(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】洗浄セット及びその利用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/22 20060101AFI20220829BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220829BHJP
A61Q 11/02 20060101ALI20220829BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20220829BHJP
C11D 7/54 20060101ALI20220829BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20220829BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220829BHJP
A61K 8/362 20060101ALI20220829BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220829BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20220829BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20220829BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K8/22
A61K8/02
A61Q11/02
A61K8/23
C11D7/54
C11D17/06
A61K8/19
A61K8/362
A61K8/365
A61K8/368
A61K8/46
A61K8/55
(21)【出願番号】P 2018125583
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 晋吾
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-530484(JP,A)
【文献】特表2005-506137(JP,A)
【文献】特表2001-505195(JP,A)
【文献】特開2016-150929(JP,A)
【文献】特開2016-193967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを含む、洗浄セット
:
固形洗浄用組成物が、酸素系漂白剤と、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩からなる群より選択される少なくとも1種と、酸とを含み、且つ、水に溶解させた際のpHが7~12となる固形洗浄用組成物であり、
該酸素系漂白剤が、過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩及び過硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、
該酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸、アジピン酸、シュウ酸、リン酸、スルファミン酸、これらのアルカリ金属塩及びこれらのアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、
超音波洗浄器の出力が10~20Wである。
【請求項2】
口腔内装具洗浄用である、請求項
1に記載の洗浄セット。
【請求項3】
以下の固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを組み合わせることを特徴とする、洗浄方法
:
固形洗浄用組成物が、酸素系漂白剤と、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩からなる群より選択される少なくとも1種と、酸とを含み、且つ、水に溶解させた際のpHが7~12となる固形洗浄用組成物であり、
該酸素系漂白剤が、過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩及び過硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、
該酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸、アジピン酸、シュウ酸、リン酸、スルファミン酸、これらのアルカリ金属塩及びこれらのアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、
超音波洗浄器の出力が10~20Wである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄セット及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯、マウスピース、リテーナーといった口腔内装具等を洗浄することは口腔衛生等の点から重要である。
【0003】
例えば、酸素系漂白剤を含む固形洗浄剤を用いた義歯等の洗浄が、一般的に行われている(特許文献1)。固形洗浄剤を用いた義歯等の洗浄は、通常、固形洗浄剤を投入した水に義歯等を浸漬させ、一定時間放置することにより行われる。
【0004】
