(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】マイクロ流体チップおよびマイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020553768
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040737
(87)【国際公開番号】W WO2020090481
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2018202991
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉富 匠
(72)【発明者】
【氏名】金 秀▲弦▼
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】孫 明▲げつ▼
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108704681(CN,A)
【文献】国際公開第2019/069900(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/060186(WO,A1)
【文献】ROGAL J., et al., "Integration concepts for multi-organ chips: how to maintain flexibility?!",Future science OA, 2017 Mar 13, vol. 3, no. 2, p. FSO180
【文献】孫明げつ他, "3Dプリンタで製作したマイクロ流体デバイスを用いる生体機能性チップのモジュール化",化学とマイクロ・ナノシステム学会 第38会研究会講演要旨集, 2018.10.30, p. 79 (3P17)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びるスロットに挿入されるマイクロ流体チップであって、
上面と、
前記上面の反対側にある下面と、
前記上面と前記下面との間に配置された流体の流路と、
前記流路に通じており、前記上面で開口する2つの連通孔とを備え
、
前記2つの連通孔を結ぶ線分は、マイクロ流体チップが前記スロットに挿入される挿入方向に対して傾斜している
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記2つの連通孔は、前記流路の両端に配置され、
前記流路は、前記2つの連通孔を結ぶ線分に沿って直線状に延びている
ことを特徴とする請求項
1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記上面に固定されるか前記上面に形成され、前記連通孔をそれぞれ囲む、エラストマーから形成された2つの環状シールをさらに備える
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
水平方向に延びるスロットに挿入されるマイクロ流体チップであって、
上面と、
前記上面の反対側にある下面と、
前記上面と前記下面との間に配置された流体の流路と、
前記流路に通じており、前記上面で開口する2つの連通孔と、
前記上面に固定されるか前記上面に形成され、前記連通孔をそれぞれ囲む、エラストマーから形成された2つの環状シールとをさらに備える
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記流路の内部における前記環状シールに重なる位置に固定されて、前記流路が閉塞されないよう前記流路の高さを確保する少なくとも2つの支持構造物をさらに備える
ことを特徴とする請求項
3または4に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
請求項
1または
2に記載の少なくとも1つの前記マイクロ流体チップと、
前記マイクロ流体チップが保持されるホルダーとを備え、
前記ホルダーは、
前記マイクロ流体チップが挿入される、水平方向に延びる少なくとも1つのスロットと、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記上面に対面する上壁構造と、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記下面に面接触する下壁と、
前記上壁構造に形成され、前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記2つの連通孔にそれぞれ通ずる2つの孔とを有し、
前記マイクロ流体チップの前記2つの連通孔に通ずる2つの前記孔を結ぶ線分は、前記マイクロ流体チップが前記スロットに挿入される挿入方向に対して傾斜している
ことを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
請求項4または5に記載の少なくとも1つの前記マイクロ流体チップと、
前記マイクロ流体チップが保持されるホルダーとを備え、
前記ホルダーは、
前記マイクロ流体チップが挿入される、水平方向に延びる少なくとも1つのスロットと、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記上面に対面し、前記環状シールを前記上面に向けて圧縮する上壁構造と、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記下面に面接触する下壁と、
前記上壁構造に形成され、前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記2つの連通孔にそれぞれ通ずる2つの孔とを有する、
ことを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記ホルダーの前記上壁構造の下面には、前記マイクロ流体チップが前記スロットに挿入される挿入方向に沿って直線状に延びる少なくとも2つの溝が形成されており、前記溝の延長線上には、前記2つの孔がそれぞれ存在する
ことを特徴とする請求項6
または7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記ホルダーの前記上壁構造には、前記上壁構造を貫通する少なくとも1つの観察窓が形成されており、
前記スロットの深部側に配置された前記孔が延長線上に存在する前記溝は、前記観察窓を跨って延びる
ことを特徴とする請求項
8に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
複数の前記マイクロ流体チップを備え、
前記ホルダーは、
複数の前記マイクロ流体チップが挿入される、水平方向に延びる複数のスロットと、
複数の前記マイクロ流体チップの複数の連通孔に通ずる複数の孔と、
前記上壁構造に形成され、前記スロットの深部側に配置された複数の前記孔を接続する接続流路とを有する
ことを特徴とする請求項6から
9のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記上壁構造は、前記ホルダーに固定される接続流路チップを備えており、前記接続流路は、前記接続流路チップに形成されている
ことを特徴とする請求項
10に記載のマイクロ流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップおよびマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、流体の分析または合成を行うために、液体が流れる微小な流路を有するデバイスである。マイクロ流体デバイスを構成するマイクロ流体チップの一種として、動物の臓器または組織を模倣して、流路で細胞を培養する、organ-on-a-chipが開発されている(非特許文献1)。
