(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】デバイスチップの形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H01L21/78 P
(21)【出願番号】P 2018096323
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】フ テンキン
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-186445(JP,A)
【文献】特開2015-133434(JP,A)
【文献】特開2011-100920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿う複数の第1の分割予定ラインと、該第1の方向に交差する第2の方向に沿う複数の第2の分割予定ラインと、が表面に設定され、複数の該第1の分割予定ライン及び複数の該第2の分割予定ラインにより区画された表面の各領域にデバイスを有し、互いに隣接する2つの第1の分割予定ラインの間の距離よりも互いに隣接する2つの第2の分割予定ラインの間の距離の方が長いデバイスウェーハを分割して複数のデバイスチップを形成するデバイスチップの形成方法であって、
デバイスウェーハを該複数の第1の分割予定ライン及び該複数の第2の分割予定ラインに沿って加工して、該デバイスウェーハを個々のデバイスチップに分割するための分割起点を形成する分割起点形成ステップと、
該分割起点形成ステップを実施する前または実施した後、デバイスウェーハの径よりも大きい径を有しエキスパンド性を有するとともに所定温度以上の加熱で収縮するエキスパンドテープを該デバイスウェーハの裏面側に貼着するテープ貼着ステップと、
該テープ貼着ステップの前または後に、該エキスパンドテープの外周部を環状フレームに貼着する環状フレーム貼着ステップと、
該分割起点形成ステップ、該テープ貼着ステップ及び該環状フレーム貼着ステップを実施した後、該エキスパンドテープを径方向外側に拡張し、該分割起点を起点に該デバイスウェーハが分割されることで形成された複数の該デバイスチップの間隔を広げるテープ拡張ステップと、
該テープ拡張ステップを実施した後、該エキスパンドテープの該複数のデバイスチップの外周と、該環状フレームの内周と、の間の環状領域を加熱して該エキスパンドテープを収縮させるテープ収縮ステップと、を有し、
該テープ収縮ステップは、
該エキスパンドテープの該環状領域のうち、該第1の方向に沿った領域を加熱して該領域を収縮させる第1の加熱ステップと、
該第1の加熱ステップの前または後に、該エキスパンドテープの該環状領域全てを加熱して該環状領域を収縮させる第2の加熱ステップと、
該第1の加熱ステップの前に、径方向外側への該エキスパンドテープの拡張を緩和する第1の緩和ステップと、
該第1の加熱ステップの後、該第2の加熱ステップの前に、径方向外側への該エキスパンドテープの拡張をさらに緩和する第2の緩和ステップと、を含み、
該第1の緩和ステップにおける該エキスパンドテープの拡張の緩和量と、該第2の緩和ステップにおける該エキスパンドテープの拡張の緩和量と、は、該第1の加熱ステップにおける該エキスパンドテープの該領域の収縮量と、該第2の加熱ステップにおける該エキスパンドテープの該環状領域の収縮量と、に基づいて決定されていることを特徴とするデバイスチップの形成方法。
【請求項2】
該分割起点形成ステップでは、該デバイスウェーハの表面から該第1の分割予定ライン及び該第2の分割予定ラインに沿って該デバイスチップの仕上げ厚さ以上の深さの溝を該分割起点として形成し、
該分割起点形成ステップの後、該テープ貼着ステップの前に、該デバイスウェーハの裏面側を研削して該デバイスウェーハを該仕上げ厚さへと薄化することで該溝の底を除去し、デバイスウェーハを該複数のデバイスチップへと分割する薄化ステップをさらに含み、
該テープ貼着ステップでは、ダイアタッチフィルムを介して該エキスパンドテープを該デバイスウェーハの裏面側に貼着することを特徴とする請求項1記載のデバイスチップの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスが表面に形成されたデバイスウェーハをデバイス毎に分割して、個々のデバイスチップを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の電子機器には、半導体デバイスを搭載したデバイスチップが使用される。デバイスチップを形成する際は、例えば、円板状の半導体ウェーハの表面に複数の交差する分割予定ラインを設定し、分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスを形成してデバイスウェーハを作成する。その後、分割予定ラインに沿ってデバイスウェーハを分割すると、デバイスチップを形成できる。
【0003】
デバイスウェーハの分割には、例えば、デバイスウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームをデバイスウェーハに照射できるレーザ加工装置が使用される。分割予定ラインに沿って該レーザビームをデバイスウェーハの内部に集光させ、多光子吸収過程により改質層を形成する。そして、該改質層からデバイスウェーハを厚さ方向に貫くクラックを形成すると、デバイスウェーハが分割される(特許文献1参照)。
【0004】
