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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】キャラクター表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 13/40 20110101AFI20220824BHJP
   A63F 13/55 20140101ALI20220824BHJP
   A63F 13/428 20140101ALI20220824BHJP
   A63F 13/213 20140101ALI20220824BHJP
【FI】
G06T13/40
A63F13/55
A63F13/428
A63F13/213
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018221324
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020087003
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月6日にエンタテインメントコンピューティングシンポジウム2018論文集にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】三武 裕玄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晶一
(72)【発明者】
【氏名】新山 聡
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-053328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 13/00-13/80
G09G 5/00- 5/42
A63F 13/00-13/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的な画面の手前側に存在する対象者に向けて、前記画面の中にキャラクターを表示する方法であって、
キャラクターの表示位置を原点とする前記対象者の極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲にあることを作動条件として含む第1トリガーによって、キャラクターの視線が画面の正面の方向から継続的に外れるようにキャラクターを表示し、
少なくとも前記第1トリガーによるキャラクターの表示が所定時間継続したことを作動条件として含む第2トリガーによって、前記キャラクターの視線が画面の正面の方向を向くようにキャラクターの視線をアニメーションで滑らかに変更する、
方法。
【請求項2】
前記第1トリガーは、前記キャラクターの表示位置と対象者との距離dが所定値R1より大きい状態から、所定値R1より小さい状態に変化したことをさらに条件として含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2トリガーは、少なくとも前記所定時間経過後の前記距離dが所定値R1より小さい所定値R2より小さくなることを条件として含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1トリガーの作動から、前記距離dが所定値R1より小さい所定値R2より小さくなるまでの時間の経過を、前記第1トリガーによるキャラクターの表示が所定時間継続したこととみなす、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2トリガーの作動後、対象者の極座標の偏角pが変化しても、キャラクターの視線とキャラクターの顔の方向とを画面の正面の方向に固定し続ける、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2トリガーの作動後、キャラクターの視線を画面の正面の方向に固定しながら、キャラクターの顔の方向を対象者の極座標の偏角pの変化に追随するようにアニメーションで滑らかに動かす、
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1トリガーによってキャラクターを表示する際、それ以前に画面の正面の方向に向いていたキャラクターの視線が画面の正面の方向から外れるようにキャラクターの視線をアニメーションで滑らかに動かす、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1トリガーによって前記キャラクターの視線が画面の正面の方向から外れるよう前記キャラクターを表示する間、キャラクターの視線をアニメーションで動かし続ける、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャラクターの視線を動かし続ける際、キャラクターの視線が画面の正面の方向を通過するものの、画面の正面の方向を凝視しないようにする、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定時間経過後に前記対象者の極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲にあっても、前記第2トリガーによる視線の変更を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記所定時間経過後に前記対象者が前記表示位置の正面に存在しても、前記第2トリガーによる視線の変更を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2トリガーによりキャラクターの視線が変化しても、キャラクターの顔の方向は変化しない、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記極座標は画面の表示方向と平行な面を平面視したときの円座標である、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記画面は自発光型のディスプレイの表示領域にハーフミラーが貼り付けられることで構成されており、
前記ディスプレイの表示領域は、前記対象者から前記ハーフミラー越しに観察される、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
センサーから検知信号を受けるとともにディスプレイに対して映像信号を送るコントローラーであって、
前記ディスプレイは平面的な画面を有するとともに、前記映像信号を受けてこれを元にキャラクターを前記画面の中の所定の表示位置に表示するものであり、
前記センサーは、前記画面の前側に対象者の存在することを検知信号として前記コントローラーに送るものであり、ここで、前記センサーは、前記キャラクターの表示位置を原点とする前記対象者の極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲にある場合において、対象者の存在を検知可能なものであり、
前記コントローラーは、
前記検知信号を受けたときに、前記画面の正面の方向から視線を外しているキャラクターを継続的に前記表示位置に表示する映像信号を送り、さらに
視線を外しているキャラクターの表示が所定時間継続した後に、前記キャラクターが画面の正面の方向に向かって視線を滑らかに移動させるアニメーションを前記表示位置に表示する映像信号を送る、
コントローラー。
【請求項16】
