(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】吸光分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/61 20060101AFI20220824BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20220824BHJP
G01N 21/15 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G01N21/61
G01N21/03 B
G01N21/15
(21)【出願番号】P 2018227888
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】波田 美那子
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127414(JP,A)
【文献】特開2016-001135(JP,A)
【文献】特開2007-285826(JP,A)
【文献】特開2016-180728(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112703388(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象ガスが流入又は発生する容器の第1開口を塞ぐように取り付けられ、前記容器内に光を射出する光射出モジュールと、
前記光射出モジュールから射出され、前記容器内を通過した光を検出する光検出モジュールと、を備え、
前記光射出モジュールが、
前記容器の外面において前記第1開口の周囲に取り付けられるベースフランジと、
前記容器内と接する内側面に対して外側面が所定角度傾斜した窓材と、
前記ベースフランジと前記窓材の内側面との間に挟まれるシール部材と、
前記ベースフランジに対して固定される固定面、及び、前記窓材の外側面を前記ベースフランジ側へ押圧する傾斜面を具備する押圧体と、を具備したことを特徴とする吸光分析装置。
【請求項2】
前記押圧体の固定面が前記ベースフランジに固定された状態において、前記窓材が前記シール部材を押し潰すとともに前記窓材の内側面が前記ベースフランジからは離間している請求項1記載の吸光分析装置。
【請求項3】
前記ベースフランジが、
前記窓材及び前記押圧体の一部が内部に配置される貫通穴と、
前記貫通穴の内周面から内側へ突出し、前記シール部材が支持される支持部と、
前記押圧体の固定面が取り付けられる取付面と、を備え、
前記押圧体の固定面が前記ベースフランジの取付面に固定された状態において、前記窓材が前記貫通穴の内周面及び前記支持部から離間している請求項2記載の吸光分析装置。
【請求項4】
前記光射出モジュールが、
前記窓材の側面に設けられたシートヒータをさらに具備する請求項1乃至3いずれかに記載の吸光分析装置。
【請求項5】
前記光射出モジュールが、
前記窓材の温度を測定する温度センサをさらに具備し、
前記温度センサで測定される測定温度と、設定温度に基づいて前記シートヒータを制御する温度制御器をさらに備えた請求項4記載の吸光分析装置。
【請求項6】
前記ベースフランジが金属製であり、
前記押圧体が樹脂製である請求項1乃至5いずれかに記載の吸光分析装置。
【請求項7】
前記押圧体がポリフェニレンサルファイド(PPS)で形成されている請求項6記載の吸光分析装置。
【請求項8】
前記光検出モジュールが、前記容器の第1開口と対向させて形成された第2開口を塞ぐように取り付けられた請求項1乃至7いずれかに記載の吸光分析装置。
【請求項9】
前記光検出モジュールの出力に基づいて、分析対象ガスの濃度を算出する濃度算出部をさらに備えた請求項1乃至8いずれかに記載の吸光分析装置。
【請求項10】
分析対象ガスが流入又は発生する容器の第1開口を塞ぐように取り付けられ、前記容器内に光を射出する光射出モジュールと、
前記光射出モジュールから射出され、前記容器内を通過した光を検出する光検出モジュールと、を備え、
前記光射出モジュールが、
前記容器内と接する内側面に対して外側面が所定角度傾斜した窓材と、
前記容器の外側面において前記第1開口の周囲と前記窓材の内側面との間に挟まれるシール部材と、
