(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】プロピレンランダム共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 210/06 20060101AFI20220829BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08F210/06
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2020527904
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 KR2019014479
(87)【国際公開番号】W WO2020091420
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133860
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジファ・イェ
(72)【発明者】
【氏名】テジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソプ・ノ
(72)【発明者】
【氏名】ヒクワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ミン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】デヨン・イ
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536357(JP,A)
【文献】特開平10-338778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00;301/00
C08F4/60-4/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記1~5の条件を満足するプロピレンランダム共重合体:
1)分子量分布(Mw/Mn、PDI)が
2.2以下;
2)共単量体の含量が5重量%以下;
3)ASTM D955によって測定した収縮率が1.0%以下;
4)ASTM D790によって測定した曲げ弾性率(Flexural modulus)が13,000kg/cm
2以上
;
5)ASTM D638によって測定した引張強度(Tensile Strength at Yield)が290kg/cm
2以上
;および
6)融点(Tm)が140~150℃。
【請求項2】
前記共単量体は、エチレンまたは1-ブテンである、請求項1に記載のプロピレンランダム共重合体。
【請求項3】
ASTM D256によって測定したアイゾット衝撃強度(Izod impact)が3.5kgcm/cm以上である、請求項1または2に記載のプロピレンランダム共重合体。
【請求項4】
分子量分布が1.5~
2.2である、請求項1から
3のいずれか一項に記載のプロピレンランダム共重合体。
【請求項5】
ASTM D790によって測定した曲げ弾性率(Flexural modulus)が13,000~15,000kg/cm
2である、請求項1から
4のいずれか一項に記載のプロピレンランダム共重合体。
【請求項6】
ASTM D638によって測定した引張強度(Tensile Strength at Yield)が290~310kg/cm
2である、請求項1から
5のいずれか一項に記載のプロピレンランダム共重合体。
【請求項7】
下記化学式1のメタロセン化合物を含む触媒組成物の存在下で、プロピレン単量体および共単量体を共重合させることによって製造される、請求項1から
6のいずれか一項に記載のプロピレンランダム共重合体:
【化1】
上記化学式1中、
Mは、4族遷移金属であり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して互いに同一であるか異なるハロゲンであり、
Aは、ケイ素またはゲルマニウムであり、
R
1~R
2は、それぞれ独立して互いに同一であるか異なり、C
1~20アルキルまたはC
6~20アリールであり、
R
3~R
4はそれぞれ独立して互いに同一であるか異なり、C
2~20アルコキシアルキルで置換されたC
6~20アリールである。
【請求項8】
前記化学式1で表される化合物は、下記構造式で表される化合物のうちのいずれか一つである、請求項
7に記載のプロピレンランダム共重合体:
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年11月2日付韓国特許出願第10-2018-0133860号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、収縮特性および機械的物性に優れたプロピレンランダム共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリプロピレンは、低い比重と高い耐熱性、そして優れた加工性と耐化学性によって従来多様な分野に汎用樹脂として使用されてきた。
【0004】
最近は、透明性が要求される射出成形品製造のために、プロピレンをエチレンまたはブテンとランダム共重合する方法が研究されている。しかし、ランダム共重合されたポリプロピレンは、既存のホモポリプロピレンと比較して、重合体内共単量体であるブテンの含量が増加することによって結晶性が減少し、その結果として剛性と関連した物性である曲げ弾性率が低下する問題があった。
【0005】
一方、ポリプロピレン重合用触媒は、大きくチーグラーナッタ系触媒とメタロセン系触媒に区分することができ、チーグラーナッタ系触媒の場合、活性点が多数混在する多活性点触媒(multi-site catalyst)であるため、重合体の分子量分布が広いことが特徴であり、共単量体の組成分布が均一でなくて所望の物性確保に限界があるという問題点がある。特に、チーグラーナッタ系触媒の存在下で透明性確保のためにブテンとのランダム共重合を行う場合、結晶特性減少によって曲げ弾性率が大きく低下した。
【0006】
反面、メタロセン触媒は、遷移金属化合物が主成分である主触媒とアルミニウムが主成分である有機金属化合物である助触媒との組み合わせからなり、このような触媒は、均一系錯体触媒であって単一活性点触媒(single site catalyst)であり、単一活性点特性によって分子量分布が狭く、共単量体の組成分布が均一な高分子の製造が可能である。また、触媒のリガンド構造変形および重合条件の変更によって高分子の立体規則度、共重合特性、分子量、結晶化度などを変化させることができる。
