(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】キャリア芯材
(51)【国際特許分類】
G03G 9/107 20060101AFI20220825BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
G03G9/107 321
G03G9/113
G03G9/113 351
(21)【出願番号】P 2016144056
(22)【出願日】2016-07-22
【審査請求日】2019-05-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224802
【氏名又は名称】DOWA IPクリエイション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌井 勇人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信也
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】小濱 健太
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5822415(JP,B1)
【文献】特開2016-33655(JP,A)
【文献】特開2014-197134(JP,A)
【文献】特開2009-98348(JP,A)
【文献】特開昭62-121463(JP,A)
【文献】特開2014-208893(JP,A)
【文献】特開2008-244400(JP,A)
【文献】特開2011-8010(JP,A)
【文献】特開2012-53287(JP,A)
【文献】特開2012-208446(JP,A)
【文献】特開2015-93817(JP,A)
【文献】特開2015-200872(JP,A)
【文献】特開2001-271005(JP,A)
【文献】特開平10-55909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/113
C01G 49/00-49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、
前記フェライト粒子がMnフェライト又はMnMgフェライトであり、
前記フェライト粒子が、
Srを0.58wt%以上含有し、且つ、Sr
及びCaを総量で
0.58wt%以上3.0wt%以下含有し、
前記フェライト粒子における、Al、Cr、Mo、Si、Tiの各元素の総含有量が0.08wt%以下で
、Siを0.022wt%以下含有し、
前記フェライト粒子の粉体pHが11.0以上であることを特徴とするキャリア芯材。
【請求項2】
前記フェライト粒子が、Feを45wt%以上65wt%以下、Mnを15wt%以上30wt%以下、Mgを5wt%以下含有する請求項
1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
前記フェライト粒子の平均長さRSmが7μm以上8μm以下である請求項
1又は2に記載のキャリア芯材。
【請求項4】
前記フェライト粒子の最大高さRzが1.5μm以上3.0μm以下である請求項1~
3のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項5】
磁化σ
1kが50Am
2/kg以上70Am
2/kg以下である請求項1~
4のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項6】
前記フェライト粒子の表面にカップリング剤が付着している1~
5のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項7】
前記カップリング剤が、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルキル基の少なくとも1種を有するシランカップリング剤である請求項
6記載のキャリア芯材。
【請求項8】
請求項
6又は
7記載のキャリア芯材の表面に樹脂被覆層を有することを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項9】
請求項
8記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真用現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア芯材などに関し、より詳細にはフェライト粒子から構成されるキャリア芯材などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンター、複写機などの画像形成装置では、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像化し、この可視像を用紙等に転写した後、加熱・加圧して定着させている。高画質化やカラー化の観点から、現像剤としては、キャリアとトナーとを含むいわゆる二成分現像剤が広く使用されている。
【0003】
二成分現像剤を用いた現像方式では、キャリアとトナーとを現像装置内で撹拌混合し、摩擦によってトナーを所定量まで帯電させる。そして、回転する現像ローラに現像剤を供給し、現像ローラ上で磁気ブラシを形成させて、磁気ブラシを介して感光体へトナーを電気的に移動させて感光体上の静電潜像を可視像化する。トナー移動後のキャリアは現像ローラ上に残留し、現像装置内で再びトナーと混合される。このため、キャリアの特性として、磁気ブラシを形成する磁気特性と、所望の電荷をトナーに付与する帯電特性および繰り返し使用における耐久性が要求される。
【0004】
このようなキャリアとして、各種フェライト粒子をキャリア芯材とし、その表面を樹脂で被覆したものが一般に用いられている。ところが、キャリア同士や現像装置との衝突や摩擦などによってキャリア芯材の表面から樹脂被覆層が剥離することがあった。キャリア芯材から樹脂被覆層が剥離すると、帯電特性や電気特性が変化し画像品質が低下する。
【0005】
