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  • 特許-画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20220826BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220826BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20220826BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20220826BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41J2/01 123
C09D11/54
C09D11/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021508849
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020007919
(87)【国際公開番号】W WO2020195505
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2019064598
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本郷 悠史
(72)【発明者】
【氏名】篠原 竜児
(72)【発明者】
【氏名】河合 将晴
(72)【発明者】
【氏名】溝江 大我
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-038025(JP,A)
【文献】特開2016-194007(JP,A)
【文献】特開2010-241050(JP,A)
【文献】特開2017-024365(JP,A)
【文献】特開2007-169528(JP,A)
【文献】特開2017-186472(JP,A)
【文献】特開2004-035863(JP,A)
【文献】特開2016-130014(JP,A)
【文献】特開2010-201711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(A)と、樹脂(B)と、下記式(1)を満足する有機溶剤(C)と、を含有するインクを準備する工程と、
凝集剤(D)及び水(E)を含有する前処理液を準備する工程と、
基材上に、前記前処理液を付与する工程と、
前記基材上に付与された前記前処理液上に前記インクをインクジェット法によって付与して画像を形成する工程と、を含み、
前記インクが付与された前記基材を平面視した場合の前記インクが付与された領域において、面積1m当たりの前記有機溶剤(C)の付与グラム数であるCと、面積1m当たりの前記凝集剤(D)の付与グラム数であるCと、が下記式(2)を満足し、
前記インク中における前記有機溶剤(C)の合計含有量が、前記インクの全量に対し、0.10質量%~7.0質量%である、画像形成方法。
|SP-SP|≦10.0 … 式(1)
0.10≦C/C≦2.90 … 式(2)
式(1)中、SPは、前記樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa1/2単位でのSP値を表し、SPは、前記有機溶剤(C)のMPa1/2単位でのSP値を表し、|SP-SP|は、SPとSPとの差の絶対値を表す。
【請求項2】
前記凝集剤(D)が、多価金属化合物、有機酸、多価金属塩、及び水溶性カチオン性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記有機溶剤(C)は、前記|SP-SP|が5.0以下である請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記式(2)における前記C/Cが、0.50以上2.00以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記インク中の前記樹脂(B)が、樹脂粒子を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記インク中における、前記樹脂(B)に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.02以上1.00以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記インクが、前記有機溶剤(C)以外の有機溶剤を更に含有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
更に、
面積1m当たりの前記インクの付与グラム数を決定する決定工程Aと、
前記決定工程Aで決定された前記インクの付与グラム数、前記インク中に占める前記有機溶剤(C)の割合、及び前記前処理液中に占める前記凝集剤(D)の割合に基づき、面積1m当たりの前記前処理液の付与グラム数を、前記式(2)が満足される範囲内で決定する決定工程Bと、を含み、
前記前処理液を付与する工程は、前記決定工程Bで決定された前記前処理液の付与グラム数にて、前記基材上に前記前処理液を付与する工程であり、
前記画像を形成する工程は、前記決定工程Aで決定された前記インクの付与グラム数にて、前記基材上に付与された前記前処理液上に前記インクを付与して前記画像を形成する工程である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成及び画像形成に用いられるインクに関し、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、ヘッド内における目詰まり耐性に優れ、かつ、耐擦性に優れる画像を形成できる水系インクジェットインクとして、樹脂と、樹脂に対するSP値の差が3以内の含窒素溶剤と、水と、を含み、上記含窒素溶剤の含有量は樹脂1質量部に対して2~9質量部であり、標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量が3質量%以下である、水系インクジェットインクが開示されている。
また、特許文献2には、連続噴射性が優れると共に、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間にも優れたインクジェット用インクとして、画像を印字する際にインク凝集剤と併用され、少なくとも、色材と、1種以上の高分子界面活性剤と、1種以上の水溶性溶媒と、を含むインクジェット用インクにおいて、上記高分子界面活性剤のいずれか1種と、水溶性溶媒のいずれか1種とが、下式(1)および下式(2)の関係を満たすことを特徴とするインクジェット用インクが開示されている。
・式(1) |SP(sol)-SP(SA)|≦2.5
・式(2) W(sol)/W(SA)≧5
〔SP(sol)は水溶性溶媒の溶解性パラメータを、SP(SA)は高分子界面活性剤の疎水基部分の溶解性パラメータを、W(sol)は、水溶性溶媒の含有量(質量%)を、W(SA)は、高分子界面活性剤の含有量(質量%)を表す。〕
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-186472号公報
【文献】特開2004-35863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、インクを用いて形成された画像に対し、画像滲みを抑制することが求められる場合がある。更に、画像滲みを抑制できた場合でも画像割れを抑制できない場合がある。更に、画像割れを抑制できた場合でも画像滲みを抑制できない場合もある。
【0005】
本開示の一態様の課題は、画像滲み及び画像割れが抑制された画像を形成できる画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 水(A)と、樹脂(B)と、下記式(1)を満足する有機溶剤(C)と、を含有するインクを準備する工程と、
凝集剤(D)及び水(E)を含有する前処理液を準備する工程と、
基材上に、前処理液を付与する工程と、
基材上に付与された前処理液上にインクをインクジェット法によって付与して画像を形成する工程と、を含み、
インクが付与された基材を平面視した場合のインクが付与された領域において、面積1m当たりの有機溶剤(C)の付与グラム数であるCと、面積1m当たりの凝集剤(D)の付与グラム数であるCと、が下記式(2)を満足する画像形成方法。
【0007】
|SP-SP|≦10.0 … 式(1)
0.10≦C/C≦2.90 … 式(2)
式(1)中、SPは、樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa1/2単位でのSP値を表し、SPは、有機溶剤(C)のMPa1/2単位でのSP値を表し、|SP-SP|は、SPとSPとの差の絶対値を表す。
【0008】
<2> 凝集剤(D)が、多価金属化合物、有機酸、多価金属塩、及び水溶性カチオン性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>に記載の画像形成方法。
<3> 有機溶剤(C)は、|SP-SP|が5.0以下である<1>又は<2>に記載の画像形成方法。
<4> 式(2)におけるC/Cが、0.50以上2.00以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<5> インク中における有機溶剤(C)の含有量が、インクの全量に対し、0.10質量%~10.0質量%である<1>~<4>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<6> インク中の樹脂(B)が、樹脂粒子を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<7> インク中における、樹脂(B)に対する有機溶剤(C)の含有質量比が、0.02以上1.00以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<8> インクが、有機溶剤(C)以外の有機溶剤を更に含有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<9> 更に、
面積1m当たりのインクの付与グラム数を決定する決定工程Aと、
決定工程Aで決定されたインクの付与グラム数、インク中に占める有機溶剤(C)の割合、及び前処理液中に占める凝集剤(D)の割合に基づき、面積1m当たりの前処理液の付与グラム数を、式(2)が満足される範囲内で決定する決定工程Bと、を含み、
前処理液を付与する工程は、決定工程Bで決定された前処理液の付与グラム数にて、基材上に前処理液を付与する工程であり、
画像を形成する工程は、決定工程Aで決定されたインクの付与グラム数にて、基材上に付与された前処理液上にインクを付与して画像を形成する工程である<1>~<8>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、画像滲み及び画像割れが抑制された画像を形成できる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例における、画像滲みの評価に用いた文字画像を概念的に示す図である。
図2】実施例における、画像滲みの評価基準の詳細を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
本開示において、「画像」とは、前処理液上にインクを付与して形成される膜全体を意味し、「画像の形成」及び「画像形成」とは、それぞれ、膜の形成及び膜形成を意味する。
本開示における「画像」は、色彩を有する膜には限定されず、例えば、透明の膜であってもよい。ここで、膜について、透明とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が、80%以上(好ましくは90%以上)であることを意味する。
また、本開示における「画像」の概念には、ベタ画像(solid image)も包含される。
【0013】
本開示の画像形成方法は、
水(A)と、樹脂(B)と、下記式(1)を満足する有機溶剤(C)と、を含有するインクを準備する工程(以下、「インク準備工程」ともいう)と、
凝集剤(D)及び水(E)を含有する前処理液を準備する工程(以下、「前処理液付与工程」ともいう)と、
基材上に、前処理液を付与する工程(以下、「前処理液付与工程」ともいう)と、
基材上に付与された前処理液上にインクをインクジェット法によって付与して画像を形成する工程(以下、「画像形成工程」ともいう)と、を含み、
インクが付与された基材を平面視した場合のインクが付与された領域において、面積1m当たりの有機溶剤(C)の付与グラム数であるCと、面積1m当たりの凝集剤(D)の付与グラム数であるCと、が下記式(2)を満足する画像形成方法である。
本開示の画像形成方法は、必要に応じ、その他の工程を含んでいてもよい。
【0014】
|SP-SP|≦10.0 … 式(1)
0.10≦C/C≦2.90 … 式(2)
式(1)中、SPは、樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa1/2単位でのSP値を表し、SPは、有機溶剤(C)のMPa1/2単位でのSP値を表し、|SP-SP|は、SPとSPとの差の絶対値を表す。
【0015】
