(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】高高度到達装置
(51)【国際特許分類】
B64D 39/00 20060101AFI20220825BHJP
B64F 3/00 20060101ALI20220825BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220825BHJP
B64B 1/02 20060101ALN20220825BHJP
B64B 1/06 20060101ALN20220825BHJP
B64B 1/40 20060101ALN20220825BHJP
B64D 17/02 20060101ALN20220825BHJP
B64D 25/00 20060101ALN20220825BHJP
B64D 27/04 20060101ALN20220825BHJP
B64D 27/10 20060101ALN20220825BHJP
B64D 27/16 20060101ALN20220825BHJP
B64D 27/24 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
B64D39/00
B64F3/00
B64C39/02
B64B1/02
B64B1/06
B64B1/40
B64D17/02
B64D25/00
B64D27/04
B64D27/10
B64D27/16
B64D27/24
(21)【出願番号】P 2018102067
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2020-12-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】関野 夕美子
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-267099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0233964(US,A1)
【文献】特開2018-075869(JP,A)
【文献】特開2010-202148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0073682(US,A1)
【文献】国際公開第2017/200803(WO,A1)
【文献】特開2017-141768(JP,A)
【文献】特表2013-532608(JP,A)
【文献】特開2015-189321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 3/00- 3/02
B64G 1/00
B64D 25/00,17/00,
27/00-27/26
B64B 1/02- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を、地表から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、
前記物体に連結されるトップドローンと、少なくとも1つの中継ドローンとを含む複数のドローンと、
前記複数のドローンを直列に連結する複数の有線ケーブルと、
前記複数のドローンのそれぞれを飛行させる動力または燃料を、前記複数の有線ケーブルを介して供給するための動力供給装置と、を備え、
各中継ドローンは、該中継ドローンに連結される前記有線ケーブルの重量以上の最大積載重量を有し、
前記動力供給装置は、前記トップドローンに気体燃料および気体酸化剤を供給するポンプ装置を含み、
前記トップドローンは、前記気体燃料および前記気体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る気体ロケットエンジンを有することを特徴とする高高度到達装置。
【請求項2】
物体を、地表から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、
前記物体に連結されるトップドローンと、少なくとも1つの中継ドローンとを含む複数のドローンと、
前記複数のドローンを直列に連結する複数の有線ケーブルと、
前記複数のドローンのそれぞれを飛行させる動力または燃料を、前記複数の有線ケーブルを介して供給するための動力供給装置と、を備え、
各中継ドローンは、該中継ドローンに連結される前記有線ケーブルの重量以上の最大積載重量を有し、
前記動力供給装置は、前記トップドローンに固体燃料を供給するポンプ装置を含み、
前記トップドローンは、前記固体燃料を燃焼させることにより推力を得る固体ロケットエンジンを有することを特徴とする高高度到達装置。
【請求項3】
物体を、地表から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、
前記物体に連結されるトップドローンと、少なくとも1つの中継ドローンとを含む複数のドローンと、
前記複数のドローンを直列に連結する複数の有線ケーブルと、
前記複数のドローンのそれぞれを飛行させる動力または燃料を、前記複数の有線ケーブルを介して供給するための動力供給装置と、を備え、
各中継ドローンは、該中継ドローンに連結される前記有線ケーブルの重量以上の最大積載重量を有し、
前記動力供給装置は、前記トップドローンに液体燃料および液体酸化剤を供給するポンプ装置を含み、
前記トップドローンは、前記液体燃料および前記液体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る液体ロケットエンジンを有することを特徴とする高高度到達装置。
【請求項4】
前記動力供給装置は、前記中継ドローンに電力を供給する電源を含み、
前記中継ドローンは、前記電力により回転する回転翼またはロータを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項5】
前記動力供給装置は、前記中継ドローンに燃料を供給するポンプ装置を含み、
前記中継ドローンは、前記燃料を燃焼させることにより回転翼またはロータを回転させる内燃機関を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項6】
前記動力供給装置は、前記中継ドローンにジェット燃料を供給するポンプ装置を含み、
前記中継ドローンは、前記ジェット燃料を燃焼させることにより推力を得るジェットエンジンを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項7】
前記動力供給装置は、前記中継ドローンに加圧流体を供給するポンプ装置を含み、
前記中継ドローンは、前記加圧流体を噴射することにより推力を得る噴射ノズルを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項8】
前記トップドローンには、太陽電池パネルが配置されており、
前記太陽電池パネルは、前記トップドローンに配置された機器に必要な電力の少なくとも一部を供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項9】
前記複数のドローンは、前記トップドローンおよび前記中継ドローンを前記有線ケーブルによって直列に連結した主ドローン群と、該主ドローン群の途中から分岐して、少なくとも1つの副ドローンを有線ケーブルによって連結した副ドローン群とから構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項10】
前記複数のドローンは、前記トップドローンおよび前記中継ドローンを前記有線ケーブルによって直列に連結した主ドローン群と、該主ドローン群の途中から分岐して、少なくとも1つの補助ドローンを有線ケーブルによって連結した補助ドローン群とから構成され、
前記補助ドローンは、前記物体に連結されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項11】
前記中継ドローンに連結される補助飛行体をさらに備え、
前記補助飛行体は、気球または飛行船であることを特徴とする請求項1に記載の高高度到達装置。
【請求項12】
前記トップドローンに連結される物体は、ステージであり、
前記ステージに、地上から物資を搬送するための昇降機構が連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項13】
前記ステージには、飛翔体を射出するための発射装置が配置されており、
前記発射装置は、前記飛翔体を地球周回軌道に乗せるための円軌道速度以上の速度を前記飛翔体に与えることを特徴とする請求項12に記載の高高度到達装置。
【請求項14】
前記ステージには、ロケットを発射するための発射台が設置されていることを特徴とする請求項12または13に記載の高高度到達装置。
【請求項15】
前記ステージには
、宇宙空間を飛翔する飛翔体を捕獲するためのドッキング機構が配置されていることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項16】
前記トップドローンに連結される物体は、ステージであり、
前記ステージに、太陽光発電衛星で発電された電力を受信するための受信装置が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項17】
前記受信装置で受信された電力を利用して、水を電気分解する水素・酸素発生装置をさらに備え、
前記動力供給装置は、前記水素・酸素発生装置で得られた水素および酸素を前記トップドローンに供給するポンプ装置を含み、
前記トップドローンは、前記水素および前記酸素の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る気体ロケットエンジンを有していることを特徴とする請求項16に記載の高高度到達装置。