【0007】
よって、メタロセン系触媒を用いて、高い剛性および曲げ弾性率を有して射出成形に特に有用なポリプロピレンを製造するための方法の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の技術の問題点を解決するために、本発明は、低収縮率および高い曲げ弾性率を有し、薄膜射出(Thin Wall Injection Moulding)に適したプロピレンランダム共重合体を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、下記条件を満足するプロピレンランダム共重合体(Propylene random copolymer)を提供する:
1)分子量分布(Mw/Mn、PDI)が2.4以下;
2)共単量体の含量が10重量%以下;
3)ASTM D955によって測定した収縮率が1.0%以下;
4)ASTM D790によって測定した曲げ弾性率(Flexural modulus)が13,000kg/cm2以上;および
5)ASTM D638によって測定した引張強度(Tensile Strength at Yield)が290kg/cm2以上。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるプロピレンランダム共重合体は、高い剛性および曲げ弾性率と共に低収縮率を示して薄膜射出(Thin Wall Injection Moulding)用製品の製造に有用に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明することに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的としてのみ使用される。
【0012】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0013】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるので、特定実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0014】
以下、本発明のプロピレンランダム共重合体について詳しく説明する。
【0015】
本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、1)分子量分布(Mw/Mn、PDI)が2.4以下;2)共単量体の含量が10重量%以下;3)ASTM D955によって測定した収縮率が1.0%以下;4)ASTM D790によって測定した曲げ弾性率(Flexural modulus)が13,000kg/cm2以上;および5)ASTM D638によって測定した引張強度(Tensile Strength at Yield)が290kg/cm2以上である条件を満足することを特徴とする。
【0016】
チーグラー・ナッタ触媒から製造されるプロピレン(共)重合体は、他のポリオレフィン樹脂に比べて高い収縮特性を示す。射出後、成形収縮率が大きいほど射出製品適用に不利な点を示すので、収縮物性を改善する必要がある。
【0017】
よって、本発明によれば、収縮率が低いながら曲げ弾性率、引張強度、衝撃強度などの機械的物性に優れたプロピレンランダム共重合体を提供することができる。
【0018】
具体的に、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、分子量分布(Mw/Mn、PDI)が2.4以下である。このように狭い分子量分布を有することによって剛性が増加して、各種成形品の製造時、優れた機械的物性を示すことができる。より具体的に、前記プロピレンランダム共重合体は、分子量分布が2.4以下、または2.3以下、または2.2以下、または2.1以下であり、1.5以上、または2.0以上であってもよい。
【0019】
本発明において、分子量分布は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いてプロピレンランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ測定し、分子量分布として数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)を計算した。
【0020】
具体的に、共重合体サンプルをPolymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて評価した。評価温度は160°Cであり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で測定した。サンプルは、10mg/10mLの濃度で調製した後、200μLの量で供給した。ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwおよびMnの値を測定した。ポリスチレン標準品の分子量は、2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0021】
また、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、共重合体総重量に対して10重量%以下の含量で共単量体を含む。
【0022】
従来共単量体を用いてプロピレンランダム共重合体を製造する場合、異種の共単量体が主鎖の間に入って樹脂のラメラ構造を変形させることによって、強度が低下する問題があった。これに対して、本発明では、10重量%以下の含量範囲で共単量体を含むことによって、高い転換率でランダム重合でも狭い分子量分布を示すことができ、また、優れた収縮率と共に改善された強度特性を示すことができる。
【0023】
共単量体の含量制御による強度および収縮率改善効果の優れることを考慮する時、前記プロピレンランダム共重合体内共単量体の含量は0.5重量%以上、または1重量%以上でありながら、10重量%以下、または8重量%以下、または5重量%以下、または4重量%以下であってもよい。
【0024】
また、前記共単量体は、エチレンまたは1-ブテンであってもよい。
【0025】
