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特許7129957口腔内崩壊錠用組成物及びその製造方法並びにこれを用いた口腔内崩壊錠及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】口腔内崩壊錠用組成物及びその製造方法並びにこれを用いた口腔内崩壊錠及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20220826BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220826BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220826BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019149696
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021031404
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】石丸 光男
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴史
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501944(JP,A)
【文献】特表2011-518792(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103356811(CN,A)
【文献】特開2005-132788(JP,A)
【文献】特開2015-168643(JP,A)
【文献】特開2001-322927(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038593(WO,A2)
【文献】Nippon Nogeikagaku Kaishi,Vol.69(9),1995年,pp.1202-1205
【文献】家庭薬研究,Vol.32,2013年,pp.42-49
【文献】家庭薬研究,Vol.35,2016年,pp.39-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性セルロースエーテルと、エピガロカテキンガレード及びエピカテキンガレードからなる群から選ばれる少なくとも1種のカテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物。
【請求項2】
更に、糖アルコールを含む請求項1に記載の口腔内崩壊錠用組成物。
【請求項3】
前記カテキンに対する前記水溶性セルロースエーテルの質量比(水溶性セルロースエーテル/カテキン)は1.0/1~7.5/1である請求項1又は請求項2に記載の口腔内崩壊錠用組成物。
【請求項4】
更に、活性成分を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠用組成物。
【請求項5】
前記水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性セルロースエーテルである請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠用組成物の打錠物である口腔内崩壊錠。
【請求項7】
水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む粉末原料を乾式混合することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程を含む口腔内崩壊錠用組成物の製造方法であって、前記カテキンはエピガロカテキンガレード及びエピカテキンガレードからなる群から選ばれる少なくとも1種のカテキンである前記方法
【請求項8】
水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む粉末原料に対して、水を含む水性原料を添加して造粒を行うことにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程を含む口腔内崩壊錠用組成物の製造方法であって、前記カテキンはエピガロカテキンガレード及びエピカテキンガレードからなる群から選ばれる少なくとも1種のカテキンである前記方法
【請求項9】
水溶性セルロースエーテルと、カテキンとを含む粉末原料を加熱溶融押出することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンとを含む押出物を得る工程と、
前記押出物を粉砕することにより、粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物と、糖を含む原料とを混合することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程
とを含む口腔内崩壊錠用組成物の製造方法であって、前記カテキンはエピガロカテキンガレード及びエピカテキンガレードからなる群から選ばれる少なくとも1種のカテキンである前記方法
【請求項10】
前記粉末原料は、更に活性成分を含む請求項7~9のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠用組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠用組成物を打錠することにより、口腔内崩壊錠を得る工程を含む口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内での優れた崩壊性を有する口腔内崩壊錠を製造するための口腔内崩壊錠用組成物及びその製造方法並びにこれを用いた口腔内崩壊錠及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製剤や健康食品の多くは、錠剤として経口投与により摂取される。錠剤は、通常、水とともに服用する。しかし、緊急を要する場合、重症患者が寝ながら服用する場合などは、錠剤を水とともに服用することが困難である。更に、嚥下機能が未熟な子供や嚥下機能が低下した老人にとっては、錠剤の嚥下が困難な場合があり、錠剤の服用性の改善が望まれている。
【0003】
服用性が改善されたものとして、水無しで服用することができる口腔内崩壊錠が知られている。口腔内崩壊錠としては、薬物、水溶性高分子及び糖又は糖アルコールを含む薬物含有粒子と、マンニトール又はマンニトールとキシリトール、カルボキシメチルセルロース及び崩壊剤を含む噴霧乾燥粒子とを含有することを特徴とする口腔内崩壊錠が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/019043号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の口腔内崩壊錠は、その製造工程が、一方の原料を造粒することにより薬物含有粒子を得て、他方の原料を分散溶媒に分散させて噴霧乾燥して噴霧乾燥粒子を得て、次いで得られた薬物含有粒子及び噴霧乾燥粒子を混合及び打錠することを含み、錠剤化に至るまでの製造工程が煩雑である。
【0006】
