロマトグラフィーによって測定した。移動相:CHCl3/CH3OH/水88:11:1(容積比)、ドラーゲンドルフ試薬、すなわち酢酸-KI(ヨウ化カリウム)中のBiONO3を氷酢酸に加えたもの(試薬パートA)及びBaCl2水溶液(試薬B)によって分析。固定相:HPTLCプレート、シリカ60 F254、20×10cm
百分率は、別段に示さない限り、重量パーセントとする。
【0059】
I. 出発物質
出発物質として、以下のポリエチレンイミン(A)を使用した。
(A.1):ポリエチレンイミン、アミン価18.2mmol KOH/g、Mn 600g/mol、Mw/Mn=1.6
(A.2):ポリプロピレンイミン、直鎖状、アミン価17.4mmol KOH/g、Mn 1,300g/mol、Mw/Mn=2.3
(A.3):ポリエチレンイミン、アミン価17.2mmol KOH/g、Mn 5,100 g/mol、Mw/Mn=1.8
(A.4):ポリエチレンイミン、アミン価18.0mmol KOH/g、Mn 1,200 g/mol、Mw/Mn=1.7
(A.5):ポリエチレンイミン、アミン価17.0mmol KOH/g、Mn 25,000 g/mol、Mw/Mn=3.6
【0060】
ポリエチレンイミン(A.1)、(A.3)、(A.4)、及び(A.5)は、エチレンイミンの重合によって得たもので、高分岐であった。
【0061】
【表1】
【0062】
II. アルコキシル化ポリアルキレンイミンの合成
II.1 ステップ(b)-比較例
II.1.1 第1段階エトキシレート1の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに72.5kgのポリエチレンイミン(A.1)及び11.9kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し(5分、10ミリバール)、3回窒素置換した。次に、オートクレーブを内部温度137℃まで加熱した(180rpm)。EO 0.9当量/NHに相当する68.1kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに45分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。147.8kgの量の茶色がかった高粘性液体「第1段階エトキシレート1」が得られた。
【0063】
II.1.2 第1段階エトキシレート2の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに68kgのポリプロピレンイミン(A.2)及び10.1kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを137℃まで加熱した。EO 0.9当量/NHに相当する61.1kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに45分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。137.9kgの量の茶色がかった高粘性液体「第1段階エトキシレート2」が得られた。
【0064】
II.1.3 第1段階エトキシレート3の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに72.5kgのポリエチレンイミン(A.3)及び11.5kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを138℃まで加熱した。EO 0.9当量/NHに相当する64.4kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに45分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。143kgの量の茶色がかった高粘性液体「第1段階エトキシレート3」が得られた。
【0065】
II.1.4 第1段階エトキシレート4の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに72.5gのポリエチレンイミン(A.4)及び11.8kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136℃まで加熱した。EO 0.7当量/NHに相当する68kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに45分間反応させた。そのようにして得た混合物を80℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。147.3kgの量の茶色がかった高粘性液体「第1段階エトキシレート4」が得られた。
【0066】
II.1.5 第1段階エトキシレート5の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに78kgのポリエチレンイミン(A.5)及び12kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを125℃まで加熱した。EO 0.7当量/NHに相当する69.2kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに45分間反応させた。そのようにして得た混合物を80℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。156.8kgの量の茶色がかった高粘性液体「第1段階エトキシレート5」が得られた。
【0067】
II.1.6 C-第1段階プロポキシレート1の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに67kgのポリエチレンイミン(A.1)及び10.1kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し(5分、10ミリバール)、3回窒素置換した。次に、オートクレーブを内部温度が90℃に到達するまで加熱した(180rpm)。PO 0.9当量/NHに相当する79.4kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で10時間の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。153.5kgの量の茶色がかった高粘性液体として、比較例の「第1段階プロポキシレート1」が得られた。
【0068】
II.1.7 第1段階プロポキシレート1(3PO)の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに26.8kgのポリエチレンイミン(A.1)及び4kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し(5分、10ミリバール)、3回窒素置換した。次に、オートクレーブを内部温度が135℃に到達するまで加熱した(180rpm)。PO 3.0当量/NHに相当する105.9kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で7.5時間の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。135.5kgの量の黄褐色がかった高粘性液体として、比較例のC-「第1段階プロポキシレート5」が得られた。
【0069】
II.2. ステップ(b)-本発明の実施例
II.2.1 第1段階プロポキシレート1の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに67kgのポリエチレンイミン(A.1)及び10.1kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し(5分、10ミリバール)、3回窒素置換した。次に、オートクレーブを内部温度が136℃に到達するまで加熱した(180rpm)。PO 0.9当量/NHに相当する79.4kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。153kgの量の黄色がかった高粘性液体「第1段階プロポキシレート1」が得られた。
【0070】
II.2.2 第1段階プロポキシレート2の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに72kgのポリエチレンイミン(A.1)及び11.3kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136~138℃まで加熱した。PO 0.7当量/NHに相当する66kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。144.5kgの量の黄色の高粘性液体「第1段階プロポキシレート2」が得られた。
【0071】
II.2.3 第1段階プロポキシレート3の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに76kgのポリエチレンイミン(A.1)及び11.9kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136~138℃まで加熱した。PO 0.5当量/NHに相当する50kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。132.5kgの量の黄色の高粘性液体「第1段階プロポキシレート3」が得られた。
【0072】