一方、本発明において、プロピレンランダム共重合体内共単量体の含量は、米国材料試験学会規格ASTM D 5576によって、プロピレンランダム共重合体のフィルムあるいはフィルム形態試片をFT-IR装備のMagnetic holderに固定させた後、IR吸収スペクトルで試片厚さを反映する4800~3500cm-1ピークの高さと1-ブテン成分が示される790~660cm-1ピークの面積をそれぞれ測定し、測定した値を標準(Standard)サンプルの790~660cm-1ピークの面積を4800~3500cm-1ピーク高さで割った値をプロット(Plot)して求めたキャリブレーション(Calibration)式に代入して共単量体含量を計算することができる。また、エチレンの場合、エチレン成分が示される710~760cm-1ピークの面積を測定して計算した。
【0026】
このように発明の一実施形態による前記プロピレンランダム共重合体は、狭い分子量分布を有するため、射出製品に適用時、高い引張強度、曲げ弾性率と共に低い収縮率を示すことができる。
【0027】
また、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、ASTM D955によって測定した収縮率が1.0%以下である。より具体的に、前記プロピレンランダム共重合体は、収縮率が1.0%以下、または0.9%以下、または0.8%以下であり、0.1%以上、または0.2%以上、または0.3%以上であってもよい。
【0028】
前記収縮率は、ASTM D955によって、金型キャビティ(12.7×127×3.2mm)の長さとプロピレンランダム共重合体の射出試片の長さをそれぞれ測定し、金型キャビティ長さに対する変化値を金型キャビティ値で分けて収縮率を計算することができる(収縮率=100×(金型キャビティ長さ-射出試片長さ)/金型キャビティ長さ)。
【0029】
前記のような低い収縮率は、分子量分布と結晶サイズおよび分布を調節することによって実現でき、これにより、薄膜射出用製品製造時、非常に優れた特性を示すことができる。
【0030】
また、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、ASTM D790によって測定した曲げ弾性率(Flexural modulus)が13,000kg/cm2以上である。より具体的に、本発明の一実施形態によるポリオレフィン樹脂の曲げ弾性率は、13,000kg/cm2以上、または13,100kg/cm2以上、または13,200kg/cm2以上、または13,400kg/cm2以上でありながら、15,000kg/cm2以下、または14,500kg/cm2以下、または14,000kg/cm2以下、または13,900kg/cm2以下であってもよい。
【0031】
また、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、ASTM D638によって測定した引張強度(Tensile Strength at Yield)が290kg/cm2以上である。より具体的に、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体の引張強度は290kg/cm2以上、または292kg/cm2以上、または293kg/cm2以上でありながら、320kg/cm2以下、または310kg/cm2以下、または305kg/cm2以下、または300kg/cm2以下であってもよい。
【0032】
また、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、ASTM D256によって測定したアイゾット衝撃強度(Izod impact)が3.5kgcm/cm以上であってもよい。より具体的に、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体のアイゾット衝撃強度は、3.5kgcm/cm以上、または3.55kgcm/cm以上、または3.6kgcm/cm以上でありながら、4.0kgcm/cm以下、または3.9kgcm/cm以下、または3.8kgcm/cm以下、または3.7kgcm/cm以下であってもよい。
【0033】
より具体的に、前記アイゾット衝撃強度は、ASTM D256によって、V型ノッチを有する射出試片をアイゾット衝撃試験器に固定させた後、ノッチ面を振り子(0.461kgf)の衝撃で破断させて、破断に要求されるエネルギーで衝撃強度を測定することができる。
【0034】
また、発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、140℃以上、または141℃以上、または142℃以上でありながら、150℃以下、または148℃以下、または145℃以下の融点(Tm)を有することができる。前記範囲内の融点を有する場合、優れた加工性、および耐熱性を示すことができる。
【0035】
一方、本発明において前記プロピレンランダム共重合体の融点は、共重合体の温度を分当り20℃の速度で200℃まで増加させた後、3分間その温度で維持し、その後、分当り10℃の速度で30℃まで下げた後、3分間その温度で維持し、再び温度を増加させてDSC(示差走査熱量測定、Differential Scanning Calorimeter、TA社製造)曲線の頂上を融点にして測定することができる。融点は、2番目の温度が上昇する区間で測定した結果である。
【0036】
また、本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、ASTM D1238に基づいて230℃、21.6kg荷重で測定された溶融指数(MFR21.6)が約10g/10min以上、または約20g/10min以上、または約30g/10min、または約40g/10min以上でありながら、約100g/10min以下、または約90g/10min以下、または約80g/10min以下、または約70g/10min以下であってもよい。前記溶融指数の範囲は、前記共重合体の用途または適用分野を考慮して適切に調節することができる。
【0037】
前記のように、本発明のプロピレンランダム共重合体は、既存のチーグラー・ナッタ触媒適用ポリプロピレンまたは従来のメタロセン触媒適用ポリプロピレンより非常に向上した収縮率、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率を示すことができる。