【請求項18】
前記トップドローンおよび/または前記中継ドローンは、該トップドローンおよび/または中継ドローンが高速で地上に落下することを防止するための安全機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項19】
前記安全機構は、パラシュートまたはグライダー翼であることを特徴とする請求項18に記載の高高度到達装置。
【請求項20】
前記有線ケーブルに配置された中継ポンプをさらに備え、
前記中継ポンプは、前記有線ケーブルを流れる前記燃料を昇圧させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高高度到達装置。
【請求項21】
物体を、地上から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、
前記物体に連結される主ドローンと、複数の従ドローンとを含む複数のドローンと、
前記主ドローンに連結される主有線ケーブルと、
前記主ドローンを飛行させる燃料を、前記主有線ケーブルを介して供給するための主動力供給装置と、
前記複数の従ドローンのそれぞれに連結される従有線ケーブルと、
各従ドローンを飛行させる動力または燃料を、前記従有線ケーブルを介して供給するための従動力供給装置と、
前記従ドローンのうちのいくつかを、前記主有線ケーブルに設けられた連結点でそれぞれ連結する連結具と、を備え、
前記
主動力供給装置は、前記
主ドローンに気体燃料および気体酸化剤を供給するポンプ装置、前記
主ドローンに固体燃料を供給するポンプ装置、および前記
主ドローンに液体燃料および液体酸化剤を供給するポンプ装置のうちのいずれかを含んでおり、
前記
主ドローンは、前記気体燃料および前記気体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る気体ロケットエンジン、前記固体燃料を燃焼させることにより推力を得る固体ロケットエンジン、または前記液体燃料および前記液体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る液体ロケットエンジンを有し、
前記主ドローンは、前記連結点のうちの最も上に位置する連結点から該主ドローンまでの間の前記主有線ケーブルの一部の重量と、前記物体の重量を負担して飛行し、
前記従ドローンは、該従ドローンに連結された前記従有線ケーブルの重量の少なくとも一部と、前記主有線ケーブルの残りの重量の一部または他の従ドローンに連結された前記従有線ケーブルの重量の一部と、を負担して飛行することを特徴とする高高度到達装置。
【請求項22】
前記主動力供給装置と前記従動力供給装置とは、一体化された動力供給ユニットとして構成されることを特徴とする請求項21に記載の高高度到達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機では到達できない高高度領域まで物体を到達させるための高高度到達装置に関し、特に、複数のドローンを用いて、高高度領域まで物体を到達させるための高高度到達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星(例えば、気象観測用または地表観察用の人工衛星、または電波を送受信するための人工衛星)などの物体を宇宙空間まで到達させるために、該物体を搭載したロケットが用いられている。ロケットは、一般に、推進剤が貯蔵されたタンクなどをその内部に搭載している。ロケットは、タンクから供給された推進剤をロケットエンジンから噴射することにより、他の装置からエネルギの供給を受けることなく、独立して移動可能な飛翔体である。ロケットを地上から打ち上げることにより、物体を宇宙空間まで到達させることができる。宇宙空間は、航空機では到達できない高高度領域である。このような高高度領域まで到達可能なロケットを製作するためには、非常に大きなコストが必要となる。
【0003】
ここで、空中または水中あるいはその両方の領域を移動する無人移動体として定義されるドローンは、撮影もしくは監視、点検もしくは検査、計測などの様々な分野で広く用いられている。ドローンは、あらかじめ設定された目的によって自律的に運動するか、無線(電波、可視光、あらゆる波長帯のレーザ光、音波、超音波のいずれか、あるいはこれらの複合)を用いて人間である操縦者によって操縦されるか、無線を通じた外部の制御装置(コンピュータを含む)によって制御される。
【0004】
そこで、各種ドローンを用いて、人工衛星などの物体を高高度領域まで到達させる高高度到達装置が望まれている。なお、本明細書では、物体を高高度領域まで到達させる(または、搬送する)装置を、「高高度到達装置」と定義する。ドローンを用いて物体を高高度領域まで到達させることができれば、ロケットの製作費用が不要になるため、大きなコスト削減が期待できる。
【0005】
さらに、各種ドローンを用いて、気象観測用または地表観察用の撮像装置を高高度領域まで到達させることができれば、ロケットの製作費用だけでなく、人工衛星の製作費用も不要になるため、さらに大きなコスト削減が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9,387,928号公報
【文献】特開2012-51545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ドローンは、通常、動力源(電池、蓄電池、コンデンサー、燃料電池等のあらゆる種類の電源、あるいは燃焼用の燃料)を搭載しており、該動力源から供給される動力によって飛行する。ドローンに搭載可能な動力源の容量には限界があるため、動力源を搭載するドローンの飛行時間には必然的に限界がある。そのため、従来のドローンを用いて物体を高高度領域まで到達させることは不可能であった。
【0008】
そこで、本発明は、ドローンの飛行時間に制約を生じさせずに、物体を高高度領域まで到達させることが可能な高高度到達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、物体を、地表から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、前記物体に連結されるトップドローンと、少なくとも1つの中継ドローンとを含む複数のドローンと、前記複数のドローンを直列に連結する複数の有線ケーブルと、前記複数のドローンのそれぞれを飛行させる動力または燃料を、前記複数の有線ケーブルを介して供給するための動力供給装置と、を備え、各中継ドローンは、該中継ドローンに連結される前記有線ケーブルの重量以上の最大積載重量を有し、前記動力供給装置は、前記トップドローンに気体燃料および気体酸化剤を供給するポンプ装置を含み、前記トップドローンは、前記気体燃料および前記気体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る気体ロケットエンジンを有することを特徴とする高高度到達装置である。
本発明の一態様は、物体を、地表から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、前記物体に連結されるトップドローンと、少なくとも1つの中継ドローンとを含む複数のドローンと、前記複数のドローンを直列に連結する複数の有線ケーブルと、前記複数のドローンのそれぞれを飛行させる動力または燃料を、前記複数の有線ケーブルを介して供給するための動力供給装置と、を備え、各中継ドローンは、該中継ドローンに連結される前記有線ケーブルの重量以上の最大積載重量を有し、前記動力供給装置は、前記トップドローンに固体燃料を供給するポンプ装置を含み、前記トップドローンは、前記固体燃料を燃焼させることにより推力を得る固体ロケットエンジンを有することを特徴とする高高度到達装置である。
本発明の一態様は、物体を、地表から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、前記物体に連結されるトップドローンと、少なくとも1つの中継ドローンとを含む複数のドローンと、前記複数のドローンを直列に連結する複数の有線ケーブルと、前記複数のドローンのそれぞれを飛行させる動力または燃料を、前記複数の有線ケーブルを介して供給するための動力供給装置と、を備え、各中継ドローンは、該中継ドローンに連結される前記有線ケーブルの重量以上の最大積載重量を有し、前記動力供給装置は、前記トップドローンに液体燃料および液体酸化剤を供給するポンプ装置を含み、前記トップドローンは、前記液体燃料および前記液体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る液体ロケットエンジンを有することを特徴とする高高度到達装置である。