(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】エチレン/アルファ-オレフィン共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 210/16 20060101AFI20220829BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2020552206
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 KR2019005363
(87)【国際公開番号】W WO2019212304
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0052043
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・サム・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】セウン・ホワン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】レ・クン・カク
(72)【発明者】
【氏名】チョン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・チン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】イン・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウン・パク
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-533351(JP,A)
【文献】特表2018-502819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F210/00-210/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記i)からvii)の条件を満たすエチレン/アルファ-オレフィン共重合体:
i)密度:0.85から0.89g/cc、
ii)分子量分布(MWD):1.5から3.0、
iii)粘度:180℃の温度で測定時に6,000cPから40,000cP、
iv)Re×Rc≦1.0、
v)炭素原子1000個当たりの総不飽和官能基の数:0.8個以下、
vi)数平均分子量(Mn):9,000から25,000、及び
vii)ASTM D1238による190℃、2.16kg荷重での溶融指数(MI):200から1,300dg/分、
このとき、Re=kee/kecで、Rc=kcc/kceであり、
keeは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にエチレンが付加される時の成長反応速度定数を示し、kecは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度
定数を示し、kccは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度
定数を示し、kceは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にエチレン単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、
前記アルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンでなる群から選択される1種以上である。
【請求項2】
粘度が180℃の温度で測定時、8,500から35,000cPのものである、請求項1に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項3】
重量平均分子量が17,000から40,000g/molのものである、請求項1又は2に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項4】
Re×Rc値が0.95以下のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項5】
密度が0.860から0.885g/ccのものである、請求項1~4のいずれか一項に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【請求項6】
前記アルファ-オレフィンは、共重合体の総重量に対して0超過99モル%以下の含量で含まれるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年5月4日付韓国特許出願2018-0052043に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、共重合体内の共単量体が均一に存在し、優れた物性的特性を示すエチレン/アルファ-オレフィン共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィン重合触媒系は、チーグラーナッタ及びメタロセン触媒系に分類でき、この二つの高活性触媒系はそれぞれの特徴に合わせて発展してきた。チーグラーナッタ触媒は、50年代に発明されてから既存の商業プロセスに広く適用されてきたが、複数の活性点が混在する多活性点触媒(multi-site catalyst)であるため、重合体の分子量分布が広いことが特徴であり、共単量体の組成分布が均一ではないため所望の物性確保に限界があるという問題点がある。
【0004】
一方、メタロセン触媒は、遷移金属化合物が主成分である主触媒とアルミニウムが主成分である有機金属化合物である助触媒の組み合わせからなり、このような触媒は、均一系錯体触媒であって単一活性点触媒(single site catalyst)であり、単一活性点特性によって分子量分布が狭く、共単量体の組成分布の均一な高分子が得られ、触媒のリガンド構造変形及び重合条件の変更によって高分子の立体規則度、共重合特性、分子量、結晶化度等を変化させることができる特性を有している。
【0005】
米国特許第5,914,289号には、それぞれの担体に担持されたメタロセン触媒を用いて高分子の分子量及び分子量分布を制御する方法が記載されているが、担持触媒製造時に用いられた溶媒の量及び製造時間が多くかかり、用いられるメタロセン触媒を担体にそれぞれ担持させなければならないという煩わしさが伴った。
【0006】
大韓民国特許出願番号第10-2003-0012308号には、担体に二重核メタロセン触媒と単一核メタロセン触媒を活性化剤とともに担持し、反応器内の触媒の組み合わせを変化させつつ重合することで分子量分布を制御する方案を開示している。しかし、このような方法は、それぞれの触媒の特性を同時に具現することに限界があり、また完成された触媒の担体成分でメタロセン触媒部分が遊離されて反応器に汚染(ファウリング;fouling)を誘発する短所がある。
【0007】
一方、直鎖状低密度ポリエチレンは、重合触媒を用いて低圧でエチレンとアルファオレフィンを共重合して製造され、分子量分布が狭く一定長さの短鎖分枝を有し、長鎖分枝がない樹脂である。直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、一般ポリエチレンの特性とともに破断強度と伸び率が高く、引裂強度、落錘衝撃強度等に優れるため、既存の低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンの適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルム等への使用が増加している。
【0008】
ところが、1-ブテン又は1-ヘキセンを共単量体として用いる直鎖状低密度ポリエチレンは、大部分が単一気相反応器又は単一ループスラリー反応器で製造され、1-オクテンを共単量体として用いる工程に比べて生産性は高いが、このような製品もやはり使用触媒技術及び工程技術の限界で、物性が1-オクテン共単量体使用時より著しく劣り、分子量分布が狭いため、加工性が不良であるという問題がある。
【0009】