本開示において、単に「SP値」との用語は、MPa1/2単位でのSP値を意味する。
本開示におけるSP(Solubility Parameter)値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(5)(1993))によって算出するものとする。
具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
【0016】
また、本開示において、「樹脂(B)中の主たる樹脂」とは、インク中に含有される全ての樹脂のうち、インク全体に対する含有質量が最大である樹脂を意味する。
樹脂(B)中の主たる樹脂は、1種には限られず、2種以上であってもよい。例えば、樹脂(B)が、樹脂X、樹脂Y、及び樹脂Zからなり、かつ、樹脂X及び樹脂Yの含有質量が等しく、これら樹脂X及び樹脂Yの各々の含有質量が、樹脂Zの含有質量よりも大きい場合には、樹脂(B)中の主たる樹脂は、樹脂X及び樹脂Yの2種となる。樹脂(B)中の主たる樹脂が2種以上である場合、有機溶剤(C)は、全ての主たる樹脂に対して式(1)を満足し、沸点が250℃以下であり、窒素原子を含む有機溶剤である。
【0017】
主たる樹脂のSPは、主たる樹脂を構成する各構成単位のSP値を、主たる樹脂中における含有質量に応じて加重平均することによって求める。
より詳細には、主たる樹脂のSP値(即ち、SP)は、下記数式1において、Sに、主たる樹脂中のi種目(iは1以上の整数を表す)の構成単位のSP値を代入し、Wに、上記i種目の構成単位の主たる樹脂中における含有質量を代入することにより、Xとして求められる値である。
X=ΣS/ΣW … (数式1)
【0018】
構成単位のSP値としては、その構成単位を形成するための化合物のSP値を採用する。
例えば、SP値15MPa1/2の化合物A(10質量%)と、SP値18MPa1/2の化合物B(20質量%)と、SP値20MPa1/2の化合物C(70質量%)と、を原料として形成される樹脂aのSP値は、下記式により求められる。
樹脂aのSP値(MPa1/2
=(15MPa1/2×10+18MPa1/2×20+20MPa1/2×70)/(10+20+70)
=19.1MPa1/2
【0019】
主たる樹脂中の構成単位の同定は、熱分析ガスクロマトグラフィーによって行う。
主たる樹脂中における構成単位の含有質量の解析は、核磁気共鳴(NMR;nuclear magnetic resonance)によって行う。
【0020】
本開示の画像形成方法によれば、滲み(以下、「画像滲み」ともいう)及び割れ(以下、「画像割れ」ともいう)が抑制された画像を形成できる。
かかる効果が奏される理由は、以下のように推測される。但し、本開示の画像形成方法は、以下の理由によって限定されることはない。
【0021】
本開示の画像形成方法では、基材上に付与された、凝集剤(D)及び水(E)を含有する前処理液上に、水(A)、樹脂(B)及び有機溶剤(C)を含有するインクを付与して画像を形成する。
前処理液中の凝集剤(D)は、インク中の成分(例えば樹脂(B))を凝集させることにより、画像の滲みを抑制するための成分である。
また、インク中の有機溶剤(C)は、式(1)を満足することから、樹脂(B)中の主たる樹脂に対して親和性を有する有機溶剤である。このため、有機溶剤(C)は、樹脂(B)中の主たる樹脂の分子鎖の絡まりを解く作用を有すると考えられる。
上述した有機溶剤(C)の作用(即ち、樹脂(B)中の主たる樹脂の分子鎖の絡まりを解く作用)に起因し、基材上において、凝集剤(D)による樹脂(B)の凝集性が高まると考えられる。
【0022】
本開示の画像形成方法では、インクが付与された基材を平面視した場合のインクが付与された領域(即ち、画像が形成された領域)において、面積1m当たりの有機溶剤(C)の付与グラム数であるC(g/m)と、面積1m当たりの凝集剤(D)の付与グラム数であるC(g/m)と、が式(2)(即ち、0.10≦C/C≦2.90)を満足する。
本開示の画像形成方法では、式(2)の左辺(即ち、0.10≦C/C)を満足すること、概略的に言えば、有機溶剤(C)の付与量がある程度確保されていることにより、有機溶剤(C)の上述した機能が発揮され、基材上において、凝集剤(D)による樹脂(B)等の凝集性が高まり、その結果、画像の滲みが抑制されると考えられる。
また、本開示の画像形成方法では、式(2)の右辺(即ち、C/C≦2.90)を満足すること、概略的に言えば、有機溶剤(C)の付与量が多すぎないことにより、基材上に付与された前処理液中の凝集剤(D)が、前処理液上に付与されたインク中に浸透し易くなる。これにより、画像の膜厚方向において、基材に近い領域だけでなく基材から離れた領域においても、凝集剤(D)による樹脂(B)等の凝集が進行するので、画像の膜応力が低減され、その結果、膜応力に起因する画像の割れが抑制されると考えられる。
【0023】
本開示の画像形成方法に対し、有機溶剤(C)の付与量が多すぎる場合(詳細には、式(2)の右辺(即ち、C/C≦2.90)を満足しない場合)には、基材上に付与された前処理液中の凝集剤(D)が、前処理液上に付与されたインク中に浸透しようとしても、インク中に多量に存在する有機溶剤(C)によって凝集剤(D)の浸透が妨げられる場合があると考えられる。この現象は、凝集剤(D)が親水的な性質を有するのに対し、有機溶剤(C)が疎水的な性質(具体的には、式(1))を有することに起因すると考えられる。その結果、画像の膜厚方向において、基材に近い領域では上記凝集が進行するものの、基材から離れた領域では、上記凝集が進行しにくくなり、画像の膜応力が大きくなり、その結果、膜応力に起因する画像の割れが発生する場合があると考えられる。
これに対し、本開示の画像形成方法では、式(2)の右辺(即ち、C/C≦2.90)を満足することにより、上述した現象が抑制され、膜応力に起因する画像の割れが抑制されると考えられる。
【0024】
以下、本開示の画像形成方法の各工程について説明する。
【0025】
〔インク準備工程〕
インク準備工程は、水(A)と、樹脂(B)と、有機溶剤(C)と、を含有するインク(以下、「特定インク」ともいう)を準備する工程である。
インク準備工程は、予め調製された特定インクを単に準備するだけの工程であってもよいし、特定インクを調製する工程であってもよい。
【0026】
<水(A)>
インクは、水(A)を含有する。
即ち、特定インクは、いわゆる水系のインクである。
水(A)の含有量は、特定インクの全量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
水(A)の含有量の上限は、他の成分の含有量に応じて適宜定まる。水(A)の含有量の上限としては、例えば、90質量%、80質量%等が挙げられる。
【0027】
<樹脂(B)>
特定インクは、樹脂(B)を含有する。
ここで、樹脂(B)は、特定インクに含有される樹脂成分全体を意味する。
樹脂(B)の種類には特に制限はない。
樹脂(B)としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられる。
【0028】
本開示において、アクリル樹脂とは、アクリル酸、アクリル酸の誘導体(例えば、アクリル酸エステル等)、メタクリル酸、及びメタクリル酸の誘導体(例えば、メタクリル酸エステル等)からなる群から選択される少なくとも1種を含む原料モノマーの重合体(単独重合体又は共重合体)を意味する。
また、本開示において、ポリエステル樹脂とは、主鎖にエステル結合を含む高分子化合物を意味する。ポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸(例えばジカルボン酸)とポリアルコール(例えばジオール)との重縮合物が挙げられる。
また、本開示において、ウレタン樹脂とは、主鎖にウレタン結合を含む高分子化合物を意味する。
また、本開示において、オレフィン樹脂とは、オレフィンを含む原料モノマーの重合体(単独重合体又は共重合体)を意味する。オレフィン樹脂としては、1種のオレフィンの重合体、2種以上のオレフィンの共重合体、1種以上のオレフィンと1種以上のその他のモノマーとの共重合体、等が挙げられる。オレフィンとしては、炭素数2~30のα-オレフィンが挙げられる。
【0029】
樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)としては、3000~500000が好ましく、3000~200000がより好ましく、3000~100000が更に好ましく、5000~80000が更に好ましく、8000~60000が更に好ましい。
【0030】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000~100000が好ましく、5000~80000がより好ましく、8000~60000が更に好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000~200000が好ましく、4000~150000がより好ましく、5000~100000が更に好ましい。
ウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000~500000が好ましく、4000~300000がより好ましく、5000~200000が更に好ましい。
オレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000~100000が好ましく、3000~50000がより好ましく、7000~20000が更に好ましい。
【0031】
本開示において、重量平均分子量(Mw)は、特別な記載がない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を意味する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0032】
樹脂(B)の具体的な形態としては、樹脂からなる粒子である樹脂粒子;顔料の少なくとも一部を被覆して顔料を分散させるための顔料分散樹脂(以下、「分散剤」ともいう);等が挙げられる。
【0033】
(樹脂粒子)
樹脂(B)は、樹脂粒子を少なくとも1種含むことが好ましい。
樹脂(B)が樹脂粒子を含む場合には、画像の滲みがより抑制される。
樹脂(B)が樹脂粒子を含む場合、樹脂(B)は、更に、顔料分散樹脂を少なくとも1種含んでもよい。
樹脂(B)が樹脂粒子を含む場合、樹脂(B)中に占める樹脂粒子の割合は、50質量%超が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
【0034】
樹脂粒子に含まれる樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
樹脂(B)に含まれ得る樹脂粒子は、樹脂(B)中の主たる樹脂(即ち、樹脂(B)中、含有質量が最大である樹脂)を含むことが好ましい。
【0035】
樹脂粒子に含まれる樹脂は、水不溶性の樹脂であることが好ましく、水不溶性のアクリル樹脂であることがより好ましい。
本開示において、水不溶性の樹脂における「水不溶性」とは、25℃の水100gに対する溶解量が1.0g未満(より好ましくは0.5g未満)である性質を指す。
【0036】
樹脂粒子の体積平均粒径は、1nm~300nmであることが好ましく、3nm~200nmであることがより好ましく、5nm~150nmであることが更に好ましい。
【0037】
本開示において、体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定された値を意味する。
測定装置としては、例えば、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT-3300II」(日機装(株)製)が挙げられる。
【0038】
樹脂粒子については、例えば、アクリル樹脂からなる粒子の例として、国際公開第2017/163738号の段落0137~0171、及び特開2010-077218号公報の段落0036~0081の記載を参照してもよい。
【0039】
樹脂粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、得られる画像の密着性を向上する観点から、100℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。
【0040】
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値を意味する。
ガラス転移温度の具体的な測定は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行う。
本開示におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)である。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂のガラス転移温度より約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し、示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本開示におけるガラス転移温度は、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0041】
