(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】気化装置及び気化システム
(51)【国際特許分類】
B01J 7/00 20060101AFI20220826BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20220826BHJP
F17C 9/02 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
B01J7/00 Z
F17C13/02 302
F17C9/02
(21)【出願番号】P 2019512511
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2018014991
(87)【国際公開番号】W WO2018190318
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017080070
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】田口 明広
(72)【発明者】
【氏名】姜山 亮一
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-160903(JP,A)
【文献】実開昭49-029145(JP,U)
【文献】特開2004-298769(JP,A)
【文献】特開平06-226990(JP,A)
【文献】特開2005-166771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00- 7/02
F17C 1/00-13/12
B01J 19/00-19/32
C23C 16/00-16/56
H01L 21/00-21/98
G01F 23/00-23/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を気化して材料ガスを生成する気化装置であって、
前記液体材料を導入する導入口
および前記材料ガスを導出する導出口を備えた容器と、
前記容器内に
設けられ、前記導入口から導入され
た前記液体材料を保持する保持部材と、
前記容器内に
形成され、前記保持部材から放出された前記液体材料を貯留する貯留領域と、を具備
し、
前記貯留領域は、前記容器内に前記保持部材が設置されることにより、前記容器内における前記保持部材の周囲に形成された空間であり、
前記容器内において、前記保持部材または前記貯留領域の上方に前記材料ガスが流れる空間が形成されており、その空間に前記導出口が繋がっている、気化装置。
【請求項2】
前記保持部材が、前記導入口側に設けられている請求項1記載の気化装置。
【請求項3】
前記貯留領域に貯留された前記液体材料の液量を検出する検出装置をさらに具備する請求項1又は2のいずれかに記載の気化装置。
【請求項4】
前記検出装置が、前記貯留領域に貯留された前記液体材料の液面を検出する液面センサである請求項3記載の気化装置。
【請求項5】
前記容器の外壁における前記保持部材と隣接する部分又はその近傍に設けられ、前記保持部材に保持された前記液体材料を加熱して気化するヒータをさらに具備する請求項1乃至4のいずれかに記載の気化装置。
【請求項6】
前記容器の外壁におけるその容器内の気相と隣接する部分又はその近傍に設けられ、前記液体材料が気化されてなる材料ガスを加熱するヒータをさらに具備する請求項1乃至5のいずれかに記載の気化装置。
【請求項7】
前記容器の気相に設けられ、前記液体材料又は前記材料ガスの少なくとも一方を加熱するヒータをさらに具備する請求項1乃至6のいずれかに記載の気化装置。
【請求項8】
前記保持部材が、線状体、網状体、繊維状体又は粒状体を所定形状に保持したもの、或いは、多孔質体である請求項1乃至7のいずれかに記載の気化装置。
【請求項9】
前記
検出装置に接続される液量監視部をさらに具備し、
前記液量監視部が、
前記
検出装置で検知された検知液量が予め設置された基準範囲にあるか判断する判断部と、
前記検知液量が前記基準範囲外である場合に警告する警告部と、を備える請求項4乃至8のいずれかに記載の気化装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の気化装置と、
前記気化装置に前記液体材料を供給する液体材料供給装置と、
前記検出装置の検出信号に基づいて、前記気化装置に対する前記液体材料の供給量を制御する制御装置と、を具備することを特徴とする気化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化装置及び気化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体材料を気化して材料ガスを生成する気化装置としては、特許文献1に開示されるように、液体材料を導入する導入口を一端側に設けると共に材料ガスを導出する導出口を他端に設ける容器と、容器内に設けられる線状体が充填された気化部と、容器の外周に設けられたヒータと、を具備する気化装置が開示されている。
