(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】シート搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/38 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
B65H5/38
(21)【出願番号】P 2018178732
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕史
(72)【発明者】
【氏名】久保 宏
(72)【発明者】
【氏名】北岡 真也
(72)【発明者】
【氏名】兼谷 厚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義人
(72)【発明者】
【氏名】瓶子 史行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 城治
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-237926(JP,A)
【文献】特開2007-062879(JP,A)
【文献】実開平03-031956(JP,U)
【文献】特開2006-148259(JP,A)
【文献】特開2015-027070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/36
B65H 5/38
B65H 29/52
G03G 15/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送手段と、
前記シートが搬送される搬送経路に沿って配置された構造体と、
前記構造体に対して前記シートを通過させる隙間をあけて配置された円弧状の外周面を有する対向部材と、
前記対向部材のシート搬送方向下流側で前記シートの前記対向部材側の面をガイドするガイド部材と、
を備えるシート搬送装置において、
前記ガイド部材のシート搬送方向上流側の端部は、前記対向部材と前記構造体との間の隙間が最も狭くなる前記構造体の位置から、前記対向部材の外周面と接するようにシート搬送方向下流側に延ばした仮想直線よりも、前記対向部材側に配置され
、
前記シートは、先端部が曲げられたシートであって、
前記対向部材と前記構造体との間の隙間が最も狭くなる前記構造体の位置から、前記ガイド部材のシート搬送方向上流側の端部までの距離を、前記曲げられた先端部の長さよりも短く設定したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
シートを搬送する搬送手段と、
前記シートが搬送される搬送経路に沿って配置された構造体と、
前記構造体に対して前記シートを通過させる隙間をあけて配置された円弧状の外周面を有する対向部材と、
前記対向部材のシート搬送方向下流側で前記シートの前記対向部材側の面をガイドするガイド部材と、
を備えるシート搬送装置において、
前記ガイド部材のシート搬送方向上流側の端部は、前記対向部材と前記構造体との間の隙間が最も狭くなる前記構造体の位置から、前記対向部材の外周面と接するようにシート搬送方向下流側に延ばした仮想直線よりも、前記対向部材側に配置され、
シート搬送面と交差する方向における、前記ガイド部材と前記構造体との間の距離を、前記シートの曲げられた先端部の長さよりも短く設定したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
シート搬送面と交差する方向における、前記ガイド部材と前記構造体との間の距離を、前記シートの曲げられた先端部の長さよりも短く設定した請求項
1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、そのシート搬送方向上流側の端部に向かって前記構造体側から離れるように傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面の傾斜角度を90°以下とした請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
原稿を搬送する原稿搬送装置と、
前記原稿搬送装置によって搬送される原稿の画像情報を読み取る画像読取手段と、
を備える画像読取装置において、
前記原稿搬送装置として、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
前記画像読取手段は、前記原稿の裏面の画像情報を読み取るように配置されている請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像情報に基づいて、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置、これを備える画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送するシート搬送装置として、例えば、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿を搬送する原稿搬送装置が知られている。