前記容器の外側面に固定される固定面、及び、前記窓材の外側面を前記容器側へ押圧する傾斜面を具備する押圧体と、を具備したことを特徴とする吸光分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象ガスを吸光度に基づいて分析する吸光分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスでは、半導体基板(シリコンウエハ)表面に対して各種の微細加工や処理が行なわれる。その際、エッチングガス、エピタキシャル成長用の反応ガス、CVD(化学気相成長)用の反応ガスなどの多様なプロセスガスが用いられる。それらのプロセスガス中に水分が含まれると、プロセスガスと水分、又は基板表面と水分が反応して不要な副生成物が生じる結果、製造される半導体の歩留まりが著しく低下することが知られている。
【0003】
このため、特許文献1に示されるように真空容器であるチャンバから各種ガスが排気される排気流路中の一部を光学セルとする吸光分析装置を設けておき、排気ガスに含まれるガスの水分量やチャンバ内から排除されるべき不純物等をモニタリングしている。
【0004】
ところで、このような吸光分析装置はチャンバから排気されているガスをモニタリングしているだけなので、吸光分析装置では不純物が検出されなかったとしてもチャンバ内には非常に微小量の不純物が残っている可能性がある。
【0005】
また、上記のような非常に微小な量の不純物が存在するかどうかを吸光度に基づいて判定したい場合、例えば光学セルを構成する窓材に対して水分が結露すると測定誤差が発生し、誤判定が生じる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような問題を鑑みてなされたものであり、チャンバ等の容器内に流入又は発生する分析対象ガスを直接測定することができ、水分の結露による測定誤差を防ぐことができる吸光分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る吸光分析装置は、分析対象ガスが流入又は発生する容器の第1開口を塞ぐように取り付けられ、前記容器内に光を射出する光射出モジュールと、前記光射出モジュールから射出され、前記容器内を通過した光を検出する光検出モジュールと、を備え、前記光射出モジュールが、前記容器の外面において前記第1開口の周囲に取り付けられるベースフランジと、前記容器内と接する内側面に対して外側面が所定角度傾斜した窓材と、前記ベースフランジと前記窓材の内側面との間に挟まれるシール部材と、前記ベースフランジに対して固定される固定面、及び、前記窓材の外側面を前記フランジ側へ押圧する傾斜面を具備する押圧体と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、容器内を通過した光に基づいて分析対象ガスを分析することができるので、例えば容器内に分析対象ガスが存在していれば、その吸光度を直接測定することが可能となる。
【0010】
さらに、前記光射出モジュールの射出する光による干渉影響をなくすために前記窓材が所定角度傾斜した外側面を有していても、前記押圧体が傾斜面を具備しているので、前記窓材の内側面を前記シール部材に対して真っ直ぐに押し付けて均一に押し潰すことができる。このため、前記シール部材が不均一に押し潰されて前記窓材が想定しない箇所で前記ベースフランジと接触して冷やされてしまい、前記容器内に存在する水分によって前記窓材の内側面に結露が生じるのを防ぐことができる。
【0011】
これらのことから、吸光度に基づいて容器内に存在する微小量の分析対象ガスの有無を正確に判定することができるようになる。
【0012】
前記窓材が前記ベースフランジと接触して熱が逃げてしまい、前記窓材の内側面に結露が生じやすい状態が発生するのを防ぐには、前記押圧体が前記ベースフランジに固定された状態において、前記窓材が前記シール部材を押し潰すとともに前記窓材の内側面が前記ベースフランジからは離間していればよい。
【0013】
前記窓材が前記ベーフランジに対して接触しないようにするための具体的な構成としては、前記ベースフランジが、前記窓材及び前記押圧体の一部が内部に配置される貫通穴と、前記貫通穴の内周面から内側へ突出し、前記シール部材が支持される支持部と、前記押圧体の固定面が取り付けられる取付面と、を備え、前記押圧体の固定面が前記ベースフランジの取付面に固定された状態において、前記窓材が前記貫通穴の内周面及び前記支持部から離間しているものが挙げられる。
