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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】光学式角度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
G01B11/26 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018128542
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2020008379
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰秀
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-268000(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034824(WO,A1)
【文献】特開平07-083640(JP,A)
【文献】特開2005-274429(JP,A)
【文献】特開2003-161646(JP,A)
【文献】特開2004-340612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに前記光源から照射された光を反射する反射手段と、前記光源から照射された光を受光する受光手段と、前記受光手段が受光した光を信号として演算する演算手段と、を備える光学式角度センサであって、
前記受光手段は、
前記反射手段を介した前記光源から照射された光を受光し、
前記演算手段は、
前記受光手段が受光した光に基づいて基準角度を特定する特定手段と、
前記受光手段が受光した光と前記特定手段により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出する角度算出部と、を備え
前記受光手段は、
前記光を受光して信号に変換する複数の受光素子と、
複数の前記受光素子を含むとともに前記受光手段の受光面において前記測定軸と直交する直交方向に沿って並設される複数の受光部と、を備え、
前記複数の受光部は、
所定の前記受光素子を第1受光部とし、
前記第1受光部とは異なる他の前記受光素子を第2受光部とし、
前記特定手段は、
前記第1受光部と前記第2受光部とのそれぞれから信号を検出する信号検出部と、
前記信号検出部にて検出された信号に基づいて前記基準角度を判定する基準角度判定部と、を備え、
前記基準角度判定部は、
前記信号検出部が前記第1受光部と前記第2受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したと判定した場合、該信号を検出した位置を前記基準角度として特定すること特徴とする光学式角度センサ。
【請求項2】
請求項に記載された光学式角度センサにおいて、
前記基準角度判定部は、
前記信号検出部が前記第1受光部と前記第2受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したと判定した場合、該信号を検出した位置を前記基準角度として特定すること特徴とする光学式角度センサ。
【請求項3】
光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに前記光源から照射された光を反射する反射手段と、前記光源から照射された光を受光する受光手段と、前記受光手段が受光した光を信号として演算する演算手段と、を備える光学式角度センサであって、
前記受光手段は、
前記反射手段を介した前記光源から照射された光を受光し、
前記演算手段は、
前記受光手段が受光した光に基づいて基準角度を特定する特定手段と、
前記受光手段が受光した光と前記特定手段により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出する角度算出部と、を備え、
前記受光手段は、
前記光を受光して信号に変換する複数の受光素子と、
複数の前記受光素子を含むとともに前記受光手段の受光面において前記測定軸と直交する直交方向に沿って並設される複数の受光部と、を備え、
前記複数の受光部は、
所定の前記受光素子を第1受光部とし、
前記第1受光部とは異なる他の前記受光素子を第2受光部とし、
前記第1受光部および前記第2受光部とは異なる他の前記受光素子を第3受光部とし、
前記第1受光部および前記第3受光部は隣接して配置され、前記第2受光部および前記第3受光部は隣接して配置され、
前記演算手段は、
前記複数の受光素子により変換された信号に基づいて角度を算出するための信号を検出する角度信号検出部を備え、
前記特定手段は、
前記第1受光部と前記第2受光部と前記第3受光部のそれぞれから信号を検出する信号検出部と、
前記信号検出部により検出された信号に基づき、前記第1受光部と前記第3受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したときには第1基準信号を出力し、前記第2受光部と前記第3受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したときには第2基準信号を出力する基準信号出力部と、
前記基準信号出力部により前記第1基準信号および前記第2基準信号が出力された場合、前記第1基準信号および前記第2基準信号の一方の基準信号が出力され他方の基準信号が出力されるまでの間に前記角度信号検出部により検出された信号に基づいて、演算により前記基準角度を特定する基準角度演算部と、を備え、
前記角度算出部は、前記角度信号検出部が検出した信号と前記基準角度演算部により演算された前記基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項4】
請求項に記載された光学式角度センサにおいて、
前記第3受光部は、
前記角度信号検出部が周期的な信号を検出する場合、
前記基準信号出力部から出力される前記第1基準信号および前記第2基準信号までの間の前記角度信号検出部が検出する信号が1周期以内となるように前記受光素子を含んでいることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項5】