【0003】
近年、画像読取装置においては、省スペース化のために、CIS(Contact Image Sensor)などの読取センサが用いられることが多くなってきている。この種の読取センサは焦点深度が浅いため、原稿が読取センサから離れすぎないようにするために、読取センサと対向する位置にローラなどの円弧状の外周面を有する対向部材を配置し、この対向部材によって原稿と読取センサとの間の間隔を管理している(下記特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原稿搬送装置によって搬送される原稿には、先端部が折れ曲がっていたり、カールしていたりするものが存在する。このような折れやカールなどがある原稿が搬送されると、
図12に示すように、まず、原稿Sは、対向部材100の外周面に沿って案内されることで、先端部の曲げは一旦延ばされる。しかしながら、原稿Sの先端部が対向部材100と読取センサ200との隙間が最小となる位置Cを通過すると、
図13に示すように、原稿Sの先端部はその復帰力により再び曲げられるため、曲げられた先端部が対向部材100と下流側のガイド部材300との間に侵入してしまうことがある。これにより、原稿の詰まりが発生するなど、原稿を良好に搬送することができない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、シートを搬送する搬送手段と、前記シートが搬送される搬送経路に沿って配置された構造体と、前記構造体に対して前記シートを通過させる隙間をあけて配置された円弧状の外周面を有する対向部材と、前記対向部材のシート搬送方向下流側で前記シートの前記対向部材側の面をガイドするガイド部材と、を備えるシート搬送装置において、前記ガイド部材のシート搬送方向上流側の端部は、前記対向部材と前記構造体との間の隙間が最も狭くなる前記構造体の位置から、前記対向部材の外周面と接するようにシート搬送方向下流側に延ばした仮想直線よりも、前記対向部材側に配置され、前記シートは、先端部が曲げられたシートであって、前記対向部材と前記構造体との間の隙間が最も狭くなる前記構造体の位置から、前記ガイド部材のシート搬送方向上流側の端部までの距離を、前記曲げられた先端部の長さよりも短く設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、対抗部材とガイド部材との間にシートの先端部が侵入するのを抑制することができ、シート搬送を良好に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る画像読取装置を備える画像形成装置の実施の一形態を示す図である。
【
図4】第2原稿読取装置及びその周辺構造を拡大して示す図である。
【
図5】原稿搬送経路の一部が開放された状態を示す図である。
【
図6】原稿の曲げ位置が画像読取位置を通過する前の原稿の挙動を示す図である。
【
図7】原稿の曲げ位置が画像読取位置に達したときの原稿の挙動を示す図である。
【
図8】原稿の曲げ位置が画像読取位置を通過した後の原稿の挙動を示す図である。
【
図9】画像読取位置から下ガイド板の上流端部までの距離と、原稿の曲げられた先端部の長さとの関係を説明するための図である。
【
図10】下ガイド板のガイド面と第2読取部との間の距離と、原稿の曲げられた先端部の長さとの関係を説明するための図である。
【
図12】従来の構成における原稿の挙動を示す図である。
【
図13】従来の構成における原稿の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明に係る画像読取装置を備える画像形成装置の実施の一形態を示す図である。
【0010】
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式のカラーレーザプリンタである。なお、本発明は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいは、これらのいずれか2つ又は3つの機能を備える複合機であってもよい。また、カラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置であってもよい。作像方式としては、電子写真方式のほか、インクジェット方式などを用いることも可能である。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置1は、画像読取装置2と、画像形成部3と、給紙部4とを備えている。
【0012】
