(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ダイボンディング装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2018174833
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楯 充明
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177110(JP,A)
【文献】特開2015-173551(JP,A)
【文献】特開2012-234952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイ供給部から供給されたダイを基板又は前記基板に既にボンディングされたダイ上にボンディングするボンディング部と、
ボンディング部を制御する制御部と、
を備え、
前記ボンディング部は、
前記ダイを吸着するコレットを備えたボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッドを移動する駆動軸を備えた駆動部と、
前記ボンディングヘッドの加速度を検出可能なセンサと、
を備え、
前記制御部は、
前記ボンディングヘッドがX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の何れか一方向に動作する際の振動を前記センサで測定し、測定した振動波形から前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動成分を抽出し、抽出した振動成分をキャンセルするための前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を生成する逆位相加算波形算出部と、
前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の指令波形に前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を加算して振動抑制用指令波形を生成する振動抑制用指令波形生成部と、
を備えるダイボンディング装置。
【請求項2】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記センサは角速度および加速度を検出可能であり、
前記逆位相加算波形算出部は、前記ボンディングヘッドがX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の何れか一方向に動作する際の六軸全方向の振動を前記センサで測定し、測定した振動波形から前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動成分を抽出し、抽出した振動成分をキャンセルするための前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を生成するダイボンディング装置。
【請求項3】
請求項2のダイボンディング装置において、
前記逆位相加算波形算出部は、前記センサで測定した回転方向の振動については、前記コレットの先端部の前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動に置き換え、
振動抑制用指令波形生成部は、前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動抑制用指令波形を生成するダイボンディング装置。
【請求項4】
請求項1または3のダイボンディング装置において、
前記制御部は、さらに、
加加速度、加速度、速度および位置の理想的な指令波形を生成する理想波形生成部と、
前記振動抑制用指令波形と前記駆動部からの実位置を示す信号とに基づいて、加加速度を制限しながら、指令速度波形を再生成し、再生成された指令速度波形を出力する指令波形生成部と、
を備えるダイボンディング装置。
【請求項5】
請求項1または2のダイボンディング装置において、
さらに、ピックアップ部を備え、
前記ピックアップ部は、
前記ダイを吸着するコレットを備えたピックアップヘッドと、
前記ピックアップヘッドを移動する駆動軸を備えた駆動部と、
前記ピックアップヘッドの角速度および加速度を検出可能な第二センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記ピックアップヘッドが前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の何れか一方向に動作する際の六軸全方向の振動を前記第二センサで測定し、測定した振動波形から前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動成分を抽出し、抽出した振動成分をキャンセルするための前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を生成する逆位相加算波形算出部と、
前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の指令波形に前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を加算して振動抑制用指令波形を生成する振動抑制用指令波形生成部と、