米国特許第4,935,474号には、2種又はそれ以上のメタロセン化合物が用いられて広い分子量分布を有するポリエチレン製法に対し報告されている。米国特許第6,828,394号には、共単量体の結合性が良いものとそうではないものを混合使用し、加工性に優れて特にフィルム用に適したポリエチレン製造方法に対して報告されている。また、米国特許第6,841,631号、米国特許第6,894,128号には、少なくとも2種のメタルコンパウンドが用いられたメタロセン系触媒として二峰又は多峰分子量分布を有するポリエチレンを製造し、フィルム、ブローモールディング、パイプ等の用途に適用可能であると報告されている。しかし、このような製品は、加工性は改善されたものの、単位粒子内の分子量別の分散状態が均一ではないため、比較的良好な圧出条件においても圧出表面が粗くて物性が安定的ではない問題がある。
【0010】
このような背景において物性と加工性間のバランスのとれたより優れた製品の製造が絶えず要求されており、特に加工性に優れたポリエチレン共重合体の必要性がさらに要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,914,289号
【文献】大韓民国特許出願番号第10-2003-0012308号
【文献】米国特許第4,935,474号
【文献】米国特許第6,828,394号
【文献】米国特許第6,841,631号
【文献】米国特許第6,894,128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このため、本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するためのものであって、分子量分布が狭く、共単量体が均一に存在して優れた物性的特性を示し、特に加工性に優れたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体及びその製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体を含んで優れた加工性及び接着特性を示すホットメルト接着剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、下記i)からiv)の条件を満たすエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を提供する:
i)密度が0.85から0.89g/cc、
ii)分子量分布(MWD):1.5から3.0、
iii)粘度:180℃の温度で測定時に6,000cPから40,000cP、
iv)Re×Rc≦1.0
このとき、Re=kee/kecで、Rc=kcc/kceであり、
keeは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にエチレンが付加される時の成長反応速度定数を示し、kecは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kccは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kceは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にエチレン単量体が付加される時の成長反応速度定数を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、低密度であり、且つ超低分子量を有し、分子量分布が狭いため優れた衝撃強度と機械的物性を示す。また、本発明によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、共単量体が均一に分布されて存在することで優れた構造安定性を有し、これによって多様な温度領域及びせん断率において低い複素粘度(complex viscosity)を示し、したがって優れた加工性を示し得る。
【0016】
これにより、本発明によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体をホットメルト接着剤組成物に適用時、多様な工程条件で共重合体の流れ性又は反応性が比較的一定なため反応効率が向上され得、優れた加工性及び接着特性を有するホットメルト接着剤組成物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態であって、実施例2及び比較例7に対し温度変化による粘度変化を測定した結果を示したグラフである。
【
図2】本発明の一実施形態であって、実施例3及び比較例6に対し温度変化による粘度変化を測定した結果を示したグラフである。
【
図3】本発明の一実施形態であって、実施例2及び比較例7に対し角振動数変化による粘度変化を測定した結果を示したグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態であって、実施例3及び比較例6に対し角振動数変化による粘度変化を測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で用いられる用語は、単に例示的な実施形態等を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、『含む』、『備える』又は『有する』等の用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、又はこれらを組み合わせたもの等の存在又は付加可能性を予め排除しないものとして理解されなければならない。
【0019】
本発明は、多様な変更を加えることができ、複数の形態を有してよいところ、特定の実施形態を例示して以下で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものとして理解されなければならない。
【0020】
1.エチレン/アルファ-オレフィン共重合体
以下、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を詳しく説明する。
本発明の一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、下記i)からiv)の条件を満たす:
i)密度が0.85から0.89g/cc、
ii)分子量分布(MWD):1.5から3.0、
iii)粘度:180℃の温度で測定時に6,000cPから40,000cP、
iv)Re×Rc≦1.0
このとき、Re=kee/kecで、Rc=kcc/kceであり、
keeは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にエチレンが付加される時の成長反応速度定数を示し、kecは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kccは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kceは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にエチレン単量体が付加される時の成長反応速度定数を示す。
【0021】
共重合体間の架橋結合は、二重結合を含むビニルとビニリデンによって起こるが、前記一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、重合時に後述する触媒とともに最適化された含量の水素投入により、アルファ-オレフィン共単量体の混入が均一になってRe×Rc値が前記範囲を満たすようになり、これは、共単量体が重合体内に均一に分布するものであると言える。一般的に周波数による複素粘度(complex viscosity)測定を介してせん断流動化特性を測定できるが、このような共重合体は、複素粘度が特定温度及び角振動数(Angular Frequency)範囲において低く維持されるため、加工性が非常に優れ得る。
【0022】
したがって、本発明は、後述するところのような触媒を用い、重合時に最適含量の水素を投入して前記i)からiv)の条件を同時に満たすようにすることで、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の物性的特性、特に長期特性を大きく改善させることができる。
【0023】
具体的に、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、前記のような物性的要件を満たす条件下で、追加的にASTM D-792によって測定した密度が0.85g/ccから0.89g/ccである。具体的には、前記密度は0.855g/cc以上、又は0.86g/cc以上、又は0.865g/cc以上であり、0.89g/cc以下、又は0.885g/cc以下、又は0.880g/cc以下であってよい。
【0024】