II.2.4 第1段階プロポキシレート4の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに55kgのポリエチレンイミン(A.1)及び8.2kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136~138℃まで加熱した。PO 1.2当量/NHに相当する86.9kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃で60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。145.5kgの量の黄色の高粘性液体「第1段階プロポキシレート4」が得られた。
【0073】
II.2.5 第1段階プロポキシレート5の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに68kgの直鎖状ポリプロピレンイミン(A.2)及び10.1kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136~138℃まで加熱した。PO 0.9当量/NHに相当する77.6kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃で60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。151.9kgの量の黄色の高粘性液体「第1段階プロポキシレート5」が得られた。
【0074】
II.2.6 第1段階プロポキシレート6の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに70kgのポリエチレンイミン(A.3)及び11kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136~138℃まで加熱した。PO 0.9当量/NHに相当する79kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を80℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。157.5kgの量の黄色の高粘性液体「第1段階プロポキシレート6」が得られた。
【0075】
II.2.7 第1段階プロポキシレート7の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに70kgのポリエチレンイミン(A.4)及び10.9kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136~138℃まで加熱した。PO 0.7当量/NHに相当する83.4kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。158.5kgの量の黄色の高粘性液体「第1段階プロポキシレート7」が得られた。
【0076】
II.2.8 第1段階プロポキシレート8の合成
プロペラ撹拌機を備えた200リットルのオートクレーブに72.5kgのポリエチレンイミン(A.5)及び10.7kgの水を入れた後、このオートクレーブを真空脱気し、3回窒素置換した。続いて、オートクレーブを136~138℃まで加熱した。PO 0.7当量/NHに相当する81.7kgの量のプロピレンオキシドを撹拌下で4時間半の間に添加し、130℃でさらに60分間反応させた。そのようにして得た混合物を90℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。157.5kgの量の黄色の高粘性液体「第1段階プロポキシレート8」が得られた。
【0077】
II.3 ポリアルコキシル化ポリアルキレンイミンの合成
II.3.1 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1A)の合成
200リットルのオートクレーブに16.5kgの第1段階プロポキシレート1及び510gのKOH(48%水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。132.5kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(12.6時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。149.8kgの量のほぼ無色の固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1A)が得られた。
【0078】
C-第1段階プロポキシレートを用いて、上記の手順を本質的に繰り返すと、C-(B.1A)が得られた。
【0079】
II.3.2 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1B)の合成
200リットルのオートクレーブに15.0kgの第1段階プロポキシレート2及び510gのKOH(48%水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。132.5kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(12.9時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。148.0kgの量のほぼ無色の固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1B)が得られた。
【0080】
II.3.3 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1C)の合成
200リットルのオートクレーブに12.5kgの第1段階プロポキシレート3及び510gのKOH(48%水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。132.5kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(13.3時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。145kgの量のほぼ無色の固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1C)が得られた。
【0081】
II.3.4 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1D)の合成
200リットルのオートクレーブに19.4kgの第1段階プロポキシレート4及び510gのKOH(48%水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。132.5kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(12.6時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。152.5gの量のほぼ無色の固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1D)が得られた。
【0082】
C-第1段階プロポキシレート5を用いて、上記の手順を本質的に繰り返すと、C-(B.1D)が得られた。
【0083】
II.3.5 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1E)の合成
200リットルのオートクレーブに19.4kgの第1段階プロポキシレート4及び3.63kgのエタノール/n-ノナノール(容積比2:1)中7%のNaOCH3溶液を入れた。20ミリバールでエタノールを除去した(1時間、65℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。132.5kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(11.2時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。153kgの量のほぼ無色の固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.1E)が得られた。
【0084】
II.3.6 比較例:アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.1F)の合成
200リットルのオートクレーブに15.0kgの第1段階エトキシレート1及び535gのKOH(48%水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。137.8kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(16.6時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。151.5kgの量の茶色がかった固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.1F)が得られた。
【0085】
II.3.7 比較例:アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.1G)の合成
200リットルのオートクレーブに15.0gの第1段階エトキシレート1及び3.8kgのエタノール/n-ノナノール(容積比2:1)中7重量%のNaOCH3溶液を入れた。20ミリバールでエタノールを除去した(1時間、65℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。137.8kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(14.9時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。153.0kgの量の茶色がかった固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.1G)が得られた。
【0086】