デバイスウェーハを加工する前または後に、デバイスウェーハの裏面側にはエキスパンドテープと呼ばれるテープが貼着される。該エキスパンドテープの外周側は、予め金属等で形成された環状フレームに貼られており、デバイスウェーハを該エキスパンドテープに貼着すると、デバイスウェーハと、エキスパンドテープと、環状フレームと、が一体となったフレームユニットを形成できる。
【0005】
デバイスウェーハを加工し、エキスパンドテープを径方向外側に拡張すると、ウェーハが分割されてデバイスチップが形成され、形成された各デバイスチップの間隔が広げられる。各デバイスチップの間隔が広げられていると、エキスパンドテープからのデバイスチップのピックアップが容易となる。ただし、エキスパンドテープの拡張を解除するとエキスパンドテープが弛むため、テープの張り替え等の措置が必要となる場合がある。
【0006】
そこで、エキスパンドテープのウェーハの外周と、フレームの内周と、の間の環状領域を加熱し、エキスパンドテープの当該領域を収縮させる(特許文献2参照)。エキスパンドテープを収縮させると、エキスパンドテープの弛みを減少できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-129607号公報
【文献】特開2013-191718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デバイスチップの平面形状は正方形状に限られず、第1の方向(例えば、横方向)に沿った長さと、第2の方向(例えば、縦方向)に沿った長さと、が異なる長方形状となる場合がある。そして、デバイスウェーハの表面に並ぶデバイスの数が第1の方向と、第2の方向と、で異なり、第1の方向に沿った分割予定ラインと、第2の方向に沿った分割予定ラインと、で数も異なる場合がある。
【0009】
この場合、エキスパンドテープを径方向外側に等方的に拡張及び収縮させた際、デバイスチップ間の第1の方向に沿った間隔と、第2の方向に沿った間隔と、が異なるようになる。特に、形成されるデバイスチップの第1の方向に沿った長さと、第2の方向に沿った長さと、の比が大きくなるほどデバイスチップ間の第1の方向に沿った該間隔と、第2の方向に沿った該間隔と、の比が大きくなる。
【0010】
デバイスチップのピックアップは、デバイスチップの設計上の配置情報を基に実施される。デバイスチップの間隔が方向によって異なる場合、登録された配置情報におけるデバイスチップの配置と、実配置と、のずれが大きくなり、デバイスチップのピックアップを適切に実施できない場合がある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、形成されるデバイスチップ間の間隔を方向によらずにより均一に広げ、ピックアップを適切に実施できるデバイスチップの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、第1の方向に沿う複数の第1の分割予定ラインと、該第1の方向に交差する第2の方向に沿う複数の第2の分割予定ラインと、が表面に設定され、複数の該第1の分割予定ライン及び複数の該第2の分割予定ラインにより区画された表面の各領域にデバイスを有し、互いに隣接する2つの第1の分割予定ラインの間の距離よりも互いに隣接する2つの第2の分割予定ラインの間の距離の方が長いデバイスウェーハを分割して複数のデバイスチップを形成するデバイスチップの形成方法であって、デバイスウェーハを該複数の第1の分割予定ライン及び該複数の第2の分割予定ラインに沿って加工して、該デバイスウェーハを個々のデバイスチップに分割するための分割起点を形成する分割起点形成ステップと、該分割起点形成ステップを実施する前または実施した後、デバイスウェーハの径よりも大きい径を有しエキスパンド性を有するとともに所定温度以上の加熱で収縮するエキスパンドテープを該デバイスウェーハの裏面側に貼着するテープ貼着ステップと、該テープ貼着ステップの前または後に、該エキスパンドテープの外周部を環状フレームに貼着する環状フレーム貼着ステップと、該分割起点形成ステップ、該テープ貼着ステップ及び該環状フレーム貼着ステップを実施した後、該エキスパンドテープを径方向外側に拡張し、該分割起点を起点に該デバイスウェーハが分割されることで形成された複数の該デバイスチップの間隔を広げるテープ拡張ステップと、該テープ拡張ステップを実施した後、該エキスパンドテープの該複数のデバイスチップの外周と、該環状フレームの内周と、の間の環状領域を加熱して該エキスパンドテープを収縮させるテープ収縮ステップと、を有し、該テープ収縮ステップは、該エキスパンドテープの該環状領域のうち、該第1の方向に沿った領域を加熱して該領域を収縮させる第1の加熱ステップと、該第1の加熱ステップの前または後に、該エキスパンドテープの該環状領域全てを加熱して該環状領域を収縮させる第2の加熱ステップと、該第1の加熱ステップの前に、径方向外側への該エキスパンドテープの拡張を緩和する第1の緩和ステップと、該第1の加熱ステップの後、該第2の加熱ステップの前に、径方向外側への該エキスパンドテープの拡張をさらに緩和する第2の緩和ステップと、を含み、該第1の緩和ステップにおける該エキスパンドテープの拡張の緩和量と、該第2の緩和ステップにおける該エキスパンドテープの拡張の緩和量と、は、該第1の加熱ステップにおける該エキスパンドテープの該領域の収縮量と、該第2の加熱ステップにおける該エキスパンドテープの該環状領域の収縮量と、に基づいて決定されていることを特徴とするデバイスチップの形成方法が提供される。
