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特許7129134ポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20220825BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20220825BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20220825BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L25/04
C08G64/18
C08L55/02
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019503131
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2018007903
(87)【国際公開番号】W WO2018159789
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017038843
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 康弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智子
(72)【発明者】
【氏名】秋元 隆史
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159786(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159788(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159790(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/151346(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/203916(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/203917(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087595(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 - 64/42
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含み、下記式(F1a)を満たすことを特徴とする、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、スチレン系樹脂(C)を配合してなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)、並びに前記スチレン系樹脂(C)の合計量100質量%に占める前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の割合が50質量%以上99質量%以下であり
前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が50以上120以下であり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が21質量%以上70質量%以下であり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下であり、
前記スチレン系樹脂(C)が、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びアクリロニトリル-スチレン共重合体から選ばれる少なくとも一つである、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【数1】

[式中、wM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す]
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-またはCO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【請求項2】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F1a’)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数2】

[式中、wM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す]
【請求項3】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F1b)を満たす、請求項1または2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数3】

[式中、wM1は上記した通りであり、wAは、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す。]
【請求項4】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F2)を満たす、請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数4】

[式中、wM1およびwM2は上記した通りである。]
【請求項5】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F3)を満たす、請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数5】

[式中、wM2は上記した通りであり、wM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す。]
【請求項6】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F4a)を満たす、請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数6】

[式中、nM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
【請求項7】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F4b)を満たす、請求項1~6のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数7】

[式中、nM1は上記した通りであり、nAは、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
【請求項8】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F5)を満たす、請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数8】

[式中、nM1は上記した通りであり、nM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
【請求項9】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F6)を満たす、請求項1~8のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数9】

[式中、nM2は上記した通りであり、nM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
【請求項10】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が下記式(F7a)を満たす、請求項1~9のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数10】

[式中、iPOSは、前記ポリカーボネートブロック(A-1)及び前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の連結基の平均含有量(モル)を示す。また、iPCは、前記ポリカーボネートブロック(A-1)の末端基の平均含有量(モル)を示す。]
【請求項11】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F7b)を満たす、請求項1~10のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数11】

[式中、iM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。また、iAは、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
【請求項12】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F8)を満たす、請求項1~11のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数12】

[式中、iM1は上記した通りであり、iM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
【請求項13】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)が下記式(F9)を満たす、請求項1~12のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【数13】

[式中、iM2は上記した通りであり、iM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
【請求項14】
前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は、主鎖が下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロックを含む、請求項1~13のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【化2】

[式中、R30及びR31は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’は単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-またはCO-を示す。d及びeは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【請求項15】
前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が55以上120以下である、請求項1~14のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項16】
前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が55以上85以下である、請求項1~15のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項17】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記芳香族ポリカーボネート(B)の質量比率(A)/(B)が、0.1/99.9~99.9/0.1である、請求項1~16のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項18】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記芳香族ポリカーボネート(B)の合計に対する前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~17のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項19】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記芳香族ポリカーボネート(B)からなるポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、請求項1~18のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項21】
電気及び電子機器用筐体である、請求項20に記載の成形品。
【請求項22】
自動車及び建材の部品である、請求項20に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体、それを含むポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(以下、「PC-POS共重合体」と略記することがある)は、その高い耐衝撃性、耐薬品性、及び難燃性等の優れた性質から注目されている。そのため、電気・電子機器分野、自動車分野等の様々な分野において幅広い利用が期待されている。特に、携帯電話、モバイルパソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、電動工具、通信基地局、バッテリーなどの筐体、及びその他の日用品への利用が広がっている。
上記PC-POS共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物において、耐衝撃性や難燃性をさらに向上させること、及び流動性等の他の特性を付与することについても検討が行われている。例えば特許文献1,2には、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(以下(「AS」ともいう)やアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(以下「ABS」ともいう)、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマー、及びリン含有難燃剤をそれぞれ所定量含有し、衝撃強さを実質的に悪化させることなく流動性や難燃性を向上した熱可塑性樹脂が開示されている。
特許文献3,4には、優れた難燃性を維持しながら、成形性、耐衝撃性、剛性を満足し、熱安定性に優れた成形体を成形可能なポリカーボネート樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、及びポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体及び/又は官能基含有シリコーン化合物等を含有するポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-52401号公報
【文献】特表2008-516013号公報
【文献】特開2000-191898号公報
【文献】特開2001-55500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄肉でかつ大型の成形体を成形することが可能なポリカーボネート樹脂組成物には、ABS樹脂レベルの高い流動性が求められる。しかしながら、従来はPC-POS共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物の流動性を向上させようとすると衝撃強度が低下する傾向にあり、高いレベルで流動性と衝撃強度とを両立させることは困難であった。
本発明は、流動性に優れ、かつ高い衝撃強度を有する成形体を得ることが可能なポリカーボネート系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、特定の分子量域におけるポリオルガノシロキサンブロックの濃度が一定以上であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体とすることで、ポリオルガノシロキサンブロックの鎖長を伸ばす、あるいは含有量を増加させずとも、より優れた耐衝撃性を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体、それを含むポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品が得られることを見出した。
すなわち、本発明は下記[1]~[28]に関する。
[1]下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含み、下記式(F1a)を満たすことを特徴とする、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数1】

[式中、wM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す]
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-またはCO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
[2]下記式(F1a’)を満たすことを特徴とする、上記[1]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数2】

[式中、wM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す]
[3]下記式(F1b)を満たす、上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数3】

[式中、wM1は上記した通りであり、wAは、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す。]
[4]下記式(F2)を満たす、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数4】

[式中、wM1およびwM2は上記した通りである。]
[5]下記式(F3)を満たす、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数5】

[式中、wM2は上記した通りであり、wM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す。]
[6]前前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が下記式(F4a)を満たす、上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数6】

[式中、nM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
[7]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が下記式(F4b)を満たす、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数7】

