(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ガイド治具、貫通孔の形成方法
(51)【国際特許分類】
F16L 5/02 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
F16L5/02 L
(21)【出願番号】P 2020056817
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】稲田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】飯田 英邦
(72)【発明者】
【氏名】漆原 慎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 淳
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100485(JP,A)
【文献】特開昭63-225781(JP,A)
【文献】特開2008-193793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0101045(US,A1)
【文献】特開2005-280181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体への貫通孔を形成する際に使用されるガイド治具であって、
前記ガイド治具は内筒部と、爪部と、フランジ部を有しており、
前記爪部は、前記内筒部の外周部において、周方向に複数配置されており、
前記フランジ部は、前記内筒部の一端側に形成され、径方向に広がっていることを特徴とするガイド治具。
【請求項2】
前記爪部は、前記内筒部の管軸方向に向けて形成され、少なくとも1つの前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さが、他の前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1記載のガイド治具。
【請求項3】
前記爪部は、前記内筒部の軸中心に対して、互いに対向する周方向の位置に複数対形成され、少なくとも一対の前記爪部が、他の前記爪部よりも、前記内筒部の管軸方向の長さが長いことを特徴とする請求項2記載のガイド治具。
【請求項4】
複数の前記爪部の外周面を結ぶ仮想円の外径が、前記フランジ部が形成される側から、前記フランジ部が形成されていない方向に向かって、徐々に大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のガイド治具。
【請求項5】
前記内筒部の外周部において、前記内筒部の管軸方向に沿って径方向に突出するリブが形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のガイド治具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のガイド治具を用いた壁体への貫通孔の形成方法であって、
前記壁体は、木板と、前記木板の表面に貼り付けられた透湿防水シートと、前記木板と離間して配置される外壁と、を具備し、
第1コアカッタによって、前記外壁を貫通する第1の貫通孔を形成する工程aと、
前記フランジ部が前記外壁に接するまで、前記第1の貫通孔に前記ガイド治具を挿入し、前記爪部によって、前記ガイド治具を前記第1の貫通孔に固定する工程bと、
前記ガイド治具の前記内筒部に、前記第1コアカッタよりも径の小さな第2コアカッタを挿入し、前記木板に第2の貫通孔を形成する工程cと、
を具備することを特徴とする貫通孔の形成方法。
【請求項7】
前記工程aは、前記外壁を設置する前に、前記外壁を水平方向に倒した状態で行い、
前記工程bは、前記外壁を前記木板の外面側に設置した状態で行うことを特徴とする請求項6記載の貫通孔の形成方法。
【請求項8】
前記工程bにおいて、前記透湿防水シートと前記ガイド治具とが接触しないように、前記ガイド治具を前記外壁に固定することを特徴とする請求項6または請求項7記載の貫通孔の形成方法。
【請求項9】
前記爪部は、前記内筒部の管軸方向に向けて形成され、少なくとも1つの前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さが、他の前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さよりも長く、
