(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】表面改質処理による廃有機亜鉛触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
C08G 64/20 20060101AFI20220824BHJP
C08G 64/32 20060101ALI20220824BHJP
B01J 23/90 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C08G64/20
C08G64/32
B01J23/90 Z
(21)【出願番号】P 2021530162
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 KR2019018250
(87)【国際公開番号】W WO2020130735
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167325
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン-キョン
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-292328(JP,A)
【文献】特表2016-530301(JP,A)
【文献】特開平02-097525(JP,A)
【文献】特表2020-500962(JP,A)
【文献】特表2018-536737(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101468320(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G64/00-64/42
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)廃有機亜鉛触媒をジカルボン酸と混合し撹拌して混合物を生成する段階;及び (b)前記混合物を亜鉛化合物と混合して撹拌する段階;を含み、
前記ジカルボン酸及び
前記亜鉛化合物はそれぞれ固相であり、
前記段階(a)及び(b)をそれぞれ2回以上交互に繰り返
しており、
前記廃有機亜鉛触媒は、亜鉛とジカルボン酸が結合された有機亜鉛触媒であり、
前記ジカルボン酸及び前記亜鉛化合物のモル比は1:0.7から1:1.5である、廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項2】
前記段階(a)及び(b)は、それぞれ独立して3分から20分間撹拌する、請求項1に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項3】
前記段階(a)及び(b)をそれぞれ3回から5回交互に繰り返す、請求項1又は2に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項4】
前記段階(a)では、前記廃有機亜鉛触媒の表面の亜鉛イオンと前記段階(a)で混合したジカルボン酸から由来した酸素原子が配位結合を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項5】
前記段階(b)では、前記段階(a)で混合したジカルボン酸から由来した酸素原子と前記段階(b)で混合した亜鉛化合物の亜鉛イオンが配位結合を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項6】
前記ジカルボン酸は、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、ピメリン酸(pimelic acid)、テレフタル酸(terephthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、ホモフタル酸(homophthalic acid)及びフェニルグルタル酸(phenyl glutaric acid)からなる群から選択された1種以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項7】
前記亜鉛化合物は、亜鉛前駆体として酸化亜鉛(zinc oxide、ZnO)、硝酸亜鉛(zinc nitrate、Zn(NO
3)
2)、酢酸亜鉛(zinc acetate、Zn(CH
3CO
2)
2)、水酸化亜鉛(zinc hydroxide、Zn(OH)
2)、硫酸亜鉛(zinc sulfate、ZnSO
4)及び塩素酸亜鉛(zinc chlorate、Zn(ClO
3)
2)からなる群から選択された1種以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項8】
前記段階(a)のジカルボン酸の含量は、廃有機亜鉛触媒100重量部基準に0.5から20重量部である、請求項1から7のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項9】