前記対象者が前記表示位置の正面に存在していても、これを前記検知信号として前記コントローラーに送るものであり、
前記コントローラーは、前記対象者が前記表示位置の正面に存在していても、前記検知信号を受けたときに、前記視線を外しているキャラクターを表示する映像信号を送る、
請求項15に記載のコントローラー。
【請求項17】
コンピューターを請求項15に記載のコントローラーとして動作させるためのプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のプログラムを、ネットワークを介して前記コンピューターへ送信するとともに前記コンピューターにインストールすることで前記コンピューターを前記コントローラーとして動作する状態とする、
方法
【請求項19】
請求項17に記載のプログラムを記憶しているサーバーであって、ネットワークを介して当該プログラムを前記コンピューターへ送信するサーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には平面的な画面の中にキャラクターを表示する方法が開示されている。この表示方法ではキャラクターが横を向いても、キャラクターの視線を常に正面に向けるようにする。その結果、横を向いているキャラクターにも、ユーザーに語りかけるような画面を表示することができるようになる(段落[0033])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-050791号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】ACM Transactions on Interactive Intelligent Systems, Vol. 1, No. 2, Article 11, Pub. date: January 2012., Taming Mona Lisa: Communicating Gaze Faithfully in 2D and 3D Facial Projections, SAMER AL MOUBAYED, JENS EDLUND, and JONAS BESKOW, KTH Royal Institute of Technology
【文献】三澤 加奈,外 2 名,“LiveMask : 立体顔形状ディスプレイを用いたテレプレゼンスシステムにおけるコミュニケーションの評価”,[online],2012 年 3 月 15 日,情報処理学会 インタラクション 2012(IPSJ Interaction 2012),[平成 30 年 11 月 8 日検索],インターネット <URL:http://www.interaction-ipsj.org/archives/paper2012/data/Interaction2012/oral/data/pdf/12INT006.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法ではコンピューターが画面内のキャラクターの視線を常に正面に向ける。このため、ユーザーはキャラクターがユーザーに語りかけるような感覚を得ることができる。しかしながらこの方法によっては、ユーザーが、画面内のキャラクターから自分自身が注視されているという感覚を満足に得られない。あるいはユーザーが、自分自身が画面内のキャラクターとアイコンタクトをとっているという感覚を満足に得られない。対象人物が実在の他の人物から視線を受ける場合と比較するとこの傾向は顕著である。
【0006】
上述の現象は対象人物の主観や思い込みの範囲を超えて、心理学的な自然法則として一般化されるものである。本発明の課題は、平面的な画面を用いたキャラクター表示手段であって、キャラクターに注視された感覚を、キャラクターを観察する者に惹起するのに適したものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 平面的な画面の手前側に存在する対象者に向けて、前記画面の中にキャラクターを表示する方法であって、
キャラクターの表示位置を原点とする前記対象者の極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲にあることを作動条件として含む第1トリガーによって、キャラクターの視線が画面の正面の方向から継続的に外れるようにキャラクターを表示し、
少なくとも前記第1トリガーによるキャラクターの表示が所定時間継続したことを作動条件として含む第2トリガーによって、同一のキャラクターの視線が画面の正面の方向を向くようにキャラクターの視線をアニメーションで滑らかに変更する、
方法。
[2] 前記第1トリガーは、前記キャラクターの表示位置と対象者との距離dが所定値R1より大きい状態から、所定値R1より小さい状態に変化したことをさらに条件として含む、
[1]に記載の方法。
[3] 前記第2トリガーは、少なくとも前記所定時間経過後の前記距離dが所定値R1より小さい所定値R2より小さくなることを条件として含む、
[2]に記載の方法。
[4] 前記第1トリガーの作動から、前記距離dが所定値R1より小さい所定値R2より小さくなるまでの時間の経過を、前記第1トリガーによるキャラクターの表示が所定時間継続したこととみなす、
[3]に記載の方法。
[5] 前記第2トリガーの作動後、対象者の極座標の偏角pが変化しても、キャラクターの視線とキャラクターの顔の方向とを画面の正面の方向に固定し続ける、
[3]に記載の方法。
[6] 前記第2トリガーの作動後、キャラクターの視線を画面の正面の方向に固定しながら、キャラクターの顔の方向を対象者の極座標の偏角pの変化に追随するようにアニメーションで滑らかに動かす、
[3]に記載の方法。
[7] 前記第1トリガーによってキャラクターを表示する際、それ以前に画面の正面の方向に向いていたキャラクターの視線が画面の正面の方向から外れるようにキャラクターの視線をアニメーションで滑らかに動かす、
[1]に記載の方法。
[8] 前記第1トリガーによって前記キャラクターの視線が画面の正面の方向から外れるよう前記キャラクターを表示する間、キャラクターの視線をアニメーションで動かし続ける、
[7]に記載の方法。
[9] 前記キャラクターの視線を動かし続ける際、キャラクターの視線が画面の正面の方向を通過するものの、画面の正面の方向を凝視しないようにする、
[8]に記載の方法。
[10] 前記所定時間経過後に前記対象者の極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲にあっても、前記第2トリガーによる視線の変更を行う、
[1]に記載の方法。
[11] 前記所定時間経過後に前記対象者が前記表示位置の正面に存在しても、前記第2トリガーによる視線の変更を行う、
[1]に記載の方法。
[12] 前記第2トリガーによりキャラクターの視線が変化しても、キャラクターの顔の方向は変化しない、
[1]に記載の方法。
[13] 前記極座標は画面の表示方向と平行な面を平面視したときの円座標である、
[1]に記載の方法。
[14] 前記画面は自発光型のディスプレイの表示領域にハーフミラーが貼り付けられることで構成されており、
前記ディスプレイの表示領域は、前記対象者から前記ハーフミラー越しに観察される、
[1]に記載の方法。
[15] センサーから検知信号を受けるとともにディスプレイに対して映像信号を送るコントローラーであって、
前記ディスプレイは平面的な画面を有するとともに、前記映像信号を受けてこれを元にキャラクターを前記画面の中の所定の表示位置に表示するものであり、