また、口腔内崩壊錠は、適度な錠剤強度と優れた崩壊性とを兼ね備えた錠剤であるために、製剤設計が困難なものである。また、特許文献1で使用されているカルボキシメチルセルロースはイオン性の崩壊剤であるため、活性成分との相互作用が起きる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みて、複雑な工程を採用することなく製造することができ、適度な錠剤強度と優れた崩壊性とを有する口腔内崩壊錠を製造するための口腔内崩壊錠用組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む原料を混合してなる組成物を用いることにより製造した口腔内崩壊錠は、適度な硬度を有しながら、口腔内において優れた崩壊性を示すことができることを見出した。
【0009】
そして、遂に、上記の知見に基づいて、本発明の課題を解決し得るものとして、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物;該口腔内崩壊錠用組成物の製造方法;該口腔内崩壊錠用組成物の打錠物である口腔内崩壊錠;該口腔内崩壊錠の製造方法を創作することに成功した。本発明は、本発明者らによって初めて見出された知見及び成功例に基づいて完成されたものである。
【0010】
従って、本発明によれば、以下の態様の口腔内崩壊錠用組成物、口腔内崩壊錠用組成物の製造方法、口腔内崩壊錠及び口腔内崩壊錠の製造方法が提供される。
[1]水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物。
[2]更に、糖アルコールを含む[1]に記載の口腔内崩壊錠用組成物。
[3]前記カテキンに対する前記水溶性セルロースエーテルの質量比(水溶性セルロースエーテル/カテキン)は1.0/1~7.5/1である[1]又は[2]に記載の口腔内崩壊錠用組成物。
[4]更に、活性成分を含む[1]~[3]のいずれかに記載の口腔内崩壊錠用組成物。
[5]前記水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性セルロースエーテルである[1]~[4]のいずれかに記載の口腔内崩壊錠用組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の口腔内崩壊錠用組成物の打錠物である口腔内崩壊錠。
[7]水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む粉末原料を乾式混合することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程を含む口腔内崩壊錠用組成物の製造方法。
[8]水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む粉末原料に対して、水を含む水性原料を添加し造粒を行うことにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程を含む口腔内崩壊錠用組成物の製造方法。
[9]水溶性セルロースエーテルと、カテキンとを含む粉末原料を加熱溶融押出することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンとを含む押出物を得る工程と、前記押出物を粉砕することにより、粉砕物を得る工程と、前記粉砕物と、糖を含む原料とを混合することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程とを含む口腔内崩壊錠用組成物の製造方法。
[10]前記粉末原料は、更に活性成分を含む[7]~[9]のいずれかに記載の口腔内崩壊錠用組成物の製造方法。
[11][7]~[10]のいずれかに記載の口腔内崩壊錠用組成物を打錠することにより、口腔内崩壊錠を得る工程を含む口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複雑な工程を採用することなく、十分な硬度を有し、かつ優れた崩壊性を示す口腔内崩壊錠を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一態様である口腔内崩壊錠用組成物、口腔内崩壊錠用組成物の製造方法、口腔内崩壊錠及び口腔内崩壊錠の製造方法について詳細に説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0013】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
【0014】
「組成物」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の成分が組み合わさってなる物である。「原料」は組成物を構成するための1種の成分又は2種以上の成分の組み合わせを意味する。
「口腔内崩壊錠」は、口腔内において口腔内の唾液のみ又は少量の水により短時間(概ね1分間以内、好ましくは30秒間以内)で崩壊する錠剤を意味する。
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、組成物の全体量に対する成分の量の割合を意味する。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100質量%を超えることはない。
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である。)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
【0015】
整数値の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0016】
<口腔内崩壊錠用組成物>
本発明の一態様の口腔内崩壊錠用組成物は、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む。
【0017】
水溶性セルロースエーテルは、セルロースの水酸基の一部をエーテル化した非イオン性の高分子である。口腔内崩壊錠用組成物において、水溶性セルロースエーテルは、結合剤として機能するとともに、水和して膨潤することにより、崩壊剤としても機能する。
【0018】
水溶性セルロースエーテルは、水溶性を示すセルロースエーテルであればエーテルを構成する有機基については特に限定されないが、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースなどが挙げられる。
【0019】
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられるが、易水溶性であるメチルセルロースが好ましい。
【0020】
メチルセルロースにおけるメトキシ基含有量は、水への溶解性の観点から、好ましくは26.0質量%~33.0質量%であり、より好ましくは27.5質量%~31.5質量%である。メチルセルロースにおけるメトキシ基含有量は、第十七改正日本薬局方の「メチルセルロース」の項に記載の定量法によって測定される値である。
【0021】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられるが、溶解性の観点からヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0022】
ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基含有量は、溶解性の観点から、好ましくは53.4質量%~77.5質量%であり、より好ましくは60.0質量%~70.0質量%である。ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基含有量は、第十七改正日本薬局方の「ヒドロキシプロピルセルロース」の項に記載の定量法によって測定される値である。