前記工程bにおいて、長さの長い前記爪部を前記第1の貫通孔に挿入して位置決めし、その後、長さの短い前記爪部を前記第1の貫通孔に挿入することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の貫通孔の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁部の貫通孔を形成する際に使用されるガイド治具と、これを用いた貫通孔の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば屋外に設置される設備等に接続される電線や配管を屋内に引き込む際には、屋外と屋内を区分けする壁部に配管等を挿通させて設置する必要がある。貫通部からの水の浸入を防止する必要があることから、貫通部には壁部貫通部材が設けられる。
【0003】
一方、木造構造物の場合には、壁部が、外壁部と、外壁部の内側に配置される木板部とからなる。結露を防止するための通気層を設けるため、外壁部は木板部から離間して配置される。木板部の外面には、透湿防水シートが貼り付けられて、水の浸入が防止される。この場合には、壁部貫通部材は外壁部と木板部とに設けられた貫通孔に設置される。
【0004】
このような壁部貫通部材を用いた構造としては、例えば、筒部と、筒部の一方の端部の外周面に設けられる第1フランジ部と、第1フランジ部から所定距離離間した位置に設けられ、第1フランジ部よりも外径の小さな第2フランジ部と、第2フランジ部の背面側に配置される第1の止水部材とを具備し、ネジをねじ込むと、係止部材が空回り防止部材とともに第1フランジ部側に移動可能である壁部貫通部材が提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1では、第1フランジ部の前方からネジを回転させることで、外壁部を撤去することなく、容易に、壁部貫通部材を壁部に固定することができる。また、第1フランジ部の背面の第2の止水部材が外壁部に押圧され、第2フランジ部の背面の第1の止水部材が木板の外面に押圧されるため、木板と壁部貫通部材との止水性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような壁部貫通部材を設置するためには、まず、外壁部と木板とに貫通孔を形成する必要がある。この際、外壁部に形成される第1貫通孔と、木板に形成される第2貫通孔とは、サイズが異なり、第2貫通孔は第1貫通孔よりもサイズが小さい。このため、第1貫通孔と第2貫通孔とを別々に形成する必要がある。
【0008】
しかし、第1貫通孔と第2貫通孔との軸がずれてしまうと、壁部貫通部材を設置することができない。このため、第1貫通孔と第2貫通孔との軸を合わせる必要がある。
【0009】
これに対し、外壁部と木板に、一直線上に軸穴を形成し、軸穴を用いて第1貫通孔と第2貫通孔とをそれぞれ形成する方法がある。この場合には、まず、外壁部と木板とを貫通するように、一本のドリルで軸穴を形成する。次に、軸穴に対応する径のガイドが先端から突出する第1コアカッタで、外壁部に第1貫通孔を形成する。次に、軸穴に対応する径のガイドが先端から突出する第2コアカッタで、木板に第2貫通孔を形成する。このようにすることで、同一軸上に第1貫通孔と第2貫通孔を形成することができる。
【0010】
しかし、この方法では、計3回の穴あけ加工が必要となる。このため、作業性が悪い。また、先端部にガイドを有するコアカッタが必要であるため、一般的なコアカッタをそのまま使用することができない。また、外壁部と木板とが設置された状態でなければ作業を行うことができないため、例えば、外壁部の穴あけ加工だけを先に行っておくことができない。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性が良好であり、効率良く外壁と木板とにサイズの異なる貫通孔を形成することが可能なガイド治具及びこれを用いた貫通孔の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、壁体への貫通孔を形成する際に使用されるガイド治具であって、前記ガイド治具は内筒部と、爪部と、フランジ部を有しており、前記爪部は、前記内筒部の外周部において、周方向に複数配置されており、前記フランジ部は、前記内筒部の一端側に形成され、径方向に広がっていることを特徴とするガイド治具である。
【0013】
前記爪部は、前記内筒部の管軸方向に向けて形成され、少なくとも1つの前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さが、他の前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さよりも長くてもよい。