前記センサーは、前記画面の前側に対象者の存在することを検知信号として前記コントローラーに送るものであり、ここで、前記センサーは、前記キャラクターの表示位置を原点とする前記対象者の極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲にある場合において、対象者の存在を検知可能なものであり、
前記コントローラーは、
前記検知信号を受けたときに、前記画面の正面の方向から視線を外しているキャラクターを継続的に前記表示位置に表示する映像信号を送り、さらに
視線を外しているキャラクターの表示が所定時間継続した後に、同一のキャラクターが画面の正面の方向に向かって視線を滑らかに移動させるアニメーションを前記表示位置に表示する映像信号を送る、
コントローラー。
[16] 前記対象者が前記表示位置の正面に存在していても、これを前記検知信号として前記コントローラーに送るものであり、
前記コントローラーは、前記対象者が前記表示位置の正面に存在していても、前記検知信号を受けたときに、前記視線を外しているキャラクターを表示する映像信号を送る、
[15]に記載のコントローラー。
[17] コンピューターを[15]に記載のコントローラーとして動作させるためのプログラム。
[18] [17]に記載のプログラムを、ネットワークを介して前記コンピューターへ送信するとともに前記コンピューターにインストールすること。
[19] [17]に記載のプログラムを記憶しているサーバーであって、ネットワークを介して当該プログラムを前記コンピューターへ送信するサーバー。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、平面的な画面を用いたキャラクター表示手段であって、キャラクターに注視された感覚をキャラクターを観察する者に惹起するのに適したものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】観察者とキャラクターの平面図1
図2】観察者とキャラクターの平面図2
図3】表示方法の流れ図。
図4】キャラクターの画像1。
図5】キャラクターの画像2。
図6】対象者の位置とキャラクターの視線との遷移図。
図7】キャラクターの視線の遷移図。
図8】対象者の位置の遷移図。
図9】対象者の移動図1
図10】対象者の移動図2
図11】コントローラーと他の装置の接続図。
図12】画面の観察図。
図13】対象者とキャラクターの平面図。
図14】コントローラーの論理構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<モナリザ効果>
【0011】
本実施形態はモナリザ効果の生じる条件下において利用される。モナリザ効果の一般的な概念は非特許文献1に説明されている。図1にはキャラクターCh、観察者Ob1及びOb2を平面視したときの位置関係が示されている。キャラクターChは本来、画面Scの中に平面的に表示されるものである。図中でのキャラクターChの表現は仮想的なものである。キャラクターChは画面Scの正面の方向に視線を向けている。観察者Ob1はその視線の先にいる。観察者Ob2も画面Scの正面側にいる。しかしながら、観察者Ob2はキャラクターChから見て左側にずれた場所にいる。
【0012】
図1において観察者Ob1には、自分自身がキャラクターChに注視されているという感覚を生じる。キャラクターChの視線の先に観察者Ob1がいることから、これは自然に理解されるところである。仮にキャラクターChが実在の人物であっても観察者Ob1にはキャラクターChに注視されているという感覚を生じる。
【0013】
一方、図1において観察者Ob2はキャラクターChの視線の先にいない。しかしながら観察者Ob2にも自分自身がキャラクターChに注視されているという感覚を生じる。これがいわゆるモナリザ効果である。仮にキャラクターChが実在の人物であったならば観察者Ob2にはキャラクターChに注視されているという感覚を生じえない。視線が観察者Ob2に向かう方向と全くずれているからである。すなわちモナリザ効果は平面的な画面上に表示されたキャラクターに特有の現象である。
【0014】
図1において、観察者Ob1にモナリザ効果が潜在的に生じているのかどうかは分からない。本明細書では、観察者Ob1がモナリザ効果の生じてない範囲にいるという前提で実施形態を説明する。また観察者Ob2がモナリザ効果の生じる範囲にいるという前提で実施形態を説明する。これらはいずれも技術的な説明の便宜である。本明細書の記載は局面によっては心理学的な自然法則を正確に表していない可能性がある。
【0015】
図2においても、キャラクターChと観察者Ob1及びOb2を平面視したときの位置関係が示されている。キャラクターChはキャラクターChから見て左側にずれた方向に視線を向けている。このため観察者Ob1には、キャラクターChが視線を自分自身から外しているという感覚を生じる。あるいは観察者Ob1には、観察者Ob2がキャラクターChに注視されているという感覚を生じる。観察者Ob1からはキャラクターChの視線の先に観察者Ob2がいるように見えることから、これは自然に理解されるところである。
【0016】
一方、図2において観察者Ob2にもキャラクターChが視線を自分自身から外しているという感覚を生じる。観察者Ob2からはキャラクターChの視線はキャラクターChから見て自分自身よりももっと左にずれたところに向いているように感じる。これはモナリザ効果の一つの側面である。
【0017】
<キャラクター表示方法>
【0018】
図3の流れ図は本実施形態のキャラクター表示方法を示す。図4及び5は対象者TgとキャラクターChの平面図である。この表示方法では平面的な画面Scの中にキャラクターChを表示する。この時、画面Scの手前側に存在する対象者Tgに向かってキャラクターChを表示する。以下、これらの図を適時に参照しながら説明する。対象者TgはキャラクターChを観察していてもよく、していなくてもよい。したがって本実施形態では潜在的な観察者である人物を対象者Tgと表現する。本実施形態の方法の一態様は、対象者TgがキャラクターChを観察しているという仮定の下に自動化された表示を行うものである。
【0019】
図4及び5に示すように、キャラクターChの瞳を対象者Tgに向けながら、キャラクターChを画面Scの中に表示する。キャラクターChの例として少女の胸像のイラストが示されている。
【0020】
図4及び5において、キャラクターChの瞳の描写を変更することで、その視線の向きを様々に表示できる。瞳の描写には少なくとも白目と虹彩(iris)の描写が必要と考えられる。なお医学的に瞳とは虹彩に取り囲まれた瞳孔のこと言う。しかしながら本実施形態は描写の仕方を論じるものであることから、特に白目に囲まれた虹彩を「瞳」と呼ぶものとする。
【0021】
図3に示すようにステップS31にて、第1トリガーの作動条件が満たされたかどうかを判定する。第1トリガーが作動するとステップS32にてキャラクターの視線を正面から外してキャラクターを表示する。第1トリガーは少なくとも対象者Tgにモナリザ効果の生じることを作動条件としている。第1トリガーはその他の付加的な作動条件を有していてもよい。
【0022】
図4に示すように、モナリザ効果を生じるか否かは、キャラクターChの表示位置を原点とする、水平方向に広がる極座標系(円座標系)内で考えることができる。この極座標系は画面Scの表示方向と平行な面で平面視したときの、キャラクターChの表示位置を中心とする極座標系である。
【0023】