【0023】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、例えば、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース;以下、「HPMC」とも記載する。)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースなどが挙げられるが、成形性及び崩壊性の観点から、HPMCが好ましい。
【0024】
HPMCにおけるメトキシ基含有量は、水への溶解性の観点から、好ましくは16.5質量%~30.0質量%であり、より好ましくは19.0質量%~30.0質量%であり、更に好ましくは19.0質量%~29.0質量%である。また、HPMCにおけるヒドロキシプロポキシ基含有量は、水への溶解性の観点から、好ましくは3.0質量%~32.0質量%であり、より好ましくは3.0質量%~12.0質量%であり、更に好ましくは4.0質量%~12.0質量%である。HPMCにおけるヒドロキシプロポキシ基含有量及びメトキシ基含有量は、第十七改正日本薬局方の「ヒプロメロース」の項に記載の定量法によって測定される値である。
【0025】
水溶性セルロースエーテルにおける平均粒子径は、口腔内崩壊錠における硬度及び崩壊性の観点から、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは55μm~500μmであり、更に好ましくは60μm~300μmである。水溶性セルロースエーテルにおける平均粒子径は、後述する実施例に記載があるとおりの方法によって測定される値(体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値)である。
【0026】
水溶性セルロースエーテルの2質量%水溶液の20℃における粘度は、口腔内崩壊錠における硬度の観点から、好ましくは1.0mPa・s~150,000mPa・sであり、より好ましくは2.0mPa・s~120,000mPa・sであり、更に好ましくは2.5mPa・s~6,000mPa・sである。水溶性セルロースエーテルの2質量%水溶液の20℃における粘度は、後述する実施例に記載があるとおりの方法によって測定される値である。
【0027】
水溶性セルロースエーテルは、上記に挙げたものなどの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。水溶性セルロースエーテルは、市販のものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0028】
カテキンは、通常知られているとおりの、ポリフェノールの一種であり、チャ(茶)抽出物であれば特に限定されない。また、カテキンには、エピカテキン及びエピガロカテキンに加えて、ガレード基を有するエピガロカテキンガレード及びエピカテキンガレードが含まれる。
【0029】
カテキンは、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレード及びエピカテキンガレードのいずれか2種、3種又は4種全てを含むものであることが好ましい。
【0030】
カテキンは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。カテキンは、市販のものを用いてもよいし、茶葉から常法に従って抽出して得られたものを用いてもよい。
【0031】
カテキンは、本発明者らが見出した知見によれば、水の存在下において、水溶性セルロースエーテルとともに不溶性の膨潤物を形成する。更に形成された不溶性の膨潤物は、口腔内崩壊錠用組成物における崩壊性に寄与する。
【0032】
本発明者らが見出した知見によれば、カテキンに対する水溶性セルロースエーテルの質量比(水溶性セルロースエーテル/カテキン)が大きい口腔内崩壊錠用組成物を用いることにより、硬度及び崩壊性に優れる口腔内崩壊錠が得られる傾向にある。そこで、カテキンに対する水溶性セルロースエーテルの質量比(水溶性セルロースエーテル/カテキン)は、水溶性セルロースエーテル及びカテキンによる不溶体の形成の観点から、好ましくは0.5/1~7.5/1であり、より好ましくは1.0/1~7.5/1であり、更に好ましくは1.0/1~5.0/1である。
【0033】
水溶性セルロースエーテル及びカテキンの各含有量は、得られる口腔内崩壊錠の硬度及び崩壊性の観点から、水溶性セルロースエーテルの含有量は1.0質量%~10質量%が好ましく、1.5質量%~5.0質量がより好ましく;及び/又は、カテキンの含有量は0.1質量%~10質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
【0034】
糖は、口腔内崩壊錠内部への導水を促進する媒体として機能する。
糖としては、例えば、乳糖、マルトース、ショ糖、プルラン、トレハロース、イソマルトース、ツラノース、セロビオースなどが挙げられるが、易水溶性の観点から単糖及び二糖であることが好ましい。糖の平均粒子径は、口腔内崩壊錠における硬度及び崩壊性の観点から、好ましくは5μm~100μmであり、より好ましくは10μm~50μmである。糖の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法によって測定される値(体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値)である。
【0035】
口腔内崩壊錠用組成物における糖の含有量は、口腔内崩壊錠における導水性の観点から、水溶性セルロースエーテル及びカテキンの総質量100質量部に対して、好ましくは500質量部~2,500質量部であり、より好ましくは800質量部~2,200質量部である。
【0036】
糖は、上記したものなどの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また、糖は、市販のものを用いることができる。
【0037】
口腔内崩壊錠用組成物は、更に糖アルコールを含むことが好ましい。口腔内崩壊錠用組成物が糖アルコールを含む場合、得られる口腔内崩壊錠における導水性が高まり、口腔内崩壊錠の崩壊性を向上させることができる。
【0038】
糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、D/L(-/+)-マンニトール、キシリトール、イソマルト、ソルビトールなどが挙げられる。糖アルコールの平均粒子径は、口腔内崩壊錠における硬度及び崩壊性の観点から、好ましくは5μm~500μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。糖アルコールの平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法によって測定される値(体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値)である。
【0039】
口腔内崩壊錠用組成物における糖アルコールの含有量は、口腔内崩壊錠における崩壊性の観点から、水溶性セルロースエーテル及びカテキンの総質量100質量部に対して、好ましくは200質量部~2,000質量部、より好ましくは300質量部~1,600質量部である。
【0040】
糖アルコールは、上記したものなどの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また、糖アルコールは、市販のものを用いることができる。
【0041】
