(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20220826BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220826BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220826BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
B24B41/06 L
(21)【出願番号】P 2018231146
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-18858(JP,A)
【文献】特開2016-2598(JP,A)
【文献】特開2012-40653(JP,A)
【文献】特開2009-246098(JP,A)
【文献】特開2017-56522(JP,A)
【文献】特開2015-223652(JP,A)
【文献】特開2002-367933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
H01L 21/304
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入出域と加工域との間で水平移動する水平移動手段を備えたチャックテーブルと、回転可能なスピンドルの先端に保持され、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石と、該スピンドルを鉛直方向に移動させる鉛直移動手段と、を備える加工装置によってクリープフィード研削する被加工物の研削方法であって、
該研削砥石を被加工物を所定量研削する高さに位置付けた後、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、回転する該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第1の研削ステップと、
該研削ステップの実施後に該研削砥石を被加工物に接触しない高さに退避させた状態で、該チャックテーブルを該加工域から該搬入出域まで移動させる移動ステップと、
該被加工物を180度回転させ、該研削砥石を被加工物を所定量研削する高さに位置付けた後、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、回転する該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第2の研削ステップと、
を少なくとも1回以上行うことを特徴とする被加工物の研削方法。
【請求項2】
搬入出域と加工域との間で水平移動する水平移動手段を備えたチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する回転可能なスピンドルの先端に保持される研削砥石と、該スピンドルを鉛直方向に移動させる鉛直移動手段と、を備える加工装置によってクリープフィード研削する被加工物の研削方法であって、
該研削砥石が被加工物を所定量研削する高さに位置付けられた状態で、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、回転する該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第1の研削ステップと、
該研削砥石が被加工物に接触しない高さに退避させた状態で、該チャックテーブルを該加工域から該搬入出域まで移動させる移動ステップと、
該研削砥石が被加工物を所定量研削する高さに位置付けられた状態で、スピンドルの回転方向を逆転させ、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第2の研削ステップと、
を少なくとも1回以上行うことを特徴とする被加工物の研削方法。
【請求項3】
回転可能なチャックテーブルに保持された被加工物を回転可能なスピンドルの先端に保持された研削砥石によってインフィード研削する被加工物の研削方法であって、
該チャックテーブルの回転中心に該研削砥石が常に接触するように位置づけ、該研削砥石を該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に所定量研削送りしながら被加工物を薄化する被加工物の第1の研削ステップと、
該研削ステップの実施後に該研削砥石を被加工物に接触しない高さに退避させた状態で、該スピンドルの回転方向を逆転させる逆転ステップと、
該チャックテーブルの回転中心に該研削砥石が常に接触するように位置づけ、該研削砥石を該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に所定量研削送りしながら被加工物を薄化する被加工物の第2の研削ステップと、
を少なくとも1回以上行うことを特徴とする被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエーハ等の被加工物を薄化するための研削方法として、種々の被加工物の研削方法が実施されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-246098号公報
【文献】特開2011-18858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1及び特許文献2に示された被加工物の研削方法は、被加工物が銅(Cu)合金又はニッケル(Ni)合金等の金属を含んでいると、該金属を研削した際に、バリが発生しやすい。
【0005】
本発明は、研削後のバリを抑制することができる被加工物の研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の研削方法は、搬入出域と加工域との間で水平移動する水平移動手段を備えたチャックテーブルと、回転可能なスピンドルの先端に保持され、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石と、該スピンドルを鉛直方向に移動させる鉛直移動手段と、を備える加工装置によってクリープフィード研削する被加工物の研削方法であって、該研削砥石を被加工物を所定量研削する高さに位置付けた後、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、回転する該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第1の研削ステップと、該研削ステップの実施後に該研削砥石を被加工物に接触しない高さに退避させた状態で、該チャックテーブルを該加工域から該搬入出域まで移動させる移動ステップと、該被加工物を180度回転させ、該研削砥石を被加工物を所定量研削する高さに位置付けた後、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、回転する該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