【0014】
前記爪部は、前記内筒部の軸中心に対して、互いに対向する周方向の位置に複数対形成され、少なくとも一対の前記爪部が、他の前記爪部よりも、前記内筒部の管軸方向の長さが長くてもよい。
【0015】
複数の前記爪部の外周面を結ぶ仮想円の外径が、前記フランジ部が形成される側から、前記フランジ部が形成されていない方向に向かって、徐々に大きくなるように形成されてもよい。
【0016】
前記内筒部の外周部において、前記内筒部の管軸方向に沿って径方向に突出するリブが形成されてもよい。
【0017】
第1の発明によれば、外壁を貫通する第1の貫通孔を形成した後、ガイド治具を第1の貫通孔に設置することで、ガイド治具の爪部によって、ガイド治具を、第1の貫通孔へ同一軸上に設置することができる。また、ガイド治具の内筒部が、第2の貫通孔を形成する際のコアカッタのガイドとして機能するため、同一軸上に第1の貫通孔と第2の貫通孔を形成することができる。このため、軸穴加工が不要である。
【0018】
また、外壁の第1の貫通孔と木板の第2の貫通孔は、別々に形成することができるため、外壁に第1の貫通孔を予め施工した後に、木板の前面に外壁を設置することもできる。このため、外壁への第1の貫通孔の施工の自由度が高い。
【0019】
また、内筒部の外周に形成される複数の爪部の内、一部の爪部の軸方向への長さを他の爪部と比較して長くすることで、長い爪部を最初に第1の貫通孔へあてがって位置決めを行った後に、他の短い爪部を第1の貫通孔に挿入することができる。このため、ガイド治具を第1の貫通孔にセットするのが容易である。
【0020】
特に、内筒部の軸中心に対して、互いに対向する少なくとも一対の爪部同士の長さを、他の爪部よりも長くすることで、例えば、長い爪部を第1の貫通孔の上下にあてがって先端を挿入することができる。このため、ガイド治具の高さ方向の位置決めを行った後、他の爪部によって第1の貫通孔の左右方向の位置決めを行うことができるため、ガイド治具の挿入が容易である。
【0021】
また、爪部の外周面を結ぶ仮想円の外径が、フランジ部が形成される側から先端方向に向かって徐々に大きくなるようにすることで、施工誤差により、第1の貫通孔の径にばらつきが生じた場合でも、ガイド治具を第1の貫通孔と同一軸上に設置することができる。
【0022】
また、内筒部の外周部において、内筒部の軸方向に向けて径方向に突出するリブを形成することで、爪部の変形による大きな軸ずれが生じることを抑制することができる。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかるガイド治具を用いた壁体への貫通孔の形成方法であって、前記壁体は、木板と、前記木板の表面に貼り付けられた透湿防水シートと、前記木板と離間して配置される外壁と、を具備し、第1コアカッタによって、前記外壁を貫通する第1の貫通孔を形成する工程aと、前記フランジ部が前記外壁に接するまで、前記第1の貫通孔に前記ガイド治具を挿入し、前記爪部によって、前記ガイド治具を前記第1の貫通孔に固定する工程bと、前記ガイド治具の前記内筒部に、前記第1コアカッタよりも径の小さな第2コアカッタを挿入し、前記木板に第2の貫通孔を形成する工程cと、を具備することを特徴とする貫通孔の形成方法である。
【0024】
前記工程aは、前記外壁を設置する前に、前記外壁を水平方向に倒した状態で行い、前記工程bは、前記外壁を前記木板の外面側に設置した状態で行ってもよい。
【0025】
前記工程bにおいて、前記透湿防水シートと前記ガイド治具とが接触しないように、前記ガイド治具を前記外壁に固定することが望ましい。
【0026】
前記爪部は、前記内筒部の管軸方向に向けて形成され、少なくとも1つの前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さが、他の前記爪部の前記内筒部の管軸方向の長さよりも長く、前記工程bにおいて、長さの長い前記爪部を前記第1の貫通孔に挿入して位置決めし、その後、長さの短い前記爪部を前記第1の貫通孔に挿入してもよい。
【0027】
第2の発明によれば、ガイド治具を用いることで、第2の貫通孔を、先に形成した第1の貫通孔と同一軸上に形成することができる。この際、軸穴の施工が不要であるため、作業性が良好である。
【0028】
また、外壁を設置する前に、外壁を水平方向に倒した状態で第1の貫通孔を形成することで、設置された外壁にコアカッタを水平に向けて作業を行う場合と比較して、コアカッタを鉛直方向に向けて作業を行うことができるため、作業が容易である。また、第1の貫通孔を形成する際の粉末で外壁が汚れる恐れがあるが、外壁を設置した後に第1の貫通孔を形成する場合と比較して、汚れの範囲が限定的であり、清掃も容易である。
