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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】熱輸送装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20220825BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20220825BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220825BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F28D15/02 102H
F28D15/04 D
F28D15/04 B
F28D15/02 101H
H05K7/20 Q
H05K7/20 R
H05K7/20 D
H01L23/46 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022027148
(22)【出願日】2022-02-24
【審査請求日】2022-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 陽介
(72)【発明者】
【氏名】青木 博史
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085430(JP,A)
【文献】特開2015-121373(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157147(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0240858(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0103175(US,A1)
【文献】特開平03-179766(JP,A)
【文献】特開2020-176752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
H05K 7/20
H01L 23/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と熱的に接続される蒸発部を有する第1の熱輸送部と、
前記第1の熱輸送部の凝縮部にて接続された、前記第1の熱輸送部の熱輸送方向とは異なる熱輸送方向を有する第2の熱輸送部と、を備え、
前記第1の熱輸送部が、前記蒸発部から前記第2の熱輸送部との接続部まで連通し、且つ作動流体が封入された、一体の内部空間を有し、前記第1の熱輸送部の内部空間が、前記第2の熱輸送部の内部空間と連通した熱輸送装置であり、
前記熱輸送装置が、前記第1の熱輸送部の内部空間に設けられた、前記蒸発部から前記凝縮部へ延在した第1のウィック構造体と、
前記第2の熱輸送部の内面に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した第2のウィック構造体と、
前記第2のウィック構造体上に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した、毛細管力を有する還流促進体と、を備え、
前記第1のウィック構造体の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力よりも大きく、前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力よりも大きい、または前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力と同じであり、
前記第2の熱輸送部の内面のうち、前記還流促進体が、重力方向下方側に設けられ、重力方向上方側には設けられていない熱輸送装置。
【請求項2】
発熱体と熱的に接続される蒸発部を有する第1の熱輸送部と、
前記第1の熱輸送部の凝縮部にて接続された、前記第1の熱輸送部の熱輸送方向とは異なる熱輸送方向を有する第2の熱輸送部と、を備え、
前記第1の熱輸送部が、前記蒸発部から前記第2の熱輸送部との接続部まで連通し、且つ作動流体が封入された、一体の内部空間を有し、前記第1の熱輸送部の内部空間が、前記第2の熱輸送部の内部空間と連通した熱輸送装置であり、
前記熱輸送装置が、前記第1の熱輸送部の内部空間に設けられた、前記蒸発部から前記凝縮部へ延在した第1のウィック構造体と、
前記第2の熱輸送部の内面に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した第2のウィック構造体と、
前記第2のウィック構造体上に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した、毛細管力を有する還流促進体と、を備え、
前記第1のウィック構造体の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力よりも大きく、前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力よりも大きい、または前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力と同じであり、
前記還流促進体が、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に対して直交方向の断面において、前記断面の周長の5%以上50%以下の領域を覆っている熱輸送装置。
【請求項3】
発熱体と熱的に接続される蒸発部を有する第1の熱輸送部と、
前記第1の熱輸送部の凝縮部にて接続された、前記第1の熱輸送部の熱輸送方向とは異なる熱輸送方向を有する第2の熱輸送部と、を備え、
前記第1の熱輸送部が、前記蒸発部から前記第2の熱輸送部との接続部まで連通し、且つ作動流体が封入された、一体の内部空間を有し、前記第1の熱輸送部の内部空間が、前記第2の熱輸送部の内部空間と連通した熱輸送装置であり、
前記熱輸送装置が、前記第1の熱輸送部の内部空間に設けられた、前記蒸発部から前記凝縮部へ延在した第1のウィック構造体と、
前記第2の熱輸送部の内面に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した第2のウィック構造体と、
前記第2のウィック構造体上に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した、毛細管力を有する還流促進体と、を備え、
前記第1のウィック構造体の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力よりも大きく、前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力よりも大きい、または前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力と同じであり、
前記第2の熱輸送部の先端部が、前記第1の熱輸送部との前記接続部よりも重力方向下方となるように、前記第2の熱輸送部が設置されている熱輸送装置。
【請求項4】
前記第2の熱輸送部の延在方向が重力方向に対して直交方向となるように、前記第2の熱輸送部が設置されている請求項1または2に記載の熱輸送装置。
【請求項5】
前記第1のウィック構造体と前記還流促進体とが、毛細管力を有する接続部材を介して接続されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
【請求項6】
前記第1のウィック構造体の毛細管力が前記接続部材の毛細管力よりも大きく、前記接続部材の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力よりも大きい、または前記接続部材の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力と同じである請求項に記載の熱輸送装置。
