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特許7128899高分子化合物、液晶組成物、位相差層、光学フィルム、偏光板、および、画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】高分子化合物、液晶組成物、位相差層、光学フィルム、偏光板、および、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/28 20060101AFI20220824BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220824BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220824BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C08F220/28
B32B7/023
B32B27/00 Z
G02B5/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020548433
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035890
(87)【国際公開番号】W WO2020066657
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2018178464
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 峻也
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】奥田 周平
(72)【発明者】
【氏名】飯島 晃治
(72)【発明者】
【氏名】中尾 真人
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-315984(JP,A)
【文献】特開2005-315985(JP,A)
【文献】特開2005-300759(JP,A)
【文献】特開2017-014481(JP,A)
【文献】特開2004-198511(JP,A)
【文献】特開2004-352818(JP,A)
【文献】特開2011-132273(JP,A)
【文献】特開2019-048975(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082960(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00-220/70
B32B 7/023
B32B 27/00
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される繰り返し単位と、下記式(II)で表される繰り返し単位と、下記式(III)で表される繰り返し単位と、下記式(IV)で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物であって、
前記式(I)で表される繰り返し単位が、下記式(V)で表される繰り返し単位であり、
前記式(III)で表される繰り返し単位が、下記式(VI)で表される繰り返し単位であり、
前記式(IV)で表される繰り返し単位が、下記式(VII)で表される繰り返し単位である高分子化合物
【化1】
式(I)~(IV)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、L、L、LおよびLは、それぞれ独立に、単結合、または、-O-、-C(=O)-、-(C=O)O-、-(C=O)NR-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群より選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
式(I)中、Rは、炭素数1~30のアルキル基を表す。ただし、Rが炭素数2~30のアルキル基である場合、アルキル基を構成する-CH-の1個以上が-COO-または-CO-に置換されていてもよい。
式(III)中、Rは、炭素数3~20の脂肪族基を表す。
式(IV)中、Rは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4~20のアルキル基を表す。
【化2】
式(V)中、R は、水素原子またはメチル基を表す。
【化3】
式(VI)中、R 10 は、水素原子またはメチル基を表し、R 11 、R 12 およびR 13 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~19の脂肪族基を表す。ただし、R 11 、R 12 およびR 13 の炭素数の合計は2~19であり、R 11 、R 12 およびR 13 のうち少なくとも1つは水素原子である。R 11 、R 12 およびR 13 は互いに連結して環状構造を形成していてもよい。
【化4】
式(VII)中、R 14 は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表す。mおよびnは、それぞれ独立に、1~20の整数を表し、m+nは、4~21の整数を表す。
【請求項2】
酸価が150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である、請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
LogP値が1.2~1.8である、請求項1または2に記載の高分子化合物。
ここで、前記LogP値は、前記高分子化合物を構成する各繰り返し単位となるモノマーのLogP値と各繰り返し単位のモル分率との積の総和である。
【請求項4】
主鎖がアクリル系またはメタクリル系の高分子化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記式(VI)で表される繰り返し単位が、少なくとも1つの脂肪族環状構造を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
重量平均分子量が5,000~500,000である、請求項1~のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の高分子化合物と、重合性基を有する液晶性化合物とを含有する、液晶組成物。
【請求項8】
請求項に記載の液晶組成物を用いて形成された、位相差層。
【請求項9】
請求項に記載の位相差層を有する、光学フィルム。
【請求項10】
請求項に記載の光学フィルムを有する、偏光板。
【請求項11】
請求項に記載の光学フィルム、または、請求項10に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、液晶組成物、位相差層、光学フィルム、偏光板、および、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には基材と位相差層とを有する光学フィルムを用いることが一般的である。
