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特許7129692リン酸化合物内包ケイ素系中空粒子によるリン酸の徐放
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】リン酸化合物内包ケイ素系中空粒子によるリン酸の徐放
(51)【国際特許分類】
   C05B 1/04 20060101AFI20220826BHJP
   C05G 3/40 20200101ALI20220826BHJP
   C05B 7/00 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
C05B1/04
C05G3/40
C05B7/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018107593
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019210186
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正浩
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-252619(JP,A)
【文献】特開2008-074645(JP,A)
【文献】特開2011-121813(JP,A)
【文献】特開2011-132044(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026388(WO,A1)
【文献】特開2016-215090(JP,A)
【文献】特開2010-235372(JP,A)
【文献】特開2005-298418(JP,A)
【文献】特開2007-015990(JP,A)
【文献】特開平10-167864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B - C05G
C01B 33/00 - 33/193
B01J 13/02 - 13/22
A61K 9/00 - 9/72
A61K 47/00 - 47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機基で修飾されたケイ素系中空粒子にリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包してなり、
前記有機基での修飾がジイソシアナート化によるものであり、
前記ケイ素系中空粒子の粒径が0.2~100μmであり、
前記ケイ素系中空粒子のピーク細孔径が0.5~4nmである、リン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子を水性環境下に配置することを特徴とする、リン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)の徐放方法。
【請求項3】
水性環境が、酸性又は中性である、請求項2に記載のリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)の徐放方法。
【請求項4】
請求項1に記載のリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子を土壌に適用することを特徴とするリン酸肥料の徐放方法。
【請求項5】
請求項1に記載のリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子を含む、肥料。
【請求項6】
リン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)とケイ酸塩を含む第1水相粒子を有機溶媒と界面活性剤を含む油相中に分散してなるW/Oエマルジョンに沈殿剤水溶液を作用させる工程、及び
前記工程により得られるリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子を、有機基修飾試薬と反応させる工程を含み、
前記ケイ素系中空粒子の粒径が0.2~100μmであり、
前記ケイ素系中空粒子のピーク細孔径が0.5~4nmである、
リン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子の製造方法。
【請求項7】
沈殿剤がハロゲン化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、有機酸アンモニウム、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属セスキ炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ケイ素系中空粒子がシリカ中空粒子である、請求項6に記載のリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子の製造方法。
【請求項8】
沈殿剤がアルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ケイ素系中空粒子がケイ酸塩中空粒子である、請求項6に記載のリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の方法によりリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子を製造する工程を含む、リン酸化合物徐放材料の製造方法。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか1項に記載の方法によりリン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子を製造する工程を含む、肥料の製造方法。
【請求項11】
リン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子を有機基修飾試薬と反応させる工程を含み、
前記有機基修飾試薬がジイソシアナートであり、
前記ケイ素系中空粒子の粒径が0.2~100μmであり、
前記ケイ素系中空粒子のピーク細孔径が0.5~4nmである、リン酸化合物徐放材料の製造方法。
【請求項12】
ケイ素系中空粒子が、シリカ中空粒子又はケイ酸塩中空粒子である、請求項9に記載のリン酸化合物徐放材料の製造方法。
【請求項13】
