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特許7129490吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品、及び液吸引力測定方法
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  • 特許-吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品、及び液吸引力測定方法 図1
  • 特許-吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品、及び液吸引力測定方法 図2
  • 特許-吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品、及び液吸引力測定方法 図3
  • 特許-吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品、及び液吸引力測定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品、及び液吸引力測定方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220825BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20220825BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEY
B01J20/26 D
A61F13/53 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020559331
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048823
(87)【国際公開番号】W WO2020122219
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018232724
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232843
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232847
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232726
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232728
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232848
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232850
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232851
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232856
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232857
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019014531
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019055302
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】西田 萌
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170605(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038324(WO,A1)
【文献】特開2006-176570(JP,A)
【文献】国際公開第2004/101628(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/063825(WO,A1)
【文献】特開2018-039944(JP,A)
【文献】特開2009-019065(JP,A)
【文献】特開2003-088552(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28、99/00
B01J 20/26-20/28
A61F 13/53
C08F 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むエチレン性不飽和単量体の重合により形成された架橋重合体と、シリカ粒子とを含み、シリカ粒子含有量が0.3質量%以下である、吸水性樹脂粒子であり、
無加圧DW3分値が14ml/g以上45ml/g以下であり、かつ下記方法で測定される液吸引力3分値が13ml/g以上であり、生理食塩水保水量が40g/g以上である吸水性樹脂粒子。
液吸引力測定方法:メッシュ状の底部を備える内径26mmの円筒形容器内に、0.3gの吸水性樹脂粒子を均一に散布する。生理食塩水40gを有する容器内に前記円筒形容器を載置し、前記円筒形容器の底部から前記吸水性樹脂粒子に生理食塩水を30分間吸収させ、膨潤ゲルを得る。前記円筒形容器内の前記膨潤ゲルの上に、更に吸水性樹脂粒子0.3gを均一に散布した状態で測定する無加圧DWを液吸引力とする。
【請求項2】
前記液吸引力3分値が15ml/g以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項5】
おむつである、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
吸水性樹脂粒子に試験液を吸収させ、膨潤ゲルを得ることと、
前記膨潤ゲルからなるゲル層上に、前記吸水性樹脂粒子と同種の吸水性樹脂粒子を載置して、ゲル層及び吸水性樹脂粒子を含む試験用サンプルを得ることと、
前記試験用サンプルを評価対象とする無加圧DWを測定することとを含む、液吸引力の測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の測定方法によって吸水性樹脂粒子の液吸引力を評価することを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品及び液吸引力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、衛生用品の分野などで使用されており、具体的には、おむつなどの吸収性物品に含まれる吸収体の材料として使用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6351505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
おむつ等の吸収性物品は、尿、経血等の体液を吸収及び保持する吸収体を備えている。吸収体は一般的に、吸水性樹脂粒子と、パルプ等の繊維状物とを含んでおり、繊維状物同士、又は繊維状物と吸水性樹脂粒子とが絡み合っている。近年では吸収体中の繊維状物の割合が低いものが好まれる傾向にある。吸収体中の繊維状物の割合が低い場合、例えば吸収性物品装着中の体重の負荷等により、吸液後の吸収体に剪断力がかかると、吸収体が内部で断裂する等、吸収体の変形が生じることがある。断裂が生じた吸収体は、吸収性能を十分に発揮することができない。
【0005】
本発明は、吸収体における吸液後の断裂の発生を抑制することができる吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸水性樹脂粒子は、無加圧DW3分値が14ml/g以上であり、かつ下記方法で測定される液吸引力3分値が11ml/g以上である。
液吸引力測定方法:メッシュ状の底部を備える内径26mmの円筒形容器内に、0.3gの吸水性樹脂粒子を均一に散布する。生理食塩水40gを有する容器内に上記円筒形容器を載置し、上記円筒形容器の底部から上記吸水性樹脂粒子に生理食塩水を30分間吸収させ、膨潤ゲルを得る。上記円筒形容器内の上記膨潤ゲルの上に、更に吸水性樹脂粒子0.3gを均一に散布した状態で測定する無加圧DWを液吸引力とする。
【0007】
上記吸水性樹脂粒子は、シリカ粒子含有量が1.8質量%以下であることが好ましい。
【0008】
本発明はまた、上記吸水性樹脂粒子を含有する吸収体を提供する。
【0009】
本発明はまた、上記吸収体を備える吸収性物品を提供する。
【0010】
上記吸収性物品は、おむつであってよい。
【0011】
本発明の液吸引力測定方法は、吸水性樹脂粒子に試験液を吸収させ、膨潤ゲルを得ることと、上記膨潤ゲルからなるゲル層上に、上記吸水性樹脂粒子と同種の吸水性樹脂粒子を載置して、ゲル層及び吸水性樹脂粒子を含む試験用サンプルを得ることと、上記試験用サンプルを評価対象とする無加圧DWを測定することとを含む。
【0012】
本発明はまた、上記測定方法によって吸水性樹脂粒子の液吸引力を評価することを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、吸収体における吸液後の断裂の発生を抑制することができる吸水性樹脂粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】吸収性物品の一例を示す断面図である。