前記段階(b)の亜鉛化合物の含量は、廃有機亜鉛触媒100重量部基準に0.5から20重量部である、請求項1から8のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項10】
前記廃有機亜鉛触媒は、亜鉛グルタラート触媒である、請求項1から9のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項11】
前記段階(a)及び(b)は、それぞれ独立して撹拌混合機、V型混合機、W型混合機、リボン混合機、ドラム混合機またはボールミルを用いて行う、請求項1から10のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項12】
前記方法で再生された触媒は、再生前の触媒活性の50%以上の触媒活性を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の廃有機亜鉛触媒の再生方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって再生された有機亜鉛触媒の存在下で、エポキシド及び二酸化炭素を含む単量体を重合する段階;を含む、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月21日付韓国特許出願第2018-0167325号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、廃有機亜鉛触媒をジカルボン酸及び亜鉛化合物で表面改質して再生させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチックは、製造の容易性と使用の便宜性によって各種物品の素材として用いられており、包装フィルム、使い捨てコップ及び使い捨て皿のような使い捨て用品はもちろん、建築材料及び自動車内装材など多様な分野で用いられている。プラスチックの使用量が多くなるのに伴いプラスチック廃棄物の量が増加し、これは自然環境で殆ど分解されないため、主に焼却処理を介して廃棄物を処理しているが、焼却時に有毒ガスなどが排出されるので環境汚染をもたらすという問題がある。よって、最近は、自然環境においても自然に分解される生分解性プラスチックが開発されている。
【0004】
生分解性プラスチックは、化学構造に起因して水分で徐々に分解が起こるプラスチックであって、土壌や海水のような湿式環境では数週内に分解され始めて1年から数年内に消滅する。また、生分解性プラスチックの分解物は、人体に無害な成分、例えば、水や二酸化炭素に分解されるため環境の被害が少ない。
【0005】
特に、最近になり、二酸化炭素とエポキシドの重合によるポリアルキレンカーボネート樹脂は、生分解可能な樹脂の一種として大きく脚光を浴びている。ポリアルキレンカーボネートは非結晶性の透明樹脂であって、類似系列のエンジニアリングプラスチックである芳香族ポリカーボネートと異なり脂肪族構造のみを有しており、二酸化炭素とエポキシドを直接的な単量体(主原料)として触媒下で共重合反応により合成される。ポリアルキレンカーボネートは、優れた透明性、伸び率、酸素遮断性能を有しており、生分解性を示し、燃焼時に二酸化炭素と水に完全に分解されて炭素残留物が残らないという長所を有している。
【0006】
前記ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための多様な方法が研究されており、特に前記二酸化炭素及びエポキシド共重合反応の代表的な触媒として、二酸化炭素プラスチック重合用配位重合体(coordination polymer)系列の触媒である亜鉛及びジカルボン酸が結合された亜鉛グルタラート触媒などの有機亜鉛触媒が広く知られている。
【0007】
ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造は、前記有機亜鉛触媒の活性により生産性が決定されるほど、有機亜鉛触媒は共重合反応で重要な役割を担う。しかし、二酸化炭素及びエポキシドの共重合反応で一度用いられた廃有機亜鉛触媒は、その後、触媒活性を喪失するようになって継続的な再使用が不可能なので、重合反応の完了後、触媒を回収して再生させた後、前記共重合反応に再び投入して再使用することで経済性を確保しようとする多様な試みがされてきた。
【0008】