【0003】
Organ-on-a-chipは、例えば創薬分野において、動物実験の代替実験に使用される。動物実験は、薬物の作用および副作用を評価する上で有用であるが、動物愛護の観点から望ましくない。また、たとえ動物実験を行って、ある種の動物に対する薬物の影響を評価できても、他の種の動物にその評価が当てはまるとは限らない。例えば、マウスに薬物を投与する実験では、ヒトへの薬物の作用および副作用を十分に把握することはできない。ある動物のための薬物の影響を調べるためには、その動物由来の細胞を培養するorgan-on-a-chipを使用することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Julia Rogal, et al., "Integration concepts for multi-organ chips: how to maintain flexibility?!", Future Science OA, 2017, [online]、[平成30年9月10日検索]、インターネット(URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5481865/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Organ-on-a-chipを含むマイクロ流体チップは、他の部材(例えば、マイクロ流体チップが挿入されるホルダー、マイクロ流体チップに重ねられる板、または別の種類の細胞が培養されたマイクロ流体チップ)と結合されて、マイクロ流体デバイスとして使用される。このようなマイクロ流体デバイスは、簡単に製造できることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、マイクロ流体デバイスを簡単に製造可能なマイクロ流体チップおよびこれを有するマイクロ流体デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係るマイクロ流体チップは、水平方向に延びるスロットに挿入されるマイクロ流体チップであって、上面と、前記上面の反対側にある下面と、前記上面と前記下面との間に配置された流体の流路と、前記流路に通じており、前記上面で開口する2つの連通孔とを備える。
【0008】
この態様においては、水平方向に沿ってマイクロ流体チップをスロットに挿入することができ、スロットを有する部材とマイクロ流体チップによって簡単にマイクロ流体デバイスを製造することができる。例えば、organ-on-a-chipを用いてヒトの薬物代謝を評価するためには、複数の異なる種類の細胞を培養するのが好ましい。1枚のチップに複数種類の細胞を培養する場合、1種類の細胞でも培養に失敗するとデバイス全体の機能が失われることになる。本発明の1つの例によれば、種類の異なる細胞をそれぞれ別のマイクロ流体チップ上で培養し、培養に成功したマイクロ流体チップのみを選択して、複数のスロットを有する部材に、これらのマイクロ流体チップを装着することによって、簡単にこれらのマイクロ流体チップを互いに連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るマイクロ流体デバイスを示す平面図である。
【
図2】
図1のマイクロ流体デバイスを分解した各要素を示す平面図である。
【
図3】
図1のマイクロ流体デバイスの接続流路チップを示す平面図である。
【
図4】
図3の接続流路チップのIV-IV線矢視断面図である。
【
図5】
図1のマイクロ流体デバイスのマイクロ流体チップを示す平面図である。
【
図6】
図1のマイクロ流体デバイスのVI-VI線矢視断面図である。
【
図7】
図5のマイクロ流体チップの流路板を示す裏面図である。
【
図8】実施形態と異なるマイクロ流体デバイスを示す側面断面図である。
【
図9】
図7のマイクロ流体チップのIX-IX線矢視拡大断面図である。
【
図10】マイクロ流体チップの流路板の一部を示す拡大裏面図である。
【
図11】マイクロ流体チップの要素の配置を示す斜視図である。
【
図12】実施形態の変形例に係るマイクロ流体デバイスを示す側面断面図である。
【
図13】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体デバイスを示す側面断面図である。
【
図14】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体チップの流路板の一部を示す拡大裏面図である。
【
図15】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体チップの流路板の一部を示す拡大裏面図である。
【
図16】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体デバイスを示す側面断面図である。
【
図17】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体デバイスを示す側面断面図である。
【
図18】実施形態におけるマイクロ流体チップがホルダーのスロットに挿入される直前の段階を示す側面断面図である。
【
図19】実施形態におけるマイクロ流体チップがホルダーのスロットに挿入される最初の段階を示す側面断面図である。
【
図24】比較例におけるマイクロ流体チップがホルダーのスロットに挿入される最初の段階を示す側面断面図である。
【
図26】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体デバイスを示す側面断面図である。
【
図27】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体デバイスを示す側面断面図である。
【
図28】実施形態の他の変形例に係るマイクロ流体デバイスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。図面において縮尺は、必ずしも実施形態の製品を正確に表してはおらず、一部の寸法を誇張して表現している場合もある。
【0011】
実施形態に係るマイクロ流体デバイスは、organ-on-a-chipデバイスである。
図1に示すように、マイクロ流体デバイスは、ホルダー1と、ホルダー1に保持される複数の(この実施形態では2つの)マイクロ流体チップ2と、ホルダー1に保持されてマイクロ流体チップ2を接続する接続流路チップ3を備える。
【0012】
各マイクロ流体チップ2は、矩形の板である。
図1および
図2に示すように、ホルダー1は、ほぼ矩形の板であり、複数のマイクロ流体チップ2が水平方向に沿ってそれぞれ挿入される、水平方向に延びる複数のスロット4を有する。また、ホルダー1の上部には、矩形の長尺な接続流路チップ3が嵌め込まれる矩形の長尺な開口部5が形成されている。
【0013】
図3および
図4に示すように、接続流路チップ3の両端部には、2つの孔28が形成され、接続流路チップ3の中央部には、孔28を接続する接続流路30が形成されている。接続流路30は、接続流路チップ3の長手方向に沿って延びている。2つの孔28は、接続流路チップ3を貫通せず、接続流路チップ3の一面で開口する。
【0014】
接続流路チップ3は、透明なエラストマー、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を主成分とするシリコーンゴムまたはアクリルゴムから形成されている。接続流路チップ3を製造する方法は限定されないが、例えば3Dプリンターによって、接続流路チップ3を製造することができる。具体的には、孔28と接続流路30を形成するサポート材(中子)の周囲に、例えば、光造形法を用いて、紫外線硬化型のPDMSで接続流路チップ3の外形を形成し、この後、アルカリ溶液でサポート材を溶解して除去することによって、孔28と接続流路30を開通させることができる。但し、フォトリソグラフィまたは3Dプリンターで形成したモールドを用いて成形した部品を接合することにより、接続流路チップ3を製造してもよい。