【0013】
好ましくは、該分割起点形成ステップでは、該デバイスウェーハの表面から該第1の分割予定ライン及び該第2の分割予定ラインに沿って該デバイスチップの仕上げ厚さ以上の深さの溝を該分割起点として形成し、該分割起点形成ステップの後、該テープ貼着ステップの前に、該デバイスウェーハの裏面側を研削して該デバイスウェーハを該仕上げ厚さへと薄化することで該溝の底を除去し、デバイスウェーハを該複数のデバイスチップへと分割する薄化ステップをさらに含み、該テープ貼着ステップでは、ダイアタッチフィルムを介して該エキスパンドテープを該デバイスウェーハの裏面側に貼着する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係るデバイスチップの形成方法は、隣接する2つの第1の分割予定ラインの間の距離よりも隣接する2つの第2の分割予定ラインの間の距離の方が長いデバイスウェーハを分割して複数のデバイスチップを形成する方法である。該デバイスウェーハを分割した後、エキスパンドテープを拡張してデバイスチップ間の間隔を広げると、第1の方向に沿った該間隔よりも第2の方向に沿った該間隔の方が狭くなる。
【0016】
そこで、テープ収縮ステップにおいて、エキスパンドテープのデバイスウェーハと、環状フレームと、の間の環状領域の第1の方向に沿った領域を加熱する第1の加熱ステップと、該環状領域を加熱する第2の加熱ステップと、を実施する。すると、エキスパンドテープの第1の方向に沿った該領域の収縮量が大きくなり、第1の分割予定ラインにおけるデバイスチップの間隔と、第2の分割予定ラインにおけるデバイスチップの間隔と、の差が小さくなる。
【0017】
すなわち、デバイスチップ間の間隔が方向に依らずに均等に近づくため、デバイスチップの設計上の配置と、実配置と、の差が小さくなり、デバイスチップのピックアップをより適切に実施できる。
【0018】
したがって、本発明により、形成されるデバイスチップ間の間隔を方向によらずにより均一に広げ、ピックアップを適切に実施できるデバイスチップの形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】デバイスウェーハを模式的に示す平面図である。
【
図2】テープ貼着ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図3】分割起点形成ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、テープ拡張装置に保持されたフレームユニットを模式的に示す断面図であり、
図4(B)は、テープ拡張ステップを模式的に示す断面図である。
【
図5】テープ収縮ステップを模式的に示す断面図である。
【
図6】赤外線が照射される領域を模式的に示す平面図である。
【
図7】デバイスチップの形成方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るデバイスチップの形成方法における被加工物であるデバイスウェーハについて
図1を用いて説明する。
図1は、デバイスウェーハ1を模式的に示す平面図である。デバイスウェーハ1は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板の表面1aにデバイス5が形成されたものである。
【0021】
デバイスウェーハ1の表面1aは互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)3c,3dで複数の領域に区画され、区画された各領域にはIC(Integrated circuit)等のデバイス5が形成される。デバイスウェーハ1を該分割予定ライン3c,3dに沿って分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。
【0022】
デバイスチップの平面形状は、その機能や設計上の都合等により正方形状ではなく長方形状とされる場合がある。長方形状のデバイスチップを形成するには、デバイスウェーハ1の表面1aに設定される複数の分割予定ラインの間隔を方向によって変化させる。
【0023】
例えば、第1の方向3aに沿う複数の第1の分割予定ライン3cと、第1の方向3aに交差する第2の方向3bに沿う複数の第2の分割予定ライン3dと、を設定する。このととき、例えば、互いに隣接する2つの第1の分割予定ライン3cの間の距離よりも互いに隣接する2つの第2の分割予定ライン3dの間の距離の方が長くなるように設定する。
【0024】
この場合、デバイスウェーハ1の表面1aは、第1の分割予定ライン3c及び第2の分割予定ライン3dにより長方形状の領域に区画され、デバイス5は区画された長方形状の各領域に形成される。そして、
図1に示す通り、第1の分割予定ライン3cの数と、第2の分割予定ライン3dの数と、が一致しなくなる。
【0025】
デバイスウェーハ1から形成された個々のデバイスチップをピックアップする際には、ピックアップを容易にするために、分割されたデバイスウェーハ1を径方向外側に広げ、デバイスチップ間の間隔を広げる。デバイスウェーハ1を径方向外側に広げる際には、デバイスウェーハの径よりも大きい径を有するエキスパンドテープと、金属等の材料で形成された環状フレームと、を使用する。
【0026】