例えば、フィルターまたは遠心分離を用いてポリカーボネート樹脂溶液から有機亜鉛触媒を分離した後、これを過量のジカルボン酸が含まれた溶液で再処理して触媒を再生させる方法が公開されている。しかし、このような方法は、基本的に溶液またはスラリー相で触媒を再生させるので、別途の洗浄工程が追加で必要で、費用も増加することになり、事実上、触媒の再生による経済性の確保を実質的に具現することができないという限界点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第2009-0025219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ジカルボン酸及び亜鉛化合物を廃有機亜鉛触媒と交互に乾式混合して表面を改質することにより、簡便で経済的に廃有機亜鉛触媒を再生させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、(a)廃有機亜鉛触媒をジカルボン酸と混合し撹拌して混合物を生成する段階;及び(b)前記混合物を亜鉛化合物と混合して撹拌する段階;を含み、前記ジカルボン酸及び亜鉛化合物はそれぞれ固相であり、前記段階(a)及び(b)をそれぞれ2回以上交互に繰り返す、廃有機亜鉛触媒の再生方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による再生方法を用いる場合、廃有機亜鉛触媒にジカルボン酸及び亜鉛化合物を交互に繰り返して乾式混合することで触媒の活性を回復させることができるため、簡便で効率的な方法で廃有機亜鉛触媒を再生させることができる。
【0013】
また、本発明の再生方法は、乾式混合を用いて触媒再生時に別途の溶媒を用いないため、再生工程の費用を節減させて経済性を高めることができ、追加的な溶媒処理過程の必要がないという長所がある。
【0014】
また、本発明の再生方法は、廃有機亜鉛触媒の活性を高い水準に回復させるので、有機亜鉛触媒を容易に再使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明の説明及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0017】
本発明は、(a)廃有機亜鉛触媒をジカルボン酸と混合し撹拌して混合物を生成する段階;及び(b)前記混合物を亜鉛化合物と混合する段階;を含み、前記ジカルボン酸及び亜鉛化合物はそれぞれ固相であり、前記段階(a)及び(b)をそれぞれ2回以上交互に繰り返す、有機亜鉛触媒の再生方法を提供する。
【0018】
本発明の再生方法は、(a)廃有機亜鉛触媒をジカルボン酸と混合し撹拌して混合物を生成する段階;及び(b)前記混合物を亜鉛化合物と混合する段階;を含む。
【0019】
亜鉛グルタラート(zinc glutarate)のX-ray単結晶構造によれば、各亜鉛イオンの中心は互いに異なる4つのカルボキシル基から由来した酸素原子と配位結合しており、各亜鉛イオン間の距離は4.639Åである(Moonhor Ree et al.,Chem.Mater.2004,16,2981)。前記報告された結晶構造によれば、構成原子のファンデルワールス半径を考慮する場合、結晶の内部に空いた空間が殆ど存在せず、よって、有機亜鉛触媒を用いた重合時の反応は大部分触媒の表面でのみ進められ、触媒の表面に存在する亜鉛が触媒の活性サイト(active site)として作用してエポキシド及び二酸化炭素の重合反応の触媒の役割を担うことになる。このような理由で、有機亜鉛触媒の活性は、触媒の表面積により大きく左右される。
【0020】
すなわち、経済性の確保及び費用節減という触媒再生の観点から、最小の費用で最大の触媒再生の効果を奏するためには、回収した廃有機亜鉛触媒の表面積を中心に再生反応を起こすのが効率的である。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、使用後に回収した廃有機亜鉛触媒をジカルボン酸と先ず混合し、触媒の表面に存在する亜鉛イオンとカルボキシル基の間の配位結合を形成した後、亜鉛化合物とジカルボン酸を交互に混合しながら表面で連続的に配位結合を発生させることにより、最小の費用で高い効率の再生効果を奏することができる。
【0022】
前記廃有機亜鉛触媒とは、使用していない有機亜鉛触媒を、エポキシド及び二酸化炭素を含む単量体の重合反応の触媒として最小1回、または2回以上使用し、そのままでは十分な触媒活性を発揮することができないためポリアルキレンカーボネートを収得しにくくなった触媒を意味する。
【0023】
前記ジカルボン酸及び亜鉛化合物は固相であって、粉末、結晶などの公知の全ての形態の固相を含む。すなわち、前記有機亜鉛触媒、ジカルボン酸、亜鉛化合物の混合は、別途の溶媒を用いない乾式混合(dry blending)方式で行う。
【0024】
液相またはスラリー相で有機亜鉛触媒を反応させる場合、溶媒によって有機亜鉛触媒の特性が変化することがあり得るだけでなく、追加的な水処理の過程などが必須であり、ジカルボン酸及び亜鉛化合物を溶液上で再び反応させることとなり、結果的には触媒の再生ではなく新たな触媒の生産となってしまうので、簡便で経済的に有機亜鉛触媒を再生させようとする目的を達成することができなくなる。
【0025】
