(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】めっき装置、及びめっき装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 17/10 20060101AFI20220823BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20220823BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20220823BHJP
C25D 21/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D7/12
C25D17/06 C
C25D17/10 Z
C25D21/00 C
C25D21/00 J
(21)【出願番号】P 2022516208
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2021040789
【審査請求日】2022-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】富田 正輝
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241599(JP,A)
【文献】特開2019-056164(JP,A)
【文献】特許第6937974(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/00
C25D 17/00
C25D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を保持するためのめっき槽と、
被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、
前記めっき槽に水平方向に引抜き自在に装着した引き出しユニットであり、前記めっき槽内で前記基板と対向するように配置されるアノードと、前記アノードを露出する開口部を有し前記開口部の開口寸法を調節可能な可変アノードマスクとを有する、引き出しユニットと、
前記めっき槽の側壁の外面に配置され、進退自在の出力軸を有するアクチュエータと、を備え、
前記可変アノードマスクは、前記開口部の開口寸法を調節する開口調節部材を有し、
前記引き出しユニットは、前記可変アノードマスクの前記開口調節部材を移動させる駆動軸を更に有し、
前記引き出しユニットの前記駆動軸は、前記めっき槽の側壁を貫通して、前記めっき槽の外部で、前記アクチュエータの前記出力軸に対して取り外し可能に連結され、前記アクチュエータの動力が前記引き出しユニットの前記駆動軸に伝達され、
前記アクチュエータの前記出力軸は、前記引き出しユニットの前記駆動軸に所定の距離を保って平行に配置され、前記アクチュエータの前記出力軸と同一方向に前記引き出しユニットの前記駆動軸を移動させる、
めっき装置。
【請求項2】
請求項1に記載のめっき装置において、
前記めっき槽は、平面視において四角形であり、
前記引き出しユニットの前記駆動軸は、前記アクチュエータが配置される前記めっき槽の側壁の外面と隣接し直交する外面を通って前記めっき槽の外部に延びる、
めっき装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載のめっき装置において、
前記引き出しユニットの前記駆動軸は、前記アクチュエータの前記出力軸にジョイントを介して取り外し可能に連結されている、
めっき装置。
【請求項4】
請求項
1から3の何れかに記載のめっき装置において、
前記引き出しユニットは、前記アノード及び前記可変アノードマスクが配置される底板と、前記めっき槽の側壁の一部を構成する前板と、を有し、
前記駆動軸は、前記前板を貫通しており、前記駆動軸は、前記めっき槽の外部で前記アクチュエータの前記出力軸に連結される、
めっき槽。
【請求項5】
請求項
4に記載のめっき装置において、
前記引き出しユニットは、前記前板を貫通して設けられ前記駆動軸を案内する軸受と、前記軸受の両端に設けられ前記駆動軸と前記軸受との間を密閉するシールと、を更に有する、めっき槽。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載のめっき装置において、
前記引き出しユニットは、前記アノードに電気的に接続され前記アノードに給電するバスバーを有し、前記バスバーは、前記前板を貫通して前記めっき槽の外部に延びている、
めっき装置。
【請求項7】
請求項
4から6の何れかに記載のめっき装置において、
前記底板には、液抜き用の開口が設けられている、
めっき装置。
【請求項8】
請求項3、請求項3を引用先に含む請求項
4から7の何れかに記載のめっき装置において、
前記ジョイントは、
板状又は棒状の部材であり、前記駆動軸の一端に一体に設けられ又は前記駆動軸の一端に連結される第1部材と、
板状又は棒状の部材であり、前記出力軸の先端に一体に設けられ又は前記アクチュエータの前記出力軸の先端に連結される第2部材と、
前記第1部材と前記2部材とを着脱可能に連結する締結部材と、を有する、
めっき装置。
【請求項9】
請求項
8に記載のめっき装置において、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方はクランクを有し、
前記駆動軸の前記一端と、前記アクチュエータの前記出力軸の先端とは異なる高さにある、めっき装置。
【請求項10】
請求項
8又は9に記載のめっき装置において、
前記締結部材は、ボルト又はねじである、めっき装置。
【請求項11】
請求項