【0014】
前記窓材を効率よく加熱することができ、前記窓材の内側面に結露がさらに生じにくくするには、前記光射出モジュールが、前記窓材の側面に設けられたシートヒータをさらに具備するものであればよい。
【0015】
前記窓材の温度が結露の生じない温度に確実に保たれるようにするには、前記光射出モジュールが、前記窓材の温度を測定する温度センサをさらに具備し、前記温度センサで測定される測定温度と、設定温度に基づいて前記シートヒータを制御する温度制御器をさらに備えたものであればよい。
【0016】
前記光射出モジュールを前記容器の内部と接する部分にはコンタミネーションの原因となる素材を用いないようにしつつ、前記窓材と接触する部材からの熱の散逸を防ぐことができるようにするには、前記ベースフランジが金属製であり、前記押圧体が樹脂製であればよい。
【0017】
前記押圧体を介して前記窓材の熱が散逸するのを防ぐのに適した具体的な構成としては、前記押圧体がポリフェニレンサルファイド(PPS)で形成されているものが挙げられる。
【0018】
単純な光路で前記容器内の分析対象ガスについて分析することができ、前記光射出モジュールと前記光検出モジュールの取り付けを容易にするには、前記光検出モジュールが、前記容器の第1開口と対向させて形成された第2開口を塞ぐように取り付けられたものであればよい。
【0019】
例えば前記容器内の分析対象ガスの有無を判定するための具体的な構成例としては、前記光検出モジュールの出力に基づいて、分析対象ガスの濃度を算出する濃度算出部をさらに備えたものが挙げられる。
【0020】
例えば前記容器の第1開口の周囲に形成されているビューポート等の構造を利用して本発明に係る吸光分析装置を構成できるようにするには、分析対象ガスが流入又は発生する容器の第1開口を塞ぐように取り付けられ、前記容器内に光を射出する光射出モジュールと、前記光射出モジュールから射出され、前記容器内を通過した光を検出する光検出モジュールと、を備え、前記光射出モジュールが、前記容器内と接する内側面に対して外側面が所定角度傾斜した窓材と、前記容器の外側面において前記第1開口の周囲と前記窓材の内側面との間に挟まれるシール部材と、前記容器の外側面に固定される固定面、及び、前記窓材の外側面を前記容器側へ押圧する傾斜面を具備する押圧体と、を具備したことを特徴とするものであればよい。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明に係る吸光分析装置によれば、例えばウェッジを有する窓材であっても樹脂製の前記押圧体の傾斜面によって真っ直ぐに押すことができ、前記シール部材を均一に押し潰すことができる。このため、前記シール部材で十分なシールを実現しながら、前記窓材を前記金属製のベースフランジに対して接触させないようにすることができる。したがって、前記窓材の熱が前記ベースフランジから逃げて前記窓材の内側面に前記容器内の水分により結露が発生するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態における吸光分析装置を示す模式図。
【
図2】同実施形態における光射出モジュールにおけるフランジ部の構造を示す模式図。
【
図3】同実施形態における窓材及び温調機構の構成を示す模式図。
【
図4】同実施形態における押圧体の構造を示す模式的斜視図。
【
図5】同実施形態における吸光分析装置の機能ブロック図。
【
図6】本発明の別の実施形態における吸光分析装置のフランジ部の構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態における吸光分析装置100について
図1乃至
図5を参照しながら説明する。
【0024】
本実施形態の吸光分析装置100は、半導体の製造プロセスにおいて各種ガスが供給されるチャンバC内に分析対象ガスが存在するかどうかをモニタリングするものである。
【0025】
ここで、本実施形態の分析対象ガスは容器であるチャンバC内に流入するプロセスガスやプロセスガス等がチャンバC内で反応して発生するガスであり、所定条件下においてチャンバC内から完全に除去したいガスである。すなわち、分析対象ガスはチャンバCの例えば排気機能によりチャンバC内から排出されるべきガスであり、チャンバC内に分析対象ガスが存在していたとしてもその量は非常に微小なものである。