【0038】
前記のような物性および構成的特徴を有する発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体は、触媒活性成分として下記化学式1のメタロセン化合物を含む触媒組成物の存在下に、プロピレン単量体および共単量体をランダム共重合させる段階を含む製造方法によって製造することができる。
【0039】
【0040】
上記化学式1中、
Mは、4族遷移金属であり、
X1およびX2は、それぞれ独立して互いに同一であるか異なるハロゲンであり、
Aは、ケイ素またはゲルマニウムであり、
R1~R2は、それぞれ独立して互いに同一であるか異なり、C1~20アルキルまたはC6~20アリールであり、
R3~R4は、それぞれ独立して互いに同一であるか異なり、C2~20アルコキシアルキルで置換されたC6~20アリールである。
【0041】
一方、本明細書で特別な制限がない限り、次の用語は下記のように定義される。
【0042】
ハロゲン(halogen)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であってもよい。
【0043】
C1~20アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であってもよく、さらに好ましく、直鎖または分枝鎖アルキル基であってもよい。具体的に、C1~20アルキル基は、C1~15直鎖アルキル基;C1~10直鎖アルキル基;C1~5直鎖アルキル基;C3~20分枝鎖または環状アルキル基;C3~15分枝鎖または環状アルキル基;またはC3~10分枝鎖または環状アルキル基であってもよい。より具体的に、C1~20のアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基またはシクロヘキシル基などであってもよい。
【0044】
C6~20アリールは、単環、二環、または三環芳香族炭化水素を意味することができる。具体的に、C6~20アリールは、フェニル基、ナフチル基またはアントラセニル基などであってもよい。
【0045】
C2~20アルコキシアルキルは、アルキルの1以上の水素がアルコキシによって置換された置換基を意味することができる。具体的に、C2~20アルコキシアルキルとしては、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ブトキシヘプチル、ブトキシヘキシルなどが挙げられるが、これにのみ限定されるのではない。
【0046】
本発明の一実施形態によるプロピレンランダム共重合体の製造に使用される触媒組成物は、前記化学式1の化合物を単一メタロセン触媒として含む。これにより、従来の2種以上の触媒を混合して使用する場合に比べて製造されるプロピレン共重合体に比べて、分子量分布が顕著に狭くなり得、そのためにプロピレンランダム共重合体の剛性が向上するのを確認することができる。
【0047】
前記化学式1中、Aは、ケイ素であってもよい。
【0048】
また、前記化学式1中、R1およびR2は、溶解度を増大させて担持効率性を改善する側面から互いに同一であり、C1~10アルキル基であってもよく、より具体的には、C1~6直鎖または分枝鎖アルキル、C1~4直鎖または分枝鎖アルキル基、よりさらに具体的には、それぞれメチル、エチル、n-ブチル、tert-ブチルであってもよい。
【0049】
前記化学式1で表されるメタロセン化合物は、インデニル(indenyl)誘導体2つを含み、この二個のインデニル誘導体は架橋基によって連結されているため、構造的に高い安定性を有することができ、担体に担持時にも高い重合活性を示すことができる。
【0050】
また、それぞれのインデニル誘導体の5番炭素位置に酸素供与体(oxygen-donor)としてルイス塩基の役割を果たすことができる官能基を含みながら、バルキーな特性を有する置換基(R3、R4)が置換されているため、立体障害を付与して担持触媒製造時に担持安定性を付与することができる。これにより、前記化学式1で表されるメタロセン化合物を担体に担持してプロピレンランダム共重合体重合用触媒として使用する場合、高い活性および優れたモルフォロジーを示し、加工性および機械的物性に優れた共重合体を製造することができる。
【0051】
また、リガンドである二つのインデニル基の両方とも2番位置は特定的にそれぞれイソプロピル基とメチル基で置換されて、二つのインデニル基が同一な触媒より高い水素反応性を有することができるようにして、低い水素条件でも所望の製品を製造することができる長所を示す。
【0052】
好ましくは、前記R3およびR4は、それぞれ独立してC2~20アルコキシアルキルで置換されたC6~20アリールであり、より具体的に、C2~20アルコキシアルキルで置換されたフェニルであってもよい。より好ましくは、R3およびR4はtert-ブトキシメチルフェニルであってもよいが、これにのみ限定されるのではない。
【0053】
また、前記フェニル基に対するアルコキシアルキル基の置換位置は、インデニル基に結合したR3またはR4位置とパラ位に該当する4番位置であってもよい。
【0054】
また、前記化学式1中、X1およびX2は、それぞれ独立してクロロであってもよい。
【0055】
このような前記化学式1で表される化合物の代表的な例は、次の構造のうちのいずれか一つであってもよい:
【0056】
【0057】
前記化学式1で表されるメタロセン化合物は、知られた有機化合物の合成方法によって製造することができ、後述の実施例によって具体化して記載した。
【0058】
本発明で使用されるメタロセン触媒は、前記化学式1で表されるメタロセン化合物を助触媒化合物と共に担体に担持して担持メタロセン触媒の形態で使用できる。
【0059】
本発明による担持メタロセン触媒において、前記メタロセン化合物を活性化するために担体に共に担持される助触媒としては、13族金属を含む有機金属化合物であって、一般的なメタロセン触媒下にオレフィンを重合する時使用できるものであれば、特に限定されるのではない。
【0060】
具体的に、前記助触媒化合物は、下記化学式3のアルミニウム含有第1助触媒、および下記の化学式4のボレート系第2助触媒のうちの一つ以上を含むことができる。
【0061】
[化学式3]
-[Al(R7)-O-]k-
【0062】
化学式3中、R7はそれぞれ独立してハロゲン、ハロゲン置換または非置換された炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、kは2以上の整数であり、