通常オレフィン系重合体の密度は、重合時に用いられる単量体の種類と含量、重合度等の影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含量による影響が大きくて、共単量体の含量が多いほど低密度のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が製造され得、共単量体が共重合体内に導入され得る含量は、触媒の共重合性、すなわち触媒の特性に依存的である。
【0025】
本発明では、特定構造を有する遷移金属化合物を含む触媒組成物の使用として多量の共単量体の導入が可能である。その結果、本発明の一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、前記のような低密度を有し、その結果、優れた加工性を示し得る。より具体的に、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、好ましくは0.860g/ccから0.885g/cc、より好ましくは0.865g/ccから0.880g/ccの密度を有してよく、この場合、密度制御による機械的物性の維持及び衝撃強度の改善効果がより顕著である。
【0026】
また、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、前記の低密度特性を満たす条件下で、180℃で測定した粘度が40,000cP以下である。より具体的に、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の粘度は、37,000cP以下、又は35,000cP以下であってよく、6,000cP以上、又は7,000cP以上、又は8,500cP以上であってよい。
【0027】
また、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、分子量分布(MWD)が1.5から3.0である。具体的に、前記分子量分布は2.5以下であってよく、より具体的に、1.7以上、又は1.8以上、又は1.9以上であり、2.3以下、又は2.1以下、又は2.0以下であってよい。
【0028】
通常2種以上の単量体が重合される場合、分子量分布(MWD;Molecular Weight Distribution)が増加し、その結果、衝撃強度と機械的物性等が減少してブロッキング現象等が起こるようになる。これに対し、本発明では、重合反応時に最適含量の水素を投入することで、製造されるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の分子量及び分子量分布が減少され、その結果、衝撃強度と機械的物性が改善された。
【0029】
一方、本発明において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)で分析されるポリスチレン換算分子量であり、前記分子量分布はMw/Mnの比から計算されてよい。
【0030】
また、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、Re×Rc≦1.0である。このとき、Re=kee/kecであり、Rc=kcc/kceであり、kee、kec、kcc及びkceは先立って定義した通りの成長反応速度の定数を示す。
【0031】
前記kee、kec、kcc及びkceのような成長反応速度の定数は、C13 NMRを用いて単量体の配列を測定して得ることができ、これを介してRe及びRcを計算できる。計算されたRe及びRcの倍の値(Re×Rc)が1.0以下、より具体的に0.95以下の場合、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体が交互共重合体(alternating copolymer)として形成される可能性が大きく、Re及びRcの倍の値(Re×Rc)が1.0を超過する場合には、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体がブロック共重合体(block copolymer)で形成される可能性が大きい。前記用語『交互共重合体』は共重合体を構成する二つの単量体成分(例:A、B)が相互に重合されている形態(例:-A-B-A-B-A-B-A-B-)を意味し、前記用語『ブロック共重合体』は、共重合体内に一つの単量体成分(A)が連続して重合されブロックを形成し、続けて他の単量体成分(B)が連続して重合されブロックを形成する形態(例:-A-A-A-A-B-B-B-B-)を意味する。
【0032】
したがって、本発明の一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、Re及びRcの倍の値(Re×Rc)が1.0以下、より具体的には0.95以下を有することで、アルファ-オレフィン共単量体が連続して重合され、高分子主鎖にバランス良く分布されている交互共重合体であってよい。このように、アルファ-オレフィン共単量体が高分子主鎖にバランス良く分布しているため、優れた構造安定性を示し、また前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体を用いてホットメルト接着剤組成物を製造する時に均一な反応を介して反応効率が向上し、その結果として接着性とともに加工性を改善させることができる。
【0033】
具体的に、本発明の一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体のように、前記条件を満たす場合には加工時に特定範囲の温度及びせん断率内で複素粘度(complex viscosity)の変化が殆どないため、非常に優れた加工性を示し得る。
【0034】
本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、特定製造方法によって製造され、前記のような密度、分子量分布、粘度及びRe×Rc値を特定範囲に満たす共重合体であって、低密度であるとともに超低分子量であり、且つ、共重合体内の共単量体の分布度が均一なエチレン/アルファ-オレフィン共重合体であってよく、これを介して製造されるホットメルト接着剤組成物は、衝撃強度、接着性等の物性が優れ得る。
【0035】
本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が15,000から45,000g/molである超低分子量の重合体であってよい。より具体的に前記重量平均分子量は、17,000g/mol以上、又は19,000g/mol以上であり、40,000g/mol以下、又は37,000g/mol以下、又は35,000g/mol以下であってよい。
【0036】
また、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、数平均分子量(Mn)が5,000から35,000であってよい。より具体的に、前記数平均分子量は、7,000以上、又は8,000以上、又は9,000以上であってよく、30,000以下、又は25,000以下であってよい。
【0037】
これとともに、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、溶融指数(MI)が200から1,300dg/分であってよく、具体的に、前記溶融指数は、400dg/分以上、500dg/分以上であってよく、1,200dg/分以下、1,000dg/分以下であってよい。前記溶融指数(Melt Index、MI)は、ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16Kg荷重)で測定した数値である。
【0038】
前記重量平均分子量と溶融指数が前記範囲を満たすようになる場合、ホットメルト接着剤組成物への適用に好適であり、粘度と連関するため、加工性の顕著な改善を期待できる。すなわち、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の機械的物性及び衝撃強度、そして加工性に影響を及ぼす粘度は、その重合過程で用いられる触媒種とともに触媒使用量を調節することで制御でき、前記の条件とともに粘度範囲を満たすことで、優れた機械的特性を維持しつつも改善された加工性を示し得る。
【0039】