第2の研削ステップと、を少なくとも1回以上行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の被加工物の研削方法は、搬入出域と加工域との間で水平移動する水平移動手段を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する回転可能なスピンドルの先端に保持される研削砥石と、該スピンドルを鉛直方向に移動させる鉛直移動手段と、を備える加工装置によってクリープフィード研削する被加工物の研削方法であって、該研削砥石が被加工物を所定量研削する高さに位置付けられた状態で、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、回転する該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第1の研削ステップと、該研削砥石が被加工物に接触しない高さに退避させた状態で、該チャックテーブルを該加工域から該搬入出域まで移動させる移動ステップと、該研削砥石が被加工物を所定量研削する高さに位置付けられた状態で、スピンドルの回転方向を逆転させ、該チャックテーブルを該搬入出域から該加工域へ水平方向に移動させることにより、該研削砥石を被加工物の一側面側から反対側の他側面側へ抜けさせてクリープフィード研削する第2の研削ステップと、を少なくとも一回以上行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の被加工物の研削方法は、回転可能なチャックテーブルに保持された被加工物を回転可能なスピンドルの先端に保持された研削砥石によってインフィード研削する被加工物の研削方法であって、該チャックテーブルの回転中心に該研削砥石が常に接触するように位置づけ、該研削砥石を該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に所定量研削送りしながら被加工物を薄化する被加工物の第1の研削ステップと、該研削ステップの実施後に該研削砥石を被加工物に接触しない高さに退避させた状態で、該スピンドルの回転方向を逆転させる逆転ステップと、該チャックテーブルの回転中心に該研削砥石が常に接触するように位置づけ、該研削砥石を該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に所定量研削送りしながら被加工物を薄化する被加工物の第2の研削ステップと、を少なくとも1回以上行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の被加工物の研削方法は、研削後のバリを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された被加工物の要部の断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る被加工物の研削方法において用いられる研削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップにおいて、研削砥石を第1の所定量研削する高さに位置付けた状態を模式的に示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップにおいて、研削砥石が被加工物を研削している状態を模式的に示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図8】
図8は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図4に示された被加工物の研削方法の移動ステップを模式的に示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図4に示された被加工物の研削方法の移動ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図11】
図11は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップにおいて、研削砥石を第1の所定量研削する高さに位置付けた状態を模式的に示す側面図である。
【
図12】
図12は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップにおいて、研削砥石が被加工物を研削している状態を模式的に示す側面図である。
【
図13】
図13は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図14】
図14は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【
図15】
図15は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の移動ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図16】
図16は、
図4に示された被加工物の研削方法の2回目の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図17】
図17は、
図4に示された被加工物の研削方法の2回目の移動ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図18】
図18は、
図4に示された被加工物の研削方法の2回目の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態2に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施形態3に係る被加工物の研削方法において用いられる研削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、実施形態3に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップを模式的に示す側面図である。
【
図23】
図23は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップを模式的に示す平面図である。
【
図24】
図24は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
【
図25】
図25は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【
図26】
図26は、
図21に示された被加工物の研削方法の逆転ステップを模式的に示す側面図である。
【
図27】
図27は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップを模式的に示す側面図である。
【
図28】
図28は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップを模式的に示す平面図である。