1から3の何れかに記載のめっき装置において、
前記引き出しユニットは、前記アノード及び前記可変アノードマスクが配置される底板と、前記めっき槽の側壁の一部を構成する前板と、を有する、
めっき装置。
【請求項12】
めっき槽を準備し、
アノード及び可変アノードマスクを保持する底板と、前記めっき槽の側壁の一部を構成
する前板と、前記前板を貫通し前記可変アノードマスクを駆動する駆動軸とを少なくとも有する引き出しユニットを前記めっき装置に挿入し、
前記前板以外の部分で前記めっき槽の側壁の外面にアクチュエータを取り付け、
前記アクチュエータの出力軸を前記引き出しユニットの前記駆動軸と所定の距離を保って平行に配置し、
前記アクチュエータの前記出力軸と同一方向に前記引き出しユニットの前記駆動軸を移動させるように、前記めっき槽の外部で、前記引き出しユニットの前記駆動軸を前記アクチュエータの出力軸に取り外し可能に連結する、
めっき装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記めっき槽は、平面視において四角形であり、前記引き出しユニットの前記駆動軸は、前記アクチュエータが配置される前記めっき槽の側壁の外面と隣接し直交する外面を通って前記めっき槽の外部に延びる、方法。
【請求項14】
請求項
12又は13に記載の方法において、前記引き出しユニットは、前記アノードに給電するためのバスバーを更に有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置、及びめっき装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にめっき処理を施すことが可能なめっき装置として、特開2006-241599号公報(特許文献1)、米国特許第7351314号明細書(特許文献2)に記載されたような、いわゆるフェースダウン式又はカップ式のめっき装置が知られている。このようなめっき装置は、めっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽と、アノードよりも上方に配置されて、カソードとしての基板を保持する基板ホルダ(めっきヘッドとも称する)とを備えている。
【0003】
このようなフェースダウン式のめっき装置では、構造上、アノードがめっき槽の最下部に配置されるため、アノード交換などのメンテナンス作業において、アノード上部のパーツを全て取り外す必要がある。この一連の作業は作業性が悪く、時間もかかり、めっき装置の稼働率も悪化するという問題がある。特開2006-241599号公報(特許文献1)には、めっき槽に引き抜き自在に装着したアノード保持体内にアノードを保持する構成が開示されている。米国特許第7351314号明細書(特許文献2)には、めっき槽を処理ユニット、バリアユニット、電極ユニットの個別のユニットに分割し、最下部の電極ユニットにアノードが配置された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-241599号公報
【文献】米国特許第7351314号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェースダウン式のめっき装置において、基板上のシード層の電気抵抗に起因して基板外周部が中央部より厚くめっきされる、いわゆるターミナルエフェクトを防止すること等を目的として、開口寸法を調整可能な可変アノードマスクをアノードの前面に配置し、アノードからの基板に向かう電場を調整することが検討されている。このような可変アノードマスクは、アノードからの基板に向かう電場を効率良く調整するためにアノードの近傍に配置することが好ましく、アノードと同様に、めっき槽の最下部に配置される。従って、可変アノードマスクのメンテナンスにも、アノードと同様の問題がある。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、フェースダウン式のめっき装置の下部に配置される部品のメンテナンスを容易にすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、 めっき液を保持するためのめっき槽と、 被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、 前記めっき槽に水平方向に引抜き自在に装着した引き出しユニットであり、前記めっき槽内で前記基板と対向するように配置されるアノードと、前記アノードを露出する開口部を有し前記開口部の開口寸法を調節可能な可変アノードマスクとを有する、引き出しユニットと、を備える、めっき装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】一実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための断面図である。
【
図4】一実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための斜視図である。
【
図5】引き出しユニットの構成を説明するための上方斜視図である。
【
図6】引き出しユニットの構成を説明するための下方斜視図である。
【
図7】引き出しユニットの構成を説明するための切断斜視図である。
【
図8】引き出しユニットの構成を説明するための縦断面図である。
【
