(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】基板保持装置、および該基板保持装置を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220824BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622Q
H01L21/304 643Z
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2018194305
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】原田 稔
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-295751(JP,A)
【文献】特開平03-025918(JP,A)
【文献】特開2017-107900(JP,A)
【文献】特開昭59-108616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持装置であって、
前記基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、
前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジング
と、
前記ハウジングに隣接して配置された液体ノズルを備え、
前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有し、
前記基板チャックと前記ハウジングは、異なる材料から構成されて
おり、
前記液体ノズルは、前記ハウジングの前記挿入孔の上側開口を向いて配置されている基板保持装置。
【請求項2】
前記基板チャックの硬度は、前記ハウジングの硬度と異なる、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記基板チャックおよび前記ハウジングのうちの一方は、炭素繊維とポリエーテルエーテルケトンとの複合材料から構成されており、他方は超高分子量ポリエチレンから構成されている、請求項1または2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記基板チャックおよび前記ハウジングの外側に配置されたノズル保持部材をさらに備え、
前記液体ノズルは、前記ノズル保持部材に固定されている、請求項
1に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記基板チャックと、前記液体ノズルとの間に配置された回転カバーをさらに備え、
前記回転カバーは、前記液体ノズルの位置に対応した通孔を有する、請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記液体ノズルに接続された液体供給ラインと、
前記液体供給ラインに取り付けられた液体供給弁と、
前記液体供給弁を開閉する動作制御部とをさらに備えている、請求項
1乃至
5のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記基板チャックが上昇しておりかつ、前記基板チャックが前記基板を保持していないときに、前記液体供給弁を開くように構成されている、請求項
6に記載の基板保持装置。
【請求項8】
基板を保持する基板保持装置であって、
前記基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、
前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジングとを備え、
前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有し、
前記基板チャックと前記ハウジングは、異なる材料から構成されており、
前記ハウジングは、前記挿入孔を構成する内面に複数の縦溝を有する
、基板保持装置。
【請求項9】
前記複数の縦溝は、前記挿入孔の周方向において等間隔で配列されている、請求項
8に記載の基板保持装置。
【請求項10】
基板を保持する基板保持装置であって、
前記基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、
前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに隣接して配置された液体ノズルとを備え、
前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有し、
前記液体ノズルは、前記ハウジングの前記挿入孔の上側開口を向いて配置されている、基板保持装置。
【請求項11】
前記基板チャックおよび前記ハウジングの外側に配置されたノズル保持部材をさらに備え、
前記液体ノズルは、前記ノズル保持部材に固定されている、請求項
10に記載の基板保持装置。
【請求項12】
前記基板チャックと、前記液体ノズルとの間に配置された回転カバーをさらに備え、
前記回転カバーは、前記液体ノズルの位置に対応した通孔を有する、請求項
10または