【
図29】
図29は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
【
図30】
図30は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【
図31】
図31は、
図21に示された被加工物の研削方法の2回目の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
【
図32】
図32は、
図21に示された被加工物の研削方法の2回目の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された被加工物の要部の断面図である。
図3は、実施形態1に係る被加工物の研削方法において用いられる研削装置の構成例を示す斜視図である。
【0013】
実施形態1に係る被加工物の研削方法は、
図1に示す被加工物1を薄化のために研削する方法である。実施形態1において、被加工物1は、
図1に示すように、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを基板2とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハであり、基板2の表面3が樹脂4により被覆されている。被加工物1は、基板2の表面3に格子状に形成される複数の分割予定ライン5によって区画された領域にそれぞれデバイス6が形成されている。デバイス6は、
図1及び
図2に示すように、それぞれの表面から突出した電極7を複数備え、これら複数の電極7が樹脂4内に埋設されている。電極7は、銅合金又はニッケル合金などの金属により構成された金属部品である。樹脂4は、絶縁性の合成樹脂により構成されている。
【0014】
被加工物1は、樹脂4側に研削加工が施されて、所定の厚さまで薄化されて、樹脂4の表面3に電極7が露出された後等に、分割予定ライン5に沿って個々のデバイス6に分割される。なお、実施形態1では、被加工物1として、基板2の表面3が樹脂4で被覆され、デバイス6の表面から電極7が突出したウエーハを示しているが、本発明では、基板2の表面3にプローブ等の金属から構成された各種の金属部品が形成されたウエーハでも良い。要するに、本発明の被加工物1は、金属から構成される部品が研削されるものであれば良い。
【0015】
実施形態1に係る被加工物の研削方法は、
図3に示す加工装置である研削装置10によって、被加工物1の樹脂4側を研削加工であるクリープフィールド研削する方法である。
【0016】
(研削装置)
研削装置10は、
図3に示すように、装置基台11と、チャックテーブル20と、研削ユニット30と、水平移動手段である加工送りユニット40と、鉛直方向移動手段である切り込み送りユニット50と、制御ユニット100とを備える。
【0017】
チャックテーブル20は、被加工物1の表面3の裏側の裏面8側を保持面21で保持するものである。実施形態1において、チャックテーブル20は、保持面21がポーラス形状であり、保持面21の下に形成された真空吸引経路(不図示)を介して真空吸引源(不図示)と接続されている。チャックテーブル20は、保持面21に被加工物1の裏面8が載置され、保持面21の支持ピン間の空間が真空吸引源により吸引されることで、保持面21に載置された被加工物1を吸引、保持する。また、チャックテーブル20は、図示しない回転駆動源により鉛直方向と平行な軸心回りに回転可能に設けられている。
【0018】
加工送りユニット40は、装置基台11上に設置され、チャックテーブル20を保持面21と平行な加工送り方向であるX軸方向に相対移動させるものである。加工送りユニット40は、チャックテーブル20を支持した支持基台22を水平方向と平行なX軸方向に移動させることで、チャックテーブル20を研削ユニット30から離間した搬入出域101と研削ユニット30の下方の加工域102との間で水平移動する。
【0019】
研削ユニット30は、軸心回りに回転可能なスピンドル33の下端に装着された研削砥石31を含む研削ホイール32でチャックテーブル20に保持された被加工物1の基板2の表面3を被覆した樹脂4を研削するものである。研削ユニット30は、切り込み送りユニット50を介して装置基台11に立設するコラム12に支持され、かつスピンドル33を軸心回りに回転させるモータ34と、スピンドル33の先端に保持された研削ホイール32とを備える。研削ユニット30のスピンドル33の軸心は、鉛直方向と平行なZ軸方向に沿って配置されている。研削ホイール32は、モータ34によりスピンドル33が軸心回りに回転されることで、研削砥石31がチャックテーブル20に保持された被加工物1の樹脂4を研削する。研削砥石31は、研削ホイール32の外縁部に間隔をあけて複数設けられて、スピンドル33の先端に保持され、チャックテーブル20に保持された被加工物1を研削する。
【0020】
切り込み送りユニット50は、装置基台11に立設するコラム12に固定され、研削ユニット30のスピンドル33を保持面21と直交する切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させるものである。切り込み送りユニット50は、研削ユニット30のスピンドル33を下降させて研削砥石31を加工域102のチャックテーブル20に保持された被加工物1に近付け、研削ユニット30を上昇させて研削砥石31を加工域102のチャックテーブル20に保持された被加工物1から遠ざける。
【0021】
加工送りユニット40及び切り込み送りユニット50は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ51、ボールねじ51を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ52及びチャックテーブル20又は研削ユニット30をY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール53を備える。
【0022】
制御ユニット100は、研削装置10を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御するものである。即ち、制御ユニット100は、被加工物1に対する加工動作を研削装置10に実行させるものである。制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0023】
制御ユニット100の演算処理装置は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、研削装置10を制御するための制御信号を生成する。制御ユニット100の演算処理装置は、生成した制御信号を入出力インタフェース装置を介して研削装置10の各構成要素に出力する。また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力手段と接続されている。入力手段は、表示手段に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0024】