II.3.8 アルコキシル化ポリプロピレンイミン(B.2A)の合成
2リットルのオートクレーブに23.7kgの第1段階プロポキシレート5及び533gのKOH(48重量%のKOH水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。137.1kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(11.3時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。158.9kgの量の淡黄色がかった固体として、アルコキシル化ポリプロピレンイミン(B.2A)が得られた。
【0087】
II.3.9 比較例:アルコキシル化ポリプロピレンイミンC-(B.2B)の合成
2リットルのオートクレーブに21.4kgの第1段階エトキシレート2及び533gのKOH(48重量%のKOH水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。137kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(15.2時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。157.7kgの量の茶色がかった固体として、アルコキシル化ポリプロピレンイミンC-(B.2B)が得られた。
【0088】
II.3.10 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.3A)の合成
2リットルのオートクレーブに14kgの第1段階プロポキシレート6及び3.8kgのエタノール/n-ノナノール(容積比2:1)中7重量%のNaOCH3溶液を入れた。20ミリバールでエタノールを除去した(1時間、65℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。137.8kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(14.4時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。152.3kgの量のほぼ無色の固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.3A)が得られた。
【0089】
II.3.11 比較例:アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.3B)の合成
2リットルのオートクレーブに12.7kgの第1段階エトキシレート3及び3.8kgのエタノール/n-ノナノール(容積比2:1)中7%のNaOCH3溶液を入れた。20ミリバールでエタノールを除去した(1時間、65℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。137.6kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(17.5時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。151.1kgの量の茶色がかった固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.3B)が得られた。
【0090】
II.3.12 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.4A)の合成
2リットルのオートクレーブに10.6kgの第1段階プロポキシレート7及び539gのKOH(48重量%の水溶液として)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、100℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。139.1kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(14.1時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。149.3kgの量のやや淡黄色がかった固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.4A)が得られた。
【0091】
II.3.13 比較例:アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.4B)の合成
200リットルのオートクレーブに9.6kgの第1段階エトキシレート4及び539gのKOH(48重量%水溶液)を入れた。20ミリバールで水を除去した(2時間、130℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。139.1kgのエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(18.1時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。148kgの量の茶色がかった固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(C-(B.4B)が得られた。
【0092】
II.3.14 アルコキシル化ポリエチレンイミン(B.5A)の合成
200リットルのオートクレーブに29.2kgの第1段階プロポキシレート8及び2.9kgのエタノール/n-ノナノール(容積比2:1)中7重量%のNaOCH3溶液を入れた。20ミリバールでエタノールを除去した(1時間、65℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。105.9kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(11.7時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。135kgの量の淡黄色がかった固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミン(C5)が得られた。
【0093】
II.3.15 比較例:アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.5B)の合成
200リットルのオートクレーブに26.4kgの第1段階エトキシレート5及び2.9kgのエタノール/n-ノナノール(容積比2:1)中7重量%のNaOCH3溶液を入れた。20ミリバールでエタノールを除去した(1時間、65℃)。次に、オートクレーブを窒素置換し、続いて172℃まで加熱した。105.9kgの量のエチレンオキシドを撹拌下で添加し、圧力調節装置が完了を示すまで反応させた(14.2時間)。そのようにして得た混合物を120℃まで冷却し、真空下で揮発性成分を除去した。131.9kgの量の茶色がかった固体として、アルコキシル化ポリエチレンイミンC-(B.5B)が得られた。
【0094】
【表2】
(付記)
(付記1)
アルコキシル化ポリアルキレンイミンを製造する方法であって、
(a)ポリアルキレンイミン(A)を用意するステップ、
(b)前記ポリアルキレンイミン(A)を、N-H官能基当たり0.5~1.3モルのプロピレンオキシド又はブチレンオキシドと100~150℃の範囲の温度で反応させるステップ、及び
(c)ステップ(b)の生成物を、ステップ(b)で使用したアルキレンオキシドとは異なるC 2 ~C 4 -アルキレンオキシドと反応させるステップ
を含む方法。
(付記2)
ステップ(c)が有機溶媒中で実施される、付記1に記載の方法。
(付記3)
ステップ(c)が、ナトリウム及びカリウムのC 1 ~C 10 -アルカノレートから選択される触媒を用いて実施される、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
ポリアルキレンイミン(A)がポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンから選択される、付記1~3のいずれか一項に記載の方法。
(付記5)
有機溶媒がC 1 ~C 10 -アルカノールから選択される、付記2~4のいずれか一項に記載の方法。
(付記6)
ステップ(c)が70~200℃で実施される、付記1~5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
ステップ(b)が触媒を用いずに実施される、付記1~6のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
ステップ(c)における前記C 2 ~C 4 -アルキレンオキシドがエチレンオキシドである、付記1~7のいずれか一項に記載の方法。
(付記9)
ステップ(b)が、ポリアルキレンイミン(A)に対して0.1~4.0重量%の水の存在下で実施される、付記1~8のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
得られるアルコキシル化ポリアルキレンイミンが、0.1~2.5重量%の範囲のポリアルキレングリコールを含有する、付記1~9のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
0.1~2.5重量%の範囲のポリアルキレングリコールを含有する、アルコキシル化ポリアルキレンイミン。
(付記12)
前記アルコキシル化ポリエチレンイミンのハーゼン色数が10~350の範囲である、付記11に記載のアルコキシル化ポリアルキレンイミン。
(付記13)
前記ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンから選択される、付記11又は12に記載のアルコキシル化ポリアルキレンイミン。