[式中、nM1は上記した通りであり、nAは、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
[8]下記式(F5)を満たす、上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数8】

[式中、nM1は上記した通りであり、nM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
[9]下記式(F6)を満たす、上記[1]~[8]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数9】

[式中、nM2は上記した通りであり、nM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
[10]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が下記式(F7a)を満たす、上記[1]~[9]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数10】

[式中、iPOSは、前記ポリカーボネートブロック(A-1)及び前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の連結基の平均含有量(モル)を示す。また、iPCは、前記ポリカーボネートブロック(A-1)の末端基の平均含有量(モル)を示す。]
[11]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が下記式(F7b)を満たす、上記[1]~[10]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数11】

[式中、iM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。また、iAは、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
[12]下記式(F8)を満たす、上記[1]~[11]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数12】

[式中、iM1は上記した通りであり、iM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
[13]下記式(F9)を満たす、上記[1]~[12]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【数13】

[式中、iM2は上記した通りであり、iM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
[14]前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は、主鎖が下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロックを含む、上記[1]~[13]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
【化2】

[式中、R30及びR31は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’は単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-またはCO-を示す。d及びeは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
[15]前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が30以上500以下である、上記[1]~[14]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[16]前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が55以上500以下である、上記[1]~[15]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[17]前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が55以上85以下である、上記[1]~[16]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[18]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が5質量%以上70質量%以下である、上記[1]~[17]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[19]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、上記[1]~[18]のいずれかに記載のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体。
[20]上記[1]~[19]のいずれかに記載の前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、スチレン系樹脂(C)を配合してなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)、並びに前記スチレン系樹脂(C)の合計量100質量%に占める前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の割合が50質量%以上99質量%以下である、ポリカーボネート系樹脂組成物。
[21]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記芳香族ポリカーボネート(B)の質量比率(A)/(B)が、0.1/99.9~99.9/0.1である、上記[20]に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[22]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記芳香族ポリカーボネート(B)の合計に対する前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である、上記[20]または[21]のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[23]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記芳香族ポリカーボネート(B)からなるポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、上記[20]~[22]のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[24]前記スチレン系樹脂(C)が、アクリロニトリル及びスチレンに由来する構成単位を有する、上記[20]~[23]のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[25]前記スチレン系樹脂(C)が、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びアクリロニトリル-スチレン共重合体から選ばれる少なくとも一つである、上記[20]~[24]のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[26]上記[20]~[25]のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
[27]電気及び電子機器用筐体である、上記[26]に記載の成形品。
[28]自動車及び建材の部品である、上記[26]に記載の成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より優れた耐衝撃性を有する、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体、及び当該ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート系樹脂及びスチレン系樹脂を含み、流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を、ゲル浸透クロマトグラフ法により、リテンションタイムごとに5つに分画した図。
図2】製造例1における、ゲル浸透クロマトグラフ法によるポリカーボネートを換算基準とした分子量ごとのポリオルガノシロキサンブロックの含有量を示す図。
図3】ポリオルガノシロキサンブロック及びポリカーボネートブロックの連結基の一例並びに、ポリカーボネートブロックの末端基の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、特定の分子量域におけるポリオルガノシロキサンブロックの濃度が一定以上であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体とすることで、ポリオルガノシロキサンブロックの鎖長を伸ばす、あるいは含有量を増加させずとも、より優れた耐衝撃性を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が得られることを見出した。また、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート系樹脂にスチレン系樹脂を添加することで、流動性に優れ、より優れた耐衝撃性を有するポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品が得られることを見出した。以下、詳細に説明する。
なお、本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。また、本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましい。
【0009】
<ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体>
本発明の第一の実施形態であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含み、下記式(F1a)を満たすことを特徴とする。
【数14】

[式中、wM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す]
【化3】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-またはCO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【0010】
上記一般式(I)中、R1及びR2がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
1及びR2がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示し、以下、明細書中同様である。)、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位として前記アルキル基を有するものが挙げられる。
【0011】
Xが表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、炭素数1~5のアルキレン基が好ましい。Xが表すアルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。Xが表すシクロアルキレン基としては、シクロペンタンジイル基やシクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられ、炭素数5~10のシクロアルキレン基が好ましい。Xが表すシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン基、2-アダマンチリデン基等が挙げられ、炭素数5~10のシクロアルキリデン基が好ましく、炭素数5~8のシクロアルキリデン基がより好ましい。Xが表すアリールアルキレン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6~14のアリール基が挙げられ、アルキレン基としては上述したアルキレンが挙げられる。Xが表すアリールアルキリデン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6~14のアリール基が挙げられ、アルキリデン基としては上述したアルキリデン基を挙げることができる。
【0012】
a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示し、好ましくは0~2、より好ましくは0または1である。
中でも、aおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1~8のアルキレン基であるもの、またはaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基、特にイソプロピリデン基であるものが好適である。
【0013】
上記一般式(II)中、R3またはR4で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R3またはR4で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R3またはR4で示されるアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R3またはR4で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
なお、R3及びR4としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0014】
上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は、より具体的には、下記一般式(II-I)~(II-III)で表される単位を有することが好ましい。
【化4】

[式中、R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を示し、複数のR3~R6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。Yは-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-R7NR8-、-COO-、-S-、-R7COO-R9-O-、または-R7O-R10-O-を示し、複数のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記R7は、単結合、直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、置換または無置換のアリーレン基、またはジアリーレン基を示す。R8は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアラルキル基を示す。R9は、ジアリーレン基を示す。R10は、直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、またはジアリーレン基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基、またはジカルボン酸若しくはジカルボン酸のハロゲン化物由来の2価の基を示す。nはポリオルガノシロキサンの鎖長を示す。n-1、及びpとqはそれぞれポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数を示し、1以上の整数であり、pとqの和はn-2である。]
【0015】
3~R6がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
3~R6としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基である。
一般式(II-I)、(II-II)及び/または(II-III)中のR3~R6がいずれもメチル基であることが好ましい。
【0016】
Yが示す-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-R7NR8-、-R7COO-R9-O-、または-R7O-R10-O-におけるR7が表す直鎖または分岐鎖アルキレン基としては、炭素数1~8、好ましくは炭素数1~5のアルキレン基が挙げられ、環状アルキレン基としては、炭素数5~15、好ましくは炭素数5~10のシクロアルキレン基が挙げられる。
【0017】
7が表すアリール置換アルキレン基としては、芳香環にアルコキシ基、アルキル基のような置換基を有していてもよく、その具体的構造としては、例えば、下記の一般式(i)または(ii)の構造を示すことができる。なお、アリール置換アルキレン基を有する場合、アルキレン基がSiに結合している。
【化5】