【0063】
[化学式4]
T+[BG4]-
【0064】
化学式4中、T+は+1価の多原子イオンであり、Bは+3酸化状態のホウ素であり、Gはそれぞれ独立してヒドリド、ジアルキルアミド、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、ハロカルビルおよびハロ-置換されたヒドロカルビルからなる群より選択され、前記Gは20個以下の炭素を有するが、ただ一つ以下の位置でGはハライドである。
【0065】
このような第1および第2助触媒の使用によって重合活性がより向上できる。
【0066】
前記化学式3の第1助触媒は、線形、円形または網状形に繰り返し単位が結合されたアルキルアルミノキサン系化合物であってもよく、このような第1助触媒の具体的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンまたはブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0067】
また、前記化学式4の第2助触媒は、三置換されたアンモニウム塩、またはジアルキルアンモニウム塩、三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物であってもよい。このような第2助触媒の具体的な例としては、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、メチルテトラデシクロオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2級-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートまたはN,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたアンモニウム塩形態のボレート系化合物;ジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩形態のボレート系化合物;またはトリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはトリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換ホスホニウム塩形態のボレート系化合物などが挙げられる。
【0068】
本発明による担持メタロセン触媒において、化学式1で表されるメタロセン化合物に含まれる全体遷移金属対担体の質量比は1:10~1:1,000であってもよい。前記質量比で担体およびメタロセン化合物を含む時、最適の形状を示すことができる。また、助触媒化合物対担体の質量比は1:1~1:100であってもよい。
【0069】
本発明による担持メタロセン触媒において、前記担体としては表面にヒドロキシ基を含有する担体を使用することができ、好ましくは、乾燥されて表面に水分が除去された、反応性の高いヒドロキシ基とシロキサン基を有している担体を使用することができる。
【0070】
例えば、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが使用でき、これらは通常Na2O、K2CO3、BaSO4、およびMg(NO3)2などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有することができる。
【0071】
前記担体の乾燥温度は、200~800℃が好ましく、300~600℃がさらに好ましく、300~400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が200℃未満である場合、水分が過度に多くて表面の水分と助触媒が反応するようになり、800℃を超過する場合には担体表面の気孔が合わせられながら表面積が減り、また、表面にヒドロキシ基が多くなくなり、シロキサン基のみ残るようになって助触媒との反応位置が減少するため好ましくない。
【0072】
前記担体表面のヒドロキシ基量は、0.1~10mmol/gが好ましく、0.5~5mmol/gの時さらに好ましい。前記担体表面に存在するヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件または乾燥条件、例えば温度、時間、真空またはスプレー乾燥などによって調節することができる。
【0073】
前記ヒドロキシ基の量が0.1mmol/g未満であれば、助触媒との反応位置が少なく、10mmol/gを超過すれば、担体粒子表面に存在するヒドロキシ基以外に水分に起因したものである可能性があるため好ましくない。
【0074】
一方、本発明によるプロピレンランダム共重合体は、前述のメタロセン触媒の存在下で、単量体および共単量体を共重合することによって製造することができる。
【0075】
前記重合反応は、一つの連続式スラリー重合反応器、ループスラリー反応器、気相反応器または溶液反応器を用いてプロピレン単量体および共単量体を接触させて共重合して行うことができる。
【0076】
そして、前記重合温度は、約25~約500℃、好ましくは約25~約200℃、より好ましくは約50~約150℃であってもよい。また、重合圧力は約1~約100Kgf/cm2、好ましくは約1~約50Kgf/cm2、より好ましくは約5~約30Kgf/cm2であってもよい。
【0077】
前記担持メタロセン触媒は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体とトルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどの塩素原子で置換された炭化水素溶媒などに溶解するか希釈して注入することができる。ここに使用される溶媒は、少量のアルキルアルミニウム処理することによって触媒毒として作用する少量の水または空気などを除去して使用することが好ましく、助触媒をさらに使用して実施することも可能である。
【0078】
このように、本発明によるプロピレンランダム共重合体は、前述の担持メタロセン触媒を使用して、プロピレンおよび共単量体を共重合して製造することができる。その結果、前記プロピレンランダム共重合体は、狭い分子量分布による優れた剛性と、適切な含量の共単量体含量による優れた機械的物性および収縮率を示すことができる。前記のような物性充足によって、本発明によるプロピレンランダム共重合体は加工性および押出特性が良好で、薄膜射出用製品などに好ましく適用することができる。