図4において、画面Scの後方に設定されているキャラクターChの仮想的な存在位置の中心を極座標系の原点としている。極座標系の原点は画面Sc上に表示されるキャラクターChの正中線としてもよい。
【0024】
図4に示すように、画面Scの真正面の方向を0度とする。対象者Tgの方向を偏角pとする。p=0であれば対象者TgはキャラクターChの表示位置の正面に位置することになる。図中では対象者Tgは原点よりも右側に位置している。対象者Tgが原点よりも左側に位置していてもよい。図中の左側をp<0のエリアと考えることもできる。しかしながら本明細書ではpの正負は考慮しない。pは絶対値として考慮される。
【0025】
さらに図4に示すように対象者Tgと原点との間の距離をdとする。距離dは極座標系の動径に当たる。キャラクターChと画面Scと対象者Tgとの間の位置関係は偏角p及び距離dによって特定できる。偏角pが所定の角度範囲にあれば対象者Tgにとってのモナリザ効果を生じる。
【0026】
図4に示すように、所定の角度範囲をMn1<p<Mn2とする。角度Mn1は0度より大きい。角度Mn1は実験的に取得してもよい。本実施形態において角度Mn1は10度である(非特許文献2)。p<Mn1においては、キャラクターChからの視線を感じるか否かにモナリザ効果の影響はない。角度Mn2は90度まで拡大できる。
【0027】
条件が満たされて第1トリガーが作動すると、図4に示すようにキャラクターChの視線が画面Scの正面の方向から外れるようにキャラクターChが表示される。キャラクターChの視線が外れた状態は継続的である。
【0028】
図4において、キャラクターChの視線の向きは瞳の描画によって変更できる。キャラクターChはイラストであるから、その性質上キャラクターChの視線の向きというのは観察者の主観に依存するものである。そこで例えば図2に示すように正面の観察者Ob1にキャラクターChを観察させて、予め描かれたキャラクターの視線の向きを評価してもよい。評価は統計的に行ってもよい。
【0029】
図4においてキャラクターの視線の向きを偏角gで表している。g=0のとき、視線は画面Scの正面の方向に対して平行である。キャラクターChの視線が画面Scの正面の方向から外れたこと(Averting)をg>Avで表す。角度Avは0より大きい。角度Avは実験的に取得してもよい。偏角gが角度Av以上であればキャラクターChの視線が外れたといえる。図中では視線の偏角gは対象者Tgの偏角pより小さい。偏角gは偏角pより大きくてもよい。偏角gは偏角pと一致してもよい。
【0030】
次に図3に示すように、ステップS33において第2トリガーの作動条件が満たされたかどうかを判定する。判定のために時間の経過のモニタリングをする。第2トリガーが作動するとステップS34にてキャラクターの視線は正面に動く。第2トリガーは第1トリガーによるキャラクターの表示(ステップS32)が所定時間継続したことを作動条件としている。ここで所定時間は長くとも数秒であることが好ましい。所定時間を設定する上では生身の人間同士の自然なコミュニケーションに要する時間を考慮する。第2トリガーはその他の付加的な作動条件を有していてもよい。後述するように第2トリガーの判定は時間の経過のモニタリングを伴わなくともよい。
【0031】
条件が満たされて第2トリガーが作動すると、図5に示すようにキャラクターChの視線が動く。図5に示すキャラクターChは図4に示したキャラクターChと同一のキャラクターである。同一のキャラクターにて視線外しと視線の正面方向への変更を行う。
【0032】
視線が動いた結果、図5に示すようにキャラクターChの視線が画面Scの正面の方向に向くようにキャラクターChが表示される。視線を動かす際にはアニメーションで滑らかに動かす。図4から図5への変化では、視線がキャラクターChにとっての左斜め方向から正面の方向に遷移する。
【0033】
図4に示すように第2トリガーによるキャラクターChの視線の変化はキャラクターChの顔面の方向の変化に追随しない。一態様において第2トリガーによりキャラクターChの視線が変化しても、キャラクターChの顔面の方向は変化しない。図中では視線が遷移する間、キャラクターChの顔面は画面Scの正面方向を向いたままである。他の態様においてキャラクターChの顔面は正面以外の方向を向いていてもよい。
【0034】
図5において、キャラクターChの視線が正面を向いた状態は継続的である。キャラクターChは正面を凝視する。図中ではOb2はモナリザ効果の生ずる範囲(Mn1<p<Mn2)に位置している。モナリザ効果により、キャラクターChが自分自身に視線を向けているように対象者Tgは感じる。対象者TgがキャラクターChを注視している場合、対象者TgはキャラクターChから自分自身が注視されたと強く感じる。さらに対象者TgはキャラクターChと目が合ったと感じる。
【0035】
<使用するキャラクターの特徴>
【0036】
図4及び5において、キャラクターChは瞬きしてもよい。図4及び5において、キャラクターChは表情や感情を表してもよい。例えば第1トリガーの作動時(図4)に表情を表さず、第2トリガーの作動時(図5)において視線を正面に向けながら微笑みを浮かべてもよい。表示方法を娯楽の提供に利用する場合は観察者を驚かしたり、睨みつけたりする表情を表すことも有効である。
【0037】
図4及び5において、虹彩は白目よりも濃い色で表されてもよい。濃い色で塗りつぶした虹彩に、ハイライトを付け加える表現手法は本実施形態の一態様に含まれる。白目は純白に限定されない。白目は目の中の虹彩の周囲の領域と考えてよい。濃淡を反転させる表現手法においては虹彩を白目より明るくする場合がある。濃淡を反転させる表現手法としては影絵調などがある。
【0038】
図4及び5において、キャラクターChは少なくとも瞳を有する顔面を有する。キャラクターChは顔面像でもよく、胸像でもよく、上半身像でもよく、全身像でもよい。キャラクターChは座像でもよく、立像でもよい。キャラクターChの顔面が正面側を向いていれば、そのポーズは制限されない。図中ではキャラクターChは正面を向いている。表現として視線を画面Scの正面側に向けられる限り、顔面の向きに制限はない。
【0039】
図4及び5において、キャラクターChは裸眼である。キャラクターChは眼鏡やゴーグルをかけていてもよい。眼鏡の種類は制限されない。ただし外部からは視線の向きが全く分からなくなることから、濃いサングラスの着用は適当ではない。濃いゴーグルも適当ではない。
【0040】
図4及び5において、キャラクターChは瞳の一方は髪の毛や眼帯によって隠されていてもよい。またキャラクターChが物陰から正面を覗いているような表現も有効である。
【0041】
図4及び5において、瞳の向きを変える場合は双方の目において、瞳の向きが異なるものとなっていてもよい。表現技法に合わせて表現することが可能である。このような表現方法は顔面の向きが正面を向いていない場合などに有用と考えられる。対象者TgがキャラクターChの視線の向きを違和感なく特定できればよいものとする。これとは別にキャラクターChが斜視を有することを表現することも本実施形態の一態様に含まれる。
【0042】
図4及び5においてキャラクターChは人物の実物映像でもよい。キャラクターChはよりデフォルメされたイラストでもよい。キャラクターChは3DCGモデリングで作られたものでもよい。キャラクターChはヒト及びヒト以外の動物をモチーフにしてもよい。キャラクターChはロボットや空想上の生き物でもよい。なおキャラクターChは対象者から見てその視線の向きが分かる程度に擬人化したものであることが好ましい。例えば昆虫は複眼で周囲を見るから、そもそも視線を有しない。キャラクターChが昆虫のイラストがであれば、イラスト中の瞳をコミカルな瞳に置き換えることは有効である。