【0003】
しかし、前記特許文献1に開示される気化装置においては、容器内に線状体が充填されているため、容器内における液体材料の供給速度と気化速度との関係の指標となる液体材料の残量が確認できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、容器内に導入される液体材料を保持する保持部材を備えた気化装置において、容器内の液体材料の残量を確認できるようにすることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る気化装置は、液体材料を導入する導入口を備えた容器と、前記容器内に前記導入口から導入される前記液体材料を保持する保持部材と、前記容器内に設けられ、前記保持部材から流れ出た前記液体材料を貯留する貯留領域と、を具備することを特徴とするものである。
【0007】
このようなものであれば、貯留領域に対し、保持部材から液体状態のまま放出された液体材料や、保持部材から気体状態となって放出された後に再液化した液体材料が貯留される。これにより、容器の容量や保持部材の液体材料を保持する能力(以下、保持能力ともいう)を予め把握しておくことにより、貯留領域に貯留された液体材料の液量を確認すれば、容器内の液体材料の残量をある程度正確に把握することができる。また、貯留領域に貯留される液体材料の液量を一定に保つことにより、容器内における空焚きを防止できると共に、液体材料の供給速度と気化速度とを略均衡に保つことができる。なお、保持部材は、その内部に微細な隙間や空洞を多数有するものであり、液体材料又はその液体材料を気化した材料ガスが、その隙間や空洞を介して保持部材の内外へ出入りするように構成されたものである。
【0008】
また、前記気化装置において、前記保持部材が、前記導入口側に設けられているものであってもよい。
【0009】
このようなものであれば、導入口から導入される液体材料が一旦保持部材に流れ込み、導入口から導入された液体材料が直接貯留領域に流れ込まなくなり、容器内の液体材料の残量をより正確に把握することができる。また、前記貯留領域が、前記保持部材と水平方向に隣接し、前記保持部材に対して前記導入口側と反対側に設けられているものであっても同様の作用効果が得られる。
【0010】
また、前記いずれかの気化装置において、前記貯留領域に貯留された前記液体材料の液量を検出する検出装置をさらに具備するものであってもよく、また、前記検出装置が、前記貯留領域に貯留された前記液体材料の液面を検出する液面センサのものであってもよい。
【0011】
このようなものでれば、貯留領域に貯留される液体材料の液量を、例えば、容器に設けた覗き窓等によって確認する場合に比べてさらに正確に把握することができる。
【0012】
また、前記いずれかの気化装置において、前記容器の外壁における前記保持部材と隣接する部分又はその近傍に設けられ、前記保持部材に保持された前記液体材料を加熱して気化するヒータをさらに具備するものであってもよい。
【0013】
このようなものであれば、保持部材に保持された液体材料を効率良く加熱することができる。また、保持部材の内部で液体材料が気化するため、その気化時に発生する気泡が大きく成長せず、これにより、貯留領域に貯留された液体材料の液面の揺れが抑制される。また、前記保持部材が、前記ヒータによって加熱されることによって前記液体材料を気化する温度になるような熱伝導率を有するものであれば、ヒータだけでなく保持部材によっても液体材料が加熱され気化するため、液体材料を加熱する面積が増して熱交換率が向上し、液体材料をさらに効率良く気化することができる。
【0014】
また、前記いずれかの気化装置において、前記容器の外壁におけるその容器内の気相と隣接する部分又はその近傍に設けられ、前記液体材料が気化されてなる材料ガスを加熱するヒータをさらに具備するものであってもよい。
【0015】
このようなものであれば、液体材料が一旦気化した後、再液化することが防止され、導出口から液化した材料が流出することを防止することができる。
【0016】
また、前記いずれかの気化装置において、前記容器の気相に設けられ、前記液体材料又は前記材料ガスの少なくとも一方を加熱するヒータをさらに具備するものであってもよい。このようなものであれば、前記各ヒータと同様の作用効果が得られる。
【0017】
また、前記いずれかの気化装置において、保持部材が、網状体、繊維状体又は粒状体を所定形状に保持したもの、或いは、多孔質体であってよい。
【0018】