また、液相またはスラリー相での反応は、機械的なエネルギーを用いて有機亜鉛触媒粒子に粉砕、衝撃、グラインディング(grinding)などを加えることにより、触媒の表面だけでなく内部にわたって変化を起こすようになるところ、このような現象をメカノケミストリー(mechanochemistry)と称する。この場合、物理的な衝撃によって再生の過程で廃有機亜鉛触媒の表面特性が損傷される虞がある。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、廃有機亜鉛触媒とジカルボン酸及び亜鉛混合物を乾式混合して有機亜鉛触媒の表面をコーティングさせて改質するものなので、触媒再生の工程に必要となる費用及び時間は最小化して再生効率は最大化させ、触媒の損傷または変形を防止して安定して触媒活性を回復させることができる。
【0027】
前記乾式混合の方式としては、前記物質を均質(homogeneous)に混合することができる限り公知の混合方式及び機器を自由に用いることができ、具体的に、撹拌混合機、V型混合機、W型混合機、リボン混合機、ドラム混合機、ボールミルなどの装置を用いることができるが、これに制限されない。
【0028】
本発明の再生方法は、前記段階(a)及び(b)をそれぞれ2回以上交互に繰り返すことができ、好ましくはそれぞれ3回以上、より好ましくはそれぞれ3回から5回交互に繰り返すことができる。
【0029】
前記のように段階(a)及び(b)を交互に繰り返し行うことにより、有機亜鉛触媒にジカルボン酸及び亜鉛化合物を交替しながら混合して撹拌するようになる。前述のとおり、前記有機亜鉛触媒とジカルボン酸を混合して撹拌させることにより、有機亜鉛触媒の表面に存在する亜鉛イオンとジカルボン酸のカルボキシル基から由来した酸素原子が配位結合を形成し、次いで、亜鉛化合物及びジカルボン酸を交互に混合して撹拌させる段階を介して有機亜鉛触媒の表面に配位結合を連続してつないでいくことができる。これを介して、前記有機亜鉛触媒は触媒活性を回復することになるのである。
【0030】
ここで、段階(a)では、前記廃有機亜鉛触媒の表面の亜鉛イオンと前記段階(a)で混合したジカルボン酸から由来した酸素原子が配位結合を形成し、段階(b)では、前記段階(a)で混合したジカルボン酸から由来した酸素原子と前記段階(b)で混合した亜鉛化合物の亜鉛イオンが配位結合を形成するので、有機亜鉛触媒の表面に配位結合を連続してつないでいくことができる。これを介し、本発明では、前記廃有機亜鉛触媒を再生させて触媒活性を回復させるのである。
【0031】
また、前記撹拌時間は、効率的な触媒活性の再生と経済性のための側面から、3分から20分間撹拌させてよい。前記段階(a)で有機亜鉛触媒の表面に配位結合を形成するためには、有機亜鉛触媒とジカルボン酸を混合して適切な時間の間撹拌しなければならない。このとき、段階(a)または(b)で撹拌を行わないか撹拌時間が短すぎる場合、有機亜鉛触媒とジカルボン酸の間の十分な配位結合が形成できないという問題が起こり得るし、撹拌時間が長すぎる場合、経済性が低下するという問題が発生し得る。
【0032】
また、前記のように、段階(a)及び(b)で混合と撹拌を繰り返してジカルボン酸と亜鉛化合物を順次混合するのではなく、廃有機亜鉛触媒にジカルボン酸と亜鉛化合物を一度に混合してしまう場合、ジカルボン酸と亜鉛化合物の反応で新たな有機亜鉛触媒が生成されるだけで廃有機亜鉛触媒の表面で反応が起こる程度が顕著に減少するので、廃有機亜鉛触媒の表面をコーティングし、これを再生させて触媒活性を回復しようとする本発明の目的を十分具現することができないという問題が発生し得る。
【0033】
前記ジカルボン酸は、炭素数3から20の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8から40の芳香族ジカルボン酸などを含むことができる。
【0034】
具体的に、前記炭素数3から20の脂肪族ジカルボン酸は、例えば、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、ピメリン酸(pimelic acid)またはこれらの混合であってよく、前記炭素数8から40の芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸(terephthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、ホモフタル酸(homophthalic acid)、フェニルグルタル酸(phenyl glutaric acid)またはこれらの混合であってよいが、これに制限されない。
【0035】
具体的に、前記有機亜鉛触媒の活性の側面で前記ジカルボン酸としてグルタル酸が好ましく用いられてよく、この場合、前記有機亜鉛触媒は亜鉛グルタラート系触媒である。
【0036】