前述した
図3に示す研削装置10は、研削砥石31が所定量被加工物1の裏面8を研削する高さに切り込み送りユニット50が研削ユニット30のスピンドル33を位置付け、スピンドル33をモータ34により軸心回りに回転させた状態で、被加工物1を保持したチャックテーブル20を回転させることなく搬入出域101から加工域102に移動させて、被加工物1をクリープフィード研削する。
【0025】
(被加工物の研削方法)
次に、本明細書は、実施形態1に係る被加工物の研削方法を説明する。
図4は、実施形態1に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る被加工物の研削方法は、
図4に示すように、第1の研削ステップST1と、移動ステップST2と、第2の研削ステップST3と、第2の移動ステップST5とを備える。
【0026】
(第1の研削ステップ)
図5は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップにおいて、研削砥石を第1の所定量研削する高さに位置付けた状態を模式的に示す側面図である。
図6は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップにおいて、研削砥石が被加工物を研削している状態を模式的に示す側面図である。
図7は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
図8は、
図4に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【0027】
第1の研削ステップST1は、研削砥石31を被加工物1を第1の所定量201(
図2に示す)研削する高さに位置付けた後、チャックテーブル20を搬入出域101から加工域102へ水平方向に移動させることにより、回転する研削砥石31を被加工物1の一側面1-1側から反対側の他側面1-2側へ抜けさせてクリープフィード研削するステップである。第1の研削ステップST1では、オペレータが搬入出域101のチャックテーブル20の保持面21に被加工物1の裏面8を載置した後、研削装置10が、保持面21に被加工物1を吸引保持する。
【0028】
第1の研削ステップST1では、
図5に示すように、研削装置10は、研削ホイール32をスピンドル33により軸心回りに一方向61に回転させながら研削砥石31が被加工物1の樹脂4側を第1の所定量201研削する高さに位置付ける。第2の研削ステップST3では、
図6に示すように、研削装置10は、チャックテーブル20を軸心回りに回転することなく(軸心回りの回転を停止させた状態で)、搬入出域101から加工域102に向かってX軸方向に移動させる。
【0029】
すると、第1の研削ステップST1では、研削装置10は、
図6に実線で示すように、被加工物1の加工域102側の一側面1-1側から研削砥石31が樹脂4を研削する。第1の研削ステップST1では、研削装置10は、
図6に二点鎖線で示す被加工物1の搬入出域101側の他側面1-2が研削砥石31を抜ける位置までチャックテーブル20を移動させて、被加工物1の一側面1-1側から反対側の他側面1-2側に亘って被加工物1の樹脂4側を第1の所定量201研削する。被加工物の研削方法は、移動ステップST2に進む。
【0030】
なお、実施形態1において、第1の研削ステップST1後の被加工物1は、
図7に示すように、全体として第1の所定量201分薄化されているとともに、第1の研削ステップST1において樹脂4とともに電極7が研削されて、樹脂4の表面に電極7が露出している。また、第1の研削ステップST1後の被加工物1は、電極7のデバイス6の表面から離れた側の先端部に一側面1-1側から他側面1-2側に向かって延びたバリ300が形成されている。第1の研削ステップST1後において、バリ300は、各電極7の先端部から研削中に研削砥石31が抜けた方向に延びている。また、実施形態1において、第1の研削ステップST1後の被加工物1は、
図8に示すように、樹脂4の表面に水平方向と平行でかつX軸方向に対して直交するY軸方向の中央が他側面1-2側に凸の円弧状のソーマーク(研削痕ともいう)401が、一側面1-1から他側面1-2に亘って複数形成されている。なお、
図8は、電極7を省略している。
【0031】
(移動ステップ)
図9は、
図4に示された被加工物の研削方法の移動ステップを模式的に示す側面図である。
図10は、
図4に示された被加工物の研削方法の移動ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【0032】
移動ステップST2は、第1の研削ステップST1の実施後に研削砥石31を被加工物1に接触しない高さに退避させた状態で、チャックテーブル20を加工域102から搬入出域101まで移動させるステップである。また、移動ステップST2は、チャックテーブル20に保持した被加工物1をZ軸方向と平行な軸心回りに180度回転させるステップでもある。
【0033】
移動ステップST2では、研削装置10は、研削ホイール32を
図9に二点鎖線で示す第1の研削ステップST1後の高さから研削砥石31が被加工物1から離れる
図9に実線で示す高さまで上昇させる。また、移動ステップST2では、研削装置10は、チャックテーブル20を
図9に二点鎖線で示す第1の研削ステップST1後の加工域102から
図9に実線で示す搬入出域101へX軸方向に移動させる。また、移動ステップST2では、研削装置10は、チャックテーブル20を軸心回りに180度回転させる。被加工物の研削方法は、第2の研削ステップST3に進む。
【0034】
なお、実施形態1において、移動ステップST2後の被加工物1は、
図10に示すように、電極7の先端部の一側面1-1側から他側面1-2側に向かって延びたバリ300が各電極7の先端部から研削砥石31に近付く方向に延びている。
【0035】
(第2の研削ステップ)
図11は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップにおいて、研削砥石を第1の所定量研削する高さに位置付けた状態を模式的に示す側面図である。
図12は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップにおいて、研削砥石が被加工物を研削している状態を模式的に示す側面図である。
図13は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
図14は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【0036】
第2の研削ステップST3は、研削砥石31を被加工物1を第1の所定量201研削する高さに位置付けた後、チャックテーブル20を搬入出域101から加工域102へ水平方向に移動させることにより、回転する研削砥石31を被加工物1の他側面1-2側から反対側の一側面1-1側へ抜けさせてクリープフィード研削するステップである。