【0026】
具体的には、
図1に示すように吸光分析装置100はチャンバCを構成する隔壁の外面に取り付けられる光射出モジュールM1と、光射出モジュールM1に対してレーザ光を入力するレーザモジュールLMと、光射出モジュールM1から射出され、容器内を通過した光を検出する光検出モジュールM2と、光射出モジュールM1と光検出モジュールM2の温度を制御する温度制御器TCと、データのロギング等を行う演算機COMと、を備えている。
【0027】
光射出モジュールM1は、例えばチャンバCの側面に形成された第1開口C1を塞ぐように取り付けられ、この第1開口C1を介してチャンバC内にレーザ光を導入する。光射出モジュールM1は、レーザモジュールLM内のレーザ光源1から射出されたレーザ光が光ファイバを介して入力される接続部2と、チャンバCの外面に対してシールを形成するように取り付けられるフランジ部3と、を備えている。レーザ光源1から射出されたレーザ光は接続部2、フランジ部3内を通ってチャンバC内を進行する。
【0028】
次に光射出モジュールM1のフランジ部3の詳細な構成について
図2乃至
図4を参照しながら説明する。
【0029】
フランジ部3は、
図2に示すように概略多段円筒状をなすものであり、第1シール部材5、ベースフランジ4、第2シール部材6、窓材7、押圧体8、上部フランジUFと、を備えている。ここで、各シール部材はOリングである。
【0030】
ベースフランジ4は、中央部に貫通孔が形成された概略円板状の金属板である。ベースフランジ4は、チャンバCの外側面CWに対して第1開口C1と貫通穴41が連通するように取り付けられるものである。ベースフランジ4においてチャンバCの外面に取り付けられる内側面には、チャンバCの外面とベースフランジ4の内側面との間に真空シールを形成する第1シール部材5を収容する環状溝42が形成されている。一方、ベースフランジ4の外側面には押圧体8の外周部分が取り付けられる取付面44が形成されている。
【0031】
また、貫通穴41においてチャンバC側には第2シール部材6を支持する環状の支持部43が貫通穴41の半径方向内側に突出している。すなわち、貫通穴41内にはチャンバC側から順番に第2シール部材6、窓材7、押圧体8の一部の順番で配置されており、押圧体8で窓材7がベースフランジ4側へと押圧されることにより、窓材7においてチャンバC内の空間と接する内側面とベースフランジ4の支持部43との間で第2シール部材6が押し潰されて真空シールが形成される。
【0032】
窓材7は、光学測定用に用いられる石英ガラス製のものであり、扁平円筒の一方の端面を斜めに切断した形状をなしている。このため、窓材7はチャンバC内の空間に接する内側面71に対して外側面72が所定角度傾斜している。したがって、窓材7において内側面71と外側面72とは平行ではなく、例えばレーザ光が各面で反射される成分によって干渉が生じるのを防ぐことができる。
【0033】
窓材7の側面の大部分には
図3に示すようにシートヒータ73が巻かれており、窓材7自体を直接加熱できるように構成されている。すなわち、ベースフランジ4等の別の部材を介さずに窓材7は加熱されている。また、窓材7の側面においてシートヒータ73が設けられていない領域には窓材7の側面に直接接触するように温度センサ74として熱電対が設けられている。すなわち、熱電対は窓材7自体の温度を測定できるように構成されている。シートヒータ73及び熱電対の外側からは窓材7の周囲を包むように樹脂製の断熱帯75が巻かれている。
【0034】
押圧体8は、
図4に示すよう中央部に開口が形成されるとともにその開口の周辺が突出した概略扁平二段円筒状の部材である。この押圧体8は、ベースフランジ4に対してボルトB1によって固定されることで、中央部分が窓材7の外側面72と接触してベースフランジ4側へと押圧するものである。押圧体8は、窓材7の外側面72と接触して窓材7の熱が逃げにくくするために樹脂で形成されている。具体的には押圧体8はポリフェニレンサルファイド(PPS)で形成されている。また、押圧体8と窓材7との間にはシール部材は設けられておらず、押圧体8が窓材7に対して直接接触するように構成されている。すなわち、第2シール部材6により真空シールが形成されているので、押圧体8と窓材7との間には別途シールを形成していない。このため、窓材7の内側面71と外側面72の双方にシール部材があると押圧体8により窓材7が押圧された際にその窓材7の内側面71とベースフランジの取付面81との平行が崩れやすいのに対して、本実施形態では各面の平行を保ったまま第2シール部材6を押し潰すことができる。また、押圧体8は樹脂製であるが真空側ではなく大気側に存在することになるので、チャンバC内に押圧体8の樹脂成分が蒸発してコンタミネーションが発生することも無い。