そこで、キャリア芯材と樹脂被覆層との接着力を高めるため種々の技術が提案されている。例えば特許文献1では、キャリア芯材と樹脂被覆層との間にシランカップリング剤を含有する層を介在させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記提案技術によればキャリア芯材と樹脂被覆層との接着力は向上すると考えられるが、カップリング剤をキャリア芯材の表面全体に均一に付着させることは必ずしも容易ではない。カップリング剤のキャリア芯材表面への付着が均一でないと、カップリング剤の付着量の少ない部分はキャリア芯材と樹脂被覆層との接着力が弱く、樹脂被覆層が剥離する虞がある。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カップリング剤を表面全体に均一に付着させることが可能なフェライト粒子から構成されるキャリア芯材を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質の画像を形成することができる電子写真現像剤用キャリア及び電子写真現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明に係るキャリア芯材は、フェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、前記フェライト粒子の粉体pHが9以上であることを特徴とする。なお、本明細書における「粉体pH」は、後述の実施例で説明する測定方法で測定した値をいう。
【0011】
ここで、前記フェライト粒子はMnフェライト又はMnMgフェライトであるのが好ましい。
【0012】
また、前記フェライト粒子が、Feを45wt%以上65wt%以下、Mnを15wt%以上30wt%以下、Mgを5wt%以下含有するのが好ましい。
【0013】
また、前記フェライト粒子が、Sr及び/又はCaを総量で0.1wt%以上3.0wt%以下含有するのが好ましい。
【0014】
また、前記構成において、Al、Cr、Mo、Si、Tiの各元素の総含有量は0.15wt%以下であるのが好ましい。
【0015】
前記フェライト粒子の平均長さRSmは7μm以上8μm以下であるのが好ましい。
【0016】
前記フェライト粒子の最大高さRzは1.5μm以上3.0μm以下であるのが好ましい。
【0017】
磁化σ1kは50Am2/kg以上70Am2/kg以下であるのが好ましい。
【0018】
また前記構成において、前記フェライト粒子の表面にカップリング剤が付着しているのが好ましい。
【0019】
前記カップリング剤は、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルキル基の少なくとも1種を有するシランカップリング剤であるのが好ましい。
【0020】
また本発明によれば、前記フェライト粒子の表面にカップリング剤が付着しているキャリア芯材の表面に樹脂被覆層を有することを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0021】
さらに本発明によれば、前記の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のキャリア芯材では、フェライト粒子表面全体にカップリング剤を均一に付着させることが可能となる。これにより、カップリング剤を付着させたフェライト粒子の表面に、さらに樹脂被覆層を形成した電子写真現像用キャリアは、長期間の使用によっても樹脂被覆層の剥離が抑制される。また、高速の画像形成装置に用いた場合であっても樹脂被覆層の剥離が抑制される。
【0023】
また本発明の電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤によれば、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者等は、キャリア芯材を構成するフェライト粒子の表面全体にカップリング剤を均一に付着させることができないか鋭意検討を重ねたところ、フェライト粒子の粉体pHを所定値以上とすればよいとの知見を得て本発明を成すに至った。
【0025】
カップリング剤は、分子中に、無機質材料と化学結合する反応基と、有機質材料と化学結合する反応基とを有し、キャリア芯材と被覆樹脂とを強く結びつける役割を果たす。例えば、シランカップリング剤は、有機質材料と結合する有機官能基と、「-OR」などの加水分解性基とを有する。フェライト粒子の表面をシランカップリング剤の水溶液で処理すると、アルコキシル基などの加水分解性基が加水分解してシラノール基(Si-OH)とアルコールとが生じる。シラノール基はフェライト粒子の表面にある水酸基と水素結合を介して表面に移行し、その後脱水縮合反応を経てフェライト粒子の表面と強固な共有結合を生成する。また、並行して、シラノール基同士が縮合してシロキサン結合(Si-O-Si)を形成しシランオリゴマーを形成する。
【0026】
したがって、フェライト粒子が有する水酸基が多いほど、加水分解によって生成したカップリング剤のシラノール基がフェライト粒子表面の水酸基と水素結合して、カップリング剤はフェライト粒子表面に移行しフェライト粒子表面はカップリング剤によって均一に覆われるようになる。そこで、本発明ではフェライト粒子が有する水酸基量の指標として粉体pHを用いることとし、その値を9以上とした。
【0027】
また、前述の加水分解反応や縮合反応の反応速度は溶液のpHなどに依存し、シランカップリング剤の場合、加水分解の速度はpHが約7のときに最も遅くなり、pHが7より大きくなるにしたがって速くなる。また縮合反応はpHが約4のときに最も遅くなり、pHが4から大きくなるにしたがって速くなる。本発明ではフェライト粒子の粉体pHを9以上としているので、フェライト粒子がカップリング剤溶液で処理される際、処理溶液のpHがフェライト粒子の有する水酸基の影響で高くなり、カップリング剤の加水分解反応及び縮合反応が速やかに進み、フェライト粒子表面はカップリング剤によって確実に均一に覆われるようになる。本発明において、より好ましい粉体pHは10以上である。また、粉体pHの好ましい上限値は12である。
【0028】
フェライト粒子の粉体pHはフェライト粒子から溶出する成分の影響を受けるので、例えばフェライト粒子のCa,Sr,Ba,Raなどのアルカリ土類金属成分の配合量及びフェライト粒子の焼成条件などによって粉体pHを制御することができる。例えば、アルカリ土類金属は水と反応して水酸化物を生成するので、アルカリ土類金属の配合量を多くすることによってフェライト粒子の粉体pHを高めることができる。また、焼成条件を高温、低酸素、長時間とするとフェライト化したアルカリ土類金属元素が還元分解されるので、前記焼成条件とすることによってもフェライト粒子の粉体pHを高めることができる。粉体pHの具体的制御方法について後述のフェライト粒子の製造方法において説明する。