【0079】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるのではない。
【実施例】
【0080】
<実施例>
メタロセン化合物の製造実施例
合成例1
ジメチルシリル-(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン-1-イル)(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン-1-イル)ジルコニウムジクロリド(Dimethylsilyl-(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-inden-1-yl)(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-inden-1-yl)zirconium dichloride)の製造
【0081】
【0082】
1段階:1-ブロモ-4-(tert-ブトキシメチル)ベンゼン(1-bromo-4-(tert-butoxymethyl)benzene)合成
【化4】
【0083】
H2SO4(1.47mL)、無水MgSO4(12.9g、107mmol)をCH2Cl2(80mL)に入れて常温で15分間攪拌した。他のフラスコに4-ブロモベンジルアルコール(4-bromobenzyl alcohol)(5.0g、26.7mmol)、t-ブタノール(t-butanol)(12.8mL、134mmol)をCH2Cl2(30mL)に溶かした後に前記混合物を添加した。その後、混合物を常温で一晩攪拌した後、sat.NaHCO3を添加した。無水MgSO4で水分を除去して得られた溶液を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(column chromatography)(E/H=1/20)で精製して1-ブロモ-4-(tert-ブトキシメチル)ベンゼン(1-bromo-4-(tert-butoxymethyl)benzene)5.9g、90%を白い固体として得た。
【0084】
1H NMR(500MHz、CDCl3、7.24ppm):1.28(9H、s)、4.39(2H、s)、7.22(2H、d)、7.44(2H、d)
【0085】
2段階:7-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン(7-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-inden)および7-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン(7-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-indene)合成
【化5】
【0086】
1-ブロモ-4-(tert-ブトキシメチル)ベンゼン(1-bromo-4-(tert-butoxymethyl)benzene)(4.52g、18.6mmol)をアルゴン(Ar)下で無水THF(20mL)に溶かした。温度を-78℃に下げ、n-ブチルリチウム溶液(n-BuLi、2.5M ヘキサン中、8.2mL)を添加した後、常温で30分間攪拌した。温度を再び-78℃に下げ、トリメチルボレート(trimethyl borate)(6.2mL、55.6mmol)を加えた後、常温で一晩攪拌した。反応溶液にsat.NH4Clを加えた後、MTBEで抽出した。無水MgSO4を加えてろ過して水分を除去した。溶液を減圧濃縮した後、追加精製なく、次の反応を行った。
【0087】
前記で得られた化合物と7-ブロモ-2-メチル-1H-インデン(7-bromo-2-methyl-1H-indene)(3.87g、18.6mmol)、Na2CO3(5.91g、55.8mmol)をトルエン(40mL)、H2O(20mL)、EtOH(20mL)混合溶媒に入れて攪拌した。前記溶液にPd(PPh3)4(1.07g、0.93mmol)を入れて90℃で一晩攪拌した。反応が終結した後、MTBEと水を入れて有機層を分離した。無水MgSO4で水分を除去して得られた溶液を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(column chromatography、E/H=1/30)で精製して7-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン(7-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-indene)(2.9g、53%)を得た。
【0088】
1H NMR(500MHz、CDCl3、7.24ppm):1.33(9H、s)、2.14(3H、s)、3.36(2H、s)、4.50(2H、s)、6.53(1H、s)、7.11-7.45(7H、m)
【0089】
同様な合成方法で7-ブロモ-2-メチル-1H-インデン(7-bromo-2-methyl-1H-indene)の代わりに、7-ブロモ-2-イソプロピル-1H-インデン(7-bromo-2-isopropyl-1H-indene)を使用して7-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン(7-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-indene)を得た。
【0090】
3段階:(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン-1-イル)(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン-1-イル)ジメチルシラン((4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-inden-1-yl)(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-inden-1-yl)dimethylsilane)合成
【化6】
【0091】
