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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】発熱具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61F7/08 334B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018124871
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020000667
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 悟朗
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05050596(US,A)
【文献】実開昭62-101817(JP,U)
【文献】実開昭63-043532(JP,U)
【文献】特開2005-281276(JP,A)
【文献】特開2005-021673(JP,A)
【文献】特開2005-328852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/08
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層及び裏面層の外周縁を全周にわたって接合することで形成される袋体と、
前記袋体に封入される発熱材料と、
前記袋体との間に身体の一部分を挿入可能な空間を形成するように前記袋体の表面層及び裏面層の一方の層上に設けられるカバーと、を備え、
前記カバーは、非通気性であり、
前記カバーは、前記カバーが設けられた層との接合部分よりも前記空間に身体の一部分を挿入するための開口側の部分を、前記袋体の前記カバーが設けられていない層側に折り重ねることが可能に構成されている、
発熱具。
【請求項2】
記袋体の前記カバーが設けられた層は、前記カバーが設けられていない層よりも通気度が低い、請求項1に記載の発熱具。
【請求項3】
前記袋体の前記カバーが設けられた層は非通気性である、請求項2に記載の発熱具。
【請求項4】
前記カバーが前記袋体の前記カバーが設けられていない層側に位置するように前記空間に身体の一部分を挿入するための開口を通して裏返すことが可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の発熱具。
【請求項5】
前記カバーは、前記袋体の前記カバーが設けられた層の全面を覆うことが可能な大きさに形成されている、請求項4に記載の発熱具。
【請求項6】
前記カバーは、前記袋体の表面層及び裏面層の全面を覆うことが可能な大きさに形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の発熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てカイロなどの身体の一部分を温めることができる発熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
身体を温めるのに用いられる発熱具として、通気性を有する扁平状の袋体に空気と接触することで発熱する粉状の発熱性組成物が封入された使い捨てカイロが従来より知られている(例えば特許文献1を参照)。使い捨てカイロは、携帯性、安全性、簡便性などに優れかつ安価であるために頻用されている。
【0003】
この種の発熱具のうち、衣類などに対して貼り付けることができない、いわゆる貼らないタイプの使い捨てカイロは、手に持つことで手を温めたり、手に持ってこれを身体の適所に当てることで身体の他の部分を温めるのに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-208031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した貼らないタイプの使い捨てカイロは、例えば手の指を温めるためには手で持ち続けなければならず、足の指を温めるためには手で持って足の指に当て続けなければならないため、手で何か他の作業をしながら温めることができない点で改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、身体への装着が可能な発熱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発熱具は、表面層及び裏面層の外周縁を全周にわたって接合することで形成される袋体と、前記袋体に封入される発熱材料と、前記袋体との間に身体の一部分を挿入可能な空間を形成するように前記袋体の表面層及び裏面層の少なくとも一方の層上に設けられるカバーと、を備え、前記カバーは、非通気性であることを特徴としている。