11に記載の基板保持装置。
【請求項13】
前記ハウジングは、前記挿入孔を構成する内面に複数の縦溝を有する、請求項
10乃至
12のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項14】
前記複数の縦溝は、前記挿入孔の周方向において等間隔で配列されている、請求項
13に記載の基板保持装置。
【請求項15】
前記液体ノズルに接続された液体供給ラインと、
前記液体供給ラインに取り付けられた液体供給弁と、
前記液体供給弁を開閉する動作制御部とをさらに備えている、請求項
10乃至
14のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項16】
前記動作制御部は、前記基板チャックが上昇しておりかつ、前記基板チャックが前記基板を保持していないときに、前記液体供給弁を開くように構成されている、請求項
15に記載の基板保持装置。
【請求項17】
基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、
前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに隣接して配置された液体ノズルとを備え、
前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有する基板保持装置を動作させる方法であって、
前記基板チャックが上昇し、かつ前記基板チャックが前記基板を保持していないときに、前記液体ノズルから、前記ハウジングの前記挿入孔の上側開口に向かって液体を供給する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板を保持する基板保持装置に関する。また、本発明は、上記基板保持装置を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウェーハなどの基板の周縁部を保持して回転させる基板保持装置が知られている。このような基板保持装置は、基板を回転させながら基板の表面にIPA蒸気を吹き付けて該基板を乾燥させる乾燥装置などの処理装置に適用されている。
【0003】
上述した基板保持装置は、基板の周縁部を支持するための複数の基板チャックを有している。これら基板チャックは基板の周縁部に沿って配置されている。基板チャックの周囲にはばねが配置されており、このばねによって基板チャックは下方に付勢されている。また、基板チャックはリフターにより上昇される。基板が搬送ロボットから基板保持装置に渡されるときは、基板チャックはばねの力に逆らってリフターにより上昇される。基板保持装置が基板を回転させながら該基板を処理するときは、リフターが下降するとともに基板チャックはばねにより押し下げられる。
【0004】
上述した基板保持装置では、基板チャックは、ハウジングに支持されている。ハウジングは、上下に延びる挿入孔を有しており、基板チャックは、上記挿入孔に挿入されている。ハウジングの挿入孔の直径は基板チャックの直径よりも僅かに大きく、基板チャックは、ハウジング(ハウジングの挿入孔を構成する内面)に常に接触している。基板チャックは、ハウジングに接触しながらハウジングに対して上下方向に相対移動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板チャックはハウジングに常に接触しているため、基板チャックがハウジングに対して相対移動するとき、基板チャックとハウジングが互いに削り合う、いわゆるかじりが発生することがある。上記かじりが発生すると、基板チャックまたはハウジングの摩耗粉が、上記挿入孔内に溜まり、基板チャックの動作を妨げてしまう。結果として、基板チャックが安定して動作せず、基板を正常に保持できないことがある。
【0007】
そこで本発明は、基板チャックの動作の安定性を向上させた基板保持装置を提供する。さらに本発明は、このような基板保持装置を動作させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、基板を保持する基板保持装置であって、前記基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングに隣接して配置された液体ノズルを備え、前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有し、前記基板チャックと前記ハウジングは、異なる材料から構成されており、前記液体ノズルは、前記ハウジングの前記挿入孔の上側開口を向いて配置されている基板保持装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記基板チャックの硬度は、前記ハウジングの硬度と異なる。
一態様では、前記基板チャックおよび前記ハウジングのうちの一方は、炭素繊維とポリエーテルエーテルケトンとの複合材料から構成されており、他方は超高分子量ポリエチレンから構成されている。
一態様では、前記基板チャックおよび前記ハウジングの外側に配置されたノズル保持部材をさらに備え、前記液体ノズルは、前記ノズル保持部材に固定されている。