給紙部4には、複数の給紙カセット5が設けられている。各給紙カセット5には、記録媒体としての用紙が収容されている。また、給紙部4には、各給紙カセット5から用紙を送り出す送出ローラ6と、送り出された用紙を分離して給紙路7に供給する分離ローラ8と、給紙路7で用紙を搬送する搬送ローラ9とが設けられている。
【0013】
画像形成部3には、4つの作像ユニット10K,10Y,10M,10Cと、光書込装置11と、転写装置12と、タイミングローラ対13と、定着装置14と、排紙ローラ対15とが設けられている。
【0014】
4つの作像ユニット10K,10Y,10M,10Cは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。具体的には、各作像ユニット10K,10Y,10M,10Cは、像担持体としてのドラム状の感光体16と、感光体16の表面を帯電する帯電装置17と、感光体16の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置18と、感光体16の表面をクリーニングするクリーニング装置19等で構成されている。なお、
図1では、ブラックの画像を形成する作像ユニット10Kについてのみ、感光体16、帯電装置17、現像装置18、クリーニング装置19の符号を付しており、その他の作像ユニット10Y,10M,10Cについては符号を省略している。
【0015】
転写装置12は、複数のローラによって張架された無端状の中間転写ベルト20と、各感光体16上のトナー画像を中間転写ベルト20へ転写する4つの一次転写ローラ21と、中間転写ベルト20上に転写されたトナー画像を用紙へ転写する二次転写ローラ22等で構成されている。
【0016】
画像読取装置2は、原稿を搬送するシート搬送装置としての原稿搬送装置23と、搬送される原稿の画像情報を読み取る画像読取手段としての画像読取部24とを備えている。なお、画像読取装置2は、画像形成装置1に搭載されたものではなく、画像形成装置1とは離れた別の場所に設置され、有線又は無線によって画像形成装置1との間で通信可能なものであってもよい。
【0017】
図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット10K,10Y,10M,10Cにおいて、感光体16が回転駆動され、帯電装置17によって感光体16の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、画像読取装置2によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、光書込装置11が各感光体16の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置18からトナーが供給され、各感光体16上にトナー画像が形成される。
【0019】
各感光体16上に形成されたトナー画像は、各感光体16の回転に伴って一次転写ローラ21の位置(一次転写ニップ)に達すると、回転駆動する中間転写ベルト20に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト20上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写ローラ22の位置(二次転写ニップ)へ搬送され、用紙に転写される。この用紙は、給紙部4から供給されたものである。給紙部4から供給された用紙は、タイミングローラ対13によって一旦停止された後、中間転写ベルト20上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて搬送される。かくして、用紙上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体16上に残留するトナーは各クリーニング装置19によって除去される。
【0020】
トナー画像が転写された用紙は、定着装置14へと搬送され、定着装置14によって用紙にトナー画像が定着される。その後、用紙は排紙ローラ対15によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
次に、
図2に基づき、画像読取部24について詳しく説明する。
【0022】
図2に示すように、画像読取部24は、光源及びミラー部材を搭載した第1キャリッジ31と、ミラー部材を搭載した第2キャリッジ32と、結像レンズ33と、撮像部34とを備えている。これらの各構成部材は、画像読取部24の本体フレーム24aの内部にそれぞれ配置されている。また、画像読取部24の本体フレーム24aには、スリットガラス35と、プラテンガラス36とが設けられている。スリットガラス35とプラテンガラス36との間には、プラテンガラス36に載置した固定原稿を突き当てて位置決めする突当部材37が設けられている。
【0023】
第1キャリッジ31及び第2キャリッジ32は、副走査方向(