を備えるダイボンディング装置。
【請求項6】
(a)ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウェハリングホルダを搬入する工程と、
(b)基板を準備搬入する工程と、
(c)ダイをピックアップする工程と、
(d)前記ピックアップしたダイを前記基板または既にボンディングされたダイの上にボンディングする工程と、
を備え、
前記(d)工程は、
ボンディングヘッドの加速度を検出可能なセンサの測定結果に基づいて前記ボンディングヘッドの動作を制御
し、
前記ボンディングヘッドがX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の何れか一方向に動作する際の六軸全方向の振動を前記センサで測定し、測定した振動波形から前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動成分を抽出し、抽出した振動成分をキャンセルするための前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を生成し、前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の指令波形に前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を加算して振動抑制用指令波形を生成する半導体装置の製造方法。
【請求項7】
(a)ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウェハリングホルダを搬入する工程と、
(b)基板を準備搬入する工程と、
(c)ダイをピックアップする工程と、
(d)前記ピックアップしたダイを前記基板または既にボンディングされたダイの上にボンディングする工程と、
を備え、
前記(d)工程は、ボンディングヘッドの角速度および加速度を検出可能なセンサの測定結果に基づいて前記ボンディングヘッドの動作を制御する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求
項7の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程は、前記ボンディングヘッドがX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の何れか一方向に動作する際の六軸全方向の振動を前記センサで測定し、測定した振動波形から前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動成分を抽出し、抽出した振動成分をキャンセルするための前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を生成し、前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の指令波形に前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を加算して振動抑制用指令波形を生成する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は前記ダイシングテープ上のダイを前記ボンディングヘッドでピックアップし、
前記(d)工程は前記ボンディングヘッドで前記ピックアップしたダイを前記基板または既にボンディングされたダイの上にボンディングする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項6の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)前記ダイシングテープ上のダイをピックアップヘッドでピックアップする工程と、
(c2)前記ピックアップヘッドでピックアップしたダイを中間ステージに載置する工程と、
を備え、
前記(d)工程は、
(d1)前記中間ステージに載置されたダイを
前記ボンディングヘッドでピックアップする工程と、
(d2)前記ボンディングヘッドでピックアップしたダイを前記基板に載置する工程と、
を備え、
前記(d1)工程は、前記ピックアップヘッドの加速度を検出可能な第二センサの測定結果に基づいて前記ピックアップヘッドの動作を制御する半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)前記ダイシングテープ上のダイをピックアップヘッドでピックアップする工程と、
(c2)前記ピックアップヘッドでピックアップしたダイを中間ステージに載置する工程と、
を備え、
前記(d)工程は、
(d1)前記中間ステージに載置されたダイを
前記ボンディングヘッドでピックアップする工程と、
(d2)前記ボンディングヘッドでピックアップしたダイを前記基板に載置する工程と、
を備え、