【0015】
図5および
図6に示すように、各マイクロ流体チップ2は、矩形の一様な厚さを有する平板6と、平板6に重ねられた矩形の一様な厚さを有する平板である流路板8を有する。平板6は、平坦な上面6aと、平坦で上面6aに平行な下面6bを有する。流路板8は、平坦な上面8aと、平坦で上面8aに平行な下面8bを有する。平板6および流路板8は水平に配置され、流路板8は平板6の上方に配置されている。平板6の上面6aは流路板8の下面8bに接合されている。したがって、流路板8の上面8aはマイクロ流体チップ2の上面であり、平板6の下面6bはマイクロ流体チップ2の下面である。
【0016】
平板6は、例えばガラスまたはアクリル樹脂のような透明材料から形成されている。流路板8は、透明なエラストマー、例えばPDMSを主成分とするシリコーンゴムまたはアクリルゴムから形成されている。平板6の厚さは、例えば1mmであり、流路板8の厚さは、例えば2mmであり、マイクロ流体チップ2全体の厚さは、例えば3mmである。
【0017】
平板6は、流路板8よりも大きな長さを有し、
図1に示すように、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入された場合、流路板8の全体および平板6の一部はスロット4の内部に配置されるが、平板6の端部は露出する。
【0018】
図5および
図7に示すように、流路板8の下面8bには、液体の流路となる凹部が形成されている。凹部は、培養チャンバー凹部14hと、培養チャンバー凹部14hの両端にそれぞれ通ずる通路凹部16h,18hを有する。流路板8には、通路凹部16hに通ずる連通孔10と、通路凹部18hに通ずる連通孔12が形成されており、連通孔10,12は上面8aで開口する。
【0019】
平板6は、流路板8に接合され、凹部を覆って、流路板8と協働して流路を画定する。この実施形態では、流路は、動物(ヒトを含む)の細胞が培養される培養チャンバー14と、連通孔10と培養チャンバー14の間に介在する通路16と、連通孔12と培養チャンバー14の間に介在する通路18とを有する。通路16と通路18は、培養チャンバー14よりも小さい幅を有する。通路16と通路18は、互いに同じ幅と長さを有する。
【0020】
培養チャンバー14は、直線に沿って延びる長尺の空間であり、通路16,18は、同じ直線に沿って延びている。培養チャンバー14と通路16,18を有する流路は、1つの連通孔から他の1つの連通孔に向けて直線状に延びる(曲折または湾曲しない)ので、流路の構造が単純である。但し、培養チャンバー14および通路16,18は、曲折または湾曲していてもよい。この実施形態では、各マイクロ流体チップ2において、流路の両端に配置された2つの連通孔10,12を結ぶ線分は、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される挿入方向に対して傾斜しており、培養チャンバー14および通路16,18は、この線分に沿って直線状に延びている。但し、2つの連通孔10,12を結ぶ線分は、挿入方向に沿って延びていてもよい。
【0021】
このように、マイクロ流体チップ2は、上面8aと下面6bとの間に配置された流体の流路と、流路に通じており上面8aで開口する2つの連通孔10,12を有する。
【0022】
図6に示すように、ホルダー1は、積層された上壁20、中壁22、および下壁24を有する。スロット4の天井面は上壁20の下面であり、スロット4の底面は下壁24の上面である。スロット4にマイクロ流体チップ2が挿入されると、上壁20は、複数のマイクロ流体チップ2の流路板8の上面8aに対面し、下壁24は、複数のマイクロ流体チップ2の平板6の下面6bに対面する。中壁22は、上壁20と下壁24の間に配置され、スロット4の側部を画定する。
【0023】
上壁20、中壁22および下壁24は、互いに固定されている。これらの固定には、例えば、
図1に示すように、複数の留め具25を使用してよい。各留め具25は、例えば、上壁20、中壁22および下壁24を貫通する貫通孔25A(
図2参照)に挿入されるネジと、ネジに螺合されるナットを備えてよい。あるいは、各留め具25は、クランプ機構であってもよい。あるいは、上壁20、中壁22および下壁24は、一体成形されていてもよい。あるいは、上壁20、中壁22および下壁24は、接着剤、化学的反応、または熱的反応を用いて、接合されていてもよい。
【0024】
上壁20、中壁22および下壁24は、例えば不透明な樹脂材料によって形成されているが、透明な材料によって形成されてもよい。
【0025】
図1、
図2および
図6に示すように、上壁20には、複数の孔26が形成されている。複数の孔26は、上壁20を貫通し、液体の入口もしくは出口、または液体に押されて流れる空気の出口として使用される。
【0026】
また、上壁20には開口部5が形成されている。開口部5は上壁20を貫通し、開口部5には接続流路チップ3が嵌め込まれて固定されている。開口部5に嵌め込まれた接続流路チップ3に形成された複数の孔28は、スロット4内で開口する。図示しないが、接続流路チップ3を開口部5に固定する留め具が使用されてもよい。
【0027】
接続流路チップ3は、ホルダー1の一部であると考えることもできる。すなわち、ホルダー1は、上壁20と接続流路チップ3を有する上壁構造19、中壁22および下壁24を備えると考えることもできる。スロット4の天井面は上壁構造19の下面であり、スロット4の底面は下壁24の上面である。
【0028】
さらに、上壁20には、複数の観察窓29が形成されている。観察窓29は上壁20を貫通する。スロット4にマイクロ流体チップ2が挿入された後、各観察窓29は、マイクロ流体チップ2の培養チャンバー14に重なる。観察窓29を通じて、培養チャンバー14内の細胞を観察することが可能である。細胞の観察には、例えば顕微鏡を使用することができる。細胞の観察のための明るさを高めるために、下壁24に下壁24を貫通する採光窓を形成してもよい。この実施形態では、上壁20は不透明な材料から形成されているが、上壁20が透明な材料から形成されている場合であっても、顕微鏡による細胞の観察を良好に行うため、上壁20を貫通する観察窓29が形成されていることが好ましい。
【0029】
上壁20の下面には、複数の溝32,34が形成されている。溝32,34は、スロット4の長手方向(マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される挿入方向)に沿って直線状に延びる。
図1および
図2に示すように、溝32の延長線上には、孔26が存在し、溝34の延長線上には、孔28が存在する。スロット4にマイクロ流体チップ2が挿入される際、各マイクロ流体チップ2の連通孔10は、溝32に重なりながら、スロット4内を移動し、各マイクロ流体チップ2の連通孔12は、溝34に重なりながら、スロット4内を移動する。スロット4の深部側に配置された孔28が延長線上に存在する溝34は、観察窓29を跨って延びる。
【0030】
スロット4にマイクロ流体チップ2が挿入された後、上壁構造19の上壁20に形成された複数の孔26は、複数のマイクロ流体チップ2の流路板8の連通孔10にそれぞれほぼ同軸に配置されて、連通孔10にそれぞれ通じ、上壁構造19の接続流路チップ3に形成された複数の孔28は、複数のマイクロ流体チップ2の流路板8の連通孔12にそれぞれほぼ同軸に配置されて、連通孔12にそれぞれ通ずる。
【0031】
図1に示すように、2つの孔28は接続流路30で接続されている。接続流路30は、水平に延びて2つのスロット4を跨る。接続流路30を介して、1つのマイクロ流体チップ2の流路から他のマイクロ流体チップ2の流路に液体を移送することができる。