例えば、特許文献1には、「基材と、前記基材上に隣接して設けられる位相差層とを有する光学フィルムであって、前記位相差層が、重合性基を有する液晶性化合物と高分子化合物とを含有する液晶組成物に含まれる前記液晶性化合物の垂直配向を固定してなる層であり、3次元SP値を用いて算出される、前記高分子化合物と前記基材とのδa値の差が3以下であり、前記高分子化合物の含有量が、前記液晶性化合物100質量部に対して10質量部未満である、光学フィルム。」が開示されている(請求項1等)。そして、特許文献1の光学フィルムにおいて、位相差層中の液晶性化合物が高い配向性(垂直配向性)を示す旨が記載されている(段落[0011]等)。さらに、このような高い配向性が達成される推定メカニズムとして、高分子化合物が基材との界面付近に偏在し、液晶性化合物の垂直方向への配向が促進されたことが記載されている(段落[0016])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/030449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らが特許文献1の実施例等に記載の高分子化合物を用いて光学フィルムを作製し、位相差層中の液晶性化合物の配向性を評価したところ、今後さらに高まるであろう配向性のレベルを考慮すると、液晶性化合物の配向性を一層高めることができる高分子化合物が必要であることが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、液晶性化合物を含有する液晶組成物に配合することにより、得られる位相差層中の液晶性化合物の配向性が高くなる高分子化合物、ならびに、それを用いた液晶組成物、位相差層、光学フィルム、偏光板および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の4つの繰り返し単位を有する高分子化合物により上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) 後述する式(I)で表される繰り返し単位と、後述する式(II)で表される繰り返し単位と、後述する式(III)で表される繰り返し単位と、後述する式(IV)で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物。
(2) 酸価が150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である、上記(1)に記載の高分子化合物。
(3) LogP値が1.2~1.8である、上記(1)または(2)に記載の高分子化合物。
ここで、上記LogP値は、上記高分子化合物を構成する各繰り返し単位となるモノマーのLogP値と各繰り返し単位のモル分率との積の総和である。
(4) 主鎖がアクリル系またはメタクリル系の高分子化合物である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の高分子化合物。
(5) 上記式(I)で表される繰り返し単位が、アセトアセチル基を有する、上記(1)~(4)のいずれかに記載の高分子化合物。
(6) 上記式(I)で表される繰り返し単位が、後述する式(V)で表される繰り返し単位である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の高分子化合物。
(7) 上記式(III)で表される繰り返し単位が、後述する式(VI)で表される繰り返し単位である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の高分子化合物。
(8) 上記式(III)で表される繰り返し単位が、少なくとも1つの脂肪族環状構造を有する、上記(1)~(7)のいずれかに記載の高分子化合物。
(9) 上記式(IV)で表される繰り返し単位が、後述する式(VII)で表される繰り返し単位である、上記(1)~(8)のいずれかに記載の高分子化合物。
(10) 重量平均分子量が5,000~500,000である、上記(1)~(9)のいずれかに記載の高分子化合物。
(11) 上記(1)~(10)のいずれかに記載の高分子化合物と、重合性基を有する液晶性化合物とを含有する、液晶組成物。
(12) 上記(11)に記載の液晶組成物を用いて形成された、位相差層。
(13) 上記(12)に記載の位相差層を有する、光学フィルム。
(14) 上記(13)に記載の光学フィルムを有する、偏光板。
(15) 上記(13)に記載の光学フィルム、または、上記(14)に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、液晶性化合物を含有する液晶組成物に配合することにより、得られる位相差層中の液晶性化合物の配向性が高くなる高分子化合物、ならびに、それを用いた液晶組成物、位相差層、光学フィルム、偏光板および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明の組成物が含有する各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0010】
[高分子化合物]
本発明の高分子化合物は、下記式(I)で表される繰り返し単位と、下記式(II)で表される繰り返し単位と、下記式(III)で表される繰り返し単位と、下記式(IV)で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物である。本発明の高分子化合物は上記繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
式(I)~(IV)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、L、L、LおよびLは、それぞれ独立に、単結合、または、-O-、-C(=O)-、-(C=O)O-、-(C=O)NR-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群より選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
式(I)中、Rは、炭素数1~30のアルキル基を表す。ただし、Rが炭素数2~30のアルキル基である場合、アルキル基を構成する-CH-の1個以上が-COO-または-CO-に置換されていてもよい。
式(III)中、Rは、炭素数3~20の脂肪族基を表す。
式(IV)中、Rは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4~20のアルキル基を表す。
【0013】
本発明の高分子化合物はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えらえる。その理由は明らかではないがおよそ以下のとおりと推測される。
【0014】
上述のとおり、本発明の高分子化合物は式(I)~(IV)で表される繰り返し単位を有する。このうち、式(I)で表される繰り返し単位は基材面との親和性が高く、また、式(III)~(IV)で表される繰り返し単位は空気面(基材面の反対側の面)との親和性が高い。そのため、本発明の高分子化合物と液晶性化合物とを含有する液晶組成物を用いて基材に位相差層を形成した場合、基材面と空気面の両面に高分子化合物が偏在するものと考えられる。結果として、形成された位相差層において、液晶性化合物は、基材面と空気面の両面に偏在した高分子化合物に挟まれているものと推測される。
ここで、本発明の高分子化合物はカルボキシ基を有するため(式(II)で表される繰り返し単位)、基材面と空気面の両面の表面エネルギーが高くなり、その間に挟まれた液晶性化合物は垂直方向(位相差層に対して垂直方向)に配向し易くなるものと考えられる。なお、液晶組成物がオニウム塩等の垂直配向剤を含有する場合には垂直配合剤も同様の理由により垂直方向に配向し易くなり、液晶性化合物の配向性はさらに高くなるものと考えられる。
【0015】
〔繰り返し単位(I)〕
本発明の高分子化合物は、下記式(I)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(I)」とも言う)を有する。
【0016】
【化2】
【0017】
上記式(I)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