図2】無加圧DWの測定方法を示す模式図である。
図3】液吸引力測定方法の一例を示す模式図である。
図4】吸収体断裂時間の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0017】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、無加圧DW3分値が14ml/g以上であり、かつ後述の方法で測定される液吸引力3分値が11ml/g以上である。
【0018】
無加圧DW(Demand Wettability)は、吸水性樹脂粒子が、無加圧下で、生理食塩水(濃度0.9質量%のNaCl水溶液、以下同様)と接触してから所定の時間経過するまでに生理食塩水を吸収した量で表される吸引性能を表す指標である。無加圧DWは、生理食塩水の吸収前の吸水性樹脂粒子1g当たりの吸収量(ml)で表される。無加圧DWの3分値は、吸水性樹脂粒子が生理食塩水と接触してから3分後の吸収量を意味する。無加圧DWを測定する対象は吸水性樹脂粒子の乾燥物である。
【0019】
無加圧DW3分値は、20ml/g以上、25ml/g以上又は30ml/g以上であってもよい。無加圧DW3分値は、例えば、55ml/g以下、50ml/g以下、45ml/g以下、40ml/g以下又は35ml/g以下であってもよい。吸水性樹脂粒子の無加圧DW3分値は、14~55ml/g、14~50ml/g、14~45ml/g、14~40ml/g、又は20~40ml/gであってよい。無加圧DW3分値は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0020】
吸水性樹脂粒子の液吸引力は、本発明者らが新たに見出した測定方法により測定される値である。液吸引力の測定方法は、無加圧DW測定方法をベースとし、測定対象として吸水性樹脂粒子の乾燥物と、吸水後の膨潤ゲルとを組み合わせて用いることを特徴とする。無加圧DW測定方法では、吸水性樹脂粒子の乾燥物に直接試験液を吸収させるが、液吸引力の測定においては、吸水性樹脂粒子の乾燥物と試験液との間に、同種の吸水性樹脂粒子が試験液を吸収してなる膨潤ゲルの層(ゲル層)を介する。
【0021】
液吸引力は、具体的には次の方法によって測定される。メッシュ状の底部を備える内径26mmの円筒形容器内に、0.3gの吸水性樹脂粒子を均一に散布する。試験液である生理食塩水40gを有する容器内に上記円筒形容器を載置し、上記円筒形容器の底部から上記吸水性樹脂粒子に生理食塩水を30分間吸収させ、膨潤ゲルを得る。円筒形容器内の上記膨潤ゲルの上に、更に別の吸水性樹脂粒子(乾燥物)0.3gを均一に散布する。膨潤ゲル及び膨潤ゲル上の吸水性樹脂粒子の乾燥物を測定対象として、無加圧DW測定方法と同様に測定される、吸水性樹脂粒子(乾燥物)1g当たりの生理食塩水吸収量(ml)を液吸引力とする。液吸引力の3分値は、膨潤ゲルを通液した生理食塩水が膨潤ゲル上の吸水性樹脂粒子の乾燥物に接触してから3分後の吸収量を意味する。
【0022】
吸水性樹脂粒子の液吸引力3分値は、12ml/g以上、13ml/g以上、15ml/g以上又は17ml/g以上であってもよい。吸水性樹脂粒子の液吸引力3分値は、例えば、25ml/g以下、23ml/g以下、20ml/g以下であってもよい。吸水性樹脂粒子の液吸引力3分値は、11~25ml/g、12~25ml/g、13~25ml/g、15~25ml/g、又は15~23ml/gであってよい。液吸引力3分値が上記範囲であると、吸収体の断裂発生をより抑制できる傾向にあるため好ましい。
【0023】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、生理食塩水に対する高い吸水能を有することができる。吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水量は、30g/g以上、32g/g以上、35g/g以上、37g/g以上、39g/g以上、又は40g/g以上であってよい。吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、60g/g以下、55g/g以下、50g/g以下、48g/g以下、又は45g/g以下であってよい。吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、30~60g/g、30~55g/g、30~50g/g、30~45g/g、32~45g/g、35~45g/g、35~42g/g、又は32~42g/gであってよい。生理食塩水保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0024】
吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250~850μm、300~700μm、又は、300~600μmであってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により重合体粒子が得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0025】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。
【0026】
上記単量体を重合させる方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0027】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を含有する場合には、当該アミノ基は4級化されていてもよい。上記単量体が有するカルボキシル基及びアミノ基等の官能基は、後述する表面架橋工程において架橋が可能な官能基として機能しうる。これらのエチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0028】
これらの中でも、工業的に入手が容易という観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド並びにN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びにアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性をより高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが更に好ましい。
【0029】
単量体としては、上記のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が一部使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上記エチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対し70~100モル%であることが好ましい。中でも(メタ)アクリル酸及びその塩が、単量体全量に対し70~100モル%であることがより好ましい。
【0030】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いるのが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単量体水溶液という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、通常20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、25~70質量%が好ましく、30~55質量%がより好ましい。使用される水は、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0031】
単量体水溶液は、用いられるエチレン性不飽和単量体が酸基を含む場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、保水量などの吸水特性をより高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%、好ましくは50~90モル%、より好ましくは60~80モル%である。アルカリ性中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いられてもよい。上述のアルカリ性中和剤は単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上記単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0032】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下で、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いて、エチレン性不飽和単量体の重合が行われる。
【0033】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味するものとする。以下同じ。)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、W/O型逆相懸濁の状態が良好で、吸水性樹脂粒子が好適な粒子径で得られやすく、工業的に入手が容易であるという観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。さらに、得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性が向上するという観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステルを含むことがより好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0034】