【0029】
本発明におけるフェライト粒子の組成に特に限定はなく、例えば、一般式MXFe3-XO4(但し、MはMg,Mn,Cu,Zn,Niなどの金属,0<X<1)で表される組成の粒子が挙げられる。Sr、Caは含まれているのが好ましい。より具体的には、Feを45wt%以上65wt%以下、Mnを15wt%以上30wt%以下、Mgを5wt%以下含有したフェライト粒子が好ましい。さらには、Sr及び/又はCaを総量で0.1wt%以上3.0wt%以下含有するフェライト粒子が好ましい。Sr及び/又はCaが前記所定量含有されることによって、焼成工程においてSrフェライト及び/又はCaフェライトが一部生成され、マグネトプランバイト型の結晶構造が形成されてフェライト粒子表面の凹凸形状が促進されやすくなる。
【0030】
一方、Al、Cr、Mo、Si、Tiの各元素の総含有量は0.15wt%以下であるのが望ましい。これらの元素が含有されていると、アルカリ土類金属元素と固溶して、例えばSrTiO3やSrSiO3などが生成される結果、アルカリ土類金属の水酸化物が生成されにくくなって粉体pHが上昇しにくくなるからである。
【0031】
フェライト粒子の平均長さRSmは7μm以上8μm以下であるのが好ましい。また、フェライト粒子の最大高さRzは1.5μm以上3.0μm以下であるのが好ましい。フェライト粒子表面にこのような微細で均一な凹凸が形成されていることにより、粒子表面を樹脂で被覆した際に、被覆樹脂を均一に塗布することができ、長期間の使用によっても剥離しにくくなる。また、被覆樹脂の一部が剥離しても凹部に残る被覆樹脂によってトナーへの帯電付与能力の低下が抑制される。さらに、粒子の割れや欠けも抑えられる。
【0032】
本発明のキャリア芯材の、印加磁界1000A/m・103/(4π)での磁化σ1kは50Am2/kg以上70Am2/kg以下であるのが好ましい。前記磁化σ1kが50Am2/kg未満であると、現像ローラの磁力が作用しにくくなり、キャリア飛散などが生じるおそれがある。一方、前記磁化σ1kが70Am2/kgを超えると、電気抵抗の低下が生じるおそれがある。
【0033】
本発明のキャリア芯材の粒径に特に限定はないが、体積平均粒子径で20μm~60μmの範囲が好ましく、粒度分布はシャープであるのが好ましい。
【0034】
次に、本発明のキャリア芯材を構成するフェライト粒子の製造方法について説明する。フェライト粒子の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0035】
まず、Fe成分原料、M成分原料を秤量し、原料混合粉を作製する。なお、MはMg、Mn、Cu、Zn、Ni等の2価の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。また、必要によりSr成分原料、Ca成分成分原料を添加する。Fe成分原料としては、Fe2O3等が好適に使用される。M成分原料としては、MnであればMnCO3、Mn3O4等が使用でき、MgであればMgO、Mg(OH)2、MgCO3が好適に使用できる。また、Sr成分を添加する場合には、SrCO3、Sr(NO3)2などが好適に使用される。Ca成分を添加する場合には、CaO、Ca(OH)2、CaCO3などが好適に使用される。なお、前述のように、アルカリ土類金属元素と固溶するAl、Cr、Mo、Si、Tiの各元素の総含有量は0.7質量%以下に抑えるのが望ましい。
【0036】
次いで、作製した原料混合粉を仮焼成する。仮焼成の温度としては750℃~900℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため、好ましい。一方、900℃以下であれば、仮焼による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0037】
そして、仮焼成した原料を解粒して分散媒中に投入しスラリーを作製する。なお、仮焼成することなく原料混合粉を分散媒中に投入しスラリーを作製してもよい。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記仮焼成原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%~2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%~2質量%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%~90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%~80質量%である。
【0038】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0039】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃~300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm~200μmの球状の造粒物が得られる。なお、得られた造粒物は、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し粒度分布をシャープなものとするのが望ましい。
【0040】
次に、造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して焼成しフェライト粒子を生成させる。焼成条件は高温、低酸素、長時間とするのが望ましい。これによってフェライト化したアルカリ土類金属元素が還元分解されて粉体pHは高くなる。焼成温度としては1200℃以上1250℃以下が好ましい。また前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては200℃/h~500℃/hの範囲が好ましい。また、焼成時の酸素濃度は100ppm~10000ppmの範囲が好ましく、冷却時の酸素濃度は10000ppm~20000ppmの範囲が好ましい。加えて、焼成雰囲気中に湿度10%以上のガスを導入すると、Sr(OH)2が生成しやすくなり、粉体pHを所望の値に調整することができる。焼成時間は6時間~10時間の範囲が好ましい。