また、樹脂粒子が樹脂を2種以上含む場合には、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、個々の樹脂のガラス転移温度の加重平均値を意味する。
【0042】
樹脂粒子に含まれる樹脂は、脂環式構造又は芳香環式構造を有することが好ましく、芳香環式構造を有することがより好ましい。
脂環式構造としては、炭素数5~10の脂環式炭化水素構造が好ましく、シクロヘキサン環構造、ジシクロペンタニル環構造、ジシクロペンテニル環構造、又は、アダマンタン環構造が好ましい。
芳香環式構造としては、ナフタレン環又はベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
脂環式構造又は芳香環式構造の量としては、例えば、樹脂粒子に含まれる樹脂100gあたり0.01mol~1.5molであることが好ましく、0.1mol~1molであることがより好ましい。
【0043】
樹脂粒子に含まれる樹脂は、樹脂粒子の水分散性をより向上させる観点から、構造中にイオン性基を有することが好ましい。
イオン性基としては、アニオン性基であってもカチオン性基であってもよいが、導入の容易性の観点から、アニオン性基が好ましい。
アニオン性基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、又は、スルホ基であることが好ましく、スルホ基であることがより好ましい。
イオン性基の量としては、例えば樹脂粒子に含まれる樹脂100gあたり0.001mol~1.0molであることが好ましく、0.01mol~0.5molであることがより好ましい。
【0044】
(顔料分散樹脂)
顔料分散樹脂としては特に制限はなく、公知の樹脂分散剤を用いることができる。
公知の樹脂分散剤としては、例えば、特許第5863600号公報、特開2018-28080号公報、特開2017-149906号公報、特開2016-193981号公報に記載されている樹脂分散剤が挙げられる。
顔料分散樹脂としても、アクリル樹脂が好ましい。
【0045】
インク全体に対する樹脂(B)の合計含有量は、好ましくは0.5質量%~25.0質量%であり、より好ましくは0.5質量%~20.0質量%であり、更に好ましくは0.5質量%~15.0質量%であり、更に好ましくは0.5質量%~10.0質量%であり、更に好ましくは1.0質量%~8.0質量%であり、更に好ましくは2.5質量%~7.0質量%である。
樹脂(B)の合計含有量が0.5質量%以上である場合には、画像滲みがより抑制される。
樹脂(B)の合計含有量が25.0質量%以下である場合には、インクの吐出不良がより抑制され、吐出不良に起因する画像中のスジの発生がより抑制される。
【0046】
樹脂(B)中の主たる樹脂のSP値(即ち、SP)は、式(1)を満足すればよく、その他には特に制限はない。
SPは、好ましくは10.0~30.0である。
SPは、より好ましくは26.0以下であり、更に好ましくは22.0以下である。
SPは、より好ましくは15.0以上であり、更に好ましくは18.0以上である。
【0047】
<有機溶剤(C)>
特定インクは、有機溶剤(C)を含有する。
有機溶剤(C)は、前述した式(1)(即ち、|SP-SP|≦10.0)を満足する有機溶剤である。
特定インクは、有機溶剤(C)を、1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0048】
有機溶剤(C)は、式(1)(即ち、|SP-SP|≦10.0)を満足すればよく、その他には特に制限はない。
有機溶剤(C)は、樹脂(B)中の主たる樹脂のSP値(即ち、SP)との関係に基づき適宜選択できる。
有機溶剤(C)のSP値(即ち、SP)は、好ましくは10.0~30.0である。
SPが30.0以下である場合には、画像の耐擦性がより向上する。SPは、より好ましくは28.0以下であり、更に好ましくは26.0以下であり、更に好ましくは25.0以下である。
SPが10.0以上である場合には、有機溶剤(C)の選択の幅がより広い。SPは、より好ましくは15.0以上であり、更に好ましくは17.5以上であり、更に好ましくは20.0以上であり、更に好ましくは23.0以上である。
【0049】
前述のとおり、|SP-SP|は、|SP-SP|≦10.0(即ち、式(1))を満足する。言い換えれば、|SP-SP|は、10.0以下である。これにより、画像の滲みがより抑制される。
|SP-SP|の下限には特に制限はない。即ち、|SP-SP|は、0であってもよい。
【0050】
画像の滲みをより抑制する観点から、有機溶剤(C)は、|SP-SP|が8.0以下である有機溶剤を含むことが好ましい。
この場合、有機溶剤(C)中に占める、|SP-SP|が8.0以下である有機溶剤の割合は、50質量%~100質量%が好ましく、60質量%~100質量%がより好ましく、80質量%~100質量%が更に好ましい。
【0051】
画像の滲みを更に抑制する観点から、有機溶剤(C)は、|SP-SP|が5.0以下である有機溶剤を含むことが好ましい。
この場合、有機溶剤(C)中に占める、|SP-SP|が5.0以下である有機溶剤の割合は、50質量%~100質量%が好ましく、60質量%~100質量%がより好ましく、80質量%~100質量%が更に好ましい。
【0052】
有機溶剤(C)は、グリコール化合物、グリコールモノエーテル化合物、炭素数5以上のモノアルコール化合物、アミノアルコール化合物、及びピロリドン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
この場合、有機溶剤(C)中に占める、グリコールモノエーテル化合物、炭素数5以上のモノアルコール化合物、アミノアルコール化合物、及びピロリドン化合物の合計の割合は、50質量%~100質量%が好ましく、60質量%~100質量%がより好ましく、80質量%~100質量%が更に好ましい。
【0053】
画像の滲みをより抑制する観点から、有機溶剤(C)としてのグリコール化合物としては、ジプロピレングリコール(DPG)(SP値28.1MPa1/2)、1,2-ペンタンジオール(1,2-PDO)(SP値は後述の実施例参照)、1,2-ヘキサンジオール(1,2-HDO)(SP値は後述の実施例参照)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(SP値25.9MPa1/2)、等が挙げられる。
【0054】
有機溶剤(C)としてのグリコールモノエーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE)(SP値21.5MPa1/2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGmEE)(SP値22.8MPa1/2)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGmME)(SP値は後述の実施例参照)、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値21.8MPa1/2)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(PGmBE)(SP値は後述の実施例参照)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(SP値22.6MPa1/2)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGmPE)(SP値は後述の実施例参照)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(SP値22.5MPa1/2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGmME)(SP値は後述の実施例参照)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)(SP値20.4MPa1/2)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGmBE)(SP値は後述の実施例参照)、等が挙げられる。
【0055】
有機溶剤(C)としての炭素数5以上のモノアルコール化合物としては、2-エチルヘキサノール(SP値は後述の実施例参照)、1-オクタノール(SP値は後述の実施例参照)、2-オクタノール(SP値20.1MPa1/2)、2-プロピル-1-ヘキサノール(SP値19.4MPa1/2)、1-ペンタノール(SP値21.4MPa1/2)、1-ヘキサノール(SP値は後述の実施例参照)、1-デカノール(SP値19.2MPa1/2)、等が挙げられる。
【0056】
有機溶剤(C)としての炭素数5以上のモノアルコール化合物の炭素数は、好ましくは5~10であり、より好ましくは6~10であり、更に好ましくは7~10であり、更に好ましくは8又は9である。
【0057】
有機溶剤(C)としてのアミノアルコール化合物としては、ジメチルアミノエタノール(DMAE)(SP値は後述の実施例参照)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(SP値25.1MPa1/2)、等が挙げられる。
【0058】
有機溶剤(C)としてのピロリドン化合物としては、2-ピロリドン(SP値25.9MPa1/2)、N-メチル-2-ピロリドン(SP値23.6MPa1/2)、N-エチル-2-ピロリドン(SP値22.4MPa1/2)、等が挙げられる。
【0059】
画像の滲みをより抑制する観点から、有機溶剤(C)は、グリコールモノエーテル化合物及び炭素数5以上のモノアルコール化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
この場合、有機溶剤(C)中に占めるグリコールモノエーテル化合物及び炭素数5以上のモノアルコール化合物の合計の割合は、50質量%~100質量%が好ましく、60質量%~100質量%がより好ましく、80質量%~100質量%が更に好ましい。
【0060】
画像の乾燥性及び耐擦性をより向上させる観点から、有機溶剤(C)は、沸点が250℃以下である有機溶剤を含むことが好ましい。
この場合、有機溶剤(C)中に占める、沸点が250℃以下である有機溶剤の割合は、50質量%~100質量%が好ましく、60質量%~100質量%がより好ましく、80質量%~100質量%が更に好ましい。
沸点が250℃以下である有機溶剤の具体例としては、上述した具体例が挙げられる。
【0061】
本開示において、「沸点」は、1気圧(101325Pa)下での沸点を意味する。
【0062】
沸点が250℃以下である有機溶剤の沸点は、画像の乾燥性及び耐擦性をより向上させる観点から、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは170℃以下であり、更に好ましくは160℃以下であり、更に好ましくは150℃以下である。
沸点が250℃以下である有機溶剤の沸点の好ましい下限としては、例えば、100℃、110℃、120℃、130℃等が挙げられる。
【0063】
有機溶剤(C)の含有量は、インクの全量に対し、好ましくは0.05質量%~12質.0量%である。
有機溶剤(C)の含有量が0.05質量%以上である場合には、画像の滲みがより抑制される。画像の滲みを更に抑制する観点から、有機溶剤(C)の含有量は、より好ましくは0.10質量%以上であり、更に好ましくは0.50質量%以上であり、更に好ましくは1.00質量%以上である。
有機溶剤(C)の含有量が12.0質量%以下である場合には、画像の割れがより抑制される。画像の割れを更に抑制する観点から、有機溶剤(C)の含有量は、より好ましくは10.0質量%以下であり、更に好ましくは7.0質量%以下であり、更に好ましくは5.0質量%以下である。
より好ましい態様の一つとして、有機溶剤(C)の含有量が、インクの全量に対し、0.10質量%~10.0質量%である態様が挙げられる。
【0064】
特定インク中における、樹脂(B)に対する有機溶剤(C)の含有質量比(以下、「含有質量比〔C/B〕」ともいう)は、好ましくは0.01以上2.00以下である。
含有質量比〔C/B〕が0.01以上である場合には、画像の滲みがより抑制される。
画像の滲みを更に抑制する観点から、含有質量比〔C/B〕は、より好ましくは0.02以上であり、更に好ましくは0.10以上である。
含有質量比〔C/B〕が2.00以下である場合には、画像の割れがより抑制される。
含有質量比〔C/B〕は、好ましくは1.00以下である。
より好ましい態様の一つとして、含有質量比〔C/B〕が0.02以上1.00以下である態様が挙げられる。
【0065】
<その他の有機溶剤>
特定インクは、有機溶剤(C)以外の有機溶剤(即ち、式(1)を満足しない有機溶剤)を少なくとも1種含有してもよい。
有機溶剤(C)以外の有機溶剤(以下、「その他の有機溶剤」ともいう)としては、水溶性有機溶剤が好ましい。
特定インクが、その他の有機溶剤として水溶性有機溶剤を含有する場合には、インクジェットヘッドからの吐出性がより向上する。
【0066】
本開示において、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して1g以上(好ましくは3g以上、より好ましくは10g以上)溶解する性質を意味する。
【0067】
特定インクの乾燥性をより向上させる観点から、その他の有機溶剤の沸点は、250℃以下であることが好ましい。