リン酸化合物(但し、マクロ生体材料を除く)を内包したケイ素系中空粒子が、水難溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子、水難溶性リン酸化合物内包ケイ酸塩中空粒子又は水易溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子である、請求項9又は10に記載のリン酸化合物徐放材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸化合物内包ケイ素系中空粒子及びその製造方法、リン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子の修飾方法、およびリン酸の徐放方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸化合物は生物に必須であり、農業分野ではリン酸化合物は肥料として供給されなければならない。この肥料となるリン酸の供給源はほぼリン鉱石であり、採掘されたリン鉱石の80~90%はリン肥料として使用されている。最近、このリン鉱石の埋蔵量に懸念が生じ、あと50年程度で利用可能なリンが枯渇するとも言われている。したがって、今後の農業や持続的食糧生産のためには、限りあるリン資源を有効に用いることが求められる。また、リン肥料の大量供給と水系への多量の流出は赤潮などの富栄養化をもたらし、深刻な環境問題にもなっている。このように、リン資源の枯渇とリンの大量浪費による環境問題に対して同時に有効な対策となるものに、リン酸の徐放技術がある。すなわち、リンをゆっくりと放出することで、有効に植物に利用させ、かつ無駄なく必要以上は供給しないことで環境問題も抑制することができる。
【0003】
農業分野で肥料を緩慢に放出する技術(徐放技術)は古くから研究され、多くの実用化品も存在する。肥料の三要素である窒素、カリウムとリンのうち、徐放技術が最も進んでいるのは窒素であり、次いでカリウムである。一方、リン肥料はこれまで積極的に徐放性にするということは、他の肥料に比べれば検討されて来なかった。リン酸は土壌中で、アルミニウムや鉄と反応してリン酸アルミニウム等の化合物を形成し、難水溶性になる。このような難水溶性のリン化合物は、緩効性のリン肥料とも言える。しかしながら、このようなリン酸塩からのリン酸の溶出は土壌環境に支配され、積極的にリンの放出挙動を制御できるものにはならない。そこで水溶性の高いリン酸カリウムやリン酸アンモニウム等の固体粉体の周りを被覆して、溶解と放出を制御するコーティング肥料が開発されている。このコーティング肥料は窒素肥料で多く使用されているが、一部のリン肥料にもコーティング肥料も市販されている。このコーティング肥料における被覆材としては、ポリエチレン等のポリオレフィン、アルキド樹脂、ポリエステルオレフィン、クマロン樹脂等の有機ポリマー材料が多く用いられている。コーティング肥料が性能を発揮するのは窒素肥料であるが、上述のようにリン資源の枯渇が問題視される現在、今後は、リン肥料への本格的な展開が求められるであろう。
【0004】
リン酸塩やリン酸化合物を被覆・コーティングすることによる徐放性や緩効性を持ったリン肥料に関する技術では、被覆素材の主流は上記のように有機系素材であり、例えば、天然材料であるキトサンで被覆したもの(特許文献1:特開平09-067273)、ポリオールやイソシアナート(特許文献2:特開2013-173669)、ジカルボン酸のジウレイド(特許文献3:特開2000-351684)、熱可塑性接着剤(特許文献4:特開2001-058894)等の例がある。また、ポリビニルアルコールにリン酸を導入してのリン肥料の徐放技術もある(非特許文献1:Falu Zhan, Mingzhu Liu, Mingyu Guo, Lan Wu, Journal of Applied Polymer Science, 92, 3417-3421 (2004))。これらの有機物は種類や分解様式によっては環境汚染になり得る。また、リン酸化合物を被覆ではなくイオン交換で無機材料に導入して、徐放肥料にする例がある。炭酸塩鉱物の一つで陰イオン交換能を持つハイドロタルサイトに、リン酸イオンを導入して、炭酸イオンを用いることによるリン酸イオンの放出制御が報告されている(非特許文献2:Maarten Everaert, Ruben Warrinnier, Stijn Baken, Jon-Petter Gustafsson, Dirk De Vos, Erik Smolders, ACS Sustainable Chem. Eng., 4, 4280-4287 (2016))。
【0005】
水に易溶性のリン酸化合物ではないリン酸化合物としてリン酸カルシウムがあるが、リン酸鉄やアルミニウムと比べ水への溶解性が高いため、リン肥料の素材に用いられることが多い。このリン酸カルシウム類は、骨の主成分でもあり生体適合性の高さに着目し、体内でのドラッグデリバリーや再生医療への応用が盛んである。しかしながら、その多くは、徐放や放出を制御したいリン酸以外の物質をリン酸カルシウムの殻で被覆して放出をコントロールするものであり、リン酸イオン等のリン酸成分の放出を制御するものではない。例えば、シリカ表面にハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムを析出させる例がある(非特許文献3:Shula Radin, Sylvie Falaize, Mark H. Lee, Paul Ducheyne, Biomaterials, 23, 3113-3122 (2002))。また、シリカ・ケイ酸系材料とリン酸カルシウムとが共存した材料もあるが、これはシリカの細孔をリン酸カルシウムでブロックしたドラッグデリバリーシステム技術であり、リンのデリバリーではない(非特許文献4:Hwa Pyeong Rim, Kyung Hyun Min, Hong Jae Lee, Seo Young Jeong, Sang Cheon Lee, Angew. Chem. Int. Ed., 50, 8853-8857 (2011))。
【0006】
ケイ素の酸化物であるシリカやケイ酸化合物も肥料として利用されている。特にイネ科の植物にとっては必要成分であり、肥料として施肥されている。また土壌の主成分でもあるため、環境汚染のリスクも低い。このシリカやケイ酸化合物を被覆材としてリン肥料を徐放的に放出できる材料が得られれば、同時に二つの肥料成分を供給でき、かつコーティング剤の残留による土壌汚染のリスクもない有効なリン資源の有効利用法となるだろう。このシリカやケイ酸化合物を用いた被覆リン肥料も報告されている。例えば、リン肥料成分を含有する液滴を疎水性超微粒子酸化ケイ素粉末で被覆したもの(特許文献5:特開平09-227264)がある。しかしながら、この方法ではリン肥料は水溶液となっており、被覆部が壊れれば急激に放出されるともに、溶液であるため含有できるリン肥料の量も限定される。リン酸化合物とケイ酸化合物とが複合された材料としては、アルミノケイ酸塩であるゼオライトをリン酸カルシウムで被覆する技術もある(特許文献6:特開2010-116284)が、リンの徐放技術ではない。その他、リン酸カルシウム類を殻成分として被覆素材に利用する例(特許文献7:特開2009-12996)や、ケイ酸マグネシウムを主成分とする蛇紋岩とリン鉱石を溶融した材料によるリン肥料の徐放の報告もあるが、シリカでリン酸カルシウムを被覆したものではない(非特許文献5:Pushpendra Ranawat; Kosanam Mohan Kumar, Navin K. Sharma, Current Science, 96, 843-848 (2009))。一方、リン酸成分のスラリーにゲル状シリカを添加して混合することで、リン酸成分がシリカにより被覆され、それにより即効性あるいは緩効性のリン酸の放出が徐放的になることが報告されている(特許文献8:特開平10-167864)。こうして得られたリン酸含有粒子の主な粒径は2~4mmであり、比較的大きな粒子である。また本発明では、水中へのリン酸の具体的放出挙動は明示されておらず、水中での使用に対応できるかは不明である。また、シリカ粒子とリン酸カルシウム等の素材を混和して、マイクロカプセル化した例もあるが(特許文献9:特開2010-150061)、ここで得られたマイクロカプセルは両者の混合形態であり、シリカとリン酸カルシウムがそれぞれ明確に殻成分、核成分とはなっていない。また、水中等へのリン酸の放出挙動の記載が無く、リン酸の徐放性材料となるかは不明である。