【0041】
このようにして得られたフェライト粒子を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。そして、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の粒径としては20μm~60μmの範囲が好ましい。
【0042】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200℃~800℃の範囲が好ましく、250℃~600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間~5時間の範囲が好ましい。
【0043】
次いで、必要に応じて磁選処理を行う。磁選工程では、1000ガウスの磁界中で滞在時間3秒以上かけて、未反応のNa原料成分およびP原料成分を取り除く。4秒以上であれば、フェライト粒子を十分に磁化させ、未反応のNa原料成分およびP原料成分を取り除くことができる。好ましい滞在時間は5秒~20秒の範囲である。
【0044】
次に、作製したフェライト粒子の本体表面をカップリング剤で処理する。処理方法としては、まず、カップリング剤を水又はアルコール水溶液に添加しカップリング剤水溶液を作製する。フェライト粒子を撹拌機に仕込み撹拌し、撹拌されているフェライト粒子に対してカップリング剤水溶液を滴下又はスプレー噴霧する。次いで、撹拌を続けながら昇温してアルコールを揮発させる。その後、撹拌機からフェライト粒子を取り出し、乾燥機によって乾燥する。乾燥後、フェライト粒子によっては凝集するので必要により解粒処理する。
【0045】
本発明で使用するカップリング剤に特に限定はなく、従来公知の物が使用できる。例えば、グリシドキシシラン、メタクリロキシシラン、アミノシラン等のシランカップリング剤やチタン系カップリング剤などを用いることができ、これらの中でもシランカップリング剤が好ましい。
【0046】
グリシドキシシランの例としては、Z-6040、Z-6043(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、KBM403、KBE403(信越化学株式会社製)、A-186、A-187(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が好ましく使用できる。
【0047】
メタクリロキシシランの例としては、Z-6030、Z-6033(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、KBM503、KBE503(信越化学株式会社製)、A-174、Y-9936(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が好ましく使用できる。
【0048】
アミノシランの例としては、Z-6610、Z-6020、Z-6050(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、KBM603、KBE603(信越化学株式会社製)、A-1110、A-1120、Y-9669(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が好ましく使用できる。
【0049】
また、チタン系カップリング剤の例としては、KR-TTS、KR-41B(味の素株式会社製)等が好ましく使用できる。
【0050】
使用するカップリング剤はキャリア芯材の表面を被覆する樹脂の種類などから適宜決定すればよい。被覆樹脂がアクリル樹脂又はアクリル/スチレン混合樹脂である場合、使用するカップリング剤は、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルキル基の少なくとも1種を有するシランカップリング剤が好適に使用される。
【0051】
なお、フェライト粒子表面のカップリング剤の検出は、従来公知の検出方法を用いることができ、例えば核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)などを用いることができる。また、SEM写真及びEDS元素マッピングからフェライト粒子の粒子本体表面のカップリング剤を検出することもできる。
【0052】
またカップリング剤の使用量は、その指標となる炭素含有量でキャリア芯材に対して0.005質量%以上2.0質量%以下であるのが好ましい。なお、炭素含有量の測定方法については後述する。
【0053】
以上のようにして作製したフェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。そして、所望の帯電性等を得るために、キャリア芯材の外周を樹脂で被覆して電子写真現像用キャリアとする。
【0054】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、アクリル/スチレン混合樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。なお、本発明におけるキャリア芯材表面への密着性の点で(メタ)アクリル系樹脂、アクリル/スチレン混合樹脂が特に好ましい。
【0055】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法、乾式コート法等を用いることができる。なお、本発明にかかるキャリア芯材を被覆する場合は、乾式コート法が特に好ましい。
【0056】
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で10μm~200μmの範囲、特に20μm~60μmの範囲が好ましい。
【0057】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%~15質量%の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%~10質量%の範囲である。