【請求項7】
前記接続部材が、前記第1の熱輸送部と前記第2の熱輸送部との接続部に位置する請求項またはに記載の熱輸送装置。
【請求項8】
前記還流促進体が、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に対して直交方向の断面において、前記断面の周長の5%以上の領域を覆っている請求項に記載の熱輸送装置。
【請求項9】
前記還流促進体が、複数の還流促進部からなり、複数の前記還流促進部の毛細管力が相互に異なる請求項1乃至のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
【請求項10】
前記第1の熱輸送部のコンテナが、平面型である請求項1乃至のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
【請求項11】
前記第2の熱輸送部のコンテナが、一体の内部空間を有する平面型である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
【請求項12】
前記第2の熱輸送部が、複数の管体である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
【請求項13】
前記第2の熱輸送部が、複数設けられ、前記第1の熱輸送部から複数の方向に延在している請求項1乃至12のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
【請求項14】
複数の前記管体が、重力方向下方へ延在している請求項12に記載の熱輸送装置。
【請求項15】
前記第2の熱輸送部に複数の放熱フィンが熱的に接続されたヒートシンクである、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板等の基板に搭載された電気・電子部品等の発熱体を冷却する熱輸送装置に関し、特に、高発熱量の発熱体が熱的に接続される使用条件、冷却風の風量が増大した使用条件であっても、蒸発部における作動流体のドライアウトを防止できる熱輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化に伴い、電子機器内部には、電子部品等の発熱体を含め、多数の部品が電子回路基板等の基板上に搭載されている。また、電子機器の高機能化に伴い、電子部品等の発熱体の発熱量が増大している。電子部品等の発熱体を冷却する手段として、ベーパーチャンバ、ヒートパイプ、ヒートシンク等の熱輸送部材が使用されることがある。
【0003】
しかし、電子部品等の発熱体の発熱量が増大すると、熱輸送部材の蒸発部から凝縮部へ流通する気相の作動流体の流量が増大するので、気相の作動流体とは対向流の関係である液相の作動流体の還流が阻害されることがあった。特に、ウィック構造体が複数の溝部の場合等、ウィック構造体の毛細管力が比較的小さいと、液相の作動流体の還流が阻害されやすい傾向にあった。液相の作動流体の還流が阻害されると、熱輸送部材の凝縮部において液相の作動流体が貯留してしまい、ひいては、凝縮部から蒸発部への液相の作動流体の還流量が不足して、熱輸送部材がドライアウトしてしまうことがあった。
【0004】
そこで、電子部品等の発熱体を冷却する熱輸送部材として、金属粉の焼結体等の毛細管力が比較的大きいウィック構造体と作動流体とが収容されているベーパーチャンバであって、第1セクションと、第1セクションから離れる方向に第1セクションの一端から延在する第2セクションと、第2セクションから左右の方向に延在する第4セクションと、第1セクションから離れる方向に第1セクションの一端から延在する第3セクションと、第3セクションから左右の方向に延在する第5セクションと、を備え、第1セクション~第5セクションの全てにわたって前記ウィック構造体が延在したベーパーチャンバが提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1では、第1セクションに熱的に接続された発熱体の熱を、蒸発部である第1セクションから第2セクションと第3セクションを介して凝縮部である第4セクションと第5セクションへ輸送することで、発熱体を冷却する。また、金属粉の焼結体等の毛細管力が比較的大きいウィック構造体によって、第4セクションと第5セクションから第1セクションへ液相の作動流体を還流させている。
【0006】
しかし、特許文献1では、第1セクション~第5セクションの全てにわたって同じウィック構造体が延在しているので、第4セクションと第5セクションに位置するウィック構造体が、液相の作動流体を保持してしまう傾向があった。従って、特許文献1のベーパーチャンバでも、依然として、凝縮部において液相の作動流体が貯留してしまい、凝縮部から蒸発部への液相の作動流体の還流量が不足して、ドライアウトしてしまうことがあった。
【0007】
また、高発熱量の発熱体を円滑に冷却するために、熱輸送部材に供給される冷却風の風量を増大させる場合がある。しかし、冷却風の風量を増大させると、凝縮部において、作動流体の気相から液相への相変化が促進されるので、特許文献1のベーパーチャンバでは、やはり、凝縮部において液相の作動流体が貯留してしまい、ドライアウトしてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2020/0018555号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、高発熱量の発熱体が熱的に接続される使用条件、冷却風の風量が増大した使用条件であっても、蒸発部における作動流体のドライアウトを防止できる熱輸送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のヒートシンクの構成の要旨は、以下の通りである。
[1]発熱体と熱的に接続される蒸発部を有する第1の熱輸送部と、
前記第1の熱輸送部の凝縮部にて接続された、前記第1の熱輸送部の熱輸送方向とは異なる熱輸送方向を有する第2の熱輸送部と、を備え、
前記第1の熱輸送部が、前記蒸発部から前記第2の熱輸送部との接続部まで連通し、且つ作動流体が封入された、一体の内部空間を有し、前記第1の熱輸送部の内部空間が、前記第2の熱輸送部の内部空間と連通した熱輸送装置であり、
前記熱輸送装置が、前記第1の熱輸送部の内部空間に設けられた、前記蒸発部から前記凝縮部へ延在した第1のウィック構造体と、
前記第2の熱輸送部の内面に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した第2のウィック構造体と、
前記第2のウィック構造体上に設けられた、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した、毛細管力を有する還流促進体と、を備え、
前記第1のウィック構造体の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力よりも大きく、前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力よりも大きい、または前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力と同じである熱輸送装置。
[2]前記第1のウィック構造体と前記還流促進体とが、毛細管力を有する接続部材を介して接続されている[1]に記載の熱輸送装置。
[3]前記第1のウィック構造体の毛細管力が前記接続部材の毛細管力よりも大きく、前記接続部材の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力よりも大きい、または前記接続部材の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力と同じである[2]に記載の熱輸送装置。