【0032】
連通孔10,12が開口する流路板8の上面8aには、エラストマーから形成された複数の環状シール36,38が配置されている。この実施形態では、環状シール36,38は、Oリングであるが、例えばDリングのような他の断面形状を有するリングであってもよい。環状シール36,38の材料は、例えばシリコーンゴムであるが、他のエラストマーであってもよい。この実施形態では、環状シール36,38は、同じ大きさを有するが、異なる大きさを有してもよい。
【0033】
この実施形態では、
図6に示すように、流路板8の上面8aに環状シール36,38が嵌め込まれる凹溝が形成されており、各凹溝に環状シール36または38が嵌め込まれることによって、環状シール36,38が上面8aに固定されている。環状シール36,38は、上面8aに接合されてもよい。接合の手法としては、例えば接着剤による接着でもよいし、酸素プラズマを照射するか、真空下で紫外線を照射することによって、部材表面を活性化して、2つの部材を化学的に結合してもよい。
【0034】
環状シール36は、流路板8に形成された連通孔10にほぼ同軸に配置されて連通孔10を囲み、環状シール38は、流路板8に形成された連通孔12にほぼ同軸に配置されて連通孔12を囲む。環状シール36の一部は通路16に重なり、環状シール38の一部は通路18に重なっている。
【0035】
マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入された後、環状シール36は、上壁20に形成された孔26にほぼ同軸に配置されて孔26を囲み、環状シール38は、接続流路チップ3に形成された孔28にほぼ同軸に配置されて孔28を囲む。したがって、環状シール36は、上壁20に形成された孔26および流路板8に形成された連通孔10を囲み、環状シール38は、接続流路チップ3に形成された孔28および流路板8に形成された連通孔12を囲む。
【0036】
マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される際には、マイクロ流体チップ2の平板6の下面6bはホルダー1の下壁24を摺動し、流路板8の上面8aに固定された環状シール36,38はホルダー1の上壁20を摺動する。スロット4にマイクロ流体チップ2が挿入された後、下壁24は、複数のマイクロ流体チップ2の平板6に面接触し続ける。スロット4にマイクロ流体チップ2が挿入された後、ホルダー1の上壁20および接続流路チップ3は、複数のマイクロ流体チップ2の流路板8の上面8aに対面し、環状シール36,38を流路板8に向けて圧縮し続ける。
【0037】
このように、環状シール36または38は、上壁20または接続流路チップ3に形成された孔26または28と、流路板8に形成された連通孔10または12を囲むように使用され、圧縮されることにより、孔26もしくは28から連通孔10もしくは12に流れる液体、または連通孔10もしくは12から孔26もしくは28に流れる液体を密封することができる。
【0038】
環状シール36,38が圧縮されることに伴い、流路板8は環状シール36,38から反力を受ける。このため、
図8に示すように、通路16,18内に何もない場合には、流路板8が弾性変形して、通路16,18が閉塞されるおそれがある。
図8は、環状シール36から受けた力による流路板8の弾性変形に伴って、通路16に閉塞部16Aが生じた状態を示す。図示しないが、通路18にも同様に、環状シール38から受けた力による流路板8の弾性変形に伴って、閉塞部が生じうる。
【0039】
そこで、この実施形態では、
図9~
図11に示すように、通路16の内部における環状シール36に重なる位置に、通路16が閉塞されないよう通路16の高さを確保する支持構造物40が固定されている。また、通路18の内部における環状シール38に重なる位置に、通路18が閉塞されないよう通路18の高さを確保する支持構造物42が固定されている。
図9~
図11は、通路16内に設けられる支持構造物40を示すが、
図9~
図11において、通路16、通路凹部16h、支持構造物40、連通孔10および孔26を、通路18、通路凹部18h、支持構造物42、連通孔12および孔28と読み替えてよい。
【0040】
支持構造物40,42は、長尺なほぼ直方体の突起であり、流路板8に形成されている。支持構造物40は、通路16を構成する長尺な通路凹部16hの幅方向の中央に配置され、通路凹部16hの長手方向に沿って延びている。支持構造物42も、通路18を構成する長尺な通路凹部18hの幅方向の中央に配置され、通路凹部18hの長手方向に沿って延びている。
【0041】
通路凹部16h,18hの深さD(培養チャンバー凹部14hの深さ)は、例えば0.1mmであり、支持構造物40,42の高さは深さDと同じでよい。
【0042】
通路凹部16h,18hの幅Wに対する支持構造物40,42の幅wの比w/Wは、限定されないが、例えば0.2~0.5であることが望ましい。w/Wが大きすぎると、通路16,18での液体の流れが阻害され、圧力損失が大きい。例えば、通路凹部16h,18hの幅Wは1mmであってよく、支持構造物40,42の幅wは0.4mmであってよい。この場合、比w/Wは0.4である。
【0043】
環状シール36,38が圧縮されることに伴い、流路板8は環状シール36,38から反力を受けるが、通路16,18の内部における環状シール36,38に重なる位置に固定された支持構造物40,42が、通路16,18が閉塞されないよう通路16,18の高さを確保する。この実施形態では、2つの環状シール36,38により2箇所で密封が行われ、2つの支持構造物40,42により当該2箇所での流路の閉塞が防止される。
【0044】
支持構造物40,42を通路凹部16h,18hに有する流路板8は、例えばソフトリソグラフィによって製造することができる。例えば、流路板8を成形するモールドを、基板上に突起を形成することにより、製造してもよい。あるいは、流路板8を成形するモールドを3Dプリンターで製造してもよい。あるいは、流路板8自体を3Dプリンターで製造してもよい。これらの場合、通路凹部16h,18h内の支持構造物40,42は流路板8の部分として、流路板8と一体に製造される。但し、通路凹部16h,18hが形成された流路板8に、支持構造物40,42を接着剤、化学的反応、または熱的反応を用いて、接合してもよい。
【0045】
流路板8は、平板6に接着剤、化学的反応、または熱的反応を用いて、接合してよい。例えば、流路板8がPDMSを主成分とするシリコーンゴムから形成され、平板6がガラスから形成される場合には、シロキサン結合によって、流路板8を平板6に接合してよい。
【0046】
実施形態において、支持構造物40,42の高さは、通路凹部16h,18hの深さと同じでよい。但し、
図12に示すように、支持構造物40の高さは、通路凹部16hの深さより小さくてもよく、支持構造物42の高さも、通路凹部18hの深さより小さくてもよい。
【0047】
実施形態において、支持構造物40,42は、流路板8に形成されている。但し、
図13に示すように、通路凹部16hに向けて突出する支持構造物43を平板6に形成または固定してもよく、通路凹部18hに向けて突出する支持構造物を平板6に形成または固定してもよい。図示しないが、流路板8と平板6の両方に、支持構造物を形成または固定してもよい。
【0048】
実施形態において、通路16には1つの支持構造物40が配置され、通路18にも1つの支持構造物42が配置されている。但し、