【0007】
シリカやケイ酸化合物の球状粒子内に、それ以外の物質を導入する技術が知られている。例えば、ケイ酸ナトリウムの油中水滴からシリカやケイ酸塩を析出させる方法を応用して、シリカ粒子内に生体高分子(特許文献10,11:特開2007-015990、特開2009-178091)や顔料(特許文献12:特開平07-000804)、紫外線吸収無機粉体(特許文献13:特開平11-226422)を封入する技術がある。また、この技術を発展させ、抗菌性金属を担持したリン酸カルシウム化合物をシリカに封入したものもある(特許文献14:特開2005-298418「抗菌性微粒子、その製造法及び該抗菌性微粒子を含む化粧料又は殺菌殺虫剤」金属担持リン酸カルシウム系化合物の微粒子)。これらの方法の特徴は、W/O/Wエマルジョンを用いることで球状中空粒子を作り出すことにあり、この球状中空粒子を調製する際に用いるケイ酸ナトリウム溶液に他の化合物・材料を混合しておくと、出来上がった微粒子内部に当該化合物・材料が取り込まれることにある。しかしながら、シリカ等の殻部分にはナノサイズではあるがリン酸イオンよりは十分にサイズの大きい細孔が存在するため、リン酸化合物を内包することはできても、リン酸化合物が溶解して微粒子外へ流出する挙動を抑制・制御する性能はないと考えられる。このように、リン酸化合物をシリカやケイ酸化合物で被覆・コーティングした材料を用いて、積極的にリン酸の放出を抑制・制御し、それをリン肥料の徐放技術に応用する例は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平09-067273
【文献】特開2013-173669
【文献】特開2000-351684
【文献】特開2001-058894
【文献】特開平09-227264
【文献】特開2010-116284
【文献】特開2009-12996
【文献】特開平10-167864
【文献】特開2010-150061
【文献】特開2007-015990
【文献】特開2009-178091
【文献】特開平07-000804
【文献】特開平11-226422
【文献】特開2005-298418
【非特許文献】
【0009】
【文献】Falu Zhan, Mingzhu Liu, Mingyu Guo, Lan Wu, Journal of Applied Polymer Science, 92, 3417-3421 (2004)
【文献】Maarten Everaert, Ruben Warrinnier, Stijn Baken, Jon-Petter Gustafsson, Dirk De Vos, Erik Smolders, ACS Sustainable Chem. Eng., 4, 4280-4287 (2016)
【文献】Shula Radin, Sylvie Falaize, Mark H. Lee, Paul Ducheyne, Biomaterials, 23, 3113-3122 (2002)
【文献】Hwa Pyeong Rim, Kyung Hyun Min, Hong Jae Lee, Seo Young Jeong, Sang Cheon Lee, Angew. Chem. Int. Ed., 50, 8853-8857 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、水溶液中へのリン酸成分の放出を緩慢にし、徐放的に制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シリカやケイ酸塩からなる多孔性微粒子内にリン酸化合物を内包させ、シリカやケイ酸塩からなる多孔性微粒子の殻部分の表面を有機基で修飾することにより殻部分の細孔を疎水化し、水溶液の微粒子内への浸入、および水溶液が浸入することで溶解したリン酸成分の微粒子外への溶出を抑制することによって、水溶液中へのリン酸成分の放出を緩慢にし、徐放的に制御する技術を提供するものである。
【0012】
上記のような観点から、シリカやケイ酸塩の中空性微粒子合成過程において、ケイ酸ナトリウム等の水溶液に、水に容易に溶解しないリン酸カルシウム等リン酸化合物の粉体、あるいは水に溶解するリン酸化合物を加え、エマルジョンを安定化する界面活性剤が添加された疎水性有機溶液とからW/Oエマルジョンを形成し、上記ケイ酸ナトリウム等水溶液からシリカやケイ酸塩を生成しうるもう一つの水溶液に加えたW/O/Wエマルジョンを経てケイ酸塩やシリカの中空性微粒子を調製することで、水溶液に溶解しないリン酸カルシウム等リン酸化合物や水に溶解していたリン酸化合物から生成したリン酸塩等を内包したシリカやケイ酸塩の中空性微粒子粉体を得た。また、別途作製したシリカやケイ酸塩の中空性微粒子内部に、水に溶解するリン酸化合物を導入し、水溶性リン酸化合物内包のシリカやケイ酸塩を得た。これらの材料内部のリン酸化合物は、水に難溶性の場合は当該リン酸化合物が溶解する酸性水溶液中において、水に可溶な場合は中性水を含めた水溶液中において容易に材料から溶出するが、シリカやケイ酸塩の中空性微粒子粉体表面に有機基を修飾することで、水の材料内への浸入、および内部からのリン酸の放出が効果的に抑制され、リン酸の溶出を緩慢になり徐放的にすることを可能にすることに成功し、本発明に至った。
【0013】
本発明は、以下のリン酸化合物内包ケイ素系中空粒子及びその製造方法、リン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子の修飾方法、およびリン酸の徐放方法を提供するものである。
項1. 有機基で修飾されたケイ素系中空粒子にリン酸化合物を内包してなる、リン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子。
項2. 項1に記載のリン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子を水性環境下に配置することを特徴とする、リン酸化合物の徐放方法。
項3. 水性環境が、酸性又は中性である、項2に記載のリン酸化合物の徐放方法。
項4. 項1に記載のリン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子を土壌に適用することを特徴とするリン酸肥料の徐放方法。