【0008】
本発明の発熱具においては、前記カバーは、前記袋体の表面層及び裏面層の一方の層上に設けられ、前記袋体の前記カバーが設けられた層は、前記カバーが設けられていない層よりも通気度が低いことが好ましい。この場合、前記袋体の前記カバーが設けられた層は非通気性であることがより好ましい。また、前記カバーが前記袋体の前記カバーが設けられていない層側に位置するように前記空間に身体の一部分を挿入するための開口を通して裏返すことが可能であることがより好ましい。また、前記カバーは、前記袋体の前記カバーが設けられた層の全面を覆うことが可能な大きさに形成されていることがより好ましい。
【0009】
また、本発明の発熱具においては、前記カバーは、前記袋体の表面層及び裏面層の一方の層上に設けられ、前記カバーは、前記袋体の前記カバーが設けられていない層側に折り重ねることが可能であることが好ましい。この場合、前記カバーは、前記袋体の表面層及び裏面層の全面を覆うことが可能な大きさに形成されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発熱具によると、使用者は、袋体に設けられたカバー内の空間に、例えば手の指などの身体の一部分を挿入することで、袋体が使用者の身体の一部分に保持されるので、袋体を手で持つなどしなくても身体の一部分に当てることができる。よって、例えば本を読んだり携帯電話を操作するなどの作業をしながらでも身体の一部分を温めることができる。
【0011】
そのうえ、発熱具のカバー内の空間は、カバーが非通気性であることにより保温性が高められているので、空間内に挿入した手の指などの身体の一部分を効果的に温めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】発熱具の斜視図である。
図2】発熱具の底面図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4】発熱具の使用状態の斜視図である。
図5】発熱具を裏返しにした状態の斜視図である。
図6】変形例の発熱具の断面図である。
図7】変形例の発熱具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1図3は、本発明の一実施形態に係る発熱具1を示す。発熱具1は、発熱材料2と、発熱材料2を封入した扁平状の袋体3と、袋体3の少なくとも一方面側に袋体3との間に身体の一部分(本実施形態では手の指)を挿入可能な空間5を形成するように設けられたカバー4とを備える。
【0014】
発熱材料2は、例えば空気との接触により発熱する発熱性の組成物を好適に例示することができる。発熱性の組成物は、空気との接触により発熱するものであればよく、例えば、被酸化性金属、活性炭、保水剤(木粉、バーミキュライト、けい藻土、パーライト、シリカゲル、アルミナ、吸水性樹脂など)、金属塩(食塩など)及び水をそれぞれ適宜の含有量含んでいる、従来から使い捨てカイロに用いられている公知の組成物を使用することができる。被酸化性金属は、酸化反応熱を発する金属であり、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。なかでも、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0015】
なお、発熱材料2は、空気との接触により発熱する材料以外を用いてもよく、例えば、電子レンジなどでマイクロ波の照射を受けることで発熱する材料(例えばフェライトなどのセラミック粉末など)を用いてもよい。
【0016】
袋体3は、外周縁が全周にわたって接合された表面層及び裏面層を備え、表面層と裏面層との間に発熱材料2の封入空間を有する。本実施形態では、袋体3は、平面視長方形状を呈する2枚のシート材30,31からなる。2枚のシート材30,31を重ね合わせ、外周縁を全周にわたって所定の幅で、例えば公知の接着剤を用いて接合する、又は樹脂フィルム同士の熱融着により接合(ヒートシール)することなどによって、内部に発熱材料2の封入空間を有する袋状に形成されている。袋体3の2枚のシート材30,31の接合部32の幅d1は、特に限定されるものではないが、1mm以上20mm以下程度であることが好ましい。
【0017】
2枚のシート材30,31は、発熱具1が手で揉みほぐされるように可撓性を有している。また、2枚のシート材30,31のうち、袋体3の表面層を構成する一方のシート材(第1シート材)30は通気性を有している。