その他の有機溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下である。
その他の有機溶剤の沸点の下限には特に限定はない。
その他の有機溶剤の沸点の好ましい下限として、例えば、100℃、110℃、120℃、130℃等が挙げられる。
【0068】
有機溶剤(E)は、特定インクの吐出性をより向上させる観点から、下記式(E1)を満足することが好ましい。
【0069】
その他の有機溶剤のSP値は、特定インクの吐出性をより向上させる観点から、好ましくは30.0以上である。
その他の有機溶剤のSP値の上限には特に制限はない。その他の有機溶剤のSP値の上限としては、50.0、40.0等が挙げられる。
【0070】
また、特定インクの吐出性をより向上させる観点から、その他の有機溶剤は、グリコール化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0071】
その他の有機溶剤としてのグリコール化合物としては、プロピレングリコール(沸点188℃、35.1MPa1/2)、ジエチレングリコール(沸点245℃、32.3MPa1/2)、等が挙げられる。
なお、前述した有機溶剤(C)としてのグリコール化合物として例示した化合物であっても、樹脂(B)中の主たる樹脂のSP値によっては、その他の有機溶剤としてのグリコール化合物に該当する場合がある。
【0072】
また、特定インクがその他の有機溶剤を含有する場合において、その他の有機溶剤の合計含有量は、インクの全量に対し、好ましくは5質量%~40質量%である。
その他の有機溶剤の合計含有量が5質量%以上である場合には、インクの吐出性がより向上する。インクの吐出性をより向上させる観点から、その他の有機溶剤の合計含有量は、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。
その他の有機溶剤の合計含有量が40質量%以下である場合には、画像の乾燥性がより向上する。画像の乾燥性をより向上させる観点から、その他の有機溶剤の合計含有量は、より好ましくは35質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
【0073】
<着色剤>
特定インクは、更に、着色剤を含有してもよい。
着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
【0074】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、白色無機顔料、酸化鉄、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、等が挙げられる。
着色剤としては、特開2009-241586号公報の段落0096~0100に記載の着色剤が好ましく挙げられる。
【0075】
着色剤は、白色無機顔料を含むことが好ましい。この場合のインクは、例えば、白色インクとして好適に用いることができる。また、インクが、着色剤として、白色無機顔料と、白色以外の色の顔料と、を含むことにより、白色に対し有彩色の色味が加わったインクとして用いることもできる。
白色無機顔料としては、例えば、二酸化チタン(TiO)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、パール等が挙げられる。白色無機顔料の中でも、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又は酸化亜鉛が好ましく、二酸化チタンがより好ましい。
【0076】
白色無機顔料を含有する態様のインクには、このインクによる画像(例えば白色画像)によって、下地(例えば、非浸透性基材、非浸透性基材上に記録された有彩色の画像、等)を覆い隠す性質(以下、「隠蔽性」ともいう)が要求される場合がある。
上記隠蔽性を高めるために、白色無機顔料として、粒子径が大きい(例えば、平均一次粒子径として150nm以上)白色無機顔料を選択する場合があり、また、インク中における白色無機顔料の含有量を多くする(例えば3質量%以上とする)場合がある。
このような場合には、インクを顔料ごと造膜させるために、インク中の樹脂(B)に対し、より高い造膜性が要求される場合がある。
特定インクは、かかる要求も満足する。
【0077】
白色無機顔料の平均一次粒子径は、例えば150nm~400nmである。
平均一次粒子径が150nm以上であると、隠蔽性がより向上する。また、平均一次粒子径が400nm以下であると、インクの吐出性がより向上する。
白色無機顔料の平均一次粒子径としては、250nm~350nmが好ましく、250nm~300nmがより好ましい。
【0078】
白色無機顔料の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される値である。測定には、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡1200EXを用いることができる。
具体的には、カーボン膜を貼り付けたCu200メッシュ(日本電子株式会社製)に、1,000倍に希釈したインクを滴下し乾燥させた後、TEMで10万倍に拡大した画像から、重なっていない独立した粒子300個の円相当径を測定し、得られた測定値を単純平均した値を、平均一次粒子径とする。
【0079】
白色無機顔料の含有量は、インク全量に対し、1質量%~20質量%が好ましく、3質量%~17質量%がより好ましく、5質量%~15質量%が更に好ましい。
白色無機顔料の含有量が1質量%以上であると、隠蔽性がより向上する。
また、白色無機顔料の含有量が20質量%以下であると、画像の耐擦性がより向上する。
【0080】
<その他の成分>
特定インクは、上記以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、界面活性剤、ワックス、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤(有機塩基、無機アルカリ等の中和剤)、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等が挙げられる。
【0081】
<特定インクの好ましい物性>
特定インクの粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上13mPa・s未満であることがより好ましく、2.5mPa・s以上10mPa・s未満であることが好ましい。
粘度は、粘度計を用い、25℃で測定される値である。
粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業(株)製)を用いることができる。
【0082】
特定インクの表面張力は、25mN/m以上40mN/m以下が好ましく、27mN/m以上37mN/m以下がより好ましい。
表面張力は、25℃の温度下で測定される値である。
表面張力の測定は、例えば、Automatic Surface Tentiometer CBVP-Z(共和界面科学(株)製)を用いて行うことができる。
【0083】
特定インクの25℃におけるpHは、分散安定性の観点から、pH6~11が好ましく、pH7~10がより好ましく、pH7~9が更に好ましい。
インクの25℃におけるpHは、市販のpHメーターを用いて測定する。
【0084】
〔前処理液準備工程〕
前処理液準備工程は、凝集剤(D)及び水(E)を含有する前処理液を準備する工程である。
前処理液準備工程は、予め調製された前処理液を単に準備するだけの工程であってもよいし、前処理液を調製する工程であってもよい。
【0085】
<凝集剤(D)>
前処理液は、凝集剤(D)を少なくとも1種含有する。
凝集剤(D)は、特定インク中の成分を凝集させる成分である。
凝集剤(D)としては、多価金属化合物、有機酸、金属錯体、及び水溶性カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0086】
-多価金属化合物-
多価金属化合物としては、周期表の第2族のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3族の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13族からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。
これらの金属の塩としては、後述する有機酸の塩、硝酸塩、塩化物、又はチオシアン酸塩が好適である。
中でも、好ましくは、有機酸(ギ酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は、チオシアン酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩である。
多価金属化合物は、前処理液中において、少なくとも一部が多価金属イオンと対イオンとに解離していることが好ましい。
【0087】
-有機酸-
有機酸としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシ基等を挙げることができる。
上記酸性基は、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
なお、上記酸性基は、前処理液中において、少なくとも一部が解離していることが好ましい。
【0088】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、蟻酸、安息香酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸(好ましくは、DL-リンゴ酸)、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、4-メチルフタル酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、等が好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0089】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、インクの凝集速度の観点から、2価以上のカルボン酸(以下、多価カルボン酸ともいう。)が好ましい。
多価カルボン酸としては、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、4-メチルフタル酸、又はクエン酸が好ましく、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルタル酸、又はクエン酸がより好ましい。
【0090】
有機酸は、pKaが低い(例えば、1.0~5.0)ことが好ましい。
これにより、カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク中の顔料、ポリマー粒子などの粒子の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
【0091】
有機酸は、pKaが低く、水に対する溶解度が高く、価数が2価以上であることが好ましく、インク中の粒子を分散安定化させている官能基(例えば、カルボキシ基等)のpKaよりも低いpH領域に高い緩衝能を有する2価又は3価の酸性物質であることがより好ましい。
【0092】
-金属錯体-
金属錯体としては、金属元素として、ジルコニウム、アルミニウム、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属錯体が好ましい。
金属錯体としては、配位子として、アセテート、アセチルアセトネート、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、オクチレングリコレート、ブトキシアセチルアセトネート、ラクテート、ラクテートアンモニウム塩、及びトリエタノールアミネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属錯体が好ましい。
【0093】
金属錯体としては、様々な金属錯体が市販されており、本開示においては、市販の金属錯体を使用してもよい。また、様々な有機配位子、特に金属キレート触媒を形成し得る様々な多座配位子が市販されている。そのため、市販の有機配位子と金属とを組み合わせて調製した金属錯体を使用してもよい。
【0094】
-水溶性カチオン性ポリマー-
水溶性カチオン性ポリマーとしては、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体、ポリ-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、等が挙げられる。
水溶性カチオン性ポリマーについては、特開2011-042150号公報(特に、段落0156)、特開2007-98610号公報(特に、段落0096~0108)等の公知文献の記載を適宜参照できる。
水溶性カチオン性ポリマーの市販品としては、シャロール(登録商標)DC-303P、シャロールDC-902P(以上、第一工業製薬(株)製)、カチオマスター(登録商標)PD-7、カチオマスターPD-30(以上、四日市合成(株)製)、ユニセンスFPA100L(センカ(株)製)が挙げられる。
【0095】
凝集剤(D)の含有量には特に制限はない。