【0058】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0059】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm~15μmの範囲が好ましく、7μm~12μmの範囲がより好ましい。
【0060】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0061】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0063】
実施例1
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm,SiO2含有量:0.02wt%)21.5kg、Mn3O4(平均粒径:0.9μm,SiO2含有量:0.01wt%)10.4kg、SrCO3(平均粒径:0.6μm)0.28kgを純水10.0kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを120g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を180g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1200℃まで4.5時間かけて昇温した。その後1200℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後10時間かけて室温まで冷却した。このとき、電気炉内の酸素濃度は焼成時5000ppm、冷却時1200ppmとした。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動ふるいを用いて分級し、次いで、得られた焼成物を大気雰囲気下450℃で1.5時間保持することにより酸化処理(高抵抗化処理)を行い、フェライト粒子を得た。
【0064】
得られたフェライト粒子の表面をカップリング剤で処理し、表面処理が施されたキャリア芯材を作製した。具体的には、フェライト粒子2kgに対し、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン2g(フェライト粒子に対して0.1wt%)と溶媒としてメタノール500g(フェライト粒子に対して25wt%)と水20g(フェライト粒子に対して1.0wt%)を万能撹拌機(ダルトン社製 型式:5DM-L-03-r)を用いて30℃の温度下で1時間混合した。その後、120℃まで昇温し溶媒であるメタノールを揮発させたのち、1時間撹拌を行った。140℃に設定された送風乾燥機(エスペック社製 MODEL:PHH-102)で2時間加熱処理を行い、得られた乾燥物を、目開き75μmの振動篩にて解粒処理を行うことにより、平均粒径34.9μmの表面がカップリング剤で処理されたキャリア芯材を得た。
【0065】
得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0066】
参考例1
Mn原料にMn3O4(SiO2含有量:0.5wt%)を用いた以外は実施例1と同様にして平均粒径34.8μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0067】
参考例2
焼成温度を1250℃で3h保持とした以外は参考例1と同様にして平均粒径34.3μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0068】
参考例3
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm、SiO2含有量:0.02wt%)21.5kg、Mn3O4(平均粒径:0.9μm、SiO2含有量:0.5wt%)7.5kg、MgO(平均粒径:0.8μm)1.0kg、CaCO3(平均粒径:0.6μm)0.17kgを純水10.0kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを120g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を180g添加して混合物とした以外は、参考例1と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0069】
実施例2
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm、SiO2含有量:0.02wt%)21.5kg、Mn3O4(平均粒径:0.9μm、SiO2含有量:0.5wt%)7.5kg、MgO(平均粒径:0.8μm)1.0kg、SrCO3(平均粒径:0.6μm)1.0kgを純水10.0kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを120g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を180g添加して混合物とした以外は、参考例1と同様にして平均粒径36.9μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0070】
比較例1
電気炉内の酸素濃度を12000ppmで一定とし、酸化処理を行わなかった以外は参考例1と同様にして平均粒径34.5μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0071】
比較例2
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm、SiO2含有量:0.02wt%)21.5kg、Mn3O4(平均粒径:0.9μm、SiO2含有量:0.5wt%)7.5kg、MgO(平均粒径:0.8μm)1.0kg、SrCO3(平均粒径:0.6μm)0.25kgを純水10.0kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを120g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を180g添加して混合物とし、1170℃で3時間保持することにより焼成を行った以外は、参考例1と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0072】
比較例3