また、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、共重合体内の炭素原子1000個当たりの不飽和官能基数が0.8個以下であってよい。より具体的に、前記不飽和官能基数は、共重合体を構成する炭素原子1000個当たり0.6個以下、又は0.5個以下、又は0.45個以下、又は0.42個以下であり、又は0.41個以下であり、0.1個以上、又は0.20個以上又は0.3個以上であってよい。共重合体内の不飽和官能基数は、製造時に重合温度及び水素投入量の制御を介して可能であるが、本発明によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、前記のように少ない不飽和官能基数を有することで、高温で長期間保管(heat aging)時に変色、分子量及び粘度変化率が小さい優れた長期物性を示し得る。
【0040】
本発明において、共重合体内の不飽和官能基数は、NMR分析結果から計算されてよい。具体的には、共重合体をクロロホルム-d(w/TMS)溶液に溶解させた後、Agilent 500MHz NMR装備を用いて常温で2秒の緩和時間、45゜のパルス角度で16回測定し、1H NMRでTMSピークを0ppmに補正し、0.88ppmで1-オクテン(1-octene)のCH3関連ピーク(triplet)を、そして、1.26ppmでエチレン(ethylene)のCH2関連ピーク(broad singlet)をそれぞれ確認し、CH3ピークの積分値を3に補正して含量を計算し、また、4.5~6.0ppm領域の二重結合の積分値を基準に二重結合個数を計算できる。
【0041】
また、本発明の一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、結晶化温度(Tc)が45℃以上であってよい。より具体的に、前記結晶化温度が50℃以上、又は51℃以上であり、60℃以下、又は58℃以下、又は56℃以下であってよい。このように高い結晶化温度は、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体内の共単量体の均一分布によるものであり、前記の温度範囲を有することで優れた構造安定性を示し得る。
【0042】
また、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、溶融温度(Tm)が60から80℃であってよい。より具体的に、前記溶融温度が65℃以上、又は69℃以上、又は70℃以上であり、75℃以下、又は74.5℃以下、又は74℃以下であってよい。このような温度範囲の溶融温度を有することで優れた熱安定性を示し得る。
【0043】
本発明において、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の結晶化温度及び溶融温度は、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC)を用いて測定してよい。具体的には、共重合体を150℃まで加熱してから5分間維持し、再び20℃まで下げた後、再び温度を増加させる。このとき、温度の上昇速度と下降速度は、それぞれ10℃/分に調節し、二番目の温度が上昇する区間で測定した結果を溶融温度とし、温度を減少させつつ示される区間で測定した結果を結晶化温度とする。
【0044】
また、本発明の一実施形態による前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体において、共単量体である前記アルファ-オレフィン系単量体は、炭素数4から20のオレフィン系単量体であってよい。具体的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、又は1-エイコセン等が挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が用いられてよい。
【0045】
この中でもホットメルト接着剤組成物に適用時、その改善効果が顕著な点を考慮する際に、前記アルファ-オレフィン単量体は、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンであってよく、最も好ましくは1-オクテンであってよい。
【0046】
また、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体において、前記共単量体であるアルファ-オレフィンの含量は、前記の物性的要件を満たす範囲内で適切に選択されてよく、具体的には、0超過99モル%以下、又は10から50モル%であってよい。
【0047】
本発明のまた他の一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、下記i)からvii)の条件を満たすものである。
i)密度が0.85から0.89g/cc、
ii)分子量分布(MWD):1.5から3.0、
iii)粘度:180℃の温度で測定時に6,000cPから40,000cP、
iv)炭素原子1000個当たりの総不飽和官能基の数:0.8個以下、
v)数平均分子量(Mn):9,000から25,000、
vi)ASTM D1238による190℃、2.16kg荷重での溶融指数(MI):200から1,300dg/分、及び
vii)Re×Rc≦1.0
このとき、Re=kee/kecであり、Rc=kcc/kceであり、
keeは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にエチレンが付加される時の成長反応速度定数を示し、kecは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kccは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kceは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にエチレン単量体が付加される時の成長反応速度定数を示す。
【0048】
前記のような共重合体は、前述した通りの効果の具現が可能であり、総不飽和官能基の数が少ないため、長期安定性等の効果改善を期待できる。
【0049】
2.エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造方法
一方、前記のような物性的特徴を有するエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、下記化学式1の遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、水素を45から100cc/分で投入し、エチレン及びアルファ-オレフィン系単量体を重合する段階を含む製造方法によって製造されてよい。これにより、本発明の他の一実施形態によれば、前記のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造方法が提供される:
【化1】
前記化学式1において、R
1は、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアリールアルコキシ;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであり、
R
2aからR
2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;又は炭素数6から20のアリールであり、
R
3は、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミド;又は炭素数6から20のアリールアミド;ハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数3から20のシクロアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数1から20のアルコキシ及び炭素数6から20のアリールでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであり、
R
4からR
9は、それぞれ独立して、水素;シリル;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;又は炭素数1から20のヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであり;前記R
6からR
9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて環を形成してよく、
Qは、Si又はCであり、
Mは、4族の遷移金属であり、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミノ;又は炭素数6から20のアリールアミノである。