(式中cは正の整数を示し、通常1~6の整数である)
【0018】
7、R9及びR10が示すジアリーレン基とは、二つのアリーレン基が直接、または二価の有機基を介して連結された基のことであり、具体的には-Ar1-W-Ar2-で表わされる構造を有する基である。ここで、Ar1及びAr2は、アリーレン基を示し、Wは単結合、または2価の有機基を示す。Wの示す2価の有機基は、例えばイソプロピリデン基、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基である。
7、Ar1及びAr2が表すアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基などの環形成炭素数6~14のアリーレン基が挙げられる。これらアリーレン基は、アルコキシ基、アルキル基等の任意の置換基を有していてもよい。
8が示すアルキル基としては炭素数1~8、好ましくは1~5の直鎖または分岐鎖のものである。アルケニル基としては、炭素数2~8、好ましくは2~5の直鎖または分岐鎖のものが挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
10が示す直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基は、R7と同様である。
【0019】
Yとしては、好ましくは-R7O-であって、R7が、アリール置換アルキレン基であって、特にアルキル基を有するフェノール系化合物の残基であり、アリルフェノール由来の有機残基やオイゲノール由来の有機残基がより好ましい。
なお、式(II-II)中のp及びqについては、p=qであることが好ましい。
また、βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基またはジカルボン酸またはジカルボン酸のハロゲン化物由来の2価の基を示し、例えば、以下の一般式(iii)~(vii)で表される2価の基が挙げられる。
【0020】
【化6】
【0021】
PC-POS共重合体(A)におけるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長nは、好ましくは30以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上、よりさらに好ましくは50以上、特に好ましくは55以上、最も好ましくは60以上である。また、好ましくは500以下、より好ましくは400以下、さらに好ましくは300以下、よりさらに好ましくは200以下、特に好ましくは120以下、最も好ましくは85以下である。該平均鎖長は核磁気共鳴(NMR)測定により算出される。平均鎖長nが30以上500以下の範囲であれば、より優れた耐衝撃性を得ることができる。また、ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長nが55以上500以下の範囲にあることも、より優れた耐衝撃性を得る観点から好ましい。
【0022】
PC-POS共重合体(A)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、よりさらに好ましくは14質量%以上、さらにより好ましくは18質量%以上、特に好ましくは21質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。PC-POS共重合体(A)中のポリオルガノシロキサン量が上記範囲内であれば、より優れた耐衝撃性を得ることができる。
【0023】
PC-POS共重合体(A)の粘度平均分子量(Mv)は、使用される用途や製品により、目的の分子量となるように分子量調節剤(末端停止剤)等を用いることにより適宜調整することができるが、好ましくは9,000以上、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは22,000以下、最も好ましくは20,000以下である。粘度平均分子量が9,000以上であれば、十分な成形品の強度を得ることができる。50,000以下であれば、熱劣化を起こさない温度で射出成形や押出成形を行うことができる。
粘度平均分子量(Mv)は、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定し、下記Schnellの式から算出した値である。
【0024】
【数15】
【0025】
上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)は、界面重合法(ホスゲン法)、ピリジン法、エステル交換法等の公知の製造方法により製造することができる。特に界面重合法の場合に、PC-POS共重合体(A)を含む有機相と未反応物や触媒残渣等を含む水相との分離工程が容易となり、アルカリ洗浄、酸洗浄、純水洗浄による各洗浄工程におけるPC-POS共重合体(A)を含む有機相と水相との分離が容易となり、効率よくPC-POS共重合体(A)が得られる。PC-POS共重合体(A)を製造する方法として、例えば、特開2010-241943号公報等に記載の方法を参照することができる。
【0026】
具体的には、後述する予め製造されたポリカーボネートオリゴマーと、ポリオルガノシロキサンとを、非水溶性有機溶媒(塩化メチレン等)に溶解させ、二価フェノール系化合物(ビスフェノールA等)のアルカリ性化合物水溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)を加え、重合触媒として第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、末端停止剤(p-tert-ブチルフェノール等の1価フェノール)の存在下、界面重縮合反応させることにより製造できる。また、PC-POS共重合体(A)は、ポリオルガノシロキサンと、二価フェノールと、ホスゲン、炭酸エステルまたはクロロホーメートとを共重合させることによっても製造できる。
【0027】
なお、本願のポリカーボネート系樹脂組成物に含まれるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)を、例えばポリカーボネートオリゴマーとポリオルガノシロキサン原料とを有機溶媒中で反応させた後に二価フェノールと反応させる等して製造する場合には、上記有機溶媒とポリカーボネートオリゴマーとの混合溶液1L中におけるポリカーボネートオリゴマーの固形分重量(g/L)が80g/L以上200g/L以下の範囲にあることが好ましい。より好ましくは90g/L以上、さらに好ましくは100g/L以上であり、より好ましくは180g/L以下、さらに好ましくは170g/L以下である。
【0028】
原料となるポリオルガノシロキサンとしては、以下の一般式(1)、(2)及び/または(3)に示すものを用いることができる。
【化7】