界面活性剤の量は、使用量に対する効果が十分得られ、かつ経済的である観点から、エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して0.05~10質量部であることが好ましく、0.08~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることが更に好ましい。
【0035】
また、上述した界面活性剤と共に、高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの高分子系分散剤の中でも、特に、単量体の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体を用いることが好ましい。これらの高分子系分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0036】
高分子系分散剤の量は、使用量に対する効果が十分得られ、かつ経済的である観点から、エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して0.05~10質量部であることが好ましく、0.08~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることが更に好ましい。
【0037】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩が好ましい。これらラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005~0.01モルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.00005モル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。使用量が0.01モル以下であると、急激な重合反応が起こらない傾向がある。
【0039】
上記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0040】
重合反応の際には、重合に用いるエチレン性不飽和単量体水溶液の中に、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0041】
また、吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いるエチレン性不飽和単量体水溶液の中に、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を用いることができる。なお、重合時の撹拌速度が同じであれば、エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度が高いほど得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0042】
炭化水素分散媒は、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、及び炭素数6~8の脂環族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。工業的に入手が容易であり、かつ品質が安定している観点から、炭化水素分散媒は、n-ヘプタン、シクロヘキサン、又はこれらの両方を含んでいてもよい。また、同観点から、上記炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n-ヘプタン及び異性体の炭化水素75~85%含有)を用いてもよい。
【0043】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすくする観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30~1000質量部が好ましく、40~500質量部がより好ましく、50~300質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0044】
通常、重合の際に自己架橋による内部架橋が生じ得るが、更に内部架橋剤を用いることで内部架橋を施し、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御してもよい。用いられる内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上記ポリオール類とマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N’’-トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の、反応性官能基を2個以上有する化合物等が挙げられる。これらの内部架橋剤の中でも、ポリグリシジル化合物を用いることが好ましく、ジグリシジルエーテル化合物を用いることがより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルを用いることが特に好ましい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0045】
内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量を示すようにする観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0~0.03モルであることが好ましく、0.00001~0.01モルであることがより好ましく、0.00002~0.005モルであることが更に好ましい。
【0046】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤等の成分を含む水相と、炭化水素系分散媒、界面活性剤、必要に応じて高分子系分散剤等の成分を含む油相とを混合して、撹拌下で加熱し、油中水系において、逆相懸濁重合を行うことができる。
【0047】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤、必要に応じて高分子系分散剤の存在下に、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤や高分子系分散剤の添加時期は、単量体水溶液添加の前後どちらであってもよい。
【0048】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒量を低減しやすいという観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に、単量体水溶液を分散させた後に、更に界面活性剤を分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0049】
このような逆相懸濁重合を、1段、又は2段以上の多段で行うことが可能である。また、生産性を高める観点から2~3段で行うことが好ましい。
【0050】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述したラジカル重合開始剤や内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述したエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0051】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めるとともに、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20~150℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5~4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0052】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に架橋剤を添加して加熱することで、重合後架橋を施してもよい。重合後架橋を行なうことで含水ゲル状重合体の架橋度を高めて、吸水特性をより好ましく向上させることができる。
【0053】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
重合後架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることによって好適な吸水特性を示すようにする観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0~0.03モルであることが好ましく、0~0.01モルであることがより好ましく、0.00001~0.005モルであることが更に好ましい。
【0055】