また、上記式(I)中、Lは、単結合、または、-O-、-C(=O)-、-(C=O)O-、-(C=O)NR-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群より選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
また、上記式(I)中、Rは、炭素数1~30のアルキル基を表す。ただし、炭素数2~30のアルキル基である場合、アルキル基を構成する-CH-の1個以上が-COO-または-CO-に置換されていてもよい。
【0018】
以下に、上記式(I)中のLの一態様が表す、上述した2価の連結基について説明する。
【0019】
まず、上記式(I)中のLの一態様が表す-(C=O)NR-について、Rは、上述した通り、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
ここで、炭素数1~20のアルキル基としては、得られる位相差層中の液晶性化合物の配向性がより高くなり、また、得られる位相差層の面状ムラが抑制される理由から、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
以下、「得られる位相差層中の液晶性化合物の配向性がより高くなり、また、得られる位相差層の面状ムラが抑制される」ことを「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
【0020】
また、上記式(I)中のLの一態様が表す、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、および、置換基を有していてもよい2価の芳香族基について、有していてもよい置換基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
ここで、アルキル基としては、本発明の効果等がより優れる理由から、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
また、アルコキシ基としては、本発明の効果等がより優れる理由から、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
また、ハロゲン原子としては、本発明の効果等がより優れる理由から、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0021】
そして、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基としては、例えば、上述した置換基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基などが挙げられる。
ここで、直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基などが挙げられる。
また、分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-メチルプロピレン基などが挙げられる。
また、環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、中でも、本発明の効果等がより優れる理由から、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0022】
また、置換基を有していてもよい2価の芳香族基としては、例えば、上述した置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基などが挙げられる。
ここで、炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、中でも、本発明の効果等がより優れる理由から、フェニレン基が好ましい。
【0023】
本発明においては、上記式(I)中のLは、本発明の効果等がより優れる理由から、単結合ではなく、上述した2価の連結基であることが好ましく、主鎖と連結する部分に-(C=O)O-を含む2価の連結基であることがより好ましく、主鎖と連結する部分に-(C=O)O-を有し、かつ、2価の脂肪族基(特に、直鎖状のアルキレン基)を有する2価の連結基であることが更に好ましい。
【0024】
次に、上記式(I)中のRが表す炭素数1~30のアルキル基について説明する。なお、上述した通り、Rが炭素数2~30のアルキル基である場合、アルキル基を構成する-CH-の1個以上が-COO-または-CO-に置換されていてもよい。
【0025】
上記式(I)中のRが表す炭素数1~30のアルキル基としては、本発明の効果等がより優れる理由から、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、エチル基であるのが特に好ましい。
また、上記式(I)中のRがエチル基である場合、エチル基を構成する-CH-が、-CO-で置換されていることが最も好ましい。
【0026】
本発明においては、基材との親和性が高くなり、高分子化合物を基材面に偏在させる効果が大きい理由から、繰り返し単位(I)が、アセトアセチル基を有していることが好ましい。
【0027】
また、本発明においては、基材との親和性が高くなり、高分子化合物を基材面に偏在させる効果が大きい理由から、繰り返し単位(I)が、下記式(V)で表される繰り返し単位であることが好ましい。なお、下記式(V)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0028】
【化3】
【0029】
このような繰り返し単位(I)となるモノマーとしては、具体的には、例えば、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(2-アセトアセトキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する表記であり、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する表記である。
【0030】
本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(I)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましく、40~60質量%であることが特に好ましい。
また、本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(I)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、10~80モル%であることが好ましく、20~70モル%であることがより好ましく、30~60モル%であることがさらに好ましく、40~50モル%であることが特に好ましい。
【0031】
〔繰り返し単位(II)〕
本発明の高分子化合物は、下記式(II)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(II)」とも言う)を有する。
【0032】
【化4】
【0033】
上記式(II)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
また、上記式(II)中、Lは、単結合、または、-O-、-C(=O)-、-(C=O)O-、-(C=O)NR-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群より選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。Lは、本発明の効果等がより優れる理由から、単結合であることが好ましい。