前記亜鉛化合物は、ジカルボン酸と反応して有機亜鉛触媒を製造できる亜鉛前駆体の一種であれば、その種類に制限されずに自由に用いることができる。具体的に、前記亜鉛化合物は亜鉛前駆体であり、その種類は、酸化亜鉛(zinc oxide、ZnO)、硝酸亜鉛(zinc nitrate、Zn(NO3)2)、酢酸亜鉛(zinc acetate、Zn(CH3CO2)2)、水酸化亜鉛(zinc hydroxide、Zn(OH)2)、硫酸亜鉛(zinc sulfate、ZnSO4)及び塩素酸亜鉛(zinc chlorate、Zn(ClO3)2)からなる群から選択された1種以上であってよいが、これに制限されない。
【0037】
前記段階(a)のジカルボン酸の含量は、廃有機亜鉛触媒100重量部基準に0.5から20重量部、好ましくは2から20重量部、より好ましくは2から8重量部であってよく、前記段階(b)の亜鉛化合物の含量は、廃有機亜鉛触媒100重量部基準に0.5から20重量部、好ましくは1から10重量部、より好ましくは1から5重量部であってよい。
【0038】
ジカルボン酸または亜鉛化合物の含量が前記範囲を超える場合、廃有機亜鉛触媒の表面積に比べてジカルボン酸または亜鉛化合物の量が過度なので、触媒の表面に結合することができなかったジカルボン酸及び亜鉛化合物が触媒の周辺に残留することとなり、この場合、廃有機亜鉛触媒の表面における配位結合を妨害して触媒外部で自ら結合することにより、廃触媒の表面改質及び触媒活性回復の効果を妨害し得る。また、ジカルボン酸または亜鉛化合物の含量が前記範囲未満の場合、廃有機亜鉛触媒の表面改質の効果が十分発揮されることができず有機亜鉛触媒の再生工程が円滑に行われないこともある。
【0039】
さらに、前記ジカルボン酸及び亜鉛化合物のモル比は、1:0.5から1:1.5であってよく、具体的には1:0.7から1:1.5、または1:0.9から1:1.1、好ましくは1:1であってよい。前記範囲を外れる場合、有機亜鉛触媒の表面改質及びこれによる再生効果が低下し得るので、ジカルボン酸及び亜鉛化合物は有機亜鉛触媒の表面で最大の配位結合を示すように適切な相対的な比率で用いなければならない。
【0040】
前記方法で再生された触媒は、再生前の触媒、すなわち、廃有機亜鉛触媒活性の50%以上の触媒活性を有してよく、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の触媒活性を有してよい。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記再生方法を用いて廃有機亜鉛触媒を再生させる場合、再生前の触媒活性と比べて最大90%以上の触媒活性を回復したところ、本発明の方法によって廃有機亜鉛触媒の活性を大きく回復することができるため再使用が容易である。
【0042】
また、本発明は、前記方法によって再生された有機亜鉛触媒の存在下で、エポキシド及び二酸化炭素を含む単量体を重合する段階;を含む、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【0043】
前記二酸化炭素及びエポキシド化合物を含む単量体を重合する段階で、前記再生された有機亜鉛触媒は、不均一触媒(heterogeneous catalyst)の形態で用いられてよい。前述のとおり、前記有機亜鉛触媒は、再生前の触媒活性の50%以上の活性を有するので、二酸化炭素及びエポキシド化合物を含む単量体の共重合反応の触媒として有用に用いることができる。
【0044】
前記重合する段階は、溶媒内で液相重合として進められてよい。前記液相重合で用いられる溶媒は、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、1,4-ジオキサン、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルアミンケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルアセテート、ビニルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチロラクトン、カプロラクトン、ニトロプロパン、ベンゼン、スチレン、キシレン及びメチルプロパゾール(methyl propasol)またはこれらの2種以上の混合物を用いることができ、好ましくはジクロロメタンまたはジクロロエタンを溶媒として用いることにより、重合反応の進行をより効果的にできるが、これに制限されない。
【0045】
前記エポキシド化合物は、ハロゲンまたは炭素数1から5のアルキル基で置換または非置換された炭素数2から20のアルキレンオキシド;ハロゲンまたは炭素数1から5のアルキル基で置換または非置換された炭素数4から20のシクロアルキレンオキシド;及びハロゲンまたは炭素数1から5のアルキル基で置換または非置換された炭素数8から20のスチレンオキシド;からなる群から選択された1種以上であってよいが、これに制限されない。
【0046】