項5. 項1に記載のリン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子を含む、肥料。
項6. リン酸化合物とケイ酸塩を含む第1水相粒子を有機溶媒と界面活性剤を含む油相中に分散してなるW/Oエマルジョンに沈殿剤水溶液を作用させる工程を含む、リン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子の製造方法。
項7. 沈殿剤がハロゲン化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、有機酸アンモニウム、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属セスキ炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ケイ素系中空粒子がシリカ中空粒子である、項6に記載のリン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子の製造方法。
項8. 沈殿剤がアルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ケイ素系中空粒子がケイ酸塩中空粒子である、項6に記載のリン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子の製造方法。
項9. リン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子を有機基修飾試薬と反応させる工程を含む、リン酸化合物徐放材料の製造方法。
項10. ケイ素系中空粒子が、シリカ中空粒子又はケイ酸塩中空粒子である、項9に記載のリン酸化合物徐放材料の製造方法。
項11. リン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子が、水難溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子、水難溶性リン酸化合物内包ケイ酸塩中空粒子又は水易溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子である、項9又は10に記載のリン酸化合物徐放材料の製造方法。
項12. 有機基修飾試薬がシラザン類、ジアルキルジアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、項9~11のいずれか1項に記載のリン酸化合物徐放材料の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、リン酸化合物をシリカやケイ酸塩等の酸化ケイ素化合物の中空粒子に内包し、かつ当該酸化ケイ素化合物表面を有機基で修飾することで、水溶液の当該リン酸化合物への到達、および中空粒子からのリン酸成分の外への放出を抑制することで、リン酸類の徐放的放出・溶出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子の製造方法
図2】リン酸水素カルシウム内包ケイ酸カルシウム中空粒子の合成方法
図3】リン酸水素カルシウム内包ケイ酸カルシウム中空粒子の走査型電子顕微鏡像
図4】W/O/Wエマルジョンを用いて合成したリン酸水素カルシウムの走査型電子顕微鏡像
図5】非有機基修飾、トリメチルシリル化、およびジイソシアナート修飾された中空粒子からのリン酸イオンの溶出挙動の経時変化
図6】ジイソシアナート修飾したリン酸水素カルシウム内包ケイ酸カルシウム中空粒子からのリン酸イオンの放出挙動の経時変化
図7】リン酸水素カリウム内包シリカ中空粒子からのリン酸イオンの放出挙動
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のケイ素系中空粒子は、ケイ素原子を含む中空粒子であり、具体的にはシリカ中空粒子とケイ酸塩中空粒子を包含する。ケイ酸塩は、ケイ酸のアルカリ土類金属塩である。
【0017】
本明細書において、アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを含み、好ましくはカルシウム又はマグネシウム、より好ましくはカルシウムであり、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムを含み、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、より好ましくはナトリウム、カリウム、さらに好ましくはナトリウムが挙げられる。
【0018】
有機基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1~18の直鎖又は分岐を有するアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基、イソシアナート化合物に由来するウレタン基が挙げられる。
【0019】
本明細書において、水性環境とは、水を含む環境であれば特に限定されないが、例えば水中、土壌中、水耕栽培に用いられる基材中などが挙げられる。水性環境は、酸性(pH2~6)又は中性(pH6~8)、弱アルカリ性(pH8~12)である。
【0020】
本発明のリン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子は、リン酸を徐々に放出することができるので、リン酸肥料として好ましく用いることができる。
【0021】
中空粒子の大きさは、例えば0.2~100μm程度、好ましくは0.5~50μm程度、より好ましくは1~20μm程度である。中空粒子の粒径は、W/Oエマルジョンの粒径(エマルジョンの製造条件)により制御可能である。
【0022】
中空粒子は、多数の細孔を有する。細孔径としては、好ましくは0.5~10nm程度、より好ましくは0.5~4nm程度である。リン酸化合物は、この細孔から徐々に中空粒子外に徐放される。
【0023】
リン酸化合物は、水に難溶性のリン酸化合物と水溶性のリン酸化合物を包含する。水に難溶性のリン酸化合物としては、リン酸カルシウム類、リン酸マグネシウム類、リン酸アルミニウム類、リン酸鉄類などが挙げられる。リン酸カルシウム類としては、リン酸三カルシウムやリン酸水素カルシウム等を例示することができる。リン酸マグネシウム類としては、リン酸三マグネシウムやリン酸水素マグネシウム等を例示することができる。好ましいリン酸化合物はリン酸カルシウム類、リン酸マグネシウム類であり、より好ましくはリン酸カルシウム類である。水溶性のリン酸化合物としては、リン酸アルカリ金属塩(リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸一水素二リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸二水素一リチウムなど)、リン酸アンモニウム類などを例示できる。
【0024】