式中、R3~R6、Y、β、n-1、p及びqは上記した通りであり、具体例及び好ましいものも同様である。
Zは、水素原子またはハロゲン原子を示し、複数のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
例えば、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとしては、以下の一般式(1-1)~(1-11)の化合物が挙げられる。
【化8】
【0030】
上記一般式(1-1)~(1-11)中、R3~R6、n及びR8は上記の定義の通りであり、好ましいものも同じである。cは正の整数を示し、通常1~6の整数である。
これらの中でも、重合の容易さの観点においては、上記一般式(1-1)で表されるフェノール変性ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、入手の容易さの観点においては、上記一般式(1-2)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、上記一般式(1-3)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが好ましい。
その他、ポリオルガノシロキサン原料として以下の一般式(4)を有するものを用いてもよい。
【化9】

式中、R3及びR4は上述したものと同様である。一般式(4)で示されるポリオルガノシロキサンブロックの平均鎖長は(r×m)となり、(r×m)の範囲は上記nと同一である。
上記(4)をポリオルガノシロキサン原料として用いた場合には、ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は下記一般式(II-IV)で表わされる単位を有することが好ましい。
【化10】

[式中のR3、R4、r及びmは上述した通りである]
【0031】
ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)として、下記一般式(II-V)で表される構造を有していてもよい。
【化11】

[式中、R18~R21はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~13のアルキル基である。R22は炭素数1~6のアルキル基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~14のアリール基である。Q2は炭素数1~10の2価の脂肪族基である。nは平均鎖長を示し、30~70である。]
【0032】
一般式(II-V)中、R18~R21がそれぞれ独立して示す炭素数1~13のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、2-エチルヘキシル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基が挙げられる。これらの中でも、R18~R21としては、好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
22が示す炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基が挙げられる。R22が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R22が示す炭素数1~6のアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。また、R22が示す炭素数6~14のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
上記の中でも、R22は水素原子、又は炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルコキシ基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
2が示す炭素数1~10の2価の脂肪族基としては、炭素数1~10の、直鎖又は分岐鎖の2価の飽和脂肪族基が好ましい。当該飽和脂肪族基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは2~6、さらに好ましくは3~6、よりさらに好ましくは4~6である。また、平均鎖長nは上記の通りである。
【0033】
構成単位(II-V)の好ましい態様としては、下記式(II-VI)で表される構造を挙げることができる。
【化12】

[式中、nは前記と同じである。]
【0034】
上記一般式(II-V)または(II-VI)で表されるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は、下記一般式(5)または(6)で表されるポリオルガノシロキサン原料を用いることにより得ることができる。
【化13】

[式中、R18~R22、Q2、及びnは上記した通りである。]
【化14】

[式中、nは上記した通りである。]
【0035】
前記ポリオルガノシロキサンの製造方法は特に限定されない。例えば、特開平11-217390号公報に記載の方法によれば、シクロトリシロキサンとジシロキサンとを酸性触媒存在下で反応させて、α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンを合成し、次いで、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下に、該α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンにフェノール性化合物(例えば2-アリルフェノール、4-アリルフェノール、オイゲノール、2-プロペニルフェノール等)等を付加反応させることで、粗ポリオルガノシロキサンを得ることができる。また、特許第2662310号公報に記載の方法によれば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチルジシロキサンとを硫酸(酸性触媒)の存在下で反応させ、得られたα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを上記と同様に、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下でフェノール性化合物等を付加反応させることで、粗ポリオルガノシロキサンを得ることができる。なお、α,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、その重合条件によりその鎖長nを適宜調整して用いることもできるし、市販のα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを用いてもよい。
【0036】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、遷移金属系触媒が挙げられるが、中でも反応速度及び選択性の点から白金系触媒が好ましく用いられる。白金系触媒の具体例としては、塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,白金のオレフィン錯体,白金とビニル基含有シロキサンとの錯体,白金担持シリカ,白金担持活性炭等が挙げられる。
【0037】
粗ポリオルガノシロキサンを吸着剤と接触させることにより、粗ポリオルガノシロキサン中に含まれる、上記ヒドロシリル化反応用触媒として使用された遷移金属系触媒に由来する遷移金属を、吸着剤に吸着させて除去することが好ましい。
吸着剤としては、例えば、1000Å以下の平均細孔直径を有するものを用いることができる。平均細孔直径が1000Å以下であれば、粗ポリオルガノシロキサン中の遷移金属を効率的に除去することができる。このような観点から、吸着剤の平均細孔直径は、好ましくは500Å以下、より好ましくは200Å以下、更に好ましくは150Å以下、より更に好ましくは100Å以下である。また同様の観点から、吸着剤は多孔性吸着剤であることが好ましい。
吸着剤としては、上記の平均細孔直径を有するものであれば特に限定されないが、例えば活性白土、酸性白土、活性炭、合成ゼオライト、天然ゼオライト、活性アルミナ、シリカ、シリカ-マグネシア系吸着剤、珪藻土、セルロース等を用いることができ、活性白土、酸性白土、活性炭、合成ゼオライト、天然ゼオライト、活性アルミナ、シリカ及びシリカ-マグネシア系吸着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
粗ポリオルガノシロキサン中に含まれる遷移金属を吸着剤に吸着させた後、吸着剤を任意の分離手段によってポリオルガノシロキサンから分離することができる。ポリオルガノシロキサンから吸着剤を分離する手段としては、例えばフィルタや遠心分離等が挙げられる。フィルタを用いる場合は、メンブランフィルタ、焼結金属フィルタ、ガラス繊維フィルタ等のフィルタを用いることができるが、特にメンブランフィルタを用いることが好ましい。
遷移金属の吸着後に吸着剤をポリオルガノシロキサンから分離する観点から、吸着剤の平均粒子径は、通常1μm以上4mm以下、好ましくは1μm以上100μm以下である。
前記吸着剤を使用する場合には、その使用量は特に限定されない。粗ポリオルガノシロキサン100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下の範囲の量の多孔性吸着剤を使用することができる。
【0039】
なお、処理する粗ポリオルガノシロキサンの分子量が高いために液体状態でない場合は、吸着剤による吸着及び吸着剤の分離を行う際に、ポリオルガノシロキサンが液体状態となるような温度に加熱してもよい。または、塩化メチレンやヘキサン等の溶剤に溶かして行ってもよい。
【0040】
所望の分子量分布のポリオルガノシロキサンは、例えば、複数のポリオルガノシロキサンを配合することにより分子量分布を調節して得られる。配合は、複数のα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを配合したあと、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下でフェノール性化合物等を付加反応させることで所望の分子量分布となる粗ポリオルガノシロキサンを得ることもできる。また、複数の粗ポリオルガノシロキサンを配合したのち、ヒドロシリル化反応触媒を除去させるなどの精製を行ってもよい。精製後の複数のポリオルガノシロキサンを配合してもよい。また、ポリオルガノシロキサン製造時の重合条件により適宜調整することもできる。また、既存のポリオルガノシロキサンから各種分離等の手段によって一部のみを分取する事で得ることも出来る。
【0041】
ポリカーボネートオリゴマーは、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の有機溶剤中で、二価フェノールとホスゲンやトリホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することができる。なお、エステル交換法を用いてポリカーボネートオリゴマーを製造する際には、二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することもできる。
二価フェノールとしては、下記一般式(viii)で表される二価フェノールを用いることが好ましい。
【化15】