また、固形洗浄剤として、総入れ歯や部分床義歯といった様々な口腔内装具等に使用できる固形洗浄剤、金属を有する口腔内装具等に適した固形洗浄剤をはじめ、目的に応じた様々な固形洗浄剤が上市されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、酸素系漂白剤を含む固形洗浄剤であって、pHが比較的高い固形洗浄剤は、酸素系漂白剤を含む固形洗浄剤であって、pHが比較的低い固形洗浄剤と比較して、水中での崩壊性が悪く、従って、固形洗浄剤の崩壊に多くの時間を要するという問題が生じることに気づいた。
【0007】
そこで、本発明は、酸素系漂白剤を含み、pHが比較的高い固形洗浄用組成物の水中での崩壊性を改善する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、酸素系漂白剤を含む固形洗浄用組成物であって、水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物と、超音波洗浄器とを組み合わせることにより、該固形洗浄用組成物の水中での崩壊性が改善されることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを含む、洗浄セット。
項2.前記固形洗浄用組成物が、水に溶解させた際のpHが7~12となるものである、項1に記載の洗浄セット。
項3.前記超音波洗浄器の出力が3~35Wである、項1または2記載の洗浄セット。
項4.前記酸素系漂白剤が、過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩及び過硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載の洗浄セット。
項5.口腔内装具洗浄用である、項1~4のいずれかに記載の洗浄セット。
項6.酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを組み合わせることを特徴とする、洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄セットによれば、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物を、より短時間で崩壊することができる。このことから、本発明の洗浄セットによれば、簡便且つ効率よく洗浄対象物を洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、超音波洗浄器の外観のモデル図の例示である。
【
図2】
図2は、試験例で使用した錠剤を斜め上からみた写真である。
【
図3】
図3は、試験例で使用した錠剤を真上からみた写真である。
【
図4】
図4は、試験例で使用した錠剤を横からみた写真である。
【
図5】
図5は、試験例において、錠剤の中心付近から実質的に2以上に崩壊した錠剤の状態を示す例示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを含む、洗浄セットを提供する。
【0012】
固形洗浄用組成物
本発明の固形洗浄用組成物は、固形洗浄用組成物を水に溶解させた際のpHが中性以上となるものであり、ここで、中性以上とはpH7以上を意味する。より具体的には、「水に溶解させた際のpHが中性以上となる」固形洗浄用組成物とは、固形洗浄用組成物2.65gを25℃の水150mLに完全に溶解して得られる溶液のpHが7以上となる固形洗浄用組成物を意味する。該pHとして、好ましくはpH7~12、より好ましくはpH7~10が例示される。pHはpHメーター(堀場製作所製、型番F-53)にて測定する。ここで使用される水は精製水である。
【0013】
本発明において使用される酸素系漂白剤は制限されず、従来公知の酸素系漂白剤であればよい。酸素系漂白剤として、義歯等の口腔内装具の洗浄に使用可能な従来公知の酸素系漂白剤が好ましく例示される。酸素系漂白剤として、過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
過硫酸水素塩としては、例えば、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム、過硫酸水素リチウム等の過硫酸水素のアルカリ金属塩、過硫酸水素バリウム、過硫酸水素アンモニウム等が挙げられ、過硫酸水素塩は水和物であってもよい。過硫酸水素塩として、好ましくは過硫酸水素のアルカリ金属塩等が例示される。また、過硫酸水素塩は、硫酸水素塩や硫酸塩との複塩でもよく、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、硫酸カリウムの複塩が例示できる。例えば、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、硫酸カリウムの複塩の市販品として、オキソン(Oxone、ランクセス社)が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
過ホウ酸塩としては、例えば、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム等の過ホウ酸のアルカリ金属塩、過ホウ酸アンモニウム等が挙げられ、過ホウ酸塩は水和物であってもよい。過ホウ酸塩として、好ましくは過ホウ酸のアルカリ金属塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