有機基による修飾は、有機基修飾試薬とケイ素系中空粒子を反応させることにより、行うことができる。有機基修飾試薬としては、有機基を導入可能な試薬であれば特に限定されないが、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのジアリールジアルコキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアリールトリアルコキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシランなどのフルオロアルキルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトラメチルジシラザンなどのシラザン類、イソホロンジイソシアナート、メチルシクロ-ヘキサン-2,4-ジイソシアナート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、1,3-ジ(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルシクロヘキサンジイソシアナート、トリレンジイソシアナートもしくはキシレンジイソシアナートなどのポリイソシアナート類が挙げられる。有機基修飾試薬は、ジメチルシリル化、トリメチルシリル化、又は長鎖アルキル化できる試薬が好ましい。
【0025】
沈殿剤としては、シリカ中空粒子を生成させる場合には、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩、セスキ炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、ケイ酸塩中空粒子を生成させる場合には、アルカリ土類金属のハロゲン化物(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ストロンチウム)、硫酸塩(硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム)、硝酸塩(硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム)、有機酸塩(ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸バリウム、ギ酸ストロンチウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸ストロンチウムなど)が挙げられる。
【0026】
有機溶媒としては、水とほとんど混ざらず、アルカリとほとんど反応をしないものなら特に限定されないが、炭化水素類が好ましく、特にヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のパラフィン系炭化水素(単独溶媒又は混合溶媒)が好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、W/Oエマルジョンを安定化させる効果を持つものならば特に限定されず、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリド等が挙げられ、ソルビタン系の脂肪酸エステルが好ましく、特にTweenやSpan類が好ましい。これらを単独で用いることも可能であるが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の好ましい1つの実施形態において、本発明に関するリン酸化合物を内包したケイ素系中空粒子は以下の1~3の3種類である。
【0029】
1 水難溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子
2 水難溶性リン酸化合物内包ケイ酸塩中空粒子
3 水易溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子
以下において、上記の3種類の中空粒子を中心に説明する。
【0030】
1の「水難溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子」は、水ガラス等のケイ酸塩水溶液に水に難溶性のリン酸化合物粉体を加えて分散させた水相(内水相)と、界面活性剤を加えた疎水性有機溶液(油相)とからなるW/Oエマルジョンを、ケイ酸塩水溶液からシリカを析出させる水溶液(外水相)に加えて形成されたW/O/Wエマルジョンを経て得られる。疎水性有機溶液(油相)は、界面活性剤と有機溶媒を含む。有機溶媒としては、水とほとんど混ざらず、アルカリとほとんど反応をしないものなら特に限定されないが、炭化水素類が好ましく、特にヘキサン、オクタン、デカン等のパラフィン系炭化水素が好ましい。このシリカの中空性微粒子内には当該リン酸化合物を内包させることができるため、目的材料が製造できる(図1参照)。この際に用いるケイ酸塩水溶液は特に限定されないが、水ガラスに代表されるケイ酸ナトリウム類やケイ酸カリウム類などのケイ酸アルカリ金属塩の水溶液を例示できる。また界面活性剤は、W/Oエマルジョンを安定化させるものならば特に限定されないが、ツイーン80、ツイーン85、スパン80等やそれらの混合物を例示できる。その量も特に限定されないが、有機溶液100 mLに対し0.2~3 gが良く、0.5~2 gがより良い。水に難溶性のリン酸化合物は特に限定されないが、種々のリン酸カルシウム類、リン酸マグネシウム類、リン酸アルミニウム類、リン酸鉄類などを例示できる。リン酸カルシウム類としては、リン酸三カルシウムやリン酸水素カルシウム等を例示することができる。ケイ酸塩水溶液からシリカを析出させる沈殿剤水溶液の沈殿剤としては、特に限定されないが、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩、セスキ炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムやこれらの混合物が好ましく、中空粒子内にリン酸化合物を高効率で内包させるには、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムがさらに好ましい。水溶液中の沈殿剤の濃度は特に限定されないが、0.5~4モル/リットルが良く、1~3モル/リットルがより良い。W/Oエマルジョンの作製方法も特に限定されないが、ホモジナイザー等で作製すれば良く、その際の回転数は2000~15000 rpmが良く、3000~8000 rpmがより良い。こうして得られた水難溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子を中性水に浸漬しても、リン酸の溶出はほとんど観測されない。
【0031】
2の「水難溶性リン酸化合物内包ケイ酸塩中空粒子」は、水ガラス等のケイ酸塩水溶液に水に可溶性なリン酸化合物を加えた水溶液(内水相)と界面活性剤を加えた疎水性有機溶液とからなるW/Oエマルジョンを、ケイ酸塩水溶液から水に不溶なケイ酸塩化合物を析出させる水溶液(外水相)に加えて形成されたW/O/Wエマルジョンを経て得られる。このケイ酸塩の中空微粒子内には、当該リン酸化合物と外水相溶液とから生成するリン酸塩を内包させることができるため、目的材料を製造できる(図2参照)。
