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特許7130052積層体、積層体の製造方法、及び静電容量型入力装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、及び静電容量型入力装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20220826BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220826BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
G06F3/041 495
G06F3/044 125
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020548193
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033197
(87)【国際公開番号】W WO2020066405
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2018185731
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜山 達也
(72)【発明者】
【氏名】小川 恭平
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024226(JP,A)
【文献】特開2017-181541(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/18
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に設けられ、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層と、
前記酸化物粒子含有層の表面に設けられた感光性組成物の硬化物であって、内部応力が0.5MPa以下であり、かつ、前記酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D1が1.3mmol/g以上である樹脂層と、
を有する積層体。
【請求項2】
前記樹脂層は、2層以上の積層構造を有する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記2層以上の積層構造において、前記酸化物粒子含有層と接する樹脂層の厚みが、1μm以下である請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂層の総厚が、10μm以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層において、前記第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D1と、前記樹脂層の前記第1の表層部を有する側と反対側の第2の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D2と、がD1>D2の関係を満たす請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂層は、チオエーテル結合を有する樹脂を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記樹脂層は、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の導電性部材に接触させて前記導電性部材の保護材料として用いられる請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体を備えた静電容量型入力装置。
【請求項9】
酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層を有する基材の前記酸化物粒子含有層の上に、エチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性層を形成する工程と、
形成された前記感光性層を露光して硬化させることにより、内部応力が0.5MPa以下であり、かつ、前記酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D11.3mmol/g以上である樹脂層を形成する工程と、
を有する、積層体の製造方法。
【請求項10】
前記感光性層は、更に、光重合開始剤を含有する請求項9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記感光性層は、更に、チオール化合物を含有する請求項9又は請求項10に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記チオール化合物が、2官能以上のチオール化合物である請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記エチレン性不飽和基を有する化合物は、下記式(1)で表される化合物を含む請求項9~請求項12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【化1】

式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、AO及びBOは、それぞれ独立に、炭素数2~4の互いに異なるオキシアルキレン基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、4≦m+n≦30を満たす。
【請求項14】
前記感光性層を形成する工程は、仮支持体とエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性層とを有する転写フィルムを用い、転写により前記酸化物粒子含有層の上に前記感光性層を形成する請求項9~請求項13のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本開示は、積層体、積層体の製造方法、及び静電容量型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】

携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機、銀行の端末などの電子機器では、近年、液晶装置などの表面にタブレット型の入力装置が配置される。液晶装置の画像表示領域に表示された指示画像を参照しながら、指示画像が表示されている箇所に指又はタッチペンなどを触れることで、指示画像に対応する情報の入力が行える装置がある。
【0003】

上記の入力装置(以下、タッチパネルともいう。)には、抵抗膜型、静電容量型等がある。

静電容量型入力装置は、単に一枚の基板に透光性導電膜を形成すればよいという利点がある。かかる静電容量型入力装置では、例えば、互いに交差する方向に電極パターンを延在させて、指などが接触した際、電極間の静電容量が変化することを検知して入力位置を検出するタイプの装置がある。
【0004】

このような静電容量型入力装置を使用するにあたっては、例えば、光源からの入射光の正反射近傍から少し離れた位置においてタッチパネルの表面を目視した場合に、装置内部に存在する電極パターンが視認され、外観上支障を来すことがある。したがって、タッチパネル等の表面での電極パターンの隠蔽性を向上させることが求められる。

静電容量型入力装置の外観を良好に維持する等の観点から、基板の表面にチタニア又はジルコニア等の金属酸化物粒子を有する透明層を設けることが好適に行われている。
【0005】

感光性組成物を用いて硬化膜を形成する方法としては、従来から種々の技術が提案されており、例えば、基板上に、重合性基を有し、波長193nmの光の透過率が80%以上である密着保護層を形成する密着保護層形成工程と、密着保護層上に、感放射線性樹脂組成物を塗布して、レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、レジスト膜を露光する露光工程と、露光されたレジスト膜を現像して、パターンを形成する現像工程とを備え、微細かつ高アスペクト比のパターンを形成した際にもパターンの倒れ等を抑制し得るパターン形成方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】

また、(A)エチレン性不飽和基(P)と、オキシラニル基およびオキセタニル基から選択される環状エーテル基(T)とを有する重量平均分子量1000以上の樹脂と、(B)溶剤と、を含有するインプリント用下層膜形成組成物が開示され、表面平坦性および接着性に優れた下層膜を形成し得ることが記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】

【文献】特開2014-202969号公報
【文献】特開2014-192178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】

上記のように、基板と基板上に設けられる層との密着を高める技術は、従来から広く検討がなされ、パターンの形状又はサイズに依らず基板に保持し得る技術が提案されてきている。
【0009】

その一方、上記したように、表面にチタニア(酸化チタン)又はジルコニア(酸化ジルコニア)等の金属酸化物粒子を有する基板が使用される場合があり、かかる基板の金属酸化物粒子が存在する表面に感光性層を設けて硬化層を形成しようとした際、チタニア等の粒子が存在しない基板に比し、期待される硬化反応が得られないことがある。このような状況では、そもそも密着性が得られにくいところに硬化性の低下が加わり、基板に対する硬化層の密着性が著しく低下し、結果、基板からの剥離等の現象がより発現しやすくなる課題がある。
【0010】

本開示は、上記に鑑みなされたものである。

本開示の一実施形態は、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性に優れた積層体を提供する。

本開示の他の実施形態は、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性を改善することができる積層体の製造方法を提供する。

本開示の他の実施形態は、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性に優れ、良好な画像表示機能が発現される静電容量型入力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】

課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。

<1> 基材と、

基材の上に設けられ、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層と、

酸化物粒子含有層の表面に設けられた感光性組成物の硬化物であって、内部応力が1.

0MPa以下であり、かつ、酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/g以上である樹脂層と、

を有する積層体である。

<2> 樹脂層は、2層以上の積層構造を有する<1>に記載の積層体である。

<3> 2層以上の積層構造において、酸化物粒子含有層と接する樹脂層の厚みが、1μm以下である<2>に記載の積層体である。

<4> 樹脂層の総厚が、10μm以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層体である。

<5> 樹脂層において、第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D1と、樹脂層の第1の表層部を有する側と反対側の第2の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D2と、がD1>D2の関係を満たす<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層体である。

<6> 樹脂層は、チオエーテル結合を有する樹脂を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体である。

<7> 樹脂層は、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の導電性部材に接触させて導電性部材の保護材料として用いられる<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層体である。

<8> <7>に記載の積層体を備えた静電容量型入力装置である。
【0012】

<9> 酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層を有する基材の、酸化物粒子含有層の上に、エチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性層を形成する工程と、形成された感光性層を露光して硬化させることにより、内部応力が1.0MPa以下であり、かつ、酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/g以上である樹脂層を形成する工程と、を有する、積層体の製造方法である。

<10> 感光性層は、更に、光重合開始剤を含有する<9>に記載の積層体の製造方法である。

<11> 感光性層は、更に、チオール化合物を含有する<9>又は<10>に記載の積層体の製造方法である。

<12> チオール化合物が、2官能以上のチオール化合物である<11>に記載の積層体の製造方法である。

<13> エチレン性不飽和基を有する化合物は、下記式(1)で表される化合物を含む<9>~<12>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
【0013】

【化1】
【0014】

式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、AO及びBOは、それぞれ独立に、炭素数2~4の互いに異なるオキシアルキレン基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、4≦m+n≦30を満たす。

<14> 感光性層を形成する工程は、仮支持体とエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性層とを有する転写フィルムを用い、転写により基材の上の酸化物粒子含有の上に感光性層を形成する<9>~<13>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】

本発明の一実施形態によれば、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性に優れた積層体が提供される。

本開示の他の実施形態によれば、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性を改善することができる積層体の製造方法が提供される。

本開示の他の実施形態によれば、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性に優れ、良好な画像表示機能が発現される静電容量型入力装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】

以下、本開示の積層体及びその製造方法、並びに、本開示の積層体を備えた静電容量型入力装置について、詳細に説明する。なお、本開示の実施形態に関わる構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0017】

本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】

本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。

また、本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。

また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。

更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。

本開示において、組成物又は層中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0019】

本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0020】

本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
【0021】

また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。

本開示において、樹脂中の構成単位の割合は、特に断りが無い限り、モル割合を表す。

本開示において、分子量分布がある場合の分子量は、特に断りが無い限り、重量平均分子量(Mw)を表す。
【0022】

<積層体>

本開示の積層体は、基材と、金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層と、酸化物粒子含有層の表面に設けられた感光性組成物の硬化物である樹脂層と、を少なくとも有し、酸化物粒子含有層は、金属酸化物粒子として、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子を含んでいる。

更に、本開示の積層体における樹脂層は、内部応力を1.0MPa以下とし、かつ、酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度を1.2mmol/g以上の範囲として構成されている。

また、本開示の積層体は、必要に応じて、更に、他の層を有していてもよい。
【0023】

本開示における「樹脂層」は、感光性組成物を用いて形成された感光性層が硬化した後の硬化層のことをいう。

本開示における樹脂層の「表層部」とは、樹脂層の、酸化物粒子含有層と接する表面と表面から厚み方向に0.1μmの部分とを含む厚み方向の部位を指し、ATR-IR(Attenuated Total Reflectance-infrared spectroscopy(全反射吸収赤外分光法)によって測定される部分である。
【0024】