【0034】
ここで、上記式(II)中のLの一態様が表す、上述した2価の連結基は、上記式(I)中のLの一態様が表す2価の連結基として説明したものと同様である。
なお、上記式(II)中のLの一態様が表す、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、および、置換基を有していてもよい2価の芳香族基について、有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のLの説明と同様である。
【0035】
本発明においては、ラジカル重合可能であるという理由から、上記式(II)中のLが、-C(=O)-、-(C=O)O-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基であることが好ましく、主鎖と連結する部分に-(C=O)O-を有し、かつ、2価の脂肪族基を有する2価の連結基であることがより好ましい。
【0036】
このような繰り返し単位(II)となるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する表記である。
【0037】
本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(II)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、2~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることがさらに好ましく、4~20質量%であることが特に好ましい。
また、本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(II)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~80モル%であることが好ましく、5~70モル%であることがより好ましく、10~60モル%であることがさらに好ましく、15~50モル%であることが特に好ましい。
【0038】
〔繰り返し単位(III)〕
本発明の高分子化合物は、下記式(III)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(III)」とも言う)を有する。
【0039】
【化5】
【0040】
上記式(III)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
また、上記式(III)中、Lは、単結合、または、-O-、-C(=O)-、-(C=O)O-、-(C=O)NR-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群より選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
また、上記式(III)中、Rは、炭素数3~20の脂肪族基を表す。
【0041】
ここで、上記式(III)中のLの一態様が表す、上述した2価の連結基は、上記式(I)中のLの一態様が表す2価の連結基として説明したものと同様である。
なお、上記式(III)中のLの一態様が表す、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、および、置換基を有していてもよい2価の芳香族基について、有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のLの説明と同様である。
【0042】
本発明においては、ラジカル重合可能であるという理由から、上記式(III)中のLが、-C(=O)-、-(C=O)O-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基であることが好ましく、主鎖と連結する部分に-(C=O)O-を有する2価の連結基であることがより好ましい。
【0043】
次に、上記式(III)中のRが表す炭素数3~20の脂肪族基について説明する。
上記式(III)中のRが表す炭素数3~20の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれでもよいが、本発明の効果等がより優れる理由から、少なくとも1つの環状構造を有するのが好ましい。Rの具体例としては、炭素数3~20のアルキル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~20の単環のアルキル基、ならびに、アダマンチル基およびイソボロニル基等の炭素数8~20の多環のアルキル基等が挙げられる。
【0044】
繰り返し単位(III)は、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(VI)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0045】
【化6】
【0046】
上記式(VI)中、R10は、水素原子またはメチル基を表す。
また、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~19の脂肪族基(例えば、アルキル基)を表す。ただし、R11、R12およびR13の炭素数の合計は2~19であり、R11、R12およびR13のうち少なくとも1つは水素原子である。R11、R12およびR13は互いに連結して環状構造を形成していてもよい。
【0047】
このような繰り返し単位(III)となるモノマーとしては、例えば、イソボロニル(メタ)アクリレ-ト、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記例示のうち、上述した式(VI)で表される繰り返し単位となるモノマーである、イソボロニル(メタ)アクリレ-ト、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(III)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、2~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることがさらに好ましく、4~20質量%であることが特に好ましい。
また、本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(III)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~50モル%であることが好ましく、2~40モル%であることがより好ましく、3~30モル%であることがさらに好ましく、4~20モル%であることが特に好ましい。
【0049】
〔繰り返し単位(IV)〕
本発明の高分子化合物は、下記式(IV)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(IV)」とも言う)を有する。
【0050】
【化7】
【0051】
上記式(IV)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
また、上記式(IV)中、Lは、単結合、または、-O-、-C(=O)-、-(C=O)O-、-(C=O)NR-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
また、上記式(IV)中、Rは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4~20のアルキル基を表す。
【0052】
ここで、上記式(IV)中のLの一態様が表す、上述した2価の連結基は、上記式(I)中のLの一態様が表す2価の連結基として説明したものと同様である。