【0032】
この際に用いるケイ酸塩水溶液や界面活性剤は、上記の材料1と同様である。水に可溶なリン酸化合物としては、特に限定されないが、リン酸カリウム類、リン酸ナトリウム類、リン酸アンモニウム類などを例示できる。ケイ酸塩水溶液から水に不溶なケイ酸塩化合物を析出させる水溶液は特に限定されないが、微粒子内に水に難溶なリン酸化合物を同時に内包させるため、上記の水に可溶なリン酸化合物と反応して水に難溶なリン酸化合物を生成する必要があり、塩化カルシウム、臭化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウムやこれらの混合物を好ましく例示できる。溶液の濃度やW/Oエマルジョンの作製方法も特に限定されず上記の材料1の「水難溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子」と同様である。こうして得られた水難溶性リン酸化合物内包ケイ酸塩中空粒子を中性水に浸漬しても、リン酸の溶出はわずかである。
【0033】
3の「水易溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子」は、別途作製した内包物がないシリカやケイ酸塩の中空微粒子に、水易溶性リン酸化合物の水溶液を浸漬することで作製できる。ここでのシリカやケイ酸塩の中空微粒子は特に限定されないが、例えば、上記材料1の「水難溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子」や材料2の「水難溶性リン酸化合物内包ケイ酸塩中空粒子」の方法でリン酸化合物を添加せずに得られたものを例示することができる。他には、有機ポリマーの微粒子上にシリカやケイ酸塩を析出させてコアシェル体を作り、その後に有機ポリマーを除去して得られる中空粒子でも良い。水に易溶なリン酸化合物としては特に限定されないが、リン酸カリウム類、リン酸ナトリウム類、リン酸アンモニウム類などを例示できる。これらをシリカやケイ酸塩の中空微粒子に導入する方法も特に限定されないが、水に易溶性のリン酸化合物の水溶液中にこれら中空粒子を浸漬させる方法を例示できる。その際、中空微粒子内の空間には通常空気が充填されているため、一度減圧下で脱気した後、水に易溶性のリン酸化合物の水溶液を加えることが好ましく、その後、水を自然蒸発等により除去することで、水易溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子が製造できる。こうして得られた水易溶性リン酸化合物内包シリカ中空粒子を中性水に浸漬すると、ほとんどの場合、容易にリン酸は溶出する。
【0034】
上記の三つの材料を、有機基で修飾することで最終目的材料を製造した。有機基修飾に用いる有機試薬や修飾方法は特に限定されないが、トリメチルシリル化を例示することができる。トリメチルシリル化は、シリカやケイ素酸化物類の表面修飾に頻繁に応用される手法であり、例えば以下のような方法が例示できる。トリメチルシリル化に使用する試薬も特に限定されないが、ヘキサメチルジシラザン等を例示することができる。上記の三つの材料に対し、ヘキサメチルジシラザンを加え、加熱処理を行う。用いるヘキサメチルジシラザンは中空粒子試料1 gに対し、0.1~6 mL程度使用することが良く、1~5 mL使用することがより良い。その際、ヘキサメチルジシラザン等を分解しない有機溶剤を添加しても良い。加熱温度は、室温~200℃が良いが、40~150℃がより良い。その際、トリメチルシリル化に用いる試薬が気化・蒸発する可能性がある場合は、密閉容器で行っても良い。時間も特に限定されないが、1~60時間が良い。反応系の撹拌等の処理は、特に限定されないが、静置よりは撹拌することが好ましい。こうして得られた材料は、有機溶剤による洗浄の後、室温~100℃程度の温度で乾燥処理を行えば良い。
【0035】
また、他の有機基修飾法としては、ジイソシアナート化を例示することができる。上記の三つの材料に対し、2,4-ジイソシアン酸トリレン等の有機溶剤溶液を加え、加熱処理を行う方法である。用いる2,4-ジイソシアン酸トリレンは中空微粒子試料1 gに対し、0.05~5 mL程度使用することが良く、0.1~4 mL使用することがより良い。その際、2,4-ジイソシアン酸トリレン等と反応しない有機溶剤を添加しても良く、その量は2,4-ジイソシアン酸トリレンに対して、2~100倍の容量を用いれば良い。有機溶剤は特に限定されないが、ヘキサン、トルエン等を例示することができる。加熱温度は、室温~200℃が良いが、40~150℃がより良い。時間も特に限定されないが、1~60時間が良い。その際、2,4-ジイソシアン酸トリレンや有機溶剤が気化・蒸発する可能性がある場合は、密閉容器で行っても良い。反応系の撹拌等の処理は特に限定されないが、静置よりも撹拌することが好ましい。こうして得られた材料は、有機溶剤の洗浄の後、室温~100℃程度の温度で乾燥処理を行えば良い。
【0036】
こうして得られた有機基で修飾されたリン酸化合物内包中空微粒子は、水溶液中でリン酸成分をゆっくり放出する。具体的結果は実施例に記載するが、例えば以下のような方法で確認できる。ただし、リン酸の放出方法としては以下に限定されるものではない。
【0037】
水に難溶性のリン酸化合物を内包した中空微粒子では、塩酸等を用いた酸性水溶液、濃度は例えば0.01~1 モル/リットルを用いることができる。一方、水に易溶性のリン酸化合物を内包した中空微粒子では、酸性水溶液の他に蒸留水等の中性水を用いることもできる。中空微粒子の水への混合方法は特に限定されないが、水溶液に中空粒子の粉体試料を加え、激しく撹拌する、静置する、あるいは初期段階のみ撹拌する等を例示できる。また水溶液以外にも、実際の土壌環境等、リン酸化合物が溶解可能な条件下ならば、特に限定されない。
【実施例
【0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
製造例1:内包物無しのシリカ中空粒子の製造
水ガラス3号(29.8 g)、蒸留水約13 mLからなる水溶液を内水相とした。一方、Tween85(1.5g)をn-ヘキサン72 mLに溶かした溶液を油相とした。この2つの溶液から、IKA社製25Tのホモジナイザー(シャフトジェネレーターはS25N-25F)を用いてW/Oエマルジョンを形成させた。回転数は6000 rpmとし、約1分間撹拌した。外水相は、炭酸水素アンモニウムあるいは塩化アンモニウムの水溶液252 mL(2 M)とした。撹拌機を用いてこの外水相溶液を400回転で撹拌させながら、上述のW/Oエマルジョンを即座に加えた。室温でそのまま約10分間撹拌を続けた後、ろ別し、その後、イソプロパノール洗浄1回、蒸留水洗浄2回を行うことで内包物無しのシリカ中空粒子を得た。
【0040】
こうして得られたシリカ中空粒子の窒素吸着測定の結果、塩化アンモニウムで得た中空粒子は比表面積304 m2/g、ピーク細孔径2.97 nm、ピーク粒子径:2.2 μm、また炭酸水素アンモニウムで得たものは比表面積496 m2/g、ピーク細孔径9.23 nm、ピーク粒子径:5.7 μmであった。