上述した特許文献1~2のように、感光性組成物を用いて硬化膜を形成する技術については、従来から広く検討されているところ、例えば、表面にチタニア及びジルコニア等といった金属酸化物粒子を有する支持材が使用される場合には、支持材の金属酸化物粒子が存在する表面に感光性層が設けられることになる。しかしながら、支持材の金属酸化物粒子が存在する面に感光性層を設けて硬化層を形成しようとした場合、チタニア等の粒子が存在しない支持材に比べ、期待される硬化反応が得られないことがある。即ち、例えば、支持材の金属酸化物粒子が存在する表面近傍では、金属酸化物粒子が存在する表面とその表面に形成される感光性層とがエチレン性不飽和基(C=C基)を有していても、エチレン性不飽和基の反応が進みにくいことが判明した。

このような状況では、そもそも密着性が得られにくいところに硬化性の低下が加わり、支持材に対する硬化層の密着性が著しく低下し、結果、基板からの剥離等の現象がより発現しやすくなる。
【0025】

このような状況を改善し、金属酸化物粒子が存在する表面とその表面に形成された感光性層が硬化した樹脂層との密着性を高めるには、硬化後の樹脂層の内部応力が高くなり過ぎず抑えられていること(即ち、脆くなく軟らかいこと)、及び樹脂層の支持材側表層部における架橋密度(C=C反応量)が高いことが重要である。

このような事情に鑑み、本開示では、基材の上に設けられた、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる酸化物粒子含有層上に、内部応力が1.0MPa以下であり、かつ、酸化物粒子含有層と接する表面を含む表層部の架橋密度が1.2mmol/g以上である樹脂層を設けた構造とする。具体的には、架橋密度は、例えば、酸化物粒子含有層のC=C基と樹脂層のC=C基との反応に伴う架橋によって満たされるものでもよい。

また、樹脂層は、層中に含まれる全てのC=C基が反応して層全体の架橋密度が上昇すると、樹脂層全体の内部応力が増大してしまい、逆に密着性の低下を招く。そのため、硬化後の樹脂層は、基材側表層部(即ち、酸化物粒子含有層側の表層部)における架橋密度を高め、基材からみて表層部より遠い位置の樹脂層の架橋密度を高め過ぎず、内部応力を基材側表層部より低くすることが重要である。

以上のように、本開示では、樹脂層の基材側表層部の架橋密度と、表層部以外の樹脂層の内部応力と、のバランスを図ることにより、基材上に金属酸化物粒子を有する場合の表面と感光性層の硬化物である樹脂層との密着性を効果的に高めることができる。
【0026】

以下、本開示の積層体について詳述する。

<基材>

基材としては、ガラス基材又は樹脂基材が好ましい。

また、基材は、透明な基材であることが好ましく、透明な樹脂基材であることがより好ましい。本開示における透明とは、全可視光線の透過率が85%以上であることを意図し、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。

基材の屈折率は、1.50~1.52が好ましい。

ガラス基材としては、例えば、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)などの強化ガラスを用いることができる。

樹脂基材としては、光学的に歪みがないもの及び透明度が高いものの少なくとも一方を用いることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂からなる基材が挙げられる。
【0027】

透明な基材の材質としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に記載されている材質が好ましく用いられる。
【0028】

<酸化物粒子含有層>

基材の上には、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層を有する。

酸化物粒子含有層の例には、屈折率を調整する屈折率調整層が好ましく挙げられる。

中でも、本開示の効果がより効果的に奏される観点からは、酸化チタンが好ましい。また、酸化物粒子含有層の屈折率の向上の観点からは、酸化ジルコニウムが好ましい。
【0029】

酸化物粒子含有層として屈折率調整層を有する場合、基材である例えば透明電極パターンを備えたタッチパネル用基材における透明電極パターンがより視認され難くなる(すなわち、透明電極パターンの隠蔽性がより向上する。)。透明電極パターンが視認される現象は、一般に「骨見え」と称されるものである。

透明電極パターンが視認される現象及び透明電極パターンの隠蔽性については、特開2014-10814号公報及び特開2014-108541号公報を適宜参照できる。
【0030】

基材と酸化物粒子含有層とで支持体が構成されていてもよい。即ち、酸化物粒子含有層は、基材上の最外層として設けて支持体の一部を構成するものでもよい。本開示では、支持体において酸化物粒子含有層が最外層として存在する場合、支持体上に樹脂層が形成された際に低下しやすい密着性を良好に維持し、支持体からの樹脂層の剥がれ等の現象を防ぎ、積層体又は積層体を用いた最終製品の品質及び信頼性を高く維持することができる。
【0031】

酸化物粒子含有層の屈折率は、基材上に電極等を有する場合の骨見え抑制の観点からは、感光性層の屈折率よりも高いことが好ましい。酸化物粒子含有層の屈折率は、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上である。

なお、酸化物粒子含有層の屈折率の上限は特に制限されないが、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。

屈折率は、特に断りがない限り、波長550nmでエリプソメトリーによって測定される値である。
【0032】

酸化物粒子含有層は、光硬化性(すなわち感光性)を有する層が硬化した層でもよいし、熱硬化性を有する層が硬化した層でもよいし、光硬化性及び熱硬化性の両方を有する層が硬化した層でもよい。
【0033】

酸化物粒子含有層の膜厚としては、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。

また、酸化物粒子含有層の膜厚は、20nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、55nm以上が更に好ましく、60nm以上が特に好ましい。
【0034】

酸化物粒子含有層の屈折率は、例えばタッチパネル等における透明電極パターンの屈折率に応じて調整されることが好ましい。

例えば、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)からなる透明電極パターンのように透明電極パターンの屈折率が1.8~2.0の範囲である場合は、酸化物粒子含有層の屈折率は、1.60以上が好ましい。この場合の酸化物粒子含有層の屈折率の上限は特に制限されないが、2.1以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。また、例えば、IZO(Indium Zinc Oxide;酸化インジウム亜鉛)からなる透明電極パターンのように、透明電極パターンの屈折率が2.0を超える場合は、酸化物粒子含有層の屈折率は、1.70以上1.85以下が好ましい。
【0035】

酸化物粒子含有層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、あらかじめ定めた屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と金属酸化物粒子又は金属粒子とを用いる方法、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法、等が挙げられる。
【0036】

酸化物粒子含有層は、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である無機粒子、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である樹脂、及び、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である重合性モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。

この態様であると、酸化物粒子含有層の屈折率を1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)に調整し易い。
【0037】

酸化物粒子含有層は、少なくとも、酸化チタン粒子(TiOの粒子)及び酸化ジルコニウム粒子(ZrOの粒子)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含有し、好ましくはエチレン性不飽和基を有する。酸化物粒子含有層がエチレン性不飽和基を有している場合、酸化物粒子含有層が更にエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することがより好ましい態様であり、必要に応じて、更に、バインダーポリマーを含有することが好ましい。

金属酸化物粒子の粒子径については、特に制限はなく、適宜選択することができる。

中でも、金属酸化物粒子の粒子径は、平均一次粒子径で、1nm~200nmの範囲が好ましく、2nm~80nmがより好ましく、3nm~60nmがさらに好ましい。ここで平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡観察を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0038】

酸化物粒子含有層に含有される成分については、特開2014-108541号公報の段落0019~0040及び0144~0150に記載されている硬化性酸化物粒子含有層の成分、特開2014-10814号公報の段落0024~0035及び0110~0112に記載されている透明層の成分、国際公開第2016/009980号の段落0034~段落0056に記載されているアンモニウム塩を有する組成物の成分等を参照することができる。
【0039】

また、酸化物粒子含有層は、金属酸化抑制剤を含有することが好ましい。

酸化物粒子含有層が金属酸化抑制剤を含有する場合には、酸化物粒子含有層を基板(即ち、転写対象物)上に転写する際に、酸化物粒子含有層と直接接する部材(例えば、基板上に形成された導電性部材)を表面処理することができる。この表面処理は、酸化物粒子含有層と直接接する部材に対し金属酸化抑制機能(保護性)を付与する。

金属酸化抑制剤としては、窒素原子を有する複素芳香環を有する化合物が好適に挙げられる。窒素原子を有する複素芳香環を有する化合物は、置換基を有してもよい。

窒素原子を有する複素芳香環としては、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、又は、これらのいずれか1つと他の芳香環との縮合環が好ましく、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環又はこれらのいずれか1つと他の芳香環との縮合環であることがより好ましい。縮合環を形成する「他の芳香環」は、単素環でも複素環でもよいが、単素環が好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環がより好ましく、ベンゼン環が更に好ましい。
【0040】

酸化物粒子含有層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。

酸化物粒子含有層に含有され得るその他の成分としては、上述した感光性層に含まれる各成分と同様のものが挙げられる。

酸化物粒子含有層は、その他の成分として、界面活性剤を含有することが好ましい。
【0041】

酸化物粒子含有層の形成方法には、特に制限はない。

酸化物粒子含有層を形成する方法の例としては、基材上に酸化物粒子含有層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法、仮支持体上に酸化物粒子含有層を有する転写フィルムの酸化物粒子含有層を所望とする基板上に転写する方法が挙げられる。

塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ後述する感光性層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
【0042】

酸化物粒子含有層形成用組成物は、酸化物粒子含有層の各成分を含有し得る。

酸化物粒子含有層形成用組成物は、例えば、バインダーポリマー、エチレン性不飽和化合物、粒子、及び溶剤を含有する。

粒子としては、少なくとも、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含有する。

酸化物粒子含有層形成用組成物の成分については、特開2014-108541号公報の段落0019~0040及び0144~0150に記載されている硬化性酸化物粒子含有層の成分、特開2014-10814号公報の段落0024~0035及び0110~0112に記載されている透明層の成分、国際公開第2016/009980号の段落0034~段落0056に記載の、アンモニウム塩を有する組成物の成分等を参照することができる。
【0043】

<樹脂層>

本開示の積層体は、感光性組成物の硬化物である樹脂層を有する。樹脂層は、酸化物粒子含有層の表面に設けられており、単層構造又は多層構造(複数層の積層構造)のいずれであってもよい。
【0044】