一態様では、前記基板チャックと、前記液体ノズルとの間に配置された回転カバーをさらに備え、前記回転カバーは、前記液体ノズルの位置に対応した通孔を有する。
一態様では、前記液体ノズルに接続された液体供給ラインと、前記液体供給ラインに取り付けられた液体供給弁と、前記液体供給弁を開閉する動作制御部とをさらに備えている。
一態様では、前記動作制御部は、前記基板チャックが上昇しておりかつ、前記基板チャックが前記基板を保持していないときに、前記液体供給弁を開くように構成されている。
一態様では、基板を保持する基板保持装置であって、前記基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジングとを備え、前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有し、前記基板チャックと前記ハウジングは、異なる材料から構成されており、前記ハウジングは、前記挿入孔を構成する内面に複数の縦溝を有する、基板保持装置が提供される。
一態様では、前記複数の縦溝は、前記挿入孔の周方向において等間隔で配列されている。
【0010】
一態様では、基板を保持する基板保持装置であって、前記基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングに隣接して配置された液体ノズルとを備え、前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有し、前記液体ノズルは、前記ハウジングの前記挿入孔の上側開口を向いて配置されている、基板保持装置が提供される。
【0011】
一態様では、前記基板チャックおよび前記ハウジングの外側に配置されたノズル保持部材をさらに備え、前記液体ノズルは、前記ノズル保持部材に固定されている。
一態様では、前記基板チャックと、前記液体ノズルとの間に配置された回転カバーをさらに備え、前記回転カバーは、前記液体ノズルの位置に対応した通孔を有する。
一態様では、前記ハウジングは、前記挿入孔を構成する内面に複数の縦溝を有する。
一態様では、前記複数の縦溝は、前記挿入孔の周方向において等間隔で配列されている。
一態様では、前記液体ノズルに接続された液体供給ラインと、前記液体供給ラインに取り付けられた液体供給弁と、前記液体供給弁を開閉する動作制御部とをさらに備えている。
一態様では、前記動作制御部は、前記基板チャックが上昇しておりかつ、前記基板チャックが前記基板を保持していないときに、前記液体供給弁を開くように構成されている。
【0012】
一態様では、基板の周縁部を保持可能な基板チャックと、前記基板チャックを上下動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングに隣接して配置された液体ノズルとを備え、前記ハウジングは、前記基板チャックが挿入される挿入孔を有する基板保持装置を動作させる方法であって、前記基板チャックが上昇し、かつ前記基板チャックが前記基板を保持していないときに、前記液体ノズルから、前記ハウジングの前記挿入孔の上側開口に向かって液体を供給する、方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板チャックまたはハウジングの摩耗粉が、ハウジングの挿入孔内に溜まることを抑制することができる。したがって、基板チャックの動作の安定性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板保持装置を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示す基板保持装置を示す平面図である。
【
図3】リフターによって基板チャックが上昇された状態を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、クランプを示す平面図であり、
図4(b)はクランプの側面図である。
【
図5】
図5(a)は、クランプがウェーハを把持した状態を示す平面図であり、
図5(b)はクランプがウェーハを解放した状態を示す平面図である。
【
図8】第2の磁石と第3の磁石の配置を説明するための模式図であり、基板チャックの軸方向から見た図である。
【
図9】リフターにより基板チャックを上昇させたときの
図2に示すA-A線断面図である。
【
図11】基板保持装置の他の実施形態を示す縦断面図である。
【
図12】ハウジングの他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板保持装置10を示す縦断面図である。
図2は
図1に示す基板保持装置10を示す平面図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、基板保持装置10は、複数のアーム1aを有する基台1と、複数のアーム1aの先端にそれぞれ設けられた複数のハウジング17と、複数のハウジング17にそれぞれ支持された複数の基板チャック2とを備えている。複数のハウジング17は、上下に延びる複数の挿入孔18をそれぞれ有しており、これら複数の挿入孔18に、複数の基板チャック2がそれぞれ挿入されている。複数の基板チャック2は、その上端に複数のクランプ3をそれぞれ有している。本実施形態では、複数のアーム1aは4つのアーム1aであり、複数のハウジング17は4つのハウジング17であり、複数の基板チャック2は4つの基板チャック2であり、複数のクランプ3は4つのクランプ3である。各ハウジング17は各アーム1aと一体に構成してもよい。