【0041】
製造例2:リン酸カルシウム内包シリカ中空粒子の製造
上述の製造例1の実験を基本とし、それを一部変更した方法で合成した。W/Oエマルジョンに用いる内水相である水ガラス3号あるいは水ガラス2号の水溶液に所定量のリン酸三カルシウム[Ca3(PO4)2] (和光純薬製)を加え、良く撹拌して、リン酸三カルシウムを分散させた。この内水相水溶液を、油相であるエマルジョンを安定化する界面活性剤であるTween85を1.5 g溶解したヘキサン溶液に加え、ホモジナイザーを用いてW/Oエマルジョンを作製した。回転数は、3000~8000 rpmで行った。こうして得られたW/Oエマルジョンを外水相である2 Mの塩化アンモニウムに即座に加えた。約10分間撹拌の後、得られた白色沈殿をろ別により分離、その後蒸留水による洗浄と乾燥処理によりリン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子を得た。図1はこの方法の概念図である。こうして得られたリン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子中のリン酸(PO4 2-)量は、当該サンプルを十分量の塩酸水溶液に加えてリン酸三カルシウムを全て溶解させて溶出したリン酸量をモリブデン青法(ハンナ社製高濃度リン酸測定器:HI96717を使用)により定量することで評価した。
【0042】
製造例3 リン酸カルシウム内包ケイ酸カルシウム中空粒子の合成
W/O/Wエマルジョンを用いるケイ酸カルシウム中空粒子の合成法は、製造例1と類似の方法で行った。すなわち、外水相溶液として塩化カルシウムの水溶液を用いる。水ガラスと塩化カルシウムとが反応することでケイ酸カルシウムが形成されるため、ケイ酸カルシウムの球状中空微粒子が得られる。この方法で、内水相である水ガラス水溶液にリン酸水素カリウム(K2HPO4)を溶解させ、同様の操作を行うと、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)とリン酸水素カリウムが同時に塩化カルシウムと反応することになる。この同時の反応によって、ケイ酸カルシウムとリン酸水素カルシウム(CaHPO4)が生成し、結果としてリン酸水素カルシウムを内包したケイ酸カルシウム中空粒子を合成することができる(図2)。
【0043】
水ガラス3号約29.8 gに対し、リン酸水素カリウムを約4 g溶解させた内水相を用い、外水相には塩化カルシウム水溶液(2 M)を用いて合成したケイ酸カルシウム中空粒子の走査型電子顕微鏡像を図3に示す。粒子径にバラツキはあるものの、粒子表面は比較的平坦である。比較として、同様の方法で内水相に水ガラスを添加せずリン酸水素カリウムのみの水溶液を使用して得られたリン酸水素カルシウムの走査型電子顕微鏡像を図4に示すが、このリン酸水素カルシウムは板状の結晶であった。図3に示す球状粒子はケイ酸カルシウムの中空粒子の形状によるものと考えられ、この粒子は外側の殻部分はケイ酸カルシウムが主成分であり、内側はリン酸水素カルシウムが主成分になっていると思われる。このリン酸水素カルシウム内包ケイ酸カルシウム中空粒子中のリン酸成分を、製造例2に記載した方法で評価した結果、16.37重量%であった。
【0044】
実施例1 リン酸水素カリウム内包シリカ中空粒子の合成
製造例1で作製した内包物の無いシリカ中空微粒子内に、シリカ殻の細孔を通じて中空微粒子内部へリン酸を導入することで、リン酸水素カリウム内包シリカ中空粒子を作製した。内包物無しのシリカ中空粒子1 gをフラスコ内に入れ、真空ポンプで十分に減圧し、中空微粒子内にある空気を除去した。その後、減圧を維持したままリン酸水素カリウムの水溶液(リン酸水素カリウム2 g、蒸留水20 mL)を加え、中空微粒子内にリン酸水素カリウム水溶液を導入し、そのまま一晩放置して十分に中空微粒子を水溶液になじませた。その後、減圧を解き、シャーレ上に薄く広げて水を蒸発させた後、80℃に加熱して十分に乾燥させ、リン酸水素カリウム内包シリカ中空微粒子を得た。
【0045】
実施例2 中空粒子類のトリメチルシリル化の方法
リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子1 gに対して、ヘキサメチルジシラザン4 mLを加え、耐圧密閉容器内で80℃、16時間反応させ、その後、ろ別、80℃で乾燥することでトリメチルシリル化中空粒子を得た。修飾後試料のリン酸含有量は、試料の重量増加分を全て有機基成分として計算することにより算出した。
【0046】
修飾後リン酸含有量=修飾前試料中のリン酸含有量(%)×(修飾前の全試料重量(g)/修飾後の全試料重量(g))
【0047】
実施例3 中空粒子類のジイソシアナート化の方法
リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子1 gに対して、2,4-ジイソシアン酸トリレン2 mLとヘキサン40 mLの混合液を加え、耐圧密閉容器内で80~120℃、24時間反応させ、その後、ろ別、80℃で乾燥することでジイソシアナート化した中空粒子を得た。修飾後試料のリン酸含有量は実施例2と同じ方法で評価した。
【0048】
実施例4 リン酸化合物内包中空粒子からのリン酸の徐放
リン酸イオンの徐放特性は、リン酸化合物含有中空微粒子を水溶液中に入れて十分に撹拌し、その水溶液中に溶出したリン酸イオン濃度を計測し、溶液の総量からリン酸イオンの重量を得て、その値から下式にしたがい溶出率を算出した。水溶液中のリン酸濃度は、モリブデン青法(ハンナ社製高濃度リン酸測定器:HI96717を使用)やアスコルビン酸還元モリブデン青法(ハンナ社製低濃度リン酸測定器:HI96713を使用)により定量した。
【0049】
溶出率(%)=水溶液中に溶出したリン酸量(g)/使用した中空微粒子中のリン酸量(g)×100
【0050】
用いた水溶液は、リン酸三カルシウムやリン酸水素カルシウム等の水に難溶性のリン酸塩を内包した中空微粒子の場合は、蒸留水80 mL、0.2 M HCl水溶液20 mLの混合溶液中に、0.1 gの中空微粒子を加え、十分に撹拌した溶液を適宜サンプリングすることで行った。また、水に易溶性であるリン酸水素カリウム等を内包したシリカ中空微粒子からのリン酸の溶出実験は、中性の蒸留水中に中空微粒子を分散、撹拌することで行った。
【0051】
実施例5 リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子からのリン酸の徐放