請求項または請求項に記載された光学式角度センサにおいて、
前記基準信号出力部は、
前記信号検出部により検出された信号に基づき、前記第1受光部と前記第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには前記第1基準信号を出力し、前記第2受光部と前記第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには前記第2基準信号を出力することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項6】
請求項から請求項のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記複数の受光素子は、
前記直交方向に沿って並設されることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項7】
請求項から請求項のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記複数の受光素子は、
前記受光手段の受光面において前記測定軸方向と平行な方向である測定軸方向に沿って並設されるとともに前記直交方向に所定の大きさを有し、所定の数ずつ前記直交方向に沿って配置され、
前記受光素子は、
前記受光面において前記直交方向に沿って所定のピッチにて並設される複数のマスク格子を備えることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項8】
請求項に記載された光学式角度センサにおいて、
前記第1受光部は、前記測定軸方向に並設される2つ以上の前記受光素子を含み、
前記第2受光部は、前記第1受光部とは異なるとともに前記第1受光部の直交方向に並設される他の2つ以上の前記受光素子を含み、
前記複数のマスク格子は、
前記2つ以上の受光素子のそれぞれにおいて、他の前記受光素子とは90度位相をずらして配置されていることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項9】
請求項に記載された光学式角度センサにおいて、
前記第1受光部は、前記測定軸方向に並設される4の倍数の数の前記受光素子を含み、
前記第2受光部は、前記第1受光部とは異なるとともに前記第1受光部の直交方向に並設される他の4の倍数の数の前記受光素子を含んでいることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項10】
請求項から請求項のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記第1受光部が含む前記受光素子と前記第2受光部が含む前記受光素子とは、
同数であることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項11】
光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに前記光源から照射された光を反射する反射手段と、前記光源から照射された光を受光する受光手段と、前記受光手段が受光した光を信号として演算する演算手段と、を備える光学式角度センサであって、
前記受光手段は、
前記反射手段を介した前記光源から照射された光を受光し、
前記演算手段は、
前記受光手段が受光した光に基づいて基準角度を特定する特定手段と、
前記受光手段が受光した光と前記特定手段により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出する角度算出部と、を備え、
前記受光手段は、
前記受光手段の受光面における前記光の位置を特定する位置特定センサを備え、
前記特定手段は、
前記位置特定センサからの信号に基づき基準角度を特定することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記光源から照射された光を回折する回折格子を備え、
前記受光手段は、
前記反射手段と前記回折格子とを介した光を受光することを特徴とする光学式角度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式角度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに光源から照射された光を反射する反射手段と、光源から照射された光を受光する受光手段と、受光手段が受光した光を信号として演算する演算手段と、を備える光学式角度センサが知られている。
このような光学式角度センサは、検出できる角度が高分解能であり、かつ、1度以上の広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、基準角度に基づき角度を検知できることが好ましい。ここで、基準角度とは、角度を算出する際に基準となる原点(絶対値)に相当する所定の角度である。
【0003】
角度の検出方式としては、インクリメンタル方式(INC方式)と、アブソリュート方式(ABS方式)と、が知られている。
INC方式は、例えばスケールに設けられた一定ピッチのインクリメンタルパターン(INCパターン)を連続的に検出し、通過したINCパターンの数をカウントアップまたはカウントダウンすることで、測定対象における角度の変位を検出する方式である。
ABS方式は、例えば所定の方法にて原点となる基準角度を特定し、INC方式にて検出した角度と基準角度とを組み合わせることで、測定対象における角度の変位の絶対値を検出する方式である。また、他のABS方式として、例えばスケールにランダムに設けられたアブソリュートパターン(ABSパターン)を検出しABSパターンを解析することで、測定対象における角度の変位の絶対値を検出する方式もある。
【0004】