【0043】
<高さ方向の考慮>
【0044】
図4及び5に示すところのキャラクターChの表示位置を中心とする極座標系は、画面Scの表示方向と平行な面を平面視したときの円座標である。一態様においてモナリザ効果に関して高さ方向を考慮することもできる。第1トリガーに基づきキャラクターChが視線を外す場合には高さ方向に視線を外してもよい。視線の方向は円柱座標系又は球座標系で定義してもよい。さらに第2トリガーに基づきキャラクターChが視線を正面に向ける場合は、視線を水平に向けることが好ましい。例えば対象者が背の低い子供であっても第2トリガーの作動時にキャラクターChの視線を下向きにしなくてもよい。
【0045】
<第1トリガーの作動前の視線>
【0046】
一態様において、第1トリガーの作動前の状態を考慮してもよい。図6にはキャラクターChの視線と観察者の位置との遷移が示されている。まずキャラクターChの視線の変化に的を絞って説明する。図の上段の元の状態(Original)においてキャラクターChの視線は画面Scの正面の方向を向いている。
【0047】
次に図6の中段に示すように第1トリガーによってキャラクターChの視線が画面Scの正面から外れている状態を表示する。この際、キャラクターChの視線をアニメーションで滑らかに動かす。一態様において、この間、キャラクターChの顔面は画面Scの正面方向を向いたままでもある。他の態様においてキャラクターChの顔面は正面以外の方向を向いていてもよい。
【0048】
図6の中段では、視線がキャラクターChにとっての元の状態にあたる正面の方向から左斜めの方向に遷移する。対象者TgがキャラクターChを注視している場合でも、対象者TgはキャラクターChから自分自身が注視されていないと感じる。しかしながら対象者Tgは、キャラクターChがキャラクターにとっての前方にある何かを見ているものと認識する。対象者Tgにとっては対象者Tgよりも右側の方向である。
【0049】
さらに図6の下段に示すように、第2トリガーによってキャラクターChの視線が画面Scの正面の方向を向いている状態を表示する。この動作は先に述べた通りである。キャラクターChの視線をアニメーションで滑らかに動かす。一態様において、この間、キャラクターChの顔面は画面Scの正面方向を向いたままである。他の態様においてキャラクターChの顔面は正面以外の方向を向いていてもよい。
【0050】
図6の下段では視線がキャラクターChにとっての左斜めの方向から正面の方向に遷移する。対象者TgがキャラクターChを注視している場合、対象者TgはキャラクターChから自分自身が注視されたと強く感じる。さらに対象者TgはキャラクターChと目が合ったと感じる。
【0051】
他の態様では第1トリガー作動前に、キャラクターChの視線は画面Scの正面以外を向いていてもよい。すなわち一態様において、開始状態ではキャラクターChの視線は画面Scの正面か正面以外かどちらを向いていてもよい。しかしながら第1トリガーによって視線が正面以外を向く。さらに第2トリガーによって視線が正面を向く。
【0052】
<観察者の接近>
【0053】
図6においては、さらに観察者の位置が変化している。図に示す例では対象者Tgが画面Scに向かって近づいてきている。具体的にはキャラクターChに向かって近づいてきている。図の上段に示す元の状態(Original)において、距離dは所定値R1よりも大きい。
【0054】
図6の中段に示すように対象者TgがキャラクターChに向かって近づく。図において、キャラクターChの表示位置と対象者Tgとの距離dは所定値R1よりも小さい。一態様において、距離dが所定値R1より小さいことが、第1トリガーの付加的な作動条件となっていてもよい。他の態様では、元の状態において所定値R1より大きかった距離dが、所定値R1より小さくなったことが第1トリガーの付加的な作動条件となっていてもよい。言い換えれば対象者Tgが近づいてきたことを探知することで第1トリガーを作動させてもよい。
【0055】
図6の下段に示すように対象者TgがキャラクターChに向かってさらに近づく。図において、キャラクターChの表示位置と対象者Tgとの距離dは第2トリガー作動に至る所定の表示時間経過後において所定値R2よりも小さい。なお所定値R2は所定値R1より小さい。
【0056】
図6の下段に示すように一態様において、距離dが所定値R2より小さいことが、第2トリガーの付加的な作動条件となっていてもよい。他の態様では、元の状態において所定値R2より大きかった距離dが、所定値R2より小さくなったことが第2トリガーの付加的な作動条件となっていてもよい。一態様において所定の表示時間経過後、さらに対象者Tgがより近づいてきたことを探知することで第2トリガーを作動させる。
【0057】
対象者Tgの接近の考慮には様々な態様がある。例えば図6において、距離dがR1からR2に遷移する間の時間を第2トリガーの作動条件にあたる所定の表示時間としてもよい。この場合、第1トリガーの作動から第2トリガーの作動までの時間経過のモニタリングは距離dのモニタリングに含まれる。すなわち時間経過に関する直接的な作動条件は用いず、少なくとも第1トリガー作動後のキャラクターChの表示が継続している間に、距離dがR2を下回ったことが第2トリガー作動条件となっていてもよい。言い換えれば距離dが変化したことをもって時間が経過したものとみなして第2トリガーを作動してもよい。例えば距離dが所定の表示時間経過前に所定値R2より小さくなったら、実際に所定の表示時間が経過する前に所定の表示時間が経過したものとしてもよい。他の態様において、距離dが所定の表示時間経過前に所定値R2より小さくなっても、実際に所定の表示時間が経過するまでは第2トリガーを作動しないものとしてもよい。他の態様において、距離dが第1トリガーの作動の時点において所定値R2よりも小さいことも考えられる。この場合は距離dに関係なく所定の表示時間経過を第2トリガーの作動条件とすればよい。他の態様において観察者の接近は一切考慮しなくともよい。
【0058】
<第1トリガーにより視線の外すときの表現>
【0059】
一態様において、第1トリガーの作動後の状態を考慮してもよい。図7にはキャラクターChの視線の遷移が示されている。図7の上段に示すように第1トリガーによって、視線を外しているキャラクターChを表示する。ここで第2トリガーが作動するまでは一定の時間経過を伴う。この間(Interval)にキャラクターChの視線を固定しなくてもよい。
【0060】
図7の中段では視線がキャラクターChにとっての左斜めの方向から右斜めの正面の方向に遷移する。視線を外しているキャラクターChを一旦表示した後も、キャラクターChの視線を動かし続けてもよい。この際、キャラクターChの視線はアニメーションで滑らかに動かす。所定の時間経過後、図7の下段に示すように、第2トリガーによってキャラクターChの視線が正面に向く。この動作は先に述べた通りである。
【0061】
図7の中段においてキャラクターChの視線を動かし続ける際、キャラクターChの視線が画面Scの正面の方向を通過してもよい。ただし視線が、画面の正面の方向を凝視しないようにする。キャラクターChの視線が画面Scの正面の方向を一切通過しないようにしてもよい。
【0062】
以上の通り視線を制御することで第2トリガーの作動までの間、モナリザ効果の生じない状態を維持することができる。
【0063】