前記(d1)工程は、前記ピックアップヘッドの角速度および加速度を検出可能な第二センサの測定結果に基づいて前記ピックアップヘッドの動作を制御する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10または11の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程は、前記ピックアップヘッドがX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の何れか一方向に動作する際の六軸全方向の振動を前記第二センサで測定し、測定した振動波形から前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動成分を抽出し、抽出した振動成分をキャンセルするための前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を生成し、前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の指令波形に前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を加算して振動抑制用指令波形を生成する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はダイボンディング装置に関し、例えばジャイロセンサを備えるダイボンディング装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一部に半導体チップ(以下、単にダイという。)を配線基板やリードフレーム等(以下、単に基板という。)に搭載してパッケージを組み立てる工程があり、パッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウェハ(以下、単にウェハという。)からダイを分割する工程と、分割したダイを基板の上に搭載するボンディング工程とがある。ボンディング工程に使用される製造装置がダイボンダ等のダイボンディング装置である。
【0003】
ダイボンダは、はんだ、金メッキ、樹脂を接合材料として、ダイを基板または既にボンディングされたダイの上にボンディング(搭載して接着)する装置である。ダイを、例えば、基板の表面にボンディングするダイボンダにおいては、コレットと呼ばれる吸着ノズルを用いてダイをウェハから吸着してピックアップし、基板上に搬送し、押付力を付与すると共に、接合材を加熱することによりボンディングを行うという動作(作業)が繰り返して行われる。コレットはボンディングヘッドの先端に取り付けられる。ボンディングヘッドはZY駆動軸等の駆動部(サーボモータ)で駆動され、サーボモータはモータ制御装置により制御される。
【0004】
サーボモータ制御においては、ワークやワークを支持するユニットに機械的衝撃を与えないように滑らかに加減速して、ワークを移動する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-175768号公報
【文献】特開2015-173551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイボンダなどのダイボンディング装置は、ボンディング精度などを向上させて、装置で生産する製品の品質を安定させることが求められている。特にボンディングヘッドは、生産性向上のために高速に動作させているため、振動によってボンディング精度を悪化させてしまうリスクがある。
【0007】
しかしながら、現状では、ボンディング精度向上のためには動作速度や加速度を遅くするなど生産性を落とす以外に手段がないという問題があった。
【0008】
本開示の課題は、ボンディングヘッド動作時の振動を低減することを可能とするダイボンディング装置を提供することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、ダイボンディング装置は、ダイ供給部から供給されたダイを基板又は前記基板に既にボンディングされたダイ上にボンディングするボンディング部と、ボンディング部を制御する制御部と、を備える。前記ボンディング部は、前記ダイを吸着するコレットを備えたボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドを移動する駆動軸を備えた駆動部と、前記ボンディングヘッドの加速度を検出可能なセンサと、を備える。前記制御部は、前記ボンディングヘッドがX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の何れか一方向に動作する際の振動を前記センサで測定し、測定した振動波形から前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の振動成分を抽出し、抽出した振動成分をキャンセルするための前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を生成する逆位相加算波形算出部と、前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の指令波形に前記X軸方向、前記Y軸方向および前記Z軸方向の逆位相加算波形を加算して振動抑制用指令波形を生成する振動抑制用指令波形生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上記ダイボンディング装置によれば、振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例に係るダイボンダの構成を示す概略上面図
【
図2】
図1のダイボンダの概略構成とその動作を説明する図
【
図3】
図1のダイボンダの制御系の概略構成を示すブロック図
【
図4】