インクの凝集速度の観点から、前処理液の全量に対する凝集剤(D)の含有量は、0.1質量%~40質量%であることが好ましく、0.1質量%~30質量%であることがより好ましく、1質量%~20質量%であることが更に好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0096】
画像滲みをより抑制する観点から、凝集剤(D)は、有機酸を含むことが好ましい。
凝集剤が有機酸を含む場合における、前処理液の全量に対する有機酸の含有量の好ましい範囲も、上述した、前処理液の全量に対する凝集剤(D)の含有量の好ましい範囲と同様である。
凝集剤(D)が有機酸を含む場合、凝集剤(D)の全量中に占める有機酸の割合は、50質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が更に好ましい。
【0097】
<水(E)>
前処理液は、水(E)を含有する。
即ち、前処理液は、いわゆる水系の液体である。
水(E)の含有量は、前処理液の全量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
水(E)の含有量の上限は、他の成分の含有量に応じて適宜定まる。前処理液の全量に対する水(E)の含有量の上限としては、例えば、90質量%、80質量%等が挙げられる。
【0098】
<樹脂粒子>
前処理液は樹脂粒子を含んでもよい。前処理液が樹脂粒子を含むことにより、密着性に優れた画像が得られる。
【0099】
前処理液に含有される樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)としては、30℃~120℃が好ましく、30℃~80℃がより好ましく、40℃~60℃が更に好ましく、45~60℃が更に好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度の測定方法は前述したとおりである。
【0100】
樹脂粒子における樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂を含むことが好ましく、ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。
【0101】
また、樹脂粒子としては、アクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、アクリル樹脂粒子及びポリエステル樹脂粒子の混合物、又は、アクリル樹脂とポリエステル樹脂とを含む複合粒子が好ましい。
【0102】
樹脂粒子における樹脂は、脂環式構造又は芳香環式構造を有することが好ましく、芳香環式構造を有することがより好ましい。
脂環式構造としては、炭素数5~10の脂環式炭化水素構造が好ましく、シクロヘキサン環構造、ジシクロペンタニル環構造、ジシクロペンテニル環構造、又は、アダマンタン環構造が好ましい。
芳香環式構造としては、ナフタレン環又はベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
脂環式構造又は芳香環式構造の量としては、例えば、特定樹脂100gあたり0.01mol~1.5molであることが好ましく、0.1mol~1molであることがより好ましい。
【0103】
樹脂粒子における樹脂は、特定樹脂を含む粒子を後述する水分散性の樹脂粒子とすることが好ましい観点から、構造中にイオン性基を有することが好ましい。
イオン性基としては、アニオン性基であってもカチオン性基であってもよいが、導入の容易性の観点から、アニオン性基が好ましい。
アニオン性基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、又は、スルホ基であることが好ましく、スルホ基であることがより好ましい。
イオン性基の量としては、特に限定されず、特定樹脂を含む粒子が水分散性の樹脂粒子となる量であれば好ましく使用可能であるが、例えば特定樹脂を含む粒子に含まれる樹脂100gあたり0.001mol~1.0molであることが好ましく、0.01mol~0.5molであることがより好ましい。
【0104】
樹脂粒子における樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000~300000であることが好ましく、2000~200000であることがより好ましく、5000~100000であることが更に好ましい。
【0105】
樹脂粒子としては、水分散性の樹脂粒子であることが好ましい。
本開示において、水分散性とは、20℃の水に撹拌後、20℃で60分間放置しても沈殿が確認されないことをいう。
【0106】
樹脂粒子の体積平均粒径は、1nm~300nmであることが好ましく、3nm~200nmであることがより好ましく、5nm~150nmであることが更に好ましい。
【0107】
なお、樹脂粒子としては、前述した特定インク中の樹脂粒子と同様のものを用いてもよい。
【0108】
前処理液を調製する際、樹脂粒子の水分散液の市販品を用いてもよい。
樹脂粒子の水分散液の市販品としては、ペスレジンA124GP、ペスレジンA645GH、ペスレジンA615GE、ペスレジンA520(以上、高松油脂(株)製)、Eastek1100、Eastek1200(以上、Eastman Chemical社製)、プラスコートRZ570、プラスコートZ687、プラスコートZ565、プラスコートRZ570、プラスコートZ690(以上、互応化学工業(株)製)、バイロナールMD1200(東洋紡(株)製)、EM57DOC(ダイセルファインケム社製)等が挙げられる。
【0109】
樹脂粒子の含有量には特に制限はない。
前処理液の全量に対する樹脂粒子の含有量は、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~15質量%であることが特に好ましい。
【0110】
<水溶性有機溶剤>
前処理液は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール等)、ポリアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)などの多価アルコール;ポリアルキレングリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル等)などの多価アルコールエーテル;特開2011-42150号公報の段落0116に記載の、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1~4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドン;等が挙げられる。
中でも、成分の転写の抑制の観点から、多価アルコール、又は、多価アルコールエーテルが好ましく、アルカンジオール、ポリアルキレングリコール、又は、ポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
【0111】
水溶性有機溶剤の含有量には特に制限はない。
前処理液の全量に対する水溶性有機溶剤の含有量は、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~15質量%であることが特に好ましい。
【0112】
<界面活性剤>
前処理液は、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤又は消泡剤として用いることができる。表面張力調整剤又は消泡剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0113】
界面活性剤としては、特開昭59-157636号公報の第37~38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げた化合物も挙げられる。また、特開2003-322926号、特開2004-325707号、特開2004-309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等も挙げられる。
【0114】
例えば、前処理液が消泡剤としての界面活性剤を含む場合、消泡剤としての界面活性剤の含有量は、前処理液の全量に対し、0.0001質量%~1質量%が好ましく、0.001質量%~0.1質量%がより好ましい。
【0115】
<その他の成分>
前処理液は、必要に応じ、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
前処理液に含有され得るその他の成分としては、固体湿潤剤、コロイダルシリカ、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤、水溶性カチオン性ポリマー以外の水溶性高分子化合物(例えば、特開2013-001854号公報の段落0026~0080に記載された水溶性高分子化合物)、等の公知の添加剤が挙げられる。
【0116】
<前処理液の物性>
インクの凝集速度の観点から、前処理液の25℃におけるpHは0.1~3.5であることが好ましい。
前処理液のpHが0.1以上であると、非浸透性基材のザラツキがより低減され、画像部の密着性がより向上する。
前処理液のpHが3.5以下であると、凝集速度がより向上し、非浸透性基材の表面上におけるインクによるドット(インクドット)の合一がより抑制され、画像のザラツキがより低減される。
前処理液の25℃におけるpHは、0.2~2.0がより好ましい。ここでいう前処理液の25℃におけるpHの測定条件は、前述したインクの25℃におけるpHの測定条件と同様である。
【0117】
前処理液が凝集剤を含む場合、前処理液の粘度としては、インクの凝集速度の観点から、0.5mPa・s~10mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s~5mPa・sの範囲がより好ましい。ここでいう前処理液の粘度の測定条件は、前述したインクの粘度の測定条件と同様である。
【0118】
前処理液の25℃における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、30mN/m~45mN/mであることが更に好ましい。ここでいう前処理液の表面張力の測定条件は、前述したインクの表面張力の測定条件と同様である。
【0119】
〔基材〕
本開示の画像形成方法における基材としては特に限定されず、公知の基材を使用することができる。
基材としては、例えば、紙基材、樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙基材、樹脂基材、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等の金属の板)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙基材、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された樹脂基材、等が挙げられる。
【0120】
また、基材としては、テキスタイル基材も挙げられる。
テキスタイル基材の素材としては、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維;ビスコースレーヨン、レオセル等の化学繊維;ポリエステル、ポリアミド、アクリル等の合成繊維;天然繊維、化学繊維、及び合成繊維からなる群より選ばれる少なくとも2種である混合物等が挙げられる。テキスタイル基材としては、国際公開第2015/158592号の段落[0039]~<0042>に記載されたテキスタイル基材を用いてもよい。
【0121】
基材として、好ましくは非浸透性基材である。
非浸透性基材とは、ASTM試験法のASTM D570で吸水率(質量%、24hr.)が0.2未満である基材を指す。
【0122】
非浸透性基材としては特に制限はないが、樹脂基材が好ましい。
樹脂基材としては、特に制限はなく、例えば熱可塑性樹脂の基材が挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、熱可塑性樹脂を、シート状又はフィルム状に成形した基材が挙げられる。
樹脂基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、又はポリイミドを含む基材が好ましい。
【0123】
樹脂基材は、透明な樹脂基材であっても、着色された樹脂基材であってもよい。
ここで、透明とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が、80%以上(好ましくは90%以上)であることを意味する。
【0124】
樹脂基材の形状は、特に限定されないが、シート状の樹脂基材であることが好ましく、巻き取りによってロールを形成可能なシート状の樹脂基材であることがより好ましい。
樹脂基材の厚さとしては、10μm~200μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。
【0125】
樹脂基材は、表面エネルギーを向上させる観点から、表面処理がなされていてもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
〔前処理液付与工程〕
前処理液付与工程は、基材上に、上述した前処理液を付与する工程である。
基材上への前処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行うことができる。