原料にTiO2を0.09kg添加した以外は参考例1と同様にして平均粒径34.8μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0073】
比較例4
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm、SiO2含有量:0.02wt%)10.78kg、Mn3O4(平均粒径:0.9μm、SiO2含有量:0.5wt%)4.22kg、SrCO3(平均粒径:0.6μm)0.25kgを純水10.0kg中に分散し、焼結助剤としてスノーテックス50(SiO2含有量48wt%)を30g、還元剤としてカーボンブラックを50g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を180g添加して混合物とした以外は、参考例1と同様にして平均粒径36.9μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0074】
比較例5
SrCO3を加えなかった以外は、実施例2と同様にして平均粒径33.6μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0075】
比較例6
SrCO3を加えなかった以外は、比較例4と同様にして平均粒径35.5μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0076】
比較例7
カップリング処理の際、溶媒にアンモニア水を加え、溶媒のpHを11に調整した以外は比較例6と同様にして平均粒径35.5μmのキャリア芯材を得た。得られたフェライト粒子又はキャリア芯材の組成、粉体物性、形状特性、磁気特性、カップリング剤の付着率を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0077】
(組成分析)
(Feの分析)
鉄元素を含むフェライト粒子を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe3+を全てFe2+に還元する。続いて、この溶液中のFe2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe2+)の滴定量を求めた。
(Mgの分析)
フェライト粒子のMg含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るフェライト粒子を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したフェライト粒子のMg含有量は、このICPによる定量分析で得られたMg量である。
(Mnの分析)
フェライト粒子のMn含有量は、JIS G1311-1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本発明に記載したフェライト粒子のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Srの分析)
フェライト粒子のSr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Caの分析)
フェライト粒子のCa含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Alの分析)
フェライト粒子のAl含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Crの分析)
フェライト粒子のCr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Moの分析)
フェライト粒子のMo含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Tiの分析)
フェライト粒子のTi含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Si含有量の分析)
フェライト粒子のSiO2含有量を、JIS M8214-1995記載の二酸化珪素重量法に準拠して求めた。そしてSi含有量は、前記求めたiO2量から下記式を用いて算出した。
Si含有量(質量%)=SiO2量(質量%)×28.09(mol/g)/60.09(mol/g)
【0078】
(粉体pHの測定)
フェライト粒子を1/16インチのビーズを用いて振動ミルにて8時間乾式粉砕する。次に、温度23℃の超純水300mlを入れた三角フラスコに前記粉砕したフェライト粒子10.0gを投入する。そして、振盪機を用いて三角フラスコを5分間撹拌する。撹拌後速やかに上澄みを採取し、pHメーター(東亜DKK社製pHメーターHM-30R)を用いてpHを測定する。
なお、粉砕を行わずにフェライト粒子の粉体pHを測定したが、フェライト粒子表面のみの溶出成分の評価となる為、カップリング剤付着量と明確な相関が得られず、正確な評価に至らなかった。
【0079】
(最大高さRz、平均長さRSm)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK-X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。フェライト粒子を固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせフェライト粒子表面の3次元形状を得た。なお、フェライト粒子表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメーターの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたフェライト粒子表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100~35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメーターであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
フェライト粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルターを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