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記動力供給装置は、前記中継ドローンに電力を供給する電源を含み、前記中継ドローンは、前記電力により回転する回転翼またはロータを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記動力供給装置は、前記中継ドローンに燃料を供給するポンプ装置を含み、前記中継ドローンは、前記燃料を燃焼させることにより回転翼またはロータを回転させる内燃機関を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記動力供給装置は、前記中継ドローンにジェット燃料を供給するポンプ装置を含み、前記中継ドローンは、前記ジェット燃料を燃焼させることにより推力を得るジェットエンジンを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記動力供給装置は、前記中継ドローンに加圧流体を供給するポンプ装置を含み、前記中継ドローンは、前記加圧流体を噴射することにより推力を得る噴射ノズルを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記トップドローンには、太陽電池パネルが配置されており、前記太陽電池パネルは、前記トップドローンに配置された機器に必要な電力の少なくとも一部を供給することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数のドローンは、前記トップドローンおよび前記中継ドローンを前記有線ケーブルによって直列に連結した主ドローン群と、該主ドローン群の途中から分岐して、少なくとも1つの副ドローンを有線ケーブルによって連結した副ドローン群とから構成されることを特徴とすることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数のドローンは、前記トップドローンおよび前記中継ドローンを前記有線ケーブルによって直列に連結した主ドローン群と、該主ドローン群の途中から分岐して、少なくとも1つの補助ドローンを有線ケーブルによって連結した補助ドローン群とから構成され、前記補助ドローンは、前記物体に連結されることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記中継ドローンに連結される補助飛行体をさらに備え、前記補助飛行体は、気球または飛行船であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記トップドローンに連結される物体は、ステージであり、前記ステージに、地上から物資を搬送するための昇降機構が連結されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ステージには、飛翔体を射出するための発射装置が配置されており、前記発射装置は、前記飛翔体を地球周回軌道に乗せるための円軌道速度以上の速度を前記飛翔体に与えることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記ステージには、ロケットを発射するための発射台が設置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ステージには、宇宙空間を飛翔する飛翔体を捕獲するためのドッキング機構が配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記トップドローンに連結される物体は、ステージであり、前記ステージに、太陽光発電衛星で発電された電力を受信するための受信装置が配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記受信装置で受信された電力を利用して、水を電気分解する水素・酸素発生装置をさらに備え、前記動力供給装置は、前記水素・酸素発生装置で得られた水素および酸素を前記トップドローンに供給するポンプ装置を含み、前記トップドローンは、前記水素および前記酸素の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る気体ロケットエンジンを有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記トップドローンおよび/または前記中継ドローンは、該トップドローンおよび/または中継ドローンが高速で地上に落下することを防止するための安全機構を備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記安全機構は、パラシュートまたはグライダー翼であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記有線ケーブルに配置された中継ポンプをさらに備え、前記中継ポンプは、前記有線ケーブルを流れる前記燃料を昇圧させることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、物体を、地上から100km以上の高高度領域まで到達させる高高度到達装置であって、前記物体に連結される主ドローンと、複数の従ドローンとを含む複数のドローンと、前記主ドローンに連結される主有線ケーブルと、前記主ドローンを飛行させる燃料を、前記主有線ケーブルを介して供給するための主動力供給装置と、前記複数の従ドローンのそれぞれに連結される従有線ケーブルと、各従ドローンを飛行させる動力または燃料を、前記従有線ケーブルを介して供給するための従動力供給装置と、前記従ドローンのうちのいくつかを、前記主有線ケーブルに設けられた連結点でそれぞれ連結する連結具と、を備え、前記主動力供給装置は、前記主ドローンに気体燃料および気体酸化剤を供給するポンプ装置、前記主ドローンに固体燃料を供給するポンプ装置、および前記主ドローンに液体燃料および液体酸化剤を供給するポンプ装置のうちのいずれかを含んでおり、前記主ドローンは、前記気体燃料および前記気体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る気体ロケットエンジン、前記固体燃料を燃焼させることにより推力を得る固体ロケットエンジン、または前記液体燃料および前記液体酸化剤の混合燃料を燃焼させることにより推力を得る液体ロケットエンジンを有し、前記主ドローンは、前記連結点のうちの最も上に位置する連結点から該主ドローンまでの間の前記主有線ケーブルの一部の重量と、前記物体の重量を負担して飛行し、前記従ドローンは、該従ドローンに連結された前記従有線ケーブルの重量の少なくとも一部と、前記主有線ケーブルの残りの重量の一部または他の従ドローンに連結された前記従有線ケーブルの重量の一部と、を負担して飛行することを特徴とする高高度到達装置である。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記主動力供給装置と前記従動力供給装置とは、一体化された動力供給ユニットとして構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のドローンのそれぞれには、動力供給装置から常に動力および/または燃料が供給される。したがって、複数ドローンのそれぞれに動力源を搭載させる必要がない。その結果、複数のドローンには、飛行時間に対する制約がないので、トップドローンまたは主ドローンは、物体を高高度領域まで搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、トップドローンの変形例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、トップドローンのさらに別の変形例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、トップドローンのさらに別の変形例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、さらに別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図6に示されるステージの変形例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図6に示されるステージの別の変形例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、トップドローンに搭載された安全機構の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、さらに別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。
【
図11】
図11は、さらに別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1乃至
図12において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。
図1に示される高高度到達装置100は、任意の物体11を、航空機では到達できない高高度領域に搬送するために用いられる。
図1に示される物体11は、気象観測用または地表観測用の撮像装置である。
【0021】
高高度到達装置100は、有線ケーブル4によって直列に連結された複数のドローンを備える。本実施形態では、高高度到達装置100は、物体11に連結されるトップドローン1と、少なくとも1つの(
図1では、3つの)中継ドローン6とを含んでいる。物体11である撮像装置は、該撮像装置の撮影角度を変更可能なマウント22を介してトップドローン1に連結されている。
【0022】
トップドローン1および中継ドローン6は、有線ケーブル4によって直列に連結されている。すなわち、トップドローン1および中継ドローン6は、複数の有線ケーブル4によって鎖状に接続されている。トップドローン1は、回転翼1Rを有しており、回転翼1Rは、トップドローン1を飛行させる推力を発生する推力発生機構として機能する。同様に、各中継ドローン6も、回転翼6Rを有しており、回転翼6Rは、中継ドローン6を飛行させる推力を発生する推力発生機構として機能する。
【0023】
高高度到達装置100は、有線ケーブル4を介して、トップドローン1の回転翼1Rおよび各中継ドローン6の回転翼6Rを回転させるための電力を供給する動力供給装置3を備えている。