7-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン(7-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-indene)(2.88g、9.85mmol)をアルゴン(Ar)下でトルエン(18mL)とTHF(2mL)に溶かした。この溶液を-30℃に冷却し、n-BuLi(2.5M ヘキサン中、4.1mL)を徐々に投入した。この温度で約20分間攪拌した後、常温に温度を上げた後、2.5時間攪拌した。この溶液にジクロロジメチルシラン(dichlorodimethysilane)(1.18mL、9.78mmol)を投入して常温で2.5時間攪拌した(反応液A)。
【0092】
また他の反応器に7-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン(7-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-indene)(3.18g、9.85mmol)をアルゴン(Ar)下でトルエン(18mL)とTHF(2mL)に溶かした。この溶液を-30℃に冷却し、n-BuLi(2.5M in hexane、4.1mL)を徐々に投入した。この温度で約20分間攪拌した後、常温に温度を上げた後、2.5時間攪拌した(反応液B)。
【0093】
反応液AにCuCN(44mg、0.49mmol)をアルゴン(Ar)下で投入した後、30分間攪拌した後、反応液Bを-20℃に冷却した後に次いで投入した。12時間常温で攪拌した後、MTBEと水を投入して有機層を分離した。得られた有機層を無水MgSO4で水分を除去し、濃縮後にカラムクロマトグラフィー(column chromatography、hexane)で精製して4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン-1-イル)(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン-1-イル)ジメチルシラン(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-inden-1-yl)(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-inden-1-yl)dimethylsilane)(4.5g)を白い固体として得た。
【0094】
4段階:ジメチルシリル-(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン-1-イル)(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン-1-イル)ジルコニウムジクロリド(Dimethylsilyl-(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-inden-1-yl)(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-inden-1-yl)zirconium dichloride)合成
【化7】
【0095】
(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン-1-イル)(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン-1-イル)ジメチルシラン((4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-inden-1-yl)(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-inden-1-yl)dimethylsilane)(2.1g、3.12mmol)をアルゴン(Ar)下に50mLシュレンクフラスコ(Schlenk flask)に入れ、ジエチルエーテル(diethyl ether)(20mL)を注入して溶かした。温度を-78℃に下げ、n-BuLi(2.5M ヘキサン中、2.7mL)を加えた後、常温で2時間攪拌した。溶媒を真空減圧蒸留してZrCl4(THF)2(1.18g、3.12mmol)をグローブボックス(globe box)で入れ、温度を-78℃に下げた。この混合物にジエチルエーテル(diethyl ether)(20mL)を加えた後、温度を室温に上げて一晩攪拌した。溶媒を減圧蒸留してCH2Cl2に溶かして固体を除去した。溶液を減圧濃縮して得られた固体をトルエン(toluene)、CH2Cl2で洗浄してラセミリッチ(racemic rich)な黄色の固体ジメチルシリル-(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-メチル-1H-インデン-1-イル)(4-(4-tert-ブトキシメチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン-1-イル)ジルコニウムジクロリド(Dimethylsilyl-(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-methyl-1H-inden-1-yl)(4-(4-tert-butoxymethyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-inden-1-yl)zirconium dichloride)(260mg、rac:meso=21/1)を得た。
【0096】
担持触媒の製造実施例
製造例1
シリカ3gをシュレンクフラスコに予め秤量した後、メチルアルミノキサン(MAO)52mmolを入れて90℃で24時間反応させた。沈殿後、上層部は除去し、トルエンで2回にわたって洗浄した。合成例1のメタロセン化合物240μmolをトルエンに溶かした後、70℃で5時間反応させた。反応終了後、沈殿が終わると、上層部溶液は除去し、残った反応生成物をトルエンで洗浄した後、ヘキサンで再度洗浄した後、真空乾燥して固体粒子形態のシリカ担持メタロセン触媒5gを得た。
【0097】
プロピレンランダム共重合体重合実施例
実施例1
プロピレンの含量、エチレンの含量、重合工程条件などを調節して、連続式バルクスラリー重合工程によってプロピレン-エチレン共重合体を製造した。
【0098】