式中、R1、R2、a、b及びXは上述した通りである。
【0042】
上記一般式(viii)で表される二価フェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系二価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。二価フェノールとしてビスフェノールAを用いた場合、上記一般式(i)において、Xがイソプロピリデン基であり、且つa=b=0のPC-POS共重合体となる。
【0043】
ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ジヒドロキシアリールエーテル類、ジヒドロキシジアリールスルフィド類、ジヒドロキシジアリールスルホキシド類、ジヒドロキシジアリールスルホン類、ジヒドロキシジフェニル類、ジヒドロキシジアリールフルオレン類、ジヒドロキシジアリールアダマンタン類等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類としては、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0045】
ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類としては、例えば1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン等が挙げられる。ジヒドロキシアリールエーテル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0046】
ジヒドロキシジアリールスルフィド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホキシド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホン類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0047】
ジヒドロキシジフェニル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールフルオレン類としては、例えば9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールアダマンタン類としては、例えば1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0048】
上記以外の二価フェノールとしては、例えば4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-9-アントロン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-2,3-ジオキサペンタン等が挙げられる。
【0049】
得られるPC-POS共重合体の分子量を調整するために、末端停止剤(分子量調節剤)を使用することができる。末端停止剤としては、例えば、フェノール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、p-ノニルフェノール、m-ペンタデシルフェノール及びp-tert-アミルフェノール等の一価フェノールを挙げることができる。これら一価フェノールは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記界面重縮合反応後、適宜静置して水相と有機溶媒相とに分離し[分離工程]、有機溶媒相を洗浄(好ましくは塩基性水溶液、酸性水溶液、水の順に洗浄)し[洗浄工程]、得られた有機相を濃縮[濃縮工程]、及び乾燥する[乾燥工程]ことによって、PC-POS共重合体(A)を得ることができる。
【0051】
本発明の第一の実施形態におけるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、式(F1a)を満たすことを要する:
【数16】

[式中、wM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す]。
【0052】
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量は、耐衝撃性の観点から、15質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0053】
また、上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は、下記式(F1a’)を満たすことがさらに望ましい。
【数17】

[式中、wM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す]
【0054】
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量は、耐衝撃性の観点から、好ましくは13質量%以上、より好ましくは18質量%以上、さらに好ましくは22質量%以上、特に好ましくは27質量%以上である。
【0055】
また、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(wA)及び、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(wM1)は、下記式(F1b)を満たすことが好ましい。
【数18】
【0056】
式中、wM1は上記した通りであり、wAは、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す。wM1/wA×100の値は、より好ましくは115以上、さらに好ましくは130以上、よりさらに好ましくは145以上、特に好ましくは160以上である。
wM1/wA×100の値が上記範囲内であれば、より高い分子量を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)が多く偏在していることとなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体全体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量に対して、効率良く耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0057】
さらに、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が高いものほど、前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量が高くなっていることが好ましい。具体的には、下記式(F2)及び/または(F3)を満たすことが好ましい。
【0058】
【数19】

[式中、wM1及びwM2は上記した通りである。]
【数20】

[式中、wM2は上記した通りであり、wM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(質量%)を示す。]
【0059】
上記式(F2)は、分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(wM1)が、分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占めるもの(wM2)よりも大きいことを意味する。式(F3)は、分子量16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量(wM2)が、分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占めるもの(wM3)よりも大きいことを意味する。
より高い分子量を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)がより多く偏在していることとなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体全体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量に対して、より効率良く耐衝撃性を向上させることが出来るからである。
【0060】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長は、より高い耐衝撃性を得る観点から、以下の式(F4a)を満たすことが好ましい。
【0061】
【数21】

[式中、nM1は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
上記nM1は好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上である。
【0062】
また、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長(nA)及び、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に占める前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長(nM1)は、下記式(F4b)を満たすことが好ましい。
【数22】
【0063】
式中、nM1/nA×100の値は好ましくは100超であり、より好ましくは105以上、さらに好ましくは110以上、よりさらに好ましくは115以上、特に好ましくは120以上である。
nM1/nA×100の値が上記範囲内であれば、より高い分子量を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に、より鎖長の長い前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)が多く偏在していることとなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体全体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長に対して、効率良く耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0064】
さらに、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が高いものほど、前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が長くなっていることが好ましい。
具体的には、下記式(F5)及び/または式(F6)を満たすことが好ましい。
【数23】