また、前記検知装置を備える気化装置において、前記検知装置に接続される液量監視部をさらに具備し、前記液量監視部が、前記検知装置で検知された検知液量が予め設置された基準範囲にあるか判断する判断部と、前記検知液量が前記基準範囲外である場合に警告する警告部と、を備えるものであってもよい。
【0019】
このようなものであれば、容器内に収容された液体材料の液量異常を迅速に検知することができ、材料ガスの供給先の各対象機器への悪影響を未然に防止できる。
【0020】
また、本発明に係る気化システムは、前記いずれかに記載の気化装置と、前記気化装置に前記液体材料を供給する液体材料供給装置と、前記検出装置の検出信号に基づいて、前記気化装置に対する前記液体材料の供給量を制御する制御装置と、を具備することを特徴とするものである。
【0021】
このようなものであれば、貯留領域に貯留される液体材料の液量を参照して気化装置に対する液体材料の供給量を自動制御できるため、容器内における空焚きを防止できると共に、液体材料の供給速度と気化速度とを均衡に保ち易くなる。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、容器内に導入される液体材料を保持する保持部材を備えた気化装置において、容器内の液体材料の残量を確認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係る気化システムを示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る気化装置を水平方向から目視した状態を示す断面図である。
【
図3】実施形態1に係る気化装置を示すA-A断面図である。
【
図4】実施形態2に係る気化装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
100 気化装置
X 液体材料
10 容器
W 保持部材
20 検知装置
30a 液体加熱ヒータ
30b ガス加熱ヒータ
R 貯留領域
P1 導入口
P2 導出口
11 側壁
12 上壁
13 底壁
14 仕切壁
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る気化システムについて図面を参照して説明する。
【0026】
本発明に係る気化システムZは、気化装置100によって液体材料Zを気化して生成された材料ガスを供給先となる対象機器へ供給するものであり、対象機器としては、例えば、半導体製造工程に用いられるチャンバ等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
<実施形態1>
本実施形態に係る気化システムZは、
図1に示すように、気化装置100と、気化装置100に液体材料Xを導入する導入路L1と、気化装置100から材料ガスを導出する導出路L2と、を具備している。そして、導入路L1には、開閉弁V1が接続されており、その上流側の一端が液体材料供給装置200に接続されている。また、導出路L2には、上流側から順番に、開閉弁V2及び流量制御装置MFCが接続されており、その下流側の一端が対象機器に接続されている。なお、流量制御装置MFCとしては、差圧式又は熱式のマスフローコントローラを使用することができ、導出路L2に流れる材料ガスの流量を所定流量に制御できるようになっている。なお、開閉弁V2は、流量制御装置MFCが備える制御弁によって代用できるため、必ずしも設ける必要はない。
【0028】
気化装置100は、
図2及び
図3に示すように、液体材料Xを収容する容器10と、液体材料Xを保持する保持部材Wと、保持部材Wに保持された液体材料Xを加熱する液体加熱ヒータ30aと、液体材料Xが気化されてなる材料ガスを加熱するガス加熱ヒータ30bと、保持部材Wから流れ出た液体材料Xを貯留する貯留領域Rと、貯留領域Rに貯留された液体材料Xの液量を検知する検出装置20と、を具備している。なお、
図2及び
図3において、液体材料Xの液面を一点鎖線にて示している。
【0029】
前記容器10は、筐体形状であり、横長状の横置きタイプのものである。そして、容器10には、導入路L1に接続される導入口P1及び導出路L2に接続される導出口P2が設けられている。導入口P1は、容器10の下部に設けられており、容器10の気化室Sに繋がっている。また、導出口P2は、容器10の上部に設けられており、容器10の気化室S、具体的には、容器10内の材料ガスが滞留する気相(
図2中、上側)に繋がっている。そして、導入口P1及び導出口P2は、いずれも容器10の同じ側壁11に対して上下に並べて設けられている。
【0030】
また、容器10には、気化室S内の気相を水平方向へ伸びる仕切壁14が設けられている。すなわち、仕切壁14は、気相を複数に区切るように設けられている。なお、仕切壁14は、導入口P1と導入口P2との間の一側壁11aから、その一側壁11aと対向する他側壁11bに向かって伸びており、他側壁11bに達しない長さになっている。これにより、他側壁11bと仕切壁14との間に隙間が形成され、この隙間によって仕切壁14で仕切られた気相の上側と下側とが繋がった状態になっている。