図1に示される動力供給装置3は、電源12を含んでいる。この電源12の種類は任意であり、例えば、電池、蓄電池、コンデンサー、燃料電池等のあらゆる種類の電源を動力供給装置3に搭載することができる。図示した例では、動力供給装置3は、建屋2に収容されている。一実施形態では、商用電源(図示せず)を動力供給装置3に接続してもよい。この場合、商用電源から供給される電力が、動力供給装置3および有線ケーブル4を介してトップドローン1および各中継ドローン6に供給される。あるいは、発電装置(図示せず)を設置して、該発電装置から電力を動力供給装置3に供給してもよい。
【0024】
さらに、高高度到達装置100は、トップドローン1および中継ドローン6の動作、および動力供給装置3の動作を制御する制御装置8を備えている。制御装置8は、例えば、人間である操縦者によって操作される操縦器であってもよいし、トップドローン1および中継ドローン6の動作を制御するためのプログラムを格納するコンピュータであってもよい。トップドローン1および中継ドローン6は、制御装置8から発信される制御信号に基づいて無線で動作する。一実施形態では、制御装置8は、有線ケーブル4を介して制御信号をトップドローン1および中継ドローン6に送信してもよい。図示した例では、制御装置8も建屋2に収容されている。
【0025】
図示はしないが、トップドローン1は、回転翼1Rの代わりに、電力によって回転するロータを有していてもよい。この場合、ロータがトップドローン1を飛行させる推力を発生する推力発生機構として機能する。ロータを回転させる電力は、動力供給装置3から有線ケーブル4を介してトップドローン1に供給される。同様に、各中継ドローン6は、回転翼6Rの代わりに、電力によって回転するロータを有していてもよい。この場合、ロータが中継ドローン6を飛行させる推力を発生する推力発生機構として機能し、ロータを回転させる電力は、動力供給装置3から有線ケーブル4を介して中継ドローン6に供給される。
【0026】
図1に示される高高度到達装置100によれば、有線ケーブル4によって直列に連結されるトップドローン1および中継ドローン6には、動力供給装置3から有線ケーブル4を介して電力が供給される。トップドローン1の回転翼1Rおよび各中継ドローン6の回転翼6Rは、動力供給装置3から供給された電力によって回転し、これによりトップドローン1および中継ドローン6が飛行する。したがって、トップドローン1および中継ドローン6には動力源を搭載する必要がない。その結果、トップドローン1および中継ドローン6には、飛行時間に対する制約がない。
【0027】
さらに、中継ドローン6が負担する重量は、該中継ドローン6に連結される有線ケーブル4の重量だけである。したがって、有線ケーブル4の重量以上の最大積載重量を有する中継ドローン6の数を増やしていくだけで、トップドローン1が到達可能な最大上昇距離を増加させることができる。したがって、トップドローン1を高高度領域(例えば、宇宙空間)まで飛行させることができる。なお、本明細書では、宇宙空間を地表からの距離が100km以上の空間と定義する。
【0028】
図1に示されるように、トップドローン1は、太陽電池パネル18を備えていてもよい。太陽電池パネル18で発生した電力を、トップドローン1に連結される物体(本実施形態では、撮像装置)11およびマウント22を動作させる動力として使用することができる。このように、トップドローン1に太陽電池パネル18を配置することにより、トップドローン1に搭載された機器に必要な電力の全部または一部を、太陽電池パネル18で発生した電力でまかなうことができる。
【0029】
一実施形態では、マウント22を省略して、物体11である撮像装置を直接トップドローン1に接続してもよい。この場合は、制御装置8がトップドローン1の飛行姿勢を制御することにより、撮像装置の撮影角度を変更する。
【0030】
図2は、別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1に示す高高度到達装置100の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0031】
図2に示すように、動力発生装置3および制御装置8は、移動体5に搭載されている。本実施形態では、移動体5は自動車である。この場合、トップドローン1および中継ドローン6を地上または移動体5上に着陸させることにより、高高度到達装置100全体を容易に移動させることができる。一実施形態では、移動体5は、動力発生装置3および制御装置8を収容する船舶(図示せず)であってもよい。この場合、高高度到達装置100を海洋または河川に配置させることが可能であり、さらに、高高度到達装置100を海洋または河川上で容易に移動させることができる。
【0032】
図3は、トップドローンの変形例を示す模式図である。
図3に示されるトップドローン1は、回転翼1Rを回転させる内燃機関13を有している。動力供給装置3は、トップドローン1の内燃機関13に燃料を供給するためのポンプ装置15を含んでいる。ポンプ装置15から有線ケーブル4を介して供給された燃料は、内燃機関13で燃焼され、内燃機関13は、回転翼1Rを回転させる。これにより、回転翼1Rは、トップドローン1を飛行させるための推力を発生する。トップドローン1は、回転翼1Rの代わりに、内燃機関13によって回転されるロータを有していてもよい。
【0033】
図3に示されるように、トップドローン1に、補助飛行体である気球34を連結してもよい。気球34は、トップドローン1に鉛直方向上向きの力を付与することができる。したがって、気球34によって、トップドローン1が負担する重量を軽減することができる。補助飛行体として飛行船(図示せず)を使用してもよい。
【0034】
図示はしないが、中継ドローン6は、回転翼6Rを回転させる内燃機関を有していてもよい。さらに、中継ドローン6に、気球34または飛行船などである補助飛行体を連結してもよい。
【0035】
図4は、トップドローンのさらに別の変形例を示す模式図である。
図4に示されるトップドローン1は、回転翼1Rの代わりに、エンジン35を有している。エンジン35は、トップドローン1を飛行させるための推力を発生する推力発生機構として用いられる。エンジン35は、ジェット燃料を用いるジェットエンジンであってもよいし、気体燃料と気体酸化剤の混合物を用いる気体ロケットエンジンであってもよいし、燃料と酸化剤の混合物を含む固体燃料を用いる固体ロケットエンジンであってもよいし、液体燃料と液体酸化剤の混合物を用いる液体ロケットエンジンであってもよい。トップドローン1が推力発生装置として用いられるエンジン35を有する場合は、動力発生装置3は、エンジン35に燃料を供給するためのポンプ装置15を含む。
【0036】
エンジン35がジェットエンジンである場合は、動力供給装置3のポンプ装置15は、トップドローン1に有線ケーブル4を介してジェット燃料を供給する。動力供給装置3から有線ケーブル4を介してエンジン35に供給されたジェット燃料は、該エンジン35内で空気と混合され、燃焼される。これにより、トップドローン1を飛翔させるための推力が発生する。
【0037】
エンジン35が気体ロケットエンジンである場合は、動力供給装置3のポンプ装置15は、気体燃料(例えば、水素ガス)と、気体酸化剤(例えば、酸素ガス)とをそれぞれトップドローン1に有線ケーブル4を介して供給する。動力供給装置3のポンプ装置15によって供給された気体燃料および気体酸化剤は、気体ロケットエンジン内で混合され、燃焼される。これにより、トップドローン1を飛翔させる推力が発生する。
【0038】
エンジン35が固体ロケットエンジンである場合は、動力供給装置3のポンプ装置15は、固体燃料を有線ケーブル4を介してトップドローン1に供給する。ポンプ装置15は、好ましくは、粉末状、または微小ペレット状の固体燃料を有線ケーブル4を介してトップドローン1に供給する。より具体的には、ポンプ装置15は、粉末状、または微小ペレット状の固体燃料を含む空気などの気体を有線ケーブル4を介してエンジン35まで圧送するように構成される。動力供給装置3のポンプ装置15によって供給された固体燃料は、固体ロケットエンジン内で燃焼され、これにより、トップドローン1を飛行させる推力が発生する。
【0039】
エンジン35が液体ロケットエンジンである場合は、動力供給装置3のポンプ装置15は、液体燃料と、液体酸化剤とをそれぞれトップドローン1に有線ケーブル4を介して供給する。動力供給装置3のポンプ装置15によって供給された液体燃料および液体酸化剤は、液体ロケットエンジン内で混合され、燃焼される。これにより、トップドローン1を飛翔させる推力が発生する。
【0040】
図5は、トップドローン1のさらに別の変形例を示す模式図である。
図5に示されるトップドローン1は、回転翼1Rの代わりに、加圧流体(例えば、圧縮空気、加圧水など)を下向きに噴射する噴射ノズル37を有している。噴射ノズル37は、トップドローン1を飛行させるための推力を発生する推力発生機構として用いられる。動力供給装置3は、有線ケーブル4を介して加圧流体をトップドローン1に供給し、噴射ノズル37から噴射させる。噴射ノズル37から加圧流体を下向きに噴射することにより、トップドローン1を飛行させる推力が発生する。すなわち、動力供給装置3は、トップドローン1を飛行させる動力として、加圧流体をトップドローン1の噴射ノズル37に供給する。
【0041】
噴射ノズル37から噴射される流体が加圧水などの液体である場合は、動力供給装置3は、この液体を有線ケーブル4を介してトップドローン1まで圧送するポンプ装置15を含む。ポンプ装置15から有線ケーブル4を介してトップドローン1に供給された液体は、噴射ノズル37から下向きに噴射され、これにより、トップドローン1を飛行させる推力が発生する。噴射ノズル37から噴射される流体が圧縮空気などの気体である場合は、動力供給装置3は、コンプレッサ19を含み、該コンプレッサ19によって圧縮された気体が有線ケーブル4を介してトップドローン1に供給され、噴射ノズル37から噴射される。
【0042】