また、解析に用いるキャリア芯材の平均粒子径については32~34μmに限定した。このように測定対象となるキャリア芯材の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。
【0080】
最大高さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。最大高さRzの算出には、各パラメーターの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0081】
平均長さRSmは、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さを平均したものである。平均長さRSmの算出には、各パラメーターの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0082】
以上説明した最大高さRz、平均長さRSmの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0083】
(体積平均粒子径(平均粒径),D50)
キャリア芯材の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。
【0084】
(見掛密度,AD)
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0085】
(流動度,FR)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0086】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM-P7」)を用いて、外部磁場を0~79.58×104A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化、残留磁化、保磁力(Oe:A/m×103/(4π))及び79.58×103A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1k(Am2/kg)をそれぞれ測定した。
【0087】
(カップリング剤の付着率)
キャリア芯材の炭素量を赤外線吸収法で測定した。具体的には、キャリア芯材1gを酸素気流中で燃焼させて、キャリア芯材に含有された炭素を二酸化炭素とし、赤外線吸収検出器(LECOジャパン株式会社製、炭素硫黄分析装置「CS-200型」)で二酸化炭素の赤外線吸収量を測定して炭素量を算出した。
一方、フェライト粒子に添加したカップリング剤の炭素量を下記式から算出した。
カップリング剤の炭素量=(添加量)×(カップリング剤の炭素個数)×12/分子量
なお、カップリング剤の炭素個数は加水分解後の炭素個数である。
そして、フェライト粒子に付着したカップリング剤の割合は下記式から算出した。
(キャリア芯材の炭素量)/(添加したカップリング剤の炭素量)×100(%)
なお、フェライト粒子の炭素量はカップリング処理後のキャリア芯材の炭素量と比較して極めて少なく無視できるレベルであった。
【0088】
【0089】
【0090】
表2から明らかなように、実施例1のキャリア芯材は、粉体pHが11.4のMnフェライト粒子から構成され、当該Mnフェライト粒子の表面をカップリング剤で処理すると、カップリング剤の付着率は96%とMnフェライト粒子の表面全体にカップリング剤が均一に付着していた。
【0091】
Mn成分原料としてSiO2含有量が0.5wt%と実施例1のものよりも多いものを用いた参考例1のフェライト粒子では、粉体pHが10.5と実施例1のフェライト粒子よりも若干低くなったがカップリング剤の付着率は93%と高かった。また、参考例1よりも焼成温度を高くし焼成時間を短くした参考例2のフェライト粒子では、粉体pHが9.5と参考例1のフェライト粒子よりもさらに低くなったがカップリング剤の付着率は81%と実使用上問題のないレベルであった。
【0092】
参考例3のキャリア芯材は、Ca成分が添加されたMnMgフェライト粒子から構成され、粉体pHが9.5で、このMnMgフェライト粒子の表面をカップリング剤で処理すると、カップリング剤の付着率は82%と実使用上問題のないレベルであった。
【0093】
実施例2のキャリア芯材は、Sr成分が添加されたMnMgフェライト粒子から構成され、粉体pHが11.0と高く、このMnMgフェライト粒子の表面をカップリング剤で処理すると、カップリング剤の付着率は96%とMnMgフェライト粒子の表面全体にカップリング剤が均一に付着していた。一方、Sr成分を添加しなかった比較例5のキャリア芯材では、粉体pHが7.0と低くなりカップリング剤の付着率は30%と実使用上問題が生じるレベルであった。
【0094】
これに対して、参考例1よりも焼成時及び冷却時の酸素濃度を12000ppmと高くし酸化処理を行わなかった比較例1のフェライト粒子では、粉体pHが8.6と低くなりカップリング剤の付着率は49%と実使用上問題が生じるレベルであった。
【0095】
参考例1よりも焼成温度を低く焼成時間を短くした比較例2のフェライト粒子では、粉体pHが8.5と低くなりカップリング剤の付着率は58%と実使用上問題が生じるレベルであった。
【0096】
成分原料としてTiを添加した比較例3のフェライト粒子では、粉体pHが8.1と低くなりカップリング剤の付着率は22%と実使用上問題が生じるレベルであった。
【0097】
焼結助剤としてSiを含有するものを用いた比較例4のフェライト粒子では、粉体pHが7.6と低くなりカップリング剤の付着率は24%と実使用上問題が生じるレベルであった。また、焼結助剤としてSiを含有するものを用い、且つ、Sr成分原料を用いなかった比較例6のフェライト粒子では、粉体pHが7.1とさらに低くなりカップリング剤の付着率は21%と実使用上問題が生じるレベルであった。そこで、比較例7では、アンモニア水を溶媒に加えてカップリング剤溶液のpHを11と高くしてみたが、フェライト粒子の粉体pHは7.1と比較例6と変わらずカップリング剤の付着率も24%と実使用上問題が生じるレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るキャリア芯材は、カップリング剤を表面全体に均一に付着させることが可能であり有用である。