塗布法としては、バーコーター(例えばワイヤーバーコーター)、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター等を用いた公知の塗布法が挙げられる。
インクジェット法の詳細については、後述の画像形成工程に適用され得るインクジェット法と同様である。
【0127】
前処理液の付与量(詳細には、面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m))は、適宜調整される。
前処理液の付与量は、例えば、後述する前述の面積1m当たりのインクの付与グラム数(g/m)、インク中に占める有機溶剤(C)の割合(質量%)、及び前処理液中に占める凝集剤(D)の割合(質量%)を考慮した上で、式(2)(即ち、0.10≦C/C≦2.90)を満足する範囲に調整してもよい。
面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m)としては、好ましくは0.1g/m~10g/m、より好ましくは0.5g/m~6.0g/m、更に好ましくは0.8g/m~2.0g/mであり、更に好ましくは1.2g/m~1.6g/mである。
前処理液の付与グラム数(g/m)が上記好ましい範囲であると、式(2)(即ち、0.10≦C/C≦2.90)が満足され易い。
ここで、前処理液の付与グラム数(g/m)は、面積1m当たりの付与グラム数に換算された、前処理液の付与量である。従って、言うまでも無いが、基材を平面視した場合の実際の前処理液の付与面積(即ち、画像の面積)は、1m未満であっても構わない。
【0128】
前処理液付与工程では、前処理液の付与前に基材を加熱してもよい。
加熱温度としては、基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
【0129】
前処理液付与工程では、前処理液の付与後であって、上述の画像形成工程の前に、前処理液を加熱乾燥させてもよい。
前処理液の加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
前処理液の加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、基材の前処理液が付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、基材の前処理液が付与された面に温風又は熱風をあてる方法、基材の前処理液が付与された面又は前処理液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、これらの複数を組み合わせた方法、等が挙げられる。
【0130】
前処理液の加熱乾燥時の加熱温度は、35℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、100℃が好ましく、90℃がより好ましく、70℃が更に好ましい。
加熱乾燥の時間には特に制限はないが、0.5秒~60秒が好ましく、0.5秒~20秒がより好ましく、0.5秒~10秒が特に好ましい。
【0131】
〔画像形成工程〕
画像形成工程は、基材上に付与された前処理液上に特定インクをインクジェット法によって付与して画像を形成する工程である。
【0132】
特定インクの付与量(詳細には、面積1m当たりの特定インクの付与グラム数(g/m))は、適宜調整される。
特定インクの付与量は、例えば、前述の面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m)、インク中に占める有機溶剤(C)の割合(質量%)、及び前処理液中に占める凝集剤(D)の割合(質量%)を考慮した上で、式(2)(即ち、0.10≦C/C≦2.90)を満足する範囲に調整してもよい。
面積1m当たりの特定インクの付与グラム数(g/m)としては、好ましくは0.1g/m~10g/m、より好ましくは0.5g/m~6.0g/m、更に好ましくは0.8g/m~2.0g/mであり、更に好ましくは1.2g/m~1.6g/mである。
特定インクの付与グラム数(g/m)が上記好ましい範囲であると、式(2)(即ち、0.10≦C/C≦2.90)が満足され易い。
ここで、特定インクの付与グラム数(g/m)は、面積1m当たりの付与グラム数に換算された、特定インクの付与量である。従って、言うまでも無いが、基材を平面視した場合の実際の特定インクの付与面積(即ち、画像の面積)は、1m未満であっても構わない。
【0133】
本開示において、基材上に付与された前処理液上に特定インクをインクジェット法によって付与するとは、特定インクをインクジェットヘッドから吐出することにより、上記前処理液上に付与することを意味する。
インクジェットヘッドからの特定インクの吐出方式としては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等を適用できる。
また、インクジェットヘッドからの特定インクの吐出方式として、例えば、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させる方式も適用できる。
また、インクジェットヘッドからのインクの吐出方式として、特開2003-306623号公報の段落番号0093~0105に記載の方式も適用できる。
【0134】
インクジェットヘッドの方式としては、短尺のシリアルヘッドを、被記録媒体としての基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式と、がある。
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面に画像形成を行なうことができる。ライン方式では、シャトル方式における、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、ライン方式では、シャトル方式と比較して、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動する。このため、ライン方式によれば、シャトル方式と比較して、画像形成の高速化が実現される。
【0135】
特定インクの付与は、300dpi以上(より好ましくは600dpi、更に好ましくは800dpi)の解像度を有するインクジェットヘッドを用いて行うことが好ましい。ここで、dpiは、dot per inchの略であり、1inch(1インチ)は2.54cmである。
【0136】
インクジェットヘッドのノズルから吐出される特定インクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点から、1pL(ピコリットル)~10pLが好ましく、1.5pL~6pLがより好ましい。
また、画像のムラ、連続階調のつながりを改良する観点から、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効である。
【0137】
画像形成工程では、基材上に付与された特定インクを加熱乾燥させて画像を得てもよい。
加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
特定インクの加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、基材の特定インクが付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、基材の特定インクが付与された面に温風又は熱風をあてる方法、基材の特定インクが付与された面又は特定インクが付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、これらの複数を組み合わせた方法、等が挙げられる。
【0138】
加熱乾燥時の加熱温度は、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上が特に好ましい。加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましい。
特定インクの加熱乾燥の時間には特に制限はないが、3秒~60秒が好ましく、5秒~60秒がより好ましく、10秒~45秒が特に好ましい。
【0139】
また、特定インクの付与前に、あらかじめ基材を加熱してもよい。
加熱温度としては、適宜設定すればよいが、基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
【0140】
画像形成工程では、特定インクに該当する2種以上のインクを付与して画像を形成してもよい。この場合の2種以上のインクとしては、例えば、白色無機顔料を含有する第1インクと、白色無機顔料を含有せずに白色以外の色の着色剤を含有する第2インクと、を用いることができる。この場合のより具体的な態様として、まず、基材としての透明な樹脂基材上に、前処理液を付与し、次いで、第2インクによって文字、図形等の画像を記録し、次いで、第1インクによる画像(例えばベタ画像(solid image))を、第2インクによる画像及び基材の画像非形成領域を覆うようにして記録する態様が挙げられる。この場合、第2インクによる、文字、図形等の画像は、基材のウラ面(即ち、画像が形成される面とは反対側の面)側から、基材と通して視認する。
【0141】
また、本開示の画像形成方法は、特定インクを用いた上記画像形成工程(以下、「第1画像形成工程」ともいう)と、特定インクに該当しないインクを用いた第2画像形成工程と、を含んでいてもよい。
この場合の具体的な態様としては、特定インクとして、白色無機顔料を含有するインクAを用い、かつ、特定インクに該当しないインクとして、白色無機顔料を含有せずに白色以外の色の着色剤を含有するインクBを用いる態様が挙げられる。この場合のより具体的な態様として、まず前処理液付与工程を実施し、次いで、第2画像形成工程を実施することにより、基材としての透明な樹脂基材上に、インクBによって文字、図形等の画像を記録し、次いで、第1画像形成工程を実施することにより、インクAによる画像(例えばベタ画像)を、第2インクによる画像及び基材の画像非形成領域を覆うようにして記録する態様が挙げられる。この場合、インクBによる、文字、図形等の画像は、基材のウラ面(即ち、画像が形成される面とは反対側の面)側から、基材越しに視認する。
インクBとしては、インクAと同様に、水系のインクを用いることが好ましい。インクBの具体的態様として、白色無機顔料及び有機溶剤(C)を含有しないこと以外は特定インクと同様のインクが挙げられる。
【0142】
〔式(2)〕
本開示の画像形成方法では、特定インクが付与された基材を平面視した場合の特定インクが付与された領域(即ち、画像が形成された領域)において、面積1m当たりの有機溶剤(C)の付与グラム数であるC(g/m)と、面積1m当たりの凝集剤(D)の付与グラム数であるC(g/m)と、が下記式(2)を満足する。
0.10≦C/C≦2.90 … 式(2)
【0143】
及びCは、それぞれ、面積1m当たりの付与グラム数に換算された、有機溶剤(C)及び凝集剤(D)の付与量である。
従って、言うまでも無いが、基材を平面視した場合の実際のインクの付与面積(即ち、画像の面積)は、1m未満であっても構わない。
【0144】
式(2)は、C/Cが0.10以上2.90以下であることを意味する。
/Cが0.10以上であることにより、画像の滲みが抑制される。画像の滲みをより抑制する観点から、C/Cは、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.50以上であり、更に好ましくは0.80以上であり、更に好ましくは1.00以上であり、更に好ましくは1.50以上である。
/Cが2.90以下であることにより、画像の割れが抑制される。画像の割れをより抑制する観点から、C/Cは、好ましくは2.50以下であり、より好ましくは2.30以下であり、更に好ましくは2.00以下である。
好ましい態様の一つとして、C/Cが0.50以上2.00以下である態様が挙げられる。
【0145】
/Cは、面積1m当たりの特定インクの付与グラム数(g/m)、インク中に占める有機溶剤(C)の割合(即ち、含有量;質量%)、前処理液中に占める凝集剤(D)の割合(即ち、含有量;質量%)、及び、面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m)に基づいて決定される。
本開示の画像形成方法では、C/Cが式(2)を満足していればよく、その他には特に制限はない。
【0146】
/Cに式(2)を満足させるための好ましい方法としては;まず、面積1m当たりの特定インクの付与グラム数(g/m)を決定し、決定された特定インクの付与グラム数(g/m)を前提として、インク中に占める有機溶剤(C)の割合(即ち、含有量;質量%)及び前処理液中に占める凝集剤(D)の割合(即ち、含有量;質量%)に基づいて、面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m)を、式(2)が満足される範囲内で決定する方法(以下、方法Aともいう);まず、面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m)を決定し、決定された前処理液の付与グラム数(g/m)を前提として、インク中に占める有機溶剤(C)の割合(即ち、含有量;質量%)及び前処理液中に占める凝集剤(D)の割合(即ち、含有量;質量%)に基づいて、面積1m当たりの特定インクの付与グラム数(g/m)を、式(2)が満足される範囲内で決定する方法(以下、方法Bともいう);等が挙げられる。