【0031】
前記保持部材Wは、容器10内の下部に設置されている。具体的には、容器10内の導入口P1と隣接するように設置されており、底壁12と仕切壁14との間に充填されている。なお、保持部材Wは、一側壁11a側に充填され、他側壁11b側に充填されていない。換言すれば、保持部材Wは、導入口P1側の底壁12に設置され、他側壁11b側の底壁12に設置されていない。これにより、容器10の下部には、保持部材Wが充填されていない領域が形成される。
【0032】
なお、保持部材Wは、液体材料X及びその液体材料Xを気化してなる材料ガスが通過できる隙間又は空洞の少なくとも一方又は双方を多数有するものであり、その内部に液体材料Xを保水できるものであればよく、保持能力の高低は問わない。具体的には、保持部材Wは、線状体、網状体、繊維状体又は粒状体(粉状体を含む)を所定形状に保持したものや、所定形状の多孔質体などを使用できる。
【0033】
保持部材Wを、より具体的に説明すると、線状体を所定形状に保持したものとしては、線状体を立体的に結合したものが挙がられる。網状体を所定形状に保持したものとしては、網状体を複数積層して結合したものが挙げられ、網状体としては、板材を成形して網状にしたもの、線材を結合して網状にしたもの、線材を織るか編んで網状にしたもの等が挙げられる。繊維状体を所定形状に保持したものとしては、繊維状体を固めたもの、繊維状体からなる不織布を複数積層したもの、繊維状体からなる織物や編物を複数積層したもの等が挙げられる。粒状体を所定形状に保持したものとしては、粒状体を結合したもの、粒状体をカートリッジに充填したもの等が挙がられ、粒状体としては、球体や粉体が挙げられる。これらの材料としては、金属製のものが好ましく、金属製のものであれば焼結して結合させることができ、熱伝導率の高いものを選択できる。なお、例えば、容器10内に充填し易い金属繊維であるスチールウールや、耐腐食性に優れたステンレス鋼であるSUS316Lからなるものを使用することが好ましい。
【0034】
また、多孔質体としては、金属などの多孔質でない素材をハニカム構造などに加工して多孔質構造にしたものを使用してもよく、セラミック類のアルミナやSiCなどの素材をそのものが多孔質構造のものを使用してもよい。
【0035】
前記容器10の下部における保持部材10が充填されていない領域が貯留領域Rとなる。従って、貯留領域Rは、保持部材40と水平方向に隣接するように配置される。また、貯留領域Rは、保持部材Wに対して導入口P1側と反対側に配置される。このように構成すれば、導入口P1から導入された液体材料Xが一旦保持部材Wに流れ込み、その後に保持部材Wから流れ出た液体材料Xが貯留領域Rに貯留されるようになり、導入口P1から導入された液体材料Xが直接貯留領域Rに流れ込まないようになる。
【0036】
そして、容器10内に液体材料Xが供給されると、
図2及び
図3に示すように、保持部材Wが、下側から順次液体材料Xで満たされ、液体材料Xを保持した状態となり、保持部材Wで保持しきれずに流れ出た液体材料Xが貯留領域Rに貯留される。なお、保持部材Wの保持能力が高いと、保持部材Wの液体材料Xで満たされる領域が増し、逆に保持部材Wの保持能力が低いと、保持液体材料Xで満たされる領域が減る。よって、保持部材Wの保持能力を予め把握しておくことにより、貯留領域Rに貯留される液体材料Xの液量から容器10内の液体材料Xの液量をより正確に把握することができる。
【0037】
前記検出装置20は、液面センサであり、具体的には、液体材料Xにセンサ部20aを接触させて液面を検出する接触式の液面センサである。そして、液面センサは、容器10の上壁13に設けられた挿通孔からセンサ部20aを挿入して設置されており、センサ部20aは、貯留領域Rに向かって伸びている。なお、液面センサは、サーミスタ等の測温抵抗体を備え、液相と気相とで熱放散定数が異なることを利用して液面を検出できるように構成されている。
【0038】
前記液体加熱ヒータ30aは、容器10の下部に設けられ、容器10の外壁における保持部材Wと隣接する部分に設置されている。本実施形態においては、液体加熱ヒータ30aは、容器10の外壁である底壁12及び一側壁11aにそれぞれ別々に設置されている。これにより、保持部材Wに保持された液体材料Xが液体加熱ヒータ30aによって効率良く加熱される。
【0039】