樹脂層の内部応力は、1.0MPa以下である。

樹脂層中に含まれるC=C基の反応量を多くして層全体の架橋密度が上昇し過ぎると、樹脂層全体が硬くなり過ぎ、密着性の低下を招く。そのため、本開示における樹脂層は、内部応力が1.0MPa以下であることで、表層部を除く中層部を比較的軟らかい状態に保ち、かつ、表層部の架橋密度を1.2mmol/g以上に高めることで、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性の向上に寄与する。

樹脂層の内部応力としては、0.7MPa以下が好ましく、0.5MPa以下がより好ましく、0.3MPa以下が更に好ましく、0.2MPa以下が特に好ましい。また、内部応力の下限値には制限はないが、0MPaとしてもよい。
【0045】

本開示における内部応力は、樹脂層自体の応力を示すものであり、樹脂層が複数層からなる場合は、複数層からなる層全体としての内部応力を示す。

内部応力は、以下の方法で測定される値である。

走査型白色干渉顕微鏡(例えば、Zygo社製のNewView5020)を用い、基板の表面の中央付近の表面形状を(例えば、Microモードで)測定し、高さが最も高い(又は最も低い)点と、この点から面方向に0.5mm離れた点と、の高さの差を算出し、基板の反りの曲率半径に変換する。そして、曲率半径R、基板の弾性率(引張試験のS-S曲線の線形領域の傾きより算出される弾性率)Es、基板のポアソン比vs、基板の厚さts、樹脂層の厚さTaを用いて、以下のStoneyの式から樹脂層の内部応力sを算出する。

s = Es×ts/(6×(1-vs)×R×Ta) :Stoneyの式
【0046】

樹脂層の内部応力は、樹脂層に含有される成分(エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、バインダーポリマー等)を適宜選択することで調整することが可能である。

例えば樹脂層の内部応力を低く維持する場合、エチレン性不飽和化合物の含有量を減らすこと、バインダーポリマーの含有量を増やすこと、チオール化合物を含有すること、下記式(1)で表されるエチレン性不飽和基を有する化合物を含有すること、等の少なくとも1つを選択することにより内部応力を低く調整することができる。
【0047】

【化2】
【0048】

式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、AO及びBOは、それぞれ独立に、炭素数2~4の互いに異なるオキシアルキレン基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、4≦m+n≦30を満たす。

式(1)で表されるエチレン性不飽和基を有する化合物の詳細については後述する。
【0049】

樹脂層の、酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度は、1.2mmol/g以上である。

架橋密度を1.2mmol/g以上とし、基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との間に形成されている架橋構造が増えることで、上記の内部応力とのバランスが相俟って基材上の酸化物粒子含有層と樹脂層との密着性が高められる。

樹脂層の架橋密度としては、1.3mmol/g以上が好ましく、1.5mmol/g以上がより好ましく、2.0mmol/g以上が更に好ましく、2.5mmol/g以上が特に好ましい。また、架橋密度の上限値は、6.0mmol/gとすることができる。
【0050】

樹脂層の架橋密度は、以下の方法で求められる値である。

積層体の樹脂層の表面に粘着テープ(例えば、スリーエムジャパン(株)製の#600)を貼り、粘着テープにて樹脂層を基材から剥離する。剥離された樹脂層の剥離面を、フルオート顕微FT-IRシステムLUMOS(Bruker Optics社製)を用いてATR-IR(Attenuated Total Reflectance-infrared spectroscopy(全反射吸収赤外分光法);検出器:MCT、結晶:Ge、波数分解能:4cm-1、積算:32回)

により測定し、二重結合のピークに相当する810cm-1のピーク面積を算出し、面積値Y1を求める。別途、積層体の樹脂層の形成に用いる感光性層(感光性組成物を用いて形成した層)の表面を上記同様にATR-IRにより測定し、810cm-1のピーク面積を算出し、面積値Y2を求める。求められる面積値Y1及びY2を用い、下記式1より架橋密度を算出する。

なお、下記式1で算出される架橋密度は、樹脂層の、酸化物粒子含有層と接する表面を含む表層部(第1の表層部)におけるエチレン性不飽和基の架橋密度を表す。

架橋密度[mmol/g]

=(感光性組成物(又は感光性層)の固形分1gに含まれる理論二重結合当量[mmol/g])×(Y2-Y1)/Y2 ・・・(式1)
【0051】

樹脂層は、2層以上の積層構造を有する多層に構成することができる。

樹脂層が多層である場合、内部応力が1.0MPa以下である部分と、エチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/g以上である部分と、を層ごとに分けてもよい。

具体的には、例えば樹脂層が2層で形成される場合、内部応力が1.0MPa以下である層Aと、エチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/g以上である層Bと、を有する多層としてもよい。また、層Aと層Bと他の層Cとを含む3層以上の多層に形成されていてもよい。

樹脂層が2層以上の積層構造を有する場合、例えば2層の積層構造であることは、樹脂層の断面を観察し、2層間における界面の有無を確認することで判断できる。
【0052】

樹脂層が2層以上の積層構造を有する場合、基材上の酸化物粒子含有層と接する層(例えば上記の層B)の厚みは、1μm以下であることが好ましい。基材上の酸化物粒子含有層と接する層は、架橋密度が高い層として設けられる。樹脂層は、基材上の酸化物粒子含有層との密着性の向上効果の点からは、C=C基の反応量が多いこと(架橋密度が高いこと)が重要であるが、樹脂層は全体の内部応力が小さいことが望まれるため、酸化物粒子含有層との間の架橋に寄与する層(即ち、酸化物粒子含有層に最も近い層)の厚みは薄いことが好ましい。

基材上の酸化物粒子含有層と接する層の厚みは、0.1μm~1μmがより好ましく、0.3μm~0.7μmが更に好ましい。
【0053】

更には、樹脂層が2層の積層構造を有する場合、例えば、内部応力が1.0MPa以下である層Aと、エチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/g以上である層Bと、の厚みの比率(層B/層A)は、0.1/10~1/5が好ましく、0.1/9~0.5/7が好ましい。
【0054】

樹脂層の総厚としては、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。

ここで、総厚とは、樹脂層が単層である場合は、単一の樹脂層の厚みを指し、樹脂層が2層以上の複数の層からなる場合は、複数の樹脂層の合計の厚みを指す。

樹脂層は、厚みが薄いほど内部応力が小さくなるため、樹脂層の総厚が10μm以下であることで、基材上の酸化物粒子含有層との密着性の改善効果が得られやすい。

樹脂層の総厚の下限については、信頼性(透湿度)の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。
【0055】

樹脂層において、第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D1と、樹脂層の第1の表層部を有する側と反対側の第2の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度D2と、がD1>D2の関係を満たしていることが好ましい。

樹脂層は、基材上の酸化物粒子含有層との密着性の向上効果の点で、第1の表層部でのC=C基の反応量が多いこと(架橋密度が高いこと)が重要である。したがって、樹脂層における架橋密度D1が架橋密度D2に対して大きいことが好ましい。
【0056】

樹脂層は、エチレン性不飽和基を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)を含有する樹脂層形成用組成物を用いて形成することができ、後述するように、樹脂層形成用組成物は、更に、光重合開始剤、チオール化合物等を含有することが好ましい。

樹脂層の形成に用いる樹脂層形成用組成物の詳細については後述する。
【0057】

樹脂層は、チオエーテル結合を有する樹脂を含むことが好ましい。

樹脂層は、後述するように、エチレン性不飽和化合物とチオール化合物とを少なくとも含む樹脂層形成用組成物を用いて形成した感光性層を硬化させた硬化層であることが好ましい。この硬化層には、チオエーテル結合(-S-)を含む樹脂が形成されているため、樹脂層の内部応力を低く調整することができる。これにより、基材上の酸化物粒子含有層との密着性の改善効果が得られやすい。
【0058】

本開示における樹脂層は、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の導電性部材に接触させて導電性部材の保護材料として好適に用いることができる。
【0059】

<積層体の製造方法>

本開示の積層体の製造方法は、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層を有する基材の酸化物粒子含有層の上に、エチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性層を形成する工程(以下、感光性層形成工程)と、形成された感光性層を露光して硬化させることにより、内部応力が1.0MPa以下であり、かつ、酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/g以上である樹脂層を形成する工程(以下、樹脂層形成工程)と、を有している。

本開示の積層体の製造方法は、必要に応じて、更に、他の工程を有していてもよい。
【0060】

(感光性層形成工程)

本開示における感光性層形成工程は、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層を有する基材の酸化物粒子含有層の上に、エチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性層を形成する。
【0061】

なお、基材、並びに酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有層の詳細については、既述の通りである。

また、感光性層に含有されるエチレン性不飽和基を有する化合物等の成分の詳細については後述する。
【0062】

感光性層の厚さは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましいく、10μm以下が特に好ましい。

感光性層の厚さが、20μm以下であると、酸化物粒子含有層との密着性が向上し、また積層体全体の薄膜化、感光性層又は得られる硬化層の透過率向上、及び感光性層又は得られる硬化層の黄着色化抑制等の面で有利である。感光性層の厚さは、製造適性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上が特に好ましい。
【0063】

感光性層の屈折率としては、1.47~1.56が好ましく、1.48~1.55がより好ましく、1.49~1.54が更に好ましく、1.50~1.53が特に好ましい。

本開示において、「屈折率」は、波長550nmにおける屈折率を指す。

本開示における「屈折率」は、特に断りが無い限り、温度23℃において波長550nmの可視光で、エリプソメトリーによって測定した値を意味する。
【0064】

感光性層形成工程での感光性層の形成は、エチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性組成物を基材上の酸化物粒子含有層の上に塗布し、必要に応じて乾燥させる方法、又は仮支持体とエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する感光性層とを有する感光性転写材料を用い、転写により基材に設けられた酸化物粒子含有層の上に感光性層を転写する方法のいずれにより行ってもよい。