実施例4に示す方法で、種々のリン酸カルシウム内包シリカ中空粒子からのリン酸イオンの徐放速度の時間変化を評価した。結果を図5に示す。使用した中空粒子は、製造例2で作製したリン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子において水ガラス29.8 gに対しリン酸三カルシウム1 gを用いて作製した試料(「非修飾」)、「非修飾」試料を実施例2の方法でトリメチルシリル化した試料(「トリメチルシリル化」)、および実施例3の方法でジイソシアナート化した試料(「ジイソシアナート化」)である(リン酸含有量:3.44%)。上記のリン酸三カルシウムを含んだ中空粒子等0.1 gを、蒸留水80 mL、0.2 M HCl水溶液20 mLとから調製した酸性水溶液(pH=約1.8)に浸漬し、水溶液中に溶出したリン酸イオンを定量した。「非修飾」のリン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子(リン酸含有量:5.35%)では、2時間後において溶出率は91.5%であり、5時間後は83.8%であった。この溶出率の減少は、溶出したリン酸イオンがシリカ表面に再吸着したためと思われる。すなわち、最初の2時間でほぼ全量のリン酸が酸性水溶液中に溶出したものと考えられる。
【0052】
ヘキサメチルジシラザンを用いてシリカ殻表面を修飾したトリメチルシリル化リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子では、2時間後の溶出率は56.2%、5時間後は62.3%、24時間後は65.8%、75時間後は68.3%であった。最初の2時間で約半分のリン酸が溶出したものの、その後の溶出はかなり緩慢で徐放的であり、約3日後でも溶出率は70%程度であった。このトリメチルシリル化による効果は、シリカ中空粒子の殻部分の表面をトリメチルシリル化することで疎水化し、塩酸水溶液の中空粒子内部への浸入、および浸入した塩酸水溶液により溶解したリン酸イオンの中空粒子外への放出を抑制する二つの作用であると考えられる。
【0053】
シリカ表面を架橋できるようにイソシアナート基が二つあるトリレン-2,4-ジイソシアナート (2,4-TDI)を用いてシリカ表面を修飾したジイソシアナート化修飾リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子からのリン酸イオンの溶出速度は、トリメチルシリル化したものよりもゆっくりでありかなり徐放的であった。約8日後においても徐放は継続しており、その際の溶出率は約75%であった。
【0054】
実施例6 リン酸水素カルシウム内包ケイ酸カルシウム中空粒子からのリン酸の徐放
製造例3の方法を用いリン酸水素カリウムと水ガラスの混合溶液を用いて合成したリン酸水素カルシウム内包ケイ酸カルシウム中空粒子を、実施例3と同じ方法でジイソシアナート化修飾を施した。この中空粒子(リン酸想定含有量:6.91重量%)を用い、実施例4と同じ方法でリン酸の溶出実験を行った。結果を図6に示す。最初の6時間で含有量の半分程度が溶出されたものの、その後の溶出はゆっくりであり、徐放的溶出になることが確認された。
【0055】
実施例7 リン酸水素カリウム内包シリカ中空粒子からのリン酸の徐放
製造例1の方法で作製した内包物が無い、ピーク細孔径2.97 nm(塩化アンモニウムを使用)とピーク細孔径9.23 nm(炭酸水素アンモニウムを使用)の二種類のシリカ中空粒子を用い、実施例1の方法で、減圧下でリン酸水素カリウム水溶液を加えて得たリン酸水素カリウム内包シリカ中空粒子を作製した。この二つの中空粒子を、実施例3の方法でジイソシアナート修飾したリン酸水素カリウム内包シリカ中空粒子からのリン酸溶出試験を行った。リン酸水素カリウムは水に易溶性であるため、浸漬させる水は中性の蒸留水を用いた。溶出挙動の結果を図7に示す。細孔の大きな中空粒子(ピーク細孔径9.23 nm)を用いて作製した試料では、1時間後にはほぼ全てのリン酸イオンが放出された。一方、細孔の小さな中空粒子ピーク(細孔径2.97 nm)を用いてリン酸水素カリウムを充填し、ジイソシアナート修飾を行った中空粒子では、放出は徐放的であり、1時間後の溶出率は約25%で、90%の溶出には24時間必要であり、水溶性リン酸を用いる即効性肥料の徐放に成功した。この中空粒子中の想定リン酸含有量は23.92重量%と高含有量である。一方、この中空粒子の有機基修飾前のものを用いた場合は、大きな細孔を持つ中空粒子と同様、1時間後でほぼ全てのリン酸イオンは放出されていた。すなわち、殻中の細孔が狭いシリカ中空粒子に有機基修飾を施すことで、リン酸イオンの放出は抑制され、徐放的になった。
【0056】
実施例8 ジメチル基修飾リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子からのリン酸の徐放
リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子1 gに対して、ジメチルジメトキシシラン1 mLとn-ヘキサン5 mLを加え、耐圧密閉容器内で120℃、24時間反応させ、その後、ヘキサン洗浄、ろ別、80℃乾燥を行うことで、ジメチル基修飾リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子を得た。この粒子を用い、実施例5と同じ方法でリン酸の徐放を行った。その結果、1時間後の溶出率は38%、3時間後は68%、6時間後は72%、24時間後は83%と徐放的であった。ジメチル基の修飾で粒子は一定程度疎水性膜になっており、この効果によってリン酸が徐放されたと考えられる。
【0057】
実施例9 ドデシル基修飾リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子からのリン酸の徐放
リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子1 gに対して、ドデシルトリメトキシシラン1 mLとn-ヘキサン10 mLを加え、耐圧密閉容器内で120℃、17時間反応させ、その後、ヘキサン100 mL洗浄、ろ別、80℃乾燥を行うことで、ドデシル基修飾リン酸三カルシウム内包シリカ中空粒子を得た。この粒子を用い、実施例5と同じ方法でリン酸の徐放を行った。その結果、1時間後の溶出率は25%、3時間後は31%、6時間後は39%、24時間後は51%、48時間後は65%と徐放的であった。ドデシル基の修飾で粒子はかなり疎水性膜になっており、この効果によってリン酸が徐放されたと考えています。
【0058】
[想定される応用例]
本発明で新しく製造されたリン酸化合物を内包した材料は、多くの分野で利用されると想定されるが、例えば以下のような応用が期待できる。
【0059】
リン肥料となるリン酸化合物を内包した粒子であるため、リン酸の徐放的供給技術への応用が想定される。リン酸カルシウムのような中性水にはほとんど溶解しない化合物を内包した材料は緩効性リン肥料の徐放性に、リン酸水素カリウムのような中性水にも容易に溶解しない化合物を内包した材料は即効性リン肥料の徐放性技術に応用が可能である。この材料は、土壌等の環境への直接の接触を抑制するため、リン酸の溶解や放出を厳密に制御することもできる。これらのことより、リン肥料の効率的な利用やリン資源枯渇の抑制に有効であると期待できる。また、リン酸カルシウムは、歯や骨の原料物質であるため、当該材料に関連する技術、たとえば再生医療分野への応用も期待できる。
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