特定インクの付与グラム数の制約が無いという利点を有する点では、方法Aが好ましく、前処理液の付与グラム数の制約が無いという利点を有する点では、方法Bが好ましい。
【0147】
上記方法Aを適用する場合の本開示の画像形成方法は、
面積1m当たりの特定インクの付与グラム数(g/m)を決定する決定工程Aと、
決定工程Aで決定された特定インクの付与グラム数(g/m)、特定インク中に占める有機溶剤(C)の割合、及び前処理液中に占める凝集剤(D)の割合に基づき、面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m)を、式(2)が満足される範囲内で決定する決定工程Bと、を含む。
この場合、前処理液付与工程では、決定工程Bで決定された前処理液の付与グラム数(g/m)にて、基材上に前処理液を付与し、画像を形成する工程では、決定工程Aで決定された特定インクの付与グラム数(g/m)にて、基材上に付与された前処理液上に特定インクを付与して画像を形成する。
【0148】
決定工程Aでは、特定インクの付与グラム数(g/m)を任意に決定する。
例えば、特定インクによって形成される画像の濃度等に対応する付与量として、特定インクの付与グラム数(g/m)を決定する。具体的には、例えば、予備実験を行うことにより、画像の濃度と特定インクの付与グラム数との関係を調べる。得られた関係に基づき、必要とされる画像の濃度に対応する特定インクの付与グラム数を決定する。
【0149】
本開示の画像形成方法が決定工程A及び決定工程Bを含む場合の工程順序には特に制限はない。
決定工程Aは、画像形成工程よりも前であれば、どこに設けられていてもよい。
決定工程Bは、前処理液付与工程よりも前であれば、どこに設けられていてもよい。
【0150】
上記方法Bを適用する場合の本開示の画像形成方法は、
面積1m当たりの前処理液の付与グラム数(g/m)を決定する決定工程Xと、
決定工程Xで決定された前処理液の付与グラム数(g/m)、特定インク中に占める有機溶剤(C)の割合、及び前処理液中に占める凝集剤(D)の割合に基づき、面積1m当たりの特定インクの付与グラム数(g/m)を、式(2)が満足される範囲内で決定する決定工程Yと、を含む。
この場合、前処理液付与工程では、決定工程Xで決定された前処理液の付与グラム数(g/m)にて、基材上に前処理液を付与し、画像を形成する工程では、決定工程Yで決定された特定インクの付与グラム数(g/m)にて、基材上に付与された前処理液上に特定インクを付与して画像を形成する。
【0151】
決定工程Xでは、前処理液の付与グラム数(g/m)を任意に決定する。
例えば、画像形成装置を用いる場合の装置の制約、前処理液付与プロセスの安定性、等を考慮して、前処理液の付与グラム数(g/m)を決定する。
【0152】
本開示の画像形成方法が決定工程X及び決定工程Yを含む場合の工程順序には特に制限はない。
決定工程Yは、画像形成工程よりも前であれば、どこに設けられていてもよい。
決定工程Xは、前処理液付与工程よりも前であれば、どこに設けられていてもよい。
【0153】
本開示の画像形成方法において、面積1m当たりの有機溶剤(C)の付与グラム数であるC(g/m)は、好ましくは0.00005g/m~1.2g/m、より好ましくは0.0005g/m~0.6g/m、更に好ましくは0.004g/m~0.30g/mであり、更に好ましくは0.012g/m~0.20g/mである。
また、本開示の画像形成方法において、面積1m当たりの凝集剤(D)の付与グラム数であるC(g/m)について、好ましくは0.00001g/m~4g/m、より好ましくは0.0005g/m~1.8g/m、更に好ましくは0.008g/m~0.4g/mであり、更に好ましくは0.012g/m~0.16g/mである。
【実施例
【0154】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
以下において、「水」は、特に断りがない限り、イオン交換水を意味する。
【0155】
<樹脂粒子の水分散液又は樹脂の水溶液の準備>
以下のようにして、樹脂粒子の水分散液として、アクリル1の水分散液、ウレタン1の水分散液、及びポリエステル1の水分散液を、樹脂の水溶液として、アクリル2の水溶液を、それぞれ準備した。
ここで、樹脂粒子(即ち、アクリル1、ウレタン1、及びポリエステル1)は、樹脂(B)中の主たる樹脂からなる樹脂粒子であり、アクリル2は、樹脂(B)中の主たる樹脂(非粒子)である。
これらの樹脂(B)中の主たる樹脂のSP値(SP)は表1及び表2に示すとおりである。
【0156】
(アクリル1の水分散液の準備)
アクリル1の水分散液は、以下のようにして準備した。
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコ(反応容器)に、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで87℃まで昇温した。次いで反応容器内の還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流状態を保った)、反応容器内のメチルエチルケトンに対し、メチルメタクリレート220.4g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V-601」(富士フイルム和光純薬(株)製の重合開始剤;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間撹拌した後に、この1時間撹拌後の溶液に対し、下記工程(1)の操作を行った。
工程(1) … 「V-601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間撹拌を行った。
続いて、上記工程(1)の操作を4回繰り返し、次いで、さらに「V-601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間撹拌を続けた(ここまでの操作を、「反応」とする)。
反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷することにより、共重合体を含む重合溶液(固形分濃度41.0質量%)を得た。
次に、得られた重合溶液317.3gを秤量し、ここに、イソプロパノール46.4g、20質量%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3質量%相当)、及び2モル/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液40.77gを加え、反応容器内の液体の温度を70℃に昇温した。
次に、70℃に昇温された液体に対し、蒸留水380gを10mL/分の速度で滴下し、水分散化を行った(分散工程)。
その後、減圧下、反応容器内の液体の温度を70℃で1.5時間保つことにより、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で287.0g留去した(溶剤除去工程)。得られた液体に対し、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)を0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン-3-オンとして440質量ppm)添加した。
得られた液体を、1μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収することにより、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸ナトリウム(=70/20/5/5[質量比])共重合体からなる樹脂粒子である、アクリル1の水分散液(不揮発分濃度23.2質量%)を得た。アクリル1の体積平均粒径は5.0nmであり、アクリル1の重量平均分子量(Mw)は60000であった。
【0157】
(アクリル2の水溶液の準備)
アクリル樹脂であるアクリル2の水溶液として、東亞合成株式会社製の「アロンA-20L」(Mw=500000)を準備した。
【0158】
(ウレタン1の水分散液の準備)
ウレタン1の水分散液として、大成ファインケミカル社製のウレタンエマルション「WBR-2101」(不揮発分濃度27質量%)を準備した。
【0159】
(ポリエステル1の水分散液の準備)
ポリエステル1の水分散液として、日本合成化学社製のポリエステルエマルション「WR-961」(不揮発分濃度30質量%)を準備した。
【0160】
<二酸化チタン(TiO)水分散液の調製>
(顔料分散樹脂P-1(分散剤)の合成)
以下のようにして、二酸化チタン(TiO)を水分散させるための顔料分散樹脂P-1を合成した。
ここで、顔料分散樹脂P-1(分散剤)は、樹脂(B)中の主たる樹脂以外の樹脂である。
【0161】
撹拌機、冷却管を備えた三口フラスコにジプロピレングリコールを後述するモノマーの全量と同質量を加え、窒素雰囲気下で85℃に加熱した。
ステアリルメタクリレート9.1モル当量、ベンジルメタクリレート34.0モル当量、ヒドロキシエチルメタクリレート31.9モル当量、メタクリル酸25.0モル当量、及び、2-メルカプトプロピオン酸0.8モル当量を混合した溶液Iと、モノマーの全量に対し1質量%のt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油(株)製パーブチルO)を、モノマーの全量に対し20質量%のジプロピレングリコールに溶解させて得られた溶液IIと、をそれぞれ調製した。上記三口フラスコに溶液Iを4時間、溶液IIを5時間かけて滴下した。
滴下終了後、更に2時間反応させた後、95℃に昇温し、3時間加熱撹拌して未反応モノマーをすべて反応させた。モノマーの消失は核磁気共鳴(H-NMR)法で確認した。
得られた反応溶液を70℃に加熱し、アミン化合物としてジメチルエタノールアミンを20.0モル当量添加した後、プロピレングリコールを加えて撹拌し、顔料分散樹脂P-1の30質量%溶液を得た。
得られたポリマーの構成成分は、H-NMRにより確認した。また、GPCにより求めた重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
なお、顔料分散樹脂P-1における各構成単位の質量比は、ステアリルメタクリレート由来の構成単位/ベンジルメタクリレート由来の構成単位/ヒドロキシエチルメタクリレート由来の構成単位/メタクリル酸由来の構成単位=20/39/27/14であった。ただし、上記質量比は、ジメチルアミノエタノールは含まない値である。
【0162】
(二酸化チタン(TiO)水分散液の調製)
レディーミル モデルLSG-4U-08(アイメックス社製)を使用し、下記のようにして、TiO分散液を調製した。
即ち、ジルコニア製の容器に、二酸化チタン(TiO;平均一次粒子径:210nm、商品名:PF-690、石原産業株式会社製;白色無機顔料)45質量部、上記顔料分散樹脂P-1の30質量%溶液15質量部、及び超純水40質量部を加えた。更に、0.5mmφジルコニアビーズ(TORAY製、トレセラムビーズ)40質量部を加えて、スパチュラで軽く混合した。得られた混合物を含むジルコニア製の容器をボールミルに入れ、回転数1000rpm(revolutions per minute)で5時間分散した。分散終了後、ろ布でろ過してビーズを取り除き、TiO濃度が45質量%のTiO分散液を調製した。
【0163】
〔実施例1〕
<インクの調製>
上記アクリル1の水分散物、上記二酸化チタン(TiO)水分散液、有機溶剤(C)としてのプロピレングリコールモノブチルエーテル(PGmBE)、有機溶剤(F)としてのプロピレングリコール(沸点188℃、35.1MPa1/2)、及び水を用い、下記組成を有するインクを調製した。
調製したインクは、着色剤として、白色無機顔料である二酸化チタン(TiO)を含む、白色のインクである。
【0164】
-インクの組成-
・アクリル1〔樹脂(B)中の主たる樹脂からなる樹脂粒子〕
… 6.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル(PGmBE)〔有機溶剤(C)〕
… 1.0質量%
・プロピレングリコール(PG)〔有機溶剤(F)〕
… 27質量%
・二酸化チタン(TiO)〔着色剤(E)〕
… 5.0質量%
・顔料分散樹脂P-1〔分散剤;樹脂(B)中の主たる樹脂以外の樹脂〕
… 0.5質量%
・水… 合計で100質量%となる残量
【0165】
<前処理液の調製>
下記組成を有する前処理液を調製した。
【0166】
-前処理液の組成-
・Eastek(登録商標) 1100(イーストマンケミカル社製)〔ポリエステル樹脂粒子〕
…樹脂粒子(固形分)の量として10質量%
・グルタル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)〔凝集剤〕
…4.1質量%
・プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬(株)製)〔水溶性有機溶剤〕
…10質量%
・水…全体で100質量%となる残量
【0167】
<画像形成>
上記インク及び上記前処理液を用い、以下のようにして画像形成を行った。
【0168】