なお、感光性転写材料の感光性層は、仮支持体上に感光性組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させることにより形成することができる。
【0065】

感光性層を形成する方法には、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。

感光性層の形成方法の一例として、基材又は仮支持体の上に、溶剤を含有する感光性組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。

塗布の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ダイコート法(即ち、スリットコート法)等が挙げられ、ダイコート法が好ましい。

乾燥の方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の方法を、単独で、又は複数組み合わせて適用することができる。

上記の中でも、感光性転写材料を用い、転写により基材上の酸化物粒子含有層の上に感光性層を形成する態様が好ましい。
【0066】

以下、感光性転写材料を用いる態様を中心に説明する。

本態様では、感光性転写材料を基材上の酸化物粒子含有層の表面(例えば、タッチパネル用基材の電極等が配置された側の面)にラミネートし、感光性転写材料の感光性層を酸化物粒子含有層の表面に転写することにより、基材の上に感光性層を形成する。

ラミネート(感光性層の転写)は、真空ラミネーター、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを用いて行うことができる。
【0067】

ラミネート条件としては、一般的な条件を適用できる。

ラミネート温度としては、80℃~150℃が好ましく、90℃~150℃がより好ましく、100℃~150℃が特に好ましい。

上述の通り、感光性転写材料を用いる態様では、ラミネート温度が高温(例えば120℃~150℃)である場合においても、熱かぶりによる現像残渣の発生が抑制される。

ゴムローラーを備えたラミネーターを用いる場合、ラミネート温度は、ゴムローラー温度を指す。

ラミネート時の基板温度には特に制限はない。ラミネート時の基板温度としては、10℃~150℃が挙げられ、20℃~150℃が好ましく、30℃~150℃がより好ましい。基板として樹脂基板を用いる場合には、ラミネート時の基板温度としては、10℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましく、30℃~50℃が特に好ましい。

また、ラミネート時の線圧としては、0.5N/cm~20N/cmが好ましく、1N/cm~10N/cmがより好ましく、1N/cm~5N/cmが特に好ましい。

また、ラミネート時の搬送速度(ラミネート速度)としては、0.5m/分~5m/分が好ましく、1.5m/分~3m/分がより好ましい。
【0068】

保護フィルム/感光性層/中間層/熱可塑性樹脂層/仮支持体の積層構造を有する感光性転写材料を用いる場合には、まず、感光性転写材料から保護フィルムを剥離して感光性層を露出させ、次いで、露出した感光性層と基材上の酸化物粒子含有層とが接するようにして感光性転写材料と基材とを貼り合わせ、次いで加熱及び加圧を施す。これにより、感光性転写材料の感光性層が基材の上に転写され、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性層/酸化物粒子含有層/基材の積層構造を有する積層体が形成される。積層構造のうち、基材として電極等が配置されたタッチパネル用基材を用いた場合は、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性層/酸化物粒子含有層/電極等/基板の積層構造を有する積層体が形成される。

その後、必要に応じ、上記積層体から仮支持体を剥離する。ただし、仮支持体を残したまま、後述のパターン露光を行うこともできる。
【0069】

基材としてタッチパネル用基材を用い、タッチパネル用基材上に感光性転写材料の感光性層を転写し、パターン露光し、現像する方法の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0070】

(樹脂層形成工程)

本開示における樹脂層形成工程は、感光性層を露光して硬化させることにより、内部応力が1.0MPa以下であり、かつ、酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/g以上である樹脂層を形成する。
【0071】

樹脂層の詳細については、既述の通りであり、好ましい態様も同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0072】

本工程では、感光性層が露光され、感光性層のうちの露光部が硬化し、硬化層となる。

露光は、パターン状に露光(パターン露光)する態様、すなわち露光部と非露光部とが存在する態様で行ってもよい。パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよい。

感光性層のうち、露光部は硬化するが、例えばパターン露光した際の非露光部は硬化しないので、非露光部は、露光後に行われる現像工程で現像液によって除去(溶解)されることができる。非露光部は、現像工程を経て硬化層の開口部の形成を担う部分である。
【0073】

光源としては、感光性層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及び、メタルハライドランプが挙げられる。露光量は、好ましくは5mJ/cm~200mJ/cmであり、より好ましくは10mJ/cm~200mJ/cmである。
【0074】

感光性転写材料を用いて基材上の酸化物粒子含有層の上に感光性層を形成した場合には、露光は、仮支持体を剥離してから行ってもよいし、仮支持体を剥離する前に露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。

また、露光工程では、パターン露光後であって現像前に、感光性層に対し熱処理(いわゆるPEB(Post Exposure Bake))を施してもよい。
【0075】

パターン露光した場合等の後、露光後の感光性層を現像する現像工程を設けることができる。

現像工程は、例えばパターン露光された感光性層を現像することにより(即ち、パターン露光における非露光部を現像液に溶解させることにより)、硬化パターンを形成することができる。基材として、電極等を有するタッチパネル用基材を用いる場合は、電極等の少なくとも一部を保護する電極保護膜を得ることができる。
【0076】

現像に用いる現像液は、特に制限されず、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を用いることができる。

現像液としては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。

アルカリ性水溶液に含有され得るアルカリ性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)、等が挙げられる。

アルカリ性水溶液の25℃におけるpHとしては、8~13が好ましく、9~12がより好ましく、10~12が特に好ましい。

アルカリ性水溶液中におけるアルカリ性化合物の含有量は、アルカリ性水溶液全量に対し、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~3質量%がより好ましい。
【0077】

現像液は、水に対して混和性を有する有機溶剤を含有してもよい。

有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε-カプロラクタム、及び、N-メチルピロリドンを挙げることができる。

有機溶剤の濃度は、0.1質量%~30質量%が好ましい。

現像液は、公知の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の濃度は0.01質量%~10質量%が好ましい。

現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0078】

現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像、等の方式が挙げられる。

シャワー現像を行う場合、パターン露光後の感光性層に現像液をシャワー状に吹き付けることにより、感光性層の非露光部を除去する。感光性層と熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方とを備える感光性転写材料を用いた場合には、これらの層の基板上への転写後であって感光性層の現像の前に、感光性層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワー状に吹き付け、熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方(両方存在する場合には両方)を予め除去してもよい。

また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付けつつブラシなどで擦ることにより、現像残渣を除去することが好ましい。

現像液の液温度は、20℃~40℃が好ましい。
【0079】

現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化層を加熱処理(以下、「ポストベーク」ともいう)する段階と、を含んでいてもよい。

基板が樹脂基板である場合には、ポストベークの温度は、100℃~160℃が好ましく、130℃~160℃がより好ましい。

このポストベークにより、透明電極パターンの抵抗値を調整することもできる。

また、感光性層がカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を含む場合には、ポストベークにより、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の少なくとも一部をカルボン酸無水物に変化させることができる。これにより、現像性、及び、硬化層の強度に優れる。
【0080】

また、現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化層を露光(以下、「ポスト露光」ともいう。)する段階と、を含んでいてもよい。

現像工程がポスト露光する段階及びポストベークする段階を含む場合、好ましくは、ポスト露光、ポストベークの順序で実施する。
【0081】

パターン露光、現像などについては、例えば、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0082】

本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法は、上述した工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、通常のフォトリソグラフィ工程に設けられることがある工程(例えば、洗浄工程など)を特に制限なく適用できる。
【0083】

次に、感光性組成物の詳細について説明する。

本開示における感光性層は、エチレン性不飽和基を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)を少なくとも含有する感光性組成物を用いて形成することができる。本開示における感光性組成物は、更に、光重合開始剤、チオール化合物、バインダーポリマー、及びその他の成分等を用いて調製することができ、中でも、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤及び/又はチオール化合物とを含有する感光性組成物が好ましい。

以下、感光性組成物(又は感光性組成物により形成される感光性層)に含有される成分について説明する。
【0084】

(エチレン性不飽和基を有する化合物)

本開示における感光性組成物は、エチレン性不飽和基を有する化合物(以下、エチレン性不飽和化合物ともいう。)の少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0085】

感光性組成物は、エチレン性不飽和化合物として、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。

ここで、2官能以上のエチレン性不飽和化合物とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。

エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。

エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0086】

感光性組成物は、硬化後の硬化性の観点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含有することが特に好ましい。
【0087】

2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。

2官能のエチレン性不飽和化合物の例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等、及び下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0088】

【化3】
【0089】

式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、AO及びBOは、それぞれ独立に、炭素数2~4の互いに異なるオキシアルキレン基を表す。

炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等を挙げることができる。

式(1)において、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、4≦m+n≦30を満たす。
【0090】

以下に、式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、本開示においてはこれらに限定されるものではない。
【0091】

【化4】


【0092】

2官能のエチレン性不飽和化合物としては、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業(株)製)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(APG-700、新中村化学工業(株)製)、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(A-PTMG-65、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0093】

3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。

3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物、等が挙げられる。
【0094】

ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0095】

エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)

製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0096】

エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(好ましくは3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物)も挙げられる。

3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0097】

また、エチレン性不飽和化合物は、現像性向上の観点から、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。

酸基としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基、及び、カルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。

酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、酸基を有する3~4官能のエチレン性不飽和化合物(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)

骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=80mgKOH/g~120mgKOH/g))、酸基を有する5~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=25mgKOH/g~70mgKOH/g))、等が挙げられる。

酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0098】

酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより現像性、及び、硬化層の強度が高まる。

カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。

カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、又は、アロニックスM-510(東亞合成(株)製)を好ましく用いることができる。
【0099】

酸基を有するエチレン性不飽和化合物は、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物であることも好ましい。この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0100】

エチレン性不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)としては、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。

また、エチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、感光性組成物に含有されるすべてのエチレン性不飽和化合物に対し、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0101】

エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。

感光性組成物(又は感光性層)におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対し、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~70質量%がより好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
【0102】

また、感光性組成物(又は感光性層)が2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物とを含有する場合、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物(又は感光性層)に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~85質量%がより好ましく、30質量%~80質量%が更に好ましい。

また、この場合、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物(又は感光性層)に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、15質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。

また、この場合、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との総含有量に対し、40質量%以上100質量%未満であることが好ましく、40質量%~90質量%であることがより好ましく、50質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0103】

また、感光性組成物(又は感光性層)が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、感光性組成物(又は感光性層)は、更に単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。

更に、感光性組成物(又は感光性層)が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、感光性組成物(又は感光性層)に含有されるエチレン性不飽和化合物において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が主成分であることが好ましい。

具体的には、感光性組成物(又は感光性層)が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂組成物に含有されるエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、40質量%~100質量%が好ましく、50質量%~100質量%がより好ましく、60質量%~100質量%が特に好ましい。
【0104】

また、感光性組成物(又は感光性層)が、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物又はそのカルボン酸無水物)を含有する場合、酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物(又は感光性層)に対し、1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0105】

(光重合開始剤)

本開示における感光性組成物は、光重合開始剤の少なくとも一種を含有することが好ましい。

光重合開始剤としては特に制限はなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。

光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0106】

光重合開始剤は、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0107】

また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、特開2015-014783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0108】

光重合開始剤の市販品としては、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:IRGACURE 379EG、BASF社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 907、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 127、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名:IRGACURE 369、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE 184、BASF社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:IRGACURE 651、BASF社製)、オキシムエステル系(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0109】

光重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。

感光性組成物(又は感光性層)における光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。

また、光重合開始剤の含有量は、感光性組成物(又は感光性層)の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0110】

(ブロックイソシアネート化合物)

本開示における感光性組成物は、硬化後の硬度の観点から、ブロックイソシアネート化合物を更に含有することが好ましい。

なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(マスク)した構造を有する化合物」のことをいう。
【0111】

ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、100℃~160℃であることが好ましく、130℃~150℃であることがより好ましい。

本明細書中におけるブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200)によりDSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合に、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」のことをいう。
【0112】

解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、ピラゾール化合物(3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾールなど)、活性メチレン化合物(マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル)など)、トリアゾール化合物(1,2,4-トリアゾールなど)、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどの分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)などが挙げられる。中でも、保存安定性の観点から、オキシム化合物、又は、ピラゾール化合物が好ましく、オキシム化合物が特に好ましい。
【0113】

また、ブロックイソシアネート化合物がイソシアヌレート構造を有することが膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から好ましい。イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えばヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより調製することができる。

イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、現像残渣を少なくしやすい観点から好ましい。
【0114】

ブロックイソシアネート化合物は、硬化後の硬度の観点から、重合性基を有することが好ましく、ラジカル重合性基を有することがより好ましい。

重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、例えば、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基等のエチレン性不飽和基、グリシジル基等のエポキシ基を有する基などが挙げられる。中でも、重合性基としては、得られる硬化層における表面の面状、現像速度及び反応性の観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることがより好ましい。
【0115】

ブロックイソシアネート化合物としては、上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例としては、カレンズAOI-BM、カレンズMOI-BM、カレンズ、カレンズMOI-BP(いずれも昭和電工(株)製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0116】

ブロックイソシアネート化合物は、分子量が200~3,000であることが好ましく、250~2,600であることがより好ましく、280~2,200であることが特に好ましい。
【0117】

本開示においては、ブロックイソシアネート化合物を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。

ブロックイソシアネート化合物の含有量は、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0118】

(チオール化合物)

本開示における感光性組成物は、チオール化合物を含有することが好ましい。

チオール化合物を含有することで、硬化後の樹脂層中にチオエーテル結合が存在し、樹脂層の内部抵抗を低減するのに適している。結果、基材上の酸化物粒子含有層に対する樹脂層の密着性が向上する。

チオール化合物としては、単官能チオール化合物、又は、多官能チオール化合物が好適に用いられる。中でも、硬化後の硬度の観点から、2官能以上のチオール化合物(多官能チオール化合物)を含むことが好ましく、多官能チオール化合物であることがより好ましい。
【0119】

多官能チオール化合物とは、メルカプト基(チオール基)を分子内に2個以上有する化合物を意味する。多官能チオール化合物としては、分子量100以上の低分子化合物が好ましく、具体的には、分子量100~1,500であることがより好ましく、150~1,000が更に好ましい。
【0120】

多官能チオール化合物の官能基数としては、硬化後の硬度の観点から、2官能~10官能が好ましく、2官能~8官能がより好ましく、2官能~6官能が更に好ましい。

また、多官能チオール化合物としては、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、脂肪族多官能チオール化合物であることが好ましい。

更に、チオール化合物としては、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、第二級チオール化合物がより好ましい。
【0121】

多官能チオール化合物として具体的には、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)

ブタン、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、p-キシレンジチオール、m-キシレンジチオール、ジ(メルカプトエチル)エーテル等を例示することができる。
【0122】

これらの中でも、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、及び、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が好ましく挙げられる。
【0123】

単官能チオール化合物としては、脂肪族チオール化合物、及び、芳香族チオール化合物のどちらも用いることができる。

単官能脂肪族チオール化合物としては、具体的には、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。

単官能芳香族チオール化合物としては、ベンゼンチオール、トルエンチオール、キシレンチオール等が挙げられる。
【0124】

チオール化合物は、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、エステル結合を有するチオール化合物であることが好ましく、下記式1で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0125】

【化5】
【0126】

式1において、nは1~6の整数を表し、Aは炭素数1~15のn価の有機基、又は、下記式2で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表す。
【0127】

【化6】
【0128】

式2において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表し、波線部分は、上記式1における酸素原子との結合位置を表す。
【0129】

式1におけるnは、硬化後の硬度の観点から、2~6の整数であることが好ましい。

式1におけるAは、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数1~15のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることが好ましく、炭素数4~15のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることがより好ましく、炭素数5~10のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることが更に好ましく、上記式2で表される基であることが特に好ましい。

また、式1におけるAは、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、水素原子及び炭素原子からなるn価の基、又は、水素原子、炭素原子及び酸素原子からなるn価の基であることが好ましく、水素原子及び炭素原子からなるn価の基であることがより好ましく、n価の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。

式1におけるRはそれぞれ独立に、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数1~15のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数3のアルキレン基であることが更に好ましく、1,2-プロピレン基であることが特に好ましい。上記アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。
【0130】

式2におけるR~Rはそれぞれ独立に、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数2~15の脂肪族基であることが好ましく、炭素数2~15のアルキレン基、又は、炭素数3~15のポリアルキレンオキシアルキル基であることがより好ましく、炭素数2~15のアルキレン基であることが更に好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0131】

また、多官能チオール化合物としては、下記式S-1で表される基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0132】

【化7】
【0133】

式S-1において、R1Sは水素原子又はアルキル基を表し、A1Sは-CO-又は-CH2-を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【0134】

多官能チオール化合物としては、式S-1で表される基を2以上6以下有する化合物が好ましい。

式S-1中のR1Sにおけるアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、炭素数の範囲としては1~16が好ましく、1~10がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、2-エチルへキシル基等であり、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基が好ましい。

1Sとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、イソプロピル基が特に好ましく、メチル基又はエチル基が最も好ましい。
【0135】

更に、多官能チオール化合物としては、上記式S-1で表される基を複数個有する下記式S-2で表される化合物であることが特に好ましい。
【0136】

【化8】
【0137】

式S-2において、R1Sはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、A1Sはそれぞれ独立に、-CO-又は-CH2-を表し、L1SはnS価の連結基を表し、nSは2~8の整数を表す。合成上の観点からは、R1Sは全て同じ基であることが好ましく、また、A1Sは全て同じ基であることが好ましい。
【0138】

式S-2中のR1Sは、上記式S-1中のR1Sと同義であり、好ましい範囲も同様である。nSは2~6の整数が好ましい。

式S-2中のnS価の連結基であるL1Sとしては、例えば-(CH2mS-(mSは2~6の整数を表す。)などの二価の連結基、トリメチロールプロパン残基、-(CH2pS-(pSは2~6の整数を表す。)を3個有するイソシアヌル環などの三価の連結基、ペンタエリスリトール残基などの四価の連結基、ジペンタエリスリトール残基などの五価又は六価の連結基が挙げられる。
【0139】

チオール化合物として具体的には、以下の化合物が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは、言うまでもない。
【0140】

【化9】
【0141】

【化10】


【0142】

チオール化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。

チオール化合物の含有量は、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対して、1質量%以上であることが好ましく、1質量%~40質量%がより好ましく、3質量%~25質量%が更に好ましく、5質量%~15質量%が特に好ましい。
【0143】

(バインダーポリマー)

本開示における感光性組成物は、バインダーポリマーを含有することが好ましい。

バインダーポリマーは、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。

バインダーポリマーは、特に制限はないが、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のバインダーポリマーであることが好ましく、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂であることが特に好ましい。

バインダーポリマーが、酸価を有することで、加熱により酸と反応可能な化合物と熱架橋し、3次元架橋密度を高めることができると推定される。また、カルボキシル基含有アクリル樹脂のカルボキシル基が無水化され、疎水化することにより湿熱耐性の改善に寄与すると推定される。
【0144】

酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂(以下、特定重合体Aということがある。)としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて特に制限はなく、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。

例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂であるバインダーポリマー、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂等が、本実施形態における特定重合体Aとして好ましく用いることができる。

ここで、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の少なくとも一方を含む樹脂を指す。

(メタ)アクリル樹脂中における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)

アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。
【0145】

特定重合体Aにおける、カルボキシル基を有するモノマーの共重合比の好ましい範囲は、特定重合体A100質量%に対して、5質量%~50質量%であり、より好ましくは5質量%~40質量%、更に好ましくは10質量%~30質量%の範囲内である。

特定重合体Aは、反応性基を有していてもよく、反応性基を特定重合体Aに導入する手段としては、水酸基、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、スルホン酸などに、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート、イソシアネート、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、カルボン酸無水物などを反応させる方法が挙げられる。

これらの中でも、反応性基としては、ラジカル重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和基であることがより好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることが特に好ましい。
【0146】

また、バインダーポリマー、特に特定重合体Aは、硬化後の透湿度及び強度の観点から、芳香環を有する構成単位を有することが好ましい。

芳香環を有する構成単位を形成するモノマーとしては、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。

芳香環を有する構成単位としては、後述する式P-2で表される構成単位を少なくとも1種含有することが好ましい。また、芳香環を有する構成単位としては、スチレン化合由来の構成単位であることが好ましい。
【0147】

バインダーポリマーが芳香環を有する構成単位を含有する場合、芳香環を有する構成単位の含有量は、バインダーポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0148】

また、バインダーポリマー、特に特定重合体Aは、タック性、及び、硬化後の強度の観点から、脂肪族環式骨格を有する構成単位を有することが好ましい。

脂肪族環式骨格を有する構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。

上記脂肪族環式骨格を有する構成単位が有する脂肪族環としては、ジシクロペンタン環、シクロヘキサン環、イソボロン環、トリシクロデカン環等が好ましく挙げられる。中でも、トリシクロデカン環が特に好ましく挙げられる。
【0149】

バインダーポリマーが脂肪族環式骨格を有する構成単位を含有する場合、脂肪族環式骨格を有する構成単位の含有量は、バインダーポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、20質量%~70質量%であることが更に好ましい。
【0150】

また、バインダーポリマー、特に特定重合体Aは、タック性、及び、硬化後の強度の観点から、エチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。

エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリル基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。

バインダーポリマーがエチレン性不飽和基を有する構成単位を含有する場合、エチレン性不飽和基を有する構成単位の含有量は、バインダーポリマーの全質量に対し、5質量%~70質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0151】

バインダーポリマーの酸価は、60mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gであることがより好ましく、60mgKOH/g~130mgKOH/gであることが更に好ましい。

酸価は、JIS K0070(1992年)に記載の方法に従って、測定された値を意味する。

バインダーポリマーが、酸価60mgKOH/g以上のバインダーポリマーを含むことで、酸化物粒子含有層との間の密着性を高めることができる。
【0152】

特定重合体Aの重量平均分子量は、5,000以上が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
【0153】

また、バインダーポリマーは、上記特定ポリマー以外にも、任意の膜形成樹脂を目的に応じて適宜選択して用いることができる。感光性層は、静電容量型入力装置における電極等の保護膜に適用する観点から表面硬度及び耐熱性が良好な膜が好ましいので、バインダーポリマーとしては、アルカリ可溶性樹脂がより好ましく、公知の感光性シロキサン樹脂材料などは更に好ましい。
【0154】

バインダーポリマーとしては、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を含む重合体(以下、特定重合体Bということがある。)を含むことが好ましい。特定重合体Bを含むことにより、現像性、及び、硬化後の強度により優れる。

カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造及び環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。

環状カルボン酸無水物構造の環としては、5~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環が更に好ましい。

また、環状カルボン酸無水物構造は、他の環構造と縮環又は結合して多環構造を形成していてもよいが、多環構造を形成していないことが好ましい。
【0155】

環状カルボン酸無水物構造に他の環構造が縮環又は結合して多環構造を形成している場合、多環構造としては、ビシクロ構造又はスピロ構造が好ましい。

多環構造において、環状カルボン酸無水物構造に対し縮環又は結合している他の環構造の数としては、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。

他の環構造としては、炭素数3~20の環状の炭化水素基、炭素数3~20のヘテロ環基等が挙げられる。

ヘテロ環基としては、特に限定されないが、脂肪族ヘテロ環基及び芳香族ヘテロ環基が挙げられる。

また、ヘテロ環基としては、5員環又は6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。

また、ヘテロ環基としては、酸素原子を少なくとも一つ含有するヘテロ環基(例えば、オキソラン環、オキサン環、ジオキサン環等)が好ましい。
【0156】

カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位であるか、又は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
【0157】

【化11】


【0158】

式P-1において、RA1aは置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよい。Z1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表す。n1aは0以上の整数を表す。
【0159】

A1aで表される置換基としては、上述したカルボン酸無水物構造が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。

1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が特に好ましい。
【0160】

式P-1で表される部分構造は、他の環構造と縮環又は結合して多環構造を形成していてもよいが、多環構造を形成していないことが好ましい。

ここでいう他の環構造としては、上述した、カルボン酸無水物構造と縮環又は結合してもよい他の環構造と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0161】

1aは、0以上の整数を表す。

1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは0~4の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0が更に好ましい。

1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
【0162】

カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位であることが好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることがより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることが更に好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位であることが更に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位であることが特に好ましい。
【0163】

以下、カルボン酸無水物構造を有する構成単位の具体例を挙げるが、カルボン酸無水物構造を有する構成単位はこれらの具体例に限定されるものではない。

下記の構成単位中、Rxは、水素原子、メチル基、CHOH基、又はCF基を表し、Meは、メチル基を表す。
【0164】

【化12】
【0165】

【化13】
【0166】

カルボン酸無水物構造を有する構成単位としては、上記式a2-1~式a2-21のいずれかで表される構成単位のうちの少なくとも1種であることが好ましく、上記式a2-1~式a2-21のいずれかで表される構成単位のうちの1種であることがより好ましい。
【0167】

カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、硬化層の耐汗性向上及び感光性転写材料とした場合の現像残渣低減の観点から、式a2-1で表される構成単位及び式a2-2で表される構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、式a2-1で表される構成単位を含むことがより好ましい。
【0168】

特定重合体Bにおけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位の含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、特定重合体Bの全量に対し、0モル%~60モル%であることが好ましく、5モル%~40モル%であることがより好ましく、10モル%~35モル%であることが更に好ましい。

なお、本開示において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0169】

特定重合体Bは、下記式P-2で表される構成単位を少なくとも1種含有することが好ましい。これにより、形成される硬化層の疎水性及び強度がより向上する。
【0170】

【化14】


【0171】

式P-2において、RP1は、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を表し、RP2は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nPは0~5の整数を表す。nPが2以上の整数である場合、2つ以上存在するRP1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0172】

P1としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、カルボキシ基、F原子、Cl原子、Br原子、又はI原子であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、Cl原子、又はBr原子であることがより好ましい。

P2としては、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素原子6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0173】

nPは、0~3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0174】

式P-2で表される構成単位としては、スチレン化合物に由来する構成単位であることが好ましい。

スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,p-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられ、スチレン又はα-メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。

式P-2で表される構成単位を形成するためのスチレン化合物は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
【0175】

特定重合体Bが式P-2で表される構成単位を含有する場合、特定重合体Bにおける式P-2で表される構成単位の含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、特定重合体Bの全量に対し、5モル%~90モル%であることが好ましく、30モル%~90モル%であることがより好ましく、40モル%~90モル%であることが更に好ましい。
【0176】

特定重合体Bは、カルボン酸無水物構造を有する構成単位及び式P-2で表される構成単位以外のその他の構成単位を少なくとも1種含んでいてもよい。

その他の構成単位は、酸基を含有しないことが好ましい。

その他の構成単位としては特に限定されないが、単官能エチレン性不飽和化合物に由来する構成単位が挙げられる。

上記単官能エチレン性不飽和化合物としては、公知の化合物を特に限定なく用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物;アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物の誘導体;等が挙げられる。
【0177】

特定重合体Bにおけるその他の構成単位の含有量(2種以上である場合には総含有量)

は、特定重合体Bの全量に対し、0モル%~90モル%であることが好ましく、0モル%~70モル%であることがより好ましい。
【0178】

バインダーポリマーの重量平均分子量は、特に制限はないが、3,000を超えることが好ましく、3,000を超え60,000以下であることがより好ましく、5,000~50,000であることが更に好ましい。
【0179】

バインダーポリマーは、1種単独で使用しても、2種以上を含有してもよい。

バインダーポリマーの含有量は、感光性及び硬化層の強度の観点から、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0180】

(溶剤)

感光性層の形成には、塗布による感光性層の形成の観点から、感光性組成物は溶剤の少なくとも1種を含有してもよい。
【0181】

溶剤としては、通常用いられる溶剤を特に制限なく用いることができる。

溶剤としては、有機溶剤が好ましい。

有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、2-プロパノールなどを挙げることができる。また、使用する溶剤は、これらの化合物の混合物である混合溶剤を含有してもよい。

溶剤としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤、又はジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤が好ましい。
【0182】

溶剤を使用する場合、感光性組成物の固形分量としては、感光性組成物の全量に対して、5質量%~80質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が特に好ましい。
【0183】

また、溶剤を使用する場合、感光性組成物の粘度(25℃)は、塗布性の観点から、1mPa・s~50mPa・sが好ましく、2mPa・s~40mPa・sがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sが特に好ましい。

粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業(株)製)を用いて測定する。

感光性組成物が溶剤を含有する場合、感光性組成物の表面張力(25℃)は、塗布性の観点から、5mN/m~100mN/mが好ましく、10mN/m~80mN/mがより好ましく、15mN/m~40mN/mが特に好ましい。

表面張力は、例えば、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定する。
【0184】

溶剤としては、米国特許出願公開第2005/282073号明細書の段落0054及び0055に記載のSolventを用いることもでき、この明細書の内容は本明細書に組み込まれる。