該エキスパンドテープは粘着面を備え、該粘着面をデバイスチップ1及び環状フレームに接触させることでデバイスチップ1及び環状フレームに貼着される。また、該エキスパンドテープはエキスパンド性を有し、すなわち、径方向外側に拡張可能である。さらに、該エキスパンドテープは所定温度以上に加熱すると収縮する。
【0027】
図2に、デバイスウェーハ1と、エキスパンドテープ7と、環状フレーム9と、を示す。エキスパンドテープ7の外周部を予め環状フレーム9に貼り、その後、環状フレーム9の開口内でデバイスウェーハ1の裏面1b側をエキスパンドテープ7に貼る。すると、デバイスウェーハ1と、エキスパンドテープ7と、環状フレーム9と、が一体となったフレームユニットを形成できる。デバイスウェーハ1からデバイスチップが形成された後、エキスパンドテープ7が径方向外側に拡張されデバイスチップ間の間隔が広げられる。
【0028】
なお、デバイスウェーハ1の裏面1b側には、予め膜状のダイアタッチフィルムが設けられてもよい。ダイアタッチフィルムは、デバイスチップを所定の実装対象に実装する際の接着剤等として機能する。ダイアタッチフィルムは、エキスパンドテープ7を拡張することで分割予定ライン3c,3dに沿って分割され、個々のデバイスチップの裏面側に設けられる。
【0029】
次に、本実施形態に係るデバイスチップの形成方法について説明する。該デバイスチップの形成方法のフローチャートを
図7に示す。
図7に示す通り、該形成方法では、分割起点形成ステップS1と、テープ貼着ステップS2と、環状フレーム貼着ステップS3と、テープ拡張ステップS4と、テープ収縮ステップS5と、を実施する。ただし、各ステップを実施する順番はこれに限定されず、適宜順番を入れ替えて実施できる。
【0030】
該形成方法では、分割起点形成ステップS1を実施する前または実施した後、デバイスウェーハ1、エキスパンドテープ7、及び環状フレーム9を一体化するテープ貼着ステップS2及び環状フレーム貼着ステップS3を実施する。以下、環状フレーム貼着ステップS3を実施した後にテープ貼着ステップS2を実施し、その後に分割起点形成ステップS1を実施する場合を例に本実施形態に係るデバイスチップの形成方法を説明する。
【0031】
環状フレーム貼着ステップS3では、エキスパンドテープ7の外周部を環状フレーム9に貼着する。
図2の下部に、環状フレーム9と、該環状フレーム9に貼着されたエキスパンドテープ7と、を模式的に示す。エキスパンドテープ7にデバイスウェーハ1を貼着する前に環状フレーム9に貼着すると、エキスパンドテープ7にデバイスウェーハ1を貼着する際に、エキスパンドテープ7に弛みが生じにくい。
【0032】
テープ貼着ステップS2では、エキスパンドテープ7をデバイスウェーハ1の裏面1b側に貼着する。
図2は、テープ貼着ステップS2を模式的に示す斜視図である。なお、テープ貼着ステップS2を実施する前に、予めデバイスウェーハ1の裏面1b側に上述のダイアタッチフィルムを設けてもよい。環状フレーム貼着ステップS3及びテープ貼着ステップS2を実施すると、
図3に模式的に示すフレームユニット11を形成できる。
【0033】
本実施形態に係るデバイスチップの形成方法では、次に、分割起点形成ステップS1を実施する。分割起点形成ステップS1では、デバイスウェーハ1を複数の第1の分割予定ライン3c及び複数の第2の分割予定ライン3dに沿って加工して、該デバイスウェーハ1を個々のデバイスチップに分割するための分割起点を形成する。
【0034】
分割起点形成ステップS1では、例えば、中央部に貫通孔を備え外周部に切削砥石が配された円環状の切削ブレードによりデバイスウェーハ1を切削加工し、分割予定ライン3c,3dに沿って分割起点となる切削溝を形成する。切削加工を実施する際は、該切削ブレードを該貫通孔の周りに回転させ、分割予定ライン3c,3dに沿って切削砥石をデバイスウェーハ1に接触させる。切削ブレードによりデバイスウェーハ1の表面1aから裏面1bに至る深さの切削溝を形成すると、デバイスウェーハ1が分割される。
【0035】
または、分割起点形成ステップS1では、デバイスウェーハ1に対して吸収性を有する波長のレーザビームをデバイスウェーハ1の表面1aに集光することでアブレーション加工を実施し、分割予定ライン3c,3dに沿ってレーザ加工溝を形成する。アブレーション加工によりデバイスウェーハ1の裏面1bに至る深さのレーザ加工溝を形成すると、デバイスウェーハ1が分割される。この場合、レーザ加工溝が分割起点となる。
【0036】
アブレーション加工を実施してレーザ加工溝を形成する場合、一つの分割予定ライン3c,3dに沿って複数回レーザビームを照射して、徐々にレーザ加工溝の深さを増大させてもよい。この場合、1度だけレーザビームを照射してレーザ加工溝を形成する場合と比較してレーザビームの出力を抑制できるため、レーザビームの照射に伴う周囲のデバイス5への損傷の発生を抑制できる。
【0037】
なお、分割起点形成ステップS1は、これに限定されない。例えば、デバイスウェーハ1に対して透過性を有する波長のレーザビームを分割予定ライン3c,3dに沿ってデバイスウェーハ1の内部に集光し、多光子吸収過程により分割起点となる改質層を形成してもよい。
図3を用いて、デバイスウェーハ1の内部に改質層を形成する場合を例に分割起点形成ステップS1を説明する。
図3は、分割起点形成ステップS1の一例を模式的に示す斜視図である。
【0038】
図3に例示する分割起点形成ステップS1は、レーザ加工装置2で実施される。レーザ加工装置2は、デバイスウェーハ1を保持する保持テーブル4と、保持テーブル4に保持されたデバイスウェーハ1を加工するレーザ加工ユニット6と、を備える。