過炭酸塩としては、例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等の過炭酸のアルカリ金属塩、過炭酸アンモニウム等が挙げられ、過炭酸塩は水和物であってもよい。過炭酸塩として、好ましくは過炭酸のアルカリ金属塩等が例示され、より好ましくは過炭酸ナトリウム等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
過硫酸塩としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸のアルカリ金属塩、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、過硫酸塩は水和物であってもよい。過硫酸塩として、好ましくは過硫酸のアルカリ金属塩が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
固形洗浄用組成物中の酸素系漂白剤の含有量は、該固形洗浄用組成物が中性以上のpHを示す限り制限されないが、該組成物中、3~80質量%が例示され、好ましくは5~50質量%が例示される。
【0019】
前記固形洗浄用組成物には、必要に応じて、発泡剤、キレート剤、界面活性剤、着色料、殺菌剤、香料、防錆剤、歯石防止剤、発泡安定剤、結合剤、滑沢剤、賦形剤、崩壊剤、消臭剤、防腐剤、pH調整剤、油性成分、漂白活性化剤、酵素等の他の成分を任意に含有してもよい。これらの他の成分において、従来、義歯等の口腔内装具の洗浄に使用可能な成分が好ましく例示される。他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その含有量も目的等に応じて適宜設定すればよい。
【0020】
前記固形洗浄用組成物は、前述の通りpHが中性以上にあるものであり、該pHは、使用する酸素系漂白剤の種類、必要に応じて使用する他の成分の種類、これらの含有量に応じて変更することができる。従って、目的に応じて、前記固形洗浄用組成物が中性以上のpHとなるように、pHに影響を与える成分の種類や含有量を適宜決定すればよく、該決定は本分野の技術常識に従えば容易である。
【0021】
本発明を限定するものではないが、任意の他の成分の一例を以下に記載する。
【0022】
前記固形洗浄用組成物が発泡剤を含有する場合、発泡剤は、公知の発泡剤であればよいが、義歯等の口腔内装具の洗浄に使用可能な従来公知の発泡剤が好ましく例示され、本発明において発泡剤は水存在下で二酸化炭素を発生できるものをいう。発泡剤として、好ましくは、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩の少なくとも1種と酸との組み合わせが例示される。
【0023】
炭酸塩としては、従来公知の炭酸塩であれば制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩は無水物であっても水和物であってもよく、好ましくは無水物である。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
炭酸水素塩としては、従来公知の炭酸水素塩であれば制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩等が挙げられ、好ましくは炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
炭酸塩と炭酸水素塩との複塩としては、従来公知の複塩であれば制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムとの複塩である、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
酸としては、従来公知の酸であれば制限されないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸、アジピン酸、シュウ酸等の有機酸、リン酸、スルファミン酸等の無機酸、これらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の塩等が挙げられる。酸として、より好ましくはクエン酸、リンゴ酸、これらの塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
前記固形洗浄用組成物が発泡剤を含有する場合、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩の少なくとも1種と酸の含有量は、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩の少なくとも1種と酸とが水中で反応して二酸化炭素を発生することができ、且つ、該組成物が中性以上のpHを示す限り制限されない。例えば、該固形洗浄用組成物中、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩の少なくとも1種と酸の含有量は、これらの合計量として、該組成物中、好ましくは8~80質量%が例示され、より好ましくは10~62質量%が例示される。
【0028】