【0017】
基板チャック2は、基板の一例であるウェーハWの周縁部を保持可能に構成されており、ハウジング17によって上下動可能に支持されている。各基板チャック2は、基台1およびハウジング17に対して相対的に上下動可能であり、かつ各基板チャック2はその軸心まわりに回転可能に構成されている。基板チャック2はウェーハWの周縁部に沿って等間隔で配置されている。
【0018】
基台1は回転軸5の上端に固定されており、この回転軸5は軸受6によって回転可能に支持されている。軸受6は回転軸5を囲むように配置された円筒体7の内周面に固定されている。円筒体7の下端は架台9に取り付けられており、その位置は固定されている。回転軸5は、プーリー11,12およびベルト14を介してモータ15に連結されている。モータ15を駆動させることにより、基台1および回転軸5はその軸心を中心として回転するようになっている。ウェーハWはクランプ3によって把持され、モータ15によってウェーハWの中心軸線まわりに回転される。
【0019】
円筒体7を囲むように、基板チャック2を上昇させるリフター20が配置されている。このリフター20は、円筒体7に対して上下方向にスライド可能に構成されている。リフター20は、4つの基板チャック2を持ち上げる4つのプッシャー20aを有している。円筒体7の外周面とリフター20の内周面との間には、第1の気体チャンバ21と第2の気体チャンバ22が形成されている。これら第1の気体チャンバ21と第2の気体チャンバ22は、第1の気体流路24および第2の気体流路25にそれぞれ連通しており、これら第1の気体流路24および第2の気体流路25は、図示しない加圧気体供給源に連結されている。第1の気体チャンバ21内の圧力を第2の気体チャンバ22内の圧力よりも高くすると、
図3に示すように、リフター20が上昇する。一方、第2の気体チャンバ22内の圧力を第1の気体チャンバ21内の圧力よりも高くすると、
図1に示すように、リフター20が下降する。リフター20により4つの基板チャック2および4つのクランプ3は同時に上昇し、下降する。
【0020】
基板保持装置10は、回転カバー28をさらに備えている。回転カバー28は、基台1の上面に固定されている。この回転カバー28は、回転するウェーハWから遠心力により飛び出した液体(ウェーハWの上面を処理するために、ウェーハW上に供給されたリンス水または薬液などの液体)を受け止めるためのものである。
図1および
図3は回転カバー28の縦断面を示している。回転カバー28はウェーハWの全周を囲むように配置されている。回転カバー28の縦断面形状は径方向内側に傾斜している。また、回転カバー28の内周面は滑らかな曲面から構成されている。回転カバー28の上端はウェーハWに近接しており、回転カバー28の上端の内径は、ウェーハWの直径よりもやや大きい。回転カバー28の上端には、基板チャック2の外周面形状に沿った切り欠き28aが形成されている。回転カバー28の底面には、斜めに延びる液体排出孔(図示せず)が形成されている。回転カバー28は、基板チャック2とハウジング17と一体に回転する。
【0021】
図4(a)は、クランプ3を示す平面図であり、
図4(b)はクランプ3の側面図である。クランプ3は、基板チャック2の上端の偏心した位置に形成されている。このクランプ3は、ウェーハWの周縁部に当接することによりウェーハWの周縁部を把持する。基板チャック2の上端には、クランプ3から基板チャック2の軸心に向かって延びる位置決め部41がさらに形成されている。位置決め部41の一端はクランプ3の側面に一体的に接続され、他端は基板チャック2の軸心上に位置している。この位置決め部41の中心側の端部は、基板チャック2と同心の円に沿って湾曲した側面41aを有している。基板チャック2の上端は、下方に傾斜するテーパ面となっている。
【0022】
図5(a)は、クランプ3がウェーハWを把持した状態を示す平面図であり、
図5(b)はクランプ3がウェーハWを解放した状態を示す平面図である。ウェーハWは、基板チャック2の上端(テーパ面)上に載置され、そして、基板チャック2を回転させることにより、クランプ3をウェーハWの周縁部に当接させる。これにより、
図5(a)に示すように、ウェーハWがクランプ3に把持される。基板チャック2を反対方向に回転させると、
図5(b)に示すように、クランプ3がウェーハWから離れ、これによりウェーハWが解放される。このとき、ウェーハWの周縁部は、位置決め部41の中心側端部の側面41aに接触する。したがって、位置決め部41の側面41aによって、基板チャック2が回転するときのウェーハWの変位を制限することができ、その後のウェーハ搬送の安定性を向上させることができる。
【0023】
図6は
図2に示すA-A線断面図であり、
図7は
図6のB-B線断面図である。
図6および