【0050】
前記のように化学式1の構造を有する遷移金属化合物を触媒組成物に含み、水素とともにエチレン及びアルファ-オレフィン系共単量体を重合させる場合、前述の通りに低密度でありつつ超低分子量のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を製造でき、このエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は不飽和官能基数が極めて少なく、アルファ-オレフィン共単量体が共重合体内に均一に混入されることで、共重合体の主鎖に結合された分枝鎖が一定となり相対的に低結晶性及び高結晶性の含量が少ないため結晶性分布が均一な共重合体の製造が可能であり、このため低い加工温度でも加工性に優れ得る。
【0051】
前記化学式1における置換基をより具体的に説明すれば、下記の通りである。
前記R1は、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数1から20のアルコキシ;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアリールアルコキシ;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであってよい。
【0052】
具体的に、前記R1は、水素;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数1から12のアルコキシ;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアリールアルコキシ;炭素数7から13のアルキルアリール;又は炭素数7から13のアリールアルキルであってよい。
【0053】
より具体的に、前記R1は、水素又は炭素数1から12のアルキルであってよい。
前記R2aからR2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数1から12のアルコキシ;又はフェニルであってよい。
【0054】
具体的に、前記R2aからR2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数1から12のアルコキシ;又はフェニルであってよい。
【0055】
より具体的に、前記R2aからR2eは、それぞれ独立して、水素;炭素数1から12のアルキル;又は炭素数1から12のアルコキシであってよい。
【0056】
前記R3は、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から13のアルキルアリール;炭素数7から13のアリールアルキル;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から12のアルコキシ及びフェニルでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであってよい。
【0057】
具体的に、前記R3は、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数7から13のアルキルアリール;炭素数7から13のアリールアルキル;フェニル;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から12のアルコキシ及びフェニルでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであってよく、
より具体的に、前記R3は、水素;炭素数1から12のアルキル;又はフェニルであってよい。
【0058】
前記R4からR9は、それぞれ独立して、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであってよい。
【0059】
具体的に、前記R4からR9は、それぞれ独立して、水素;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアルキルアリール;又は炭素数7から13のアリールアルキルであってよい。
【0060】
より具体的に、前記R4及びR5は、それぞれ独立して、水素;又は炭素数1から12のアルキルであってよく、
前記R6からR9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて炭素数5から20の脂肪族環又は炭素数6から20の芳香族環を形成してよく;前記脂肪族環又は芳香族環は、ハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、又は炭素数6から12のアリールで置換されてよい。
【0061】
具体的に、前記R6からR9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて炭素数5から12の脂肪族環又は炭素数6から12の芳香族環を形成してよく;前記脂肪族環又は芳香族環は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、又は炭素数6から12のアリールで置換されてよい。
【0062】
より具体的に、前記R6からR9は、それぞれ独立して水素又はメチルであってよい。
【0063】
また、前記QはSiであってよく、前記MはTiであってよい。
【0064】
前記X1及びX2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアルキルアリール;炭素数7から13のアリールアルキル;炭素数1から13のアルキルアミノ;又は炭素数6から12のアリールアミノであってよい。
【0065】
具体的に、前記X1及びX2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル基;又は炭素数2から12のアルケニルであってよい。
【0066】
より具体的に、前記X1及びX2は、それぞれ独立して水素又は炭素数1から12のアルキルであってよい。
【0067】
前記化学式1の遷移金属化合物は、環状の結合によってベンゾチオフェンが融合されたシクロペンタジエン、及びアミドグループ(N-R1)がQ(Si、C、N又はP)によって安定的に架橋され、4族の遷移金属が配位結合された構造を形成する。前記触媒組成物を用いてオレフィン重合に適用時、高い重合温度でも高活性、高分子量及び高い共重合性等の特徴を有するポリオレフィンを生成することが可能である。
【0068】
さらに、前記化学式1の遷移金属化合物は、アミド基(N-R1)がQ(Si、C、N、P)によって架橋されることにおいて、Qに置換又は非置換されたフェニル基が結合されている構造を有することで、より安定的に架橋され得、遷移金属との配位時に電子的に優れた安定性を有し得る。
【0069】
このような構造を有する遷移金属化合物の場合、前記フェニル基によって共重合性に優れるため、前記化学式1の遷移金属化合物のようなコア構造を有することができない触媒に比べて少ない量の共単量体でも低密度の共重合体を製造でき、これと同時に分子量水準に優れて高温重合が可能なだけでなく、水素を安定的に投入できるという長所を有している。
【0070】
すなわち、本発明では、前記の遷移金属化合物を用いるが、重合反応時に最適化された含量の水素を投入することで、超低分子量と共に狭い分子量分布及び均一な共単量体分布を有するエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を提供でき、前記遷移金属化合物が有する電子的/構造的安定性によって水素の混入が有利であり、このため重合反応において水素により終結反応が均一に発生し、狭い分子量分布を有する超低分子量の共重合体を製造できるという効果を期待できる。
【0071】
さらに具体的に、前記化学式1の化合物の具体的な例としては、下記構造式のうち一つで表される化合物が挙げられるが、本発明がこれらだけに限定されるものではない。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0072】
一方、本発明の一実施形態によるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造において、触媒組成物は、前記化学式1の遷移金属化合物を活性化するために助触媒をさらに含んでよい。
【0073】
前記助触媒は、13族金属を含む有機金属化合物であって、具体的には、下記化学式2の化合物、下記化学式3の化合物、及び下記化学式4の化合物のうち一つ以上を含んでよい。