[式中、nM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
【数24】

[式中、nM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長を示す。]
【0065】
式(F5)によれば、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中におけるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長は、分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長より短いことが好ましい。
式(F6)によれば、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中におけるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長は、分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長より短いことが好ましい。
すなわち、より高い分子量を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中には、より鎖長の長い前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)が多く偏在していることとなる。そのため、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体全体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長に対して、より効率良く耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0066】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体が下記式(F7a)を満たすことが好ましい。
【数25】
【0067】
式中、iPOSは、前記ポリカーボネートブロック(A-1)及び前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の連結基の平均含有量(モル)を示す。また、iPCは、前記ポリカーボネートブロック(A-1)の末端基の平均含有量(モル)を示す。
【0068】
また、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率であるiA(iPOS/iPC)及び、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が56,000以上200,000以下であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率であるiM1(iPOS/iPC)は、下記式(F7b)を満たすことが好ましい。
【数26】
【0069】
ここで、iM1/iA×100の値は好ましくは100超であり、より好ましくは130以上、さらに好ましくは150以上、よりさらに好ましくは200以上、特に好ましくは250以上である。
iM1/iA×100の値が上記範囲内であれば、より高い分子量を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に、前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)からなる分子鎖が多く偏在していることとなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体全体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)からなる分子鎖の平均本数に対して、効率良く耐衝撃性を向上させることが出来る。
【0070】
さらに、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が高いものほど、前記iPOS/iPCの値が高くなっていることが好ましい。
【0071】
具体的には、下記式(F8)及び/または式(F9)を満たすことが好ましい。
【数27】

[式中、iM1は上記した通りであり、iM2は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が16,000以上56,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
【数28】

[式中、iM2は上記した通りであり、iM3は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、ポリカーボネートを換算基準とした分子量4,500以上16,000未満であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体におけるiPCに対するiPOSの比率(iPOS/iPC)を示す。]
【0072】
ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体をゲル浸透クロマトグラフ法により分離することで得られるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体のうち、より高い分子量を有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体中に前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)からなる分子鎖がより多く偏在していることとなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体全体における前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)からなる分子鎖の平均本数に対して、より効率良く耐衝撃性を向上させることが出来るからである。
【0073】
<ポリカーボネート系樹脂組成物>
本発明の第二の実施形態であるポリカーボネート系樹脂組成物は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、スチレン系樹脂(C)を配合してなり、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)、並びに前記スチレン系樹脂(C)の合計量100質量%に占める前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の割合が50質量%以上99質量%以下である。
【化16】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-またはCO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【0074】
上記ポリカーボネート系樹脂組成物において、上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の合計量に占めるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の含有量は、耐衝撃性等の所望の性質を有する樹脂組成物を得る観点から、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、通常99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは17質量%以下、最も好ましくは13質量%以下である。
【0075】
上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の合計量に占める芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の含有量は、得られる樹脂組成物の耐衝撃性等所望の性質を有する樹脂組成物を得る観点から、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、通常99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。
【0076】
なお、本実施形態の1つの側面においては、上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)と上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の合計量は、100質量%である。
本実施形態においては、得られる樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)と、上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)との質量比率(A)/(B)が、通常0.1/99.9~99.9/0.1,好ましくは1/99~99/1,より好ましくは2/98~50/50,さらに好ましくは5/95~20/80である。
【0077】
上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)からなるポリカーボネート系樹脂中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上、さらにより好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは4質量%以下である。ポリカーボネート系樹脂中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が上記範囲にあれば、優れた耐衝撃特性を得ることができる。
【0078】
上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)からなるポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、使用される用途や製品により、目的の分子量となるように分子量調節剤(末端停止剤)等を用いることにより適宜調整ことができる。上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)からなるポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは9,000以上、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは22,000以下である。粘度平均分子量が9,000以上であれば、十分な成形品の強度を得ることができる。50,000以下であれば、熱劣化を起こさない温度で射出成形や押出成形を行うことができる。
なお、粘度平均分子量(Mv)は、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定し、下記Schnellの式から算出した値である。
【0079】
【数29】
【0080】
<(B)芳香族ポリカーボネート系樹脂>
上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は、主鎖が下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する。上記ポリカーボネート系樹脂としては、特に制限はなく種々の公知のポリカーボネート系樹脂を使用できる。
【化17】

[式中、R30及びR31は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’は単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。d及びeは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【0081】
30及びR31の具体例としては、前記R1及びR2と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。R30及びR31としては、より好ましくは、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基である。X’の具体例としては、前記Xと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。d及びeは、それぞれ独立に、好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。
【0082】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)としては、具体的には、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下、二価フェノール系化合物及びホスゲンと反応させた後、第三級アミンもしくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加して重合させる界面重合法や、二価フェノール系化合物をピリジンまたはピリジンと不活性溶媒の混合溶液に溶解し、ホスゲンを導入し直接製造するピリジン法等従来のポリカーボネートの製造法により得られるものを使用できる。
上記の反応に際し、必要に応じて、分子量調節剤(末端停止剤)、分岐化剤等が使用される。
なお、上記二価フェノール系化合物としては、下記一般式(III’)で表されるものが挙げられる。
【化18】