[4]前記接続部材が、前記第1の熱輸送部と前記第2の熱輸送部との接続部に位置する[2]または[3]に記載の熱輸送装置。
[5]前記還流促進体が、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に対して直交方向の断面において、前記断面の周長の5%以上の領域を覆っている[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の熱輸送装置。
[6]前記還流促進体が、複数の還流促進部からなり、複数の前記還流促進部の毛細管力が相互に異なる[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の熱輸送装置。
[7]前記第1の熱輸送部のコンテナが、平面型である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の熱輸送装置。
[8]前記第2の熱輸送部のコンテナが、一体の内部空間を有する平面型である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の熱輸送装置。
[9]前記第2の熱輸送部が、複数の管体である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の熱輸送装置。
[10]前記第2の熱輸送部が、複数設けられ、前記第1の熱輸送部から複数の方向に延在している[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の熱輸送装置。
[11]複数の前記管体が、重力方向下方へ延在している[9]に記載の熱輸送装置。
[12]前記第2の熱輸送部に複数の放熱フィンが熱的に接続されたヒートシンクである、[1]乃至[11]のいずれか1つに記載の熱輸送装置。
【0011】
本発明の熱輸送装置の態様では、蒸発部(すなわち、受熱部)を有する熱輸送部材の内部空間は、複数のヒートパイプが並列配置されたヒートパイプ群の内部空間とは異なり、全体が連通して一体となっている。本発明の熱輸送装置の態様では、第1の熱輸送部のうち、冷却対象である発熱体と熱的に接続される部位が蒸発部(すなわち、受熱部)として機能し、第2の熱輸送部と接続された部位が第1の熱輸送部の凝縮部(すなわち、放熱部)として機能する。第1の熱輸送部の蒸発部では、作動流体が発熱体から受熱して液相から気相へ相変化し、第1の熱輸送部の凝縮部では、気相の作動流体の一部が潜熱を放出して気相から液相へ相変化する。本発明の熱輸送装置の態様では、発熱体の熱は、第1の熱輸送部によって第1の熱輸送部の蒸発部から第1の熱輸送部の凝縮部へ輸送され、さらには、第1の熱輸送部の凝縮部から第2の熱輸送部へ輸送される。また、第1の熱輸送部が発熱体から受熱することで気相に相変化した作動流体は、第1の熱輸送部から第2の熱輸送部へ流通する。気相の作動流体が第1の熱輸送部から第2の熱輸送部へ流通することで、第2の熱輸送部は、第1の熱輸送部から熱を受け、発熱体の熱は、第1の熱輸送部から第2の熱輸送部へ拡散する。第2の熱輸送部に放熱フィン等の熱交換手段が熱的に接続されることで、第2の熱輸送部は、さらに、第1の熱輸送部から受けた熱を熱交換手段へ伝達し、熱交換手段から外部環境へ熱が放出される。第2の熱輸送部が第1の熱輸送部から受けた熱を熱交換手段へ伝達する際に、第1の熱輸送部から第2の熱輸送部へ流通した気相の作動流体は液相へ相変化する。
【0012】
上記態様では、第1の熱輸送部の熱輸送方向と第2の熱輸送部の熱輸送方向は相違するので、第1の熱輸送部の延在方向と第2の熱輸送部の延在方向は相違する。
【0013】
また、第1の熱輸送部のコンテナが平面型であり、第2の熱輸送部のコンテナが一体の内部空間を有する平面型である態様では、熱輸送装置は、ベーパーチャンバの構成となっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱輸送装置の態様では、第1の熱輸送部の内部空間に設けられた、蒸発部から凝縮部へ延在した第1のウィック構造体の毛細管力が、第2の熱輸送部の内面に形成された第2のウィック構造体上に設けられた還流促進体の毛細管力よりも大きく、還流促進体の毛細管力が第2のウィック構造体の毛細管力よりも大きい、または第2のウィック構造体の毛細管力と同じであるので、第2の熱輸送部の内面には第2のウィック構造体と還流促進体とが設けられているとともに、蒸発部を有する第1の熱輸送部に設けられた第1のウィック構造体の毛細管力が相対的に大きい態様となっている。従って、本発明の熱輸送装置の態様によれば、高発熱量の発熱体が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、液相の作動流体の第2の熱輸送部の先端部から第1の熱輸送部との接続部方向への還流及び第1の熱輸送部の凝縮部から蒸発部への還流が円滑化される。また、本発明の熱輸送装置の態様によれば、第2の熱輸送部の内面に設けられた第2のウィック構造体と還流促進体は、いずれも毛細管力が相対的に小さいので、液相の作動流体を保持して第2の熱輸送部に液相の作動流体が貯留してしまうことを防止できる。また、本発明の熱輸送装置の態様によれば、第2のウィック構造体中を第2の熱輸送部の先端部から第1の熱輸送部との接続部方向へ還流する液相の作動流体は、還流促進体によって、対向流である気相の作動流体の流れから保護され、さらに、還流促進体も、第2の熱輸送部の先端部から第1の熱輸送部との接続部方向への液相の作動流体の還流に寄与する。上記から、本発明の熱輸送装置の態様によれば、高発熱量の発熱体が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、蒸発部における作動流体のドライアウトを防止できる。
【0015】
本発明の熱輸送装置の態様によれば、第1のウィック構造体と還流促進体とが、毛細管力を有する接続部材を介して接続されていることにより、第2の熱輸送部から第1の熱輸送部への液相の作動流体の還流がさらに円滑化される。
【0016】
本発明の熱輸送装置の態様によれば、第1のウィック構造体の毛細管力が接続部材の毛細管力よりも大きく、接続部材の毛細管力が還流促進体の毛細管力よりも大きい、または還流促進体の毛細管力と同じであることにより、液相の作動流体が第2の熱輸送部から第1の熱輸送部へ流通するに従って毛細管力が大きくなるので、高発熱量の発熱体が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、より確実に、蒸発部における作動流体のドライアウトを防止できる。
【0017】
本発明の熱輸送装置の態様によれば、還流促進体が第2の熱輸送部の熱輸送方向に対して直交方向の断面において前記断面の周長の5%以上の領域を覆っていることにより、還流促進体が液相の作動流体の第2の熱輸送部の先端部から第1の熱輸送部との接続部方向への還流をさらに促進する。
【0018】
本発明の熱輸送装置の態様によれば、還流促進体が、複数の還流促進部からなり、複数の前記還流促進部の毛細管力が相互に異なることにより、第2の熱輸送部の先端部から第1の熱輸送部との接続部方向へ向かうに従って還流促進体の毛細管力を大きくできるので、液相の作動流体の第2の熱輸送部の先端部から第1の熱輸送部との接続部方向への還流がさらに円滑化される。
【0019】
本発明の熱輸送装置の態様によれば、第2の熱輸送部が複数設けられ、第1の熱輸送部から複数の方向に延在していることにより、第1の熱輸送部から第2の熱輸送部へ輸送された熱は第1の熱輸送部の延在方向(熱輸送方向)とは異なる複数の方向へ輸送されるので、熱輸送装置の寸法の増大を防止することができ、結果、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の内部の概要を説明する平面断面図である。
図2】本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する正面断面図である。
図3】本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する側面断面図である。