【0039】
保持テーブル4は、上面側に露出する多孔質部材(不図示)と、該多孔質部材に接続された吸引源(不図示)と、を備え、該多孔質部材の上面は、デバイスウェーハ1を保持する保持面となる。また、保持テーブル4は、保持面に垂直な軸の周りに回転可能である。分割起点形成ステップS1では、エキスパンドテープ7を介して該保持面上にデバイスウェーハ1を載せ、該多孔質部材の孔を通してデバイスウェーハ1に対して吸引源により生じた負圧を作用させ、デバイスウェーハ1を保持テーブル4に吸引保持させる。
【0040】
レーザ加工ユニット6は、デバイスウェーハ1に対して透過性を有する波長のレーザビーム8aを発振できる。そして、レーザ加工ユニット6は、加工ヘッド8からデバイスウェーハ1の表面1aに該レーザビーム8aを照射でき、デバイスウェーハ1の内部の所定の高さ位置に該レーザビーム8aを集光できる。レーザ加工ユニット6と、保持テーブル4と、は保持テーブル4の保持面に平行な方向に相対移動できる。
【0041】
レーザ加工ユニット6は、保持テーブル4に保持されたデバイスウェーハ1の表面1aを撮像できるカメラユニット10を加工ヘッド8の近傍に備える。分割起点形成ステップS1を実施する際は、カメラユニット10によりデバイスウェーハ1の表面1aを撮像し、分割予定ライン3c,3dの位置に関する情報を取得する。そして、該情報を基に、レーザ加工ユニット6をデバイスウェーハ1の第1の分割予定ライン3cの延長線の上方に位置づける。
【0042】
その後、レーザ加工ユニット6にレーザビーム8aを発振させながらレーザ加工ユニット6と、保持テーブル4と、を第1の方向3aに沿って相対移動させる。すると、分割予定ライン3cに沿ってデバイスウェーハ1の内部にレーザビーム8aが集光され、多光子吸収過程により分割起点13となる改質層が形成される。
【0043】
一つの第1の分割予定ライン3cに沿ってレーザビーム8aを照射した後、保持テーブル4及びレーザ加工ユニット6を第2の方向3bに沿って相対移動させ、同様に他の第1の分割予定ライン3cに沿ってレーザ加工を実施する。すべての第1の分割予定ライン3cに沿ってレーザ加工を実施した後、保持テーブル4を回転させ、第2の方向3bに沿った第2の分割予定ライン3dに沿って同様に加工を実施する。すると、すべての分割予定ライン3c,3dに沿って分割起点13として機能する改質層を形成できる。
【0044】
内部に改質層が形成されたデバイスウェーハ1に対して所定の方法で外力を加えると、該改質層からデバイスウェーハ1の厚さ方向にクラックが伸長する。該クラックがデバイスウェーハ1を厚さ方向に貫くと、デバイスウェーハ1が分割される。
【0045】
なお、薄型のデバイスチップを形成する場合、分割起点形成ステップS1の前または後にデバイスウェーハ1の裏面1b側を研削してデバイスウェーハ1を薄化する薄化ステップを実施してもよい。薄化ステップは、例えば、円環状に並ぶ複数の研削砥石が下面に装着された研削ユニットを備える研削装置で実施される。研削砥石を該研削砥石が並ぶ方向に沿って回転させながらデバイスウェーハ1に向けて下降させ、デバイスウェーハ1の裏面1b側に接触させると、デバイスウェーハ1が研削されて薄化される。
【0046】
薄化ステップを実施する場合、テープ貼着ステップS2と、環状フレーム貼着ステップS3と、は薄化ステップを実施した後に実施する。さらに、デバイスウェーハ1の裏面1bにダイアタッチフィルムを設ける場合、テープ貼着ステップS2を実施する際に、ダイアタッチフィルムを介してデバイスウェーハ1の裏面1bにエキスパンドテープ7を貼着する。
【0047】
また、分割起点形成ステップS1において分割起点として改質層をデバイスウェーハ1の内部に形成する場合、該薄化ステップにおいてデバイスウェーハ1に加わる外力により該改質層から厚さ方向にクラックを伸長させてデバイスウェーハ1を分割してもよい。
【0048】
さらに、例えば、該分割起点形成ステップS1では、デバイスチップの仕上げ厚さ以上でかつ裏面1bに至らない深さの溝を該分割起点13として分割予定ライン3c,3dに沿ってデバイスウェーハ1に形成してもよい。この場合、該分割起点形成ステップS1の後、薄化ステップを実施してデバイスウェーハ1を該仕上げ厚さへと薄化し、該溝の底を除去することでデバイスウェーハ1を分割してもよい。
【0049】
なお、以上に説明した通り、分割起点13とはデバイスウェーハ1の分割の起点となる構造等である。分割起点13は、例えば、デバイスウェーハ1の表面1aから裏面1bに至る溝、裏面1bに至らない溝、または、デバイスウェーハ1の内部に形成される改質層等である。分割起点形成ステップS1の実施中、または、実施後に、該分割起点13を起点としてデバイスウェーハ1を分割すると個々のデバイスチップを形成できる。
【0050】
本実施形態に係るデバイスチップの形成方法では、分割起点形成ステップS1、テープ貼着ステップS2及び環状フレーム貼着ステップS3を実施した後、エキスパンドテープ7を径方向外側に拡張するテープ拡張ステップS4を実施する。次に、テープ拡張ステップS4について説明する。
【0051】
テープ拡張ステップS4を実施すると、デバイスチップ間の間隔が広がりデバイスチップのピックアップが容易となる。また、エキスパンドテープ7と、デバイスウェーハ1の裏面1bと、の間にダイアタッチフィルムが配される場合、テープ拡張ステップS4を実施することでダイアタッチフィルムをデバイスチップ毎に分割できる。