例えば特許文献1に記載の光学式ロータリエンコーダでは、回転スリット板(スケール)と、固定スリット板と、複数のLEDと、複数の受光素子と、を備える。回転スリット板は、INC方式にて角度を算出するための角度検出スリットであるA相信号用スリットおよびB相信号用スリットと、ロータ磁極位置検出のためのスリットであるC相信号用スリットと、光学式ロータリエンコーダの光軸1回転中における所定回転角度、すなわち基準角度(原点)検出用スリットであるZ相信号用スリットと、を備える。光学式ロータリエンコーダは、A相信号用スリットおよびB相信号用スリットから検出された信号に基づいて高分解能の角度を算出することができ、回転スリット板の周方向の長さの分だけ角度を算出することができる。また、Z相信号用スリットから検出された信号に基づいて基準角度を特定することができる。光学式ロータリエンコーダは、この基準角度と、A相信号用スリットおよびB相信号用スリットから検出された信号と、を組み合わせることで測定対象における角度の変位の絶対値を検出することができる。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載の回転角度検出装置は、単波長レーザー光源(光源)から照射された発散レーザー光をコリメートして生成したコリメート光束を、被測定物(測定対象)に搭載された反射部(反射手段)に入射し、反射部から反射された測定光束を対物レンズにより集光して角度の測定をする測定用受光素子を備える。測定用受光素子は、測定光束を集光して得られた光スポットの中心が、測定用受光素子の感応帯と非感応帯との境目上に位置するように配置されているとともに、位置決めステージに搭載されている。回転角度検出装置は、被測定物が回転したとき、光スポットの中心が測定用受光素子の感応帯と非感応帯との境目上に位置し続けるように、位置決めステージにより測定用受光素子の位置制御を行い、当該位置制御の情報に基づき被測定物の回転角度を求める。回転角度検出装置は、測定用受光素子の感応帯と非感応帯との境目を基準角度とし、この基準角度に基づいて、スケールを用いることなく高分解能な角度測定をすることができる。
【0006】
また、例えば特許文献3に記載の形状測定装置は、被測定面(反射手段)に対して相対的に略平行移動する測定ヘッド部と、測定ヘッド部の対向位置における被測定面の形状が測定ヘッド部と被測定面との平行移動にともなって変化する量を測定する信号処理部(演算手段)と、を備える。測定ヘッド部は、同位相の多光束からなる光を被測定面に向けて照射させる照射光形成手段(光源)と、被測定面からの反射光を回折させて干渉縞を形成させる干渉縞形成手段と、干渉縞の光を受光して受光信号を出力する受光素子アレイ(受光手段)と、を備える。信号処理部は、受光素子アレイからの受光信号に基づく干渉縞の変位から被測定面の形状変化を検出する。これにより、形状測定装置は、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを用いることなく高分解能な角度測定をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-11362号公報
【文献】特開2017-133892号公報
【文献】特開2005-274429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の光学式ロータリエンコーダは、基準角度を得るために円盤状のスケールである回転スリット板が必要となる。これにより、光学式ロータリエンコーダは、回転スリット板の製造にコストがかかるとともに、回転スリット板をサーボモータの出力軸に取り付ける際にアライメントのミスが発生する可能性があるという問題がある。また、特許文献2に記載の回転角度検出装置は、許容される被測定物の回転角度は1度以内であり、検出できる範囲が非常に狭いという問題がある。さらに、特許文献3に記載の形状測定装置は、被測定面に対する基準角度を検知することができないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定することができる光学式角度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学式角度センサは、光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに光源から照射された光を反射する反射手段と、光源から照射された光を受光する受光手段と、受光手段が受光した光を信号として演算する演算手段と、を備える光学式角度センサであって、受光手段は、反射手段を介した光源から照射された光を受光し、演算手段は、受光手段が受光した光に基づいて基準角度を特定する特定手段と、受光手段が受光した光と特定手段により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出する角度算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このような本発明によれば、光学式角度センサは、特定手段により基準角度を特定することができ、角度算出部により受光手段が受光した光と特定手段により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出することができる。したがって、光学式角度センサは、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定し、角度の絶対値を検出することができる。
【0012】
この際、光源から照射された光を回折する回折格子を備え、受光手段は、反射手段と回折格子とを介した光を受光することが好ましい。
【0013】
ここで、回折格子を介した光源から照射された光は、回折光となり反射手段にて反射し、干渉縞となって受光手段に照射される。受光手段に照射された干渉縞は、反射手段が回動することにより、受光手段上を受光手段の受光面において測定軸と直交する直交方向に沿って移動する。受光手段は、この干渉縞の移動に基づいて基準角度を特定する。
したがって、このような構成によれば、演算手段における特定手段は、受光手段が反射手段と回折格子とを介した光に基づいて基準角度を特定するため、反射手段だけを介した光に基づいて基準角度を特定する場合と比較して、高精度に基準角度を特定することができる。
【0014】