図14に示すように、通路16には複数の支持構造物40が配置されてもよく、通路18にも複数の支持構造物42が配置されてもよい。通路凹部16h,18hに複数の直線状の支持構造物40,42が配置される場合、通路凹部16h,18hの幅Wに対する支持構造物40,42の幅wの比w/Wは、限定されないが、通路16,18での液体の流れを円滑にするため、例えば0.2/n~0.5/nであることが望ましい。nは、1つの通路凹部に配置される直線状の支持構造物の数である。例えば、通路凹部16h,18hの幅Wは1mmであってよく、支持構造物40,42の幅wは0.2mmであってよい。この場合、n・w/Wは0.4である。
【0049】
また、支持構造物40,42の形状は、実施形態のものに限定されない。例えば、
図15に示すように、円柱状の支持構造物44を通路16,18に配置してもよい。
図15において、支持構造物44は、3列に配列されており、2列は通路の長手方向に揃えられ、中央の1列は、他の2列とずれている。通路凹部16h,18hに複数の円柱状の支持構造物44が配置される場合、通路凹部16h,18hの幅Wに対する支持構造物44の直径Dの比D/Wは、限定されないが、通路16,18での液体の流れを円滑にするため、例えば0.2/n~0.5/nであることが望ましい。nは、1つの通路凹部に配置される支持構造物44の長手方向に揃えられた列の数であり、
図15の例では2である。例えば、通路凹部16h,18hの幅Wは1mmであってよく、支持構造物40,42の直径Dは0.2mmであってよい。この場合、n・D/Wは0.4である。
【0050】
実施形態において、環状シール36,38は、流路板8と別個のリングであって、流路板8の外面(上面)に固定されている。但し、
図16に示すように、連通孔10を囲むように、流路板8の一部として流路板8と同じ材料から環状シール46を形成してもよく、連通孔12を囲むように、流路板8の一部として流路板8と同じ材料から環状シールを形成してもよい。つまり、環状シール46は、流路板8から突出するバンプまたはリップであってもよい。この場合、好ましくは、例えばソフトリソグラフィによって、環状シールは、流路板8の部分として、流路板8と一体に製造される。
【0051】
あるいは、
図17に示すように、連通孔10を囲むように、流路板8と異なる材料から環状シール48を形成してもよく、連通孔12を囲むように、流路板8と異なる材料から環状シールを形成してもよい。この場合、流路板8の外面(上面)に環状シールを接着剤、化学的反応、または熱的反応を用いて、接合してもよい。
【0052】
次に、実施形態に係るorgan-on-a-chipデバイスであるマイクロ流体デバイスの使用例を説明する。organ-on-a-chipデバイスにおいて、1つのマイクロ流体チップ2は動物の1つの臓器(例えば肝臓)を模倣し、他の1つのマイクロ流体チップ2は当該動物の他の1つの臓器(例えば肺)を模倣する。例えば、1つのマイクロ流体チップ2の培養チャンバー14には、肝臓由来の細胞と薬剤(例えば抗がん剤)を含む培養液が配備され、他の1つのマイクロ流体チップ2の培養チャンバー14には、肺由来の細胞を含む培養液が配備される。前者の培養チャンバー14において、薬剤の反応として肝臓由来の細胞がなんらかの物質を生成する。十分な時間の経過後、前者の培養チャンバー14で生成された物質を後者の培養チャンバー14に移送し、当該物質が肺由来の細胞に及ぼす作用または副作用を、上記の観察窓29を用いて観察することができる。
【0053】
この実施形態では、マイクロ流体チップ2の流路(培養チャンバー14および通路16,18)と連通孔10,12に、培養液(細胞または細胞と薬剤を含む)を満たした後に、培養液に気泡が混入することを抑制しながら、マイクロ流体チップ2をスロット4に水平方向に沿って挿入することが容易である。
図18は、マイクロ流体チップ2がホルダーのスロット4に挿入される直前の段階を示す側面断面図である。
図18に示すように、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される前に、流路と連通孔10,12だけでなく連通孔10,12を囲む環状シール36,38に培養液50を貯留する。培養液50の上面は、表面張力により盛り上がる。
図18は、連通孔12を囲む環状シール38内の培養液50の上面が盛り上がった状態を示すが、連通孔10を囲む環状シール36内の培養液50の上面も同様に盛り上がる。マイクロ流体チップ2に貯留される培養液50の量が少ない場合には、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される際に、培養液50内に気泡が混入するおそれがある。動物の細胞は、空気にさらされると、成長が阻害されたり死滅したりするので、培養液50内の細胞は気泡に触れないことが好ましい。この実施形態では、環状シール36,38を用いて多量の培養液50を貯留することにより、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される際に、培養液50に気泡が混入することを抑制することができる。
【0054】
マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される前に、接続流路チップ3はホルダー1の開口部5に固定される。したがって、ホルダー1は、各マイクロ流体チップ2について、2つの連通孔10,12とそれぞれ通ずる2つの孔26,28を有する。この後、
図2の矢印に示すように、マイクロ流体チップ2はスロット4の深部に向けて水平方向に沿って移動させられる。マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入された後、各連通孔10または12はホルダー1の1つの所望の孔26または28に通ずる。マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される際、スロット4の深部側に配置される連通孔12が移動しながら、所望でない孔26を通過すると、培養液50に気泡が混入するおそれがある。仮に、連通孔10,12を結ぶ線分、ひいては孔26,28を結ぶ線分がマイクロ流体チップ2の挿入方向に沿って延びている場合には、この事態が生じる。
【0055】
しかし、この実施形態では、2つの連通孔10,12を結ぶ線分は、挿入方向に対して傾斜しており、ホルダー1の2つの孔26,28を結ぶ線分も同様に挿入方向に対して傾斜しているため、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される際、スロット4の深部側に配置される連通孔12は所望でない孔を通過することがなく、培養液50に気泡が混入することを抑制することができる。挿入方向に対する連通孔10,12を結ぶ線分の傾斜角度は、限定されないが、例えば15°~35°である。
【0056】
また、ホルダー1の上壁20の下面には、スロット4の挿入方向に沿って延びる複数の溝32,34が形成されている。スロット4にマイクロ流体チップ2が挿入される際、各マイクロ流体チップ2の連通孔10は、溝32に重なりながら、スロット4内を移動し、最終的に所望の孔26に到達し、各マイクロ流体チップ2の連通孔12は、溝34に重なりながら、スロット4内を移動し、最終的に所望の孔28に到達する(
図19参照)。マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される際、連通孔10,12および環状シール36,38に満たされて盛り上がった培養液50が上壁構造19の下面に接触する場合には、下面から培養液50が剪断力を受け続けながらスロット4内を移動するので、培養液50の一部が環状シール36,38から溢れ続け、連通孔10,12が所望の孔26,28に到達した時、連通孔10,12内の培養液50の量が大幅に減少し、培養液50内に気泡が混入するおそれがある。この実施形態では、連通孔10,12が、上壁構造19の下面に形成された溝32,34に重なりながら、スロット4内を移動することにより、培養液50が上壁構造19の下面に接触する時間を最小限にし、培養液50に気泡が混入することを抑制することができる。