図3のモータ制御装置の基本的な原理を説明するためのブロック構成図
【
図5】ジャイロセンサの角速度および加速度の検出方向を説明する図
【
図7】ボンディングヘッドのX軸回転方向の振動を説明する図
【
図11】振動抑制機能がある場合の加速度センサからの信号から抽出した波動波形を示す図
【
図12】
図1のダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態では、事前に取り込んだ動作中のボンディングヘッド振動波形を逆位相にして各モータ軸の指令波形に加算することで、ボンディングヘッド動作時に振動を低減させ、生産性を維持したままボンディング精度の向上を可能とする。
【0013】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【実施例】
【0014】
図1は実施例に係るダイボンダの概略を示す上面図である。
図2は
図1において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド及びボンディングヘッドの動作を説明する図である。
【0015】
ダイボンダ10は、大別して、一つ又は複数の最終1パッケージとなる製品エリア(以下、パッケージエリアPという。)をプリントした基板Sに実装するダイDを供給する供給部1と、ピックアップ部2、中間ステージ部3と、ボンディング部4と、搬送部5、基板供給部6と、基板搬出部7と、各部の動作を監視し制御する制御部8と、を有する。Y軸方向がダイボンダ10の前後方向であり、X軸方向が左右方向である。ダイ供給部1がダイボンダ10の手前側に配置され、ボンディング部4が奥側に配置される。
【0016】
まず、ダイ供給部1は基板SのパッケージエリアPに実装するダイDを供給する。ダイ供給部1は、ウェハ11を保持するウェハ保持台12と、ウェハ11からダイDを突き上げる点線で示す突上げユニット13と、を有する。ダイ供給部1は図示しない駆動手段によってXY方向に移動し、ピックアップするダイDを突上げユニット13の位置に移動させる。
【0017】
ピックアップ部2は、ダイDをピックアップするピックアップヘッド21と、ピックアップヘッド21をY方向に移動させるピックアップヘッドのY駆動部23と、コレット22を昇降、回転及びX方向移動させる図示しない各駆動部と、を有する。ピックアップヘッド21は、突き上げられたダイDを先端に吸着保持するコレット22(
図2も参照)を有し、ダイ供給部1からダイDをピックアップし、中間ステージ31に載置する。ピックアップヘッド21は、コレット22を昇降、回転及びX方向移動させる図示しない各駆動部を有する。
【0018】
中間ステージ部3は、ダイDを一時的に載置する中間ステージ31と、中間ステージ31上のダイDを認識する為のステージ認識カメラ32を有する。
【0019】
ボンディング部4は、中間ステージ31からダイDをピックアップし、搬送されてくる基板SのパッケージエリアP上にボンディングし、又は既に基板SのパッケージエリアPの上にボンディングされたダイの上に積層する形でボンディングする。ボンディング部4は、ピックアップヘッド21と同様にダイDを先端に吸着保持するコレット42(
図2も参照)を備えるボンディングヘッド41と、ボンディングヘッド41をY方向に移動させるY駆動部43と、基板SのパッケージエリアPの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンディング位置を認識する基板認識カメラ44とを有する。
このような構成によって、ボンディングヘッド41は、ステージ認識カメラ32の撮像データに基づいてピックアップ位置・姿勢を補正し、中間ステージ31からダイDをピックアップし、基板認識カメラ44の撮像データに基づいて基板にダイDをボンディングする。
【0020】
搬送部5は、基板Sを掴み搬送する基板搬送爪51と、基板Sが移動する搬送レーン52と、を有する。基板Sは、搬送レーン52に設けられた基板搬送爪51の図示しないナットを搬送レーン52に沿って設けられた図示しないボールネジで駆動することによって移動する。
このような構成によって、基板Sは、基板供給部6から搬送レーン52に沿ってボンディング位置まで移動し、ボンディング後、基板搬出部7まで移動して、基板搬出部7に基板Sを渡す。
【0021】
制御部8は、ダイボンダ10の各部の動作を監視し制御するプログラム(ソフトウェア)を格納するメモリと、メモリに格納されたプログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、を備える。
【0022】
ダイボンダ10は、ウェハ11上のダイDの姿勢を認識するウェハ認識カメラ24と、中間ステージ31に載置されたダイDの姿勢を認識するステージ認識カメラ32と、ボンディングステージBS上の実装位置を認識する基板認識カメラ44とを有する。認識カメラ間の姿勢ずれ補正しなければならないのは、ボンディングヘッド41によるピックアップに関与するステージ認識カメラ32と、ボンディングヘッド41による実装位置へのボンディングに関与する基板認識カメラ44である。
【0023】
制御部8について
図3を用いて説明する。