また、上記式(IV)中のRが表す、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4~20のアルキル基について、置換される前のアルキル基としては、例えば、炭素数4~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられ、炭素数4~12の直鎖状のアルキル基(例えば、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など)が好適に挙げられる。
【0053】
繰り返し単位(IV)は、下記式(VII)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0054】
【化8】

式(VII)中、R14は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表す。mおよびnは、それぞれ独立に、1~20の整数を表し、m+nは、4~21の整数を表す。
【0055】
このような繰り返し単位(IV)となるモノマーとしては、具体的には、例えば、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、1H、1H、7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロペンチルオキシ)ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(IV)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、2~40質量%であることがより好ましく、5~35質量%であることがさらに好ましく、10~30質量%であることが特に好ましい。
また、本発明の高分子化合物において、繰り返し単位(IV)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~50モル%であることが好ましく、2~40モル%であることがより好ましく、3~30モル%であることがさらに好ましく、4~25モル%であることが特に好ましい。
【0057】
〔主鎖の好適な態様〕
本発明の高分子化合物は、側鎖の分子設計が多様となり、付加重合による主鎖形成が簡便である理由から、主鎖がアクリル系またはメタクリル系の高分子化合物であることが好ましい。
【0058】
〔酸価〕
本発明の高分子化合物の酸価は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300mgKOH/gであることが好ましく、150~250mgKOH/gであることがより好ましく、160~240mgKOH/gであることがさらに好ましく、180~220mgKOH/gであることが特に好ましい。
ここで、上記酸価は、高分子化合物1g中に含まれる酸(例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、活性化メチレン基など)を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JISK 0070:1992)により測定した値である。
【0059】
〔LogP値〕
本発明の高分子化合物のLogP値は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.5~2.5であることが好ましく、1.2~1.8であることがより好ましい。
ここで、上記LogP値は高分子化合物を構成する各繰り返し単位となるモノマーのLogP値と各繰り返し単位のモル分率との積の総和である。なお、モノマーのLogP値はPerkinElmer社のChemDrawを用いて計算したものとする。
例えば、後述する高分子化合物(A-1)は、繰り返し単位(I)となるモノマーがエチレングリコールモノアセトアセテートモノメタクリレート(AAEM)であり、そのモル分率が36%であり、繰り返し単位(II)となるモノマーがメタクリル酸(MA)であり、そのモル分率が34%であり、繰り返し単位(III)となるモノマーがイソボロニルメタクリレ-ト(IBXMA)であり、そのモル分率が13%であり、繰り返し単位(IV)となるモノマーが2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート(PFBMA)であり、そのモル分率が17%であるため、高分子化合物(A-1)のLogP値は、(AAEMのLogP値)×0.36+(MAのLogP値)×0.34+(IBXMAのLogP値)×0.13+(PFBMAのLogP値)×0.17となる。
【0060】
〔重量平均分子量〕
本発明の高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、配向性をより高くし、面状ムラをより抑制することができる理由から、5,000~500,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましく、10,000~100,000であることが更に好ましい。
ここで、高分子化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定によるポリスチレン換算値として定義される。高分子化合物の重量平均分子量は、例えば、GPC装置としてEcoSEC HLC-8320GPC(東ソー製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperAWM-H(東ソー社製)を3本用い、溶離液としてNMP(N-メチルピロリドン)を用い、流速0.50ml/min、かつ、温度40℃の測定条件で測定し、ポリスチレン換算値として算出することができる。
【0061】
以下に、本発明の高分子化合物の具体例を示すが、これに限られるものではない。
【0062】
【化9】


【0063】
上記式(A-1)~(A-22)中の数字は各繰り返し単位の含有量(質量%)を表す。
【0064】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、上述した本発明の高分子化合物と、重合性基を有する液晶性化合物とを含有する液晶組成物である。
【0065】
〔液晶性化合物〕
本発明の液晶組成物に含有される液晶性化合物は、重合性基を有する液晶性化合物であれば特に限定されず、従来公知の液晶性化合物を用いることができる。
ここで、重合性基としては、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基およびアリル基などが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることが好ましい。
【0066】
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。
本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、本発明の効果等がより優れる理由から、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物(ディスコティック液晶性化合物)を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、または棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。
また、配向を固定化する観点から、液晶性化合物は上述した重合性基を2以上有することが好ましい。液晶性化合物が2種類以上の混合物の場合には、少なくとも1種類の液晶性化合物が1分子中に2以上の重合性基を有していることが好ましい。