[化学式2]
R41-[Al(R42)-O]n-R43
【0074】
前記化学式2において、
R41、R42及びR43は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビル基及びハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビル基のうち何れか一つであり、
nは2以上の整数であり、
[化学式3]
D(R44)3
前記化学式3において、Dはアルミニウム又はホウ素であり、
R44は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビル基、及びハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビル基のうち何れか一つであり、
[化学式4]
[L-H]+[Z(A)4]-又は[L]+[Z(A)4]-
前記化学式4において、
Lは、中性又は陽イオン性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、
Zは、13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、炭素数1から20のヒドロカルビル基;炭素数1から20のヒドロカルビルオキシ基;及びこれら置換基の1以上の水素原子が、ハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビルオキシ基及び炭素数1から20のヒドロカルビルシリル基のうち1以上の置換基で置換された置換基のうち何れか一つである。
【0075】
より具体的に、前記化学式2の化合物は、直鎖状、環状又は網状で繰り返し単位が結合されたアルキルアルミノキサン系化合物であってよく、具体的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン又はtert-ブチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0076】
また、前記化学式3の化合物の具体的な例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン又トリブチルボロン等が挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム又はトリイソブチルアルミニウムから選択されてよい。
【0077】
また、前記化学式4の化合物としては、三置換されたアンモニウム塩、又はジアルキルアンモニウム塩、三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物が挙げられる。より具体的な例としては、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、メチルテトラデシルオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2級-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-,テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート又はN,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート等の三置換されたアンモニウム塩形態のボレート系化合物;ジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のジアルキルアンモニウム塩形態のボレート系化合物;又はトリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はトリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物等が挙げられる。
【0078】
このような助触媒の使用により、最終製造されたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の分子量分布がより均一になることで、重合活性が向上され得る。
【0079】
前記助触媒は、前記化学式1の遷移金属化合物の活性化が十分に行われるように適切な含量で用いられてよい。
【0080】
また、前記触媒組成物は、前記化学式1の遷移金属化合物を担体に担持された形態で含んでよい。
【0081】
前記化学式1の遷移金属化合物が担体に担持される場合、遷移金属化合物対担体の重量比は1:10から1:1,000、より具体的には、1:10から1:500であってよい。前記の範囲の重量比で担体及び遷移金属化合物を含む時、最適の形状を示し得る。また、前記助触媒が共に担体に担持される場合、助触媒対担体の重量比は1:1から1:100、より具体的には、1:1から1:50であってよい。前記重量比で助触媒及び担体を含む時、触媒活性を向上させ、また製造される重合体の微細構造を最適化できる。
【0082】
一方、前記担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア又はこれらの混合物等が用いられてよく、又はこれら物質を高温で乾燥し、表面の水分を除去することで表面に反応性が大きいヒドロキシ基又はシロキサン基を含む状態で用いられてもよい。また、前記高温乾燥した担体は、Na2O、K2CO3、BaSO4及びMg(NO3)2等の酸化物、炭酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩の成分をさらに含んでよい。
【0083】
前記担体の乾燥温度は、200から800℃が好ましく、300から600℃がより好ましく、300から400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が200℃未満の場合、水分が多すぎて表面の水分と助触媒が反応するようになり、800℃を超過する場合には、担体表面の気孔が結合して表面積が減り、また表面に多くのヒドロキシ基がなくなってシロキサン基だけ残るようになり、助触媒との反応部位が減少するため好ましくない。
【0084】
また、前記担体表面のヒドロキシ基の量は、0.1から10mmol/gが好ましく、0.5から5mmol/gの時により好ましい。前記担体表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法及び条件又は乾燥条件、例えば、温度、時間、真空又はスプレー乾燥等によって調節できる。
【0085】
一方、前記エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の重合反応は、前記の触媒組成物の存在下に水素を連続的に投入してエチレン及びアルファ-オレフィン系単量体を連続重合させることで行われ得る。
【0086】
このとき、前記水素ガスは、重合初期の遷移金属化合物の急激な反応を抑制し、重合反応を終結する役割をする。このため、このような水素ガスの使用及び使用量の調節によって、超低分子量の狭い分子量分布を有するエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が効果的に製造され得る。
【0087】
前記水素ガスは、45から100cc/分、より具体的には、50から95cc/分で投入されてよい。前記の条件で投入される時、製造されるエチレン/アルファ-オレフィン重合体が本発明における物性特徴を具現できる。もし、水素ガスの含量が45cc/分未満で投入されれば、重合反応の終結が均一に起こらず、所望の物性を有するエチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造が難しくなり得、また100cc/分を超過する場合、終結反応があまりにも早く起こるため、分子量が低すぎるエチレン/アルファ-オレフィン共重合体が製造される恐れがあり、前記範囲が満たす場合には単量体間の反応性比を容易に制御でき、それによりアルファ-オレフィン系共単量体が均一に混入された共重合体が製造され得る。
【0088】
また、前記重合反応は、80から200℃で行われてよいが、前記の水素投入量とともに重合温度を制御することで、エチレン/アルファ-オレフィン共重合体内の不飽和官能基数と単量体反応性の比率をより容易に調節できる。これにより、前記重合反応は、具体的に100から150℃、より具体的には100から140℃であってよい。
【0089】