<モナリザ効果の生じる位置と第2トリガー>
【0064】
図4から図5にかけて、対象者Tgは同じ場所に留まっている。この間においてモナリザ効果は常に対象者Tgに影響を与える。視線を対象者Tgのいる方向から外すことで、対象者Tgに対してキャラクターChに注視されているという感覚を生じる。これはモナリザ効果によるものである。
【0065】
図5に示される態様は、所定の表示時間経過後に対象者Tgの極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲にあっても、第2トリガーによる視線の変更を行うという点で特徴を有する。対象者Tgがモナリザ効果の生じている位置にいることを第2トリガーの付加的な作動条件としてもよい。対象者Tgが第1トリガーの作動時と同じ場所に留まっていることを第2トリガーの付加的な作動条件としてもよい。
【0066】
図8に示すように、他の態様において対象者Tgの位置は遷移してもよい。キャラクターChの視線が外れている間に、対象者Tgはモナリザ効果の影響がない範囲に移動してもよい。一例として図の中段では対象者TgがキャラクターChの正面に移動している。
【0067】
図8の下段に示すように所定の表示時間経過後、第2トリガーによってキャラクターChの視線が画面Scの正面の方向を向いている状態を表示する。対象者TgがキャラクターChの表示位置の正面に存在しても、第2トリガーによる視線の変更を行う。第2トリガーの作動条件の中に対象者Tgがモナリザ効果の生じている位置にいることが含まれていなくともよい。対象者Tgがモナリザ効果の生じている位置にいないことを第2トリガーの付加的な作動条件としてもよい。
【0068】
<移動者に対する表示>
【0069】
図9及び図10には画面Scの前を横切るように移動する対象者の位置P0~P5が示されている。表示方法の設計上の便宜のために、極座標系の原点(Origin)を画面Sc上に表示されるキャラクターChの正中線にとる。位置が変化するにつれて偏角pが変化する。図中の偏角pは位置P4における偏角を表す。位置P3がキャラクターChの正面に当たるものとする。
【0070】
図9及び図10において、位置P0で第1トリガーによる視線外しを行い、さらに位置P1で第2トリガーによる視線変更を行う。さらに対象者がキャラクターChの前を位置P2、P3、P4及びP5の順で通り過ぎるものとする。
【0071】
図9では画面Sc上に、視線の方向も顔面の方向も正面向きに固定したキャラクターChの像を表示している。この状態は第2トリガーの作動後のものである。移動者がキャラクターChを観察していれば、移動者には自分がキャラクターChに注視されているという感覚が生じる。この感覚は移動者がP1~P5のいずれの位置においても生じる。すなわち移動者の立ち位置によらないで生じる感覚である。
【0072】
図9において、対象者から見てキャラクターChの顔面は動いていないように感じる。またキャラクターChの顔面は事実としてその向きを変えていない。このためキャラクターChが対象者を視線で追跡しているという感覚は対象者に生じにくい。モナリザ効果により注視されているという感覚が生じる。しかしながら、さらに視線で追跡されているという感覚までも有効に生じるわけではない。
【0073】
図10に示すようにキャラクターChの顔面の向きが変化するように、キャラクターChを画面Scに表示する。キャラクターChの視線の方向は正面向きに固定しつつ、その顔面の方向を移動者に追随させる。キャラクターChの顔面の方向は移動者の位置P1~P5に連動する。対象者の極座標の偏角pの変化に追随するようにキャラクターChの顔面の方向をアニメーションで滑らかに変化させる。
【0074】
図10ではキャラクターChが視線で移動者を追跡しているように、移動者に感じさせることができる。あるいは図9で示した方法よりも強く、そのような感覚を移動者に感じさせることができる。
【実施例
【0075】
<コントローラーと他の装置の接続>
【0076】
以下、本実施形態の表示方法を実施するための装置を中心に説明する。当該装置は例示であり、上記表示方法を実行するための唯一の機械的手段ではない。図11にはコントローラー40とこれらに接続する各装置が示されている。コントローラー40には表示装置41が接続している。この接続はネットワークを介していてもよく、適切な映像信号配線を介していてもよい。この接続は有線でも無線でもよい。
【0077】
図11に示すように表示装置41はディスプレイ42及びハーフミラー43を備える。ディスプレイ42は例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。ディスプレイ42は凹凸がなく平坦である。ここで視認できないほど微細な凹凸は考慮しない。平坦とは表示像の基本的な造形に影響を与える程度に大きな凹凸を有しないことである。ハーフミラー43はディスプレイ42の表示領域44上に設置されている。ハーフミラー43はディスプレイ42の表示領域44上に貼り付けられていてもよい。
【0078】
図11に示す表示領域44は対象者45a及び45bに向かって映像を提示する。映像はハーフミラー43越しに表示される。便宜的にハーフミラー43の前側、図中では左側、の表面を画面Scとする。ハーフミラー43は表示領域44よりも一回り大きい。
【0079】
図11において、コントローラー40にはセンサーに当たるカメラ39が接続している。この接続はネットワークを介していてもよく、適切な映像信号配線を介していてもよい。この接続は有線でも無線でもよい。カメラ39はCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)センサーで撮像するものでもよい。カメラ39はその他の光学センサー、例えば赤外線センサーなどで置き換えてもよい。
【0080】
図11において、コントローラー40はカメラ39から検知信号を受ける。さらにコントローラー40はディスプレイ42に映像信号を送る。ディスプレイ42はコントローラー40から映像信号を受ける。ディスプレイ42は映像信号を元にキャラクターChを表示領域44の中の所定の表示位置に表示する。
【0081】
図11においてカメラ39は、対象者45a及び45bの少なくともいずれかを撮影する。カメラ39は画面Scの前側に対象者45a及び45bの少なくともいずれかの存在することを表す情報を、検知信号としてコントローラー40に送る。検知信号はカメラ39の生成したビデオ信号でもよい。
【0082】
図11においてカメラ39は、その撮影範囲内に対象者がいようといまいと、継続的に撮影をし、継続的にビデオ信号を生成し、継続的にビデオ信号をコントローラー40に送ってもよい。カメラ39はコントローラー40から要求されたときに撮影をし、ビデオ信号を生成し、ビデオ信号を送ってもよい。
【0083】
図12は表示装置41の画面Scを示す。表示領域44内にキャラクターChが表示されている。表示領域44に表示されているキャラクターChのまわりの背景は暗黒である。このため、画面Sc上で、ハーフミラー43の働きにより、ディスプレイからの光がハーフミラーを透過することで表示されるキャラクターChの周りに、ハーフミラーの反射による現実の背景が映っている。画面Scには現実の背景とキャラクターChが重畳的に映っている。
【0084】
図12において、画面Scは凹凸がなく平坦である。画面Scに表示されるキャラクターChの顔面付近に特別に凹凸を設けることでキャラクターChの顔面や瞳を立体化する、といった工夫はなされていない。
【0085】