【0037】
第2の研削ステップST3では、
図11に示すように、研削装置10は、研削ホイール32をスピンドル33により軸心回りに一方向61に回転させながら研削砥石31が被加工物1の樹脂4側を第1の所定量201研削する高さに位置付ける。第2の研削ステップST3では、
図12に示すように、研削装置10は、チャックテーブル20を軸心回りに回転することなく(軸心回りの回転を停止させた状態で)、搬入出域101から加工域102に向かってX軸方向に移動させる。
【0038】
すると、第2の研削ステップST3では、研削装置10は、
図12に実線で示すように、被加工物1の加工域102側の他側面1-2側から研削砥石31が樹脂4を研削する。第2の研削ステップST3では、研削装置10は、
図12に二点鎖線で示す被加工物1の搬入出域101側の一側面1-1が研削砥石31を抜ける位置までチャックテーブル20を移動させて、被加工物1の他側面1-2側から反対側の一側面1-1側に亘って被加工物1の樹脂4側を第1の所定量201研削する。このように、第2の研削ステップST3では、被加工物1を第1の研削ステップST1と同様に、第1の所定量201研削する。
【0039】
なお、実施形態1において、第2の研削ステップST3後の被加工物1は、
図13に示すように、第1の研削ステップST1から全体として第1の所定量201分薄化されて、樹脂4の表面に電極7が露出している。また、第2の研削ステップST3後の被加工物1は、電極7のデバイス6の表面から離れた側の先端部に他側面1-2側から一側面1-1側に向かって延びたバリ300が形成されている。このように、第2の研削ステップST3において形成されるバリ300と、第1の研削ステップST1において形成されるバリ300とは、電極7からX軸方向に延びる方向が180度異なる。
【0040】
また、第2の研削ステップST3において形成されるバリ300は、第1の研削ステップST1において形成されるバリ300を含んだ電極7の先端部が研削されて形成されるために、電極7からのX軸方向の突出量302が第1の研削ステップST1後のバリ300の電極7からの突出量301よりも縮小されている。また、実施形態2において、第2の研削ステップST3後の被加工物1は、
図14に示すように、樹脂4の表面にソーマーク401に加え、Y軸方向の中央が一側面1-1側に凸の円弧状のソーマーク(研削痕ともいう)402が他側面1-2から一側面1-1に亘って複数形成されている。なお、
図14は、電極7を省略している。
【0041】
その後、被加工物の研削方法は、研削装置10又はオペレータが第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とを予め定められた所定回数繰り返した否かを判定する(ステップST4)。被加工物の研削方法は、研削装置10又はオペレータが第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とを予め定められた所定回数繰り返していないと判定する(ステップST4:No)と、第2の移動ステップST5に進む。なお、実施形態1では、所定回数は、2回であるが、本発明では、2回に限定されることなく、1回でも3回以上の複数でも良い。要するに、本発明では、第1の研削ステップST1と移動ステップST2と第2の研削ステップST3とを少なくとも1回以上行う。
【0042】
(第2の移動ステップ)
図15は、
図4に示された被加工物の研削方法の第2の移動ステップ後の被加工物の要部の断面図である。第2の移動ステップST5は、第2の研削ステップST3の実施後に研削砥石31を被加工物1に接触しない高さに退避させた状態で、チャックテーブル20を加工域102から搬入出域101まで移動させるステップである。また、第2の移動ステップST5は、チャックテーブル20に保持した被加工物1をZ軸方向と平行な軸心回りに180度回転させるステップでもある。
【0043】
第2の移動ステップST5では、研削装置10は、研削ホイール32を第2の研削ステップST3後の高さから研削砥石31が被加工物1から離れる高さまで上昇させ、チャックテーブル20を第2の研削ステップST3後の加工域102から搬入出域101へX軸方向に移動させる。また、第2の移動ステップST5では、研削装置10は、チャックテーブル20を軸心回りに180度回転させる。被加工物の研削方法は、第1の研削ステップST1に戻る。
【0044】
なお、実施形態1において、第2の移動ステップST5後の被加工物1は、
図15に示すように、電極7の先端部の他側面1-2側から一側面1-1側に向かって延びたバリ300が各電極7の先端部から研削砥石31に近付く方向に延びている。
【0045】
(2回目の第1の研削ステップ、移動ステップ及び第2の研削ステップ)
図16は、
図4に示された被加工物の研削方法の2回目の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
図17は、
図4に示された被加工物の研削方法の2回目の移動ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
図18は、
図4に示された被加工物の研削方法の2回目の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の断面図である。
【0046】
2回目の第1の研削ステップST1は、1回目の第1の研削ステップST1と同じであるが、第2の研削量202が第1の所定量201よりも少なくなるようにしても良い。即ち、2回目の第1の研削ステップST1では、研削装置10は、研削ホイール32をスピンドル33により軸心回りに一方向61に回転させながら研削砥石31が被加工物1の樹脂4側を第2の所定量202研削する高さに位置付け、チャックテーブル20を軸心回りに回転することなく、搬入出域101から加工域102に向かってX軸方向に移動させて、被加工物1の加工域102側の一側面1-1側から他側面1-2側に向かって研削砥石31が樹脂4を研削する。2回目の第1の研削ステップST1では、研削装置10は、被加工物1の搬入出域101側の他側面1-2が研削砥石31を抜ける位置までチャックテーブル20を移動させて、被加工物1の一側面1-1側から反対側の他側面1-2側に亘って被加工物1の樹脂4側を第2の所定量202研削する。
【0047】
なお、実施形態1において、2回目の第1の研削ステップST1後の被加工物1は、
図16に示すように、全体として第2の所定量202分薄化されているとともに、電極7の先端部に形成されたバリ300が一側面1-1側から他側面1-2側に向かって延びているとともに、バリ300の電極7からのX軸方向の突出量303が突出量302よりも縮小されている。
【0048】
2回目の移動ステップST2は、1回目と同様に、第1の研削ステップST1の実施後に研削砥石31を被加工物1に接触しない高さに退避させた状態で、チャックテーブル20を加工域102から搬入出域101まで移動させるとともに、チャックテーブル20に保持した被加工物1をZ軸方向と平行な軸心回りに180度回転させる。