口腔内崩壊錠用組成物は添加物を含むことができ、例えば、口腔内崩壊錠を通常製造するために使用される添加物を含むことができる。このような添加物としては、例えば、滑沢剤、矯味剤、香料剤の他、安定化剤、流動化剤、着色剤、清涼剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘剤などが挙げられる。添加物の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜設定され得る。添加物のいくつかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0042】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。矯味剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。香料剤としては、例えば、メントール、ハッカ油、バニリンなどが挙げられる。
【0043】
また、口腔内崩壊錠用組成物は、本発明の課題解決を妨げない限り、上記の水溶性セルロースエーテル、カテキン、糖に加えて、他の任意の崩壊剤、結合剤及び/又は賦形剤を含んでもよい。崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コーンスターチ、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、クロスポビドンなどが挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、粉末セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0044】
例えば、造粒工程及び加熱溶融押出工程を採用する場合は、採用する製造工程に応じて、溶媒、可塑剤、界面活性剤などを添加物として利用できる。
【0045】
溶媒としては、例えば、精製水などの水、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1~3の低級アルコールなどが挙げられる。可塑剤としては、例えば、アセトン、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの好ましくは炭素数10~20の高級アルコール、グリセリンなどの好ましくは2~6価の多価アルコール、ビーズワックス、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール又はプロピレングリコール糖のアルキレングリコール、トリアセチン、ジブチルセバセート、グイセリンモノステアレート、モノグリセリンアセテートなどが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、ジグリセリド、ポロクサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ツイン20、60、80)、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、レシチン、タウロコール酸ナトリウムなどの天然界面活性剤などが挙げられる。
【0046】
添加物は、上記したものなどの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また、添加物は、市販のものを用いることができる。
【0047】
口腔内崩壊錠用組成物における添加物の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、特に限定されないが、口腔内崩壊錠における硬度及び崩壊性の観点から、水溶性セルロースエーテル及びカテキンの総質量100質量部に対して、好ましくは0質量部~10,000質量部、より好ましくは50質量部~1,000質量部である。
【0048】
口腔内崩壊錠用組成物は、更に活性成分を含むことが好ましい。活性成分としては、経口投与可能な活性成分であれば特に限定されないが、例えば、医薬品に用いられる薬物、並びに栄養機能食品、特定保健用食品及び機能性表示食品などの健康食品に用いられる有効成分などが挙げられる。
【0049】
医薬品に用いられる薬物としては、例えば、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質、鎮咳・去たん剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛消炎剤、利尿剤、自律神経作用薬、抗マラリア剤、止潟剤、向精神剤、ビタミン類及びその誘導体などが挙げられる。
【0050】
中枢神経系薬物としては、例えば、ジアゼパム、イデベノン、ナプロキセン、ピロキシカム、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン及びクロルジアゼポキシドなどが挙げられる。
【0051】
循環器系薬物としては、例えば、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビト、塩酸デラプリル、塩酸メクロフェノキサート、塩酸ジルチアゼム、塩酸エチレフリン、ジギトキシン及び塩酸アルプレノロールなどが挙げられる。
【0052】
呼吸器系薬物としては、例えば、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール及びグアイフェネシンなどが挙げられる。
【0053】
消化器系薬物としては、例えば、2-[〔3-メチル-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5-メトキシ-2-〔(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾールなどの抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、塩酸ピレンゼピン、パンクレアチン、ビサコジル及び5-アミノサリチル酸などが挙げられる。
【0054】
抗生物質としては、例えば、塩酸タランピシリン、塩酸バカンピシリン、セファクロル及びエリスロマイシンなどが挙げられる。
【0055】
鎮咳・去たん剤としては、例えば、塩酸ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、クエン酸イソアミニル及びリン酸ジメモルファンなどが挙げられる。
【0056】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン及び塩酸プロメタジンなどが挙げられる。
【0057】
解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、スルピリン、アスピリン及びケトプロフェンなどが挙げられる。
【0058】
利尿剤としては、例えば、カフェインなどが挙げられる。
【0059】
自律神経作用薬としては、例えば、リン酸ジヒドロコデイン及びdl-塩酸メチルエフェドリン、硫酸アトロピン、塩化アセチルコリン、ネオスチグミンなどが挙げられる。
【0060】
抗マラリア剤としては、例えば、塩酸キニーネなどが挙げられる。止潟剤としては、例えば、塩酸ロペラミドなどが挙げられる。向精神剤としては、例えば、クロルプロマジンなどが挙げられる。
【0061】
ビタミン類及びその誘導体としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、フルスルチアミン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸カルシウム及びトラネキサム酸などが挙げられる。
【0062】
健康食品に用いられる有効成分としては、例えば、前記ビタミン類及びその誘導体、ミネラル、カロテノイド、アミノ酸及びその誘導体、植物エキス並びに健康食品素材などが挙げられる。
【0063】
ミネラルとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅、セレン、クロム、硫黄、ヨウ素などが挙げられる。