また、前記固形洗浄用組成物が発泡剤を含有する場合、このように炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩の少なくとも1種と酸の含有量は、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩の少なくとも1種と酸とが水中で反応して二酸化炭素を発生することができ、且つ、該組成物が中性以上のpHを示す限り制限されないが、例えば、該固形洗浄用組成物中、炭酸塩、炭酸水素塩及びこれらの複塩の少なくとも1種の合計量100質量部に対して、酸は、好ましくは4~17000質量部、より好ましくは4~7500質量部が例示される。
【0029】
本発明を制限するものではないが、前記固形洗浄用組成物が発泡剤を含む場合、酸素系漂白剤として使用される成分や発泡剤として使用される成分の種類、含有量が、該組成物のpHに影響を与えるといえる。従って、製造する固形洗浄用組成物のpHが主に酸素系漂白剤と発泡剤によって影響を受ける場合は、所望のpHになるように、主にこれらの成分の種類や含有量を前述の説明を参考にして適宜組み合わせて使用すればよい。
【0030】
前記固形洗浄用組成物がキレート剤を含有する場合、キレート剤は公知のキレート剤であればよいが、従来、義歯等の口腔内装具の洗浄に使用可能なキレート剤が好ましく例示される。キレート剤として、例えばエチレンジアミン四酢酸及び/またはその塩、ポリリン酸及び/またはその塩(例えばピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム等)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
前記固形洗浄用組成物がキレート剤を含有する場合、キレート剤の含有量は該組成物が中性以上のpHを示す限り制限されないが、例えば、該組成物中、キレート剤の含有量は、好ましくは0.1~15質量%が例示され、より好ましくは0.5~10質量%が例示される。
【0032】
前記固形洗浄用組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤は公知の界面活性剤であればよく、カチオン性、アニオン性、非イオン性及び両性界面活性剤の別を問わず広く任意のものを用いることができる。例えば、従来、義歯等の口腔内装具の洗浄に使用可能な界面活性剤が好ましく例示される。
【0033】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(C6~C20)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C6~C20)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(C6~C20)ジメチルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、アルキル(C6~C20)アミン塩、アルキル(C6~C20)アミンエチレンオキサイド付加物、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、平均炭素数8~16のアルキル基を有する直鎖または分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、平均8~20の炭素原子を1分子中に有するオレフィンスルホン酸塩、平均炭素数8~20のアルキル基を有する直鎖または分岐鎖アルキルスルホ酢酸塩、平均炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、平均8~20の炭素原子を1分子中に有するアルカンスルホン酸塩等が挙げられる。これらにおいて制限されないが、例えばアルキル基としてラウリル基、ミリスチル基等が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、好ましくは平均炭素数8~16のアルキル基を有する直鎖または分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、平均8~20の炭素原子を1分子中に有するオレフィンスルホン酸塩、平均炭素数8~20のアルキル基を有する直鎖または分岐鎖アルキルスルホ酢酸塩、平均炭素数8~20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩等が例示され、より好ましくは炭素数10~18のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、10~18の炭素原子を1分子中に有するオレフィンスルホン酸塩、炭素数10~18のアルキル基を有する直鎖アルキルスルホ酢酸塩、炭素数10~18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、高級アルコールプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールプロピレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、脂肪酸プロピレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型界面活性剤、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル及びアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