図9】引き出しユニットのバスバーの構成を説明するための切断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るめっき装置1000について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、物の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0010】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0011】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容されたウェハ(基板)を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200及びスピンリンスドライヤ600の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0012】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0013】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0014】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0015】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0016】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0017】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0018】
なお、
図1や
図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、
図1や
図2の構成に限定されるものではない。
【0019】
[めっきモジュール]
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0020】
図3は、一実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための断面図である。
図4一実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための斜視図である。
【0021】
本実施形態に係るめっき装置1000は、フェースダウン式又はカップ式と称されるタイプのめっき装置である。本実施形態に係るめっき装置1000のめっきモジュール400は、主として、めっき槽10と、オーバーフロー槽20と、基板Wfを保持するめっきヘッドとも称される基板ホルダ11と、基板ホルダ11を回転、傾斜及び昇降させる回転機構、傾斜機構及び昇降機構(図示略)と、を備えている。但し、傾斜機構は省略されてもよい。
【0022】
本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。めっき槽10は、底壁と、この底壁の外周縁から上方に延在する側壁とを有しており、この側壁の上部が開口している。めっき槽10は、めっき液Psを貯留する円筒形状の内部空間を有する。めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、本実施形態において、めっき液Psには所定の添加剤が含まれている。但し、この構成に限定されるものではなく、めっき液Psは添加剤を含んでいない構成とすることもできる。
【0023】
オーバーフロー槽20は、
図4に示すように、めっき槽10の外側に配置された、有底の容器によって構成されている。オーバーフロー槽20は、めっき槽10の上端を超えためっき液Psを一時的に貯留する。一例では、オーバーフロー槽20のめっき液Psは、オーバーフロー槽20用の排出口(図示せず)から排出されて、リザーバータンク(図示せず)に一時的に貯留された後に、再び、めっき槽10に戻される。
【0024】
アノード61は、めっき槽10の内部の下部に配置されている。アノード61の具体的な種類は特に限定されるものではなく、溶解アノードや不溶解アノードを用いることができる。本実施形態においては、アノード61として不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。本実施形態では、アノード61の上面側(基板Wf側)に可変アノードマスク62が設けられている。
【0025】
可変アノードマスク62は、アノード61を露出する開口部62Aを有し、開口部62Aによってアノード61が露出する範囲を調節することにより、アノード61から基板Wfに向かう電場を調節する電場調節部材である。本実施形態の可変アノードマスク62は、
図4に示すように、複数のブレード621を備え、カメラの絞りと同様の機構により開口部62Aの開口寸法を調整する。可変アノードマスク62の詳細については後述する。
【0026】
隔膜60が、めっき槽10の内部において可変アノードマスク62の上方に配置されている。めっき槽10内部は、隔膜60によって上下の室に仕切られている。隔膜60の上側の室がカソード室と称され、隔膜60の下側の室がアノード室と称される。本実施形態では、隔膜60は、中性膜である第1の膜63と、イオン交換膜である第2の膜64とを有する。隔膜60の構成は、一例であり、他の構成をとることができる。第1の膜63及び第2の膜64は、それぞれの外周部においてめっき液10の内周面にサポートにより固定されている。アノード室には、めっき槽10の底壁に設けられた液体供給口51からめっき液Psが供給され、めっき槽10の側壁に設けられた液排出口52(本実施形態では2つ)から排出される。カソード室にも、図示しない液体供給口からめっき液が供給され、図示しない液排出口から排出される。カソード室には、促進剤等の添加物を含むめっき液Psが導入され、アノード室には添加物を含まない又は添加物濃度が低いめっき液Psが導入される。隔膜60は、アノード室からカソード室にめっき液中の金属イオンを透過させると共に、カソード室からアノード室にめっき液中の添加剤が透過することを防止する。