【0064】
カロテノイドとしては、例えば、β-カロチン、α-カロチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、リコペン、アスタキサンチン、マルチカロチンなどが挙げられる。
【0065】
アミノ酸としては、例えば、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸及び酸性アミノ酸アミドなどが挙げられる。
【0066】
酸性アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸などが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン及びヒスチジンなどが挙げられる。
【0067】
中性アミノ酸としては、例えば、アラニン及びグリシンなどの直鎖状の脂肪族アミノ酸、バリン、ロイシン及びイソロイシンなどの分岐状の脂肪族アミノ酸、セリン及びトレオニンなどのヒドロキシアミノ酸、システイン及びメチオニンなどの含硫アミノ酸、フェニルアラニン及びチロシンなどの芳香族アミノ酸、トリプトファンなどの複素環式アミノ酸及びプロリンなどのイミノ酸などが挙げられる。
【0068】
酸性アミノ酸アミドとしては、例えば、アスパラギン及びグルタミンなどが挙げられる。
【0069】
アミノ酸誘導体としては、例えば、アセチルグルタミン、アセチルシステイン、カルボキシメチルシステイン、アセチルチロシン、アセチルヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシプロリン、グルタチオン、クレアチン、S-アデノシルメチオニン、グリシルグリシン、グリシルグルタミン、ドーパ、アラニルグルタミン、カルニチン及びγ-アミノ酪酸などが挙げられる。
【0070】
植物エキスとしては、例えば、アロエ、プロポリス、アガリクス、高麗人参、イチョウ葉、ウコン、クルクミン、発芽玄米、椎茸菌糸体、甜茶、甘茶、メシマコブ、ごま、にんにく、マカ、冬虫夏草、カミツレ及びトウガラシなどが挙げられる。
【0071】
健康食品素材としては、例えば、ローヤルゼリー、食物繊維、プロテイン、ビフィズス菌、乳酸菌、キトサン、酵母、グルコサミン、レシチン、ポリフェノール、動物魚介軟骨、スッポン、ラクトフェリン、シジミ、エイコサペンタエン酸、ゲルマニウム、酵素、クレアチン、カルニチン、クエン酸、ラズベリーケトン、コエンザイムQ10、メチルスルホニルメタン及びリン脂質結合大豆ペプチドなどが挙げられる。
【0072】
活性成分の含有量は、所望の薬理作用又は機能性などに応じて適宜決定することができるが、例えば、口腔内崩壊錠の硬度及び崩壊性の観点から、水溶性セルロースエーテル及びカテキンの総質量100質量部に対して、好ましくは200質量部~1,100質量部である。
【0073】
活性成分は、上記したものなどの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また、活性成分は、市販のものを用いることができる。
【0074】
<口腔内崩壊錠用組成物の製造方法>
口腔内崩壊錠用組成物は、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含み、かつ打錠工程に供することにより口腔内崩壊錠が得られるように製造される。口腔内崩壊錠用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、乾式混合、造粒、加熱溶融押出などの工程を含む方法などが挙げられる。
【0075】
[乾式混合]
乾式混合を採用する方法は、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む粉末原料を乾式混合することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程を含む。
【0076】
乾式混合の方法は、特に限定されない。乾式混合に供する粉末原料は、糖アルコール及び任意の添加物を含んでもよい。粉末原料は、活性成分を含むことが好ましい。
【0077】
乾式混合を採用する場合、口腔内崩壊錠用組成物によって製造される口腔内崩壊錠の崩壊性の観点から、平均粒子径が100μm以上である水溶性セルロースエーテルを用いることが好ましく、平均粒子径が100μm~300μmである水溶性セルロースエーテルを用いることがより好ましい。口腔内崩壊錠用組成物は、このような平均粒子径を有する水溶性セルロースエーテルを含有することにより、打錠後においても、水溶性セルロースエーテルがある程度の大きさで口腔内崩壊錠に存在することができるため、より崩壊性に優れる。水溶性セルロースエーテルの平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法によって測定される値(体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値)である。
【0078】
[造粒]
造粒を採用する方法は、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む粉末原料に対して、水を含む水性原料を添加して造粒を行うことにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程を含む。
【0079】
造粒は、造粒機を用いることにより行うことができる。造粒機としては、例えば、流動層造粒機、撹拌造粒機、転動流動層造粒機、噴霧乾燥造粒機などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
流動層造粒機を用いて造粒を行う場合、造粒の進行効率及び造粒物の品質の観点から、吸気温度は好ましくは50℃~100℃であり;及び/又は、排気温度は好ましくは25℃~80℃である。
【0081】
水性原料における水の含有量は特に限定されないが、好ましくは20質量%~100質量%である。水性原料は結合剤の水溶液を含めてもよい。また、水性原料は成分の溶解性を高めるために炭素数1~3の低級アルコールを含むことが好ましい。水性原料における炭素数1~3の低級アルコールの含有量は、結合剤の溶解性の観点から、好ましくは10質量%~80質量%である。また、粉末原料及び/又は水性原料は、任意に、糖アルコール及びその他の添加物を含み得る。粉末原料は、活性成分を含むことが好ましい。
【0082】
造粒物の平均粒子径は、口腔内崩壊錠用組成物によって製造される口腔内崩壊錠の硬度及び崩壊性の観点から、好ましくは120μm~500μmであり、より好ましくは150μm~250μmである。造粒物の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法によって測定される値(体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値)である。
【0083】
造粒物は、乾燥処理に供することが好ましい。ただし、噴霧と乾燥とを同時に行うことができる流動層造粒機などを用いる場合はこの限りではない。造粒物の乾燥は、公知の方法、例えば、流動層乾燥機、棚団乾燥機などを用いて行うことができる。乾燥温度は特に限定されないが、好ましくは40℃~80℃である。
【0084】
造粒物の水分は、製剤の安定性の観点から、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%~1質量%である。造粒物の水分は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0085】