【0018】
第1シート材30としては、強度や発熱材料2の発熱に対する耐久性などを考慮すると樹脂フィルムを用いることが好ましい。樹脂フィルムに使用される樹脂は、特に制限されるものではないが、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体などを例示することができるが、その中でもポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体を好ましく例示することができる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
第1シート材30に用いる樹脂フィルムには、通気性を確保するために、複数の穿孔(図示せず)が形成されており、複数の穿孔を介して空気が袋体3の内外を連通して発熱材料2に触れることで発熱材料2が発熱する。穿孔は、樹脂フィルムの全域に形成されていてもよいし、一部分に形成されていてもよい。また、穿孔の大きさは、発熱材料2の袋体3外部への漏出を防止できる程度の大きさであれは特に制限されないが、0.1mm以上0.3mm以下程度であることが好ましい。穿孔の外形及び数も特に制限されず、穿孔の大きさ、形状、数は、袋体3の通気度に応じた使用時の発熱具1の体感温度を考慮して、適宜設定される。樹脂フィルムに穿孔を形成する方法は、従来公知の方法を用いることができる。
【0020】
また、第1シート材30は、発熱具1の肌触りを良好とすることを考慮すれば、通気性を有する織布又は不織布をさらに用い、樹脂フィルムに織布又は不織布を積層されてなる積層体により構成することが好ましい。この場合には、発熱材料2側となる内側に樹脂フィルムが、外側に織布又は不織布が配置される。
【0021】
通気性を備えた織布又は不織布の繊維素材としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレートなどの合成繊維;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;綿、麻、絹、紙などの天然繊維;これらの繊維の混合繊維などを例示することができる。その中でも、肌触りを良好とする観点から、繊維素材としてはナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなど、より好ましくはナイロン、ポリエステルを例示することができる。これらの繊維素材は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。織布又は不織布の目付は、発熱材料2の袋体3外部への漏出を防止できる程度の目付であれば特に制限されないが、20g/m以上70g/m以下程度であることが好ましい。
【0022】
袋体3の裏面層を構成する他方のシート材(第2シート材)31は、上述した第1シート材30と同様に、樹脂フィルム単体もしくは樹脂フィルムに織布又は不織布を積層させてなる積層体により構成することができる。第2シート材31を樹脂フィルムに織布又は不織布を積層されてなる積層体により構成する場合には、発熱材料2側となる内側に樹脂フィルムが、外側に織布又は不織布が配置される。樹脂フィルムに使用される樹脂、及び、織布又は不織布の繊維素材としては、第1シート材30で例示したものと同じものを好ましく例示することができる。
【0023】
第2シート材31は、通気性を有していてもよいし、非通気性としてもよいが、通気性を有している場合には、第1シート材30よりも通気度が低いことが好ましい。第2シート材31が非通気性である、又は通気性を有していても第1シート材30よりも通気度が低いことにより、第2シート材31側から発熱材料2に空気が供給されることを抑制することができるうえ、発熱材料2の発熱に伴い発生する水蒸気が第2シート材31とカバー4との間の空間5に侵入することを抑制することができる。第2シート材2の通気度は、第2シート材31を構成する樹脂フィルムに形成する通気のための穿孔の数を調整することで制御することができ、穿孔を形成しないことで第2シート材31を非通気性とすることができる。
【0024】
袋体3を構成する2枚のシート材30,31の厚みは、特に制限されるものではないが、厚みが小さいほど発熱具1を柔らかくかつ手になじみやすくできる一方で、厚みが小さすぎると袋体3の強度が低下するため、0.1mm以上2.0mm以下程度であることが好ましい。
【0025】
なお、本実施形態では、袋体3は、2枚のシート材30,31で構成されているが、1枚のシート材を半分に折り重ねて外周縁を全周にわたって所定の幅で接合することで、袋状に形成してもよい。この場合には、1枚のシート材の各領域で樹脂フィルムに形成する穿孔の数を調整することで、各領域の通気度を制御することができる。