【0049】
なお、実施形態1において、2回目の移動ステップST2後の被加工物1は、
図17に示すように、電極7の先端部の一側面1-1側から他側面1-2側に向かって延びたバリ300が各電極7の先端部から研削砥石31に近付く方向に延びている。
【0050】
2回目の第2の研削ステップST3は、研削量が第1の所定量201よりも少ない第2の所定量202であること以外、1回目の第2の研削ステップST3と同じである。即ち、2回目の第2の研削ステップST3では、研削装置10は、研削ホイール32をスピンドル33により軸心回りに一方向61に回転させながら研削砥石31が被加工物1の樹脂4側を第2の所定量202研削する高さに位置付け、チャックテーブル20を軸心回りに回転することなく、搬入出域101から加工域102に向かってX軸方向に移動させて、被加工物1の加工域102側の他側面1-2側から一側面1-1側に向かって研削砥石31が樹脂4を研削する。2回目の第2の研削ステップST3では、研削装置10は、被加工物1の搬入出域101側の一側面1-1が研削砥石31を抜ける位置までチャックテーブル20を移動させて、被加工物1の他側面1-2側から反対側の一側面1-1側に亘って被加工物1の樹脂4側を第2の所定量202研削する。このように、2回目の第2の研削ステップST3では、被加工物1を2回目の第1の研削ステップST1と同様に、第2の所定量202研削する。
【0051】
また、実施形態1において、2回目の第2の研削ステップST3後の被加工物1は、
図18に示すように、全体として第2の所定量202分薄化されているとともに、電極7の先端部に形成されたバリ300が他側面1-2側から一側面1-1側に向かって延びているとともに、バリ300の電極7からのX軸方向の突出量304が突出量303よりも縮小されている。
【0052】
このように、本発明の被加工物の研削方法は、移動ステップST2,ST5において被加工物1を軸心回りに180度回転することで、第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とで被加工物1に対する研削砥石31の水平方向の相対的な移動方向を逆向きにするとともに、同じ所定量201,202被加工物1を研削する。また、本発明の被加工物の研削方法は、第1の研削ステップST1及び第2の研削ステップST3を繰り返すのにしたがって被加工物1を研削する所定量201,202を段階的に少なくしても良い。
【0053】
被加工物の研削方法は、研削装置10又はオペレータが第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とを予め定められた所定回数繰り返したと判定する(ステップST4:Yes)と、終了する。
【0054】
実施形態1に係る被加工物の研削方法は、被加工物1を研削して薄化する際に、移動ステップST2,ST5において被加工物1を軸心回りに180度回転することで、第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とで被加工物1に対する研削砥石31の水平方向の相対的な移動方向を逆向きにする。このために、被加工物の研削方法は、各研削ステップST1,ST3において、前の研削ステップST1,ST3で形成されたバリ300を研削して、第1の研削ステップST1後のバリ300の突出方向と第2の研削ステップST3後のバリ300の突出方向とが互いに逆向きになり、バリ300の突出量301,302,303,304を徐々に減少させることができる。その結果、被加工物の研削方法は、研削後のバリ300を抑制することができるという効果を奏する。
【0055】
また、被加工物の研削方法は、第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とで被加工物1に対する研削砥石31の水平方向の相対的な移動方向を逆向きにするとともに、同じ所定量201,202被加工物1を研削するので、各研削ステップST1,ST3後のバリ300の突出量301,302,303,304を徐々に減少させることができる。
【0056】
また、被加工物の研削方法は、第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とを1回以上行い、実施形態では、第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とを複数回繰り返すので、各研削ステップST1,ST3後のバリ300の突出量301,302,303,304を徐々に減少させることができる。
【0057】
また、実施形態1では、被加工物の研削方法は、第1の研削ステップST1及び第2の研削ステップST3を繰り返すのにしたがって被加工物1を研削する所定量201,202を段階的に少なくするので、各研削ステップST1,ST3後のバリ300の突出量301,302,303,304を徐々に減少させることができる。
【0058】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。
図19は、実施形態2に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。
図19は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
実施形態2に係る被加工物の研削方法は、移動ステップST2-2,ST5-2において、被加工物1を180度回転させることの代わりに、研削ユニット30のスピンドル33の回転方向を逆転させること以外、実施形態1と同じである。
【0060】
即ち、実施形態2に係る被加工物の研削方法では、研削装置10は、移動ステップST2-2において、回転方向が一方向61から一方向と逆向きの他方向62(
図5などに示す)となるようにスピンドル33の回転方向を逆転させ、第2の移動ステップST5-2において、回転方向が他方向62から一方向61となるようにスピンドル33の回転方向を逆転させる。
【0061】
こうして、実施形態2に係る被加工物の研削方法は、移動ステップST2-2,ST5-2においてスピンドル33の回転方向を逆転することで、第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とで被加工物1に対する研削砥石31の研削ホイール32の周方向の相対的な移動方向を逆向きにする。
【0062】
実施形態2に係る被加工物の研削方法は、被加工物1を研削して薄化する際に、移動ステップST2-2,ST5-2においてスピンドル33の回転方向を逆転することで、第1の研削ステップST1と第2の研削ステップST3とで被加工物1に対する研削砥石31の研削ホイール32の周方向の相対的な移動方向を逆向きにする。このために、被加工物の研削方法は、各研削ステップST1,ST3において、前の研削ステップST1,ST3で形成されたバリ300を研削して、第1の研削ステップST1後のバリ300の突出方向と第2の研削ステップST3後のバリ300の突出方向とが互いに逆向きになり、各研削ステップST1,ST3後のバリ300の突出量301,302,303,304を徐々に減少させることができて、研削後のバリ300を抑制することができるという効果を奏する。