造粒により口腔内崩壊錠用組成物を製造する場合においては、生産性の観点から、2質量%水溶液の20℃における粘度が1.0mPa・s~100mPa・sである水溶性セルロースエーテルを用いることが好ましく、2質量%水溶液の20℃における粘度が2.0mPa・s~10.0mPa・sである水溶性セルロースエーテルを用いることがより好ましい。
【0086】
造粒を採用する方法により、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む造粒物を含む口腔内崩壊錠用組成物を得ることができる。
【0087】
[加熱溶融押出]
加熱溶融押出を採用する方法は、水溶性セルロースエーテルと、カテキンとを含む粉末原料を加熱溶融押出することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンとを含む押出物を得る工程と、押出物を粉砕することにより、粉砕物を得る工程と、粉砕物と、糖を含む原料とを混合することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る工程とを含む。
【0088】
加熱溶融押出は、加熱溶融押出機を用いて行うことができる。加熱溶融押出機としては、例えば、キャピログラフ(東洋精機社製)などの一軸ピストン型押出装置、「Nano-16」(ライストリッツ(Leistritz)社製)、「Mini Lab」(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo fisher Scientific)社製)及び「Pharma Lab」(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo fisher Scientific)社製)などの二軸スクリュー型押出装置などが挙げられる。
【0089】
加熱溶融押出の条件は、使用する装置などによって適宜設定することができる。例えば、加熱溶融押出におけるバレル温度は、スクリューによる混錬押出性の観点から、好ましくは100℃~220℃である。加熱溶融押出におけるスクリュー回転数は、生産性及び溶融物の安定性の観点から、好ましくは20rpm~500rpmである。
【0090】
加熱溶融押出に供する粉末原料は、水溶性セルロースエーテル及びカテキンを含めば特に限定されないが、例えば、任意に、可塑剤、界面活性剤などの添加物を添加してもよい。粉末原料は、活性成分を含むことが好ましい。可塑剤の使用量は、保存安定性の観点から、水溶性セルロースエーテル100質量部に対して、好ましくは30質量部以下である。界面活性剤の使用量は、保存安定性の観点から、水溶性セルロースエーテル100質量部に対して、好ましくは10質量部以下である。可塑剤及び界面活性剤の使用量の下限は特に限定されず、典型的には0質量部である。
【0091】
加熱溶融押出を採用する方法により、水溶性セルロースエーテルと、カテキンとの混合性を乾式混合又は造粒を採用する方法に比べて高めることができ、結果として得られる口腔内崩壊錠の崩壊性を良好にすることができる。
【0092】
加熱溶融押出により得た押出物を粉砕することにより、粉砕物を得る。押出物は通常はストランド状の生成物であるため、押出物を用いて口腔内崩壊錠を製造するために粉砕工程を採用する。
【0093】
押出物の粉砕は特に限定されないが、例えば、粉砕機を用いて行うことができる。粉砕機としては、例えば、コーヒーミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミルなどが挙げられる。粉砕機を用いることにより任意の粒子径に粉砕することができる。粉砕物の平均粒子径は、口腔内崩壊錠の硬度及び崩壊性、後段に使用する糖及び糖アルコールとの混合均一性の観点から、好ましくは50μm~350μmであり、より好ましくは100μm~200μmである。粉砕物の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定される値(体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値)である。
【0094】
得られた粉砕物(粉砕された押出物)と、糖を含む原料とを混合することにより、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得る。糖を含む原料は、糖アルコールを含むことが好ましい。粉砕物と、糖を含む原料との混合は、均一な混合物が得られる限り、特に限定されない。
【0095】
加熱溶融押出により、口腔内崩壊錠用組成物を製造する場合においては、生産性の観点から、2質量%水溶液の20℃における粘度が1.0mPa・s~100mPa・sの水溶性セルロースエーテルを用いることが好ましく、2質量%水溶液の20℃における粘度が2.0mPa・s~10.0mPa・sの水溶性セルロースエーテルを用いることがより好ましい。
【0096】
加熱溶融押出を採用する方法により、水溶性セルロースエーテル及びカテキンを含む加熱溶融押出物と、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物を得ることができる。
【0097】
<口腔内崩壊錠>
口腔内崩壊錠用組成物を打錠することにより、口腔内崩壊錠が得られる。口腔内崩壊錠は、本発明の一態様である口腔内崩壊錠用組成物によって得られるものである限り、硬度、崩壊性などの物性については特に限定されない。
【0098】
口腔内崩壊錠の硬度は、充填時、輸送時及び/又はPTPシートから口腔内崩壊錠を取り出す際に、割れ、欠けなどを防ぐ観点から、好ましくは40N以上であり、より好ましくは40N~250Nであり、更に好ましくは40N~100Nである。硬度は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0099】
口腔内崩壊錠の崩壊性は、引張圧縮試験機を用いて口腔内崩壊錠に0.1Nの荷重を200秒間かけた際のプローブの変位量(200秒後の変位値)及び/又は崩壊速度によって評価される。
【0100】
口腔内崩壊錠の崩壊性は、好ましい服用性であるというためには、200秒後の変位値について、好ましくは-0.1mm~-5.0mmであり、より好ましくは-0.4mm~-3.5mmであり、更に好ましくは-0.6mm~-3.0mmであり;及び/又は、崩壊速度について、好ましくは-0.5×10-2mm/s~-5.0×10-2mm/sであり、より好ましくは-0.5×10-2mm/s~-3.5×10-2mm/sであり、更に好ましくは-0.8×10-2mm/s~-3.0×10-2mm/sである。口腔内崩壊錠の200秒後の変位値及び崩壊速度は、後述する実施例にて詳述される方法に従い測定される。
【0101】
<口腔内崩壊錠の製造方法>
口腔内崩壊錠の製造方法は、本発明の一態様の口腔内崩壊錠用組成物を打錠することにより、口腔内崩壊錠を得る工程を含む。口腔内崩壊錠は、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖と、任意に糖アルコール及び添加物とを含む。口腔内崩壊錠は、活性成分を含むことが好ましい。
【0102】
打錠は、打錠機を用いて行うことができる。打錠機としては、例えば、ロータリー式打錠機、単発式打錠機などが挙げられる。打錠時の打錠圧は、錠剤硬度及び打錠障害の観点から、2kN~40kNが好ましい。
【0103】
打錠後の口腔内崩壊錠の大きさ及び質量などの製剤設計は所望のとおりに適宜設定できる。例えば、口腔内崩壊錠の径(口腔内崩壊錠の直径)は、取り扱い性及び服用性の観点から、好ましくは6mm~12mmである。口腔内崩壊錠の質量は特に限定されず、一錠あたり、好ましくは70mg~700mgである。
【実施例