また、溶剤として、必要に応じて沸点が180℃~250℃である有機溶剤(高沸点溶剤)を使用することもできる。
【0185】

(その他の成分)

感光性組成物は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。

その他の成分としては、例えば、界面活性剤、重合禁止剤、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤、等が挙げられる。
【0186】

-界面活性剤-

界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017及び特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤、公知のフッ素系界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F551(DIC(株)製)が挙げられる。

感光性組成物(又は感光性層)が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましく、0.1質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0187】

-重合禁止剤-

重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤(重合禁止剤ともいう)を用いることができる。中でも、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールを好適に用いることができる。

感光性組成物(又は感光性層)が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.8質量%

が更に好ましい。
【0188】

-水素供与性化合物-

水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。

水素供与性化合物の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)

、特公昭44-20189号公報、特開昭51-82102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-84305号公報、特開昭62-18537号公報、特開昭64-33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、p-メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。

また、水素供与性化合物の更に別の例としては、アミノ酸化合物(例、N-フェニルグリシン等)、特公昭48-42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-34414号公報記載の水素供与体、特開平6-308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0189】

水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)に対し、0.1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上25質量%以下の範囲がより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下の範囲が更に好ましい。
【0190】

-粒子-

粒子としては、酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子以外の他の金属酸化物粒子が挙げられ、金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれる。他の金属酸化物粒子は、屈折率や光透過性を調節することができ、本開示の効果を著しく損なわない範囲で含有することができる。

硬化層の透明性の観点から、粒子の平均一次粒子径は、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0191】

-着色剤-

着色剤としては、顔料、染料等が含まれる。着色剤は、本開示の効果を損なわない範囲で用いることができるが、透明性の観点から、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、着色剤の含有量は、感光性組成物の固形分量(又は感光性層の全質量)

に対し、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0192】

<静電容量型入力装置>

本開示の静電容量型入力装置は、既述の積層体を備えている。

静電容量型入力装置としては、タッチパネルが好適に挙げられる。

タッチパネルに配置されるタッチパネル用電極としては、例えば、タッチパネルの少なくとも画像表示領域に配置される透明電極パターンが挙げられる。タッチパネル用電極は、画像表示領域からタッチパネルの枠部にまで延びていてもよい。

タッチパネルに配置されるタッチパネル用配線としては、例えば、タッチパネルの枠部に配置される引き回し配線(取り出し配線)が挙げられる。

タッチパネルに用いられるタッチパネル用基材及びタッチパネルの好ましい態様としては、透明電極パターンのタッチパネルの枠部に延びている部分に、引き回し配線の一部が積層されることにより、透明電極パターンと引き回し配線とが電気的に接続されている態様が好適である。
【0193】

透明電極パターンの材質としては、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜が好ましい。

引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛及びマンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム又はチタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0194】

本開示の積層体は、電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)を保護する材料(好ましくはタッチパネル用電極保護膜)として、電極等を覆うようにして設けることができる。本開示の積層体は、開口部を有していてもよい。開口部は、感光性層の非露光部が現像液によって溶解されることにより形成され得る。
【0195】

タッチパネルの場合、本開示の積層体と電極等との間に更に他の屈折率調整層を備えていてもよい。他の屈折率調整層の好ましい態様は、本開示における酸化物粒子含有層の好ましい態様と同様である。他の屈折率調整層は、屈折率調整層形成用組成物の塗布及び乾燥によって形成されてもよいし、別途、屈折率調整層を備える感光性転写材料の屈折率調整層を転写することによって形成されてもよい。
【0196】

タッチパネル又はタッチパネル用基材は、基板と電極等との間に屈折率調整層を備えていてもよい。ここでの屈折率調整層の好ましい態様は、本開示における樹脂層の好ましい態様と同様である。
【0197】

タッチパネルの構造については、特開2014-10814号公報又は特開2014-108541号公報に記載の静電容量型入力装置の構造を参照してもよい。
【実施例
【0198】

以下、本発明の実施形態を具体的な実施例を示して具体的に説明する。但し、本発明の実施形態は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。

なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0199】

また、本実施例において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。また、酸価は、理論酸価を用いた。
【0200】

<重合体の合成>

まず、感光性組成物(又は樹脂層)に含まれる樹脂として、重合体P-1~P-2を合成した。
【0201】

(重合体P-1の合成)

3口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG、富士フイルム和光純薬(株)製)244.2質量部を入れ、窒素下、90℃に保持した。そこに、メタクリル酸ジシクロペンタニル(東京化成工業(株)製)120.4質量部、メタクリル酸(MAA、富士フイルム和光純薬(株)製)96.1質量部、スチレン(富士フイルム和光純薬(株)製)87.2質量部、MFG188.5質量部、p-メトキシフェノール(富士フイルム和光純薬(株)製)0.0610質量部、及びV-601(ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、富士フイルム和光純薬(株)製)16.7質量部の混合液を3時間かけて滴下した。

滴下後、90℃で1時間撹拌し、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)との混合液を添加し、1時間撹拌した。その後、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2g質量部)との混合液を更に添加した。1時間撹拌した後、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)との混合液を更に添加した。3時間撹拌した後、MFG2.9質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、ダイセル化学製)166.9質量部を添加して均一になるまで撹拌した。

反応液に、付加触媒としてのテトラメチルアンモニウムブロミド(TEAB、東京化成工業(株)製)1.5質量部及びp-メトキシフェノール0.7質量部を添加し、100℃に昇温した。更に、メタクリル酸グリシジル(GMA、富士フイルム和光純薬(株)製)62.8質量部を添加し、100℃で9時間撹拌し、重合体P-1のMFG/PGMEA混合溶液を得た。

重合体P-1のGPC測定による重量平均分子量は、20,000(ポリスチレン換算)であり、重合体溶液における重合体濃度(固形分濃度)は36.3質量%であった。
【0202】

(重合体P-2の合成)

重合体P-1の合成と同様にして、下記重合体P-2を合成し、重合体P-2のMFG/PGMEA混合溶液を得た。

重合体P-2のGPC測定による重量平均分子量は、29,000(ポリスチレン換算)であり、重合体溶液における重合体濃度(固形分濃度)は36.3質量%であった。
【0203】

以下に、重合体P-1~P-2を示す。式中における各構成単位の比は、質量比である。また、Meはメチル基を表す。
【0204】

【化15】


【0205】

<樹脂層1形成用の感光性組成物の調製>

下記表1に示す組成物中の各成分を混合し、感光性組成物A-1~A-5を調製した。表1中における重合体の量は、重合体溶液(重合体濃度:36.3質量%)の量を意味する。
【0206】
【表1】

【0207】

<樹脂層2形成用の感光性組成物の調製>

下記表2に示す組成物中の各成分を混合し、感光性組成物B-1~B-8を調製した。表2中における重合体の量は、重合体溶液(重合体濃度:36.3質量%)の量を意味する。
【0208】
【表2】


【0209】

<転写フィルムの作製>

次に、以下のようにして転写フィルムを作製した、-転写フィルムA-1~A-5- 5枚の仮支持体(ルミラー16QS62(厚み16μm)、東レ株式会社製;ポリエチレンテレフタレートフィルム)を用意し、各々の仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて上記の感光性組成物A-1~A-5のいずれかをそれぞれ塗布し、乾燥させて、表1に記載の乾燥厚みを有する感光性層1を形成した。次いで、形成された感光性層1の上にそれぞれ保護フィルム(トレファン12KW37(厚み:12μm)、東レ株式会社製;ポリプロピレンフィルム)を圧着し、転写フィルムA-1~A-5を作製した。
【0210】

-転写フィルムB-1~B-8- 8枚の仮支持体(ルミラー16QS62(厚み16μm)、東レ株式会社製;ポリエチレンテレフタレートフィルム)を用意し、各々の仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて上記の感光性組成物B-1~B-8のいずれかをそれぞれ塗布し、乾燥させて、表2に記載の乾燥厚みを有する感光性層2を形成した。次いで、形成された感光性層2の上にそれぞれ保護フィルム(トレファン12KW37(厚み:12μm)、東レ株式会社製;ポリプロピレンフィルム)を圧着し、転写フィルムB-1~B-8を作製した。
【0211】

<積層体作製に用いる基板の準備>

-透明フィルム基板1の作製-

膜厚38μm、屈折率1.53のシクロオレフィン樹脂フィルム(COPフィルム)を、高周波発振機を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を行い、表面改質が行われた透明フィルム基板を得た。

次いで、下記表3に示す材料-Cの成分を含む塗布液を、スリット状ノズルを用いて透明フィルム基板の上に塗工した後、紫外線を照射(積算光量300mJ/cm)し、約110℃で乾燥させて、屈折率1.60、膜厚80nmの透明膜を製膜した。

このようにして、透明膜を有する透明フィルム基板1を得た。

なお、式(3)中の右下の数値は、質量基準である。
【0212】

【表3】
【0213】

【化16】


【0214】

-透明フィルム基板2の作製-

透明フィルム基板1の作製において、表3中のZR-010(ZrO、(株)ソーラー製)を、NRA-10M(TiO、多木化学(株)製)に代えたこと以外は、透明フィルム基板1と同様にして、透明フィルム基板2を作製した。
【0215】

(実施例1~19、実施例22~23、比較例1~2)

<積層体の作製>

支持体として上記で作製した透明フィルム基板の各々を用い、透明フィルム基板の上に転写フィルムA-1~A-5から選択した転写フィルムの保護フィルムを剥離し、露出した感光性層1の表面を密着させてラミネートし、仮支持体/感光性層1/透明フィルム基板の層構造を有する積層体Aを形成した。この際のラミネートの条件は、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。