【0026】
カバー4は、非通気性のシート材で構成されている。カバー4を構成するシート材としては、肌にやわらかく接触し、かつ非通気性であればよく、例えば上述した袋体3の第1シート材30や第2シート材31と同様に、樹脂フィルム単体もしくは樹脂フィルムに織布又は不織布を積層させてなる積層体により構成することができる。カバー4を構成するシート材を樹脂フィルムに織布又は不織布を積層されてなる積層体により構成する場合には、袋体3側となる内側に樹脂フィルムが、外側に織布又は不織布が配置される。樹脂フィルムに使用される樹脂、及び、織布又は不織布の繊維素材としては、第1シート材30で例示したものと同じものを好ましく例示することができる。カバー4を構成するシート材は、樹脂フィルムには通気のための穿孔が形成されておらず、これにより非通気性とされている。
【0027】
なお、本発明における非通気性とは、袋体3やカバー4を構成するシート材が空気を通すための孔(例えば樹脂フィルムに形成される上述した穿孔や素材自体にもともと形成されている細孔)を有していないことを意味し、例えば樹脂フィルム自体がわずかながら通気していたとしても、非通気性に含まれる。
【0028】
カバー4は、本実施形態では、袋体3の第2シート材31側に設けられている。カバー4は、袋体3の第2シート材31の少なくとも一部分に例えば公知の接着剤を用いて接合される、又は樹脂フィルムと不織布(もしくは織布)との疑似接着により接合されることなどによって、袋体3に取り付けられている。カバー4は、本実施形態では、袋体3との間の空間5への開口6が予め形成されるように、袋体3の第2シート材31に接合される。開口6は、カバー4と袋体3との間の空間5に身体の一部分(本実施形態では手の指)を挿入するための部位であり、図4に示すように、開口6から空間5に身体の一部分(本実施形態では手の指)を挿入することで、袋体3を使用者の身体の一部分(本実施形態では手の指)に保持させることが可能となる。
【0029】
カバー4は、カバー4及び第2シート材31の外周縁の一部分同士が所定の幅で接合される、つまりは、カバー4及び第2シート材31の外周縁同士が開口6を除く部分で所定の幅で接合されることで、袋体3に取り付けられることが好ましい。これにより、カバー4と袋体3との間の空間5は、開口6を除いてはカバー4が非通気性であることにより気密となるため、空間5内の保温性を向上することができる。
【0030】
開口6の大きさは、空間5に挿入する身体の一部分、本実施形態では手の指を受け入れ可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、カバー4が袋体3の通気性を有する第1シート30側に位置するよう開口6を通して発熱具1を裏返すことができる程度の大きさに設計されることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、カバー4は、袋体3の一方面(第2シート材31の表面)の全域を覆うように袋体3と同じ形状・大きさの平面視長方形状を呈している。そして、カバー4の外周縁は、一対の短辺と一方の長辺との3辺で第2シート材31の外周縁に接合され、他方の長辺に空間5への開口6が形成されており、開口6以外には、第2シート材31に接合されていない部分が無いように設計されている。本実施形態においても、カバー4と袋体3との間の空間5は、開口6を除いてはカバー4が非通気性であることにより気密となるため、空間5内の保温性が向上している。また、図5に示すように、発熱具1を開口6を通して裏返すことが可能となっている。
【0032】
なお、本実施形態では、袋体3とは別に用意されたシート材をカバー4として袋体3に貼り合わせているが、1枚のシート材でカバー4付きの袋体3を構成することもできる。具体的には、1枚のシート材を長さ方向に3分割し、一方の端から順に、袋体3の裏面層となる領域、袋体3の表面層となる領域、カバー4となる領域とする。1枚のシート材の各領域で樹脂フィルムに形成する穿孔の数を調整することで、各領域の通気度を制御することができる。そして、袋体3の裏面層となる領域を袋体3の表面層となる領域に折り重ねて外周縁を全周にわたって所定の幅で接合した後、袋体3の裏面層となる領域にカバー4となる領域を折り重ねて外周縁の一部分を所定の幅で接合することで、カバー4付きの袋体3を形成してもよい。
【0033】