図示はしないが、中継ドローン6は、回転翼6Rの代わりに、上記エンジン35を有していてもよいし、上記噴射ノズル37を有していてもよい。
【0043】
トップドローン1の推力発生装置、および中継ドローン6の推力発生装置は、互いに異なっていてもよい。例えば、トップドローン1の推力発生装置が燃料を燃焼させる上記エンジン35である一方で、中継ドローン6の推力発生装置が電力により回転する回転翼6Rであってもよい。この場合、動力供給装置3は、トップドローン1のエンジン35に燃料を供給するためのポンプ装置15と、中継ドローン6の回転翼6Rに電力を供給するための電源12とを含むように構成される。
【0044】
トップドローン1を宇宙空間まで飛行させる場合は、トップドローン1の推力発生装置は、気体ロケットエンジン、固体ロケットエンジン、または液体ロケットエンジンであるエンジン35であるのが好ましい。この理由は、宇宙空間では空気の濃度が極度に低いため、回転翼1R、内燃機関13、およびジェットエンジンであるエンジン35を使用できないおそれがあるためである。同様の理由により、宇宙空間に達するまで上昇した中継ドローン6は、推力発生機構として、気体ロケットエンジン、固体ロケットエンジン、または液体ロケットエンジンであるエンジン35を有するのが好ましい。
【0045】
図6は、さらに別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図6に示される実施形態では、物体11であるステージが高高度到達装置100によって宇宙空間まで搬送される。以下の説明では、トップドローン1に連結される物体11を、「ステージ11」と称する。
【0046】
図6に示される高高度到達装置100のトップドローン1は、ワイヤなどの吊り具21を介してステージ11に連結されている。本実施形態では、高高度到達装置100の複数のドローンは、トップドローン1および中継ドローン6を有線ケーブル4によって直列に連結した主ドローン群と、該主ドローン群の途中から分岐して、少なくとも1つの(
図5では、3つの)副ドローン9を有線ケーブル4によって直列に連結した副ドローン群と、を含んでいる。各副ドローン9の動作は、制御装置8(
図1参照)によって制御される。
【0047】
図6に示される高高度到達装置100は、ステージ11に連結された昇降機構48を有している。図示した例の昇降機構48は、ケーブルなどの構造物49に沿って上下動可能な籠などの容器(図示せず)と、容器を上下動させるための電動機(図示せず)を有するエレベータ機構である。構造物49の一端はステージ11に連結され、他端は、地上に位置する。物資および/または人間を収容した容器を、電動機を用いて昇降させることができる。このような構成で、地上から物資および/または人間を宇宙空間に位置するステージ11まで搬送することができる。
【0048】
昇降機構48によって、宇宙空間に位置するステージ11まで人間を搬送する場合は、容器は気密構造を有し、該容器に空気を供給する必要がある。さらに、昇降機構48によって、人間がステージ11上で滞在している間に必要となる物資(例えば、水、食料など)を搬送してもよい。この場合、人間が容易に宇宙旅行を楽しむことができる。ステージ11上で人間が何らかの実験を行う場合は、昇降機構48によって実験器具をステージ11上に搬送してもよい。
【0049】
図示はしないが、昇降機構48は、物資を収容する容器と、該容器と連結されるワイヤと、該ワイヤを巻き上げ可能なホイストとを備えたホイスト式クレーンであってもよい。
【0050】
図6に示されるように、各中継ドローン6は、ワイヤなどの連結具17を介して昇降機構48に連結される。より具体的には、各中継ドローン6は、連結具17を介して構造物49の途中に連結されている。同様に、各副ドローン9は、連結具19を介して構造物49の途中に連結されている。これら中継ドローン6および副ドローン9によって、昇降機構48の位置および姿勢を制御することができる。
【0051】
各中継ドローン6および各副ドローン9は、昇降機構48の重量の一部と、有線ケーブル4の重量を負担する。したがって、中継ドローン6の数および副ドローン9の数を増やすことにより、トップドローン1が負担する重量が増加することを防止することができる。その結果、トップドローン1はステージ11を宇宙空間まで搬送することができる。
【0052】
図6に示されるように、高高度到達装置100は、主ドローン群の途中から分岐して、少なくとも1つの(
図2では、2つの)補助ドローン30を有線ケーブル4によって直列に連結した補助ドローン群をさらに含んでもよい。各補助ドローン30の動作は、制御装置8(
図1参照)によって制御される。
図6では、2つの補助ドローン30を連結する有線ケーブル4の図示を省略しているが、実際は、2つの補助ドローン30は、有線ケーブル4によって連結されている。
【0053】
補助ドローン30は、ステージ11の重量の一部を負担する。したがって、補助ドローン30によって、トップドローン1が負担する重量をさらに低減することができる。さらに、補助ドローン30をステージ11の姿勢制御のために利用してもよい。
【0054】
宇宙空間に位置するトップドローン1および補助ドローン30は、推力発生機構として、気体ロケットエンジン、固体ロケットエンジン、または液体ロケットエンジンであるエンジン35をそれぞれ有している。さらに、宇宙空間に達するまで上昇した中継ドローン6の一部と副ドローン9の一部は、推力発生機構として、気体ロケットエンジン、固体ロケットエンジン、または液体ロケットエンジンであるエンジン35をそれぞれ有する。一方で、宇宙空間よりも下方に位置する中継ドローン6および副ドローン9は、電力または燃料により回転する回転翼6Rおよび回転翼9Rをそれぞれ有している。各中継ドローン6は、同じ推力発生装置を有していてもよいし、異なる推力発生装置を有していてもよい。同様に、各副ドローン9は、同じ推力発生装置を有していてもよいし、異なる推力発生装置を有していてもよいし、各補助ドローン30は、同じ推力発生装置を有していてもよいし、異なる推力発生装置を有していてもよい。
【0055】
図6に示されるように、高高度到達装置100の有線ケーブル4に中継ポンプ39を配置してもよい。中継ポンプ39は、有線ケーブル4を流れる燃料を昇圧して、中継ポンプ39よりも上方に位置する中継ドローン6、副ドローン9、およびトップドローン1に燃料を供給するための設備である。中継ポンプ39を駆動する電力は、有線ケーブル4から供給される。
【0056】
図7は、
図6に示されるステージ11の変形例を示す模式図である。
図7に示されるステージ11は、人工衛星などの飛翔体40を射出するための発射装置41を備えている。
図7に示す発射装置41は、例えば、電磁式カタパルトまたはレールガンなどの投擲機構を有する。投擲機構は、飛翔体40を地球周回軌道に乗せるための円軌道速度以上の速度を飛翔体40に与えるための機構である。
【0057】
図7に示されるように、ステージ11は、ロケットである飛翔体40を発射可能な発射台42を有していてもよい。本実施形態では、ロケットである飛翔体40は、発射台42から水平方向に発射される。
【0058】
人工衛星、またはロケットなどの飛翔体40を、昇降機構48(
図6参照)によってトップドローン1に連結されたステージ11に搬送することができる。飛翔体40の各部品を昇降機構48によってステージ11に搬送し、該ステージ11上で組み立ててもよい。ステージ11に搬送されるか、またはステージ11上で組み立てられた飛翔体40は、発射装置41によって地球周回軌道に載せられるか、または発射台42から発射される。
【0059】
図8は、
図6に示されるステージ11の別の変形例を示す模式図である。
図8に示されるステージ11は、宇宙空間を飛翔している飛翔体40(例えば、人工衛星または宇宙ステーションなど)を捕獲するためのドッキング機構43を備えている。
【0060】
宇宙空間で地球周回軌道を飛翔している飛翔体40は、円軌道速度以上の速度を有している。したがって、飛翔体40をステージ11上のドッキング機構43によって捕獲するためには、飛翔体40とステージ11上のドッキング機構43との相対速度がゼロになるように、飛翔体40の速度を低下させる必要がある。人工衛星などの飛翔体40には、通常、位置調整用の燃料などが搭載されているので、この燃料を使用して飛翔体40の速度を低下させる。ドッキング機構43は、該ドッキング機構43に対する相対速度がゼロになった飛翔体40を捕獲することができる。
【0061】
ドッキング機構43によって捕獲された飛翔体40を、昇降機構48(
図6参照)によって地上に搬送することができる。さらに、飛翔体40に搭乗している人間を、ステージ11から昇降機構48を介して地上に搬送することができる。飛翔体40をステージ11上で分解し、飛翔体40の各部品を昇降機構48によって地上に搬送してもよい。
【0062】
図9は、トップドローンに搭載された安全機構の一例を示す模式図である。高高度到達装置100によれば、トップドローン1を高高度領域まで到達させることができる。高高度領域に位置するトップドローン1を地上に戻すには、動力供給装置3を停止すればよい。これにより、トップドローン1への動力または燃料の供給が中断されるため、トップドローン1が地上まで落下する。しかしながら、高高度領域からトップドローン1を落下させる場合、地上に衝突したトップドローン1が壊れるおそれがある。さらに、高高度領域から落下するトップドローン1の落下速度は非常に高く、危険である。そのため、本実施形態に係るトップドローン1は、該トップドローン1が高速で地上に落下することを防止するための安全機構45を設けている。
【0063】