【0057】
溝32の幅は、環状シール36で貯留される培養液50の直径より大きいことが好ましい。また、マイクロ流体チップ2の移動の間、上壁構造19の下面から環状シール36に衝撃が与えられないように、溝32の幅は、環状シール36の外径より大きいことが好ましい。溝34の幅は、環状シール38で貯留される培養液50の直径より大きいことが好ましい。また、マイクロ流体チップ2の移動の間、上壁構造19の下面から環状シール38に衝撃が与えられないように、溝34の幅は、環状シール38の外径より大きいことが好ましい。
【0058】
図1に示すように、溝32は孔26から離間しており、溝34は孔28から離間している。これは、孔26,28の周囲に配置される環状シール36,38に上壁構造19の下面が周方向にわたって均一な力を与えるためである。
【0059】
図19~
図23を参照し、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される間のスロット4の深部側に配置される連通孔12と環状シール38に貯留された培養液50の状態を説明する。
図19に示すように、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される最初の段階では、盛り上がった培養液50の上面は、溝34のために、上壁20の下面に接触しない。次に、
図20に示すように、連通孔12と環状シール38は、観察窓29に到達する。観察窓29は上壁20を貫通するので、連通孔12と環状シール38が観察窓29を通過する時、連通孔12と環状シール38に満たされた培養液50が観察窓29にて上壁20の下面に対面しなくなる。次に、
図21に示すように、連通孔12と環状シール38は、観察窓29の縁部を通過して、再び上壁20の下面に対面するが、溝34は観察窓29を跨って延びるため、盛り上がった培養液50の上面は、やはり上壁20の下面に接触しない。このように、
図19~
図21に示す段階では、培養液50の上面は、上壁構造19の下面から離間し続ける。
【0060】
次に、
図22に示すように、連通孔12と環状シール38は、接続流路チップ3に到達する。この時、接続流路チップ3の下端縁により、連通孔12と環状シール38に貯留された培養液50は、剪断力を受けて、培養液50の一部が環状シール38から溢れるが、この直後に、接続流路チップ3の下面に覆われ、気泡が混入するおそれは少ない。次に、
図23に示すように、連通孔12と環状シール38は、所望の孔28に到達する。
【0061】
ホルダー1の上壁構造19は、ホルダー1に固定される接続流路チップ3を備えており、接続流路30および孔28は、接続流路30に形成されている。
図23から明らかなように、接続流路30および孔28に培養液50(例えば細胞も薬剤も含まない培養液)を充填した後、ホルダー1に接続流路チップ3を固定することが可能である。好ましくは、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される前に、接続流路30および孔28に培養液50が充填された接続流路チップ3をホルダー1に固定する。界面張力により培養液50は接続流路チップ3から流れ落ちない。この後、マイクロ流体チップ2を水平に移動しながら、
図23に示すように、連通孔12と環状シール38に満たされた培養液50を、接続流路チップ3の接続流路30および孔28に満たされた培養液50と接続させる。逆に、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入された後で、接続流路チップ3をホルダー1に固定する場合には、接続流路チップ3を下方に移動させる際に、培養液50内に気泡が混入するおそれがある。
【0062】
仮に、上壁20の下面に溝34が形成されていない場合には、
図24(
図19に対応する)に示すように、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される最初の段階
で、連通孔12と環状シール38に貯留された培養液50
の上面は、
上壁20の下端縁により剪断力を受けて、培養液50の一部が環状シール38から溢れる。この後、下面から培養液50が剪断力を受け続けながらスロット4内を移動するので、培養液50の一部が環状シール38から溢れ続ける。さらに、
図25(
図21に対応する)に示すように、連通孔12と環状シール38が観察窓29を通過する時、連通孔12と環状シール38に満たされた培養液50が観察窓29にて一旦空気に触れ、再び上壁20の下端縁により、連通孔12と環状シール38に貯留された培養液50は、剪断力を受けて、培養液50の一部が環状シール38から溢れる。このように、上壁20の下面に溝34が形成されていない場合には、培養液50は大幅に減少し、培養液50に気泡が混入するおそれがある。
【0063】
これに対して、実施形態では、溝34が観察窓29を跨って延びることにより、連通孔12と環状シール38に貯留された培養液50が観察窓29を通過する時に、培養液50の量が減少して気泡が混入することを抑制することができる。
【0064】
このorgan-on-a-chipデバイスの使用において、1つのマイクロ流体チップ2(例えば肝臓を模倣するマイクロ流体チップ)の培養チャンバー14で生成された物質を他の1つのマイクロ流体チップ2(例えば肺を模倣するマイクロ流体チップ)の培養チャンバー14に移送する場合には、前者のマイクロ流体チップ2の連通孔10に通ずる貫通孔26に新たな培養液を注入する。新たな培養液の注入には、シリンジ(例えばシリンジポンプ)を利用してよい。この貫通孔26および連通孔10に新たな培養液が注入されることにより、肝臓を模倣する培養チャンバー14で生成された物質を含む培養液50が新たな培養液に押されて連通孔12および孔28に流れ、さらに接続流路30を通過して、他の孔28および連通孔12を経て、肺を模倣する培養チャンバー14に流入する。肺を模倣する培養チャンバー14にあった培養液50のうち余分な量は、この培養チャンバー14に通ずる連通孔10および貫通孔26から排出される。上記の圧縮された環状シール36,38は、液体を密封することができる。また、接続流路30および孔28に培養液50を充填した後、1つのマイクロ流体チップ2の流路から他のマイクロ流体チップ2の流路に培養液50を移送することによって、培養液50内に空気が混入することを抑制することができる。
【0065】
他の変形例
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲において、構成要素の削除、追加、置換を含む様々な変形例が考えられる。
【0066】
例えば、実施形態において、ホルダー1の上壁構造19は、上壁20に加えて、ホルダー1に固定される接続流路チップ3を備えており、接続流路30および孔28は、接続流路30に形成されている。但し、接続流路チップ3を排除してもよい。
図26に示す変形例では、上壁構造19は上壁20のみを有し、上壁20に接続流路30および孔28が形成されている。この変形例で、孔28は貫通孔であり、マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される前に、上壁20の上方から貫通孔28を通じて、接続流路30と孔28に培養液50が充填される。界面張力により孔28から培養液50は流れ落ちない。この後、マイクロ流体チップ2を水平に移動しながら、連通孔12と環状シール38に満たされた培養液50を、接続流路30および孔28に満たされた培養液50と接続させる。マイクロ流体チップ2から他のマイクロ流体チップ2に培養液50を移送する際に、上方に開口した孔28から培養液50が流出しないように、孔28の上部はプラグまたは閉塞板(図示せず)によって閉塞される。
【0067】