図7では、回転カバー28の図示は省略されている。以下の説明は、4つの基板チャック2のうちの1つに関するものであるが、他の基板チャック2にも同様に適用される。挿入孔18の直径は基板チャック2の直径よりも僅かに大きく、基板チャック2は、ハウジング17の挿入孔18を構成する内面18aに常に接触している。基板チャック2は、内面18aに接触しながらハウジング17に対して上下方向に相対移動可能となっている。さらに基板チャック2は、その軸心まわりに回転可能となっている。
【0024】
基板保持装置10は、基板チャック2をその軸方向に付勢するばね30を有している。ばね30の上端は、ハウジング17の下面に接触している。基板チャック2の下端にはばねストッパー35が接続されている。基板チャック2は、その軸心まわりに回転可能なようにばねストッパー35に連結されている。すなわち、基板チャック2は、ばねストッパー35に対して相対的に回転可能となっている。
【0025】
ばね30の上端はハウジング17を押圧し、ばね30の下端は基板チャック2に連結されたばねストッパー35を押している。したがって、本実施形態のばね30は、基板チャック2を下方に付勢する。基板チャック2は、ハウジング17の挿入孔18の直径よりも大きい径を有する基板チャックストッパー2aを有している。この基板チャックストッパー2aはハウジング17よりも上方に位置している。したがって、
図6に示すように、基板チャック2の下方への移動は基板チャックストッパー2aによって制限される。
【0026】
ハウジング17には第1の磁石43が埋設されている。基板チャック2内には第2の磁石44および第3の磁石45が配置されている。これら第2の磁石44および第3の磁石45は、上下方向に離間して配列されている。これらの第1~第3の磁石43,44,45としては、ネオジム磁石が好適に用いられる。
【0027】
図8は、第2の磁石44と第3の磁石45の配置を説明するための模式図であり、基板チャック2の軸方向から見た図である。
図8に示すように、第2の磁石44と第3の磁石45とは、基板チャック2の周方向においてずれて配置されている。すなわち、第2の磁石44と基板チャック2の中心とを結ぶ線と、第3の磁石45と基板チャック2の中心とを結ぶ線とは、基板チャック2の軸方向から見たときに所定の角度αで交わっている。
【0028】
基板チャック2が、
図6に示す下降位置にあるとき、第2の磁石44は第1の磁石43に近接し、第3の磁石45は第1の磁石43から離れている。このとき、第1の磁石43と第2の磁石44との間には引き合う力が働く。この引力は、基板チャック2にその軸心まわりに回転する力を与え、その回転方向は、クランプ3がウェーハWの周縁部を押圧する方向である。したがって、
図6に示す下降位置は、ウェーハWを把持するクランプ位置となる。
【0029】
図9は、リフター30により基板チャック2を上昇させたときの
図2に示すA-A線断面図であり、
図10は
図9のC-C線断面図である。リフター30により基板チャック2を
図9に示す上昇位置まで上昇させると、第3の磁石45が第1の磁石43に接近し、第2の磁石44は第1の磁石43から離れる。このとき、第1の磁石43と第3の磁石45との間には引き合う力が働く。この引力は基板チャック2にその軸心まわりに回転する力を与え、その回転方向は、クランプ3がウェーハWから離間する方向である。したがって、
図9に示す上昇位置は、ウェーハWをリリースするアンクランプ位置である。
【0030】
第2の磁石44と第3の磁石45とは基板チャック2の周方向において異なる位置に配置されているので、基板チャック2の上下移動に伴って基板チャック2には回転力が作用する。この回転力によってクランプ3にウェーハWを把持する力とウェーハWを解放する力が与えられる。したがって、基板チャック2を上下させるだけで、クランプ3はウェーハWを把持し、かつ解放することができる。このように、第1の磁石43、第2の磁石44、および第3の磁石45は、基板チャック2を基板チャック2の軸心まわりに回転させる回転機構として機能する。この回転機構は、基板チャック2の上下動に従って動作する。
【0031】
基板チャック2がリフター20によって上昇されるとき、リフター20のプッシャー20aは、ばねストッパー35に接触する。基板チャック2はばねストッパー35とは独立に回転可能であるので、基板チャック2は上昇しながらその軸心まわりにスムーズに回転することができ、その一方でばねストッパー35は回転しない。リフター20は、ばね30の力に逆らって基板チャック2をその軸方向に移動させる移動機構である。
【0032】
基板チャック2の側面には、その軸心に沿って延びる溝46が形成されている。この溝46は円弧状の水平断面を有している。ハウジング17には、溝46に向かって突起する突起部47が形成されている。この突起部47の先端は、溝46の内部に位置しており、突起部47は溝46に緩やかに係合している。この溝46および突起部47は、基板チャック2の回転角度を制限するために設けられている。
【0033】
図3に示すように、基板チャック2が上昇すると、ウェーハWは回転カバー28よりも高い位置にまで上昇されるとともに、クランプ3はウェーハWの周縁部から離れる。したがって、搬送ロボットなどの搬送装置(図示せず)は、ウェーハWを基板保持装置10から取り出すことができる。
【0034】
ウェーハWは、