カバー4と袋体3の第2シート材31との接合強度は、特に限定されるものではないが、袋体3の2枚のシート材30,31の接合強度よりも小さくなるように、強度設計されていることが好ましい。これにより、使用時にカバー4に袋体3から引き剥される方向の力が作用して、カバー4が袋体3から剥離した場合に、カバー4の剥離に伴ってカバー4が接合された袋体3の第2シート材31が第1シート材30から引き剥がされることが防止されている。このように、カバー4の剥離時に袋体3の接合部32においては2枚のシート材30,31が剥離せずに接合が維持されるため、不意に袋体3が開封することがなく、袋体3内の発熱材料2の漏出を防止することができる。
【0034】
カバー4と袋体3の第2シート材31との接合強度は、袋体3の2枚のシート材30,31の接合強度よりも小さければ特に限定されるものではないが、10N/15mm巾未満であることが好ましく、8.0N/15mm巾以下であることがより好ましい。カバー4と袋体3の第2シート材31との接合強度が8.0N/15mm巾以下であると、多少力を入れてカバー4を袋体3から引き剥がせば、カバー4を第2シート材31から剥離することが可能となる。よって、最初は、カバー4と袋体3との間の空間5に通ずる開口6を小さく形成していても、挿入する身体の一部分、本実施形態では手の指の大きさや本数に応じてカバー4を袋体3の第2シート材31から徐々に剥離することで、開口6のサイズを大きく調整することができる。これにより、開口6のサイズを空間5に挿入する身体の一部分が入る程度として、開口6を過度に広がらないようにすることができるので、開口6から熱が空間5の外側に逃げることを抑制することができ、空間5内の保温性を効果的に高めることができる。よって、空間5に挿入された身体の一部分をより良好に温めることができる。また、開口6が挿入する身体の一部分に対して大きすぎないことで、カバー4が身体の動きに良好に追随するので、身体へのフィットを向上することができる。なお、カバー4と袋体3の第2シート材31との接合強度は、カバー4が第2シート材31から容易に剥離することがないようにするためには6.0N/15mm巾以上であることが好ましい。
【0035】
一方、袋体3の2枚のシート材30,31の接合強度は、袋体3の接合部において2枚のシート材30,31が強固に接合して剥離しないようにするためには10N/15mm巾以上であることが好ましく、12N/15mm巾以上であることがより好ましい。
【0036】
上述した接合強度の測定方法は以下の通りである。まず、袋体3の2枚のシート材30,31の接合強度は、図1の二点鎖線で示すように、カバー4付きの袋体3から接合部32を含むようにして幅D:15mm、長さL:50mmの短冊状の試料を3枚ずつ切り出した後、プッシュプルスケール(株式会社イマダ製、PS)を用いて、引張速度300mm/分、つかみ間隔20mmで各試料の2枚のシート材30,31の剥離強度(N/15mm巾)を測定し、各測定値を平均することにより算出される。
【0037】
また、カバー4と袋体3の第2シート材31との接合強度は、同様に図1の二点鎖線で示すように、カバー4付きの袋体3からカバー4及び第2シート材32の接合部を含むようにして幅D:15mm、長さL:50mmの短冊状の試料を3枚ずつ切り出した後、プッシュプルスケール(株式会社イマダ製、PS)を用いて、引張速度300mm/分、つかみ間隔20mmで各試料のカバー4及び第2シート材31の剥離強度(N/15mm巾)を測定し、各測定値を平均することにより算出される。
【0038】
カバー4と袋体3の第2シート材31との接合部40の幅d2は、特に限定されるものではないが、袋体3の2枚のシート材30,31の接合部32の幅d1と同じもしくは幅d1よりも小さいことが好ましい。これにより、カバー4が袋体3から剥離した場合に、接合部32の内側で第2シート材31がカバー4の剥離に伴いカバー4に引っ張られることで、第2シート材31が破損したり、第2シート材31と第1シート材30との接合強度が低下することを防止できる。
【0039】
上記構成の発熱具1によれば、使用者は、図4に示すように、袋体3の一方面(第2シート材31)側に設けられたカバー4内の空間5に身体の一部分、例えば手の指を挿入することで、袋体3が使用者の手の指に保持されるので、袋体3を手で持つなどしなくても手の指に密着させることができる。よって、例えば本を読んだり携帯電話を操作するなどの作業をしながらでも手の指を温めることができる。そのうえ、手に保持された発熱具1を身体の他の部分に当てることで当該部分を温めることもできる。
【0040】
また、発熱具1のカバー4内の空間5は、カバー4の非通気性により気密となっていて保温性が高められている。よって、空間5内に挿入した手の指などの身体の一部分を効果的に温めることができる。
【0041】