【0052】
テープ拡張ステップS4は、
図4(A)及び
図4(B)に模式的に示すエキスパンド装置12において実施される。エキスパンド装置12は、円筒状の拡張ドラム14と、該拡張ドラム14の外周側に配されたフレーム保持ユニットと、を含む。
【0053】
拡張ドラム14は、デバイスウェーハ1の径よりも大きい径の円筒状の本体を備え、該本体の上部には、上方に露出する多孔質部材14aが配される。該多孔質部材14aは、図示しない吸引源に接続される。該吸引源は、該多孔質部材14aを通じて拡張ドラム14の上に載せられるフレームユニット11に負圧を作用できる。例えば、エキスパンドテープ7を拡張または収縮させる際に該吸引源を作動させると、エキスパンドテープ7の該デバイスウェーハ1と重なる領域を固定できる。
【0054】
フレーム保持ユニットは、外周側に環状フレーム9を把持できるクランプ22を備え、円環状のフレーム支持台16と、該フレーム支持台16を支持する複数のロッド18と、を含む。それぞれのロッド18の上端部はフレーム支持台16に接続されており、それぞれのロッド18の下端はエアシリンダ20により支持される。エアシリンダ20はロッド18を上下方向に移動でき、該エアシリンダ20を作動させるとフレーム支持台16を上下方向に移動できる。
【0055】
テープ拡張ステップS4では、まず、エキスパンド装置12にフレームユニット11を搬入する。このとき、フレーム支持台16の上面の高さ位置が拡張ドラム14の上部の高さ位置に合うように、予めフレーム支持台16の高さを調節する。そして、フレーム支持台16の上に環状フレーム9を載せ、クランプ22に該環状フレーム9を把持させてフレームユニット11を固定する。
【0056】
次に、
図4(B)に示す通り、エアシリンダ20を作動させてフレーム支持台16を拡張ドラム14に対して下降させる。すると、エキスパンドテープ7が径方向外側に拡張され、エキスパンドテープ7に貼着されたデバイスウェーハ1に径方向外側に向いた力が作用する。すると、分割起点13を起点に該デバイスウェーハ1が分割されることで形成された複数の該デバイスチップ5aの間隔が広げられる。
【0057】
なお、デバイスウェーハ1の内部に分割起点13として改質層を形成する場合、テープ拡張ステップS4を実施することでデバイスウェーハ1の内部に外力を付与して該改質層から上下方向にクラックを伸長させてデバイスウェーハ1を分割してもよい。また、デバイスウェーハ1の裏面1b側にダイアタッチフィルムが設けられている場合、エキスパンド装置12によりエキスパンドテープ7を拡張することで、ダイアタッチフィルムを分割予定ライン3c,3dに沿って分割できる。
【0058】
ダイアタッチフィルムを分割する際に、ダイアタッチフィルムを予め-5℃乃至0℃程度の温度に冷却すると、ダイアタッチフィルムが脆化し分割が容易となる。そこで、エキスパンド装置12はフレームユニット11を冷却する冷却ユニットをさらに備えてもよく、テープ拡張ステップS4ではフレームユニット11を所定の温度に冷却した後にエキスパンドテープ7を拡張してもよい。
【0059】
エキスパンドテープ7を拡張しデバイスチップ5a間の間隔を広げ、その後、エキスパンドテープ7の拡張を解除すると、エキスパンドテープ7が弛む。エキスパンドテープ7に弛みが生じているとその後のフレームユニット11の搬送が容易ではないため、テープの張り替え作業等が必要となる場合がある。そこで、本実施形態に係るデバイスチップの形成方法では、エキスパンドテープ7に弛みを除去するためにテープ収縮ステップS5を実施する。次に、該テープ収縮ステップS5について説明する。
【0060】
テープ収縮ステップS5では、エキスパンドテープ7上に形成された複数のデバイスチップ5aの外周と、環状フレーム9の内周と、の間の環状領域を加熱して該エキスパンドテープ7を収縮させる。テープ収縮ステップS5について、
図5を用いて説明する。
図5は、テープ収縮ステップS5を模式的に示す断面図である。テープ収縮ステップS5は、テープ拡張ステップS4に続いてエキスパンド装置12において実施してもよい。
【0061】
テープ収縮ステップS5では、テープ拡張ステップS4の際に下降させたフレーム支持台16を上昇させ、エキスパンドテープ7の拡張を緩和させる。このとき、拡張ドラム14の多孔質部材14aに接続された吸引源を予め作動させ負圧をエキスパンドテープ7に作用させておく。この場合、エキスパンドテープ7の該環状領域の内側が固定され、主に該環状領域で拡張が緩和される。そして、例えば、遠赤外線24aを照射できる赤外線照射ユニット24を使用してエキスパンドテープ7の弛みの生じた該環状領域を加熱する。
【0062】
エキスパンドテープ7の該環状領域を加熱する際は、例えば、赤外線照射ユニット24を該環状領域の上に位置づけ、遠赤外線24aを照射させながら該赤外線ユニット24を該環状領域に沿って移動させる。または、赤外線照射ユニット24を該環状領域の上に位置づけ、赤外線照射ユニット24に遠赤外線24aを照射させながら、拡張ドラム14及びフレーム支持台16を該環状領域に沿った方向に回転させる。エキスパンドテープ7を所定の温度に加熱すると、エキスパンドテープ7が収縮し、弛みを減少できる。
【0063】