棒状液晶性化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1や特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶性化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]や特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0067】
本発明においては、本発明の効果等がより優れる理由から、上記液晶性化合物として棒状液晶性化合物を用いることが好ましく、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0068】
〔高分子化合物〕
上述のとおり、本発明の組成物は上述した本発明の高分子化合物を含有する。
本発明の液晶組成物において、本発明の高分子化合物の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した液晶性化合物100質量部に対して10質量部未満であることが好ましく、0.5質量部以上10質量未満であることがより好ましく、1~8質量部であることが更に好ましく、1~5質量部であることが特に好ましい。
【0069】
〔垂直配向剤〕
本発明の液晶組成物は、配向性がより高くなる理由から、垂直配向剤を含有していることが好ましい。
垂直配向剤としては、例えば、オニウム塩化合物、ボロン酸化合物などが挙げられ、中でも、本発明の効果等がより優れる理由から、オニウム塩化合物が好ましい。
【0070】
<オニウム塩化合物>
オニウム塩化合物としては、垂直配向剤として公知のオニウム化合物を用いることができる。具体的には、特開2016-105127号公報の[0042]~[0052]段落に記載された化合物が挙げられる。
オニウム塩化合物を含有する場合の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した液晶性化合物100質量部に対して0.5~5質量部であることが好ましく、1~3質量部であることがより好ましい。
【0071】
<ボロン酸化合物>
ボロン酸化合物としては、垂直配向剤として公知のボロン酸化合物を用いることができる。具体的には、特開2016-105127号公報の[0053]~[0054]段落に記載された化合物が挙げられる。
ボロン酸化合物を含有する場合の含有量は、上述した液晶性化合物100質量部に対して0.1~5質量部であることが好ましく、0.5~3質量部であることがより好ましい。
【0072】
〔重合開始剤〕
本発明の液晶組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、重合開始剤を含有していることが好ましい。
使用する重合開始剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)等が挙げられる。
本発明の液晶組成物において、重合開始剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した液晶性化合物100質量部に対して1~10質量部であることが好ましい。
【0073】
〔重合性モノマー〕
本発明の液晶組成物は、塗工膜の均一性、位相差層の強度の点から、重合性モノマーが含まれていてもよい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の円盤状液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002-296423号公報中の段落番号[0018]~[0020]記載のものが挙げられる。
本発明の液晶組成物において、重合性モノマーの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した液晶性化合物100質量部に対して1~10質量部であることが好ましい。
【0074】
〔界面活性剤〕
本発明の液晶組成物は、塗工膜の均一性、位相差層の強度の点から、界面活性剤が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば、特開2001-330725号公報明細書中の段落番号[0028]~[0056]記載の化合物、特願2003-295212号明細書中の段落番号[0069]~[0126]記載の化合物が挙げられる。
本発明の液晶組成物において、界面活性剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した液晶性化合物100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~1質量部であることがより好ましい。
【0075】
〔溶媒〕
本発明の液晶組成物は、位相差層を形成する作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
[位相差層]
本発明の位相差層は、上述した本発明の液晶組成物を用いて形成された位相差層であり、上述した本発明の液晶組成物に含まれる液晶性化合物の垂直配向を固定してなる層である。
ここで、液晶性化合物が棒状液晶性化合物である場合の垂直配向とは、ホメオトロピック配向ともいい、基材の表面と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が70°~90°の範囲内となる配向を意味し、80°~90°の範囲内となる配向が好ましく、85°~90°の範囲内となる配向がより好ましい。
また、液晶性化合物が円盤状液晶性化合物である場合の垂直配向とは、上述した基材の表面と円盤状液晶性化合物の円盤面とのなす角度が70°~90°の範囲内となる配向を意味し、80°~90°の範囲内となる配向が好ましく、85°~90°の範囲内となる配向がより好ましい。
【0077】
〔位相差層の形成方法〕
本発明においては、位相差層の形成方法としては、例えば、上述した本発明の液晶組成物を後述する基材上に塗布し、所望の配向状態とした後に、重合により固定化する方法などが挙げられる。
液晶組成物の塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、および、ダイコーティング法などが挙げられる。
また、重合条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、本発明の効果等がより優れる理由から、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、本発明の効果等がより優れる理由から、10mJ/cm~50J/cmであることが好ましく、20mJ/cm~5J/cmであることがより好ましく、30mJ/cm~3J/cmであることが更に好ましく、50~1000mJ/cmであることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0078】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、上述した本発明の位相差層を有する光学フィルムである。
また、本発明の光学フィルムは、基材と、基材上に隣接して設けられる本発明の位相差層とを有する態様であることが好ましい。
以下、本発明の光学フィルムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0079】
〔基材〕
上記基材は、上述した本発明の位相差層を支持するための基材であり、例えば、上述した本発明の液晶組成物を塗布して位相差層を形成する際に液晶組成物を塗布する対象となる基材が挙げられる。なお、本発明においては、後述する偏光子が、上記基材を兼ねる態様であってもよい。