図2中、左右方向)に往復移動可能に構成されている。ここで、これら第1キャリッジ31及び第2キャリッジ32は、例えば、2:1の速度比で副走査方向に移動する。このような移動速度の関係により、第1キャリッジ31及び第2キャリッジ32の移動があっても、原稿面から結像レンズ33に至る光路長が変化しないようになっている。
【0024】
第1キャリッジ31は、光源38aと、第1ミラー部材38bとを有する。また、第2キャリッジ32は、第2ミラー部材39aと、第3ミラー部材39bとを有する。
【0025】
結像レンズ33は、各ミラー部材38b,39a,39bを介して入射された原稿からの反射光を撮像部34に集光結像する。撮像部34は、CCD等の撮像素子で構成され、結像レンズ33を介して結像された原稿の反射光像を光電変換して読取画像であるアナログ画像信号を出力する。
【0026】
原稿搬送装置23によって搬送される原稿(移動原稿)の表面画像を読み取る場合は、第1キャリッジ31をスリットガラス35の直下の画像読取位置(
図2中、実線で示す位置)に移動し、停止させる。
【0027】
そして、原稿搬送装置23によって原稿がスリットガラス35上に搬送され、第1キャリッジ31がスリットガラス35上を通過中の原稿に向かって光源からの照明光を照射する。スリットガラス35を透過して原稿で反射した反射光は、第1キャリッジ31及び第2キャリッジ32に搭載された各ミラー部材を経由して結像レンズ33により撮像部34に結像して読取画像(画像情報)として読み取らせる。そして、撮像部34によって読み取られた読取画像は、光書込装置11に出力される。
【0028】
一方、突当部材37に突き当てた状態でプラテンガラス36上に載置された原稿(固定原稿)を読み取る場合は、第1キャリッジ31及び第2キャリッジ32を、
図2において左右方向(副走査方向)に移動させる。そして、各キャリッジ31,32を移動させる過程で、光源により固定原稿に光を照射し、各キャリッジ31,32に搭載された各ミラー部材により固定原稿からの反射光を折り返す。その反射光は、結像レンズ33により結像して撮像部34で読み取らせる。そして、上記移動原稿の場合と同様に、読み取られた読取画像は、光書込装置11に出力される。
【0029】
続いて、
図3に基づき、原稿搬送装置23について詳しく説明する。
なお、以下の原稿搬送装置23に関する説明において、原稿搬送方向下流側を「下流側」と称し、原稿搬送方向上流側を「上流側」と称することにする。
【0030】
図3に示すように、原稿搬送装置23は、原稿Sを載置する原稿載置台としての原稿トレイ41と、各種ローラ等からなる原稿搬送部42と、画像読み取り後の原稿Sを集積する排紙トレイ43とを備えている。
【0031】
原稿トレイ41は、原稿搬送部42側を原稿Sの先端側として、その先端側が下方、その後端側が上方となるように上向き傾斜して配置されている。原稿トレイ41は、先端側原稿トレイ41Aと後端側原稿トレイ41Bとで分割されており、先端側原稿トレイ41Aは軸41Cを回動中心として原稿Sの束厚に応じて先端が下方に傾くようになっている。原稿トレイ41は、原稿搬送部42に向かう原稿Sの給紙方向と直行する左右方向を位置決めするサイドガイド板44を有している。
【0032】
サイドガイド板44は、原稿トレイ41と原稿Sの幅方向の中心を一致させるように相対的に接近・離間可能な一対のもの、又は、原稿トレイ41の一方の縁部側に原稿Sの一方の縁部を当接させて他方の縁部側のみを移動可能に配置したもののいずれでもよい。
【0033】
原稿搬送部42は、少なくともその上方を開閉可能としたカバー45によって覆われている。カバー45は、原稿Sの先端がカバー内部に臨むように給紙口45aを有している。カバー45は、給紙口45aよりも内部に先端側原稿トレイ41Aの先端が位置するように、先端側原稿トレイ41Aの先端の上方を覆っている。原稿搬送部42は、給紙口45aから排紙トレイ43の上方の排紙口45bに至る範囲をカバー45等に形成されたリブ等によって原稿搬送経路46を形成している。
【0034】
また、原稿搬送装置23は、原稿Sの原稿搬送方向を基準として給紙口45a側の上流端であって先端側原稿トレイ41Aの先端上部に、原稿Sの載置により回動するセットフィラー47と、セットフィラー47の先端部の移動軌跡上の最下部を検知することによって、原稿トレイ41に原稿Sが載置されたか否かを検知する原稿セットセンサ72と、給紙口45aよりも内側の近傍に配置されたピックアップローラ48と、原稿搬送経路46を挟んで対向するように配置された給紙ベルト49及びリバースローラ50とを備えている。
【0035】
ピックアップローラ48は、接触位置において原稿トレイ41に積載された原稿Sのうち、最上位側から数枚(理想的には1枚)の原稿Sをピックアップする。
【0036】
給紙ベルト49は、原稿給送方向に沿って回動移動する。リバースローラ50は、複数枚の原稿Sが重送されようとした場合に、給紙ベルト49の回動移動方向に対して逆方向に回転することにより、原稿Sの重送を抑制する。
【0037】