デバイスウェーハ1は、隣接する第1の分割予定ライン3cの間の距離よりも隣接する第2の分割予定ラインの間3dの距離の方が長く、第1の分割予定ライン3cと、第2の分割予定ライン3dと、の数が異なる。そのため、エキスパンドテープ7を拡張してデバイスチップ5a間の間隔を広げ、そして、エキスパンドテープ7の該環状領域を加熱してエキスパンドテープ7を等方的に収縮させると、該間隔が第1の方向3aと、第2の方向3bと、で一致しなくなる。
【0064】
テープ収縮ステップS5の後、デバイスチップ5aはエキスパンドテープ7からピックアップされる。ピックアップは、デバイスウェーハ1におけるデバイス5の配置情報等が参照されて実施される。しかしながら、デバイスチップ5aの間隔が方向によって異なる場合、該配置情報を基に導出されるデバイスチップ5aの配置と、エキスパンドテープ7上のデバイスチップ5aの実配置と、の間にずれが生じる。このずれが大きい場合、デバイスチップ5aのピックアップを適切に実施できなくなる。
【0065】
そこで、本実施形態に係るデバイスチップの形成方法では、該環状領域のうち該第1の方向3aに沿った領域を加熱する第1の加熱ステップと、該環状領域全てを加熱する第2の加熱ステップと、に分けてテープ収縮ステップS5を実施する。
【0066】
第1の加熱ステップ及び第2の加熱ステップについて、
図6を用いて説明する。
図6は、赤外線が照射される領域を模式的に示す平面図である。第1の加熱ステップでは、エキスパンドテープ7の該環状領域15のうち、第1の方向3aに沿った領域17に対して遠赤外線を照射して、該領域17においてエキスパンドテープ7を収縮させる。
【0067】
第1の加熱ステップを実施する前においては、第1の方向3aに沿った間隔3eは第2の方向3bに沿った間隔3fよりも狭い。第1の加熱ステップを実施すると、エキスパンドテープ7は第2の方向3bに沿って収縮し、第1の方向3aに沿った間隔3eが広げられる。この場合、第1の加熱ステップを実施すると、第1の方向3aに沿った間隔3eと、第2の方向3bに沿った間隔3fと、の差が小さくなる。
【0068】
したがって、デバイスウェーハ1の表面1aにおける設計上のデバイス5の配置と、エキスパンドテープ7上のデバイスチップ5aの実配置と、のずれが小さくなるため、デバイスチップ5aのピックアップが容易となる。
【0069】
なお、
図6には、デバイスウェーハ1(複数のデバイスチップ5a)の中心を通り、第1の方向3a及び第2の方向3bの間の方向に沿った境界17a,17bを境界として第1の方向3aに沿った領域17が設定される場合について例示されている。ただし、第1の方向3aに沿った領域17はこれに限定されず、例えば、該境界17a,17bに達しない領域でもよく、また該境界17a,17bを跨ぐ領域でもよい。
【0070】
第1の加熱ステップを実施した後、エキスパンドテープ7の環状領域15の全域を加熱する第2の加熱ステップを実施する。第2の加熱ステップを実施すると、該環状領域15の全域でエキスパンドテープ7が収縮し、エキスパンドテープ7の弛みが減少する。
【0071】
なお、テープ収縮ステップS5について、第1の加熱ステップを実施した後に第2の加熱ステップを実施する場合について説明したが、本実施形態に係るデバイスチップの形成方法はこれに限定されない。すなわち、第2の加熱ステップを実施した後に第1の加熱ステップを実施してもよい。
【0072】
また、該テープ収縮ステップS5では、該第1の加熱ステップの前に、フレーム支持台16を上昇させてエキスパンドテープ7の拡張を緩和する第1の緩和ステップをさらに実施してもよい。また、第1の加熱ステップを実施した後、第2の加熱ステップを実施する前に、フレーム支持台16をさらに上昇させてエキスパンドテープ7の拡張を緩和する第2の緩和ステップをさらに実施してもよい。エキスパンドテープ7を加熱する前にエキスパンドテープ7を弛ませておくと、加熱により該弛みを除去しやすくなる。
【0073】
なお、フレーム支持台16を上昇させてエキスパンドテープ7の拡張を緩和すると、フレーム支持台16の上昇量に応じた大きさの弛みがエキスパンドテープ7に生じる。そして、第1の加熱ステップ及び第2の加熱ステップで除去されるエキスパンドテープ7の弛みの大きさは、エキスパンドテープ7を加熱する前にエキスパンドテープ7に生じている弛みの大きさに応じて変化する。
【0074】
すなわち、第1の加熱ステップで収縮するエキスパンドテープ7の環状領域15の第1の方向3aに沿った領域17の収縮量は、第1の方向3aに沿った領域17に生じていた弛みの大きさに影響される。
【0075】
デバイスウェーハ1の第1の分割予定ライン3cと、第2の分割予定ライン3dと、の数の比率に応じてデバイスチップ5a間の第1の方向3aに沿った間隔3eと、第2の方向3bに沿った間隔3fと、の比が変化する。したがって、両間隔3e,3fの差を小さくするために第1の加熱ステップで要求されるエキスパンドテープ7の収縮量は、両間隔3e,3fの比によって決まる。
【0076】
そこで、第1の緩和ステップを実施する前と、第1の緩和ステップを実施した後と、第2の緩和ステップを実施した後と、のそれぞれにおいてフレーム支持台16の高さ位置を制御してもよい。この場合、第1の加熱ステップにおける該領域17の収縮量と、第2の加熱ステップにおける環状領域15の収縮量と、を制御できる。
【0077】
直径8インチのシリコンで形成された円板状のデバイスウェーハ1の表面1a上に、第1の方向3aに沿った長さが10.000mm、第2の方向3bに沿った長さが5.390mmの長さの長方形状の複数のデバイス5を形成する場合を例に説明する。該デバイスウェーハ1をデバイス5毎に分割してデバイスチップ5aを形成し、デバイスウェーハ1の裏面1bに貼着されたエキスパンドテープ7を拡張する。このとき、エキスパンドテープ7の外周部に貼着された環状フレーム9を10mm程度引き下げる。