図3は制御系の概略構成を示すブロック図である。制御系80は制御部8と駆動部86と信号部87と光学系88とを備える。制御部8は、大別して、主としてCPU(Central Processor Unit)で構成される制御・演算装置81と、記憶装置82と、入出力装置83と、バスライン84と、電源部85とを有する。記憶装置82は、処理プログラムなどを記憶しているRAMで構成されている主記憶装置82aと、制御に必要な制御データや画像データ等を記憶しているHDDで構成されている補助記憶装置82bとを有する。入出力装置83は、装置状態や情報等を表示するモニタ83aと、オペレータの指示を入力するタッチパネル83bと、モニタを操作するマウス83cと、光学系88からの画像データを取り込む画像取込装置83dと、を有する。また、入出力装置83は、ダイ供給部1のXYテーブル(図示せず)やボンディングヘッドテーブルのZY駆動軸等の駆動部86を制御するモータ制御装置83eと、種々のセンサ信号や照明装置などのスイッチ等の信号部87から信号を取り込み又は制御するI/O信号制御装置83fとを有する。光学系88には、ウェハ認識カメラ24、ステージ認識カメラ32、基板認識カメラ44が含まれる。制御・演算装置81はバスライン84を介して必要なデータを取込み、演算し、ピックアップヘッド21等の制御や、モニタ83a等に情報を送る。
【0024】
制御部8は画像取込装置83dを介してウェハ認識カメラ24、ステージ認識カメラ32および基板認識カメラ44で撮像した画像データを記憶装置82に保存する。保存した画像データに基づいてプログラムしたソフトウェアにより、制御・演算装置81を用いてダイDおよび基板SのパッケージエリアPの位置決め、並びにダイDおよび基板Sの表面検査を行う。制御・演算装置81が算出したダイDおよび基板SのパッケージエリアPの位置に基づいてソフトウェアによりモータ制御装置83eを介して駆動部86を動かす。このプロセスによりウェハ上のダイの位置決めを行い、ピックアップ部2およびボンディング部4の駆動部で動作させダイDを基板SのパッケージエリアP上にボンディングする。使用するウェハ認識カメラ24、ステージ認識カメラ32および基板認識カメラ44はグレースケール、カラー等であり、光強度を数値化する。
【0025】
図4は
図3のモータ制御装置の基本的な原理を説明するためのブロック構成図である。モータ制御装置83eはモーションコントローラ210とサーボアンプ220とを備え、サーボモータ230を制御する。モーションコントローラ210は、理想的な指令波形の生成処理を行う理想波形生成部211と、指令波形生成部212と、DAC(Digital to Analog Converter)213と、逆位相加算波形算出部214と、振動抑制用指令波形生成部215と、を備える。サーボアンプ220は速度ループ制御部221を備える。
【0026】
図4に示すように、モータ制御装置83eは、モーションコントローラ210とサーボアンプ220とがクローズドループ制御となっている。従って、現在の指令位置と、サーボモータ230から得られる実位置および実速度を使用して、サーボアンプ220の速度ループ制御部221で速度制御を行う。ただし、速度ループ制御部221は、その速度制御を、モーションコントローラ210がサーボモータ230からの実速度および実位置を得て加加速度を制限しながら、指令波形を再生成することによって行っている。なお、理想波形生成部211および指令波形生成部212は、例えば、CPU(Central Processing Unit)とCPUが実行するプログラムを格納するメモリで構成される。
【0027】
例えば、
図4において、目標位置、目標速度、目標加速度および目標加加速度はモーションコントローラ210に与えられる。そして、指令波形生成部212には、サーボアンプ220を介して、またはサーボモータ230から直接、実位置および実速度がエンコーダ信号として逐次入力する。
【0028】
モーションコントローラ210の理想波形生成部211は、制御・演算装置81から入力された加加速度、加速度、速度及び位置の目標値から、(a)指令加加速度波形(JD)、(b)指令加速度波形(AD)、(c)指令速度波形(VD)、(d)指令位置波形(PD)をそれぞれ生成する。理想波形生成部211は、指令加加速度波形(JD)、指令加速度波形(AD)、指令速度波形(VD)、指令位置波形(PD)を振動抑制用指令波形生成部215に出力する。
【0029】
指令波形生成部212は、振動抑制用指令波形生成部215から出力される出力信号波形(理想的な位置の指令波形から得られる現在の指令位置に対して振動抑制された指令位置)と、サーボモータ230から入力されるエンコーダ信号(実位置)に基づいて、加加速度を制限しながら、今後の指令速度波形を逐次再生成して、DAC213に逐次出力する。例えば、指令波形生成部212は、(1)指令波形入出力処理、(2)エンコーダ信号カウント処理、および(3)指令波形再生処理を行う。詳しくは、特許文献1または2に記載される指令波形生成部で構成される。
【0030】
DAC213は、入力されたデジタルの指令値をアナログ信号の速度指令値に変換して、サーボアンプ220の速度ループ制御部221に出力する。なお、エンコーダ信号は、エンコーダシグナルカウンタ(不図示)にて位置偏差量をパルスとして蓄積する。
【0031】
サーボアンプ220の速度ループ制御部221は、モーションコントローラ210から入力される速度指令値と、サーボモータ230から入力されるエンコーダ信号に応じて、サーボモータ230の回転速度を制御する。
【0032】