詳しくは、2Lステンレス反応器を約65℃で真空乾燥した後に冷却し、室温でトリエチルアルミニウム(1M、3ml)、水素400ppm、エチレン15g、およびプロピレン(770g)を順次に投入した。その後、約10分間攪拌した後、製造例1で製造したシリカ担持メタロセン触媒0.048gを、トリメチルアルミニウム(TMA)が処方されたヘキサン約20mLに溶かして窒素圧力で反応器に投入した。その後、反応器温度を約70℃まで徐々に昇温した後、約1時間重合した。反応終了後、未反応のプロピレンおよびエチレンはベントおよび乾燥除去した。
【0099】
実施例2
プロピレンの含量、1-ブテンの含量、重合工程条件などを調節して、連続式バルクスラリー重合工程によってプロピレン-ブテン共重合体を製造した。
【0100】
詳しくは、2Lステンレス反応器を約65℃で真空乾燥した後に冷却し、室温でトリエチルアルミニウム(1M、3ml)、水素400ppm、1-ブテン15g、およびプロピレン(770g)を順次に投入した。その後、約10分間攪拌した後、製造例1で製造したシリカ担持メタロセン触媒0.048gを、トリメチルアルミニウム(TMA)が処方されたヘキサン約20mLに溶かして窒素圧力で反応器に投入した。その後、反応器温度を約70℃まで徐々に昇温した後、約1時間重合した。反応終了後、未反応のプロピレンおよび1-ブテンはベントおよび乾燥除去した。
【0101】
比較例1
Total社で商業的に販売するメタロセンランダムプロピレン製品であるLumicene MR60MC2を入手して比較例1とした。
【0102】
比較例2
ロッテケミカル(株)で商業的に販売するチーグラー・ナッタランダムプロピレン製品であるRANPELEN J-560Kを入手して比較例2とした。
【0103】
<実験例>
共重合体の物性評価
前記実施例および比較例で製造した共重合体に対して下記の方法で物性を評価した。
【0104】
(1)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(MWD、polydispersity index)、GPCカーブ:ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、Waters社製造)を用いて重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布(PDI)を計算した。
【0105】
具体的に、共重合体サンプルをPolymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて評価した。評価温度は160°Cであり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で測定した。サンプルは10mg/10mLの濃度で調製した後、200μLの量で供給した。ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwおよびMnの値を測定した。ポリスチレン標準品の分子量は2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0106】
(2)共単量体含量
米国材料試験学会規格ASTM D 5576によって、プロピレンランダム共重合体のフィルムあるいはフィルム形態試片をFT-IR装備のマグネットホルダー(Magnetic holder)に固定させた後、IR吸収スペクトルで試片厚さを反映する4800~3500cm-1ピークの高さと1-ブテン成分が示される790~660cm-1ピークの面積をそれぞれ測定し、測定した値を標準(Standard)サンプルの790~660cm-1ピークの面積を4800~3500cm-1ピーク高さで割った値をプロット(Plot)して求めたキャリブレーション(Calibration)式に代入して共単量体含量を計算した。また、エチレンの場合、エチレン成分が示される710~760cm-1ピークの面積を測定して計算した。
【0107】
(3)収縮率(Shrinkage ratio、%)
ASTM D955によって、金型キャビティ(12.7×127×3.2mm)の長さとプロピレンランダム共重合体の射出試片の長さをそれぞれ測定し、金型キャビティ長さに対する変化値を金型キャビティ値で割って収縮率を計算した。
【0108】
収縮率=100×(金型キャビティ長さ-射出試片長さ)/金型キャビティ長さ
【0109】
(4)引張強度(Tensile Strength at Yield、kg/cm2):ASTM D638に基づいて50mm/minの速度で測定した。
【0110】
(5)曲げ弾性率(Flexural modulus、kg/cm2):ASTM D790で測定した。
【0111】
ASTM D790によって、試片を支持体に載せて固定した後にLoading Noseで28mm/minで荷重を加える時にかかる強度(kg/cm2)を測定した。屈曲力による初期傾き値で剛性(Stiffness)を示す曲げ弾性率(Flexural Modulus)を測定した。
【0112】
(6)融点(Tm、℃)
測定しようとするプロピレンランダム共重合体の温度を分当り20℃にして200℃まで増加させた後、3分間その温度で維持し、その後、分当り10℃で30℃まで下げた後、3分間その温度で維持し、再び温度を増加させてDSC(Differential Scanning Calorimeter、TA社製造)曲線の頂上を融点にして測定した。融点は、2番目温度が上昇する区間で測定した結果である。
【0113】
(7)溶融指数(MFR21.6):測定温度230℃、荷重21.6kgでASTM 1238によって測定した。
【0114】
(8)アイゾット衝撃強度(Izod impact、kgcm/cm)
ASTM D256によって、V型ノッチを有する射出試片をアイゾット衝撃試験器に固定させた後、ノッチ面を振り子(0.461kgf)の衝撃で破断させ、破断に要求されるエネルギーで衝撃強度を測定した。
【0115】
前記結果を下記表1に示した。
【0116】
【0117】
表1を参考にすれば、本発明による実施例1~2のプロピレンランダム共重合体は、2.4以下の分子量分布を示し、1.0%以下の非常に低い収縮率と高い引張強度、および曲げ弾性率など優れた物性を示すことを確認した。
【0118】
従来の商業化したプロピレンランダム共重合体の比較例1および2は、収縮率が1.0%を超過して収縮特性が良くなく、曲げ弾性率も実施例より低いことを確認することができる。