前記ガス加熱ヒータ30bは、容器10の上部に設けられ、容器10の外壁における気相に接触する部分及び仕切壁14に設置されている。本実施形態においては、ガス加熱ヒータ30bは、容器10の外壁である上壁13及び仕切壁14にそれぞれ別々に設置されている。本実施形態においては、仕切壁14自体をガス加熱ヒータ30bとしている。これにより、ガス加熱ヒータ30bによって材料ガスが加熱され、その材料ガスが再度冷却して再液化されることを防止できる。また、仕切壁14は、保持部材Wの上面に接触していることから、仕切壁14のガス加熱ヒータ30bは、液体加熱ヒータ30aも兼ねている。
【0040】
なお、容器10の各外壁に設置される各加熱ヒータ30a,30bは、本実施形態のようにそれぞれ別の加熱ヒータ30a,30bとしてもよく、また、隣り合う外壁に設置される加熱ヒータ30a,30bを一体としてもよい。さらに、本実施形態においては、他側壁11bや、一側壁11a及び他側壁11bの間に介在して互いに対向する両側壁11c、11d(
図3参照)に対し、各加熱ヒータ30a,30bを設けていないが、他側壁11bにガス加熱ヒータ30bを設けてもよく、また、両側壁11c,11dに各加熱ヒータ30a,30bを設けてもよい。但し、他側壁11bにガス加熱ヒータ30bを設ける場合には、貯留領域Rから離して上壁13側に設けることが好ましく、また、両側壁11c,11dに各加熱ヒータ30a,30bを設ける場合には、貯留領域Rから離して一側壁11a側に設けることが好ましい。また、本実施形態においては、各加熱ヒータ30a,30bを容器10の外壁の内側に埋め込むように設けているが、容器10の外壁の内面又は外面に張り付けるように設けてもよく、また、容器10に対して十分に熱が伝わり、各加熱ヒータ30a,30bがその役割を果たすことができるのであれば、外壁から離して設けてもよい。
【0041】
前記のように各加熱ヒータ30a,30bを配置することにより、容器10内の貯留領域Rが、各加熱ヒータ30a,30bから離れた伝熱量の少ない領域になり、貯留領域Rに貯留された液体材料Xが積極的に気化されなくなる。一方、容器10内における保持部材Wが設置された保持領域が、液体加熱ヒータ30aに近く伝熱量の多い領域になり、保持領域に保持された液体材料Xが積極的に気化される。また、容器10内における気相領域も、ガス加熱ヒータ30bに近く伝熱量の多い領域になり、気相領域に滞留する材料ガスが積極的に加熱される。
【0042】
なお、各加熱ヒータ30a,30bとしては、カートリッジヒータ、電熱線ヒータ又はラバーヒータなどを使用することができる。
【0043】
また、気化システムZは、導入路L1に接続された開閉弁V1及び導出路L2に接続された開閉弁V2を適宜状況に合わせて開閉する制御装置(図示せず)を備えており、気化装置10の検知装置20で検知された検知信号に基づいて、導入路L1に設けられた開閉弁V1の開度を調整し、気化装置100に対する液体材料Xの供給量を制御できるようになっている。なお、制御装置は、開閉弁V1,V2を開閉することにより、開閉弁V1のみを開放した状態、開閉弁V2のみを開放した状態、両開閉弁V1,V2を開放した状態、のいずれかに選択的に切り替えることもできるようになっている。
【0044】
このように構成された気化システムZによれば、気化装置100において容器10の導入口P1から導入された液体材料Xが一旦保持部材Wに流れ込み、その後に保持部材Wから放出された液体材料Xが貯留領域Rに貯留されるため、保持部材Wで保持されなかった余剰分の液体材料Xの液量を貯留領域Rで正確に検知することができる。そして、貯留領域Rに貯留される液量を検知し、その検知された液量に基づいて気化装置100に供給される液体材料Xの供給量を制御すれば、容器10内の液体材料Xの液量を一定に保つことができ、容器10内の液体材料Xの減少に伴う空焚きや、容器10内の液体材料Xの増加に伴う導出路L2への液体材料Xの流入を防止することができる。
【0045】
また、各加熱ヒータ30a,30bを貯留領域Rから離して設置したので、貯留領域Rに貯留された液体材料Xが積極的に加熱されずに気泡の発生が抑制され、これにより、検知装置20による液量の検知、より具体的には、液面センサによる液面の検知をより正確に行うことがきる。
【0046】
また、保持部材Wの内部で液体材料Xを気化させるので、その気化時に発生する気泡が大きく成長せず、これにより、貯留領域Rに貯留された液体材料Xの液面の揺れが抑制される。さらに、液体材料Xの殆どが保持部材W内で気化するため、その気化時に発生する気泡が弾けた際に飛散する飛沫が保持部材W内に留められ、気相側へ飛散されることを防止できる。
【0047】
また、保持部材Wを熱伝導率の高い材料で形成すれば、液体加熱ヒータ30aの熱が保持部材Wにも伝わり、これに伴って液体加熱ヒータ30aに接触する液体材料Xだけでなく、保持部材Wに接触する液体材料Xも気化し、液体材料Xの加熱接触面積が増して熱交換率が向上する。
【0048】
また、導出口P2と保持部材Wとの間に仕切壁14を設けたので、液体材料Xの気化時に発生する気泡が弾けて飛び散った飛沫が仕切壁14で遮断され、導出口P2から直接流出することを阻止できる。