図9に示される安全機構45は、トップドローン1に連結されたパラシュートである。トップドローン1を落下させるときは、安全機構45であるパラシュートを開く。これにより、トップドローン1はゆっくりと地上まで落下する。安全機構45は、トップドローン1を地上までゆっくりと飛行させるためのグライダー翼(図示せず)であってもよい。なお、安全機構45を、トップドローン1が故障して地上に落下する際の安全装置として機能させてもよい。
【0064】
図示はしないが、パラシュートまたはグライダー翼である安全機構45を、中継ドローン6に設けてもよい。当然ながら、安全機構45を、副ドローン9、または補助ドローン30に設けてもよい。
【0065】
近年、ロケットを使用せずに、物体を宇宙空間に到達させる装置として、宇宙エレベータが提案されている。しかしながら、宇宙エレベータを建設するためには、非常に高い張力を有する材料が必要とされる。さらに、宇宙エレベータは、一般に、赤道付近に建設する必要がある。
【0066】
上述した実施形態に係る高高度到達装置100によれば、各中継ドローン6および副ドローン9が昇降機構48の重量の一部と、有線ケーブル4の重量を負担しながら飛行する。したがって、昇降機構48の材料および有線ケーブル4の材料には、宇宙エレベータで要求されるような制約がないので、地上の任意の地点から、任意の高高度領域までステージなどの物体11を搬送することができる。
【0067】
さらに、宇宙エレベータを一旦建設すると、該宇宙エレベータの撤去は非常に困難である。これに対し、上述した実施形態に係る高高度到達装置100は、必要な時間だけ、トップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、および補助ドローン30を飛行させた後で、これらドローン1,6,9,30を容易に地上に戻すことができる。すなわち、トップドローン1に連結されたステージ11を、必要に応じて、地上と宇宙空間との間で移動させることができる。さらに、トップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、および補助ドローン30を地上に戻すことにより、トップドローン1に連結されたステージ11を地上に回収できる。ステージ11で発生した不要な物体をステージ11とともに地上に回収することにより、宇宙空間に有害なデブリを残すことがない。
【0068】
ステージ11を地上に回収する際には、制御装置8が動力供給装置3から各ドローン1,6,9,30に供給される動力または燃料の量を調整する。これにより、トップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、補助ドローン30、およびステージ11をゆっくりと地上まで戻すことができる。したがって、トップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、補助ドローン30、およびステージ11が大気圏に再突入する際に、これらドローン1,6,9,30およびステージ11に高熱が発生しない。そのため、地上に戻されたトップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、補助ドローン30、およびステージ11を修理および/またはメンテナンスすることで、再度これらトップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、補助ドローン30、およびステージ11を使用することができる。
【0069】
図示はしないが、高高度到達装置100は、有線ケーブル4を巻き取る巻き取り装置を有しているのが好ましい。この巻き取り機は、トップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、および補助ドローン30を地上に戻すときに、有線ケーブル4を巻き取るために使用される。さらに、高高度到達装置100は、ケーブルなどの構造物49を巻き取る別の巻き取り機を有しているのが好ましい。ステージ11を地上に戻すときに、この巻き取り機によって、構造物49を巻き取ることができる。
【0070】
図10は、さらに別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図6に示す高高度到達装置100の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。なお、
図10は、高高度到達装置100の一部の図示を省略している。
【0071】
将来の電力源として、宇宙空間に打ち上げられた太陽光発電衛星を用いた発電システムが研究されている。この発電システムは、宇宙空間で地球周回軌道上を飛行する太陽光発電衛星で太陽光を電力に変換し、この電力を、マイクロ波などの電磁波に変換して地上へ届けるように構成される。しかしながら、電磁波は大気に吸収されて減衰してしまう。さらに、太陽光発電衛星から地上に電磁波を照射すると、人間および環境へ悪影響が発生することが懸念されている。例えば、太陽光発電衛星から照射された電磁波は、地上の人間または飛行機に乗っている人間にも照射され、該電磁波によって健康被害が発生してしまうことが懸念されている。
【0072】
そこで、
図10に示す高高度到達装置100は、ステージ11上に配置された受信装置70を有している。受信装置70は、宇宙空間で地球周回軌道上を飛行する太陽光発電衛星73で発生された電力を受信可能に構成されている。具体的には、太陽光発電衛星73は、該太陽光発電衛星73で発生させた電力を、マイクロ波などの電磁波、またはレーザ光に変換し、ステージ11上に配置された受信装置70に送信する。受信装置70は、太陽光発電衛星73から送信された電磁波、またはレーザ光を受信し、該電磁波、またはレーザ光を電力に変換する。さらに、受信装置70は、電磁波、またはレーザ光から変換された電力を、ステージ11に連結されたケーブル74を介して地上施設(例えば、蓄電施設)78に送信するように構成されている。ケーブル74の一端は、受信装置70に連結され、他端は、地上施設78に連結されている。
【0073】
図示はしないが、太陽光発電装置をステージ11上に配置してもよい。この場合、ステージ11上の太陽光発電装置によって発生された電力は、ケーブル74を介して地上施設78に送信される。
【0074】
本実施形態によれば、宇宙空間(すなわち、大気圏外)まで搬送されたステージ11上の受信装置70が、太陽光発電衛星73で発生させた電力から変換された電磁波、またはレーザ光を受信する。したがって、太陽光発電衛星73から受信装置70までの間で、電磁波、またはレーザ光が減衰しないので、効率のよい発電システムを提供することができる。さらに、太陽光発電衛星73は、宇宙空間に位置するステージ11上の受信装置70に電磁波またはレーザ光を照射するので、人間および環境への悪影響が発生しない。
【0075】
図10に示す高高度到達装置100では、受信装置70が配置されたステージ11は、地球の自転に伴って移動する。一方で、太陽光発電衛星73は、地球周回軌道上を飛行している。そのため、受信装置70と太陽光発電衛星73の相対的な位置は、時間とともに変化する。この相対位置の変化によって、太陽光発電衛星73から受信装置70に電力を送信できない時間が必然的に発生してしまう。なお、受信装置70の受信方向と太陽光発電衛星73の送信方向とを調整することで、太陽光発電衛星73から受信装置70に電力を送信できない時間を短縮することができる。
【0076】
そこで、本実施形態では、太陽光発電衛星73は、蓄電器76を有している。太陽光発電衛星73は、該太陽光発電衛星73で発生させた電力を蓄電器76に一旦蓄えることができる。蓄電器76に蓄えられた電力は、太陽光発電衛星73がステージ11上の受信装置70に電力を送信可能な位置に移動したときに、太陽光発電衛星73から受信装置70に送信される。一実施形態では、太陽光発電衛星73から電力を送信可能な少なくとも1つの受信装置70が常に存在するように、複数の高高度到達装置100を地球上に配置してもよい。あるいは、受信装置70に送信可能な少なくとも1つの太陽光発電衛星73が存在するように、複数の太陽光発電衛星73を地球周回軌道上に配置してもよい。
【0077】
図10に示すように、高高度到達装置100は、水を電気分解して水素と酸素とを得る水素・酸素発生装置79を有していてもよい。水素・酸素発生装置79は、地上施設78に配置されており、受信装置70からケーブル74を介して地上施設78に送られる電力を利用して、水を電気分解するように構成されている。
【0078】
電気分解により発生した水素および酸素は、動力供給装置3に供給され、さらに、該動力供給装置3からトップドローン1に供給される。この場合、トップドローン1は、水素および酸素の混合燃料を燃焼させることにより推力を得るエンジン(気体ロケットエンジン)35を有している。中継ドローン6、副ドローン9、および補助ドローン30が水素および酸素の混合燃料を燃焼させることにより推力を得るエンジン(気体ロケットエンジン)35を有している場合は、水素および酸素を、これら中継ドローン6、副ドローン9、および補助ドローン30に動力供給装置3から供給してもよい。このような構成によれば、太陽光エネルギ以外の他の動力を用いずに、トップドローン1、中継ドローン6、副ドローン9、および補助ドローン30を飛行させることができる。
【0079】
図11は、さらに別の実施形態に係る高高度到達装置を示す模式図である。
図11は、後述する主ドローン80を地上100kmの高高度領域まで到達させるための高高度到達装置100の基本構成を説明するための図である。
【0080】
図11に示す高高度到達装置100は、主ドローン80と、複数の(
図11では、3つの)従ドローン81A,81B,81Cとを含む複数のドローンを備えている。発明の理解を助けるために、