図4】本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の作動流体の流れを説明する説明図である。
図5】本発明の第2実施形態例に係る熱輸送装置の内部の概要を説明する平面断面図である。
図6】本発明の第2実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する正面断面図である。
図7】本発明の第2実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する側面断面図である。
図8】本発明の第3実施形態例に係る熱輸送装置の側面図である。
図9】本発明の第4実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態例に係る熱輸送装置について、図面を用いながら説明する。まず、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置について説明する。なお、図1は、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の内部の概要を説明する平面断面図である。図2は、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する正面断面図である。図3は、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する側面断面図である。図4は、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の作動流体の流れを説明する説明図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送装置1は、発熱体100と熱的に接続される蒸発部11を有する第1の熱輸送部10と、第1の熱輸送部10の凝縮部12にて接続された、第1の熱輸送部10の熱輸送方向D1とは異なる熱輸送方向D2、D3を有する第2の熱輸送部20と、を備えている。第2の熱輸送部20は、第1の熱輸送部10とは第1の熱輸送部10の凝縮部12にて接続されていることで、第1の熱輸送部10と第2の熱輸送部20との接続部30が形成されている。また、第1の熱輸送部10の内部空間が、第2の熱輸送部20の内部空間と連通している。熱輸送装置1では、第1の熱輸送部10は、蒸発部11から第2の熱輸送部20との接続部30まで連通し、且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有している。
【0023】
第1の熱輸送部10は、中空の空洞部13を有するコンテナ19と、空洞部13を流通する作動流体(図1では、図示せず)と、を有している。コンテナ19は、熱輸送装置1の設置面側に位置する一方の板状体40と一方の板状体40と対向する他方の板状体(図1では、図示せず)とを重ね合わせることにより形成されている。
【0024】
一方の板状体40は平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状である。他方の板状体も、平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状である。従って、一方の板状体40と他方の板状体は、いずれも凹形状となっている。一方の板状体40と他方の板状体とを凹形状を対向させた状態で重ね合わせることにより、コンテナ19の空洞部13が形成される。従って、熱輸送装置1では、第1の熱輸送部10のコンテナ19の形状は平面型である。コンテナ19の空洞部13は、外部環境に対して密閉された内部空間であり、脱気処理により減圧されている。
【0025】
コンテナ19外面のうち、冷却対象である発熱体100が熱的に接続される部位が蒸発部11として機能する。発熱体100が第1の熱輸送部10のコンテナ19に熱的に接続されることで、発熱体100が冷却される。第1の熱輸送部10では、第1の熱輸送部10の熱輸送方向D1である延在方向の一方端に、発熱体100が熱的に接続されている。従って、第1の熱輸送部10の延在方向の一方端に蒸発部11が形成されている。
【0026】
第1の熱輸送部10は、発熱体100の位置から所定方向へ延在しており、第1の熱輸送部10の延在方向の一方端に対向する他方端に第2の熱輸送部20が接続されている。第2の熱輸送部20が接続されている第1の熱輸送部10の他方端が、第1の熱輸送部10の凝縮部12として機能する。
【0027】
第1の熱輸送部10は、コンテナ19の一方端に位置する蒸発部11とコンテナ19の他方端に位置する凝縮部12との間に位置する中間部が、断熱部15として機能する。発熱体100から蒸発部11へ伝達された熱が、断熱部15を介して、蒸発部11から凝縮部12へ輸送される。
【0028】
図1に示すように、第1の熱輸送部10の空洞部13には、毛細管力を有する第1のウィック構造体14が収納されている。第1のウィック構造体14は、第1の熱輸送部10の内部空間に設けられており、蒸発部11から凝縮部12へ延在している。第1のウィック構造体14は、第1の熱輸送部10の幅方向略全面にて、コンテナ19の蒸発部11から凝縮部12まで延在している。
【0029】
第1のウィック構造体14としては、特に限定されないが、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属線からなる金属メッシュ、不織布、金属繊維等を挙げることができる。第1の熱輸送部10では、第1のウィック構造体14として、金属粉の焼結体が用いられている。また、第1の熱輸送部10では、コンテナ19の内面に、さらに、グルーブ(複数の細溝、図示せず)が設けられていてもよい。空洞部13のうち、第1のウィック構造体14の設けられていない部位が、気相の作動流体の流通する蒸気流路16として機能する。蒸気流路16は、第1のウィック構造体14がコンテナ19の蒸発部11から凝縮部12まで延在していることに対応して、コンテナ19の蒸発部11から凝縮部12まで延在している。第1の熱輸送部10は、作動流体の動作による熱輸送特性によって、蒸発部11にて受けた発熱体100の熱を蒸発部11から凝縮部12へ輸送する。
【0030】
図1に示すように、第1の熱輸送部10の凝縮部12の側面には、第1の熱輸送部10のコンテナ19の空洞部13と内部空間の連通した第2の熱輸送部20が設けられている。第2の熱輸送部20は、中空の空洞部23を有するコンテナ29を備えている。第2の熱輸送部20の空洞部23は、接続部30を介して第1の熱輸送部10の空洞部13と連通している。
【0031】
コンテナ29は、熱輸送装置1の設置面側に位置する一方の板状体41と一方の板状体41と対向する他方の板状体(図1では、図示せず)とを重ね合わせることにより形成されている。一方の板状体41は平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状である。他方の板状体も、平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状である。従って、一方の板状体41と他方の板状体は、いずれも凹形状となっている。一方の板状体41と他方の板状体とを凹形状を対向させた状態で重ね合わせることにより、コンテナ29の空洞部23が形成される。従って、熱輸送装置1では、第2の熱輸送部20のコンテナ29の形状は平面型である。
【0032】
コンテナ29の空洞部23は、熱輸送装置1の外部環境に対して密閉された内部空間であり、脱気処理により減圧されている。作動流体は、第1の熱輸送部10のコンテナ19の空洞部13と第2の熱輸送部20のコンテナ29の空洞部23との間で流通可能となっている。上記から、第1の熱輸送部10の空洞部13を流通する作動流体は、第1の熱輸送部10の空洞部13から第2の熱輸送部20の空洞部23までの空間に封入されている。
【0033】