【0029】
また、コアカッタと木板との摩擦によって木板が高温となるため、木板に透湿防水シートを押し付けてしまうと、透湿防水シートが解ける恐れがある。しかし、透湿防水シートとガイド治具とが接触しないように、ガイド治具を外壁に固定することで、透湿防水シートが木板から浮いた状態で第2の貫通孔を形成することができるため、透湿防水シートの損傷を抑制することができる。
【0030】
また、内筒部の外周に形成される複数の爪部の内、一部の爪部の軸方向への長さを他の爪部と比較して長くすることで、長い爪部を最初に第1の貫通孔へあてがって位置決めを行った後に、他の短い爪部を第1の貫通孔に挿入することができる。このため、ガイド治具を第1の貫通孔にセットするのが容易である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、作業性が良好であり、効率良く外壁と木板とにサイズの異なる貫通孔を形成することが可能なガイド治具及びこれを用いた貫通孔の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】(a)は、ガイド治具1の背面図、(b)は、ガイド治具1の正面図。
【
図3】(a)は、
図2(a)のA-A線断面図、(b)は、
図2(a)のB-B線断面図。
【
図4】外壁19aへ貫通孔21aを形成する工程を示す図。
【
図5】外壁19aを設置し、貫通孔21aにガイド治具1を設置する工程を示す図。
【
図6】貫通孔21aにガイド治具1が設置された状態を示す断面図。
【
図7】(a)は、貫通孔21aにガイド治具1が設置された状態を示す正面図、(b)は、貫通孔21aにガイド治具1が設置された状態を示す背面図。
【
図8】木板19bへ貫通孔21bを形成する工程を示す図。
【
図9】貫通孔21a、21bが形成された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明にかかるガイド治具について説明する。
図1は、ガイド治具1を示す斜視図、
図2(a)は、ガイド治具1の背面図、
図2(b)は、ガイド治具1の正面図である。
【0034】
ガイド治具1は、壁体への貫通孔を形成する際に使用される治具である。ガイド治具1は、主に、内筒部3、爪部5a、5b、フランジ部7、リブ9等を有している。内筒部3は、コアカッタのガイドとして機能する部位である。内筒部3の外周部には、内筒部3の径方向に突出すように、複数の爪部5a、5bが周方向に所定の間隔で配置される。図示した例では、一対の爪部5aと一対の爪部5bが、それぞれ互いに直交する位置に配置される。
【0035】
図3(a)は、
図2(a)のA-A線断面図、
図3(b)は、
図2(a)のB-B線断面図である。なお、
図3(a)、
図3(b)は、管軸方向を上下方向に揃えた向きで図示する。爪部5aと爪部5bとは、長さが異なる。より具体的には、爪部5a、5bは、それぞれ内筒部3の管軸方向に向けて形成され、爪部5aの管軸方向の長さは、爪部5bの管軸方向の長さよりも長い。例えば、爪部5aは、内筒部3の管軸方向の長さよりも長く、内筒部3からはみ出すように形成される。一方、爪部5bは、内筒部3と略同様の管軸方向の長さに形成される。
【0036】
このように、爪部5aの長さを爪部5bよりも長くするのは、後述するガイド治具1の取り付け作業性を向上させるためである。なお、
図2(b)に示すように、ガイド治具1の正面において、長さの長い爪部5aの少なくとも一カ所に、マーク11が形成される。したがって、ガイド治具1の正面側から、長さの長い爪部5aの位置を把握することが可能である。
【0037】
なお、図示した例では、爪部5a、5bが、内筒部3の軸中心に対して、互いに対向する周方向の位置にそれぞれ1対ずつ形成されている例を示すが、これには限られない。例えば、爪部5aと爪部5bは、それぞれ複数対形成してもよく、それぞれの個数は同数でなくてもよい。すなわち、内筒部3の軸方向に向けて形成される複数の爪部の内、少なくとも1つの爪部5aの軸方向の長さが、他の爪部5bの内筒部3の軸方向の長さよりも長ければよい。
【0038】
なお、この場合において、前述したように、内筒部3の軸中心に対して、爪部5a及び爪部5bが、互いに対向する周方向の位置に複数対(例えば爪部5a、5b合わせて2対)形成されることが望ましく、少なくとも一対の爪部5aが、他の爪部5bよりも管軸方向の長さが長いことが望ましい。なお、後述するガイド治具1の取り付け性に問題がなければ、爪部5aのみ又は爪部5bのみであってもよい。