また、前記重合反応時には、反応器内の水分を除去するための有機アルミニウム化合物がさらに投入され、これの存在下で重合反応が行われてよい。このような有機アルミニウム化合物の具体的な例としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルミニウムジアルキルハイドライド又はアルキルアルミニウムセスキハライド等が挙げられ、これのより具体的な例としては、Al(C2H5)3、Al(C2H5)2H、Al(C3H7)3、Al(C3H7)2H、Al(i-C4H9)2H、Al(C8H17)3、Al(C12H25)3、Al(C2H5)(C12H25)2、Al(i-C4H9)(C12H25)2、Al(i-C4H9)2H、Al(i-C4H9)3、(C2H5)2AlCl、(i-C3H9)2AlCl又は(C2H5)3Al2Cl3等が挙げられる。このような有機アルミニウム化合物は、反応器に連続的に投入されてよく、適切な水分除去のために反応器に投入される反応媒質の1kg当たり約0.1から10モルの比率で投入されてよい。
【0090】
また、重合圧力は、約1から約100Kgf/cm2、好ましくは約1から約50Kgf/cm2、より好ましくは約5から約30Kgf/cm2であってよい。
【0091】
また、担体に担持された形態で遷移金属化合物が用いられる場合、前記遷移金属化合物は、炭素数5から12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、及びこれらの異性体とトルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどの塩素原子で置換された炭化水素溶媒等に溶解するか、希釈後投入されてよい。ここに用いられる溶媒は、少量のアルキルアルミニウム処理することで触媒毒として作用する少量の水又は空気等を除去して用いるのが好ましく、助触媒をさらに用いて実施することも可能である。
【0092】
前記の通りの製造方法によって製造されたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、低密度及び超低分子量とともに狭い分子量分布を有し、同時に重合体内の不飽和官能基数が最小化され、Re×Rc≦1.0の条件を満たす。これにより、優れた物性的特徴、特に優れた長期特性を示し得、ホットメルト接着剤組成物に適用時に接着特性とともに加工性を改善させることができる。
【0093】
これにより、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を含むホットメルト接着剤組成物が提供される。
【0094】
前記ホットメルト接着剤組成物は、前記のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を主成分として含むことを除いては、通常の方法によって製造、用いられてよい。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の理解を深めるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるだけのものであり、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【0096】
[合成例:遷移金属化合物の製造]
段階1:リガンド化合物(1a-1)の製造
250mLのシュレンクフラスコに1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン10g(1.0eq、49.925mmol)と100mLのTHFを入れ、n-BuLi 22 mL(1.1eq、54.918mmol、2.5M inヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で3時間撹拌した。撹拌したLi-complex THF溶液をジクロロ(メチル)(フェニル)シラン8.1mL(1.0eq、49.925mmol)と70mLのTHFが入っているシュレンクフラスコに-78℃でカニュレーション後、常温で一晩中撹拌した。撹拌してから真空乾燥した後、ヘキサン100mLで抽出した。
【0097】
抽出したクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランヘキサン溶液100mLにt-BuNH
2 42mL(8eq、399.4mmol)を常温で投入した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌してから真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥後に黄色い固体13.36g(68%、dr=1:1)を得た。
【化12】
1H NMR(CDCl
3,500MHz):δ7.93(t,2H),7.79(d,1H),7.71(d,1H),7.60(d,2H),7.48(d,2H),7.40-7.10(m,10H,aromatic),3.62(s,1H), 3.60(s,1H),2.28(s,6H),2.09(s,3H),1.76(s,3H),1.12(s,18H),0.23(s,3H),0.13(s,3H)
【0098】
段階2:遷移金属化合物(1a)の製造
100mLのシュレンクフラスコに前記化学式1a-1のリガンド化合物4.93g(12.575mmol、1.0eq)とトルエン50mL(0.2M)を入れ、n-BuLi 10.3mL(25.779mmol、2.05eq、2.5M inヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後にMeMgBr 12.6mL(37.725mmol、3.0 eq、3.0M inジエチルエーテル)を滴加した後、TiCl4 13.2mL(13.204mmol、1.05eq、1.0M inトルエン)を順に入れて常温で一晩中撹拌した。撹拌してから真空乾燥した後、ヘキサン150 mLで抽出し、50mLまで溶媒を除去してからDME 4mL(37.725mmol、3.0eq)を滴加した後、常温で一晩中撹拌した。再び真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥してから茶色の固体2.23g(38%、dr=1:0.5)を得た。
【化13】
1H NMR(CDCl
3,500MHz):δ7.98(d,1H),7.94(d,1H),7.71(t,6H),7.50~7.30(10H),2.66(s,3H),2.61(s,3H),2.15(s,3H),1.62(s,9H),1.56(s,9H),1.53(s,3H),0.93(s,3H),0.31(s,3H),0.58(s,3H),0.51(s,3H),-0.26(s,3H),-0.39(s,3H)
【0099】
[エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造]
実施例1
1.5Lのオートクレーブ連続工程反応器にヘキサン溶媒(5.0kg/h)と1-オクテン(1.00kg/h)を満たした後、反応器上部の温度を150℃に予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.05mmol/分)、触媒として前記合成例で製造した遷移金属化合物(1a)(0.40μmol/分)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(1.20μmol/分)を同時に反応器へ投入した。次いで、前記オートクレーブ反応器の中にエチレン(0.87kg/h)及び水素ガス(50cc/分)を投入し、89barの圧力及び重合温度125℃で60分以上維持しながら共重合反応を連続進行して共重合体を製造した。
【0100】
次に、残りのエチレンガスを抜き取り、結果として収得された共重合体含有溶液を真空オーブンで12時間以上乾燥した後、収得した共重合体に対して物性を測定した。
【0101】
実施例2から7、及び比較例1から7
下記の表1に記載された含量で反応物質を投入することを除いては、前記実施例1と同一の方法で行い重合体を製造した。
【0102】
【表1】
*比較例6及び7では、触媒として[Me
2Si(Me
4C
5)NtBu]Ti(CH
3)
2を用いた。
【0103】
[オレフィン重合体の物性評価]
実験例1
前記実施例及び比較例で製造したエチレン/アルファ-オレフィン共重合体に対し、下記の方法で物性を測定して表2に示した。
【0104】
1)密度(Density、g/cm3):ASTM D-792によって測定した。
【0105】