【0027】
めっき槽10の内部において隔膜60よりも上方には、多孔質の抵抗体65が配置されている。具体的には、抵抗体65は、複数の孔(細孔)を有する多孔質の板部材によって構成されている。抵抗体65よりも下方側のめっき液Psは、抵抗体65を通過して、抵抗体65よりも上方側に流動することができる。この抵抗体65は、アノード61と基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている部材である。このような抵抗体65がめっき槽10に配置されることで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を容易に図ることができる。なお、抵抗体65は本実施形態において必須の構成ではなく、本実施形態は抵抗体65を備えていない構成とすることもできる。
【0028】
めっき槽10の内部において基板Wfの近傍(本実施形態では、抵抗体65と基板Wfとの間)にはパドル66が配置されている。パドル66は、基板Wfの被めっき面に対して概ね平行方向に往復運動して、基板Wf表面に強いめっき液の流れを発生させる。これにより、基板Wfの表面近傍のめっき液中のイオンを均一化し、基板Wf表面に形成されるめっき膜の面内均一性を向上させる。
【0029】
[引き出しユニット]
図5は、引き出しユニットの構成を説明するための上方斜視図である。
図6は、引き出しユニットの構成を説明するための下方斜視図である。
図7は、引き出しユニットの構成を説明するための切断斜視図である。
図8は、引き出しユニットの構成を説明するための縦断面図である。
図9は、引き出しユニットのバスバーの構成を説明するための切断斜視図である。以下、
図4から
図9を参照して、アノード61及び可変アノードマスク62が一体的された引き出しユニットについて説明する。
【0030】
本実施形態では、
図4から
図6に示すように、アノード61及び可変アノードマスク62は、引き出しユニット630として一体に構成されている。引き出しユニット630は、引き出し本体631と、アノード61と、可変アノードマスク62と、可変アノードマスク62を駆動する駆動軸624と、アノード61に給電するバスバー611と、を備えている。なお、バスバー611は、引き出しユニット630に含まれなくても良い。
【0031】
引き出しユニット630は、
図4に示すように、めっき槽10の側壁に開口する開口部10Aからめっき槽10の内部に挿入可能に構成されている。引き出しユニット630がめっき槽10内部に挿入され、めっき槽10の内部に配置された状態で、前板632は、めっき槽10の側壁の開口部10Aを閉じ、めっき槽10の側壁の一部として機能し、めっき槽10の側壁の一部を構成する。
【0032】
引き出し本体631は、電気的絶縁材料で形成され、底板633と、前板632とを備えている。なお、本明細書では、前板632側を前方、底板633側を後方と称す場合がある。底板633は、板状の部材であり、アノード61及び可変アノードマスク62を保持する。底板633には、
図6に示すように、液抜き用の開口636が設けられている。同図では、前後方向に延びる1つのスリットとして開口636が設けられているが、開口636は、任意の形状であってよく、複数設けられてもよい。開口636を設けることにより、引き出しユニット630をめっき槽10から引き出した際に、引き出しユニット630上に残るめっき液の量を低減でき、引き出しユニット630上にめっき液が溜まることを抑制することができる。
【0033】
前板632は、底板633の前端に取り付けられており、めっき槽10の側壁の一部を構成する。前板632は、底板633の前端にボルト等の締結部材により取り付けられる。なお、前板632は、底板633と一体に形成されてもよい。前板632は、引き出しユニット630がめっき槽10の側壁の開口部10Aからめっき槽10の内部に挿入され、設置されたとき、開口部10Aを閉鎖し、めっき槽10の側壁の一部を構成する。引き出しユニット630がめっき槽10の内部に配置され、固定された状態が、
図8に示されている。
【0034】
引き出しユニット630の前板632は、例えば、ボルト、ねじ等の任意の締結部材でめっき槽10の側壁に固定されることができる。前板632の後面(内面)又は前板632の内面と対向するめっき槽10の側壁の外面の部分には、前板632とめっき槽10の側壁との間を密閉し、めっき液の漏れを防止するためのシール632Aが設けられている。このシール632Aは、例えば、
図10に示すように、前板632の内面の外周部に環状に設けられる。
【0035】
前板632の前面(外面)には、引き出しユニット630をめっき槽10に出し入れする際に、作業者が把持する把手634が設けられている。把手634は、例えば、ボルト、ねじ等の締結により前板632に取り付けられてもよいし、前板632と一体に形成されてもよい。また、前板632の概ね中央には、前板632を貫通して露出するバスバー611(
図6)を覆う絶縁カバー635が取り付けられている。
【0036】
アノード61は、板状の電極であり、例えば円盤状の形状を有する。