重合後架橋の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時及び重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋の架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。
【0056】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体より水分を除去するために、乾燥を行なう。乾燥により、エチレン性不飽和単量体の重合体を含む重合体粒子が得られる。乾燥方法としては、例えば(a)上記含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0057】
吸水性樹脂粒子の粒子径の制御は、例えば、重合反応時の撹拌機の回転数を調整することによって、あるいは重合反応後、又は乾燥の初期において、粉末状無機凝集剤を系内に添加することによって行うことができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。粉末状無機凝集剤の例としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられ、中でも凝集効果の観点から、シリカ、酸化アルミニウム、タルク又はカオリンが好ましい。
【0058】
逆相懸濁重合において、粉末状無機凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に、粉末状無機凝集剤を予め分散させてから、撹拌下の含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合する方法が好ましい。
【0059】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われることが好ましい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5~50質量%である時点が好ましく、10~40質量%である時点がより好ましく、15~35質量%である時点が更に好ましい。
【0060】
含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の水性液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、粉末状無機凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0061】
表面架橋を行うための表面架橋剤としては、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物がより好ましい。これらの表面架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
表面架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより好適な吸水特性を示すようにする観点から、通常、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001~0.02モル、好ましくは0.00005~0.01モル、より好ましくは、0.0001~0.005モルの比である。
【0063】
重合体粒子の表面部分における架橋密度を十分に高め、吸水性樹脂粒子のゲル強度を高める観点から、表面架橋剤の使用量は0.00001モル以上であることが好ましい。また、液吸引力を高めつつ、吸水性樹脂粒子の保水能を高くする観点から0.02モル以下であることが好ましい。
【0064】
表面架橋反応後、公知の方法により、水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0065】
重合体粒子は、無加圧DW3分値及び液吸引力を高める観点から、内部架橋剤量に対する外部架橋剤量の比(以下、「架橋比率」ともいう。)は、10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。架橋比率は例えば100以下、80以下、60以下、40以下、35以下、30以下又は25以下であってよい。なお、内部架橋剤量は、重合体粒子の製造に用いた、1回又は複数回添加される内部架橋剤の合計量(ミリモル)であり、外部架橋剤量は、重合体粒子の製造に用いた重合後架橋剤量と表面架橋剤量との合計量(ミリモル)である。
【0066】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、無機粉末、界面活性剤、酸化剤、還元剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、ラジカル連鎖禁止剤、酸化防止剤、抗菌剤、消臭剤、ゲル安定剤、流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。
【0067】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、無機粒子を含むことが好ましい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。非晶質シリカは、親水性非晶質シリカであってよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径が、0.1~50μm、0.5~30μm、又は1~20μmであってもよい。ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。無機粒子の添加量が上記範囲内であることによって、吸水特性が良好である吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0068】
例えば、重合体粒子100質量部に対し、無機粒子として0.05~5質量部の非晶質シリカを添加することで、吸水性樹脂粒子の流動性を向上させることができる。吸水性樹脂粒子が無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。
【0069】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸収体の断裂発生をより抑制する観点から、シリカ粒子含有量が1.8質量%以下であることが好ましい。シリカ粒子含有量は、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.5質量%以下又は0.3質量%以下であってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子のシリカ粒子含有量は、例えば、0.05質量%以上又は0.1質量%以上であってよい。
【0070】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、尿、血液等の体液の吸収性に優れており、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、タンポン等の衛生用品、ペットシート、犬又は猫のトイレ配合物等の動物排泄物処理材などの分野に応用することができる。
【0071】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸収体に好適に用いることができる。本実施形態に係る吸収体は、吸水性樹脂粒子を含む。吸収体における吸水性樹脂粒子の含有量は、吸収体が吸収性物品に使用された際に十分な液体吸収性能を得る観点から、吸収体の1平米あたり100~1000g(すなわち100~1000g/m)であることが好ましく、より好ましくは150~800g/m、更に好ましくは200~700g/mである。吸収性物品としての十分な液体吸収性能を発揮させ、特に液体漏れを抑制する観点から、上記含有量は100g/m以上であることが好ましい。ゲルブロッキング現象の発生を抑制し、吸収性物品として液体の拡散性能を発揮させ、液体の浸透速度を更に改善する観点から、上記含有量は1000g/m以下であることが好ましい。
【0072】
吸収体は、吸水性樹脂粒子に加えて、さらに、例えば繊維状物を備えていてよい。吸収体は、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を含む混合物であってよい。吸収体における、吸水性樹脂粒子の質量割合は、吸水性樹脂粒子及び繊維状物の合計に対し、2質量%~100質量%であってよく、10質量%~80質量%であることが好ましく、20質量%~70質量%であることがより好ましい。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された形態であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた形態であってもよく、その他の形態であってもよい。
【0073】
繊維状物としては、例えば、微粉砕された木材パルプ、コットン、コットンリンター、レーヨン、セルロースアセテート等のセルロース系繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維が挙げられる。また、繊維状物は、上述の繊維の混合物でもよい。
【0074】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、例えば、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸収体に用いた際の保形性に優れるため、接着性バインダー使用量を低減することができる。
【0075】