2)粘度(Viscosity、cP):Brookfield RVDV3T粘度計を用いて下記方法によって測定した。詳細には、試料を13ml試料チェンバーに入れ、Brookfield Thermoselを用いて180℃で加熱した後、試料が完全に溶けると粘度計装置を下げてスピンドルを試料チェンバーに固定させ、スピンドル(SC-29高温-溶融スピンドル)の回転速度を20rpmに固定してから20分以上又は値が安定化するまで読み取って最終値を記録した。ちなみに、粘度の測定限界は50,000cPである。
【0106】
3)溶融温度(Tm、℃):示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC、装置名:DSC 2920、製造社:TA instrument)を用いて重合体の溶融温度を測定した。具体的には、重合体を150℃まで加熱してから5分間維持し、-100℃まで温度を下げた後再び温度を増加させた。このとき、温度の上昇速度と下降速度は、それぞれ10℃/分に調節した。溶融温度は、二番目の温度が上昇する区間で測定した吸熱ピークの最大値点にした。
【0107】
4)結晶化温度(Tc、℃):DSCを用いて溶融温度測定時と同一の方法で行い、温度を減少させながら示される曲線から発熱ピークの最大値点を結晶化温度にした。
【0108】
5)重量平均分子量(g/mol)及び分子量分布(MWD):ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220)で下記の条件で数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)をそれぞれ測定し、また、重量平均分子量を数平均分子量に分けて分子量分布を計算した。
-カラム:PL Olexis
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン;Trichlorobenzene)
-流速:1.0ml/分
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(3次関数で補正)
【0109】
6)単量体反応性比(Re、Rc)の測定:前記実施例及び比較例で製造したエチレン/アルファ-オレフィン共重合体を溶媒(1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)に溶解させた後、直径5mm及び長さ18cmのチューブに0.4ml程度入れた。その後、前記チューブを13C NMR分光器に配置させ、分光器内の周波数150MHz、温度100℃、d1(relaxation delay time)3s、及びScans 4kの条件でkee、kec、kcc及びkce値を測定しており、これを下記数式3及び4に代入して単量体反応性比を計算した。前記単量体反応性比の測定は、実施例1から7のように、本発明で限定している粘度を満たす比較例6及び7に対してのみ行った。
[数式3]
Re(エチレン単量体の反応性比)=kee/kec
[数式4]
Rc(アルファオレフィン共単量体の反応性比)=kcc/kce
(前記数式3及び4において、keeは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にエチレンが付加される時の成長反応速度定数を示し、kecは、末端活性点がエチレン単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kccは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にアルファオレフィン共単量体が付加される時の成長反応速度定数を示し、kceは、末端活性点がアルファオレフィン共単量体である成長鎖にエチレン単量体が付加される時の成長反応速度定数を示す。)
【0110】
【表2】
前記表2において、『-』は測定していないことを意味する。
【0111】
前記表2を参照すれば、本発明による遷移金属化合物を含む触媒組成物を用い、重合反応時に水素を投入して製造した実施例1から7のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、比較例1から7に比べて低密度で、且つ超低分子量で(粘度で評価)あり、分子量分布が狭く、またRe×Rc値が 1.0以下、より具体的には0.97以下を示した。
【0112】
具体的に、水素を投入していないか、一定量以上投入していない比較例1から4の場合、よほど高分子量の共重合体が製造されており、分子量分布が広くて物性が良くないことを予測できる。また、水素をあまりにも過度に投入した比較例5の場合には、水素によって重合が早期に終了され、分子量が小さすぎる共重合体が製造されたことが分かる。
【0113】
また、水素を投入することなく本発明による触媒ではない他の触媒を適用した比較例7は、分子量分布がよほど広く示されており、Re×Rc値が1.0を超過し、2.03という大きい数値が導出されて不均一な共重合体が製造されたことを予測できる。これは、水素を投入してもこのような不均一性がなくならないのは、比較例6を介して確認できる。
【0114】
前記比較例6と7で用いた触媒の場合、実施例1から7で適用された触媒に比べ高分子量重合体を製造できず、共単量体に対する共重合性が劣るため、水素を投入して重合反応を制御できる容量が絶対的に少なく、単量体反応性比が制御されていないことが分かり、結果を見ると粘度が低いにもかかわらず共単量体が均一に混入されていないため、Re×Rc値が1.0より大きく示されたことが確認できる。結局、このような現象は、比較例6及び7の触媒は水素をさらに投入する場合、粘度が非常に低いため加工が不可能な水準に至ると類推できる現象である。
【0115】
実験例2
実施例2及び比較例7に対して、振動数6.28rad/s(1Hz)で固定して温度を上昇させつつ粘度変化を測定したものを
図1に示し、同様に実施例3及び比較例6に対して、温度を上昇させつつ粘度変化を測定したものを
図2に示し、実施例2及び比較例7に対して、80℃で角振動数を変化させつつ粘度変化を測定したものを
図3に示し、実施例3及び比較例6に対して、80℃で角振動数を変化させつつ粘度変化を測定したものを
図4に示した。粘度の測定方法は、前記の通りである。
【0116】
図1において、実施例2は、類似密度を有する比較例7に比べ全ての温度領域で低い複素粘度(complex viscosity)を示し、
図2において、実施例3の場合も類似密度を有する比較例6に比べ全ての温度領域で低い複素粘度を示す。したがって、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、低温加工が可能であり、製品加工時に装備の負荷が小さいため生産量を増加し得るので、エネルギー効率の側面で長所がある。
【0117】
また、
図3及び
図4において角振動数変化による粘度変化データは、試料を高いせん断率で射出する時と射出した後の停止状態で殆ど0に近いせん断率に置かれた時の状況を再現するために、角振動数ω=1-500rad/sの範囲で粘度を測定したものである。これは、重合体加工時にある程度の圧力がかかるが、このような状況を再現するためである。
【0118】
図3によれば、設定された特定の周波数帯で実施例2が比較例7に比べ低い複素粘度を有することが確認できる。
図4において、実施例3の場合にも比較例6に比べ設定された特定の周波数帯で低い複素粘度を有する。したがって、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、比較例に比べ改善された加工性を有することが確認できる。
【0119】
すなわち、加工時の変化する温度条件及び変化するせん断率条件で低い複素粘度を示すという点を介して、本発明の一実施例によって製造されたエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、加工性に遥かに優れるという点が分かる。
【0120】
このように、本発明のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、低密度であり、且つ超低分子量及び狭い分子量分布を有することで、比較例に比べより優れた衝撃強度と機械的物性を有することを予想できる。また、実施例1から5のエチレン/アルファ-オレフィン共重合体は、Re×Rc値が1.0以下、より具体的には、0.95以下のRe×Rc値を示す1-オクテン等の共単量体が重合体内に均一に分布されることで、優れた構造安定性を示す。その結果、ホットメルト接着剤組成物に適用時に均一な反応を介して反応効率が向上され、接着性とともに加工性が改善され得ることが分かる。