【0104】
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0105】
<使用材料>
水溶性セルロースエーテルは、常法に従って製造した、ヒプロメロース(HPMC-1~HPMC-4)及びメチルセルロース(MC-1)を用いた。使用した水溶性セルロースエーテルの物性を表1に示す。
【0106】
カテキンは、「サンフード100」(三菱ケミカルフーズ社製;エピガロカテキンガレード及びエピカテキンガレードの合計量:25質量%以上)を用いた。
【0107】
糖は、乳糖(「Pharmatose 200M」;DFE Pharma社製;平均粒子径:40μm)及びマルトース(「サンマルトミドリ」;株式会社林原社製;平均粒子径:49μm)を用いた。
【0108】
糖アルコールは、エリスリトール(「エリスリトール50M」;物産フードサイエンス社製;平均粒子径:50μm)及びD(-)-マンニトール(富士フィルム和光純薬社製;平均粒子径:40μm)を用いた。
【0109】
活性成分は、リボフラビン(「ビタミンB」;協和ファーマケミカル社製)を用いた。
【0110】
【表1】
【0111】
<物性評価>
[平均粒子径]
平均粒子径(d50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(「マスターサイザー3000」;Malvern社製)を用いて、Fraunhofer回折理論により、乾式法にて、分散圧1.5bar、散乱強度2%~10%の条件で、体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値により測定した。
【0112】
[粘度]
水溶性セルロースエーテルの水分換算した乾燥物6gに対応する量を広口瓶(直径65mm;高さ120mm;体積350ml)に正確に量り、98℃の熱湯を加えて300.0gとした。広口瓶に蓋をした後、撹拌機を用いて均一な分散液となるまで350rpm~500rpmで20分間撹拌した。その後、0℃~5℃の水浴中で40分間撹拌して水溶性セルロースエーテルを溶解することにより、試料溶液として水溶性セルロースエーテルの2質量%水溶液を得た。
【0113】
水溶性セルロースエーテルの2質量%水溶液の20℃における粘度を、第十七改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定方法の毛細管粘度計法に従い、ウベローデ型粘度計を用いて測定した。
【0114】
[メトキシ基含有量及びヒドロキシプロポキシ基含有量]
第十七改正日本薬局方の「ヒプロメロース」及び「メチルセルロース」の項に記載の定量法に従って測定した。
【0115】
[水分]
秤量瓶に造粒物1gを秤量し、105℃に設定した乾燥機内に3時間静置させた後の重量変化率から水分量(乾燥減量)を求めることにより算出した。
【0116】
[錠剤の硬度]
下記のとおりに製造した口腔内崩壊錠について、以下の測定条件により、錠剤硬度計(「TBH125」;ERWEKA株式会社製)を用いて、錠剤の直径方向に下記の等速度及び等圧力で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度として測定した。試験数は3回とし、その平均値を錠剤の硬度とした。
【0117】
硬度の測定条件:
等速度:2.3mm/s
等圧力:20N/s
【0118】
[錠剤の崩壊性]
製造した口腔内崩壊錠について、引張圧縮試験機(「SDT-503NB」;今田製作所株式会社製)を用いて以下の手順により崩壊性を評価した。
【0119】
後述するとおりに製造した口腔内崩壊錠を直径95mm、深さ15mmのシャーレ中央へ置き、下記の条件にて圧縮測定を開始した。プローブ(直径:11.28mm、円筒状)が口腔内崩壊錠表面へ接触し、開始点検出荷重値に達した時間を測定開始時間として、5秒後に15mlの精製水を加えた。
【0120】
口腔内崩壊錠は200秒間、約0.1Nの荷重が掛けられ、口腔内崩壊錠の崩壊に伴うプローブの変位量を崩壊性の指標とした。荷重が開始点検出荷重値に達した際のプローブの位置を原点として変位値が負に大きい程、その口腔内崩壊錠の崩壊性が高いことを示している。
【0121】
また、得られた崩壊プロファイルから5秒当たりのプローブの変位速度(式1に基づく)を算出し、試験開始後に変位速度が-0.002以下となった点を崩壊開始点と定義し、その後に変位速度が-0.002以上となった点を崩壊終点と定義した。崩壊開始点及び崩壊終点の2点から得られる直線の傾きを崩壊速度(式2に基づく)と定義した。崩壊速度が負に大きい程、その口腔内崩壊錠の崩壊性が高いことを示している。
【0122】
具体的には、式1に従って0(測定開始)~5秒間、1~6秒間、2~7秒間といったように5秒間におけるプローブの変化量(変位値)を順々に求め、変位速度を順々に算出していき、崩壊開始点及び崩壊終点を求め、式2に従って崩壊速度を算出した。
【0123】
(式1)
変位速度(mm/s)=5秒間におけるプローブの変化量(変位値)/5
(式2)
崩壊速度(mm/s)=(崩壊終点の変位値-崩壊開始点の変位値)/(崩壊終点の時間-崩壊開始点の時間)
【0124】
SDT-503NB型引張圧縮試験機の測定条件:
開始点検出:0.1N
荷重:0.1N
荷重幅:0.05~0.15N
試験速度:5.0mm/min
維持速度:10mm/min
調整速度:1.0mm/min
切替荷重:0.05N
【0125】
<口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠の製造>
[実施例1]
HPMC-1、カテキン及び乳糖を表2に記載の質量比となるように秤量及び混合し、口腔内崩壊錠用組成物を製造した。
【0126】
製造した口腔内崩壊錠用組成物350mgを、錠剤成形機(「HAND TAB-200」;市橋精機株式会社製)を用いて、打錠圧15kNで打錠し、1錠の直径が10mmであり、曲率半径が14.0mmであり、及び錠剤質量が350mgである口腔内崩壊錠を製造した。
【0127】
[実施例2]
糖として、乳糖に代えてマルトースを用いた以外は実施例1と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物を製造した。
【0128】
製造した口腔内崩壊錠用組成物350mgを、錠剤成形機(「HAND TAB-200」;市橋精機株式会社製)を用いて、実施例1と同程度の錠剤硬度となるように打錠圧1.0kNで打錠して口腔内崩壊錠を製造した。
【0129】
[実施例3]
水溶性セルロースエーテルとして、HPMC-1に代えてHPMC-2を用いた以外は実施例1と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠を製造した。
【0130】
[実施例4]
HPMC-1、カテキン、乳糖及びエリスリトールを表2に記載の質量比となるように秤量及び混合し、口腔内崩壊錠用組成物を製造した。製造した口腔内崩壊錠用組成物を用いて、実施例1と同様の方法で口腔内崩壊錠を製造した。
【0131】
[実施例5]
HPMC-1、カテキン、マルトース及びエリスリトールを表2に記載の質量比となるように秤量及び混合し、口腔内崩壊錠用組成物を製造した。
【0132】
製造した口腔内崩壊錠用組成物350mgを、錠剤成形機(「HAND TAB-200」;市橋精機株式会社製)を用いて、実施例2と同程度の錠剤硬度となるように打錠圧2.5kNで打錠して口腔内崩壊錠を製造した。
【0133】
[実施例6]
HPMC-1とカテキンとの質量比(水溶性セルロースエーテル/カテキン)が2.3となるようにした以外は、実施例4と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠を製造した。