図9に示すように、アノード61は、その裏面中央に設けられた、給電ポイントとしての突起612を有する。アノード61は、底板633上に設けられたベース633A上に配置される。例えば、ベース633Aの上面にアノード61の外形に対応する凹部が設けられており、この凹部にアノード61が嵌め込まれて固定される。ベース633Aは電気的絶縁材料で形成される。また、ベース633Aには、アノード61の突起612に対応する位置に穴633Bが設けられている。アノード61の突起612は、穴633Bを通過し、突起612の先端部でバスバー611に機械的及び電気的に接続される。
【0037】
バスバー611は、その一端(内側端、後方端)でアノード61の突起612に電気的及び機械的に連結されると共に、その他端側が前板632を貫通し、前板632の外面側に露出している。バスバー611の他端(外側端、前方端)には、ボルト、ねじ等の締結部材613によって、給電用のケーブルが固定されるように構成されている。給電用のケースブルは、電源(図示略)から電力の供給を受ける。前板632とバスバー611との間には、めっき液の漏洩を防止するシール632Bが設けられている。シール632Bは、シール固定部材637によって固定されている。バスバー611の外側端の周りにおいて前板632には、
図8に示すように、高電圧部に作業者が触れることを防止するための絶縁カバー635が取り付けられている。絶縁カバー635は、例えば、ボルト、ねじ等の締結により前板632に取り付けられる。バスバー611の前板632からの露出部を覆う絶縁カバー635は、
図5、
図8に示すように、前板632の前面の幅方向略中央のやや下方側に配置される。
【0038】
可変アノードマスク62は、カメラの絞り機構と同様の構造により複数のブレード621を移動させ、可変アノードマスク62の開口部62Aの開口寸法を拡大及び縮小するように構成されている。可変アノードマスク62は、
図5及び
図9に示すように、ベース633A上でアノード61の外周を囲むようにアノード61の面から所定の距離だけ離間して配置されたカム円盤623と、カム円盤623の上方に配置されたブレード押え622と、カム円盤623とブレード押え622の間に挟持された複数のブレード621と、を備えている。
【0039】
カム円盤623は、
図9に示すように、円環状の部材であり、ベース633A上に配置されている。カム円盤623は、ベース633A上において回転可能に配置されている。カム円盤623は、例えば、ベース633上面に設けられた凹部に嵌め込まれ、回転可能に支持される。カム円盤623には、
図7に示すように、駆動軸624を固定するためのピン628が係合及び固定される穴623Aと、各ブレード621の下面に設けられたピン(図示略)が係合する長穴623Bとが設けられている。カム円盤623は、駆動軸624の前後運動によってベース633上で回転し、この回転により複数のブレード621を回転させ、可変アノードマスク62の開口部62A(
図5)の開口寸法を調節する。
【0040】
ブレード押え622は、
図5に示すように、円環状の部材であり、カム円盤623の外径よりも若干大きい外径を有する。ブレード押え622は、
図9に示すように、複数のブレード621の上方に配置される。ブレード押え622は、ベース633Aに対して回転不能に固定されている。ブレード押え622の下面には、複数のピン(図示略)が設けられている。各ピンは、各ブレード621の上面に設けられた丸穴(図示略)に係合し、各ブレード621がピンの周りを回転可能になっている。各ブレード621は、カム円盤623の回転により回転されるとき、ブレード押え622のピンの周りを回転する。なお、ブレード押え622に丸穴が設けられ、各ブレード621にピンが設けられてもよい。
【0041】
複数のブレード621は、カメラの絞り機構と同様の構造と同様のブレードであり、可変アノードマスク62の開口部62Aの周りに配置される。複数のブレード621は、可変アノードマスク62の開口部62Aの開口寸法を拡大及び縮小するように移動可能に、カム円盤623及びブレード押え622に取り付けられている。
【0042】
駆動軸624は、
図7に示すように、駆動軸624の後端(内側端)においてピン628によってカム円盤623に固定されている。この例では、ピン628が、カム円盤623に設けられた穴623A、及び、駆動軸624の後端に設けられた穴624Aに係合することにより、駆動軸624とカム円盤623とが連結されている。
図5に示すように、アクチュエータ650の出力軸651が前後方向に往復すると、ジョイント661、662、663を介して、アクチュエータ650の出力軸651の移動方向と平行かつ同一方向に駆動軸624が移動し、カム円盤623が回転される。
【0043】
駆動軸624は、
図7に示すように、駆動軸624は、前板632を貫通するように取り付けられた円筒状の軸受625を通って、前板632の外面と内面との間を貫通している。より詳細には、駆動軸624は、軸受625、その両端面のシール626及びシール固定部材627を貫通して配置されている。シール626は、軸受625と駆動軸624との間を密閉し、めっき液が軸受625と駆動軸624との間から外部に漏れることを防止する。シール626は、この例では、軸受625の各端面に設けられた環状の溝の内部に配置され、シール固定部材627によって押さえられて固定されている。シール626は、例えば、環状の金属の芯材の周りに樹脂が設けられたオムニシールを採用することができる。オムニシールを採用することにより、駆動軸624との間の摺動抵抗を低下させ、駆動軸624を円滑に前後運動させることができる。なお、装置の仕様によっては、シール626は、Oリング、その他任意のシールとすることができる。シール固定部材627は、例えば、ボルト、ねじ等の締結部材により軸受625の各端面に固定される。
【0044】
可変アノードマスク62を駆動する駆動軸624は、
図4及び