【0039】
内筒部3の一端側(爪部5a、5bの基部側であって、爪部5a、5bと内筒部3との接続部側)には、径方向に広がっているフランジ部7が形成される。フランジ部7は、爪部5a、5bの基部側の径(
図3(a)のC)よりも大きな径を有する。
【0040】
ここで、爪部5a、5bは、それぞれ基部側から先端部側に行くにつれて徐々に外に広がるように形成される。すなわち、複数の爪部5a、5bの外周面を結ぶ仮想円の外径が、フランジ部7が形成される側から、フランジ部7が形成されていない方向に向かって、徐々に大きくなるように形成される。このため、爪部5a、5bの基部側の外接円の径(図中C)が最も小さく、爪部5a、5bの先端側の外接円の径(図中D)が最も大きくなる。
【0041】
なお、一般的なコアカッタでは、φ100mm程度の孔を形成する場合、φ3mm程度の誤差が生じる恐れがある。このため、貫通孔の内径誤差に対応できるように、最小外径Cと最大外径Dとの差はφ3~4mm程度とすることが望ましい。なお、最小外径Cと最大外径Dとの外径差については、形成する貫通孔の径にもよるため、ガイド治具1のサイズに応じて適宜設定される。
【0042】
また、
図2(a)に示すように、フランジ部7の背面側であって、内筒部3の外周には、必要に応じて、周方向に所定の間隔で複数のリブ9が形成される。それぞれのリブ9は、内筒部3の外周部において径方向に突出し、内筒部3の管軸方向に沿って形成される。なお、リブ9の頂部における外接円の外径は、爪部5a、5bの最小外径Cと略一致する。
【0043】
なお、ガイド治具1の材質は特に限定されないが、例えば、樹脂製や金属製などでよい。
【0044】
次に、ガイド治具1を用いた壁体への貫通孔の形成方法について説明する。壁体は、木板と、木板の表面に貼り付けられた透湿防水シートと、木板と離間して配置される外壁とからなる。壁体の詳細は後述する。
【0045】
本実施形態では、
図4(a)に示すように、外壁19aを木板等の前面に設置する前に外壁19aを水平方向に倒した状態で作業を行うことができる。まず、
図4(b)に示すように、外壁19aを水平方向に倒した状態で、外壁19aの所定の位置に第1コアカッタであるコアカッタ23aによって、外壁19aを貫通する第1の貫通孔21aを形成する。なお、倒した状態で作業を行うことができるため、コアカッタ23aを外壁19aに垂直に当てるのが容易である。また、外壁19aの設置前の施工であれば、汚れ防止の養生も容易である。
【0046】
次に、
図5(a)に示すように、外壁19aを含めて壁体19を設置する。壁体19は、屋外側に配置される外壁19aと、室内側に配置される木板19bと、木板19bの表面に貼り付けられる透湿防水シート19cとからなる。外壁19aと木板19bとは互いに離間して配置される。なお、木板19bは、例えば合板である。すなわち、以降の工程は、外壁19aを木板19bの外面側に設置した状態で行う。
【0047】
次に、
図5(b)に示すように、貫通孔21aにガイド治具1を取り付ける。この際、まず、相対的に長さの長い爪部5aを貫通孔21aに挿入して、ガイド治具1の位置決めを行い、その後、長さの短い爪部5bを貫通孔21aに挿入することで、ガイド治具1の挿入が容易である。フランジ部7が外壁19aに接するまで、貫通孔21aにガイド治具1を挿入することで、爪部に5a、5bよって、ガイド治具1を貫通孔21aに固定することができる。
【0048】
図6は、ガイド治具1が貫通孔21aに固定された状態を示す図であり、
図7(a)は、
図6の外側からみた図、
図7(b)は、
図6の内側からみた図(木板19b及び透湿防水シート19cの透過図)である。
図6に示すように、ガイド治具1は、透湿防水シート19cと接触しないように、外壁19aに固定される。すなわち、フランジ部7から最も長い爪部5aの先端までの長さは、予め外壁19aの表面と、透湿防水シート19cまでの長さよりも十分に短く設定される。
【0049】
なお、前述したように、長さの長い爪部5aには、前面にマーク11が形成されているため、ガイド治具1を貫通孔21aに挿入する際に、作業が容易である。例えば、マーク11が上方に来るようにしてガイド治具1を貫通孔21aに挿入すると、ガイド治具1の高さ方向の位置が決まるため、作業が容易である。
【0050】