[式中、R30、R31、X’、d及びeは前記定義の通りであり、好ましいものも同じである。]
【0083】
該二価フェノール系化合物の具体例としては、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の製造方法で上述したものを挙げることができ、好ましいものも同じである。中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系二価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)と異なり、式(II)で表されるようなポリオルガノシロキサンブロックを有さない構造であってもよい。例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)はホモポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0084】
<スチレン系樹脂(C)>
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物に用いられるスチレン形樹脂(C)は、アクリロニトリル及びスチレンに由来する構成単位を有することが好ましく、ブタジエン、アクリロニトリル及びスチレンに由来する構成単位を有することがより好ましく、非晶質スチレン系樹脂及び結晶性スチレン系樹脂を用いることができる。本発明においては、スチレン系樹脂(C)として、スチレン系樹脂を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ポリカーボネート系樹脂組成物中のスチレン系樹脂(C)の配合量は、ポリカーボネート系樹脂組成物の成形加工性及び流動性を改善する観点から、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)及び芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)、並びに前記スチレン系樹脂(C)の合計量100質量%中、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは3質量%以上45質量%以下、更に好ましくは15質量%以上40質量%以下、特に好ましくは20質量%以上35質量%以下である。
【0085】
非晶質スチレン系樹脂としては、スチレン、α-メチルスチレン等のモノビニル系芳香族単量体20質量%以上100質量%以下、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体0質量%以上60質量%以下、及びこれらと共重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸メチル等の他のビニル系単量体0質量%以上50質量%以下からなる単量体、又は単量体混合物を重合して得られる結晶構造を有さない重合体が挙げられる。
これらの重合体としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)等がある。
【0086】
また、非晶質スチレン系樹脂としてはゴム状重合体で強化されたゴム変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチレン系樹脂としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体であることが好ましく、例えば、ポリブタジエン等のゴムにスチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとが重合したアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合したメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)等があり、ゴム変性スチレン系樹脂は、2種以上を併用することができると共に、前記のゴム未変性である非晶質スチレン系樹脂との混合物としても使用できる。
【0087】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量は、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下である。ゴムの割合が2質量%以上であれば、耐衝撃性が充分であり、又、50質量%以下であれば、熱安定性の低下、溶融流動性の低下、ゲルの発生、着色等の問題が生じない。
上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレート及び/又はメタクリレートを含有するゴム質重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンゴム(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン-アクリルゴム、イソプレンゴム、イソプレン-スチレンゴム、イソプレン-アクリルゴム、エチレン-プロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましいものは、ポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジエンは、1,4-シス結合含有量の低いポリブタジエン(例えば、1,2-ビニル結合を1モル%以上30モル%以下、1,4-シス結合を30モル%以上42モル%以下含有するもの)、1,4-シス結合含有量の高いポリブタジエン(例えば、1,2-ビニル結合を20モル%以下、1,4-シス結合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0088】
また、結晶性スチレン系樹脂としては、シンジオタクチック構造、アイソタクチック構造を有するスチレン系(共)重合体が挙げられるが、本発明では流動性をより改善する目的から、非晶質スチレン系樹脂を用いることが好ましい。さらに非晶質スチレン系樹脂の中でも、200℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.5g/10分以上100g/10分以下、より好ましくは2g/10分以上80g/10分以下、さらに好ましくは2g/10分以上50g/10分以下のものが用いられる。メルトフローレート(MFR)が5g/10分以上であれば十分な流動性となり、100g/10分以下であれば、ポリカーボネート系樹脂組成物の耐衝撃性が良好になる。
【0089】
さらに非晶質スチレン系樹脂の中でも、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル-アクリル酸メチル-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-(エチレン/プロピレン/ジエン共重合体)-スチレン共重合体(AES樹脂)が好ましく、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、及びメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)がより好ましく、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)及びアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)がよりさらに好ましい。
【0090】
<その他の成分>
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含ませることができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、補強材、充填剤、耐衝撃性改良用のエラストマー、染料、顔料、帯電防止剤、ポリカーボネート以外の他樹脂等を挙げることができる。
【0091】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、前記の各成分を上記割合で、更に必要に応じて用いられる各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。
本発明の一態様において、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは95~100質量%である。
本発明の他の態様において、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び上記その他成分の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%である。
【0092】
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常、240℃以上320℃以下の範囲で適宜選択される。この溶融混練としては、押出機、特に、ベント式の押出機の使用が好ましい。
【0093】
[成形品]
上記の溶融混練した本発明のポリカーボネート系樹脂組成物、または得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等により各種成形体を製造することができる。特に、溶融混練により得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形体の製造に好適に用いることができる。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物からなる成型品は、例えば、テレビ、ラジオ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、ディスプレイ、コンピュータ、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ、通信基地局、バッテリー等の電気・電子機器用部品の筐体等、並びに自動車及び建材の部品として好適に用いることができる。
【実施例
【0094】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。なお、各例における特性値、評価結果は、以下の要領に従って求めた。
【0095】
(1)ポリジメチルシロキサン鎖長および含有率
NMR測定によって、ポリジメチルシロキサンのメチル基の積分値比により算出した。なお、本明細書においては、ポリジメチルシロキサンをPDMSと略記することがある。
<ポリジメチルシロキサンの鎖長の定量方法>
1H-NMR測定条件
NMR装置:(株)JEOL RESONANCE製 ECA500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
積算回数:256回
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.50~2.75付近に観測されるアリルフェノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
オイゲノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.40~2.70付近に観測されるオイゲノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
【0096】
<ポリジメチルシロキサン含有率の定量方法>
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンを共重合したPTBP末端ポリカーボネート中のポリジメチルシロキサン共重合量の定量方法
NMR装置:(株)JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
積算回数:256回
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
A:δ1.5~1.9付近に観測されるBPA部のメチル基の積分値