また、先端側原稿トレイ41Aの先端の下方には、原稿トレイ41に原稿Sが載置されていない状態、すなわち、先端側原稿トレイ41Aにピックアップローラ48が直接接触している状態をホームポジションとして検知するホームポジションセンサ73が設けられている。
【0038】
原稿搬送部42は、原稿Sを搬送する搬送手段としての複数の搬送ローラ対51~55を有する。なお、これら搬送ローラ対51~55の配置数や配置場所は、例えば、原稿搬送経路46の経路設計や、原稿搬送装置23が許容する原稿Sの最小サイズの原稿搬送方向の長さ等に応じて任意である。
【0039】
なお、給紙ベルト49の下流側に隣接して配置した搬送ローラ対51は、ピックアップローラ48の駆動タイミングに応じて、給紙した原稿Sの先端を突き当ててスキュー搬送を補正し、補正後の原稿Sを引き出し搬送する先端整合機能を有する。
【0040】
原稿搬送部42は、スリットガラス35の上方に対向するように配置して原稿Sの画像を読み取らせる第1読取ローラ56と、排紙口45bよりも上流側直前に配置して原稿Sを排紙口45bから排紙トレイ43に向けて排出する排紙ローラ対57とを有する。
【0041】
第1読取ローラ56は、コイルスプリング等の付勢部材を用いてスリットガラス35に向けて付勢されており、原稿Sを搬送しつつ、その原稿Sをスリットガラス35に密着させる。
【0042】
第1読取ローラ56よりも下流側に配置された二対の搬送ローラ対54,55の間には、原稿Sの裏面画像を読み取る第2原稿読取装置58が配置されている。
【0043】
第2原稿読取装置58は、原稿Sの裏面画像を読み取る画像読取手段としての第2読取部59と、原稿搬送経路46を挟んで第2読取部59に対向するよう配置された対向部材としての第2読取ローラ60と、第2読取ローラ60の端部を支持する軸受61とを有している。
【0044】
第2読取部59は、密着型のイメージセンサ(CIS)で構成されており、原稿Sの表面画像を上記画像読取部24の撮像部34で読み取った後の原稿Sの裏面画像を読み取る。
【0045】
第2読取ローラ60は、第2読取部59における原稿Sの浮きを抑えると同時に、第2読取部59におけるシェーディングデータを取得するための白色基準部を兼ねている。第2読取ローラ60は、原稿サイズによって読取画質が変化しないように、原稿の幅よりも長く形成されている。第2読取ローラ60は、万一、ごみやキズなどで外周面(白色基準部)が汚れたとしても、第2読取ローラ60が回転しながらシェーディングデータを取得するため、異なる位置でのシェーディングデータを複数取得可能であり、安定したシェーディングデータが取得可能である。なお、原稿Sの裏面画像の読み取りを行わない場合には、原稿Sは第2読取部59を素通りするようになっている。
【0046】
軸受61は、第2読取部59と原稿Sとの距離に関して、画像品質を損なわない焦点深度に合わせ、第2読取部59が原稿Sの画像を読み取ることができる適切な距離である読取可能距離を保つように構成されている。
【0047】
また、原稿搬送部42には、給紙適正位置センサ74、突当センサ75、原稿幅センサ76、読取入口センサ77、レジストセンサ78、排紙センサ79を、原稿Sの搬送方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
【0048】
給紙適正位置センサ74は、先端側原稿トレイ41Aの先端部の上方に配置され、原稿搬送経路46で搬送中の原稿Sの有無を検知する。給紙適正位置センサ74は、原稿載置面に載置された原稿Sの給送方向前端部が適切な高さである給紙適正位置に保持されているかを検知する。
【0049】
突当センサ75は、給紙ベルト49とその1つ下流側の搬送ローラ対51との間に配置されている。突当センサ75が原稿Sの先端及び後端を検知したときに、その搬送距離に対応するモータパルスから原稿Sの搬送方向の長さが判定される。
【0050】
原稿幅センサ76は、上流側から1番目と2番目の搬送ローラ対51,52の間に配置されている。原稿幅センサ76は、原稿Sの幅方向に沿って複数並べた発光素子と、この発光素子と原稿搬送経路46を挟んで対向位置に配置した受光素子とを有している。受光素子の検知結果に基づいて原稿Sの幅が判定される。
【0051】
読取入口センサ77は、上流側から2番目と3番目の搬送ローラ対52,53の間に配置され、レジストセンサ78は、3番目と4番目の搬送ローラ対53,54の間に配置され、排紙センサ79は、4番目の搬送ローラ対54と第2読取部59との間に配置されている。これらのセンサ77,78,79は、原稿Sの搬送距離や搬送速度等の搬送制御用、並びにジャム検知用等に用いられる。
【0052】
図4は、第2原稿読取装置58及びその周辺構造を拡大して示す図である。
【0053】