図27に示す変形例では、上壁構造19は上壁20のみを有し、上壁20に接続流路30および孔28が形成されている。この変形例で、孔28は上壁20の下面で開口する。下壁24には貫通孔24aが形成されており、貫通孔24aにはシリンジ52が挿入される。マイクロ流体チップ2がスロット4に挿入される前に、シリンジ52によって、接続流路30と孔28に培養液50が充填される。シリンジ52による圧力が解除されても、界面張力により孔28から培養液50は流れ落ちない。この後、シリンジ52をマイクロ流体デバイスから取り外し、マイクロ流体チップ2を水平に移動しながら、連通孔12と環状シール38に満たされた培養液50を、接続流路30および孔28に満たされた培養液50と接続させる。
【0068】
実施形態および変形例では、接続流路30および孔28は、同じ部材(接続流路チップ3または上壁20)に形成されている。但し、孔28が形成された部材と異なる部材に接続流路30を形成して、これらの部材を接合してもよい。
【0069】
実施形態において、ホルダー1には2つのマイクロ流体チップ2が挿入される。但し、ホルダー1には3つ以上のマイクロ流体チップ2が挿入されてもよい。
図28は、3つのマイクロ流体チップ2を有するマイクロ流体デバイスを示す。この変形例では、ホルダー1の上部に、長尺な開口部55が形成され、開口部55には3つのマイクロ流体チップ2に跨る接続流路チップ53が嵌め込まれている。接続流路チップ53は、3つのマイクロ流体チップ2の連通孔12にそれぞれ通ずる3つの孔28と、3つの孔28に通ずる接続流路30を有する。したがって、この変形例では、例えば中央のマイクロ流体チップ2(1つの臓器を模倣する)から他の2つのマイクロ流体チップ2(他の2つの臓器を模倣する)に培養液を移送することができる。
【0070】
実施形態に係るマイクロ流体デバイスは、organ-on-a-chipデバイスである。但し、本発明は、他のマイクロ流体デバイス、例えば動物の体液またはその他の液体を分析するための他のデバイスに適用してもよい。
【0071】
実施形態においては、複数のマイクロ流体チップ2がホルダー1の複数のスロット4に水平方向に沿って挿入されて、マイクロ流体デバイスが構成されている。しかし、1つのマイクロ流体チップ2がホルダー1の1つのスロット4に水平方向に沿って挿入されて、マイクロ流体デバイスが構成されてもよい。
【0072】
実施形態においては、ホルダー1の上壁構造19に溝32,34が形成されている。但し、溝32,34は必ずしも不可欠ではない。
【0073】
実施形態においては、各マイクロ流体チップ2の上部に環状シールが設けられ、流路内に支持構造物が配置されている。但し、支持構造物は必ずしも不可欠ではない。また、環状シールも必ずしも不可欠ではない。特に、ホルダー1の上壁構造19に溝32,34が形成されている場合には、環状シールがなくても、マイクロ流体チップ2をスロット4に挿入する際に、連通孔10,12に満たされた液体の減少量は少ないと考えられる。
【0074】
上記の変形例は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。
【0075】
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
【0076】
条項1.水平方向に延びるスロットに挿入されるマイクロ流体チップであって、
上面と、
前記上面の反対側にある下面と、
前記上面と前記下面との間に配置された流体の流路と、
前記流路に通じており、前記上面で開口する2つの連通孔とを備える
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【0077】
この態様においては、水平方向に沿ってマイクロ流体チップをスロットに挿入することができ、スロットを有する部材とマイクロ流体チップによって簡単にマイクロ流体デバイスを製造することができる。
【0078】
条項2.前記2つの連通孔を結ぶ線分は、マイクロ流体チップが前記スロットに挿入される挿入方向に対して傾斜している
ことを特徴とする条項1に記載のマイクロ流体チップ。
【0079】
この場合、流路と連通孔に液体を満たした後に、液体に気泡が混入することを抑制しながら、マイクロ流体チップをスロットに挿入することが容易である。スロットを有する部材は、2つの連通孔とそれぞれ通ずる2つの孔を有する。マイクロ流体チップがスロットに挿入された後、各連通孔はスロットを有する部材の1つの所望の孔に通ずる。例えば、流路に配備される液体が動物の細胞の培養液である場合には、液体は空気になるべく接触しないことが望ましい。空気に接触すべきでない液体が流路と連通孔に満たされた場合、マイクロ流体チップがスロットに挿入される際、スロットの深部側に配置される連通孔が移動しながら、所望でない孔を通過すると、液体に気泡が混入するおそれがある。しかし、2つの連通孔を結ぶ線分は、挿入方向に対して傾斜しており、スロットを有する部材の2つの孔を結ぶ線分も挿入方向に対して傾斜しているため、マイクロ流体チップがスロットに挿入される際、スロットの深部側に配置される連通孔は所望でない孔を通過することがなく、液体に気泡が混入することを抑制することができる。
【0080】
条項3.前記2つの連通孔は、前記流路の両端に配置され、
前記流路は、前記2つの連通孔を結ぶ線分に沿って直線状に延びている
ことを特徴とする条項2に記載のマイクロ流体チップ。
【0081】
この場合、流路は1つの連通孔から他の1つの連通孔に向けて延びるので、流路の構造が単純である。
【0082】
条項4.前記上面に固定されるか前記上面に形成され、前記連通孔をそれぞれ囲む、エラストマーから形成された2つの環状シールをさらに備える
ことを特徴とする条項1から3のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【0083】
この場合、マイクロ流体チップがスロットに挿入された後、環状シールは、スロットを有する部材と上面の間で圧縮されながら、連通孔とスロットを有する部材の孔を接続する。マイクロ流体チップがスロットに挿入される前に、流路と連通孔だけでなく連通孔を囲む環状シールにも液体を貯留することによって、マイクロ流体チップがスロットに挿入される際、液体に気泡が混入することを抑制することができる。また、環状シールは、圧縮されることにより、孔から連通孔に流れる液体、または連通孔から孔に流れる液体を密封することができる。
【0084】
条項5.前記流路の内部における前記環状シールに重なる位置に固定されて、前記流路が閉塞されないよう前記流路の高さを確保する少なくとも2つの支持構造物をさらに備える
ことを特徴とする条項4に記載のマイクロ流体チップ。
【0085】
この場合には、環状シールが圧縮されることに伴い、マイクロ流体チップは環状シールから反力を受けるが、流路の内部における環状シールに重なる位置に固定された支持構造物が、流路が閉塞されないよう流路の高さを確保する。
【0086】
条項6.条項1に記載の少なくとも1つの前記マイクロ流体チップと、
前記マイクロ流体チップが保持されるホルダーとを備え、
前記ホルダーは、
前記マイクロ流体チップが挿入される、水平方向に延びる少なくとも1つのスロットと、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記上面に対面する上壁構造と、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記下面に面接触する下壁と、
前記上壁構造に形成され、前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記2つの連通孔にそれぞれ通ずる2つの孔とを有する
ことを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【0087】