図11に戻る。コントローラー40にはセンサーとしてカメラ39がさらに接続している。カメラ39はハーフミラー43の後ろ側、図中では右側に配置されている。カメラ39は対象者45a及び45bを撮影する。図12に示すように対象者からはカメラ39は視認できない。ハーフミラー43によりカメラ39が視界から遮られているからである。
【0086】
なお図11及び12に示す画面Scを形成するための装置構成は上記に限定されない。画面Scは小さな凹凸を持たない。ただし画面Scは一様にゆるやかに湾曲していてもよい。顔の幅が20cm程度のキャラクターChを表示場合、画面Scの曲率半径は10cmより大きいことが好ましく、画面Scは平面であることが好ましい。画面Scはハーフミラーを備える表示装置に代えて、投影型のスクリーンで形成してもよい。係るスクリーンは光の反射を用いるフロント型スクリーンでもよく、光の透過を用いるリア型スクリーンでもよい。ハーフミラー43は無くともよい。すなわち表示装置41はディスプレイ42のみ備えるものでもよい。ディスプレイ42は例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。
【0087】
図13を用いてカメラの働きを説明する。図は平面視した対象者45a及び45bとキャラクターChとを表している。図にはさらに対象者45cが示されているが、この人物については後述する。キャラクターChは顔面の方向Fcを対象者45aに向けている。キャラクターChは視線の方向Gz1又はGz2を画面Scの正面側に向けている。図中において視線の方向Gz1は、画面Scの正面の方向から外した方向である。図中において視線の方向Gz2は、画面Scの正面の方向である。
【0088】
図13において、カメラ39は、対象者45a及び45bの少なくともいずれかがモナリザ効果を生ずる範囲にある場合において、対象者の存在を検知可能なセンサーである。モナリザ効果を生ずる範囲とは、キャラクターChの表示位置を原点とする、対象者45a及び45bの少なくともいずれかの極座標の偏角pがモナリザ効果を生ずる角度範囲に位置することをいう。かかる角度範囲については図4及び5を用いて上述した通りである。図中の偏角pは対象者45aの極座標の偏角を表している。
【0089】
<システムと第1トリガー>
【0090】
図14はコントローラー40を構成するシステムの構造を記述したものである。このシステムはコンピューターと、コンピューターをコントローラーとして動作させるためのプログラムとで構成してもよい。プログラムは映像生成ソフトウェアの一種である。プログラムは一つのプログラムで構成されていなくともよい。ネットワークを介してプログラムの一部又は全部を記憶しているサーバーから当該プログラムの一部又は全部をコンピューターに送信してもよい。例えばキャラクターさらにコンピューターにプログラムをインストールしてもよい。プログラムは不揮発性のメモリやディスクメディアに収納してもよい。コンピューターは一台で構成されていなくてもよい。コントローラーとして作動するシステムの一部をクラウドネットワーク上に配置してもよい。
【0091】
コントローラー40の映像生成ソフトウェアはコンポーネント51~54を備える。コンポーネント51~54は一態様において各々ソフトウェアコンポーネントである。コントローラー40と外部との信号のやり取りにはこれに適した信号変換器といったハードウェアが必要になる場合もあるが、図中では省略されている。
【0092】
図14において第1トリガーに係る処理は以下のとおりである。コントローラー40は、カメラ39から受けた検知信号を変換する。検知信号を変換するのはコンポーネント51である。コンポーネント51は変換された検知信号に基づき対象者の位置を特定するための情報を生成する。コンポーネント51は対象者の位置を収納する。対象者は検出されない場合もある。2名以上の対象者が同時に検出されることもある。コンポーネント51はモーションキャプチャ―機能を有していてもよい。図13の例に倣えばコンポーネント51は対象者45aの偏角pを特定する情報を生成する。
【0093】
図14においてコントローラー40は背景情報を生成する。背景情報を生成するのはコンポーネント52である。コンポーネント52は仮想背景物体とその位置を予め収納している。コンポーネント52は不図示のネットワークを介して仮想背景物体とその位置を予め取得してもよい。図13の例に倣えば仮想背景物体B01~B09とそれらの位置を予め収納している。仮想背景物体の位置とはいわばキャラクターの視線の向きと顔面の向きとの偏角の代表的な値を提供するものである。仮想背景物体B05の位置はいわば画面Scの正面の方向を提供するものである。
【0094】
図14においてコントローラー40は注視対象を選択する。注視対象を選択するのはコンポーネント53である。コンポーネント53はコンポーネント51の対象者の位置を参照する。コンポーネント53はコンポーネント52の仮想背景物体の位置を参照する。図13の例に倣えばコンポーネント53は仮想背景物体B01~B09の位置と対象者45aの位置とを参照する。コンポーネント53はさらに対象者45bの位置を参照してもよい。
【0095】
図14においてコンポーネント53は対象者45aの位置がモナリザ効果を生ずるか否かを判定する。当該位置がモナリザ効果を生ずるものであれば、次にコンポーネント53は仮想背景物体の位置のうち、正面方向ではないものを注視対象として選択する。コンポーネント53は選択した注視対象を収納する。図13の例に倣えばコンポーネント53は仮想背景物体B05以外の仮想背景物体を注視対象として選択する。図中では仮想背景物体B07が注視対象として選択されている。コンポーネント53は仮想背景物体B07に代えて対象者45bの位置を注視対象として選択してもよい。コンポーネント53はさらに第1トリガーの作動の記録を時刻の記録ととともに収納してもよい。
【0096】
図14においてコントローラー40は顔向け対象を選択する。顔向け対象を選択するのはコンポーネント53である。図13の例に倣えば対象者45aの位置を顔向け対象としてもよく、仮想背景物体B01~B09を顔向け対象としてもよい。顔向け対象は注視対象と一致してなくてもよい。コンポーネント53は選択した顔向け対象を収納する。
【0097】
図14においてコントローラー40は視線の方向を設定する。視線の方向を設定するのはコンポーネント54である。コンポーネント54はコンポーネント53によって選択された注視対象を参照する。コンポーネント54は設定した視線の方向を収納する。図13の例に倣えば視線の方向Gz1を収納する。
【0098】
図14においてコントローラー40は顔面の方向を設定する。顔面の方向を設定するのはコンポーネント54である。コンポーネント54はコンポーネント53によって選択された顔向け対象を参照する。コンポーネント54は設定した顔面の方向を収納する。図13の例に倣えば顔面の方向Fcを収納する。
【0099】
図14においてコンポーネント55はコンポーネント54の視線の方向と顔面の方向とを参照する。コンポーネント55はキャラクターのCGモデルを収納している。コンポーネント55は不図示のネットワークを介してキャラクターのCGモデルを予め取得してもよい。コンポーネント55はキャラクターのCGモデルを参照する。キャラクターのCGモデルは少なくとも仮想背景物体を標的にして視線の方向と顔面の方向と設定できるものである。またこれらの仮想背景物体の間を標的にして、視線の方向と顔面の方向とが変化するアニメーションを表示できるものである。
【0100】