熱融着性合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等の全融型バインダー、ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイドや芯鞘構造からなる非全融型バインダーが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着する。ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との配合物が挙げられる。
【0076】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2ーエチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つ以上の単量体の重合物が挙げられる。これら接着性バインダーは、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0077】
本実施形態に係る吸収体は、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、顔料、染料、抗菌剤、香料、粘着剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。これらの添加剤により、吸収体に種々の機能を付与することができる。吸水性樹脂粒子が無機粒子を含む場合、吸収体は吸水性樹脂粒子中の無機粒子とは別に無機粉末を含んでいてもよい。無機粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト、カオリン、クレイ等が挙げられる。
【0078】
本実施形態に係る吸収体の形状は、特に限定されず、例えばシート状であってよい。吸収体の厚さ(例えば、シート状の吸収体の厚さ)は、例えば0.1~20mm、0.3~15mmであってよい。
【0079】
本実施形態に係る吸収性物品は、吸収体のほかに、例えば、コアラップ、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシートを備えていてよい。コアラップは、吸収体を保形するものである。液体透過性トップシートは、吸液対象の液体が浸入する側の最外部に配置されるものである。液体不透過性バックシートは、吸液対象の液体が浸入する側とは反対側の最外部に配置されるものである。
【0080】
吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生用品(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0081】
図1は、吸収性物品の一例を示す断面図である。図1に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性トップシート30と、液体不透過性バックシート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性バックシート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び、液体透過性トップシート30がこの順に積層している。図1において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。
【0082】
吸収体10は、吸水性樹脂粒子10aと、繊維状物を含む繊維層10bと、を有する。吸水性樹脂粒子10aは、繊維層10b内に分散している。
【0083】
コアラップ20aは、吸収体10に接した状態で吸収体10の一方面側(図1中、吸収体10の上側)に配置されている。コアラップ20bは、吸収体10に接した状態で吸収体10の他方面側(図1中、吸収体10の下側)に配置されている。吸収体10は、コアラップ20aとコアラップ20bとの間に配置されている。
【0084】
コアラップ20a及びコアラップ20bは、例えば、吸収体10と同等の大きさの主面を有している。コアラップを用いることにより、吸収体の保形性を維持し、吸収体を構成する吸水性樹脂粒子等の脱落や流動を防止することができる。コアラップとしては、例えば、不織布、織布、ティッシュ、液体透過孔を有する合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられ、経済性の観点から、粉砕パルプを湿式成形してなるティッシュが好ましく用いられる。
【0085】
液体透過性トップシート30は、吸収対象の液体が浸入する側の最外部に配置されている。液体透過性トップシート30は、コアラップ20aに接した状態でコアラップ20a上に配置されている。液体不透過性バックシート40は、吸収性物品100において液体透過性トップシート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性バックシート40は、コアラップ20bに接した状態でコアラップ20bの下側に配置されている。液体透過性トップシート30及び液体不透過性バックシート40は、例えば、吸収体10の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性トップシート30及び液体不透過性バックシート40の外縁部は、吸収体10及びコアラップ20a,20bの周囲に延在している。
【0086】
液体透過性トップシート30としては、不織布、多孔質シートなどが挙げられる。不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。なかでも、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布が好ましく用いられる。
【0087】
液体透過性トップシート30の構成素材としては、当該技術分野で公知の樹脂又は繊維を用いることができ、吸収性物品に用いられた際の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、レーヨン、その他の合成樹脂又は合成繊維、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維などが挙げられる。構成素材としては、液体透過性トップシート30の強度を高める等の観点から、合成繊維が好ましく用いられ、なかでもポリオレフィン、ポリエステルであることが好ましい。これらの素材は、単独で用いられてもよく、2種以上の素材を組み合わせて用いられてもよい。
【0088】
液体透過性トップシート30に用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能を向上させる観点から、適度な親水性を有していることが望ましい。当該観点から、国際公開第2011/086843号に記載の「不織布の親水度」(紙パルプ試験方法No.68(2000)に準拠)に従って測定したときの親水度が、5~200のものが好ましく、10~150のものがより好ましい。このような親水性を有する不織布は、上述の不織布のうち、レーヨン繊維のように素材自身が適度な親水度を示すものを用いたものでもよく、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維に、公知の方法で親水化処理し、適度な親水度を付与したものを用いたものであってもよい。
【0089】
化学繊維の親水化処理の方法としては、例えば、スパンボンド不織布において、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものをスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、又は疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を得た後に親水化剤を含浸させる方法等が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等が用いられる。
【0090】
液体透過性トップシート30に用いられる不織布は、吸収性物品に良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与すること、並びに吸収性物品の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きいことが好ましい。不織布の目付量は、好ましくは5~200g/mであり、より好ましくは8~150g/mであり、更に好ましくは10~100g/mである。また、不織布の厚さは、20~1400μmであることが好ましく、50~1200μmであることがより好ましく、80~1000μmであることが更に好ましい。
【0091】
液体不透過性バックシート40は、吸収体10に吸収された液体がバックシート40側から外部へ漏れ出すのを防止する。液体不透過性バックシート40には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂を主体とした液不透過性フィルム、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合された複合フィルム、耐水性のメルトブローン不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布などを用いることができる。吸収性物品の着用感を損なわないよう、柔軟性を確保する観点から、バックシート40は、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした目付量10~50g/mの樹脂フィルムを使用することができる。また、通気性素材を用いた場合、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することもできる。