図5に示す、めっき槽10側に固定されたアクチュエータ650によって駆動される。なお、
図5では、アクチュエータ650と駆動軸624の機械的な接続関係を分かり易く示すために、めっき槽10を省略して示している。アクチュエータ650は、
図4に示すように、めっき槽10の開口部10Aが設けられた側壁面に隣接する側壁面に固定されている。アクチュエータ650は、例えば、ブラケット655(
図5)を用いて、めっき槽10の側壁の外面に取り付けられる。
【0045】
アクチュエータ650は、この例では、上部にモータ、下部に出力軸651を備え、モータの回転が出力軸651の直線往復運動に変換される構成である。なお、アクチュエータは、流体(エアー、油圧等)で駆動されるタイプ、ソレノイド等の電磁力により駆動されるタイプ、その他任意のアクチュエータを採用することができる。アクチュエータ650の出力軸651は、流体等の動力(本実施形態では、モータの回転)により、前後方向に往復運動することができる。
【0046】
可変アノードマスク62の駆動軸624の前端(外側端)には、第1のジョイント661が連結されており、アクチュエータ650の出力軸651の先端には、第2のジョイント662が連結されている。
図5に示すように、第1のジョイント661と第2のジョイント662とが、ボルト、ねじ等の任意の締結部材663で取り外し可能に連結されることにより、アクチュエータ650からの動力が駆動軸624に伝達される。本実施形態では、可変アノードマスク62の駆動軸624と、アクチュエータ650の出力軸651とは、互いに平行に配置されている。アクチュエータ650の出力軸651が前後方向に往復運動すると、可変アノードマスク62の駆動軸624は、アクチュエータ650の出力軸651の移動方向と平行に同一方向に移動する。
【0047】
本実施形態では、第2のジョイント662には第1のジョイント661の端部を上下からガイドするガイド部が設けられており、第1のジョイント661を回り止めすると共に、第1のジョイント661を安定した姿勢で第2のジョイント662に取り付けることができるようになっている。第1のジョイント661は、板状又は棒状の部材とすることができ、駆動軸624の前端に一体に設けられ、又はボルト、ねじ等の任意の締結部材で駆動軸624の前端に連結されることができる。第2のジョイント662は、板状又は棒状の部材とすることができ、出力軸651の先端に一体に設けられ、又はボルト、ねじ等の任意の締結部材で出力軸651の先端に連結されることができる。
【0048】
アクチュエータ650の出力軸651と、可変アノードマスク62の駆動軸624が異なる高さに配置される場合には、
図11に示すように、第1のジョイント661及び第2のジョイント662のうち一方又は両方にクランクを設けてもよい。例えば、第1のジョイント661の駆動軸624側の端部と第2のジョイント662側の端部の高さが互いに異なるように、クランクが設けられてもよい。例えば、第2のジョイント662の出力軸651側の端部と第1のジョイント661側の端部の高さが互いに異なるように、クランクが設けられてもよい。また、第2のジョイント662の出力軸651に固定される箇所と、第1のジョイント661に固定される箇所の高さが異なるようにしてもよい。
【0049】
上記で説明しためっきモジュール400の製造方法、特に引き出しユニット630のめっき槽10への取り付け工程について説明する。引き出しユニット630のめっき槽10への取り付け工程は、少なくとも以下の工程を有する。
(a)引き出しユニット630を取り付ける前のめっき槽10を準備する工程。
(b)アノード61、可変アノードマスク62、及び、可変アノードマスク62を駆動する駆動軸624が少なくとも取り付けられた引き出しユニット630をめっき槽10の側壁の開口部10Aからめっき槽10の内部に挿入して、引き出しユニット630をめっき槽10の内部に設置する工程。
(c)アクチュエータ650をめっき槽10の側壁の外面に取り付ける工程。
(d)引き出しユニット630の駆動軸624の前端を、アクチュエータ650の出力軸651の先端に対して、ジョイント661、662、663を介して取り付ける工程。
なお、(c)、(d)の工程は、何れを先に実施してもよい。
【0050】
このようにめっき槽10に設置された引き出しユニット630によれば、アクチュエータ650を駆動することにより、引き出しユニット630の駆動軸624が前後方向に移動し、カム円盤632が回転し、及び複数のブレード621が回転することにより、可変アノードマスク62の開口部62Aの開口寸法が調整される。
【0051】
アノード61及び/又は可変アノードマスク62をメンテナンスする際には、以下の手順で引き出しユニット630をめっき槽10から取り外す。先ず、引き出しユニット630の駆動軸624と、アクチュエータ650の出力軸651との間のジョイントを解除する。具体的には、第1のジョイント661と第2のジョイント662を締結する締結部材663を取り外す。また、引き出しユニット630の前板623をめっき槽10の側壁に固定しているボルト、ねじ等の締結部材を取り外す。ジョイントの解除と、前板の締結部材の取り外しは、何れが先であってもよい。その後、引き出しユニット630をめっき槽10から引き出し、取り外す。これにより、アノード61及び/又は可変アノードマスク62上方のめっき槽10内の部品を取り外すことなく、アノード61及び/又は可変アノードマスク62をめっき槽10から取り外してメンテナンスすることができる。メンテナンスは、例えば、アノード、可変アノードマスク、及びその他の部品(バスバー等)の点検、クリーニング、部品交換、調整等を含む。
【0052】