図11に示す主ドローン80には、上記物体11が連結されていない。なお、以下の説明において、特に区別する必要がない場合は、従ドローン81A,81B,81Cを、単に「従ドローン81」と称することがある。さらに、以下の説明において、特に区別する必要がない場合は、後述する従有線ケーブル84A,84B,84Cを、単に「従有線ケーブル84」と称することがある。
【0081】
本実施形態では、主ドローン80は、推力発生機構として、
図4を参照して説明されたエンジン35(すなわち、ジェットエンジン、気体ロケットエンジン、固体ロケットエンジン、または液体ロケットエンジン)を有している。さらに、高高度到達装置100は、主ドローン80に連結される主有線ケーブル83と、主有線ケーブル83を介して、主ドローン80のエンジン35に燃料を供給するための主動力供給装置3Aを備えている。主動力供給装置3Aは、主ドローン80のエンジン35に燃料を供給するポンプ装置(
図4におけるポンプ装置15参照)を有している。
【0082】
図示はしないが、主ドローン80は、
図1を参照して説明された電力により回転する回転翼1Rまたはロータを有していてもよいし、
図3を参照して説明された燃料により回転する回転翼1Rまたはロータを有していてもよい。あるいは、主ドローン80は、
図5を参照して説明された噴射ノズル37を有していてもよい。さらに、主有線ケーブル83に、
図6を参照して説明された中継ポンプ39を配置してもよい。
【0083】
主ドローン80と同様に、各従ドローン81は、推力発生機構として、
図4を参照して説明されたエンジン35(すなわち、ジェットエンジン、気体ロケットエンジン、固体ロケットエンジン、または液体ロケットエンジン)を有している。さらに、高高度到達装置100は、従ドローン81A,81B,81Cのそれぞれに連結される従有線ケーブル84A,84B,84Cと、従有線ケーブル84A,84B,84Cを介して従ドローン81A,81B,81Cに燃料をそれぞれ供給する従動力供給装置3B,3C,3Dとを有している。従動力供給装置3B,3C,3Dも、従ドローン81A,81B,81Cのエンジン35に燃料を供給するポンプ装置(
図4におけるポンプ装置15参照)をそれぞれ有している。
【0084】
主ドローン80と同様に、各従ドローン81は、
図1を参照して説明された電力により回転する回転翼1Rまたはロータを有していてもよいし、
図3を参照して説明された燃料により回転する回転翼1Rまたはロータを有していてもよい。あるいは、各従ドローン81は、
図5を参照して説明された噴射ノズル37を有していてもよい。さらに、各従有線ケーブル84に、
図6を参照して説明された中継ポンプ39を配置してもよい。この場合、全ての従有線ケーブル84A,84B,84Cに中継ポンプ39を配置してもよいし、従有線ケーブル84A,84B,84Cのいくつかに中継ポンプ39を配置してもよい。さらに、
図11に示すように、主動力供給装置3Aと従動力供給装置3B,3C,3Dとは、一体化された動力供給ユニット90として構成されてもよい。
【0085】
主有線ケーブル83は、2つの連結点PA,PBを有している。主動力供給装置3Aから連結点PAまでの主有線ケーブル83の長さは25kmに設定されており、連結点PAから連結点PBまでの主有線ケーブル83の長さは25kmに設定されており、連結点PBから主ドローン80までの主有線ケーブル83の長さは50kmに設定されている。
【0086】
従ドローン81Aは、ワイヤなどの連結具86Aを介して連結点PAで主有線ケーブル83に連結され、従ドローン81Bは、ワイヤなどの連結具86Bを介して連結点PBで主有線ケーブル83に連結される。さらに、従有線ケーブル84Bは、連結点PCを有しており、従ドローン81Cは、ワイヤなどの連結具86Cを介して連結点PCで従有線ケーブル84Bに連結される。
【0087】
従動力供給装置3Cから連結点PCまでの従有線ケーブル84Bの長さは25kmに設定されており、従ドローン81Bから連結点PCまでの従有線ケーブル84Bの長さは25kmに設定されている。従有線ケーブル84Aの長さと、従有線ケーブル84Cの長さは、25kmにそれぞれ設定されている。
【0088】
図11に示す例では、発明の理解を助けるために、以下の条件が設定される。
(1)主ドローン80の最大積載重量は、50kmの長さを有する主有線ケーブル83の重量と等しい。
(2)各従ドローン81の最大積載重量は、主ドローン80の最大積載重量と等しい。
(3)各従有線ケーブル84は、主有線ケーブル80と同一のケーブルである。すなわち、主有線ケーブル83の単位体積あたりの重量は、従有線ケーブル84の単位体積あたりの重量と等しい。
これらの条件下では、従ドローン81は、50kmの長さを有する主有線ケーブル83、または50kmの長さを有する従有線ケーブル84に相当する重量を負担して飛行することができる。
【0089】
上記条件(1)によれば、主ドローン80だけでは、該主ドローン80を地上から100kmの高高度領域まで到達させることができない。そこで、主ドローン80と、複数の従ドローン81とを含む複数ドローンは、該複数のドローンにそれぞれ連結される有線ケーブル83,84の重量を互いに負担して飛行し、これにより、主ドローン80を地上から100kmの高高度領域まで到達させる。より具体的には、主ドローン80は、主有線ケーブル83の重量の一部を負担して飛行し、複数の従ドローン81は、主有線ケーブル83の重量の残りと、複数の従有線ケーブル84の重量を分担して飛行する。以下では、
図11を参照して、主ドローン80が負担する重量と、複数の従ドローン81A,81B,81Cのそれぞれが負担する重量について説明する。
【0090】
主ドローン80は、該主ドローン80から連結点PBまでの主有線ケーブル83の重量(すなわち、主有線ケーブル83の重量の一部)を負担して飛行する。従ドローン81Aは、主動力供給装置3Aから連結点PAまでの主有線ケーブル83の重量(すなわち、主有線ケーブル83の重量の一部)と、従有線ケーブル84Aの重量とを負担して飛行する。従ドローン81Bは、連結点PAから連結点PBまでの主有線ケーブル83の重量(すなわち、主有線ケーブル83の重量の一部)と、従ドローン81Bから連結点PCまでの従有線ケーブル84Bの重量(すなわち、従有線ケーブル84Bの重量の一部)とを負担して飛行する。従ドローン81Cは、従動力供給装置3Cから連結点PCまでの従有線ケーブル84Bの重量(すなわち、従有線ケーブル84Bの重量の一部)と、従有線ケーブル84Cの重量とを負担して飛行する。
【0091】
このように、本実施形態では、各従ドローン81は、該従ドローンに連結された従有線ケーブル84の重量の少なくとも一部と、主有線ケーブル83の重量の一部または他の従ドローン81に連結された従有線ケーブル84の重量の一部と、を負担して飛行する。各従ドローン81が負担する重量は、該従ドローン81の最大積載重量以下に設定される。このような構成を有する高高度到達装置100によれば、主ドローン80と複数の従ドローン81とが互いに協同して、主有線ケーブル83および複数の従有線ケーブル84の重量を負担して飛行する。
【0092】
さらに、複数のドローン(すなわち、主ドローン80、および従ドローン81A,81B,81C)のそれぞれには、動力供給装置(すなわち、主動力供給装置3A、および従動力供給装置3B,3C,3D)から常に燃料が供給される。したがって、複数ドローンのそれぞれに動力源を搭載させる必要がない。その結果、複数のドローンには、飛行時間に対する制約がないので、主ドローン80を高高度領域まで到達させることができる。
【0093】
主ドローン80を地上から100km以上の高高度領域に到達させる高高度到達装置100は、
図11に示す実施形態に限定されない。例えば、主ドローン80の最大積載重量は、従ドローン81の最大積載重量と異なっていてもよい。この場合、従ドローン81の最大積載重量よりも大きな最大積載重量を有する主ドローン80を選択することにより、主ドローン80の最大到達高さを増加させることができる。あるいは、主ドローン11の最大積載重量と従ドローン81の最大積載重量との差分に相当する重量を有する物体11を、主ドローン11に連結することができる。すなわち、高高度到達装置100は、主ドローン80の最大到達高さおよび/または主ドローン80に連結される物体11の重量に応じて、従ドローン81A,81B,81Cの最大積載重量よりも大きな最大積載重量を有する主ドローン80を選択してもよい。さらに、各従ドローン81の最大積載重量は、互いに異なっていてもよい。
【0094】
図12は、
図11に示す高高度到達装置の変形例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図11に示す高高度到達装置100の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図12は、物体11に連結された主ドローン80を、地上から100kmの高高度領域に到達させる高高度到達装置100の一例を示す図である。
図12に示す高高度到達装置100では、主ドローン80に連結される物体11は、25kmの長さを有する主有線ケーブル83の重量以下の重量を有する。
【0095】
図12に示す高高度到達装置100は、物体11に連結される主ドローン80と、複数の(
図12では7つの)従ドローン81A,81B,81C,81D,81E,81F,81Gを含む複数のドローンを備えている。主ドローン80には、ワイヤなどの吊り具21を介して物体11が連結されている。なお、以下の説明において、特に区別する必要がない場合は、従ドローン81A,81B,81C,81D,81E,81F,81Gを、単に「従ドローン81」と称することがある。さらに、以下の説明において、特に区別する必要がない場合は、後述する従有線ケーブル84A,84B,84C,84D,84E,84F,84Gを、単に「従有線ケーブル84」と称することがある。