【0092】
吸収体10、コアラップ20a,20b、液体透過性トップシート30、及び、液体不透過性バックシート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。また、コアラップ20a,20bを用いて吸収体10を保形する方法は、特に限定されず、図1に示すように複数のコアラップにより吸収体が挟持されていてよく、1枚のコアラップにより吸収体が被覆されていてもよい。
【0093】
吸収体10は、液体透過性トップシート30に接着されていてもよい。吸収体10と液体透過性トップシート30とを接着することで、液体がより円滑に吸収体に導かれるため、液体漏れ防止により優れた吸収性物品が得られやすい。吸収体10がコアラップにより挟持又は被覆されている場合、少なくともコアラップと液体透過性トップシート30とが接着されていることが好ましく、更にコアラップと吸収体10とが接着されていることがより好ましい。接着方法としては、例えば、ホットメルト接着剤を液体透過性トップシート30に対してその幅方向へ所定間隔で縦方向ストライプ状、スパイラル状等の形状に塗布して接着する方法、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びその他の水溶性高分子から選ばれる水溶性バインダーを用いて接着する方法等が挙げられる。また、吸収体10が熱融着性合成繊維を含む場合は、その熱融着によって接着する方法を採用してもよい。
【0094】
本発明はまた、液吸引力の測定方法を提供する。本実施形態に係る液吸引力測定方法は、吸水性樹脂粒子に飽和量の試験液を吸収させ、膨潤ゲルを得ることと、当該膨潤ゲルからなるゲル層上に、上記吸水性樹脂粒子と同種の吸水性樹脂粒子(乾燥物)を載置して、ゲル層及び吸水性樹脂粒子を含む試験用サンプルを得ることと、当該試験用サンプルを評価対象とする無加圧DWを測定することとを含む。
【0095】
従来の無加圧DW測定方法では、吸水性樹脂粒子(乾燥物)を測定対象として、その静的状態での吸引性能が測定される。つまり、無加圧DW測定方法では、吸水性樹脂粒子の乾燥物に直接試験液を吸収させる。一方、本実施形態に係る液吸引力測定方法は、吸水性樹脂粒子が飽和量の液を吸水し膨潤してなる膨潤ゲルの層(ゲル層)、及び当該ゲル層上に散布された吸水性樹脂粒子(乾燥物)からなる試験用サンプルを評価対象とする。すなわち、本実施形態に係る液吸引力測定方法は、吸水性樹脂粒子の乾燥物と試験液との間に、同種の吸水性樹脂粒子が生理食塩水を吸収してなる膨潤ゲルの層(ゲル層)を介する点で、無加圧DW測定方法と異なる。本実施形態に係る液吸引力測定方法によって測定される値は、上記試験用サンプルのゲル層上に散布された吸水性樹脂粒子(乾燥物)によって吸収される試験液の量(ml)である。
【0096】
試験液は、吸水性樹脂粒子の吸水性能測定に通常用いられる液であってよく、例えば生理食塩水(0.9質量%NaCl水溶液)、イオン交換水、蒸留水、人工尿等であってよい。試験液を試験用サンプルに吸収させる時間は任意の時間であってよく、例えば1分~10分とすることができる。
【0097】
本実施形態に係る液吸引力測定方法により測定される試験液の吸引量は、膨潤ゲルを介して吸水性樹脂粒子の乾燥物が所定時間内に吸収した量であり、膨潤ゲルの通液性が吸引量に影響すると考えられる。したがって、本実施形態に係る液吸引力を測定することで、吸水性樹脂粒子の吸引性及び吸水後の膨潤ゲルの通液性が反映された吸水性能を、総合的に測定することができる。ただし、本実施形態に係る測定方法により測定される液吸引力は、必ずしも従来の通液性評価であるSFC(Saline Flow Conductivity)又は上述した従来の無加圧DWの値と相関するものではなく、吸水性樹脂粒子の性質を示す新たな項目として好適である。
【0098】
膨潤ゲル上に吸水性樹脂粒子の乾燥物が載置された試験用サンプルは、吸収性物品が使用された際における吸収体内部の吸水性樹脂粒子の状態を擬似的に再現したものである。そのため、このような試験用サンプルを用いれば、より実態に則した状態で吸水性樹脂粒子を評価することができる。
【0099】
上記液吸引力測定方法は、吸水性樹脂粒子を製造する際に、得られた吸水性樹脂粒子の吸水特性を評価する方法として用いることができる。したがって、本発明は、上記測定方法によって吸水性樹脂粒子の液吸引力を評価することを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する。上記製造方法は、例えば、液吸引力の所定時間値が所定値以上である吸水性樹脂粒子を選別することを含んでもよい。
【実施例
【0100】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
<吸水性樹脂粒子の製造>
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径11cm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン293gをとり、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを添加した。フラスコ内の反応液を撹拌しつつ80℃まで昇温して高分子系分散剤を溶解した。その後、反応液を50℃まで冷却した。
【0102】
一方、内容積300mlのビーカーに、エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)をとり、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、ラジカル重合剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の水性液を調製した。
【0103】
調製した水性液を上記セパラブルフラスコ内の反応液に添加して10分間撹拌した。次いで、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(HLB:3、三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.736gを加熱溶解した界面活性剤溶液を、反応液に更に添加して、撹拌機の回転数を550rpmとして撹拌しながら系内を窒素で十分に置換した。その後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0104】
一方、別の内容積500mlのビーカーにエチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った。その後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を加えて溶解し、第2段目の水性液を調製した。
【0105】
撹拌機の回転数を1000rpmとして撹拌しながら、上記のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した。次いで、上記第2段目の水性液の全量を、上記セパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で30分間置換した。その後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行った。その後、重合後架橋のための架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.580g(0.067ミリモル)を添加し、含水ゲル状重合体を得た。
【0106】
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体を含む反応液に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを撹拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、253.9gの水を系外へ抜き出した。その後、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液9.93g(1.14ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持した。
【0107】
その後、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって、重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させ、重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S、親水性)を重合体粒子と混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を231.1g得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は357μmであった。内部架橋剤量に対する外部架橋剤量の比(架橋比率)は、21.1であった。なお、内部架橋剤量は、1回又は2回添加される内部架橋剤の合計量(ミリモル)であり、外部架橋剤量は、重合後架橋剤量と表面架橋剤量との合計量(ミリモル)である。
【0108】
[実施例2]