両性界面活性剤としては、例えば、平均炭素数10~16のアルキル基を有するアルキルアミノプロピオン酸塩(例えばラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム)等のアミノ酸型界面活性剤、平均炭素数10~16のアルキル基を有するアルキルジメチルベタイン(ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン等)、ラウリルヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
これらの界面活性剤において、塩としては、例えば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、塩酸塩等の酸付加塩等が挙げられ、好ましくはナトリウム塩等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
これらの界面活性剤の中でも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく、良好な洗浄効果が得られるという観点から、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0039】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
前記固形洗浄用組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は該組成物が中性以上のpHを示す限り制限されないが、例えば、該組成物中、界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1~5質量%が例示され、より好ましくは0.5~4質量%が例示される。
【0041】
本発明の固形洗浄用組成物は、好ましくは発泡剤を含有する。本発明の固形洗浄用組成物が発泡剤を含有する場合、該固形洗浄用組成物は、所謂、発泡性の洗浄用組成物として好ましく使用できる。
【0042】
この観点から、本発明の固形洗浄用組成物は、好ましくは、酸素系漂白剤と共に、あるいは、酸素系漂白剤及び発泡剤と共に、界面活性剤等が含まれていてもよい。
【0043】
本発明の固形洗浄用組成物は、固形状である限り制限されず、錠剤、粒剤、顆粒剤、散剤、粉末剤等の固形形態が例示される。該固形洗浄用組成物の大きさや形状も制限されず、適宜設定すればよい。
【0044】
本発明の固形洗浄用組成物は、酸素系漂白剤、必要に応じて他の成分を混合し、公知の手順に従って必要に応じて造粒、打錠等して、所望の形態、大きさ、形状に製剤化することにより製造される。
【0045】
本発明を制限するものではないが、例えば本発明の固形洗浄用組成物が錠剤である場合、1錠剤あたりの質量は、1回の洗浄において使用する前記組成物量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば約1~20g、好ましくは1~10gが挙げられる。
【0046】
本発明を制限するものではないが、例えば本発明の固形洗浄用組成物が錠剤である場合、1錠剤あたりの大きさも、1回の洗浄において使用する前記組成物量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば直径10~50mm、好ましくは10~30mmが挙げられ、また、厚み1~20mm、好ましくは1~10mmが挙げられる。
【0047】
本発明において固形洗浄用組成物の崩壊は、本発明の固形洗浄用組成物と水とを接触させた状態で実施される。本発明の固形洗浄用組成物と水とが接触する限り制限されないが、通常、該組成物全体が水に浸漬するように接触させることが好ましい。該接触は、例えば、水に本発明の固形洗浄用組成物を投入することによって実施してもよく、本発明の固形洗浄用組成物に水を投入することによって実施してもよい。
【0048】
また、本発明の固形洗浄用組成物の洗浄対象物は、その洗浄を目的とするものであれば制限されないが、対象物として好ましくは義歯、マウスピース、リテーナー等の口腔内装具等が例示される。義歯は、総義歯、部分床義歯の別を問わない。該洗浄物として、好ましくは金属を有する口腔内装具等が例示され、例えば金属を有する部分床義歯、マウスピース、リテーナーが例示される。
【0049】
本発明において対照物の洗浄は、本発明の固形洗浄用組成物を入れた水と対照物とを接触させた状態で実施される。本発明の固形洗浄用組成物を入れた水と対照物とが接触する限り制限されないが、効果的に対照物を洗浄する観点から、対照物全体が本発明の固形洗浄用組成物を入れた水に浸漬するように接触させることが好ましい。該接触は、例えば、水に本発明の固形洗浄用組成物を投入し、次いで対照物を投入することによって実施してもよく、本発明の固形洗浄用組成物に水を投入し、次いで対照物を投入することによって実施してもよく、対照物が入った水に本発明の固形洗浄用組成物を投入することによって実施してもよい。
【0050】
また、この限りにおいて制限されないが、例えば、本発明の固形洗浄用組成物が発泡性の組成物である場合、より好ましくは、対象物が、本発明の固形洗浄用組成物が水に溶解する際に放出する気泡と接触するようにして、前記洗浄を行うことが例示される。
【0051】