【0096】
各従ドローン81は、推力発生機構として、
図4を参照して説明されたエンジン35(すなわち、ジェットエンジン、気体ロケットエンジン、固体ロケットエンジン、または液体ロケットエンジン)を有している。従ドローン81A,81B,81C,81D,81E,81F,81Gには、従有線ケーブル84A,84B,84C,84D,84E,84F,84Gがそれぞれ連結される。従ドローン81A,81B,81C,81D,81E,81F,81Gのそれぞれのエンジン35には、従有線ケーブル84A,84B,84C,84D,84E,84F,84Gを介して従動力供給装置3B,3C,3D,3E,3F,3G,3Hから燃料(例えば、ジェット燃料、気体燃料および気体酸化剤、固体燃料、または液体燃料および液体酸化剤)が供給される。
【0097】
本実施形態でも、主ドローン80の最大積載重量は、50kmの長さを有する主有線ケーブル83の重量と等しく、各従ドローン81の最大積載重量は、主ドローン80の最大積載重量と等しい。さらに、各従有線ケーブル84は、主有線ケーブル80と同一のケーブルである。
【0098】
図示はしないが、主ドローン80、および各従ドローン81は、
図1を参照して説明された電力により回転する回転翼1Rまたはロータを有していてもよいし、
図3を参照して説明された燃料により回転する回転翼1Rまたはロータを有していてもよい。あるいは、主ドローン80、および各従ドローン81は、
図5を参照して説明された噴射ノズル37を有していてもよい。さらに、主有線ケーブル83に、
図6を参照して説明された中継ポンプ39を配置してもよいし、各従有線ケーブル84に、
図6を参照して説明された中継ポンプ39を配置してもよい。この場合、全ての従有線ケーブル84A,84B,84C,84D,84E,84F,84Gに中継ポンプ39を配置してもよいし、従有線ケーブル84A,84B,84C,84D,84E,84F,84Gのいくつかに中継ポンプ39を配置してもよい。
【0099】
主ドローン80に連結される主有線ケーブル83は、3つの連結点PA,PB,PCを有している。従ドローン81Aは、ワイヤなどの連結具86Aを介して連結点PAで主有線ケーブル83に連結され、従ドローン81Bは、ワイヤなどの連結具86Bを介して連結点PBで主有線ケーブル83に連結される。さらに、従ドローン81Dは、ワイヤなどの連結具86Dを介して連結点PCで主有線ケーブル83に連結される。
【0100】
主動力供給装置3Aから連結点PAまでの主有線ケーブル83の長さは25kmに設定されており、連結点PAから連結点PBまでの主有線ケーブル83の長さも25kmに設定されている。連結点PBから連結点PCまでの主有線ケーブル83の長さは25kmに設定されており、連結点PCから主ドローン80までの主有線ケーブル83の長さも25kmに設定されている。
【0101】
従ドローン81Bに連結される従有線ケーブル84Bは、連結点PDを有しており、従ドローン81Cは、ワイヤなどの連結具86Cを介して連結点PCで従有線ケーブル84Bに連結される。従動力供給装置3Cから連結点PDまでの従有線ケーブル84Bの長さと、連結点PDから従ドローン84Bまでの従有線ケーブル84Bの長さは、それぞれ、25kmに設定されている。
【0102】
従ドローン81Dに連結される従有線ケーブル83Dは、2つの連結点PE,PFを有しており、従ドローン81Eは、ワイヤなどの連結具86Eを介して連結点PEで従有線ケーブル84Dに連結される。従ドローン81Fは、ワイヤなどの連結具86Fを介して連結点PFで従有線ケーブル84Dに連結される。従動力供給装置3Eから連結点PEまでの従有線ケーブル84Dの長さは25kmに設定されており、連結点PEから連結点PFまでの従有線ケーブル84Dの長さは25kmに設定されており、従ドローン81Dから連結点PFまでの従有線ケーブル84Dの長さは25kmに設定されている。
【0103】
従ドローン81Fに連結される従有線ケーブル84Fは、連結点PGを有しており、従ドローン81Gは、ワイヤなどの連結具86Gを介して連結点PGで従有線ケーブル84Fに連結される。従動力供給装置3Gから連結点PGまでの従有線ケーブル84Fの長さは25kmに設定されており、従ドローン81Fから連結点PGまでの従有線ケーブル84Fの長さは25kmに設定されている。
【0104】
従ドローン81Eに連結される従有線ケーブル84Eの長さは25kmに設定されており、従ドローン81Gに連結される従有線ケーブル84Gの長さも25kmに設定されている。
【0105】
図12に示す主ドローン80は、連結点PCから主ドローン80までの主有線ケーブル83の重量(すなわち、主有線ケーブル83の重量の一部)と、物体11の重量を負担して飛行する。連結点PCから主ドローン80までの主有線ケーブル83の長さが25kmなので、主ドローン80は、25kmの長さを有する主有線ケーブル83の重量以下の重量を有する物体11を支持しながら飛行することができる。
【0106】
従ドローン81Aは、主動力供給装置3Aから連結点PAまでの主有線ケーブル83の重量(すなわち、主有線ケーブル83の重量の一部)と、従有線ケーブル84Aの重量とを負担して飛行する。従ドローン81Bは、連結点PAから連結点PBまでの主有線ケーブル83の重量(すなわち、主有線ケーブル83の重量の一部)と、従ドローン81Bから連結点PCまでの従有線ケーブル84Bの重量(すなわち、従有線ケーブル84Bの重量の一部)とを負担して飛行する。従ドローン81Cは、従動力供給装置3Cから連結点PCまでの従有線ケーブル84Bの重量(すなわち、従有線ケーブル84Bの重量の一部)と、従有線ケーブル84Cの重量とを負担して飛行する。
【0107】
従ドローン81Dは、連結点PBから連結点PCまでの主有線ケーブル83の重量(すなわち、主有線ケーブル83の重量の一部)と、従ドローン81Dから連結点PFまでの従有線ケーブル84Dの重量(すなわち、従有線ケーブル84Dの重量の一部)とを負担して飛行する。従ドローン81Eは、従動力供給装置3Eから連結点PEまでの従有線ケーブル84Dの重量(すなわち、従有線ケーブル84Dの重量の一部)と、従有線ケーブル84Eの重量とを負担して飛行する。従ドローン81Fは、連結点PEから連結点PFまでの従有線ケーブル84Dの重量(すなわち、従有線ケーブル84Dの重量の一部)と、従ドローン81Fから連結点PGまでの従有線ケーブル84Fの重量(すなわち、従有線ケーブル84Fの重量の一部)とを負担して飛行する。従ドローン81Gは、従動力供給装置3Eから連結点PEまでの従有線ケーブル84Dの重量(すなわち、従有線ケーブル84Dの重量の一部)と、従有線ケーブル84Eの重量とを負担して飛行する。
【0108】
このように、
図12に示す高高度到達装置100では、複数のドローン(すなわち、主ドローン80と従ドローン81A-81G)が物体11の重量と複数の有線ケーブル(すなわち、主有線ケーブル83と従有線ケーブル84A-84G)の重量とを分担して飛行する。より具体的には、主ドローン80は、物体11の重量と、主有線ケーブル83の重量の一部とを負担して飛行し、各従ドローン81は、該従ドローンに連結された従有線ケーブル84の重量の少なくとも一部と、主有線ケーブル83の重量の一部または他の従ドローン81に連結された従有線ケーブル84の重量の一部と、を負担して飛行する。各従ドローン81が負担する重量は、該従ドローン81の最大積載重量以下に設定される。このような構成により、物体11に連結された主ドローン80を、地上から100kmの高高度領域まで到達させることができる。
【0109】
図11に示す実施形態と同様に、主ドローン80の最大積載重量は、主ドローン80に連結される物体11の重量および/または主ドローン80が到達すべき高度に応じて、各従ドローン81の最大積載重量と異なっていてもよい。さらに、各従ドローン81の最大積載重量は、互いに異なっていてもよい。
【0110】
図12に示す高高度到達装置100によれば、複数のドローン(すなわち、主ドローン80と従ドローン81A,81B,81C、81D,81E,81F,81G)が協同して、物体11の重量と複数の有線ケーブル(すなわち、主有線ケーブル83と従有線ケーブル84A-84G)の重量とを負担して飛行する。したがって、複数ドローンのそれぞれに動力源を搭載させる必要がない。その結果、複数のドローンには、飛行時間に対する制約がないので、物体11に連結された主ドローン80を、地上から100km以上の高高度領域まで到達させることができる。
【0111】
図示はしないが、主動力供給装置3Aと、従動力供給装置3B,3C,3D,3E,3F,3G,3Hとは、一体化された動力供給ユニットとして構成されてもよい。
【0112】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0113】
1 トップドローン
3 動力供給装置
4 有線ケーブル
6 中継ドローン
8 制御装置
9 副ドローン
11 物体
12 電源
13 内燃機関
17 連結具(ワイヤ)
18 太陽電池パネル
19 連結具(ワイヤ)
20 昇降機構
21 吊り具(ワイヤ)
22 マウント
30 補助ドローン
34 気球
35 エンジン
37 噴射ノズル
39 中継ポンプ
40 飛翔体
41 発射装置
42 発射台
45 安全機構
48 昇降機構
49 構造物
70 受信装置
74 ケーブル
78 地上施設
79 水素・酸素発生装置
80 主ドローン
81A,81B,81C,81D,81E,81F,81G 従ドローン
83 主有線ケーブル
84A,84B,84C,84D,84E,84F,84G 従有線ケーブル
86A,86B,86C,86D,86E,86F,86G 連結具
90 動力供給ユニット
100 高高度到達装置