この場合、水平方向に沿ってマイクロ流体チップをスロットに挿入することができ、ホルダーとマイクロ流体チップによって簡単にマイクロ流体デバイスを製造することができる。
【0088】
条項7.条項2または3に記載の少なくとも1つの前記マイクロ流体チップと、
前記マイクロ流体チップが保持されるホルダーとを備え、
前記ホルダーは、
前記マイクロ流体チップが挿入される、水平方向に延びる少なくとも1つのスロットと、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記上面に対面する上壁構造と、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記下面に面接触する下壁と、
前記上壁構造に形成され、前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記2つの連通孔にそれぞれ通ずる2つの孔とを有し、
前記マイクロ流体チップの前記2つの連通孔に通ずる2つの前記孔を結ぶ線分は、前記マイクロ流体チップが前記スロットに挿入される挿入方向に対して傾斜している
ことを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【0089】
この場合、水平方向に沿ってマイクロ流体チップをスロットに挿入することができ、ホルダーとマイクロ流体チップによって簡単にマイクロ流体デバイスを製造することができる。マイクロ流体チップの2つの連通孔を結ぶ線分は、挿入方向に対して傾斜しており、ホルダーの2つの孔を結ぶ線分も挿入方向に対して傾斜しているため、マイクロ流体チップがスロットに挿入される際、スロットの深部側に配置される連通孔は所望でない孔を通過することがなく、液体に気泡が混入することを抑制することができる。
【0090】
条項8.条項4または5に記載の少なくとも1つの前記マイクロ流体チップと、
前記マイクロ流体チップが保持されるホルダーとを備え、
前記ホルダーは、
前記マイクロ流体チップが挿入される、水平方向に延びる少なくとも1つのスロットと、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記上面に対面し、前記環状シールを前記上面に向けて圧縮する上壁構造と、
前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記下面に面接触する下壁と、
前記上壁構造に形成され、前記スロットに前記マイクロ流体チップが挿入されると、前記マイクロ流体チップの前記2つの連通孔にそれぞれ通ずる2つの孔とを有する、
ことを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【0091】
この場合、上部に環状シールが設けられたマイクロ流体チップを水平方向に沿ってスロットに挿入することができ、ホルダーとマイクロ流体チップによって簡単にマイクロ流体デバイスを製造することができる。マイクロ流体チップがスロットに挿入された後、環状シールは、ホルダーの上壁構造とマイクロ流体チップの上面の間で圧縮されながら、連通孔とホルダーの孔を接続する。マイクロ流体チップがスロットに挿入される前に、流路と連通孔だけでなく連通孔を囲む環状シールにも液体を貯留することによって、マイクロ流体チップがスロットに挿入される際、液体に気泡が混入することを抑制することができる。また、環状シールは、圧縮されることにより、孔から連通孔に流れる液体、または連通孔から孔に流れる液体を密封することができる。
【0092】
条項9.前記ホルダーの前記上壁構造の下面には、前記マイクロ流体チップが前記スロットに挿入される挿入方向に沿って直線状に延びる少なくとも2つの溝が形成されており、前記溝の延長線上には、前記2つの孔がそれぞれ存在する
ことを特徴とする条項6から8のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【0093】
この場合には、マイクロ流体チップがスロットに挿入される際、マイクロ流体チップの2つの連通孔は、上壁構造の下面に形成された2つの溝にそれぞれ重なりながら、スロット内を移動し、最終的に所望の孔に到達する。したがって、流路と連通孔に液体を満たした後に、液体に気泡が混入することを抑制しながら、マイクロ流体チップをスロットに挿入することが容易である。マイクロ流体チップがスロットに挿入される際、連通孔に満たされた液体が上壁構造の下面に接触する場合には、下面から液体が剪断力を受け続けながらスロット内を移動するので、連通孔が所望の孔に到達した時、連通孔内の液体の量が減少し、液体内に気泡が混入するおそれがある。連通孔が、上壁構造の下面に形成された溝に重なりながら、スロット内を移動することにより、液体が上壁構造の下面に接触する時間を最小限にし、液体に気泡が混入することを抑制することができる。
【0094】
条項10.前記ホルダーの前記上壁構造には、前記上壁構造を貫通する少なくとも1つの観察窓が形成されており、
前記スロットの深部側に配置された前記孔が延長線上に存在する前記溝は、前記観察窓を跨って延びる
ことを特徴とする条項9に記載のマイクロ流体デバイス。
【0095】
この場合には、上壁構造を貫通する観察窓を通じて、マイクロ流体チップの流路内の液体を観察することができる。観察窓は上壁構造を貫通するため、マイクロ流体チップがスロットに挿入されることに伴ってマイクロ流体チップの連通孔が観察窓を通過する時、スロットの深部側に配置される連通孔に満たされた液体が一旦上壁構造の下面に対面しなくなり、その後、上壁構造の下面に再び対面する。上壁構造の下面に溝がない場合には、連通孔に満たされた液体が上壁構造の下面に再び対面する時に、上壁構造の下面から液体が大きな剪断力を受けて、連通孔内の液体の量が大幅に減少し、液体内に気泡が混入するおそれがある。溝が観察窓を跨って延びることにより、連通孔に満たされた液体が観察窓を通過する時に、連通孔内の液体の量が減少して気泡が混入することを抑制することができる。
【0096】
条項11.複数の前記マイクロ流体チップを備え、
前記ホルダーは、
複数の前記マイクロ流体チップが挿入される、水平方向に延びる複数のスロットと、
複数の前記マイクロ流体チップの複数の連通孔に通ずる複数の孔と、
前記上壁構造に形成され、前記スロットの深部側に配置された複数の前記孔を接続する接続流路とを有する
ことを特徴とする条項6から10のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【0097】
この場合には、ホルダーの上壁構造に設けられた接続流路を介して、1つのマイクロ流体チップの流路から他のマイクロ流体チップの流路に液体を移送することができる。
【0098】
条項12.前記上壁構造は、前記ホルダーに固定される接続流路チップを備えており、前記接続流路は、前記接続流路チップに形成されている
ことを特徴とする条項11に記載のマイクロ流体デバイス。
【0099】
この場合には、接続流路に液体を充填した後、ホルダーに接続流路チップを固定することが可能である。マイクロ流体デバイスの使用において、接続流路に液体を充填した後、1つのマイクロ流体チップの流路から他のマイクロ流体チップの流路に液体を移送することによって、液体内に空気が混入することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 ホルダー
2 マイクロ流体チップ
3 接続流路チップ
4 スロット
5 開口部
6 平板
6a 上面
6b 下面
8 流路板
8a 上面
8b 下面
10,12 連通孔
14 培養チャンバー
16,18 通路
19 上壁構造
20 上壁
22 中壁
24 下壁
26,28 孔
29 観察窓
30 接続流路
32,34 溝
36,38,46,48, 環状シール
40,42 支持構造物
50 培養液