図4に示すように、第2原稿読取装置58においては、原稿搬送経路46を境界として下側部分が、回転軸63を中心に上下方向に揺動する可動ユニット80として一体的に構成されている。具体的に、可動ユニット80は、第2読取ローラ60と、4番目と5番目の搬送ローラ対54,55及び排紙ローラ対57の各下ローラ54b,55b,57bと、原稿の表側の面(第2読取ローラ60側の面)をガイドするガイド部材としての複数の下ガイド板64b,65bと、第2読取ローラ60の軸60aを支持する軸受61と、第2読取ローラ60を第2読取部59に接近させる方向に付勢する付勢部材としてのスプリング66とを備えている。これらは、可動ユニット80のユニットフレーム80aに一体的に設けられている。
【0054】
可動ユニット80を、回転軸63を中心に下向きに回転させると、
図5に示すように、第2読取ローラ60、下ローラ54b,55b,57b及び下ガイド板64b,65bは、それぞれ対向する第2読取部59の読取面59a、各上ローラ54a,55a,57a及び各上ガイド板64a,65aから遠ざかり、原稿搬送経路46の一部を開放する。また、このとき、第2原稿読取装置58は、プラテンガラス36から離れた開放状態となっている。
【0055】
このような可動ユニット80の開放動作は、ゴミや紙粉などの異物が第2読取部59の読取面59aに付着した場合や、原稿搬送経路46に原稿ジャムが発生した場合等に、ユーザにより適宜行われる。ユーザが可動ユニット80を開放状態にすることで、読取面59aを含む原稿搬送経路46の一部が開放され、読取面59aの清掃やジャム処理を容易に行うことができるようになる。
【0056】
読取面59aの清掃やジャム処理を終えた後は、
図5に示す状態から、可動ユニット80を上向きに回転させる閉鎖動作を行うことで、第2読取ローラ60、下ローラ54b,55b,57b及び下ガイド板64b,65bが、第2読取部59の読取面59a、各上ローラ54a,55a,57a及び各上ガイド板64a,65aに対して接近又は接触する位置(
図4に示す位置)に配置される。このとき、第2読取ローラ60は、スプリング66の付勢力によって第2読取部59側へ付勢され、軸受61が第2読取部59に対して接触することで、読取面59aに対して適切な読取可能距離で保持される。
【0057】
ところで、
図5に示すように、原稿搬送経路46の一部が開放された開放状態では、第2読取ローラ60がスプリング66の付勢力により、第2読取ローラ60の下流側に配置されている下ガイド板65bに対して接触した状態で保持されている。一方、
図4に示すように、原稿搬送経路46が閉鎖された閉鎖状態では、第2読取ローラ60を支持する軸受61が第2読取部59に対して接触することで、第2読取ローラ60の位置が変位するため、第2読取ローラ60と下流側の下ガイド板65bの上流端との間に隙間が生じる。従って、万が一、この隙間に原稿の先端部が侵入した場合は、原稿ジャムなどの不具合が発生する虞がある。特に、原稿の先端部が折り曲げられている場合、その先端部の曲げ方向が隙間の方向を向くように原稿が搬送されると、原稿の先端部が隙間に侵入する可能性が高くなる。
【0058】
そこで、本実施形態においては、このような折れ曲げられた原稿の先端部の侵入を抑制できるように、次のような対策を講じている。
【0059】
まず、搬送される原稿の挙動について説明する。
図6に示すように、先端部Aが曲げられた原稿Sが、第2読取ローラ60と第2読取部59との間に搬送されると、原稿Sが第2読取ローラ60の外周面に沿って案内されることで、先端部Aの曲げは一旦延ばされる。このように、曲げが延ばされた状態は、先端部Aの曲げ位置Bが、第2読取ローラ60と第2読取部59との間の幅が最も狭くなる画像読取位置Cを通過するまで継続される。なお、この画像読取位置Cは、第2読取部59の光軸59bの位置に相当し、第2読取部59による画像情報の読取が行われる位置である。
【0060】
その後、
図7に示すように、曲げ位置Bが画像読取位置Cに達すると、原稿Sの曲げが復帰し始める。ここで、曲げの復帰が開始されたときの原稿Sの先端部Aの位置は、画像読取位置Cから第2読取ローラ60の外周面と接するように下流側に延ばした仮想直線Lと重なるような位置になる。
【0061】
従って、このような原稿Sの先端部Aの挙動から鑑み、原稿Sの先端部Aが第2読取ローラ60と下ガイド板65bとの間の隙間に侵入するのを抑制するには、少なくとも曲げの復帰が開始される時点で下ガイド板65bが原稿Sの先端部Aを受けることができるようにする必要がある。そのため、本実施形態では、
図7に示すように、下ガイド板65bの上流端部650を、曲げの復帰開始位置、すなわち、上記仮想直線Lよりも第2読取ローラ60側に配置している。
【0062】
これにより、原稿Sの曲げ位置Bが画像読取位置Cに達し、曲げの復帰が開始されても、原稿Sの先端部Aを下ガイド板65bに接触させることができ、原稿Sの先端部Aが下ガイド板65bと第2読取ローラ60との間の隙間に侵入するのを抑制することができる。
【0063】
また、