【0035】
押圧体8の構造について詳述すると、押圧体8は扁平リング状の外周部分と、概略扁平円筒の一端面を斜めに切断した形状を有する中央部分と、を備えている。外周部分にはベースフランジ4の外側面である取付面44に対して固定される円環状の固定面81が形成されている。この固定面81には円周方向に等間隔で6つのボルト挿入孔83が形成されており、各ボルト挿入孔83にそれぞれボルト81が挿入されてベースフランジ4の取付面44に開口するネジ穴と螺合させられる。押圧体8の中央部分にはベースフランジ4に対して固定された状態でベースフランジ4の取付面44に対して傾斜する傾斜面82が形成されている。言い換えると、傾斜面82はベースフランジ4に固定された状態で窓材7の内側面71に対して傾斜しており、固定面81に対する傾斜面82の傾斜角度は、窓材7の内側面71に対する外側面72の傾斜角度とほぼ同じ角度に設定してある。このため、
図2に示すように押圧体8の傾斜面82と窓材7の外側面72とを合致させることができる。
【0036】
押圧体8の固定面81がベースフランジ4の取付面44に対して固定され、押圧体8の傾斜面82が窓材7の外側面72をベースフランジ4側へと押圧している状態において、窓材7の内側面71は第2シール部材6とのみ接触し、ベースフランジ4の支持部43に対して離間するように設定されている。すなわち、押圧体8の固定面81を基準として押圧体8の中央部分の突出量は第2シール部材6が押し潰されて真空シールを形成するとともに窓材7の内側面71とベースフランジ4の支持部43との間の隙間を形成するように設定されている。
【0037】
上部フランジUFは、接続部2が取り付けられる部分であり、押圧体8とは接触せずにベースフランジ4にのみ接触するようにボルトB2によって固定される。すなわち、窓材7の熱が押圧体8を介して上部フランジUFに散逸することを防ぐように構成されている。
【0038】
光検出モジュールM2は、チャンバCの第1開口C1が形成された側面の対面に形成された第2開口C2を塞ぐように取り付けられる。チャンバC内を通過して第2開口C2を通過したレーザ光は光検出モジュールM2内のフォトディテクタDにより検出され、その強度に応じた信号がレーザモジュールLMに出力される。また、光検出モジュールM2は前述した光射出モジュールM1のフランジ部3と同様のフランジ部3AによりチャンバCの外面に取り付けられている。なお、詳細な説明については重複するので省略する。
【0039】
レーザモジュールLMは、レーザ光源1と、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等の機構を備えたものであり、メモリに格納されているプログラムが実行されることにより、
図5に示すようにレーザ制御部P1、データ処理部P2としての機能を発揮する。
【0040】
レーザ制御部P1は、分析対象ガスの吸収ピークの波長を射出するようにレーザ光源1に印加する電圧等を制御する。
【0041】
信号処理部P2は、フォトディテクタDからの出力信号を例えばパソコン等の演算機COMにおいて例えば濃度算出等に使用しやすい状態に変換し出力するものである。
【0042】
演算器COMでは、信号処理部P2からの出力されるデータをロギングするとともに、例えば濃度算出部P3としての機能を発揮する。濃度算出部P3は、信号処理部P2の出力から吸光度を算出し、その吸光度に基づいてチャンバC内の分析対象ガスの濃度を算出する。
【0043】