上述した実施形態によれば、少なくとも以下の作用効果を奏する。
(1)上記実施形態によれば、アノード61及び可変アノードマスク62を一体化した引き出しユニット630をめっき槽10から引抜くことができ、アノード及び可変アノードマスクのメンテナンス及び/又は交換を容易に行うことができる。また、前板と底板により引き出しを構成するので、アノード及び可変アノードマスクを出し入れする高さを簡易な構成で確保することができる。
(2)上記実施形態によれば、めっき槽10の外部で、可変アノードマスク62の駆動軸624と、アクチュエータ650の出力軸651とを、ジョイントを介して取り付け及び取り外すことができるので、引き出しユニット630をめっき装置10に容易に取り付け、めっき槽10から容易に取り外すことができる。
(3)上記実施形態によれば、可変アノードマスク62の駆動軸624をアクチュエータ650の出力軸651と平行に配置し、同一方向に移動させるため、可変アノードマスク62の駆動軸624と、アクチュエータ650の出力軸651との間をジョイント等で連結させるだけで良く、動力伝達機構を簡易に構成することができる。
【0053】
上述した実施形態から少なくとも以下の形態が把握される。
[1]一形態によれば、 めっき液を保持するためのめっき槽と、 被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、 前記めっき槽に水平方向に引抜き自在に装着した引き出しユニットであり、前記めっき槽内で前記基板と対向するように配置されるアノードと、前記アノードを露出する開口部を有し前記開口部の開口寸法を調節可能な可変アノードマスクとを有する、引き出しユニットと、 を備える、めっき装置が提供される。
【0054】
この形態によれば、アノード及び可変アノードマスクを一体化した引き出しユニットをめっき槽から引抜くことができ、アノードと可変アノードマスクのメンテナンス及び/又は交換を容易に行うことができる。
【0055】
[2]一形態によれば、 前記めっき槽側に配置され、進退自在の出力軸を有するアクチュエータを更に備え、 前記可変アノードマスクは、前記開口部の開口寸法を調節する開口調節部材を有し、 前記引き出しユニットは、前記可変アノードマスクの前記開口調節部材を移動させる駆動軸を更に有し、 前記引き出しユニットの前記駆動軸は、前記めっき槽の外部で、前記アクチュエータの前記出力軸に対して取り外し可能に連結され、前記アクチュエータの動力が前記引き出しユニットの前記駆動軸に伝達される。開口調節部材は、例えば、カメラの絞り機構と同様の構造で動作する複数のブレードである。
【0056】
この形態によれば、めっき槽の外部で、可変アノードマスクの駆動軸をアクチュエータの出力軸から取り外すことができるので、アノード及び可変アノードマスクを一体化した引き出しユニットを容易にめっき槽から引き抜くことができる。また、引き出しユニットをめっき槽に取り付ける際には、めっき槽の外部で、引き出しユニットの駆動軸をアクチュエータの出力軸に取り付けることができるので、アノード及び可変アノードマスクを一体化した引き出しユニットを容易にめっき槽に容易に取り付けることができる。
【0057】
[3]一形態によれば、 前記引き出しユニットの前記駆動軸は、前記アクチュエータの前記出力軸にジョイントを介して取り外し可能に連結されている。
【0058】
この形態によれば、めっき槽の外部でジョイントを解除して、可変アノードマスクの駆動軸をアクチュエータの出力軸から取り外すことができるので、アノード及び可変アノードマスクを一体化した引き出しユニットを容易にめっき槽から引き抜くことができる。また、めっき槽の外部で、ジョイントにより、可変アノードマスクの駆動軸をアクチュエータの出力軸に取り付けることができる。
【0059】
[4]一形態によれば、 前記アクチュエータの前記出力軸は、前記引き出しユニットの前記駆動軸に平行に配置され、前記アクチュエータの前記出力軸と同一方向に前記引き出しユニットの前記駆動軸を移動させる。
【0060】
この形態によれば、可変アノードマスクの駆動軸をアクチュエータの出力軸と同一方向に移動させるため、可変アノードマスクの駆動軸とアクチュエータの出力軸との間をジョイント等で連結させるだけで良く、動力伝達機構を簡易に構成することができる。
【0061】
[5]一形態によれば、 前記引き出しユニットは、前記アノード及び前記可変アノードマスクが配置される底板と、前記めっき槽の側壁の一部を構成する前板と、を有し、 前記駆動軸が前記前板を貫通しており、 前記駆動軸は、前記めっき槽の外部で前記アクチュエータの前記出力軸に連結される。
【0062】
この形態によれば、可変アノードマスクの駆動軸が、めっき槽の側壁の一部を構成する引き出しユニットの前板を貫通するようにすることで、可変アノードマスクの駆動軸の一端をめっき槽の外部に取り出すことができ、めっき槽の外部で、可変アノードマスクの駆動軸とアクチュエータの出力軸との間の接続を容易に連結及び解除することができる。また、引き出しユニットの前板がめっき槽の側壁の一部を構成するので、引き出しユニットを出し入れするための開口部及び蓋をめっき槽に別途設ける必要がない。
【0063】
[6]一形態によれば、 前記引き出しユニットは、前記前板を貫通して設けられ前記駆動軸を案内する軸受と、前記軸受の両端に設けられ前記駆動軸と前記軸受との間を密閉するシールと、を更に有する。
【0064】
この形態によれば、めっき槽からのめっき液の漏れを防止しつつ、可変アノードマスクの駆動軸の一端をめっき槽の外部に配置することができる。
【0065】