第2の熱輸送部20の形状は、特に限定されず、熱輸送装置1では、第2の熱輸送部20のコンテナ29が、一体の内部空間を有する平面型である。
【0034】
第2の熱輸送部20は、第1の熱輸送部10の凝縮部12の平面方向に沿って、第1の熱輸送部10の熱輸送方向に対して略直交方向に延在している。従って、第2の熱輸送部20は、重力方向に対して直交する方向に沿って設置されることがある。熱輸送装置1では、第2の熱輸送部20の延在方向が第1の熱輸送部10の延在方向(熱輸送方向)と平行ではないので、第1の熱輸送部10から輸送された熱は、第2の熱輸送部20によって、第1の熱輸送部10の延在方向とは異なる方向へ輸送される。従って、第1の熱輸送部10の熱輸送方向における熱輸送装置1の寸法の増大を防止することができるので、熱輸送装置1の省スペース化を図ることができる。
【0035】
第2の熱輸送部20は、複数設けられ、第1の熱輸送部10から複数の方向に延在している。熱輸送装置1では、第2の熱輸送部20は、2つ設けられ、第2の熱輸送部20は、第1の熱輸送部10を中心にして左右両方向へ延在している。複数の第2の熱輸送部20が第1の熱輸送部10から複数の方向(熱輸送装置1では2方向)に延在しているので、第1の熱輸送部10から第2の熱輸送部20へ輸送された熱は、第1の熱輸送部10の延在方向とは異なる複数の方向(熱輸送装置1では2方向)へ分岐して輸送される。従って、第1の熱輸送部10の延在方向における熱輸送装置1の寸法の増大をより確実に防止することができる。
【0036】
図1~3に示すように、第2の熱輸送部20の内面には、第2の熱輸送部20の熱輸送方向に沿って延在した第2のウィック構造体24が設けられている。第2のウィック構造体24は、液相の作動流体を第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向へ還流させる機能を有する。
【0037】
第2のウィック構造体24は、コンテナ19に収納された第1のウィック構造体14とは異なる構造の、毛細管力を有するウィック構造体である。熱輸送装置1では、第2のウィック構造体24として、第2の熱輸送部20の内面に、グルーブ(複数の細溝)が形成されている。上記から、熱輸送装置1では、第2のウィック構造体24は、第1のウィック構造体14とは異なる種類のウィック構造体である。第2のウィック構造体24であるグルーブは、第2の熱輸送部20の熱輸送方向に沿って延在している。熱輸送装置1では、第2のウィック構造体24は、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30まで延在している。
【0038】
また、第2の熱輸送部20には、第2のウィック構造体24上に、第2の熱輸送部20の熱輸送方向に沿って延在した、毛細管力を有する還流促進体34が設けられている。還流促進体34は、液相の作動流体が第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向へ還流するのを促進する機能を有する。還流促進体34は、第2のウィック構造体24に接する態様で設けられている。熱輸送装置1では、還流促進体34は、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30近傍まで延在している。
【0039】
還流促進体34は、コンテナ19に収納された第1のウィック構造体14及びコンテナ29に収納された第2のウィック構造体34とは異なる構造の、毛細管力を有するウィック部材である。還流促進体34としては、特に限定されないが、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属線からなる金属メッシュ、不織布、金属繊維等を挙げることができる。熱輸送装置1では、還流促進体34全体が、同じ部材で形成され、還流促進体34全体が略同じ毛細管力を有している。熱輸送装置1では、還流促進体34として、シート状の金属メッシュが使用されている。上記から、熱輸送装置1では、還流促進体34は、第1のウィック構造体14及び第2のウィック構造体24とは異なる種類のウィック部材である。第2の熱輸送部20の空洞部23のうち、還流促進体34及び第2のウィック構造体24の設けられていない部位が、気相の作動流体の流通する蒸気流路26として機能する。蒸気流路26は、第1の熱輸送部10との接続部30から第2の熱輸送部20のコンテナ29の先端部33まで延在している。第2の熱輸送部20は、作動流体の動作による熱輸送特性によって、第1の熱輸送部10から受けた発熱体100の熱を第1の熱輸送部10との接続部30から第2の熱輸送部20の先端部33方向へ輸送する。
【0040】
還流促進体34の設置位置は、第2の熱輸送部20のコンテナ29内面であれば、特に限定されないが、還流促進体34は、液相の作動流体の第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向への還流をさらに促進して、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向へ、液相の作動流体がさらに円滑に還流できる点から、第2の熱輸送部20の熱輸送方向に対して直交方向の断面において、前記断面の周長の5%以上の領域を覆っていることが好ましい。また、第2の熱輸送部20の延在方向が重力方向に対して略直交方向となるように、第2の熱輸送部20が設置される場合には、還流促進体34は、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向への液相の作動流体の還流をさらに促進しつつ、蒸気流路26を確実に確保する点から、前記断面の周長の25%以上50%以下の領域を覆っていることが好ましい。また、第2の熱輸送部20の先端部33が、第1の熱輸送部10との接続部30よりも重力方向下方となるように、第2の熱輸送部20が設置される場合には、還流促進体34は、第2の熱輸送部20の先端部33から接続部30方向への液相の作動流体の還流を確実に促進する点から、前記断面の周長の50%以上100%以下の領域を覆っていることが好ましい。
【0041】
図2、3に示すように、熱輸送装置1では、一方の板状体41と一方の板状体41と対向する他方の板状体43とを重ね合わせることにより形成されているコンテナ29内面のうち、還流促進体34は、重力方向下方に位置する板状体である一方の板状体41上に設けられており、他方の板状体43には設けられていない。
【0042】
熱輸送装置1では、第1のウィック構造体14の毛細管力が還流促進体34の毛細管力よりも大きい態様となっている。また、還流促進体34の毛細管力は、第2のウィック構造体24の毛細管力よりも大きい、または第2のウィック構造体24の毛細管力と同等の態様となっている。
【0043】
図1、2に示すように、第1の熱輸送部10に設けられた第1のウィック構造体14と第2の熱輸送部20に設けられた還流促進体34とが、毛細管力を有する接続部材35を介して接続されていてもよい。接続部材35は、第1の熱輸送部10と第2の熱輸送部20との接続部30とその近傍に位置している。
【0044】
接続部材35は、コンテナ19に収納された第1のウィック構造体14、コンテナ29に収納された第2のウィック構造体34及び還流促進体34とは異なる構造の、毛細管力を有するウィック部材である。接続部材35としては、例えば、金属メッシュ、金属線の編組体、金属繊維等を挙げることができる。熱輸送装置1では、接続部材35は、第1のウィック構造体14、第2のウィック構造体24及び還流促進体34とは異なる種類のウィック部材としてもよい。
【0045】
熱輸送装置1では、第1のウィック構造体14の毛細管力は、接続部材35の毛細管力よりも大きい態様となっている。また、接続部材35の毛細管力は、還流促進体34の毛細管力よりも大きい、または還流促進体34の毛細管力と略同じの態様となっている。
【0046】