図8に示すように、曲げ位置Bが画像読取位置Cを通過した後は、さらに曲げが復帰される傾向にあるが、下ガイド板65bに対する原稿の接触位置は、上記仮想接線Lと下ガイド板65bとの交点Dよりも下流側になるので、原稿Sは第2読取ローラ60との間の隙間に侵入することなく搬送される。
【0064】
このように、本実施形態においては、下ガイド板65bの上流端部650を、曲げの復帰開始位置(仮想直線L)よりも第2読取ローラ60側に配置することで、先端部Aが曲げられた原稿Sが搬送された場合であっても、第2読取ローラ60との間の隙間に原稿Sが侵入するのを抑制することができ、原稿ジャム(詰まり)が発生したり、原稿搬送不良が発生したりするのを回避することができる。
【0065】
また、
図9に示すように、画像読取位置Cから下ガイド板65bの上流端部650までの距離Mは、原稿Sの曲げられた先端部Aの長さ(搬送方向に延びる辺の長さ)Nよりも短く設定されていることが望ましい。このように設定することで、第2読取ローラ60と下ガイド板65bとの隙間に原稿Sがより一層侵入しにくくなる。
【0066】
例えば、原稿が画像形成装置1に装着できる綴じ装置によってステープル綴じ処理された場合は、原稿の端部から4mmの位置に綴じ処理がなされ、一般的にも原稿の端部から4~6mmの位置に綴じ処理がなされているため、ステープル綴じ処理された位置を基準に折り目が形成されると、原稿Sの曲げられた先端部Aの長さNは通常4~6mmになる。従って、このようなステープル処理された原稿Sの紙詰まり対策としては、画像読取位置Cから下ガイド板65bの上流端部650まで距離Mを、ステープル綴じ位置の4mmより短く設定することで、第2読取ローラ60との間の隙間への原稿Sの侵入を効果的に抑制することが可能となる。なお、本発明は、ステープル綴じ処理された位置に折り目が形成された原稿に限らず、それ以外の理由で折り目が形成されたものや、カールが生じたものなどを搬送する場合においても適用可能である。
【0067】
また、
図10に示すように、原稿搬送面(シート搬送面)と交差する方向における、下ガイド板65bのガイド面と第2読取部59との間の距離Tは、原稿Sの曲げられた先端部Aの長さ(搬送方向に延びる辺の長さ)Nよりも短く設定されていることが望ましい。このように設定することで、曲げを延ばした状態で原稿Sをガイドすることができ、原稿Sを円滑に搬送することができる。
【0068】
本実施形態では、第2読取部59の対向面と平行な下ガイド板65bが、その上流端部650に向かって第2読取部59側から離れるように傾斜する傾斜面651(
図10参照)を有しており、この傾斜面651によって原稿Sの先端を下流側へガイドするようにしている。傾斜面651の傾斜角度θは、任意に設定可能であるが、原稿Sの先端部が第2読取ローラ60と下ガイド板65bとの間の隙間に侵入しにくくなるように、90°以下で、特に傾斜面651の仮想延長線が第2読取ローラ60の軸60aの中心より上方にあることが好ましい。
【0069】
また、本実施形態では、上記可動ユニット80を開放状態にすると、第2読取ローラ60が下ガイド板65bに接触するため(
図5参照)、
図11に示すように、下ガイド板65bの裏側部分に複数のリブ652を設け、下ガイド板65bの強度を向上させることが望ましい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について、画像読取装置に用いられる原稿搬送装置を例に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、給紙カセットから送り出される用紙(記録媒体)を搬送するシート搬送装置など、原稿以外のシートを搬送するシート搬送装置にも広く適用が可能である。また、第2読取部59以外の構造物とこれに対向する対向部材との間にシートを搬送する装置であってもよい。従って、本発明は、シートを搬送する搬送手段と、シートが搬送される搬送経路に沿って配置された構造体と、構造体に対してシートを通過させる隙間をあけて配置された円弧状の外周面を有する対向部材と、対向部材のシート搬送方向下流側でシートの対向部材側の面をガイドするガイド部材と、を備えるシート搬送装置であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 画像形成装置
2 画像読取装置
3 画像形成部
23 原稿搬送装置(シート搬送装置)
24 画像読取部
46 原稿搬送経路
51 搬送ローラ対(搬送手段)
52 搬送ローラ対(搬送手段)
53 搬送ローラ対(搬送手段)
54 搬送ローラ対(搬送手段)
55 搬送ローラ対(搬送手段)
59 第2読取部(構造体、画像読取手段)
60 第2読取ローラ(対向部材)
65b 下ガイド板(ガイド部材)
650 上流端部(シート搬送方向上流側の端部)
651 傾斜面
A 先端部
C 画像読取位置
S 原稿(シート)
θ 傾斜角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】