共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を259.4gに変更したこと、表面架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を6.30g(0.723ミリモル)に変更したこと、及び、重合体粒子(乾燥品)に対する非晶質シリカの混合量を0.1質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。架橋比率は13.9であった。
【0109】
[実施例3]
第1段目の水性液の調製において、ラジカル重合剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)を追加し、かつラジカル重合剤としての過硫酸カリウムの量を0.018g(0.068ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの量を0.0045g(0.026ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液の調製において、ラジカル重合剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)を追加し、かつラジカル重合剤としての過硫酸カリウムの量を0.026g(0.095ミリモル)に変更したこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を241.6gに変更したこと、表面架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を6.40g(0.735ミリモル)に変更したこと、及び、重合体粒子(乾燥品)に対する非晶質シリカの混合量を0.2質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子229.6gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は342μmであった。架橋比率は30.8であった。
【0110】
[実施例4]
共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を248.2gに変更したこと以外は実施例3と同様にして、吸水性樹脂粒子231.1gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。架橋比率は30.8であった。
【0111】
[比較例1]
重合体粒子(乾燥品)に対する非晶質シリカの混合量を0.5質量%に変更したこと以外は実施例2と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。架橋比率は13.9であった。
【0112】
[比較例2]
重合体粒子(乾燥品)に対する非晶質シリカの混合量を2.0質量%に変更したこと以外は比較例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。架橋比率は13.9であった。
【0113】
[比較例3]
第2段目の水性液の調製において、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0117g(0.067ミリモル)を添加したこと、重合後架橋のための架橋剤を添加しなかったこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を269.2gに変更したこと、表面架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を1.98g(0.228ミリモル)に変更したこと、及び、重合体粒子(乾燥品)に対する非晶質シリカの混合量を0.1質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子231.0gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は347μmであった。架橋比率は1.8であった。
【0114】
[比較例4]
共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を271.4gに変更したこと、表面架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を6.40g(0.735ミリモル)に変更したこと、及び、重合体粒子(乾燥品)に対する非晶質シリカの混合量を0.5質量%に変更したこと以外は比較例3と同様にして、吸水性樹脂粒子230.6gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。架橋比率は5.9であった。
【0115】
[比較例5]
重合体粒子(乾燥品)に対する非晶質シリカの混合量を2.0質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子231.1gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は357μmであった。架橋比率は21.2であった。
【0116】
[比較例6]
第1段目の水性液の調製において、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの量を0.011g(0.063ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液の調製において、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.013g(0.075ミリモル)を加えたこと、重合後架橋のための架橋剤を添加しなかったこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を275.6gに変更したこと、重合体粒子に対して非晶質シリカを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.3gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。架橋比率は8.3であった。
【0117】
得られた吸水性樹脂粒子について、以下の方法により、生理食塩水保水量、中位粒子径、無加圧DW3分値、液吸引力3分値、及び吸収体断裂性を評価した。なお、本実施例において用いた生理食塩水は0.9質量%NaCl水溶液である。
【0118】
<生理食塩水保水量の測定>
吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500ml容のビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋中に生理食塩水500gをママコができないように一度に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H-122)を用いて1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から生理食塩水保水量を算出した。結果を表1に示す。
生理食塩水保水量(g/g)=[Wa-Wb]/2.0
【0119】
<中位粒子径(粒度分布)の測定>
吸水性樹脂粒子50gを中位粒子径(粒度分布)測定用に用いた。JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。
【0120】
組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0121】
<無加圧DWの測定>
吸水性樹脂粒子の無加圧DWは、図2に示す測定装置を用いて測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。
当該測定装置は、ビュレット部1、導管5、測定台13、ナイロンメッシュシート15、架台11、及びクランプ3を有する。ビュレット部1は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部1はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部1のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0122】
測定は温度25℃、湿度60±10%の環境下で行なわれた。まずビュレット部1のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された生理食塩水50をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。生理食塩水の濃度(0.9質量%)は、NaCl水溶液の質量を基準とする濃度である。ゴム栓23でビュレット管21の開口の密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を0.9質量%食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した生理食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0123】