前記ハロゲンまたは炭素数1から5のアルキル基で置換または非置換された炭素数2から20のアルキレンオキシドの具体的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、オクテンオキシド、デセンオキシド、ドデセンオキシド、テトラデセンオキシド、ヘキサデセンオキシド、オクタデセンオキシド、ブタジエンモノオキシド、1,2-エポキシ-7-オクテン、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどを含むが、これに制限されない。
【0047】
前記ハロゲンまたは炭素数1から5のアルキル基で置換または非置換された炭素数4から20のシクロアルキレンオキシドの例としては、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、アルファ-ピネンオキシド、2,3-エポキシノルボルネン、リモネンオキシド、ジエルドリンなどを含むが、これに制限されない。
【0048】
前記ハロゲンまたは炭素数1から5のアルキル基で置換または非置換された炭素数8から20のスチレンオキシドの例としては、2,3-エポキシプロピルベンゼン、スチレンオキシド、フェニルプロピレンオキシド、スチルベンオキシド、クロロスチルベンオキシド、ジクロロスチルベンオキシド、1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン、ベンジルオキシメチルオキシラン、グリシジル-メチルフェニルエーテル、クロロフェニル-2,3-エポキシプロピルエーテル、エポキシプロピルメトキシフェニルエーテル、ビフェニルグリシジルエーテル、グリシジルナフチルエーテルなどを含むが、これに制限されない。
【0049】
これ以外にも、二酸化炭素及びエポキシド化合物を含む単量体を重合する方法及び工程の条件は、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための通常の重合条件を制限なく用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、これらだけで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0051】
[有機亜鉛触媒の使用及び回収]
1)有機亜鉛触媒の製造
500mLサイズの丸底フラスコで、300mLのトルエンに13.2g(0.1mol)のグルタル酸、8.2g(0.1mol)の酸化亜鉛(ZnO)、そして0.2mLの酢酸を加えて還流下に分散させた。次いで、前記混合溶液を55℃の温度で3時間、そして110℃で4時間の間加熱した。白色の固体が生成された後、これを濾過し、アセトン/エタノールで洗浄した後、130℃で真空オーブンで一晩中(overnight)乾燥した。
【0052】
2)ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造
グローブボックス(glove box)内で、高圧反応器内に16gの触媒と340.8gのジクロロメタン(methylene chloride)を投入した後、356gのエチレンオキシドを入れた。次いで、二酸化炭素を用いて反応器の内部を30barで加圧した。重合反応を70℃で3時間の間進めた。反応終了後、未反応の二酸化炭素と酸化エチレン、溶媒であるジクロロメタンを共に除去した。残っている固体を完全に乾燥した後に定量し、最終的に収得したポリエチレンカーボネートの量を測定した。
【0053】
3)廃有機亜鉛触媒の分離
有機亜鉛触媒の回収のために、乾燥したポリエチレンカーボネートをジクロロメタン溶媒に再溶融した。遠心分離機を用いてポリエチレンカーボネート溶液から廃有機亜鉛触媒粒子を回収し、触媒をジクロロメタン溶媒を用いて洗浄した後に乾燥した。
【0054】
[廃有機亜鉛触媒の再生]
<実施例1>
(段階i)
250mLサイズの丸底フラスコにマグネチックバー(magnetic bar)と回収した有機亜鉛触媒10gを入れた。次いで、常温で600rpmで撹拌しながら0.5g(3.8mmol)のグルタル酸を投入し、10分間撹拌した。次いで、0.3g(3.8mmol)の酸化亜鉛を投入して10分間撹拌した。前記投入及び撹拌の過程をそれぞれ2回ずつ追加で行い、グルタル酸及び酸化亜鉛をそれぞれ3回ずつ投入及び撹拌した。前記方法で表面処理された触媒を130℃で真空オーブンで一晩中乾燥した。
【0055】
(段階ii)
グローブボックス内で、高圧反応器内に0.4gの表面処理された有機亜鉛触媒と8.52gのジクロロメタンを投入した後、8.9gのエチレンオキシドを入れた。次いで、二酸化炭素を用いて反応器の内部を30barで加圧した。重合反応を70℃で3時間の間進めた。反応終了後、未反応の二酸化炭素と酸化エチレン、溶媒であるジクロロメタンを共に除去した。残っている固体を完全に乾燥した後に定量し、最終的に収得したポリエチレンカーボネートの量を測定した。
【0056】
<実施例2>