このような基材は、透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上であるのが好ましい。なお、透明とは、可視光の透過率が60%以上であることを示す。
【0080】
このような基材としては、例えば、ガラス基板およびポリマーフィルムなどが挙げられる。
ポリマーフィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系ポリマー;ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルなどのアクリル系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体、環状共役ジエンの重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体などの脂環式構造を有するポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマー;等が挙げられる。
これらの材料のうち、セルロース系ポリマー、または、脂環式構造を有するポリマーであることが好ましい。
【0081】
本発明の光学フィルムが基材を有する場合、上記基材の厚みについては特に限定されないが、5~60μmであるのが好ましく、5~30μmであるのがより好ましい。
【0082】
また、本発明の光学フィルムが有する位相差層の厚みについては特に限定されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
【0083】
[偏光板]
本発明の偏光板は、上述した本発明の光学フィルムを有する偏光板である。
また、本発明の偏光板は、上述した基材が偏光子を兼ねていない場合には、偏光子を有するものである。
【0084】
〔偏光子〕
本発明の偏光板が有する偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であれば特に限定されず、従来公知の吸収型偏光子および反射型偏光子を利用することができる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子などが用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用することができる。
反射型偏光子としては、複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子、選択反射域を有するコレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせた偏光子などが用いられる。
なかでも、密着性がより優れる点で、ポリビニルアルコール系樹脂(-CH-CHOH-を繰り返し単位として含むポリマー。特に、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つ)を含む偏光子であることが好ましい。
【0085】
本発明においては、偏光子の厚みは特に限定されないが、3μm~60μmであるのが好ましく、5μm~30μmであるのがより好ましく、5μm~15μmであるのが更に好ましい。
【0086】
〔粘着剤層〕
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムにおける位相差層と、偏光子との間に、粘着剤層が配置されていてもよい。
位相差層と偏光子との積層のために用いられる粘着剤層としては、例えば、動的粘弾性測定装置で測定した貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比(tanδ=G”/G’)が0.001~1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。本発明に用いることのできる粘着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0087】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムまたは本発明の偏光板を有する、画像表示装置である。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セル、有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0088】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置は、上述した本発明の偏光板と、液晶セルとを有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光板のうち、フロント側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0089】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0090】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、本発明の偏光板と、λ/4機能を有する板(以下、「λ/4板」ともいう。)と、有機EL表示パネルとをこの順で有する態様が好適に挙げられる。
ここで、「λ/4機能を有する板」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板をいい、例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性膜を設けた位相差フィルム等が挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例
【0091】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0092】
〔高分子化合物の合成〕
以下のとおり、高分子化合物を合成した。
なお、高分子化合物(A-1)~(A-16)及び(A-21)~(A-22)は、上述した式(I)で表される繰り返し単位と上述した式(II)で表される繰り返し単位と上述した式(III)で表される繰り返し単位と上述した式(IV)で表される繰り返し単位とを有するため、上述した本発明の高分子化合物に該当する。
一方、高分子化合物(B-1)は、上述した式(III)で表される繰り返し単位を有さないため、上述した本発明の高分子化合物に該当しない。また、高分子化合物(B-2)は、式(II)で表される繰り返し単位を有さないため、上述した本発明の高分子化合物に該当しない。
【0093】
<実施例1>
攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた300mL三口フラスコに、メチルエチルケトン24.3gを仕込んで、79℃まで昇温した。
次いで、エチレングリコールモノアセトアセテートモノメタクリレート(AAEM)24.0g(112.0mmol)、メタクリル酸(MA)9.0g(104.6mmol)、イソボロニルメタクリレ-ト(IBXMA)9.0g(40.5mmol)、2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート(PFBMA)18.0g(54.2mmol)、メチルエチルケトン32.1g、および、アゾ重合開始剤(V-601、富士フイルム和光純薬(株)製)2.4g(10.4mmol)からなる混合溶液を、120分で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、更に5時間攪拌を続け、放冷後、メチルエチルケトン31.2gを加え、上述した式(A-1)で表される高分子化合物(A-1)のメチルエチルケトン溶液を得た。