インクジェットヘッドとして、(株)リコー製GELJET(登録商標) GX5000プリンターヘッドを用意した。上記プリンターヘッドは、96本のノズルが並ぶラインヘッドである。
上記プリンターヘッドを、上述の図1に示すインクジェット記録装置と同様の構成のインクジェット記録装置に固定配置した。
このときの配置は、インクジェット装置のステージの移動方向と同一平面上で直交する方向に対し、96本のノズルが並ぶ方向が75.7°傾斜する配置とした。
【0169】
上記ラインヘッドのインク吐出面には、フッ素化合物を含む撥液膜が設けられている。
フッ素化合物を含む撥液膜は、C17SiClの単分子膜(SAM膜)である。
【0170】
基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(FE2001、厚み12μm、フタムラ化学(株)製)(非浸透性基材)を準備し、このPET基材を用い、下記の前処理液付与工程及び画像形成工程を順次行った。
【0171】
(前処理液付与工程)
基材をインクジェット記録装置のステージ上に固定し、次いで基材が固定されたステージを直線方向に500mm/秒で定速移動させながら、基材上に前処理液をワイヤーバーコーターを用いて付与した。前処理液の付与量(即ち、面積1mあたりに換算された付与グラム数)は、1.5g/mとした。
前処理液の付与が終了した箇所において、この箇所への前処理液の付与終了時から1.5秒後に、ドライヤを用いて50℃の条件で前処理液の乾燥を開始し、前処理液の付与終了時から3.5秒後に乾燥を終了した。このときの乾燥時間は2秒となる。
【0172】
(画像形成工程)
前処理液の乾燥が終了した基材を、ステージ速度50mm/秒で定速移動させながら、基材の前処理液が付与された面に対し、上記プリンターヘッドから上記インクをライン方式で吐出することにより、ベタ画像状に付与した。インクの付与量(即ち、面積1mあたりに換算された付与グラム数)は、10.4g/mとした。
上記インクの吐出は、前処理液の乾燥終了から2秒以内に開始した。
上記インクの吐出条件は、インク液滴量4.5pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×1200dpi(dot per inch)とした。
また、上記インクとしては、脱気フィルターを通して脱気し、30℃に温調したものを用いた。
【0173】
次に、基材の前処理液が付与された面上に付与されたインクを、70℃で10秒間乾燥させることにより、画像(詳細にはベタ画像)を得た。
以上により、基材と、基材上に配置された画像と、を備える画像形成物を得た。
【0174】
上記インクが付与された領域(即ち、画像)における、C/Cを表1に示す。
ここで、Cは、面積1m当たりの有機溶剤(C)の付与グラム数(g/m)であり、Cは、面積1m当たりの凝集剤(D)の付与グラム数(g/m)であり、C/Cは、Cに対するCの比である。
【0175】
<評価>
上記インクを用い、以下の評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0176】
(画像滲み)
インクを文字画像状に付与したこと以外は上記画像形成と同様にして、図1に示す文字画像(unicode:U+9DF9;2pt、3pt、4pt、及び5pt)とした。ここで、ptはフォントサイズを表すDTPポイントを意味し、1ptは1/72inchである。
得られた文字画像を観察し、下記評価基準により、画像滲みの評価を行った。
結果を表1に示す。
下記評価基準において、画像滲みがもっとも抑制されているランクは「AA」である。
【0177】
-画像滲みの評価基準-
AA: 2pt文字が再現可能
A: 3pt文字が再現可能であったが、2ptの文字は再現できなかった。
B: 4pt文字が再現可能であったが、3pt以下の文字は再現できなかった。
C: 5pt文字が再現可能であったが、4pt以下の文字は再現できなかった。
D: 5pt文字が再現できなかった。
なお、上記「再現可能」とは、0.5m離れた場所から確認した場合に、図1に記載の文字画像において、図2に記載の11で表された横線と、図2に記載の12で表された横線とが、分離されていることを意味する。
【0178】
(画像割れ)
上記ベタ画像中、50mm(基材の搬送方向)×20mm(基材の搬送方向と直交する方向)の領域を、「画像割れ評価領域」として設定し、ベタ画像における画像割れ評価領域を目視で観察し、画像割れの発生を確認した。より詳細には、「画像割れ評価領域」において、上記画像形成におけるインクの乾燥(70℃、10秒乾燥)前後での上記画像割れの増加個数をカウントした。
確認した結果に基づき、下記評価基準に従って画像割れを評価した。
結果を表1に示す。
下記評価基準において、画像割れがもっとも抑制されているランクは「AA」である。
【0179】
-画像割れの評価基準-
AA:乾燥前後での画像割れ増加数が0個であった。
A:乾燥前後での画像割れ増加数が1個又は2個であった。
B:乾燥前後での画像割れ増加数が3個~5個であった。
C:乾燥前後での画像割れ増加数が6個~10個であった。
D:乾燥前後での画像割れ増加数が11個以上であった。
【0180】
(画像のスジ)
上記ベタ画像中、50mm(基材の搬送方向)×20mm(基材の搬送方向と直交する方向)の領域を、「スジ評価領域」として設定した。
ベタ画像におけるスジ評価領域を目視で観察し、基材の搬送方向に対して平行なスジの発生有無及び発生の度合いを確認し、下記評価基準に従って画像のスジを評価した。
結果を表1に示す。
下記評価基準において、画像のスジがもっとも抑制されているランクは「A」である。
また、下記評価基準において、容易に視認できるスジとは、50cm離れた位置から観察した場合に視認できるスジを意味する。
【0181】
-画像のスジの評価基準-
A:ベタ画像中に、スジの発生が視認されない。
B:ベタ画像中に、ごく細いスジが1本視認される(容易に視認できる筋ムラは確認されない)。
C:ベタ画像中に、ごく細いスジが2本以上視認される(容易に視認できる筋ムラは確認されない)。
D:ベタ画像中に、容易に視認できるスジが1本確認される。
E:ベタ画像中に、容易に視認される2本以上のスジが確認される。
【0182】
〔実施例2~21〕
インク中における、樹脂(B)中の主たる樹脂の種類、樹脂(B)中の主たる樹脂の含有量、分散剤の含有量、有機溶剤(C)の種類、及び有機溶剤(C)の含有量の組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
有機溶剤(C)の含有量を変更した実施例では、インクの付与量を、C/Cが表1に示す値となるように調整した。
結果を表1に示す。
【0183】
〔実施例22~26〕
前処理液中における、凝集剤(D)の種類及び凝集剤(D)の含有量の組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
凝集剤(D)の含有量を変更した実施例では、前処理液の付与量を、C/Cが表1に示す値となるように調整した。
結果を表1に示す。
【0184】
〔実施例27~30〕
/Cが表2に示す値となるように、インクの付与量を変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0185】
〔実施例31~34〕
インク中の樹脂(B)(主たる樹脂及び分散剤)の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0186】
〔実施例35~36〕
インク中における、樹脂(B)中の主たる樹脂の種類を、表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0187】
〔比較例1~2〕
インク中における、樹脂(B)中の主たる樹脂の含有量、有機溶剤(C)の種類、及び有機溶剤(C)の含有量、並びに、前処理液中における、凝集剤(D)の種類及び含有量の組み合わせを、表2に示すように変更し、かつ、インクの付与量を変更することによりC/Cが表2に示す値となるように調整したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0188】
〔比較例3〕
有機溶剤(C)を、比較用溶剤である1,2-BDO(1,2-ブタンジオール)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0189】
〔比較例4~5〕
/Cが表2に示す値となるように、インクの付与量を変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0190】
【表1】
【0191】
【表2】
【0192】
-表1及び表2の説明-
・インク中の各成分の「量」は、インクの全量に対する含有量(質量%)を意味する。
・前処理液中の凝集剤(D)の「量」は、前処理液の全量に対する含有量(質量%)を意味する。
・含有質量比〔C/B〕は、インク中における、樹脂(B)の含有質量に対する有機溶剤(C)の含有質量の比を意味する。
・SP値の単位は、MPa1/2である。
・インク中における、水、着色剤(E)、及び有機溶剤(F)については、全例に共通する成分であるため、表1及び表2中では表記を省略した。
・前処理液中における、水、水溶性有機溶剤及び樹脂粒子については、全例に共通する成分であるため、表1及び表2中では表記を省略した。
【0193】
-表1及び表2中の有機溶剤の略称-
・PGmBE:プロピレングリコールモノブチルエーテル
・2-EH:2-エチルヘキサノール
・1-H:1-ヘキサノール
・1-O:1-オクタノール
・DPGmME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
・TEGmBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
・PGmPE:プロピレングリコールモノプロピルエーテル
・PGmME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・DMAE:ジメチルアミノエタノール
・1,2-HDO:1,2-ヘキサンジオール
・1,2-PDO:1,2-ペンタンジオール
・1,2-BDO:1,2-ブタンジオール
【0194】
-表1及び表2中の凝集剤-
・グルタル酸:富士フイルム和光純薬(株)製のグルタル酸
・マロン酸:富士フイルム和光純薬(株)製のマロン酸
・硝酸Ca:富士フイルム和光純薬(株)製の硝酸カルシウム
・硝酸Al:富士フイルム和光純薬(株)製の硝酸アルミニウム
・カチオン性ポリマー1:ジメチルジアリルアンモニウムクロライド(第一工業製薬(株)製「シャロールDC-902P」)
・硫酸Mg:富士フイルム和光純薬(株)製の硫酸マグネシウム
【0195】
表1及び表2に示すように、水(A)と、樹脂(B)と、式(1)(即ち、「|SP-SP|≦10.0」)を満足する有機溶剤(C)と、を含有するインクを準備する工程と、凝集剤(D)及び水(E)を含有する前処理液を準備する工程と、基材上に、前処理液を付与する工程と、基材上に付与された前処理液上にインクをインクジェット法によって付与し、式(2)(即ち、0.10≦C/C≦2.90)を満足する画像を形成する工程と、を含む画像形成方法を実施した各実施例では、画像滲み及び画像割れが抑制されていた。
【0196】
各実施例に対し、比較例の結果は以下のとおりであった(表2参照)。
/Cが2.00超である、比較例1、2及び4では、画像割れが生じた。
/Cが0.10未満である、比較例5では、画像滲みが生じた。
有機溶剤(C)に代えて、式(1)(即ち、「|SP-SP|≦10.0」)を満足しない比較溶剤(1,2-BDO)を用いた比較例3では、画像滲みが生じた。
【0197】
実施例1~9、20、及び21の結果から、有機溶剤(C)が、|SP-SP|が5.0以下である有機溶剤を含む場合(実施例1~9)、画像の滲みがより抑制されることがわかる。
【0198】
実施例1、27、及び28の結果から、C/Cが0.50以上である場合(実施例1及び28)、画像滲みがより抑制されることがわかる。
実施例1、29、及び30の結果から、C/Cが2.00以下である場合(実施例1及び29)、画像割れがより抑制されることがわかる。
【0199】
実施例11~15の結果から、インク中における有機溶剤(C)の含有量が0.10質量%以上である場合(実施例12~15)、画像滲みがより抑制されることがわかる。
実施例11~15の結果から、インク中における有機溶剤(C)の含有量が10.0質量%以下である場合(実施例11~14)、画像割れがより抑制されることがわかる。
【0200】
実施例1及び10の結果から、インク中の樹脂(B)が、樹脂粒子を含む場合(実施例1)、画像の滲みがより抑制されることがわかる。
【0201】
実施例11~15の結果から、含有質量比〔C/B〕が0.02以上である場合(実施例12~15)、画像滲みがより抑制されることがわかる。
実施例11~15の結果から、含有質量比〔C/B〕が1.00以下である場合(実施例11~13)、画像割れがより抑制されることがわかる。
【0202】
以上、実施例として、着色剤として白色顔料を含有する白インクを用いた実施例を示した。
上述した各実施例のインクにおいて、着色剤を、白色顔料以外の着色剤(例えば、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料、ブラック顔料、等)に変更した場合においても、各実施例と同様の効果が得られることは言うまでもない。
図1
図2