サーボモータ230は、サーボアンプ220の速度ループ制御部221から入力される回転速度の制御に応じた回転速度で回転し、実位置および実速度をエンコーダ信号としてサーボアンプ220の速度ループ制御部221とモーションコントローラ210の指令波形生成部212に出力する。
【0033】
なお、
図4の実施例では、サーボモータ230のカウント値(回転回数および回転角度)からボンディングヘッド等の被駆動体の実位置を算出し、算出された実位置をもとに実速度を算出している。しかし、被駆動体の位置を直接検出する位置検出装置を備え、当該位置検出装置が検出した位置を実位置とするようにしても良い。
【0034】
逆位相加算波形算出部214はジャイロセンサ45から角速度およびXYZ方向加速度信号を取り込み、振動成分を抽出し、逆位相加算波形を算出する。
【0035】
振動抑制用指令波形生成部215は逆位相加算波形算出部214で算出された振動抑制用の逆位相加算波形を加算して振動抑制用指令波形を生成する。
【0036】
ジャイロセンサの取付位置および角速度・加速度検出方法について
図5~7を用いて説明する。
図5はジャイロセンサの角速度および加速度の検出方向を示す図である。
図6はジャイロセンサの取付位置を示す図である。
図7はボンディングヘッドのX軸回転方向の振動を示す図である。
【0037】
ジャイロセンサ45には3軸角速度検出および3軸加速度の検出が可能な6軸ジャイロセンサを用いる。
図5に示すように、ジャイロセンサ45の角速度および加速度の検出(振動検出)方向は、Ax:X軸方向加速度(G)、Ay:Y軸方向加速度(G)、Az:Z軸方向加速度(G)、Gx:X軸角速度(deg/s)、Gy:Y軸角速度(deg/s)、Gz:Z軸角速度(deg/s)である。
【0038】
図6に示すように、ジャイロセンサ45を、ボンディングヘッド41が駆動するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の駆動軸の交点に近いボンディングヘッド41の中心Oの付近(以下、単に、ボンディングヘッド中心という。)に設置する。例えば、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の駆動軸の交点はボンディングヘッド41の裏側(図面の裏側)に位置し、中心Oはボンディングヘッド41の重心である。ジャイロセンサ45はボンディングヘッド41の表側(図面の手前側)に設置される。よって、ジャイロセンサ45はX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の駆動軸の交点およびボンディングヘッド41の中心Oよりも手前に位置するが、ボンディングヘッド中心に位置するという。ジャイロセンサ45から取得した加速度波形とモータ指令加速度波形との差分からボンディングヘッドの振動波形を抽出することが可能となる。
【0039】
また、
図7に示すように、ジャイロセンサ45にてボンディングヘッド41の回転方向の振動(Gx)についても正確に捉えることができる。
【0040】
逆位相加算波形生成および振動抑制用指令波形生成の手順について
図8~11を用いて説明する。
図8は振動抑制機能なしでの教示動作を説明する図であり、
図8(A)はX軸指令波形であり、
図8(B)はY軸指令波形であり、
図8(C)はZ軸指令波形で図である。
図9は逆位相加算波形の生成を説明する図である。
図10は振動抑制機能ありの動作を説明する図である。
図11は振動抑制機能がある場合の加速度センサからの信号から抽出した波動波形を示す図ある。
【0041】
教示用の動作として、ボンディングヘッド41がX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の何れか1方向に動作する際の6軸全方向の振動を加速度センサであるジャイロセンサ45で測定し、逆位相加算波形算出部214は測定した波形から振動成分を抽出する。
【0042】
例えば、Z軸の1方向に動作する場合、
図8に示すように、理想波形生成部211からZ軸方向への指令出力があり(Z軸方向への移動があり)、X軸方向およびY軸方向への指令出力がなく(X軸方向およびY軸方向への移動なく)、
図8(C)に示すように、Z軸の指令加速度波形(AD)のみが出力される。
【0043】
この場合のジャイロセンサ45の信号から振動波形は、例えば、
図9に示すようなX軸方向/Y軸方向/Z軸方向の振動波形になる。ここで、回転方向の振動については、コレット42の先端部のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の振動に置き換えている。Z軸方向の振動波形の振幅は大きく、X軸方向およびY軸方向の振幅は小さい。逆位相加算波形算出部214は
図9の振動波形における破線部分の抽出した振動成分をキャンセルするための逆位相加算波形を生成する。
【0044】
上述の教示用動作および逆位相加算波形生成処理をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の全ての方向で実施する。
【0045】
教示終了後の動作では、振動抑制用指令波形生成部215は、
図8に示すような振動抑制機能無効時の各モータ軸の指令波形である理想波形生成部211で生成された指令加速度波形(AD)に、
図10に示すように、逆位相加算波形算出部214で算出された逆位相加算波形を加算して、最終的な振動抑制用指令波形をX軸、Y軸、Z軸の全軸分生成する。この結果、