【0063】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る被加工物の研削方法を図面に基づいて説明する。
図20は、実施形態3に係る被加工物の研削方法において用いられる研削装置の構成例を示す斜視図である。なお、本明細書は、実施形態3の説明において、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
実施形態3に係る被加工物の研削方法は、被加工物1を薄化のために研削する方法であって、
図20に示す研削装置10-3のチャックテーブル20に保持された被加工物1をスピンドル33の先端に保持された研削砥石31によって、被加工物1の樹脂4側を研削加工であるインフィールド研削する方法である。
【0065】
(研削装置)
実施形態3に係る被加工物の研削方法において用いられる
図20に示す研削装置10-3は、チャックテーブル20の保持面21がポーラスセラミックス等から構成され、チャックテーブル20の保持面21に吸引保持した被加工物1を加工域102に位置付け、被加工物1のチャックテーブル20の回転中心23(
図20に示す)上の部分にスピンドル33により回転される研削砥石31を常に接触するように位置付けて、研削砥石31をZ軸方向に研削送りしながら被加工物1をインフィード研削する。
【0066】
(被加工物の研削方法)
次に、本明細書は、実施形態3に係る被加工物の研削方法を説明する。
図21は、実施形態3に係る被加工物の研削方法の流れを示すフローチャートである。実施形態3に係る被加工物の研削方法は、
図21に示すように、第1の研削ステップST1-3と、逆転ステップST6と、第2の研削ステップST3-3と、第2の逆転ステップST7とを備える。
【0067】
(第1の研削ステップ)
図22は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップを模式的に示す側面図である。
図23は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップを模式的に示す平面図である。
図24は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
図25は、
図21に示された被加工物の研削方法の第1の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【0068】
第1の研削ステップST1-3は、チャックテーブル20の回転中心23上の被加工物1に研削砥石31が常に接触するように位置づけ、研削砥石31をチャックテーブル20の保持面21に対して垂直な方向であるZ軸方向に第1の所定量201研削送りしながら被加工物1を薄化するステップである。第1の研削ステップST1-3では、オペレータが搬入出域101のチャックテーブル20の保持面21に被加工物1の裏面8を載置した後、研削装置10-3が、保持面21に被加工物1を吸引保持する。
【0069】
第1の研削ステップST1-3では、研削装置10-3は、研削ホイール32をスピンドル33により軸心回りに一方向61に回転させておき、軸心回りに回転させたチャックテーブル20を加工域102まで移動させてから研削ホイール32を下降させて、
図22及び
図23に示すように、研削砥石31がチャックテーブル20の回転中心23上の被加工物1の樹脂4の表面に接触してから第1の所定量201研削送りする。第1の研削ステップST1-3では、研削装置10-3は、被加工物1の樹脂4側を第1の所定量201研削する。被加工物の研削方法は、逆転ステップST6に進む。
【0070】
なお、実施形態3において、第1の研削ステップST1-3後の被加工物1は、
図24に示すように、全体として第1の所定量201分薄化されているとともに、第1の研削ステップST1-3において樹脂4とともに電極7が研削されて、樹脂4の表面に電極7が露出している。また、第1の研削ステップST1-3後の被加工物1は、電極7のデバイス6の表面から離れた側の先端部に研削ホイール32の周方向の一方の側面1-3側から他方の側面1-4側に向かって延びたバリ300-3が形成されている。また、実施形態3において、第1の研削ステップST1-3後の被加工物1は、
図25に示すように、樹脂4の表面にチャックテーブル20の回転中心23から被加工物1の外縁に向かって延びて互いに同方向に湾曲したソーマーク(研削痕ともいう)401-3が複数形成されている。なお、
図25は、電極7を省略している。
【0071】
(逆転ステップ)
図26は、
図21に示された被加工物の研削方法の逆転ステップを模式的に示す側面図である。逆転ステップST6は、第1の研削ステップST1-3の実施後に研削砥石31を被加工物1に接触しない高さに退避させた状態で、スピンドル33の回転方向を逆転させるステップである。
【0072】
逆転ステップST6では、研削装置10-3は、
図26に示すように、研削ホイール32を第1の研削ステップST1-3後の高さから研削砥石31が被加工物1から離れる高さまで上昇させる。また、逆転ステップST6では、研削装置10-3は、スピンドル33の軸心回りの回転方向を第1の研削ステップST1-3における一方向61から一方向61の逆向きの他方向62に逆転させる。被加工物の研削方法は、第2の研削ステップST3に進む。
【0073】
(第2の研削ステップ)
図27は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップを模式的に示す側面図である。
図28は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップを模式的に示す平面図である。
図29は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
図30は、
図21に示された被加工物の研削方法の第2の研削ステップ後の被加工物の表面を模式的に示す平面図である。
【0074】
第2の研削ステップST3-3は、チャックテーブル20の回転中心23上の被加工物1に研削砥石31が常に接触するように位置づけ、研削砥石31をZ軸方向に第1の所定量201研削送りしながら被加工物1を薄化するステップである。第2の研削ステップST3-3では、研削装置10-3は、研削ホイール32をスピンドル33により軸心回りに他方向62に回転させておき、研削ホイール32を下降させて、
図27及び
図28に示すように、研削砥石31がチャックテーブル20の回転中心23上の被加工物1の樹脂4の表面に接触してから第1の所定量201研削送りする。第2の研削ステップST3-3では、研削装置10-3は、被加工物1の樹脂4側を第1の所定量201研削する。このように、第2の研削ステップST3では、被加工物1を第1の研削ステップST1-3と同様に、第1の所定量201研削する。
【0075】