なお、前述したように、貫通孔21aの内径には誤差が生じるが、爪部5a、5bは弾性変形可能であるため、貫通孔21aの内径が誤差範囲内で小さい場合でも、爪部5a、5bが変形することで、ガイド治具1を貫通孔21aに挿入することができる。また、貫通孔21aの内径が誤差範囲内で大きい場合でも、爪部5a、5bの先端部の外径が大きいため、ガイド治具1を貫通孔21aに固定することができる。
【0051】
なお、
図7(b)に示すように、内筒部3の外周には、複数のリブ9が形成される。このため、例えば爪部5a、5bの一部を大きく変形させようとしても、リブ9と貫通孔21aの内面とのクリアランス以上はガイド治具1が貫通孔21a内で動くことがない。このため、貫通孔21aとガイド治具1とに軸ずれが生じることを抑制することができる。
【0052】
次に、
図8(a)に示すように、ガイド治具1の内筒部3に、コアカッタ23aよりも径の小さな第2コアカッタであるコアカッタ23bを挿入する。内筒部3の内径は、コアカッタ23bの外径よりもわずかに大きく形成されるが、そのクリアランスを小さくすることで、コアカッタ23bのガイドとして機能させることができる。
【0053】
この状態から、
図8(b)に示すように、コアカッタ23bにより、木板19b(透湿防水シート19c)に第2の貫通孔21bを形成する。
図9は、外壁19aに貫通孔21aが形成され、木板19bに貫通孔21bが形成された状態を示す図である。このようにすることで、木板19bに、貫通孔21aと同軸上であって、貫通孔21aよりも小径の貫通孔21bを形成することができる。
【0054】
以上のように、外壁19aと木板19bに、それぞれ貫通孔21a、21bを同一軸上に形成することで、公知の壁部貫通部材(例えば、特開2019-100485号公報記載の壁部貫通部材)を壁体19へ設置することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、外壁19aにガイド治具1を装着して貫通孔21bを木板19bに形成するため、外壁19aの貫通孔21aと木板19bの貫通孔21bとを容易に同軸上に形成することができる。この際、先にドリルで芯合わせの孔を形成する必要がないため、作業が容易である。
【0056】
また、外壁19aを設置する前に貫通孔21aを形成することができるため、外壁19aを倒して作業を行うことができる。ここで、コアカッタ23aを水平に維持して貫通孔21aを形成する場合と比較して、コアカッタ23aを鉛直方向に維持して貫通孔21aを形成する作業の方が、作業が容易である。
【0057】
また、外壁19aを倒して作業を行うことで、貫通孔21aの形成時に出る切粉が、他の部材に付着することを防ぐとともに、外壁19aの汚れ防止の養生も容易である。このため、貫通孔21a形成後の清掃が容易である。
【0058】
また、ガイド治具1を貫通孔21aに装着する際に、一部の爪部5aを他の爪部5bに対して長くすることで、まず、爪部5aによって大まかに位置合わせをした後に、爪部5bを挿入することができる。このため、ガイド治具1を貫通孔21aへ装着するのが容易である。
【0059】
また、長さの長い爪部5aの位置を、正面からでもわかるように、マーク11を形成することで、ガイド治具1の向きを容易に把握することができるため、作業が容易となる。
【0060】
また、爪部5a、5bの外接円の外径が、先端に行くにつれて大きくなるように形成することで、貫通孔21aのサイズに多少のばらつきが生じた場合でも、確実に爪部5a、5bによってガイド治具1を貫通孔21aに固定することができる。この際、複数の爪部5a、5bによって、貫通孔21aとガイド治具1の軸を合わせることができる。
【0061】
また、複数のリブ9を形成し、リブ9の外接円の外径を、貫通孔21aに挿入可能とすることで、リブ9によってガイド治具1の軸ずれを抑制することができる。
【0062】
また、貫通孔21aよりも径の大きなフランジ部7を形成することで、ガイド治具1の挿入代を容易に把握することができる。また、ガイド治具1を貫通孔21aに固定した際に、ガイド治具1と透湿防水シート19cとの間に隙間を形成することで、透湿防水シート19cが木板19bへ押し付けられることを防ぐことができる。このため、木板19bの熱によって、透湿防水シート19cが溶けてしまうことを抑制することができる。
【0063】
以上添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………ガイド治具
3………内筒部
5a、5b………爪部
7………フランジ部
9………リブ
11……マーク
19………壁体
19a………外壁
19b………木板
19c………透湿防水シート
21a、21b………貫通孔
23a、23b………コアカッタ