図11に示すようにX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の振動波形の振幅は
図9の振動波形よりも小さくなる。
【0046】
モータ1方向に動作する際は、動作方向のモータ軸だけでなく、その他のモータ軸についてもあらかじめ生成しておいた振動抑制用指令波形でモータを駆動させる。
【0047】
一方向だけでなくX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の複合動作時でも、逆位相加算波形算出部214で算出された各方向動作時の逆位相加算波形を指令波形である指令加速度波形(AD)に加算させることで、一方向動作と同様に振動を抑えた動作が可能となる。
【0048】
次に、実施例に係るダイボンダを用いた半導体装置の製造方法について
図12を用いて説明する。
図12は
図1のダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
ステップS11:ウェハ11から分割されたダイDが貼付されたダイシングテープ16を保持したウェハリング14をウェハカセット(不図示)に格納し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8はウェハリング14が充填されたウェハカセットからウェハリング14をダイ供給部1に供給する。また、基板Sを準備し、ダイボンダ10に搬入する。制御部8は基板供給部6で基板Sを基板搬送爪51に取り付ける。
【0049】
ステップS12:制御部8は分割したダイをウェハからピックアップする。
ステップS13:制御部8は、ピックアップしたダイを基板S上に搭載又は既にボンディングしたダイの上に積層する。制御部8はウェハ11からピックアップしたダイDを中間ステージ31に載置し、ボンディングヘッド41で中間ステージ31から再度ダイDをピックアップし、搬送されてきた基板Sにボンディングする。この際、ボンディングヘッド41はZ軸上方向の動作、Y軸方向の動作、Z軸下方向の動作を行うが、制御部8は上述の振動抑制用指令波形で駆動部のモータを駆動する。
【0050】
ステップS14:制御部8は基板搬出部7で基板搬送爪51からダイDがボンディングされた基板Sを取り出す。ダイボンダ10から基板Sを搬出する。
【0051】
本実施例は、ボンディングヘッドが指令された方向に動作する際に発生する他方向の振動に対してX軸、Y軸およびZ軸それぞれのモータ軸に振動抑制用の指令波形をフィードバックすることで、ボンディングヘッドの振動を抑え、結果的にモータの動作速度などを下げることなくボンディング精度の向上が可能となる。
【0052】
また、ボンディングヘッドの駆動部の中心付近に六軸ジャイロセンサを搭載することで、回転方向も含めた振動を正確に把握することができる。回転方向の振動については、コレット先端部のX軸、Y軸およびZ軸方向の振動に置き換え、X軸、Y軸およびZ軸の各モータ軸の振動抑制用指令波形を生成して動作させる。最終的にダイを吸着するボンディングヘッドのコレット先端の振動を抑えたボンディング動作が可能となる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、実施例では、ボンディングヘッドをX軸/Y軸/Z軸駆動する場合について説明したが、ボンディングヘッドが移動する際に振動するGx、Gy、Gz方向の最大回転量と同等以上の回転機構を有する場合、ジャイロセンサで検出した回転方向の振動の逆方向の回転動作を指令波形に加算することで、ボンディング動作中の振動を抑制させるようにしてもよい。
また、実施例では、ボンディングヘッドにジャイロセンサを設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、ピックアップヘッドにジャイロセンサを設けてもよい。この場合、ピックアップヘッドをボンディングヘッドと同様に制御する。
また、実施例では、ボンディングヘッドにジャイロセンサを設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、X軸/Y軸/Z軸の加速度センサ設けてもよい。
実施例ではピックアップヘッドおよびボンディングヘッドをそれぞれ1つ備えているが、それぞれ二つ以上であってもよい。また、実施例では中間ステージを備えているが、中間ステージがなくてもよい。この場合、ピックアップヘッドとボンディングヘッドは兼用してもよい。
また、実施例ではダイの表面を上にしてボンディングされるが、ダイをピックアップ後ダイの表裏を反転させて、ダイの裏面を上にしてボンディングしてもよい。この場合、中間ステージは設けなくてもよい。この装置はフリップチップボンダという。
【符号の説明】
【0054】
10:ダイボンダ
1:ダイ供給部
11:ウェハ
13:突上げユニット
2:ピックアップ部
21:ピックアップヘッド
3:中間ステージ部
31:中間ステージ
4:ボンディング部
41:ボンディングヘッド
8:制御部
83e:モータ制御装置
210:モーションコントローラ
211:理想波形生成部
212:指令波形生成部
213:DAC
214:逆位相加算波形算出部
215:振動抑制用指令波形生成部
220:サーボアンプ
221:速度ループ制御部
230:サーボモータ
D:ダイ
S:基板