グルタル酸の量を0.1g(0.8mmol)に、酸化亜鉛の量を0.07g(0.8mmol)に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0057】
<実施例3>
グルタル酸の量を1g(8mmol)に、酸化亜鉛の量を0.7g(8mmol)に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0058】
<実施例4>
段階(i)で有機亜鉛触媒に酸化亜鉛を投入したときに1分間撹拌したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0059】
<実施例5>
段階(i)で有機亜鉛触媒にグルタル酸を投入したときに1分間撹拌したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0060】
<比較例1>
触媒の回収後、再生の過程を経ないことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0061】
<比較例2>
単なる撹拌の代りに、2mm直径のジルコニアボール(ball)で満たされた50mLの反応器でシェイキングしながら反応させたことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0062】
<比較例3>
段階(i)で有機亜鉛触媒にグルタル酸1.5g(11.4mmol)及び酸化亜鉛0.9g(11.4mmol)を一度に投入して単純に混合したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0063】
<比較例4>
段階(i)で有機亜鉛触媒に酸化亜鉛を投入したときに10分間撹拌する段階を行わずに単純に混合したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0064】
<比較例5>
段階(i)で有機亜鉛触媒にグルタル酸を投入したときに10分間撹拌する段階を行わずに単純に混合したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0065】
<比較例6>
回収した有機亜鉛触媒を溶媒であるトルエンの存在下で30gのジカルボン酸と混合したことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0066】
<比較例7>
投入及び撹拌の過程をそれぞれ1回ずつのみ行ったことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0067】
<比較例8>
グルタル酸0.5g(3.8mmol)及び酸化亜鉛0.15g(1.9mmol)を用いたことを除いては、実施例1と同一の方法で実験した。
【0068】
[再生された有機亜鉛触媒の使用]
前記実施例1から5、比較例1から8で収得した有機亜鉛触媒を用いて、前述した方法と同様にポリアルキレンカーボネート樹脂を製造した。前記重合の結果による触媒の活性及び収得率を下記表1に示した。
【0069】
【0070】
前記表1で分かるとおり、本発明による再生方法で有機亜鉛触媒を表面改質した場合、再生していない最初の触媒活性(対照群)と類似した水準の触媒活性を示した。一方、表面改質処理を省略した比較例1、ジルコニアボールを用いてシェイキングしながら有機亜鉛触媒の粒子をグラインディングして再生させた比較例2の場合、回収した有機亜鉛触媒の活性が対照群に比べて非常に低下し、ポリアルキレンカーボネート樹脂の収得率が非常に低いことが分かった。
【0071】
また、比較例3の場合、グルタル酸と酸化亜鉛を時間差を置いて順次混合するのではなく、一度に投入して単純に混合したが、その結果、廃有機亜鉛触媒の触媒活性が再生される程度は実施例に比べて低下し、比較例4もまた撹拌の過程を省略したため、触媒の再生が効果的になされていないことを確認した。
【0072】
一方、比較例5の場合、撹拌することなく単純に混合したため、配位結合が十分に形成できず、これにより触媒活性も非常に低く表れた。比較例6の場合、従来の方法のように、溶媒の存在下で過量のジカルボン酸と混合して再生させた方法であるが、これも本発明の再生方法に比べて触媒活性の回復能力が劣ることを確認した。比較例7のようにジカルボン酸及び亜鉛化合物を1回ずつのみ混合した場合、ジカルボン酸と亜鉛化合物のモル比を2:1にして実験した比較例8の場合にも触媒活性の回復が低下することが分かった。一方、実施例1から3を比べると、実施例1で最も優れた触媒活性を発揮し、ジカルボン酸及び亜鉛化合物の含量がさらに少ない実施例2、ジカルボン酸及び亜鉛化合物の含量がさらに多い実施例3では、触媒活性が実施例1よりは低いものと表れた。
【0073】
すなわち、有機亜鉛触媒の表面積を考慮して適切な含量でジカルボン酸及び亜鉛化合物を混合し、触媒の表面積での配位結合を効果的に誘導することにより、触媒の再生効果を最大限奏することができることを確認した。