[7]一形態によれば、 前記引き出しユニットは、前記アノードに電気的に接続され前記アノードに給電するバスバーを有し、前記バスバーは、前記前板を貫通して前記めっき槽の外部に延びている。
【0066】
この形態によれば、アノード、可変アノードマスク、可変アノードマスクの駆動軸、及びアノードに給電するバスバーを一体化した引き出しユニットを、めっき槽から引抜くことができる。また、めっき槽の外部でバスバーを外部の配線に容易に接続することができる。
【0067】
[8]一形態によれば、 前記底板には、液抜き用の開口が設けられている。
【0068】
この形態によれば、引き出しユニットをめっき槽から引き抜いた際に、引き出しユニットに残るめっき液の量を低減でき、引き出しユニットにめっき液が溜まることを抑制することができる。
【0069】
[9]一形態によれば、 前記ジョイントは、 板状又は棒状の部材であり、前記駆動軸の一端に一体に設けられ又は前記駆動軸の一端に連結される第1部材と、 板状又は棒状の部材であり、前記出力軸の先端に一体に設けられ又は前記アクチュエータの前記出力軸の先端に連結される第2部材と、 前記第1部材と前記2部材とを着脱可能に連結する締結部材と、を有する。
【0070】
この形態によれば、アノードマスクの駆動軸とアクチュエータの出力軸との間を連結するジョイントを簡易な構成かつ信頼性の高い構成で実現できる。
【0071】
[10]一形態によれば、 前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方はクランクを有し、 前記駆動軸の前記一端と、前記アクチュエータの前記出力軸の先端とは異なる高さにある。
【0072】
この形態によれば、可変アノードマスクの駆動軸と、アクチュエータの出力軸とが異なる高さにある場合にも、両者の間を簡易かつ信頼性高く連結することができる。
【0073】
[11]一形態によれば、前記締結部材は、ボルト又はねじである。
【0074】
この形態によれば、可変アノードマスクの駆動軸と、アクチュエータの出力軸との間を連結するジョイントを簡易かつ信頼性高く構成することができる。
【0075】
[12]一形態によれば、 前記引き出しユニットは、前記アノード及び前記可変アノードマスクが配置される底板と、前記めっき槽の側壁の一部を構成する前板と、を有する。
【0076】
この形態によれば、底板と前板という簡易な構成で、アノードと比較して厚みを有する可変アノードマスクを収容する高さ方向スペースを容易に確保することができる。
【0077】
[13]一形態によれば、 めっき槽を準備し、 アノード及び可変アノードマスクを保持する底板と、前記めっき槽の側壁の一部を構成する前板と、前記前板を貫通し前記可変アノードマスクを駆動する駆動軸とを少なくとも有する引き出しユニットを前記めっき装置に挿入し、 前記前板以外の部分で前記めっき槽の側壁の外面にアクチュエータを取り付け、 前記めっき槽の外部で、前記引き出しユニットの前記駆動軸を前記アクチュエータの出力軸に取り外し可能に連結する、 めっき装置の製造方法が提供される。
【0078】
この形態によれば、アノード、可変アノードマスク、及び可変アノードマスクの駆動軸を一体化した引き出しユニットをめっき槽から引抜くことができ、アノード、可変アノードマスク、及び可変アノードマスクの駆動軸のメンテナンス及び/又は交換を容易に行うことができる。
【0079】
[14]一形態によれば、前記引き出しユニットは、前記アノードに給電するためのバスバーを更に有する。
【0080】
この形態によれば、アノード、可変アノードマスク、可変アノードマスクの駆動軸、及びアノードに給電するためのバスバーを一体化した引き出しユニットをめっき槽から引抜くことができアノード、可変アノードマスク、可変アノードマスクの駆動軸、及びアノードに給電するためのバスバーのメンテナンス及び/又は交換を容易に行うことができる。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0082】
特開2006-241599号公報(特許文献1)、米国特許第7351314号明細書(特許文献2)の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を含む全ての開示は、参照により全体として本願に組み込まれる。
【符号の説明】
【0083】
10 めっき槽
10A 開口部
11 基板ホルダ
20 オーバーフロー槽
60 隔膜
61 アノード
62 可変アノードマスク
62A 開口部
65 抵抗体
66 パドル
611 バスバー
612 突起
613 締結部材
621 ブレード
622 ブレード押え
623 カム円盤
623A 穴
623B 長穴
624 駆動軸
625 軸受
626 シール
627 シール固定部材
628 ピン
630 引き出しユニット
631 引き出し本体
632 前板
632A シール
632B シール
633 底板
633A ベース
633B 穴
634 把手
635 絶縁カバー
650 アクチュエータ
651 出力軸
655 ブラケット
661 第1のジョイント
662 第2のジョイント
663 締結部材
636 開口
637 シール固定部材
【要約】
フェースダウン式のめっき装置の下部に配置される部品のメンテナンスを容易にすること。
めっき液を保持するためのめっき槽と、被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、前記めっき槽に水平方向に引抜き自在に装着した引き出しユニットであり、前記めっき槽内で前記基板と対向するように配置されるアノードと、前記アノードを露出する開口部を有し前記開口部の開口寸法を調節可能な可変アノードマスクとを有する、引き出しユニットと、を備える、めっき装置。