図14においてコンポーネント55は視線の方向と顔面の方向とキャラクターのCGモデルとを元に描画をする。描画に基づき映像信号が生成される。図13の例に倣えば映像信号はキャラクターChを継続的に画面Sc中の所定の表示位置に表示するものである。この映像信号は、キャラクターChが視線を滑らかに移動させながら画面Scの正面の方向から視線を外すようなアニメーションを含む。キャラクターChは視線を方向Gz1に遷移させる。なお図13中では視線は正確に描かれていない。この映像信号は、キャラクターChが顔面を方向Fcに向けることを含む。
【0101】
図14においてコントローラー40は、映像信号を表示装置41に送る。映像信号を送るのはコンポーネント55である。表示装置41は視線を滑らかに移動させるキャラクターをアニメーション表示した後、視線を外しているキャラクターの表示を所定時間継続する。その後以下の通り第2トリガーが作動する。
【0102】
<システムと第2トリガー>
【0103】
図14において第2トリガーに係る処理は以下のとおりである。コンポーネント51は、改めてカメラ39から受けた検知信号を変換する。コンポーネント51は変換された検知信号に基づき対象者の位置を特定するための情報を生成する。コンポーネント51は対象者の位置を収納する。対象者は検出されない場合もある。2名以上の対象者が同時に検出されることもある。
【0104】
図14においてコンポーネント53はコンポーネント51の対象者の位置を参照する。コンポーネント51の対象者が参照できなければ以降の動作を行わなくてもよい。例えば第1トリガーを作動させる結果をもたらした対象者がカメラで検知可能な範囲外に移動することなどが例として挙げられる。
【0105】
図14においてコンポーネント53はさらに第1トリガーの作動時刻を参照する。コンポーネント53は第1トリガーの作動から所定の表示時間が経過したかどうかを判定する。第1トリガーの作動から所定の表示時間が経過したのであれば、次にコンポーネント53は改めて注視対象を選択する。コンポーネント53はコンポーネント52の仮想背景物体を参照する。図13の例に倣えばコンポーネント53は画面Scの正面の方向を表す仮想背景物体B05を参照する。図13の例に倣えば仮想背景物体B05を注視対象として選択する。コンポーネント53は選択した仮想背景物体B05を収納する。
【0106】
図14においてコンポーネント54は視線の方向を設定する。視線の方向を設定するのはコンポーネント54である。コンポーネント54は選択された仮想背景物体B05を参照する。コンポーネント54は設定した視線の方向を収納する。図13の例に倣えば視線の方向Gz2を収納する。
【0107】
図14においてコンポーネント55はコンポーネント54の視線の方向を参照する。コンポーネント55は第1トリガーによって表示したキャラクターと同一のキャラクターのCGモデルを参照する。コンポーネント55は視線の方向と当該キャラクターのCGモデルとを元に描画をする。描画に基づき映像信号が生成される。図13の例に倣えば、この映像信号は、第1トリガーによって表示したキャラクターChと同一のキャラクターChの視線が画面Scの正面の方向を向くようになっているものである。このとき、映像信号はキャラクターChが視線を滑らかに移動させるようなアニメーションを含む。コンポーネント55は、映像信号を表示装置41に送る。
【0108】
図14においてコンポーネント55は、映像信号を表示装置41に送る。表示装置41は視線を方向Gz1から方向Gz2に向けて滑らかに移動させるキャラクターをアニメーション表示した後、視線を正面に向けているキャラクターの表示を継続する。モナリザ効果により、対象者にはキャラクターから注視されているという感覚が生じる。
【0109】
<コントローラーの多用途性>
【0110】
図13に示すコントローラー40は上述の表示方法を実行するのに適している。コントローラー40及びこれに接続する装置は、上述の表示方法を実行する機能だけを有しているものに限定されない。コントローラー40は、モナリザ効果の生じない位置に対象者が存在していても、キャラクターに視線を外す動作をさせることができるものでもよい。このような対象者のためのキャラクターChの提示は、図14に示すシステムを用いて実行してもよい。
【0111】
図13に示すように対象者45cがキャラクターChの表示位置の正面に存在する。対象者45cにはモナリザ効果は生じない。カメラ39は対象者45cを含めて画面Scの前方を全体的に撮影する。カメラ39は対象者45cの存在を含む検知信号をコントローラー40に送る。
【0112】
図13においてコントローラー40は、対象者45cがキャラクターChの表示位置の正面に存在していても、その検知信号を受けたときに、視線を外しているキャラクターChを表示する映像信号を表示装置に送る。画面Scには視線を方向Gz1に向けているキャラクターChが表示される。さらに所定の表示時間経過後、画面ScにはキャラクターChが視線を方向Gz2に向けるアニメーションが表示される。対象者45cはキャラクターChが対象者45cを注視していると感じる。
【0113】
<背景情報生成部と仮想背景物体の省略について>
【0114】
図11~14に示す実施態様において注視対象の選択と視線の方向設定とを分離したのは実装上の便宜のためである。他の態様において視線の方向設定のみで、コントローラー40に表示方法を実施させることも可能である。背景情報を生成するコンポーネント52は不要である。また仮想背景物体B01~B09は不要である。注視対象を選択するコンポーネント53は不要である。
【0115】
まず図13に示すようにセンサーにあたるカメラ39は対象者45a及び45bの位置を検出する。次に検出された対象者の範囲で、第1トリガーを作動させる位置に対象者がいるか否かを判定する。第1トリガーを作動させる位置に対象者がいれば、キャラクターChの視線の方向として正面以外の方向を設定する。キャラクターChの顔面の方向は正面以外に設定してもよい。またしなくてもよい。
【0116】
次に検出された対象者の範囲で、第2トリガーを作動させる位置に対象者がいるかを判定する。第2トリガーを作動させる位置に対象者がいれば、キャラクターChの視線の方向として正面の方向Gz2を設定する。
【0117】
また、図10に示すようにキャラクターChの顔面の向きが変化するようにしてもよい。顔面の方向は第2トリガーを作動させる位置にいた対象者の方向を設定する。コンポーネント54はコンポーネント51の対象者の位置を直接に参照する。キャラクターChの顔面の方向を当該対象者の方向に設定する。この処理は、キャラクターChの顔面を当該対象者以外の方向に設定すべき他の原因が発生するまで継続される。他の原因とは、例えば他の対象者が第2トリガーを作動させることなどである。
【0118】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、
【符号の説明】
【0119】
39 カメラ
40 コントローラー
41 表示装置
42 ディスプレイ
43 ハーフミラー
44 表示領域
45a-c 対象者
51-55 コンポーネント
Av 角度
B01-B09 仮想背景物体
Ch キャラクター
d 距離
Fc 顔面の方向
g 視線の偏角
Gz1 視線の方向
Gz2 視線の方向
Mn1 角度
Mn2 角度
Ob1 観察者
Ob2 観察者
p 偏角
P0-P5 位置
R1 所定値
R2 所定値
S31-S34 ステップ
Sc 画面
Tg 対象者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14