図1に示す、基板チャック2が下降位置にある状態で、モータ15によって回転される。ウェーハWの回転が停止するときに、各基板チャック2が各プッシャー20aの上方に位置するようにモータ15の停止動作が制御される。
【0035】
本実施形態では、基板チャック2とハウジング17は、異なる材料から構成されている。より具体的には、基板チャック2の硬度は、ハウジング17の硬度と異なっており、基板チャック2の比重は、ハウジング17の比重と異なっている。本実施形態では、ハウジング17の硬度は、基板チャック2の硬度よりも小さく、ハウジング17の比重は、基板チャック2の比重よりも小さい。一実施形態では、基板チャック2の硬度を、ハウジング17の硬度よりも小さくしてもよく、基板チャック2の比重を、ハウジング17の比重よりも小さくしてもよい。
【0036】
本実施形態では、基板チャック2は、炭素繊維とポリエーテルエーテルケトンとの複合材料(以下、C-PEEKという)から構成されており、ハウジング17は、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PEともいう)から構成されている。基板チャック2およびハウジング17をこれらの材料から構成した場合、基板保持装置10の耐久試験において、ハウジング17の挿入孔18に傷などの変化が見られず、上述のいわゆるかじりが抑制されていることが確認できた。上記耐久試験は、基板チャック2を100万回上下動作させることにより行ったものである。
【0037】
超高分子量ポリエチレンは、滑り特性や耐摩耗性も優れており、C-PEEKよりもコストが安いという利点もある。したがって、ハウジング17に超高分子量ポリエチレンを使用することによって、基板保持装置10全体をコストダウンすることができる。一実施形態では、ハウジング17をC-PEEKから構成し、基板チャック2を超高分子量ポリエチレンから構成してもよい。この場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0038】
基板チャック2とハウジング17が同じ材料から構成されていると、基板チャック2がハウジング17に対して相対移動するときに、基板チャック2とハウジング17とは互いに削り続ける。しかし、基板チャック2とハウジング17を異なる材料から構成することによって、いわゆるかじりを抑制することができる。その結果、基板チャック2またはハウジング17の摩耗粉が、挿入孔18内に溜まることを抑制することができる。したがって、基板チャック2の動作の安定性が向上できる。
【0039】
図11は、基板保持装置10の他の実施形態を示す縦断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1乃至
図10を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態の基板保持装置10は、ハウジング17の挿入孔18に液体を供給する複数の液体ノズル51と、各液体ノズル51に液体を供給する複数の液体供給ライン53と、複数の液体供給ライン53のそれぞれに取り付けられた複数の液体供給弁54と、複数の液体供給弁54を開閉する動作制御部60と、複数の液体ノズル51を保持するノズル保持部材57とをさらに備えている。複数の液体ノズル51は複数の液体供給ライン53にそれぞれ接続されている。各液体供給ライン53は、図示しない液体供給源に接続されている。
【0040】
本実施形態では、複数の液体ノズル51は4つの液体ノズル51であり(うち2つは図示せず)、複数の液体供給ライン53は4つの液体供給ライン53であり(うち2つは図示せず)、複数の液体供給弁54は4つの液体供給弁54である(うち2つは図示せず)。
【0041】
液体ノズル51はノズル保持部材57に固定されており、ノズル保持部材57は、基板チャック2およびハウジング17の外側に配置されている。複数の液体ノズル51は、複数のハウジング17にそれぞれ隣接して配置されており、各液体ノズル51は、各ハウジング17の挿入孔18の上側開口を向いて配置されている。具体的には、液体ノズル51は、挿入孔18の上側開口よりも高い位置に配置されており、液体を挿入孔18に斜め上から供給する位置に配置されている。
【0042】
回転カバー28は、基板チャック2と、液体ノズル51との間に配置されており、複数の液体ノズル51のそれぞれの位置に対応した複数の通孔28bを有している。すなわち、回転カバー28は、4つの液体ノズル51のそれぞれの位置に対応した4つの通孔28bを有している。具体的には、4つの通孔28bは、基台1(回転カバー28)が静止しているとき、液体の供給方向において、各液体ノズル51と各通孔28bの位置が一致するように構成されている。通孔28bをこのような構成にすることによって、液体ノズル51から通孔28bを通じてハウジング17の挿入孔18に液体を供給することができる。液体を挿入孔18に供給することによって、挿入孔18が洗浄される。
【0043】
一実施形態では、モータ15をステッピングモータやサーボモータから構成してもよい。ステッピングモータやサーボモータから構成されたモータ15は、通孔28bと液体ノズル51の位置を精密に合わせることができる。
【0044】