また、発熱具1の使用後において、一時的に使用を中断する場合には、図5に示すように、カバー4が袋体3の第1シート30側に設けられるよう開口6を通して発熱具1を裏返すことにより、袋体3内の発熱材料2を非通気性のカバー4と、通気度の低い又は非通気性の第2シート材32とで覆い包むことができる。これにより、非使用時に発熱材料2に空気が極力触れないようにすることができる。本実施形態の発熱具1は、発熱材料2が空気と接触することで発熱することから、発熱材料2が空気と接触し続ける間、発熱が保持されて、所定時間発熱することで発熱しなくなる。そのため、非使用時に発熱材料2に極力空気が接触しないようにして発熱材料2の発熱を一旦停止することで、その分の発熱保持時間を維持することができ、発熱具1を長持ちさせることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、カバー4は、外周縁のうち、一対の短辺と一方の長辺との3辺で第2シート材31の外周縁に接合されているが、一対の長辺と一方の短辺との3辺で第2シート材31の外周縁に接合されていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、カバー4は、外周縁の3辺で第2シート材31の外周縁に接合されているが、図6に示すように、外周縁のうち、対向する一対の辺(図6では短辺であるが長辺でもよい)で第2シート材31の外周縁に接合されていて、前記開口6と対向する位置に他の開口7が設けられていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、カバー4は、袋体3との間の空間5への開口6,7が予め形成されるように、袋体3の第2シート材31に接合されているが、例えばカバー4及び第2シート材31の外周縁が全周にわたって互いに接合されていることで、当初は開口6,7が形成されていなくても、使用時にカバー4の外周縁の一部分を袋体3の第2シート材31から剥がすことにより、開口6,7を形成するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、カバー4及び第2シート材31の外周縁同士が接合されているが、必ずしも外周縁同士を接合する必要はなく、カバー4の外周縁を第2シート材31の内周縁よりも内側の領域に接合してもよく、カバー4の外周縁よりも内側の一部の領域を第2シート材2に接合してもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、カバー4は袋体3と同じ形状・大きさであるが、カバー4は、袋体3との間に空間5を形成するように外周縁の開口6を除く部分が袋体3の第2シート材31の外周縁に接合されていれば、袋体3と形状・大きさが異なっていてもよい。例えば図7に示すように、カバー4が袋体3よりも大きく形成されていて、カバー4を折り返すことで袋体3の第1シート材30側の面も覆うことができるように構成されていてもよい。これにより、袋体3内の発熱材料2を非通気性のカバー4で覆い包むことができるので、非使用時に発熱材料2に空気が極力触れないようにして発熱材料2の発熱を一旦停止することで、その分の発熱保持時間を維持することができ、発熱具1を長持ちさせることができる。なお、カバー4は、単に袋体3よりも長く延びているだけであってもよいが、図7に示すように、カバー4の袋体3よりも飛び出る部分は、二重構造をなしかつ両側縁が互いに接合されるとともに折り返された先端縁が袋体3の外周縁(長辺)に接合されることで、ポケット状に形成され、身体の一部分を収容できるように構成されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、袋体3の第2シート材31側にのみカバー4が設けられているが、第1シート材30側にもカバー4が設けられていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、袋体3は平面視で長方形状を呈しているが、正方形状、多角形状、円形状、楕円形状など、他の種々の形状を呈していてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、発熱具1はカバー4内の空間5に使用者の手の指を挿入するように設計されているが、身体のその他の部分(例えば足の指や頭など)を挿入するように設計されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 発熱具
2 発熱材料
3 袋体
4 カバー
5 空間
6 開口
30 第1シート材
31 第2シート材
32 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7