本発明において対照物の洗浄は、このように本発明の固形洗浄用組成物を入れた水と対照物とを接触させた状態で行えばよく、超音波処理下であってもなくてもよい。本発明によれば超音波処理することにより該固形洗浄用組成物の崩壊性が高まるため、より短時間で効率良く洗浄を行う点から、本発明において対照物の洗浄は、本発明の固形洗浄用組成物を入れた水と対照物とを接触させた状態で、超音波処理下で行われることがより好ましい。この観点から、洗浄は、例えば、前述のようにして本発明の固形洗浄用組成物を入れた水と対象物とを接触させ、速やかに超音波処理に供することにより行われてもよく、本発明の固形洗浄用組成物を入れた水と対象物とを接触させ、次いで超音波処理に供し、超音波処理終了後に、そのまま一定時間放置してもよい。
【0052】
超音波処理を行う時間は制限されないが、1分~30分が例示され、好ましくは3分~15分が例示され、本発明の固形洗浄用組成物の形状、大きさ、洗浄対象物の汚れの程度等に応じて適宜設定すればよい。また、本発明の固形洗浄用組成物の使用頻度も同様に制限されず、適宜設定すればよい。
【0053】
本発明の固形洗浄用組成物の崩壊や洗浄に使用される水は制限されず、水道水、精製水、脱イオン水、生理食塩水等が挙げられる。使用される水の温度も制限されないが、5~50℃の範囲が好ましく例示される。本発明の固形洗浄用組成物と水の使用量も制限されず、本発明の固形洗浄用組成物の形状、大きさ、洗浄の汚れの程度等に応じて適宜設定すればよく、本発明の効果が得られる限り制限されないが、水約70~200mLに対して本発明の固形洗浄用組成物1~20g、好ましくは1~10gを用いることが例示される。
超音波洗浄器
超音波洗浄器は、少なくとも本発明の固形洗浄用組成物と水とが投入される洗浄層を備えるものであり、この限りにおいて公知の超音波洗浄器を使用し得る。本発明の固形洗浄用組成物を用いてより効率良く対象物の洗浄を行う点からは、超音波洗浄器は、少なくとも本発明の固形洗浄用組成物と水と洗浄対象物とが投入される洗浄層を備える。本発明を制限するものではないが、超音波洗浄器の外観のモデル図として
図1が例示される。
【0054】
超音波洗浄器や洗浄層の大きさや形状は、この限りにおいて制限されず、例えば、対象物が義歯である場合、効率良く義歯の洗浄を行う点からは、洗浄層は、総入れ歯や部分入れ歯といった義歯を収容、洗浄できる大きさや形状であればよい。省スペース、取り扱い易い等の観点からは、超音波洗浄器はコンパクトであることが好ましい。
【0055】
この限りにおいて制限されないが、洗浄層の容量として、好ましくは100~600mL、より好ましくは120~300mLが例示される。また、洗浄層の形状として、直径または長辺が12cm以下の円形状、楕円形状、半円形状等、一辺が10cm以下の四角形状等、これに順ずる大きさの任意の形状が挙げられる。これらの下限値は、少なくとも本発明の固形洗浄用組成物と水、より好ましくは少なくとも本発明の固形洗浄用組成物と水と洗浄対象物とを投入でき、固形洗浄用組成物、洗浄対象物に対して超音波処理できる限り制限されない。
【0056】
超音波洗浄器の大きさや形状は、前記洗浄層の大きさや形状に応じて、適宜設定すればよい。例えば、省スペース等の観点から、超音波洗浄器本体の大きさとして、幅108cm、奥行き108cm、高さ67cmで形成される立方体に実質的に収まる大きさが例示される。
【0057】
また、超音波洗浄器の重さは、容易に持ち運びができる重さであれば制限されない。該重さとして、例えば、250~600gが例示され、好ましくは300~500gが例示される。
【0058】
超音波洗浄における周波数として、15~80kHzが例示され、好ましくは30~50kHzが例示される。また、出力は、3~35Wが例示され、好ましくは10~20Wが例示される。
【0059】
洗浄層には、必要に応じて、水を入れる目安となる印(例えば、水位線)等が設けられていてもよい。例えば、通常、前記印は洗浄層の内側から見えるように設けられている。また、洗浄層の少なくとも一部に、洗浄層内の溶液の排出が容易になる排出口(例えば、洗浄層の上部の淵にとがった部分)が設けられていても良い。また、超音波洗浄器は、洗浄層に収容できる、固形洗浄用組成物溶解用及び/または洗浄用トレーを用いるものであってよく、該トレーに、本発明の固形洗浄用組成物を投入する目安となる印や、水を入れる目安となる印等が設けられていてもよく、この印に従って、本発明の固形洗浄用組成物や水を必要量投入してもよい。また、該トレーは網目構造を有していても良い。固形洗浄用組成物の崩壊や洗浄対象物の洗浄は、これらの両方またはいずれかを該トレーに置いた状態で、洗浄層内で超音波処理により行っても良い。超音波処理後、洗浄層から洗浄対象物を取り出す際、洗浄対象物を置いた洗浄用トレーごと取り出しても良い。
【0060】
超音波洗浄器は、蓋を有していても有していなくてもよく、使い勝手の向上等の点から、例えば、洗浄層の上部を覆う蓋を有していても良い。また、超音波洗浄器は、電源のオン、オフを切り替えることのできるスイッチ、タイマー等を有していてもよい。また、超音波洗浄器は、電源コードや電源プラグを連結させて使用するものであってもよく、電池式であってもよい。
洗浄セット
本発明の洗浄セットは、前記固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを含む。本発明の洗浄セットは、必要に応じて、更に取扱説明書、固形洗浄用組成物溶解用トレー、洗浄用トレー、時計ホルダー、タイマー等が含まれていても良い。
【0061】
本発明の洗浄セットを用いる場合、前記洗浄対象物を洗浄できる限り、その方法は制限されないが、効率のよい洗浄を行う点から、通常、前記洗浄層内に、少なくとも本発明の固形洗浄用組成物、水及び前記洗浄対象物を入れ、次いで、超音波処理を行うことが好ましく例示される。