温度制御器TCは、光射出モジュールM1の窓材8及び光検出モジュールM2の窓材の温度が一定に保たれるように各シートヒータ73に印加する電圧を制御して温度を制御するものである。温度制御器TC内において温度制御プログラムが実行されて温度制御部P4としての機能が実現される。この温度制御部P4は、温度センサ74で測定される測定温度と、予め設定されている設定温度との偏差が小さくなるようにシートヒータ73に印加する電圧を制御する。なお、設定温度は、例えばチャンバC内の圧力における水の沸点よりも高い温度に設定されている。
【0044】
このように構成された本実施形態の吸光分析装置100によれば、窓材7を押圧する押圧体8がウェッジの形成された窓材7に合わせた傾斜面82を有しているので、第2シール部材6をベースフランジ4の支持部43に対して真っ直ぐに押すことができる。このため、第2シール部材6を均一に押し潰すことができ、例えば平坦面でウェッジの形成された窓材7を押圧した場合のように窓材7が想定外の動きをしてベースフランジ4に一部が接触するといったことを防ぐことができる。
【0045】
したがって、
図2に示すように窓材7については金属製のベースフランジ4には接触せずに、第2シール部材6と樹脂製の押圧体8のみと接触させることができるので、窓材7の熱が他の部材に伝導しにくくすることができる。
【0046】
このように窓材7から熱は逃げにくく構成されている上に、シートヒータ73によって窓材7が直接加熱されているので、水分が結露しない温度に保ち続ける事が可能となる。
【0047】
これらのことから、チャンバC内に水分が存在しているとしても、窓材7の内側面71に結露が生じるのを防ぐことができ、光射出モジュールM1から射出されるレーザ光に影響を与えたり、光検出モジュールM2で光の強度に誤差を与えたりするのを防ぐことができる。
【0048】
したがって、分析対象ガスが非常に微小量であっても正確に濃度を算出することができる。
【0049】
また、チャンバC内を通過したレーザ光の吸光度に基づいて濃度が算出されるので、実際に分析対象ガスの濃度が知りたい場所を測定点にすることができ、測定時の時間遅れや誤差も可及的に小さくできる。加えて、簡素なシングルパスで構成されているので、チャンバCに対して光射出モジュールM1と光検出モジュールM2を取り付ける際の制約も小さい。
【0050】
その他の実施形態について説明する。
【0051】
本発明に係る吸光分析装置のフランジ部3の構成は前記実施形態に限られるものではない。例えば
図6に示すようにフランジ部3が前記実施形態のベースフランジ4を備えておらず、容器であるチャンバCの外側面CWに形成されている構造物を利用して取り付けられるものであってもよい。すなわち、窓材7がチャンバCの第1開口部C1内に設けられ、第2シール部材6がチャンバCの外側面CWと窓材7の内側面71との間に設けられるとともに、押圧体8の固定面81もチャンバCの外側面CWへ固定され、傾斜面82が窓材7をチャンバC側へと押圧するように構成してもよい。
【0052】
前記実施形態では、分析対象ガスの濃度を算出していたが、チャンバ内に分析対象ガスが存在するかどうかを検出するように吸光分析装置を構成してもよい。
【0053】
光射出モジュールと光検出モジュールは対向するように配置されるものに限られず、容器の壁面に対して同じ側に配置してもよい。例えば容器内にミラーを配置しておき、光射出モジュールから射出されて、ミラーで反射された光を光検出モジュールで検出するようにしてもよい。
【0054】
演算器で行っていた処理については、レーザモジュール内の演算機能を用いて実現してもよい。また、温度制御器、レーザモジュール、演算器については1つのコンピュータでその機能が実現されるようにしてもよい。
【0055】
押圧体の傾斜面と、窓材の外側面は完全に合致していなくてもよい。例えば、窓材によりシール部材が押し潰された際に押圧体がベースフランジに対して接触しない範囲で多少のずれが存在していても構わない。
【0056】
容器の一例としてはチャンバを挙げたがその他の内部に空間を有する容器に対して本発明に係る吸光分析装置を用いてもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や各実施形態値の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0058】
100・・・吸光分析装置
4 ・・・ベースフランジ
6 ・・・第2シール部材
7 ・・・窓材
71 ・・・内側面
72 ・・・外側面
8 ・・・押圧体
81 ・・・固定面
82 ・・・傾斜面