複数の液体供給弁54は、液体供給弁54の開閉を制御する動作制御部60に電気的に接続されており、各液体供給弁54は、動作制御部60によって操作される。動作制御部60が各液体供給弁54を開くと、液体供給源から各液体供給ライン53を通って各液体ノズル51に液体が供給される。動作制御部60が各液体供給弁54を閉じると、液体の供給が停止される。液体ノズル51に供給される液体の一例として、純水が挙げられる。
【0045】
基板チャック2がウェーハWをリリースした後や、基板チャック2が図示しない搬送装置からウェーハWを受け取るときなど、基板チャック2がウェーハWを保持していないとき、基板チャック2は、
図9に示す上昇位置にある。このとき、液体ノズル51からハウジング17の挿入孔18の上側開口に向かって液体が供給され、基板保持装置10(ハウジング17の挿入孔18)が洗浄される。言い換えれば、動作制御部60は、基板チャック2が上昇しておりかつ、基板チャック2がウェーハWを保持していないときに、液体供給弁54を開くように構成されている。基板チャック2がウェーハWを保持しているとき、液体供給弁54は閉じている。
【0046】
挿入孔18が洗浄されるとき、基台1(回転カバー28)は、液体の供給方向において、各液体ノズル51と各通孔28bの位置が一致する回転位置で静止している。これにより、液体ノズル51から通孔28bを通じてハウジング17の挿入孔18に液体が供給される。
【0047】
液体を挿入孔18に供給し、挿入孔18を洗浄することによって、挿入孔18内で生じた摩耗粉を洗い流し、かつ基板チャック2と挿入孔18との潤滑性を向上させることができる。その結果、基板チャック2またはハウジング17の摩耗粉が、挿入孔18内に溜まることを抑制することができる。さらに、挿入孔18内の液体自体が潤滑剤として機能し、基板チャック2をスムーズに上下動させることを可能とする。したがって、基板チャック2の動作の安定性が向上できる。
【0048】
一実施形態では、基板チャック2が上昇し、ウェーハWをリリースする毎に挿入孔18に液体を供給してもよい。さらに一実施形態では、基板チャック2が予め定められた回数上昇する毎に挿入孔18に液体を供給してもよい。さらに一実施形態では、基板チャック2と、ハウジング17とは同じ材料から構成されていてもよい。基板チャック2と、ハウジング17とが同じ材料から構成されていても、液体を挿入孔18に供給し、挿入孔18を洗浄することによって、基板チャック2と挿入孔18との潤滑性を向上させ、かつ上記摩耗粉を洗い流すことができる。
【0049】
図12は、ハウジング17の他の実施形態を示す縦断面図であり、
図13は、
図12に示すハウジング17の上面図である。
図12および
図13では、第1の磁石43および突起部47の図示は省略されている。本実施形態のハウジング17は、
図1乃至
図10を参照して説明した実施形態および
図11を参照して説明した実施形態に適用することができる。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1乃至
図11を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0050】
図12および
図13に示すように、ハウジング17は、挿入孔18を構成する内面18aに複数の縦溝18bを有している。より具体的には、複数の縦溝18bは、挿入孔18の周方向において等間隔で配列されており、縦溝18bは、ハウジング17の上端から下端まで延びている。
【0051】
縦溝18bがハウジング17の上端まで延びているので、ウェーハWに供給された液体や、液体ノズル51から供給された液体を、挿入孔18内に容易に導くことができる。さらに、縦溝18bがハウジング17の下端まで延びているので、挿入孔18内で発生した基板チャック2またはハウジング17の摩耗粉を、ウェーハW上に供給された液体や、液体ノズル51から供給される液体によって、容易に洗い流すことができる。その結果、上記摩耗粉が挿入孔18内に溜まることをさらに抑制することができ、基板保持装置10は、基板チャック2の動作の安定性を向上させることができる。
【0052】
上述した各実施形態に係る基板保持装置10は、ウェーハの他に、フラットパネルディスプレイガラス基板などの様々なタイプの基板を保持するための装置に適用することができる。さらに、基板保持装置10は、基板洗浄装置や研磨装置の基板保持部にも適用することができる。
【0053】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 基台
1a アーム
2 基板チャック
3 クランプ
5 回転軸
6 軸受
7 円筒体
9 架台
10 基板保持装置
11,12 プーリー
14 ベルト
15 モータ
17 ハウジング
18 挿入孔
18a 内面
18b 縦溝
20 リフター
20a プッシャー
21 第1の気体チャンバ
22 第2の気体チャンバ
24 第1の気体流路
25 第2の気体流路
28 回転カバー
28a 切り欠き
28b 通孔
30 ばね
35 ばねストッパー
41 位置決め部
43 第1の磁石
44 第2の磁石
45 第3の磁石
46 溝
47 突起部
51 液体ノズル
53 液体供給ライン
54 液体供給弁
57 ノズル保持部材
60 動作制御部