次いで、さらに積層体Aから仮支持体を剥離し、露出した感光性層1の表面に、転写フィルムB-1~B-8から選択した転写フィルムの保護フィルムを剥離し、露出した感光性層2の表面を密着させてラミネートし、仮支持体/感光性層2/感光性層1/透明フィルム基板(透明膜/COPフィルム)の積層構造を有する積層体Bを形成した。この際のラミネートの条件は、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。
【0216】

そして、作製した積層体Bに対して、仮支持体を介して以下の条件にて光照射を行い、感光性層1及び感光性層2を硬化させて積層体を作製した。

なお、以下において、硬化後の感光性層1を「樹脂層1」と称し、硬化後の感光性層2を「樹脂層2」と称し、光照射後の積層体Bを単に「積層体」と称する。

<条件>

装置:超高圧水銀灯を備えたプロキシミティー型露光機 (日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)

照射量:100mJ/cm

照射光:i線
【0217】

(実施例20)

実施例11において、樹脂層1を形成しなかったこと以外は、実施例11と同様にして、積層体を作製した。
【0218】

(実施例21)

実施例1において、樹脂層1を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0219】

<評価>

実施例1~23及び比較例1~2で作製した積層体に対して、以下の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、下記表4に示す。
【0220】

-1.架橋密度-

以下の方法にて架橋密度を算出した。
【0221】

(A)第1の表層部における架橋密度の算出

まず積層体から仮支持体を剥離し、仮支持体を剥離して露出した樹脂層2の表面に透明粘着テープ#600(スリーエムジャパン(株)製)を貼り、透明粘着テープにて樹脂層2及び樹脂層1を透明フィルム基板から剥離した。剥離された樹脂層1の表面を、フルオート顕微FT-IRシステムLUMOS(Bruker Optics社製)を用いてATR-IR(検出器:MCT、結晶:Ge、波数分解能:4cm-1、積算:32回)により測定し、エチレン性不飽和基に該当する「二重結合」のピークに相当する810cm-1のピーク面積を算出し、面積値を「Y1」とした。

上記とは別に、転写フィルムA-1~A-5の各々の保護フィルムを剥がし、感光性層1の表面を、上記と同様にATR-IRにより測定し、810cm-1のピーク面積を算出し、面積値を「Y2」とした。

得られたY1及びY2を用いて下記式1より架橋密度を算出した。

なお、下記式1で算出される架橋密度は、樹脂層1の、金属酸化物粒子であるZrOを含有する透明膜と接する表面を含む表層部(第1の表層部)におけるエチレン性不飽和基の架橋密度である。

架橋密度[mmol/g]

=(感光性組成物(又は感光性層)の固形分1gに含まれる理論二重結合当量[mmol/g])×(Y2-Y1)/Y2 ・・・(式1)
【0222】

(B)第2の表層部における架橋密度の算出

積層体から仮支持体を剥離し、仮支持体を剥離して露出した樹脂層2の表面を、上記と同様にLUMOS(Bruker Optics社製)を用いてATR-IRにより測定し、エチレン性不飽和基に該当する「二重結合」のピークに相当する810cm-1のピーク面積を算出し、面積値を「X1」とした。

上記とは別に、転写フィルムB-1~B-8の各々の保護フィルムを剥がし、樹脂層2の表面を、上記と同様にATR-IRにより測定し、810cm-1のピーク面積を算出し、面積値を「X2」とした。

得られたX1及びX2を用いて下記式2により架橋密度を算出した。

なお、下記式2で算出される架橋密度は、樹脂層2の樹脂層1を有する側と反対側の表面を含む表層部(樹脂層(=樹脂層1及び樹脂層2)の第1の表層部を有する側と反対側の第2の表層部)におけるエチレン性不飽和基の架橋密度である。

架橋密度[mmol/g]

=(感光性組成物(又は感光性層)の固形分1gに含まれる理論二重結合当量[mmol/g])×(X2―X1)/X2 ・・・(式2)
【0223】

なお、実施例22については、以下のように架橋密度を算出した。

作製した積層体Bを、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用い、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)で露光した後、仮支持体を剥離し、更に、露光量375mJ/cm(i線)でポスト露光を行った。ポスト露光後の積層体に対して、上記の方法で架橋密度を算出した。

また、実施例23については、以下のように架橋密度を算出した。

作製した積層体Bを実施例22と同様にポスト露光まで行った後、更に、145℃で30分間のポストベークを施した。ポストベーク後の積層体に対して、上記の方法で架橋密度を算出した。
【0224】

-2.内部応力-

作製した積層体Bを、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用い、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)で露光した。露光後、仮支持体を剥離し、走査型白色干渉顕微鏡NewView5020(Zygo社製)を用いて、Microモードで透明フィルム基板の表面の中央付近の表面形状を測定し、高さが最も高い(又は最も低い) 点と、この点から面方向に0.5mm離れた点と、の高さの差を算出し、基板の反りの曲率半径に変換した。

曲率半径R、透明フィルム基板の弾性率(引張試験のS-S曲線の線形領域の傾きより算出される弾性率)Es、透明フィルム基板のポアソン比vs(0.3)、透明フィルム基板の厚さts、及び樹脂層の厚さTaを用いて、Stoneyの式から樹脂層の内部応力sを算出した。

s = Es×ts/(6×(1-vs)×R×Ta) :Stoneyの式
【0225】

なお、実施例22については、以下のように行い架橋密度を算出した。

作製した積層体Bを、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用い、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)で露光した後、仮支持体を剥離し、更に、露光量375mJ/cm(i線)でポスト露光した。ポスト露光後の積層体を用い、上記の方法で内部応力を算出した。

また、実施例23については、以下のように行い架橋密度を算出した。

作製した積層体Bを実施例22と同様にポスト露光まで行った後、更に、145℃で30分間のポストベークを行った。ポストベーク後の積層体を用い、上記の方法で内部応力を算出した。
【0226】

-3.透明フィルム基板との密着性-

作製した積層体Bを、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用い、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)で露光した。露光後、仮支持体を剥離し、評価用試料を作製した。

なお、実施例22では、上記と同様に露光し、仮支持体を剥離した後、更に、露光量375mJ/cm(i線)でポスト露光して評価用試料とした。また、実施例23では、実施例22と同様にポスト露光まで行った後、更に、145℃で30分間のポストベークを行って評価用試料とした。
【0227】

上記の評価用試料を用い、JIS規格(K5400)に準拠した方法により、10個×10個の格子状に切り込みを入れた積層体に対してクロスカット試験を実施した。

具体的には、積層体の、仮支持体の剥離により露出した樹脂層2の表面から樹脂層1に至るまでカッターナイフを用いて1mm×1mm四方の格子状に切り傷を入れ、樹脂層2の表面に透明粘着テープ#600(スリーエムジャパン(株)製)を圧着して貼り合わせた。そして、貼り合わせられた透明粘着テープの一端を掴み、樹脂層2の表面に沿って180℃方向に引っ張って透明粘着テープを剥離した。

その後、樹脂層2の表面(剥離面)の状態を目視で観察し、更に、剥離された部分の面積を求めて格子状に切り傷を入れた領域の全面積に対する比率を算出し、算出値をもとに以下の評価基準にしたがって評価した。

評価基準のうち、A、B又はCは、実用上支障を来たさない程度であることを示す。評価結果を表4に示す。

<評価基準>

A:全面積の100%の樹脂層1及び樹脂層2が密着して残っている。

B:全面積の95%以上100%未満の樹脂層1及び樹脂層2が密着し残っている。

C:全面積の65%以上95%未満の樹脂層1及び樹脂層2が密着して残っている。

D:全面積の35%以上65%未満の樹脂層1及び樹脂層2が密着して残っている。

E:樹脂層1及び樹脂層2が密着して残っている部分が全面積の35%未満である。
【0228】

【表4】


【0229】

表4に示すように、実施例では、TiO粒子又はZrO粒子を有する基材に対して、良好な密着性を得ることができた。これに対して、樹脂層の酸化物粒子含有層と接する表面を含む第1の表層部におけるエチレン性不飽和基の架橋密度が1.2mmol/gに満たない比較例1、及び樹脂層の内部応力が1.0MPaを超える比較例2では、いずれも密着性の向上効果はみられなかった。
【0230】

実施例間において対比すると、実施例1~3では、樹脂層1の第1の表層部の架橋密度が大きくなるにつれて密着性が良化しており、第1の表層部の架橋密度は密着性の点で2.0mmol/g以上であることが好ましい。

また、実施例1~4で形成した樹脂層2(感光性組成物B3)は、チオール化合物を含有することにより内部応力が小さい値に維持されている。実施例5~7で形成した樹脂層2(感光性組成物B4)は、チオール化合物に代えて長鎖のラジカル重合性化合物を含有することで内部応力が小さい値に維持されている。一方、実施例8~10で形成した樹脂層2(感光性組成物B7)は、ラジカル重合性化合物の含有量を減らすことにより、実施例1~7ほどではないものの、内部応力を小さく維持することができた。実施例14で形成した樹脂層2(感光性組成物B6)は、実施例8~10と同様にラジカル重合性化合物の含有量を減らしているが、重合体に対するモノマーの量比(M/B比)が、実施例8~10における場合より高いため、内部応力が一段高い値となっている。結果、密着性が一段低下している。

また、実施例15~18では、樹脂層1の形成に用いた感光性組成物A-4におけるモノマー含有量が少ないため、架橋密度が低くなっており、結果、密着性が低下している。

実施例20~21では、単層からなる樹脂層を形成している。単層構造においても、樹脂層の形成に用いた感光性組成物がチオール化合物を含有するので、C=C基の反応率が高く、架橋密度を保持することができた。結果、密着性の改善が図られた。
【0231】

なお、実施例22では、ポスト露光後の密着性を評価し、実施例23では、ポストベーク後の密着性を評価したが、いずれも架橋反応が進んでいると考えられるものの、密着性の向上効果は良好なものであった。