【0049】
また、保持部材Wで生成された材料ガスは、貯留領域R側から仕切壁14の上側に回り込んで導出口P2へ導出するため、仕切壁14に設けられたガス加熱ヒータ30bによって加熱され、冷却に伴う再液化が防止される。
【0050】
さらに、本実施形態において、気化装置100に、貯留領域Rに貯留される液量が異常であるか否かを判断するための基準範囲を記憶する記憶部と、検知装置20で検知された検知液量が基準範囲にあるか判断する判断部と、検知液量が基準範囲外である場合に警告する警告部と、を備えた液量監視部を設けてもよい。このような構成にすれば、容器10内の液量の異常を迅速に検知することができる。なお、警告部は、表示手段や音声手段によって警告するようにすればよい。また、液量監視部は、制御装置の一部として設けてもよい。
【0051】
<実施形態2>
本実施形態は、
図4に示すように、前記実施形態1における気化装置100の変形例である。なお、
図4(a)は、本実施形態に係る気化装置を水平方向から目視した状態を示す断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のB-B断面図である。本実施形態に係る気化装置100は、前記実施形態1の容器10と比較して次の点で構成が相違している。先ず、気化室S内に仕切壁14が設けられておらず、これにより、保持部材Wの上側が気相になっている。また、ガス加熱ヒータ30bが上壁13から側壁11bに伸びるように設置されている。
【0052】
そして、実施形態2に係る気化装置100においては、液体加熱ヒータ30aが、保持部材W上部のみを加熱するように、側壁11a,11c,11dの保持部材W上部と隣接する部分に設けられている。このような構成にすれば、貯留領域Rに貯留された液体材料Xに隣接する保持部材W下部が積極的に加熱されず、その保持部材W下部に保持された液体材料Xから気泡が発生し難くなるため、貯留領域Rの液面の揺れを抑制できる。
【0053】
また、実施形態2に係る気化装置100においては、導入口P1及び導出口P2を異なる側壁11に設けられている。具体的には、導入口P1が、一側壁11aに設けられており、導出口P2が、他側壁11bに設けられている。この場合には、導出口P2が貯留領域Rの上方に配置され、貯留領域Rでは液体材料Xが積極的に気化されず、気泡による飛沫が導出口P2へ流入され難くなる。
【0054】
なお、前記各実施形態においては、保持部材Wと導入口P1から最も遠い側壁11bとの間に貯留領域Rを設けているが、導入口P1が設けられた側壁11a以外の側壁11b、11c、11dとの間であれば、いずれの側壁11b、11c、11dとの間に貯留領域Rを設けてもよく、二以上の側壁との間に貯留領域Rを設けてもよい。
【0055】
また、前記各実施形態においては、検知装置20として、液面センサを使用しているが、これに限定されず、貯留領域Rに貯留された液体材料Xの液量を検知できるものであれば他のセンサを使用してもよい。なお、前記各実施形態においては、液面センサとして、接触式のものを使用しているが、非接触式のものや、フロート式のものを使用してもよい。但し、フロート式のもののように機構上可動部を有するものは、その可動部でパーティクルが生じる恐れがある。
【0056】
また、前記各実施形態においては、貯留領域Rに貯留された液体材料Xの液量を検知装置20によって検知しているが、例えば、容器10の貯留領域Rに対応する部分に覗き窓を設け、目視によって確認できるようにしてもよい。
【0057】
また、前記各実施形態においては、貯留領域Rに貯留された液体材料Xが気化して気泡が発生しないように、容器10の貯留領域Rに隣接する外壁に各加熱ヒータ30a,30bを設置していないが、貯留領域Rに隣接する外壁に各加熱ヒータ30a,30bを設置してもよい。この場合、貯留領域Rに貯留された液体材料Xが気化して気泡が発生しない程度に加熱する。
【0058】
また、前記実施形態2においては、液体加熱ヒータ30aを、保持部材Wの側面上部と隣接させて保持部材W上部のみを積極的に加熱しているが、保持部材Wの側面全体と隣接させ、各液体加熱ヒータ30aの下側から上側に向かって温度が上昇するように温度勾配を設けるようにしてもよい。この場合にも、保持部材W上部に保持された液体材料Xが積極的に加熱され、前記実施形態2に係る気化装置100と同様の作用効果が得られる。
【0059】
また、前記各実施形態においては、横置きタイプの容器10を使用しているが、縦長状の縦置きタイプの容器10であってもよい。
【0060】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、容器内に導入される液体材料を保持する保持部材を備えた気化装置において、容器内の液体材料の残量を確認できるようになる。