B:δ-0.02~0.3付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
C:δ1.2~1.4付近に観測されるp-tert-ブチルフェニル部のブチル基の積分値
a=A/6
b=B/6
c=C/9
T=a+b+c
f=a/T×100
g=b/T×100
h=c/T×100
TW=f×254+g×74.1+h×149
PDMS(wt%)=g×74.1/TW×100
【0097】
(2)粘度平均分子量
粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式(Schnell式)にて算出した。
【数30】
【0098】
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート共重合体のGPC測定は以下の条件で行った。
試験機器:TOSOH HLC 8220
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム:TOSOH TSK-GEL MULTIPORE HXL-M×2、
Shodex KR801
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
検出器:日本分光(株)製 UV-2075 Plus(254nm)
注入濃度:10mg/mL
注入量:0.1mL
フラクションコレクター:ADVANTEC製 CHF122SC
検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いた。
【0099】
上記条件の下、ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート共重合体をリテンションタイムごとに5分画し、分画物を得た。以上の操作を100回繰り返した。
得られた分画物について、上記1H-NMR測定により、各分画物ごとに、前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量、平均鎖長、前記ポリカーボネートブロック(A-1)及び前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の連結基の平均含有量及び前記ポリカーボネートブロック(A-1)の末端基の平均含有量を求めた。
なお、上記GPC測定において、ポリカーボネートを換算基準とした分子量が360以上1,300以下の領域では、環状オルガノシロキサンを検知してしまうため、前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均含有量および平均鎖長が見かけ上、高く見える。
【0100】
<ポリカーボネートオリゴマーの製造>
5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、ビスフェノールA(BPA)(後から溶解する)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加えた。これにBPA濃度が13.5質量%となるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr、塩化メチレンを15L/hr、及びホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液を、後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入し、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液を2.8L/hr、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を0.07L/hr、水を17L/hr、1質量%のトリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度341g/L、クロロホーメート基濃度0.71mol/Lであった。
【0101】
製造例1
<PC-POS共重合体(A-1a)>
以下に記載する(i)~(xiv)の値は、表1に示すとおりである。
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記の通り製造したポリカーボネートオリゴマー溶液(PCO)(i)L、塩化メチレン(MC)(ii)Lおよび、平均鎖長n=(iii)のアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(iv)gを塩化メチレン(MC)(v)Lに溶解したもの、ならびに、トリエチルアミン(TEA)(vi)mLを仕込み、攪拌下でここに6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液(NaOHaq)(vii)gを加え、20分間ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った。
この重合液に、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP(viii)gを塩化メチレン(MC)(ix)Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH(x)gと亜二チオン酸ナトリウム(Na224)(xi)gとを水(xii)Lに溶解した水溶液にBPA(xiii)gを溶解させたもの)を添加し40分間重合反応を実施した。
希釈のため塩化メチレン(MC)(xiv)Lを加え10分間攪拌した後、PC-POSを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
こうして得られたPC-POSの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して、15容積%の0.03mol/L NaOH水溶液、0.2mol/L塩酸で順次洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥し、PC-POS共重合体(A1)~(A17)を得た。得られたフレークのPDMS含有率、未反応PDMS量、粘度平均分子量及びGPCによる各種測定を行った。iM1の値は3.2、iM2の値は2.3、iM3の値は0.7、iM1/iA×100の値は287であった。その他の結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
製造例2
<PC-POS共重合体(A-1b)>
前記(i)~(xiv)の値を上記表1に記載の通りに変更した以外は、製造例1と同様の方法で製造と測定を行った。
【0104】
<PC-POS共重合体(A-2)>
PC-POS共重合体A-2:「FG1700」[PC-POS共重合体、ポリオルガノシロキサンブロック鎖長88、ポリオルガノシロキサン含有量6質量%、粘度平均分子量Mv17,700](表1参照)
<芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)>
芳香族ポリカーボネート系樹脂B-1:「FN2500」[粘度平均分子量Mv23,500]
芳香族ポリカーボネート系樹脂B-2:「FN2200」[粘度平均分子量Mv21,300]
芳香族ポリカーボネート系樹脂B-3:「FN1900」[粘度平均分子量Mv19,300]
芳香族ポリカーボネート系樹脂B-4:「FN1700」[粘度平均分子量Mv17,700]
【0105】
<スチレン系樹脂(C)>
「クラスチックSXH-330」[アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン三元共重合体(ABS),KUMHOPETROCHEMICAL社製、ブタジエンに由来する構成単位の含有量:60質量%]
「サンタックAT-05」[アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン3元共重合体(ABS),日本エイアンドエル(株)製,ブタジエンに由来する構成単位の含有量:14質量%]
「キビサンPN-117C」[アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS),奇美実業社製,アクリロニトリルに由来する構成単位の含有量:24質量%]
【0106】
<その他の成分>
酸化防止剤:「IRGAFOS168(商品名)」[トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、BASFジャパン株式会社製]
酸化防止剤:「IRGANOX1076(商品名)」[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ピロピオン酸オクタデシル,BASFジャパン株式会社製]
【0107】
実施例a~b、実施例1~27、比較例1~22
製造例1及び2で得られたPC-POS共重合体A1およびA2、並びにその他の各成分を表2~表6に示す配合割合で混合し、ベント式二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM35B)に供給し、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/hr、樹脂温度278~300℃にて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。PC系樹脂組成物の組成と評価項目を表2~表6に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
[評価試験]
<流動性評価>(MFR)
上記ペレットを用いて、JIS K 7210-1:2014に準拠し、300℃、1.2kgの荷重下にて、直径2.095±0.005mm、長さ8.000±0.025mmのダイから流出する溶融樹脂量(g/10分)を測定した。
<Q値(流れ値)〔単位;10-2mL/秒〕>
上記ペレットを用いて、JIS K 7210-1:2014:付属書JAに準拠し、高架式フローテスターを用いて、280℃、160kgfの圧力下にて、直径1.00mm、長さ10.00mmのノズルより流出する溶融樹脂量(mL/sec)を測定した。Q値は単位時間当たりの流出量を表しており、数値が高いほど、流動性が良いことを示す。
【0114】
<耐衝撃性>
上記得られたペレットを120℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形してIZOD試験片(長さ63.5mm、幅12.7mm,厚さ3.2mm)を作成した。この試験片に後加工でノッチ(r=0.25mm±0.05mm)を付与した試験片を用いて、ASTM規格D-256に準拠して、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、0℃及び23℃におけるノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
【0115】
<荷重たわみ温度(単位;℃)>
上記得られたペレットを120℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形して試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mm)を得た。この試験片を用い、ASTM規格D-648に準拠して、昇温速度120℃/h、支点間距離100mm、1.8MPaの荷重を掛けて、エッジワイズによる試験片のたわみが0.26mmに達した時の温度を記録した。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明で得られるポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性に優れるため、電気・電子機器用部品の筐体等、自動車及び建材の部品等として好適に用いることができる。
図1
図2
図3