なお、実施形態3において、第2の研削ステップST3-3後の被加工物1は、
図29に示すように、第1の研削ステップST1-3から全体として第1の所定量201分薄化されて、樹脂4の表面に電極7が露出している。また、第2の研削ステップST3-3後の被加工物1は、電極7のデバイス6の表面から離れた側の先端部に他方の側面1-4側から一方の側面1-3側に向かって延びたバリ300が形成されている。このように、第2の研削ステップST3-3において形成されるバリ300と、第1の研削ステップST1-3において形成されるバリ300とは、電極7から延びる方向が180度異なる。
【0076】
また、第2の研削ステップST3-3において形成されるバリ300は、第1の研削ステップST1-3において形成されるバリ300を含んだ電極7の先端部が研削されて形成されるために、電極7からの水平方向の突出量302が第1の研削ステップST1-3において形成されるバリ300の電極7からの突出量301よりも縮小されている。また、実施形態2において、第2の研削ステップST3-3後の被加工物1は、
図30に示すように、樹脂4の表面にソーマーク401-3に加え、回転中心23から被加工物1の外縁に向かって延びかつソーマーク401-3の逆向きに湾曲したソーマーク402-3が複数形成されている。なお、
図30は、電極7を省略している。
【0077】
その後、被加工物の研削方法は、研削装置10-3又はオペレータが第1の研削ステップST1-3と第2の研削ステップST3-3とを予め定められた所定回数繰り返した否かを判定する(ステップST4)。被加工物の研削方法は、研削装置10-3又はオペレータが第1の研削ステップST1-3と第2の研削ステップST3-3とを予め定められた所定回数繰り返していないと判定する(ステップST4:No)と、第2の逆転ステップST7に進む。なお、実施形態3では、所定回数は、2回であるが、本発明では、2回に限定されることなく、1回でも3回以上の複数でも良い。要するに、本発明では、第1の研削ステップST1-3と逆転ステップST6と第2の研削ステップST3-3とを少なくとも1回以上行う。
【0078】
(第2の逆転ステップ)
第2の逆転ステップST7は、第2の研削ステップST3-3の実施後に研削砥石31を被加工物1に接触しない高さに退避させた状態で、スピンドル33の回転方向を逆転させるステップである。第2の逆転ステップST7では、研削装置10-3は、研削ホイール32を第1の研削ステップST1後の高さから研削砥石31が被加工物1から離れる高さまで上昇させ、スピンドル33の軸心回りの回転方向を第2の研削ステップST3-3における他方向62から一方向61に逆転させる。被加工物の研削方法は、第1の研削ステップST1-3に戻る。
【0079】
(2回目の第1の研削ステップ、逆転ステップ及び第2の研削ステップ)
図31は、
図21に示された被加工物の研削方法の2回目の第1の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
図32は、
図21に示された被加工物の研削方法の2回目の第2の研削ステップ後の被加工物の要部の研削ホイールの周方向の断面図である。
【0080】
2回目の第1の研削ステップST1-3は、研削量が第1の所定量201よりも少ない第2の所定量202であること以外、1回目の第1の研削ステップST1-3と同じであり、2回目の第2の研削ステップST3-3は、研削量が第1の所定量201よりも少ない第2の所定量202であること以外、1回目の第2の研削ステップST3-3と同じである。このために、2回目の第2の研削ステップST3-3では、被加工物1を2回目の第1の研削ステップST1-3と同様に、第2の所定量202研削する。
【0081】
なお、実施形態3において、2回目の第1の研削ステップST1-3後の被加工物1は、
図31に示すように、1回の第2の研削ステップST3-3から全体として第2の所定量202分薄化されているとともに、電極7の先端部に形成されたバリ300が一方の側面1-3側から他方の側面1-4側に向かって延びている。また、2回目の第1の研削ステップST1-3において形成されるバリ300の電極7からの水平方向の突出量303は、突出量302よりも縮小されている。
【0082】
また、実施形態3において、2回目の第2の研削ステップST3-3後の被加工物1は、
図32に示すように、2回目の第1の研削ステップST1-3から全体として第2の所定量202分薄化されているとともに、電極7の先端部に形成されたバリ300が他方の側面1-4側から一方の側面1-3側に向かって延びている。2回目の第2の研削ステップST3-3において形成されるバリ300の電極7からの水平方向の突出量304は、突出量303よりも縮小されている。
【0083】
このように、本発明の被加工物の研削方法は、逆転ステップST6,ST7においてスピンドル33即ち研削砥石31の回転方向を逆転させることで、第1の研削ステップST1-3と第2の研削ステップST3-3とで被加工物1に対する研削砥石31の研削ホイール32の周方向の相対的な移動方向を逆向きにするとともに、同じ所定量201,202被加工物1を研削する。また、本発明の被加工物の研削方法は、第1の研削ステップST1-3及び第2の研削ステップST3-3を繰り返すのにしたがって被加工物1を研削する所定量201,202を段階的に少なくしても良い。
【0084】
被加工物の研削方法は、実施形態1と同様に、研削装置10-3又はオペレータが第1の研削ステップST1-3と第2の研削ステップST3-3とを予め定められた所定回数繰り返したと判定する(ステップST4:Yes)と、終了する。
【0085】
実施形態3に係る被加工物の研削方法は、被加工物1を研削して薄化する際に、逆転ステップST6,ST7においてスピンドル33即ち研削砥石31の回転方向を逆転させることで、第1の研削ステップST1-3と第2の研削ステップST3-3とで被加工物1に対する研削砥石31の研削ホイール32の周方向の相対的な移動方向を逆向きにする。このために、被加工物の研削方法は、各研削ステップST1-3,ST3-3において、前の研削ステップST1-3,ST3-3で形成されたバリ300を研削するとともに、各研削ステップST1-3,ST3-3後のバリ300の突出量301,302,303,304を徐々に減少させることができる。その結果、被加工物の研削方法は、実施形態1と同様に、研削後のバリ300を抑制することができるという効果を奏する。
【0086】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 被加工物
1-1 一側面
1-2 他側面
10 研削装置(加工装置)
20 チャックテーブル
23 回転中心
31 研削砥石
33 スピンドル
40 加工送りユニット(水平移動手段)
50 切り込み送りユニット(鉛直移動手段)
101 搬入出域
102 加工域
201 第1の所定量(所定量)
202 第2の所定量(所定量)
ST1,ST1-3 第1の研削ステップ
ST2 移動ステップ
ST3,ST3-3 第2の研削ステップ
ST6 逆転ステップ