測定台13上の貫通孔13aの近傍にてナイロンメッシュシート15(100mm×100mm、250メッシュ、厚さ約50μm)を敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置いた。このシリンダーに、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを均一に散布した。その後、シリンダーを注意深く取り除き、ナイロンメッシュシート15の中央部に吸水性樹脂粒子10aが円状に分散されたサンプルを得た。次いで、吸水性樹脂粒子10aが載置されたナイロンメッシュシート15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0124】
ビュレット管21内の生理食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した生理食塩水の量)を0.1ml単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して3分後の生理食塩水50の減量分Wc(g)を読み取った。Wcから、下記式により無加圧DWの3分値を求めた。無加圧DWは、吸水性樹脂粒子10aの1.00g当たりの吸水量である。結果を表1に示す。
無加圧DWの3分値(ml/g)=Wc/1.00
【0125】
<液吸引力の測定>
[測定装置]
吸水性樹脂粒子の液吸引力は、図3に示す測定装置を用いて測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。
当該測定装置は、ビュレット部1、導管5、測定台13、ナイロンメッシュシート15、架台11、及びクランプ3を有する。これらの詳細は、図2に示す無加圧DW測定値におけるものと同様である。
【0126】
測定は温度25℃、湿度60±10%の環境下で行なわれた。まずビュレット部1のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された生理食塩水50をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。生理食塩水の(濃度0.9質量%)は、NaCl水溶液の質量を基準とする濃度である。ゴム栓23でビュレット管21の開口の密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を生理食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した生理食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0127】
[サンプル調製]
下端開口部にナイロンメッシュシート32(250メッシュ)が接着された、内径26mm、外径40mm、高さ140mmのアクリル樹脂製の円筒状容器31の中に、吸水性樹脂粒子0.3gを均一に入れた。内径が約70mmのシャーレの中に高さ2mm、大きさ50×50mmの金網(目開き10メッシュ)を置き、生理食塩水を40g入れた。当該金網の上に、上記吸水性樹脂粒子が入った円筒状容器を置き、吸水性樹脂粒子に生理食塩水を30分間吸収させて膨潤ゲル33を得た。膨潤ゲル33を備える円筒状容器31をシャーレから取り出し、円筒状容器31内の膨潤ゲル33の上に、更に吸水性樹脂粒子10a(乾燥物)0.3gを均一に散布した。
【0128】
[液吸引力の測定]
樹脂粒子の散布後すみやかに、膨潤ゲル33及び吸水性樹脂粒子10aを備える円筒状容器31を、その中心が貫通孔13aの上に位置するように、測定台13上に載置し、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0129】
ビュレット管21内の生理食塩水50の減少量を0.1ml単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して3分後の生理食塩水50の減量分Wd(g)を読み取った。Wdから、下記式により液吸引力の3分値を求めた。液吸引力は、吸水性樹脂粒子10aの1.00g当たりの吸水量である。結果を表1に示す。
液吸引力3分値(ml/g)=Wd/0.3
【0130】
<吸収体断裂性の測定>
[評価用吸収性物品の作製]
有限会社オーテック社製パッドフォーマーを用いて吸水性樹脂粒子10g及び粉砕パルプ6.67gを空気抄造によって均一混合し、大きさ40cm×12cmの吸収体を作製した。大きさ42cm×14cm、目付量16g/mのティッシュペーパーの上に置いた上記吸収体に、霧吹きによりイオン交換水を0.4g散布し、40cm×12cmのティッシュを当該吸収体の上に更に載せて、積層体を作製した。次に、目開き2mmを持つ大きさ62cm×22cmの金網を上記積層体の上に載せ、プレス機(小型エア式プレス機、井元製作所)を用いて0.141MPaの圧力で積層体をプレスした。プレス後、金網を積層体から外した。
【0131】
プレス後の積層体の中心部から長手方向に各々15cmの距離を、ロールカッターで切り取り、長さ30cmにした。当該積層体を、目付量22g/m、34cm×14cmの2枚のポリエチレン製エアスルー型多孔質液体透過シート(以下、「液透過シート」ともいう。)で挟み、ヒートシーラー(富士インパルスシーラー、型番:FI-450-5形、富士インパルス製)により、積層体を挟んだ2枚の液透過シートの4辺を圧着させ、評価用吸収性物品を得た。圧着の際、吸収体からティッシュがはみ出ている部分については、はみ出たティッシュを液透過シートで挟んで圧着した。
【0132】
[試験液の調製]
10Lの容器に適量の蒸留水を入れ、塩化ナトリウム100g、塩化カルシウム・二水和物3.0g及び塩化マグネシウム・六水和物6.0gを添加し、溶解した。次いで、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.25gを添加し、さらに蒸留水を追加して、全体の質量を10kgとした。さらに、少量の青色1号で着色して、断裂性測定用の試験液を調製した。
【0133】
[吸収体断裂時間の測定]
吸収体断裂時間の測定は、温度25±2℃の室内において、図4に示すU字型器具51(奥行き14cm、アクリル製)を用いて行った。U字型器具51の開口幅wは21cm、深さdは18.5cmであり、開口部が上方となるように用いた。U字の底部分に14cm×6.5cmの厚紙52を載せることにより、幅6.5cm×奥行き14cmの平らな底部分を形成した。評価用吸収性物品100’の中心を厚紙52の中央に合わせて、評価用吸収性物品100’をU字型器具51上に置いた。評価用吸収性物品100’の中心に、内径2cm、外径3cm、高さ6.5cm、重量60gの円筒形シリンダー53を置き、25±1℃に調整した80mlの上記試験液をシリンダー53内に投入した。試験液を投入している間は、試験液の液面の高さをシリンダー底から約5cmに維持するように投入し続けた。
【0134】
シリンダー53内に投入した試験液が評価用吸収性物品100’に全て吸収された後、シリンダー53を評価用吸収性物品100’上から外した。試験液の投入開始から3分後、再度シリンダー53を評価用吸収性物品100’の中心に置き、上記同様に、80mlの試験液を投入して評価用吸収性物品100’に吸収させた。
【0135】
一度目の試験液投入開始から6分後に、評価用吸収性物品100’と同じ大きさの厚紙(目付量3500g/m)上に評価用吸収性物品100’を載せ、長手方向の両端を粘着テープで貼り付けることにより評価用吸収性物品100’を厚紙に固定した。密閉後の空気を抜くための1cmの切り込みを3箇所入れたチャック付きポリエチレン製透明袋(40cm×28cm、厚み0.04mm、ユニパック、株式会社生産日本社製、K-4)に、固定した評価用吸収性物品100’を入れた。透明袋に評価用吸収性物品100’を入れる際は、袋の角と評価用吸収性物品100’の角とが合うように入れ、袋の余った部分を折り返して粘着テープで固定し、全体を評価用吸収性物品100’と略同じ大きさとなるようにした。
【0136】
パックした評価用吸収性物品100’を、一度目の試験液投入開始から11分後に、遠心力27.5G(回転数405r/分)で遠心させた。遠心は、回転軸に対して評価用吸収性物品100’の面が直角となり、回転軸が評価用吸収性物品100’の中心になるように、直径30cmのターンテーブルに、パックした評価用吸収性物品100’をガムテープで固定して行った。
【0137】
遠心開始から4分目までは1分毎に、遠心開始から4分後以降は2分毎に遠心を中断して、吸液後の吸収体の断裂の有無を目視で確認した。断裂が認められるまでの合計遠心時間を断裂時間とした。測定は20分まで行い、吸収体の断裂が認められない場合は、「20分以上」と評価した。結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
無加圧DW3分値及び液吸引力3分値が一定以上である実施例で得られた吸水性樹脂粒子を用いた吸収体は、断裂時間が20分以上であり、吸液後の吸収体の断裂発生が抑制されていることが確認された。一方、比較例で得られた吸水性樹脂粒子を用いた吸収体は、より早期に吸液後の断裂が発生していることが確認された。
【符号の説明】
【0140】
1…ビュレット部、3…クランプ、5…導管、10…吸収体、10a…吸水性樹脂粒子、10b…繊維層、11…架台、13…測定台、13a…貫通孔、15…ナイロンメッシュシート、20a,20b…コアラップ、21…ビュレット管、22…コック、23…ゴム栓、24…コック、25…空気導入管、30…液体透過性トップシート、31…円筒状容器、32…ナイロンメッシュシート、33…膨潤ゲル、40…液体不透過性バックシート、50…生理食塩水、51…U字型器具、52…厚紙、53…円筒形シリンダー、100,100’…吸収性物品。
図1
図2
図3
図4