第2の熱輸送部20内部で気相から液相へ相変化した作動流体は、第2のウィック構造体24の毛細管力と還流促進体34の毛細管力によって、第2のウィック構造体24内部と還流促進体34内部を、第2の熱輸送部20の先端部33から接続部30方向へ還流する。接続部30近傍まで還流した液相の作動流体は、第2のウィック構造体24と還流促進体34から接続部材35の一端へ流通する。接続部材35の一端へ流通した液相の作動流体は、接続部材35を一端から他端へ流通し、接続部材35の他端から第1の熱輸送部10の第1のウィック構造体14へ還流する。
【0047】
従って、接続部材35を設けることで、第2の熱輸送部20から第1の熱輸送部10への液相の作動流体の還流がさらに円滑化される。上記から、接続部材35により、第2の熱輸送部20と熱輸送部材10間における液相の作動流体の流通性能が向上するので、熱輸送装置1の熱輸送特性が向上する。
【0048】
なお、接続部材35を設けない場合には、第2の熱輸送部20と熱輸送部材10間における液相の作動流体の流通性能を向上させる点から、接続部30近傍で、還流促進体34が第1のウィック構造体14と接する構造とすることが好ましい。
【0049】
コンテナ19及びコンテナ29の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス、チタン、チタン合金等を挙げることができる。熱輸送装置1に封入する作動流体としては、コンテナ19及びコンテナ29の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、フルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、シクロペンタン、エチレングリコール、これらの混合物等を挙げることができる。
【0050】
コンテナ19及びコンテナ29の厚さとしては、機械的強度、重量等から適宜選択可能であり、例えば、0.5~3mmを挙げることができる。コンテナ19及びコンテナ29の幅は、熱輸送装置1の使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、4~20mmを挙げることができる。
【0051】
次に、図1~3を用いて、熱輸送装置1の熱輸送機能のメカニズムについて説明する。まず、第1の熱輸送部10のコンテナ19の一方端に被冷却体である発熱体100を熱的に接続して、コンテナ19の一方端を蒸発部11として機能させる。コンテナ19の一方端が発熱体100から受熱すると、コンテナ19の一方端において、空洞部13の液相の作動流体へ熱が伝達されて、コンテナ19の一方端の空洞部13にて、液相の作動流体が気相の作動流体へと相変化する。気相の作動流体は、蒸気流路16をコンテナ19の一方端から凝縮部12である他方端へ流通する。気相の作動流体が、コンテナ19の一方端から他方端へ流通することで、第1の熱輸送部10が、その一方端から他方端へ熱を輸送する。熱交換手段(図示せず)がコンテナ19の他方端にて熱的に接続されていると、熱交換手段の熱交換作用によって、コンテナ19の他方端へ流通した気相の作動流体の一部が潜熱を放出して液相の作動流体へ相変化し、放出された潜熱は熱交換手段へ伝達される。熱交換手段へ伝達された熱は、熱交換手段を介して熱輸送装置1の外部環境へ放出される。コンテナ19の他方端にて液相に相変化した作動流体は、第1のウィック構造体14の毛細管力により、コンテナ19の他方端から一方端へ還流する。
【0052】
また、第1の熱輸送部10の空洞部13と第2の熱輸送部20の空洞部23とは連通しているので、第1の熱輸送部10の蒸発部11にて液相から気相へ相変化した作動流体のうち、第1の熱輸送部10の凝縮部12にて液相に相変化しなかった作動流体は、第1の熱輸送部10の空洞部13から接続部30を介して第2の熱輸送部20の空洞部23へ流入する。第1の熱輸送部10の空洞部13から第2の熱輸送部20の空洞部23へ流入した気相の作動流体は、接続部30から第2の熱輸送部20の先端部33方向へ蒸気流路26を流通する。気相の作動流体が、接続部30から第2の熱輸送部20の先端部33方向へ蒸気流路26を流通することで、第2の熱輸送部20が、接続部30からその先端部33方向へ熱を輸送する。熱交換手段(図示せず)が第2の熱輸送部20のコンテナ29に熱的に接続されていると、熱交換手段の熱交換作用によって、第2の熱輸送部20の空洞部23へ流入した気相の作動流体は、第2の熱輸送部20内部にて潜熱を放出して、液相の作動流体へ相変化する。第2の熱輸送部20内部にて放出された潜熱は、第2の熱輸送部20と熱的に接続されている熱交換手段へ伝達される。熱交換手段へ伝達された熱は、熱交換手段を介して熱輸送装置1の外部環境へ放出される。第2の熱輸送部20内部にて気相から液相に相変化した作動流体は、第2の熱輸送部20内面に設けられた第2のウィック構造体24と還流促進体34の毛細管力によって、第2の熱輸送部20の先端部33から接続部30方向へ還流する。第2の熱輸送部20の先端部33から接続部30近傍へ還流した液相の作動流体は、接続部材35を介してコンテナ19の他方端(凝縮部12)にて第1のウィック構造体14へ還流する。第1のウィック構造体14へ還流した液相の作動流体は、第1のウィック構造体14の毛細管力により、コンテナ19の他方端(凝縮部12)からコンテナ19の一方端(蒸発部11)へ還流する。
【0053】
熱輸送装置1では、第1の熱輸送部10の空洞部13に設けられた、蒸発部11から凝縮部12へ延在した第1のウィック構造体14の毛細管力が、第2の熱輸送部20の内面に形成された第2のウィック構造体24上に設けられた還流促進体34の毛細管力よりも大きく、還流促進体34の毛細管力が第2のウィック構造体24の毛細管力よりも大きい、または還流促進体34の毛細管力が第2のウィック構造体24の毛細管力と略同じであるので、第2の熱輸送部20の内面には第2のウィック構造体24と還流促進体34とが設けられているとともに、蒸発部11を有する第1の熱輸送部10に設けられた第1のウィック構造体14の毛細管力が相対的に大きい態様となっている。従って、熱輸送装置1では、高発熱量の発熱体100が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、液相の作動流体の第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向への還流及び第1の熱輸送部10の凝縮部12から蒸発部11への還流が円滑化される。また、熱輸送装置1では、第2の熱輸送部20の内面に設けられた第2のウィック構造体24と還流促進体34は、いずれも毛細管力が相対的に小さいので、液相の作動流体を保持して第2の熱輸送部20に液相の作動流体が貯留してしまうことを防止できる。
【0054】
また、図4に示すように、熱輸送装置1では、第2のウィック構造体24中を第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向へ還流する液相の作動流体F1は、還流促進体34によって、対向流である気相の作動流体Gの流れから保護され、さらに、還流促進体34も、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部33方向への液相の作動流体F2の還流に寄与する。さらに、第2のウィック構造体24と還流促進体34との界面部Sも、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部33方向への液相の作動流体F3の還流に寄与する。上記から、熱輸送装置1では、高発熱量の発熱体100が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、蒸発部11における作動流体のドライアウトを防止できる。
【0055】