【0134】
[実施例7]
HPMC-1とカテキンとの質量比(水溶性セルロースエーテル/カテキン)が1.0となるようにした以外は、実施例4と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠を製造した。
【0135】
[実施例8]
水溶性セルロースエーテルとして、HPMC-1に代えてHPMC-2を用いた以外は実施例4と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠を製造した。
【0136】
[実施例9]
糖アルコールとして、エリスリトールに代えてD-マンニトールを用いた以外は実施例8と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠を製造した。
【0137】
[実施例10]
水溶性セルロースエーテルとして、HPMC-1に代えてHPMC-3を用いた以外は実施例4と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠を製造した。
【0138】
[実施例11]
水溶性セルロースエーテルとして、HPMC-1に代えてMC-1を用いた以外は実施例4と同様の方法で口腔内崩壊錠用組成物及び口腔内崩壊錠を製造した。
【0139】
[実施例12]
HPMC-4(7.6g)、カテキン(1.6g)、乳糖(160g)及びエリスリトール(30.8g)を流動層造粒装置に仕込み、エタノールと精製水との混合液(エタノール/精製水=7/3(質量比)、300g)を用いて下記の条件で造粒を行い、平均粒子径が173μmの造粒物として口腔内崩壊錠用組成物を得た。なお、造粒物の水分量(乾燥減量)は0.5質量%であった。
【0140】
得られた造粒物(口腔内崩壊錠用組成物)を用いて実施例1と同様に口腔内崩壊錠を製造した。
【0141】
<使用装置>
流動層造粒機「フローコーター FZ-LABO」(フロイント産業株式会社)
<造粒条件>
吸気温度:60℃
排気温度:27~32℃
流動エアー量:45L/min
スプレー速度:10~12g/min
スプレーエアー圧:0.10MPa
【0142】
[実施例13]
HPMC-4(5.3g)及びカテキン(1.1g)を用いて、下記条件にて加熱溶融押出を行うことにより押出物を得た。押出物は「ワンダーブレンダー」(大阪ケミカル株式会社)を用いて3秒間かけて粉砕し、平均粒子径が143μmの粉砕物を回収した。得られた粉砕物(2g)、乳糖(34.8g)及びエリスリトール(6.7g)を表2に記載の質量比となるように混合し、口腔内崩壊錠用組成物を製造した。
【0143】
製造した口腔内崩壊錠用組成物を用いて、実施例1と同様に口腔内崩壊錠を製造した。
【0144】
<使用装置>
コンパウンディングエクストルーダー「HAAKE MiniLab II」(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
<押出条件>
バレル温度:180℃
スクリュー回転数:70rpm
投入時間:5min
循環時間:5min
【0145】
[実施例14]
HPMC-2、カテキン、乳糖及びエリスリトール、更に活性成分としてリボフラビン(VB2)を加えて、表2に記載の質量比となるように秤量及び混合し、口腔内崩壊錠用組成物を製造した。
【0146】
製造した口腔内崩壊錠用組成物350mgを、錠剤成形機(「HAND TAB-200」;市橋精機株式会社製)を用いて、実施例3と同程度の錠剤硬度となるように打錠圧7.0kNで打錠して口腔内崩壊錠を製造した。
【0147】
[比較例1]
カテキンを加えずに、HPMC-1及び乳糖を表2に記載の質量比となるように秤量及び混合し、錠剤用組成物を製造した。製造した錠剤用組成物を用いて実施例1と同様の方法で錠剤を得た。
【0148】
なお、比較例1においては錠剤の崩壊が起きず、変位速度(mm/s)が-0.002以下になることがなかったため、崩壊速度が算出できなかった。
【0149】
[比較例2]
水溶性セルロースエーテルを加えずに、カテキン及び乳糖を表2に記載の質量比となるように秤量及び混合し、錠剤用組成物を製造した。製造した錠剤用組成物を用いて実施例1と同様の方法で錠剤を得た。
【0150】
なお、比較例2においては錠剤の崩壊が起きず、変位速度(mm/s)が-0.002以下になることがなかったため、崩壊速度が算出できなかった。
【0151】
[比較例3]
糖を加えずに、HPMC-1及びカテキンを表2に記載の質量比となるように秤量及び混合し、錠剤用組成物を製造した。
【0152】
製造した錠剤用組成物350mgを、錠剤成形機(「HAND TAB-200」;市橋精機株式会社製)を用いて、実施例1と同程度の錠剤硬度となるように打錠圧2.0kNで打錠して錠剤を製造した。
【0153】
なお、比較例3においては錠剤の崩壊が起きず、変位速度(mm/s)が-0.002以下になることがなかったため、崩壊速度が算出できなかった。
【0154】
【表2】
【0155】
<口腔内崩壊錠の評価>
実施例1と比較例1~3との比較により、水溶性セルロースエーテルと、カテキンと、糖とを含む口腔内崩壊錠用組成物から製造した口腔内崩壊錠は、十分な硬度及び優れた崩壊性を示すことが知見された。また、実施例1及び実施例2の結果から、乳糖、マルトースといった糖の種類に依らずに、十分な硬度及び優れた崩壊性を示す口腔内崩壊錠が得られることが確認された。
【0156】
実施例1及び実施例3の結果より、乾式混合により口腔内崩壊錠用組成物を製造する場合においては、用いる水溶性セルロースエーテルの平均粒子径が大きい程、得られる口腔内崩壊錠の崩壊性が優れることが知見された。
【0157】
実施例1及び実施例4、並びに実施例2及び実施例5の結果より、口腔内崩壊錠用組成物が糖アルコールを含む場合において、より崩壊性に優れる口腔内崩壊錠が得られることが知見された。
【0158】
実施例4、実施例6及び実施例7の結果より、口腔内崩壊錠用組成物におけるカテキンに対する水溶性セルロースエーテルの質量比が高まると、得られる口腔内崩壊錠はより硬度及び崩壊性に優れることが知見された。
【0159】
実施例4及び実施例8の結果より、乾式混合により糖アルコールを含む口腔内崩壊錠用組成物を製造する場合は、水溶性セルロースエーテルの平均粒子径が大きい程、得られる口腔内崩壊錠は崩壊性に優れることが知見された。
【0160】
実施例8及び実施例9の結果より、エリスリトール、D-マンニトールといった糖アルコールの種類に依らずに、十分な硬度及び優れた崩壊性を示す口腔内崩壊錠が得られることが確認された。
【0161】
実施例4、実施例10及び実施例11の結果より、種々の粒子径のHPMC、MCといった水溶性セルロースエーテルの種類に依らずに、十分な硬度及び優れた崩壊性を示す口腔内崩壊錠が得られることが確認された。
【0162】
実施例10、実施例12及び実施例13の結果より、乾式混合、造粒、加熱溶融押出といった口腔内崩壊錠用組成物の製造方法に依らずに、十分な硬度及び優れた崩壊性を示す口腔内崩壊錠が得られることが確認された。ただし、口腔内崩壊錠用組成物の製造方法により、得られる口腔内崩壊錠の崩壊挙動が異なるなどの理由により、加熱溶融押出により200秒後の変位値及び崩壊速度が優れる口腔内崩壊錠が得られることが知見された。
【0163】
実施例3及び実施例14の結果より、活性成分を含む場合においても、十分な硬度及び優れた崩壊性を示す口腔内崩壊錠が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明によれば、複雑な工程を採用することなく、汎用的かつ工業的規模で、十分な硬度を有し、かつ優れた崩壊性を示す口腔内崩壊錠を製造することができる。