得られた高分子化合物(A-1)の重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
【0094】
<実施例2~18および比較例1~2>
使用するモノマーの種類を表1の「モノマー」の欄に記載のモノマーに変更するとともに、モノマーの仕込み比(質量比)を表1の「wt%」の欄に記載の仕込み比に変更した以外は、実施例1と同様の方法に従って上述した式(A-2)~(A-16)および(A-21)~(A-22)で表される高分子化合物(A-2)~(A-16)および(A-21)~(A-22)ならびに下記式(B-1)~(B-2)で表される高分子化合物(B-1)~(B-2)を得た。なお、下記式(B-1)~(B-2)中の数字は各繰り返し単位の含有量(質量%)を表す。
【0095】
【化10】
【0096】
ここで、表1中の「モノマー」の欄に記載の略称はそれぞれ以下のモノマーを表す。なお、PhMAは、式(III)中のRが芳香族基の態様であるため、式(III)で表される繰り返し単位となるモノマーではないが、便宜上、式(III)の「モノマー」の欄に記載した。
・AAEM:エチレングリコールモノアセトアセテートモノメタクリレート
・MA:メタクリル酸
・MOBA:モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)スクシネート
・IBXMA:イソボロニルメタクリレ-ト
・LMA:ラウリルメタクリレート
・DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート
・MADMA:2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート
・ADMA:1-アダマンチルメタクリレート
・CyMA:シクロヘキシルメタクリレート
・2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
・tBuMA:t-ブチルメタクリレート
・PhMA:フェニルメタクリレート
・PFBMA:2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート
・DFHA:1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチルアクリレート
【0097】
〔光学フィルムの作製〕
得られた各高分子化合物を用いて、以下の方法により、光学フィルムを作製した。
なお、基材としては、市販のセルローストリアセテートフィルム「ZRD40SL」(富士フイルム(株)製)を用いた。
【0098】
上記ZRD40SL上に、下記の組成の棒状液晶化合物を含む液晶組成物の溶液をワイヤーバーで塗布した。
塗布液の溶剤の乾燥および棒状液晶化合物の配向熟成のために、40℃の温風で60秒加熱した。
次いで、窒素パージ下酸素濃度100ppmで40℃にて紫外線照射(300mJ/cm)を行い、液晶化合物の配向を固定化し、基材と、液晶組成物を用いて形成された位相差層とを有する光学フィルムを作製した。
ワイヤーバーの種類は#3と#4を用い、1水準の液晶組成物の溶液から2枚のフィルムを作成した。
【0099】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
(液晶組成物の溶液)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記棒状液晶性化合物(M1) 83質量部
・下記棒状液晶性化合物(M2) 15質量部
・下記棒状液晶性化合物(M3) 2質量部
・重合開始剤(BASF社製IRGACURE OXE01) 4質量部
・重合性モノマー(新中村化学(株)製A-TMMT-75MJ)4質量部
・下記オニウム塩化合物 1.5質量部
・下記フッ素系ポリマー 0.3質量部
・各高分子化合物 3質量部
・トルエン 400質量部
・メチルエチルケトン 180質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0100】
棒状液晶性化合物(M1)
【化11】
【0101】
棒状液晶性化合物(M2)
【化12】
【0102】
棒状液晶性化合物(M3)
【化13】
【0103】
オニウム塩化合物
【化14】
【0104】
フッ素系ポリマー
【化15】
【0105】
〔配向性の評価〕
得られた光学フィルム(#3、#4)について以下のとおり配向性の評価を行った。
具体的には、偏光顕微鏡をクロスニコル条件とし、ステージに作製した各光学フィルムを挿入した。その際、基材が遅相軸を有する場合には、基材の遅相軸が、偏光顕微鏡の検光子または偏光子と並行になるようにステージを回転した。
この状態で光学フィルムを観察したときに、98%以上の面積について均一な暗視野が観察されたものを「5」と評価し、95%以上98%未満の面積について均一な暗視野が観察されたものを「4」と評価し、85%以上95%未満の面積について均一な暗視野が観察されたものを「3」と評価し、75%以上85%未満の面積について均一な暗視野が観察されたものを「2」と評価し、75%未満の面積について均一な暗視野が観察されたものを「1」と評価した。数字が大きい方が、配向性が高いことを表す。結果を表1に示す。なお、「#3」の欄が#3のワイヤーバーを用いて作製した光学フィルムの配向性を示し、「#4」の欄が#4のワイヤーバーを用いて作製した光学フィルムの配向性を示す。
実用上、#3のワイヤーバーを用いて作製した光学フィルムの評価が、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、5であることが特に好ましい。#3のワイヤーバーを用いて作製した光学フィルムの評価が同じ場合、#4の配向性が高い方が好ましい。
【0106】
【表1】
【0107】
表1中、Mwは、各高分子化合物の重量平均分子量(Mw)を表す。
表1中、酸価は、各高分子化合物の酸価を表す。
表1中、LogPは、各高分子化合物のLogP値を表す。
【0108】
表1から分かるように、本発明の高分子化合物を含有しない液晶組成物を用いた比較例1~2と比較して、本発明の高分子化合物を含有する液晶組成物を用いた実施例1~18は、高い配向性を示した。なかでも、本発明の高分子化合物の酸価が150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である実施例1~4、6および8~18は、より高い配向性を示した。そのなかでも、本発明の高分子化合物の酸価が155mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、且つ、本発明の高分子化合物のLogP値が1.2~1.8である実施例1~2、6および8~18は、さらに高い配向性を示した。
実施例2、9および11~16の対比(式(III)で表される繰り返し単位のみが異なる態様同士の対比)から、式(III)で表される繰り返し単位が式(VI)で表される繰り返し単位である実施例2、9、11および14~15は、より高い配向性を示した。なかでも、式(III)で表される繰り返し単位が少なくとも1つの脂肪族環構造を有する実施例2、11および14は、さらに高い配向性を示した。
実施例9と10との対比(式(III)で表される繰り返し単位がLMAに由来する態様同士の対比)から、式(II)中のLが単結合である実施例9は、より高い配向性を示した。
実施例2と8との対比(式(IV)で表される繰り返し単位のみが異なる態様同士の対比)から、式(IV)で表される繰り返し単位が式(VII)で表される繰り返し単位であり、且つ、式(VII)中のXがフッ素原子である実施例2は、より高い配向性を示した。