【0062】
本発明の固形洗浄用組成物と超音波洗浄器を組み合わせによれば、該組成物の崩壊時間を短縮することができる。このことから、本発明は、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを組み合わせることを特徴とする、固形洗浄用組成物の崩壊方法を提供するといえ、このことから、本発明の洗浄セットによれば、また、該方法によれば、簡便且つ効率よく洗浄対照物を洗浄できる。
【0063】
このことから、本発明は、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを組み合わせることを特徴とする、洗浄方法を提供する。該方法は、本発明の固形洗浄用組成物と超音波洗浄器とを組み合わせて用いる限り制限されず、その実施態様は前述の通りである。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
試験例
固形洗浄用組成物の作製
表1に示す組成に従い、各成分を混合し、6種類の固形洗浄用組成物を作成した(それぞれ固形洗浄用組成物1~5及び参考例1)。
【0065】
具体的には、各成分を混合し、径17φの金型を用いて3MPaで打錠成型することによって、1個あたり2.65gの錠剤形態の固形洗浄用組成物を作製した。なお、錠剤の直径は24.8mm、厚みは3.48mmであった。
【0066】
なお、各組成物を作製するにあたり使用した主な成分は次の通りである。
過硫酸水素ナトリウム 商品名オキソン、ランクセス社製;過ホウ酸ナトリウム 商品名SODIUM PERBORATE MONOHYDRATE、BELINKA社製;クエン酸 商品名クエン酸(無水)、昭和化工社製;リンゴ酸 商品名リンゴ酸フソウS、扶桑化学工業社製;炭酸ナトリウム 商品名ソーダ灰ライト、トクヤマ社製;炭酸水素ナトリウム 商品名重炭酸ナトリウム、トクヤマ社製;ピロリン酸ニ水素ニナトリウム 商品名Sodium Acid Pyrophosphate Food Additive、Aditya Birla Chemicals社製。
【0067】
超音波洗浄器
超音波洗浄器として、
図1のモデル図のように示される超音波洗浄器を使用した。
【0068】
該超音波洗浄器は、少なくとも前記固形洗浄用組成物や水を収容できる洗浄層を備えていた。該超音波洗浄器は更に、洗浄層に収容できる大きさのトレーを使用できるものであった。洗浄層の容量は250mLである。周波数40kHz、出力15Wにて試験を行った。
【0069】
崩壊性評価
超音波洗浄器の洗浄層に25℃の水(精製水)150mLを注ぎ、次いで、前述のようにして得た固形洗浄用組成物1(錠剤1つ)を投入し、速やかに超音波洗浄器による超音波処理を行った。超音波処理開始から錠剤の形が崩れた時間までを測定し、これを崩壊時間とした。錠剤投入と超音波処理開始は同時に行った。これを実施例1とした(n=3)。超音波処理を行わない以外は同様に崩壊時間を測定したものを、比較例1とした。固形洗浄用組成物2~5及び参考例1についても同様に崩壊時間を測定し、それぞれ実施例2~5、比較例2~5、参考例1A、参考例1Bとした(n=3)。比較例1~5及び参考例1Bにおいては、すなわち、錠剤投入時から錠剤の形が崩れた時間までを測定した。
【0070】
本評価において「錠剤の形が崩れた時間」は、
図2~4に示す形態にある錠剤を水に投入した時から、
図5に示すように錠剤の中心付近から実質的に2以上に崩壊された状態になった時までの時間」をいう。
図2~4は、本試験例で得た1つの錠剤を3方向から見た図である。
【0071】
別途、25℃の水(精製水)150mLに、前述のようにして作製した錠剤1錠を投入し、錠剤を完全に溶解させてpHを測定した。該測定にはpHメーター型番F-53(堀場製作所製)使用した。
【0072】
結果
結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
表1の参考例1Bは、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが6.4となる錠剤であって、超音波処理を行わない場合の結果を示す。この場合、超音波処置を行っていないにもかかわらず、速やかな崩壊が認められ、具体的には60秒で錠剤が崩壊した。また、同錠剤に対して超音波処理を行った場合であっても、60秒で錠剤が崩壊した。このことから、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが6.4となる錠剤は、超音波処理の有無にかかわらず速やかに崩壊することが分かった。
【0075】
一方、表1の比較例1~5から理解できる通り、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが7.5以上となる錠剤では、超音波処理を行わない場合、少なくとも8分以上の崩壊時間を要し、比較例5では48分もの崩壊時間を要した。
【0076】
これに対して、比較例1~5において超音波処理を行った実施例1~5では、崩壊時間が2~4分であり、崩壊時間を著しく短縮することができた。
【0077】
このことから、酸素系漂白剤を含み且つ水に溶解させた際のpHが中性以上となる固形洗浄用組成物を水中で超音波処理することにより、その崩壊時間が顕著に短縮されることが分かった。また、このような崩壊時間の短縮によって、固形洗浄用組成物に由来する洗浄成分が水中に短時間で拡散しやすくなるため、一層簡便且つ効率よく義歯を洗浄できることが分かった。