【0078】
その後、環状フレーム9を引き上げて従来の方法によりエキスパンドテープ7の環状領域15を収縮させると、例えば、デバイスチップ5a間の第1の方向3aに沿った間隔3eは約10μmとなり、第2の方向3bに沿った間隔3fは約25μmとなる。この場合、間隔3eと、間隔3fと、の比はおよそ2:5である。そのため、エキスパンドテープ7の環状領域15の該領域17の収縮量と、環状領域15の該領域17以外の領域の収縮量と、の比が5:2となれば、間隔3eと、間隔3fと、の差が小さくなる。
【0079】
そこで、第1の緩和ステップを実施して環状フレーム9を3mm引き上げ、第1の加熱ステップを実施し、次に、第2の緩和ステップを実施して環状フレーム9を2mm引き上げ、第2の加熱ステップを実施する。この場合、環状領域15の第1の方向3aに沿った領域17を加熱する際の環状フレーム9の総引き上げ量は5mmとなり、環状領域15の該領域17以外の領域を加熱する際の環状フレーム9の引き上げ量が2mmとなる。
【0080】
そして、第2の加熱ステップ実施した後、例えば、デバイスチップ5a間の第1の方向3aに沿った該間隔3eは約17μmとなり、第2の方向3bに沿った該間隔3fは約20μmとなる。このように、従来の方法におけるデバイスチップ間の間隔3eと、間隔3fと、の比を参照して第1の緩和ステップにおける環状フレーム9の引き上げ量と、第2の緩和ステップにおける環状フレーム9の引き上げ量と、を決定すると、間隔3eと、間隔3fの差が小さくなる。
【0081】
本実施形態に係るデバイスチップの形成方法を実施すると、デバイスチップ5a間の第1の方向3cに沿った間隔3eと、第2の方向3bに沿った間隔3fと、の差が小さくなる。そのため、デバイスチップ5aのピックアップ時にデバイスウェーハ1におけるデバイス5の配置に関する情報を使用できる。したがって、本実施形態に係るデバイスチップの形成方法により、第1の方向3aに沿った長さと、第2の方向3bに沿った長さと、が異なるデバイスチップを容易に製造できる。
【0082】
テープ収縮ステップS5を実施した後、フレームユニット11をピックアップ装置に移動させ、個々のデバイスチップ5aをエキスパンドテープ7上からピックアップする。ピックアップ装置では、デバイスウェーハ1の表面1a上のデバイス5の配置に関する情報を基に、所定の位置のデバイスチップをピックアップする。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、テープ収縮ステップS5について、第1の加熱ステップと、第2の加熱ステップと、1度ずつ実施する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0084】
すなわち、第1の加熱ステップと、第2の加熱ステップと、を交互に繰り返して、徐々にエキスパンドテープ7を収縮させてもよい。第1の加熱ステップと、第2の加熱ステップと、の加熱の強度を細かく調整することにより、デバイスチップ5a間の第1の方向に沿った間隔3eと、第2の方向に沿った間隔3fと、の差をより縮小できる。
【0085】
また、テープ拡張ステップS4に続きエキスパンド装置12においてテープ収縮ステップS5を実施する場合について説明したが、本発明の一態様に係るデバイスチップの形成方法はこれに限定されない。すなわち、赤外線加熱装置を準備し、該赤外線加熱装置にフレームユニット11を移動させてテープ拡張ステップS4を実施してもよい。
【0086】
特に、デバイスウェーハ1の裏面1b側にダイアタッチフィルムが設けられテープ拡張ステップにおいてフレームユニット11を冷却する場合、エキスパンドテープ7の冷却が実施された場で加熱を実施するのは非効率である。複数のフレームユニット11に対して次々とテープ拡張ステップS4及びテープ収縮ステップS5を実施する場合、冷却を実施する場所と、加熱を実施する場所と、を分離する方が高効率な加工を実施できる。
【0087】
テープ拡張ステップS4を実施した後、赤外線加熱装置にフレームユニット11を移動させる場合、まず、第1の緩和ステップとしてエキスパンドテープ7の径方向外側への拡張を完全に緩和し、拡張を解除する。その後、フレームユニット11を赤外線加熱装置に移動させる。該赤外線加熱装置は、例えば、エキスパンド装置12と同様に構成される。そして、エキスパンドテープ7を拡張させて第1の加熱ステップを実施し、その後、第2の緩和ステップを実施して拡張を緩和し、第2の加熱ステップを実施する。
【0088】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0089】
1 デバイスウェーハ
1a 表面
1b 裏面
3a,3b 方向
3c,3d 加工予定ライン
3e,3f 分割溝
5 デバイス
7 エキスパンドテープ
9 環状フレーム
11 フレームユニット
13 分割起点
15 環状領域
17 第1の方向に沿った領域
17a,17b 境界
2 加工装置
4 保持テーブル
6 加工ユニット
8 加工ヘッド
8a レーザビーム
10 カメラユニット
12 エキスパンド装置
14 拡張ドラム
14a 多孔質部材
16 フレーム支持台
18 ロッド
20 エアシリンダ
22 クランプ
24 赤外線照射ユニット
24a 赤外線