また、熱輸送装置1では、第1のウィック構造体14の毛細管力が接続部材35の毛細管力よりも大きく、接続部材35の毛細管力が還流促進体34の毛細管力よりも大きい、または接続部材35の毛細管力が還流促進体34の毛細管力と略同じなので、液相の作動流体が第2の熱輸送部20から第1の熱輸送部10へ流通するに従って毛細管力が大きくなる態様なので、高発熱量の発熱体100が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、より確実に、蒸発部11における作動流体のドライアウトを防止できる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態例に係る熱輸送装置について、図面を用いながら説明する。なお、第2実施形態例に係る熱輸送装置は、第1実施形態例に係る熱輸送装置と主要部は共通しているので、第1実施形態例に係る熱輸送装置と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、図5は、本発明の第2実施形態例に係る熱輸送装置の内部の概要を説明する平面断面図である。図6は、本発明の第2実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する正面断面図である。図7は、本発明の第2実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する側面断面図である。
【0057】
第1実施形態例に係る熱輸送装置1では、第2の熱輸送部20は、一体の内部空間を有する平面型のコンテナであったが、図5に示すように、第2実施形態例に係る熱輸送装置2では、第2の熱輸送部20は、一体の内部空間を有する平面型のコンテナに代えて、複数の管体51、51、51・・・となっている。
【0058】
第2の熱輸送部20は、中空の空洞部23を有する管体51を複数備えている。複数の管体51、51、51・・・が、管体51の径方向に沿って並列配置されて、1つの第2の熱輸送部20が形成されている。管体51の長手方向が、管体51の熱輸送方向であり、ひいては、第2の熱輸送部20の熱輸送方向となっている。
【0059】
管体51の第1の熱輸送部10側端部(以下、「基部」ということがある。)32は開口しており、基部32とは反対の端部(すなわち、先端部33)は閉塞している。第2の熱輸送部20を形成する管体51の空洞部23は、接続部30を介して第1の熱輸送部10の空洞部13と連通している。管体51の空洞部23は、熱輸送装置2の外部環境に対して密閉された内部空間であり、脱気処理により減圧されている。作動流体は、第1の熱輸送部10の空洞部13と管体51の空洞部23との間で流通可能となっている。
【0060】
第1の熱輸送部10のコンテナ19の側面部には、管体51をコンテナ19に取り付けるための貫通孔(図示せず)が形成されている。貫通孔の形状と寸法は、管体51の形状と寸法に対応しており、管体51の基部32が、コンテナ19の貫通孔に嵌挿されることで、管体51が第1の熱輸送部10に接続されている。従って、管体51と第1の熱輸送部10のコンテナ19は、別の部材からなっている。コンテナ19に取り付けた管体51を固定する方法としては、特に限定されないが、例えば、溶接、はんだ付け、ろう付け等を挙げることができる。管体51は、第1の熱輸送部10の凝縮部12の平面方向に沿って、第1の熱輸送部10の熱輸送方向に対して略直交方向に延在している。従って、熱輸送装置2では、管体51の長手方向が、重力方向に対して直交する方向に沿うように設置されることがある。
【0061】
図5~7に示すように、それぞれの管体51の内面には、管体51の熱輸送方向に沿って延在した第2のウィック構造体24が設けられている。第2のウィック構造体24は、液相の作動流体を管体51の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向へ還流させる機能を有する。熱輸送装置2でも、第2のウィック構造体24は、管体51の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30まで延在している。熱輸送装置2でも、第2のウィック構造体24として、管体51の内面に、グルーブ(複数の細溝)が形成されている。
【0062】
また、それぞれの管体51には、第2のウィック構造体24上に、第2の熱輸送部20の熱輸送方向に沿って延在した、毛細管力を有する還流促進体34が設けられている。熱輸送装置2では、還流促進体34は、管体51の長手方向中央部36から第1の熱輸送部10との接続部30近傍(すなわち、基部32近傍)まで延在している。上記から、熱輸送装置2では、管体51の先端部33から中央部36の領域には、還流促進体34が設けられておらず、第2のウィック構造体24が露出している。管体51の内面のうち、還流促進体34は、重力方向下方の部位に設けられており、重力方向上方の部位には設けられていない。なお、熱輸送部材2でも、還流促進体34全体が、同じ部材で形成され、還流促進体34全体が略同じ毛細管力を有している。
【0063】
熱輸送装置2でも、第1の熱輸送部10に設けられた第1のウィック構造体14と管体51に設けられた還流促進体34とが、毛細管力を有する接続部材35を介して接続されていてもよい。
【0064】
管体51の形状は、特に限定されず、熱輸送装置2では、長手方向の形状は直線状であり、長手方向に対して直交方向(径方向)の形状は楕円形状となっている。また、いずれの管体51も、形状、寸法は略同じとなっている。第2の熱輸送部20を構成する管体51の材料としては、第2の熱輸送部20のコンテナ29の材料と同じく、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス、チタン、チタン合金等を挙げることができる。
【0065】
図5~7に示すように、熱輸送装置2では、管体51に、熱交換手段である複数の第1の放熱フィン61、61、61・・・が熱的に接続されている。複数の第1の放熱フィン61、61、61・・・は、管体51の長手方向に沿って並列配置されている。第1の放熱フィン61に形成された複数の貫通孔のそれぞれに管体51が嵌挿されることで、第1の放熱フィン61が管体51の位置に取り付け、固定されて、第1の放熱フィン61が複数の管体51、51、51・・・と熱的に接続されている。上記から、熱輸送装置2は、第2の熱輸送部20に複数の第1の放熱フィン61、61、61・・・が熱的に接続されたヒートシンクである。
【0066】
また、図6に示すように、第1の熱輸送部10の凝縮部12に、熱交換手段である複数の第2の放熱フィン62、62、62・・・が熱的に接続されている(図5では、説明の便宜上、図示せず)。複数の第2の放熱フィン62、62、62・・・は、第1の熱輸送部10の幅方向に沿って並列配置されている。第2の放熱フィン62は、第1の熱輸送部10の位置に取り付け、固定されて、第1の熱輸送部10と熱的に接続されている。第1の放熱フィン61、第2の放熱フィン62ともに、薄い平板状の部材である。
【0067】
熱輸送装置2でも、第1の熱輸送部10の空洞部13に設けられた、蒸発部11から凝縮部12へ延在した第1のウィック構造体14の毛細管力が、第2の熱輸送部20である管体51の内面に形成された第2のウィック構造体24上に設けられた還流促進体34の毛細管力よりも大きく、還流促進体34の毛細管力が第2のウィック構造体24の毛細管力よりも大きい、または還流促進体34の毛細管力が第2のウィック構造体24の毛細管力と略同じであるので、管体51の内面には第2のウィック構造体24と還流促進体34とが設けられているとともに、蒸発部11を有する第1の熱輸送部10に設けられた第1のウィック構造体14の毛細管力が相対的に大きい態様となっている。従って、熱輸送装置2でも、高発熱量の発熱体100が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、管体51の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向への液相の作動流体の還流及び第1の熱輸送部10の凝縮部12から蒸発部11への液相の作動流体の還流が円滑化される。また、熱輸送装置2でも、管体51の内面に設けられた第2のウィック構造体24と還流促進体34は、いずれも毛細管力が相対的に小さいので、液相の作動流体を保持して管体51に液相の作動流体が貯留してしまうことを防止できる。
【0068】
また、熱輸送装置2でも、第2のウィック構造体24中を管体51の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部30方向へ還流する液相の作動流体は、還流促進体34によって、対向流である気相の作動流体の流れから保護され、さらに、還流促進体34も、管体51の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部33方向への液相の作動流体の還流に寄与する。さらに、第2のウィック構造体24と還流促進体34との界面部も、管体51の先端部33から第1の熱輸送部10との接続部33方向への液相の作動流体の還流に寄与する。上記から、熱輸送装置2でも、高発熱量の発熱体100が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、蒸発部11における作動流体のドライアウトを防止できる。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態例に係る熱輸送装置について、図面を用いながら説明する。なお、第3実施形態例に係る熱輸送装置は、第1及び第2実施形態例に係る熱輸送装置と主要部は共通しているので、第1及び第2実施形態例に係る熱輸送装置と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、図8は、本発明の第3実施形態例に係る熱輸送装置の側面図である。
【0070】
第1及び第2実施形態例の熱輸送装置1、2では、第2の熱輸送部20は、第1の熱輸送部10の凝縮部12の平面方向に沿って、第1の熱輸送部10の熱輸送方向に対して略直交方向に延在していたが、図8に示すように、第3実施形態例に係る熱輸送装置3では、第2の熱輸送部20は、第1の熱輸送部10の凝縮部12の平面方向に対して鉛直方向、かつ第1の熱輸送部10の熱輸送方向に対して略直交方向に延在している。
【0071】
熱輸送装置3では、第2の熱輸送部20は複数の管体51、51、51・・・からなり、第2の熱輸送部20を形成する複数の管体51、51、51・・・は、重力方向下方へ延在している。熱輸送装置3では、第2の熱輸送部20は1つ設けられている。第2の熱輸送部20の先端部33が、第1の熱輸送部10の蒸発部11よりも重力方向下方に設置されているので、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10への液相の作動流体の還流を確実に促進する点から、還流促進体は、管体51の熱輸送方向に対して直交方向の断面における周長の50%以上100%以下の領域を覆っていることが好ましい。
【0072】
熱輸送装置3でも、管体51の内面には第2のウィック構造体と還流促進体とが設けられているとともに、蒸発部11を有する第1の熱輸送部10に設けられた第1のウィック構造体の毛細管力が相対的に大きい態様となっているので、高発熱量の発熱体100が熱的に接続される使用条件や冷却風の風量が増大した使用条件であっても、管体51の先端部33から第1の熱輸送部10方向への液相の作動流体の還流及び第1の熱輸送部10の凝縮部12から蒸発部11への液相の作動流体の還流が円滑化される。
【0073】
次に、本発明の第4実施形態例に係る熱輸送装置について、図面を用いながら説明する。なお、第4実施形態例に係る熱輸送装置は、第1~第3実施形態例に係る熱輸送装置と主要部は共通しているので、第1~第3実施形態例に係る熱輸送装置と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、図9は、本発明の第4実施形態例に係る熱輸送装置の第2の熱輸送部の内部の概要を説明する正面断面図である。
【0074】
第1~第3実施形態例に係る熱輸送装置1、2、3では、還流促進体34全体が、同じ部材で形成され、還流促進体34全体が略同じ毛細管力を有していたが、図9に示すように、第4実施形態例に係る熱輸送装置4では、還流促進体34が、複数の還流促進部34a、34a、34a・・・からなり、複数の還流促進部34a、34a、34a・・・の毛細管力が相互に異なる構造となっている。なお、図9では、説明の便宜上、還流促進体34は3つの還流促進部34aを有しているが、還流促進部34aの設置数は、複数であれば、特に限定されない。
【0075】
第1のウィック構造体14の毛細管力が還流促進体34の毛細管力よりも大きい態様となっていることに対応して、いずれの還流促進部34aの毛細管力も、第1のウィック構造体14の毛細管力よりも小さい態様となっている。また、還流促進体34の毛細管力は、第2のウィック構造体24の毛細管力よりも大きい、または第2のウィック構造体24の毛細管力と略同等の態様となっていることに対応して、いずれの還流促進部34aの毛細管力も、第2のウィック構造体24の毛細管力よりも大きい、または第2のウィック構造体24の毛細管力と略同等の態様となっている。
【0076】
複数の還流促進部34a、34a、34a・・・は、第2の熱輸送部20の熱輸送方向に沿って連接して配置されている。熱輸送装置4では、複数の還流促進部34a、34a、34a・・・は、相互に、直接接して配置されている。複数の還流促進部34a、34a、34a・・・の毛細管力の大きさは、例えば、還流促進部34aが金属メッシュの場合には、金属メッシュの厚みを調整することで選択でき、還流促進部34aが金属粉の焼結体の場合には、焼結体の空隙率を調整することで選択できる。
【0077】
複数の還流促進部34a、34a、34a・・・の毛細管力が相互に異なることにより、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10へ向かうに従って還流促進体34の毛細管力を大きく設定することができるので、第2の熱輸送部20の先端部33から第1の熱輸送部10方向への液相の作動流体の還流がさらに円滑化される。
【0078】
次に、本発明の熱輸送装置の他の実施形態例について、以下に説明する。上記第1、第2実施形態例の熱輸送装置では、第2の熱輸送部は複数設けられていたが、これに代えて、第2の熱輸送部は1つでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の熱輸送装置は、高入熱量且つ冷却風の風量が増大した使用条件であっても、蒸発部における作動流体のドライアウトを防止できるので、回路基板に搭載された高発熱量の電子部品、例えば、中央演算処理装置等の電子部品を冷却する分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0080】
1、2、3、4 熱輸送装置
10 第1の熱輸送部
11 蒸発部
12 凝縮部
14 第1のウィック構造体
20 第2の熱輸送部
24 第2のウィック構造体
30 接続部
34 還流促進体
35 接続部材
【要約】      (修正有)
【課題】高発熱量の発熱体が熱的に接続される使用条件、冷却風の風量が増大した使用条件であっても、蒸発部における作動流体のドライアウトを防止できる熱輸送装置を提供する。
【解決手段】発熱体100と熱的に接続される蒸発部11を有する第1の熱輸送部10と、前記第1の熱輸送部の凝縮部12にて接続された、前記第1の熱輸送部の熱輸送方向とは異なる熱輸送方向を有する第2の熱輸送部20と、を備え、前記蒸発部から前記凝縮部へ延在した第1のウィック構造体14と、前記第2の熱輸送部の熱輸送方向に沿って延在した第2のウィック構造体24と、前記第2のウィック構造体上に設けられた、毛細管力を有する還流促進体34と、を備え、前記第1のウィック構造体の毛細管力が前記還流促進体の毛細管力よりも大きく、前記還流促進体の毛細管力が前記第2のウィック構造体の毛細管力よりも大きい、または同じである熱輸送装置1。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9