この際、受光手段は、光を受光して信号に変換する複数の受光素子と、複数の受光素子を含むとともに受光手段の受光面において測定軸と直交する直交方向に沿って並設される複数の受光部と、を備え、複数の受光部は、所定の受光素子を第1受光部とし、第1受光部とは異なる他の受光素子を第2受光部とし、特定手段は、第1受光部と第2受光部とのそれぞれから信号を検出する信号検出部と、信号検出部にて検出された信号に基づいて基準角度を判定する基準角度判定部と、を備え、基準角度判定部は、信号検出部が第1受光部と第2受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したと判定した場合、信号を検出した位置を基準角度として特定することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、受光手段は、第1受光部と、第2受光部と、を備え、基準角度判定部は、信号検出部が第1受光部と第2受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したと判定した場合、その信号を検出した位置を基準角度として特定することができる。したがって、光学式角度センサは、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定し、角度の絶対値を検出することができる。
【0016】
この際、基準角度判定部は、信号検出部が第1受光部と第2受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したと判定した場合、信号を検出した位置を基準角度として特定することが好ましい。
【0017】
ここで、例えば信号検出部が第1受光部と第2受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出する場合とは、第1受光部と第2受光部との境界に光が照射されているときである。したがって、このような構成によれば、基準角度判定部は、信号検出部が第1受光部と第2受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したと判定した場合、信号を検出した位置を基準角度として特定するため、光学式角度センサは、基準角度判定部により容易に基準角度を特定することができる。
【0018】
また、受光手段は、光を受光して信号に変換する複数の受光素子と、複数の受光素子を含むとともに受光手段の受光面において測定軸と直交する直交方向に沿って並設される複数の受光部と、を備え、複数の受光部は、所定の受光素子を第1受光部とし、第1受光部とは異なる他の受光素子を第2受光部とし、第1受光部および第2受光部とは異なる他の受光素子を第3受光部とし、第1受光部および第3受光部は隣接して配置され、第2受光部および第3受光部は隣接して配置され、演算手段は、複数の受光素子により変換された信号に基づいて角度を算出するための信号を検出する角度信号検出部を備え、特定手段は、第1受光部と第2受光部と第3受光部のそれぞれから信号を検出する信号検出部と、信号検出部により検出された信号に基づき、第1受光部と第3受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したときには第1基準信号を出力し、第2受光部と第3受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したときには第2基準信号を出力する基準信号出力部と、基準信号出力部により第1基準信号および第2基準信号が出力された場合、第1基準信号および第2基準信号の一方の基準信号が出力され他方の基準信号が出力されるまでの間に角度信号検出部により検出された信号に基づいて、演算により基準角度を特定する基準角度演算部と、を備え、角度算出部は、角度信号検出部が検出した信号と基準角度演算部により演算された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出することが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、受光手段は、第1受光部と、第2受光部と、第3受光部と、を備える。そして、特定手段における基準角度演算部は、基準信号出力部により出力された第1基準信号および第2基準信号に基づいて、第1基準信号および第2基準信号の一方の基準信号が検出され他方の基準信号が検出されるまでの間に角度信号検出部により検出された角度を算出するための信号から、演算により基準角度を特定することができる。したがって、光学式角度センサは、演算をせずに基準角度を特定する場合と比較して、高精度に基準角度を特定することができる。
【0020】
この際、第3受光部は、角度信号検出部が周期的な信号を検出する場合、基準信号出力部から出力される第1基準信号および第2基準信号までの間の角度信号検出部が検出する信号が1周期以内となるように受光素子を含んでいることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、第3受光部は、角度信号検出部が周期的な信号を検出する場合、基準信号出力部から出力される第1基準信号および第2基準信号までの間の角度信号検出部が検出する信号が1周期以内となるように受光素子を含んでいることで、特定手段における基準角度演算部は、確実に基準角度を特定することができる。
【0022】
この際、基準信号出力部は、信号検出部により検出された信号に基づき、第1受光部と第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第1基準信号を出力し、第2受光部と第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第2基準信号を出力することが好ましい。
【0023】
ここで、例えば信号検出部により検出された信号に基づき、第1受光部と第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出し、第2受光部と第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときとは、第1受光部と第3受光部、または、第2受光部と第3受光部、それぞれの境界に光が照射されているときである。したがって、このような構成によれば、基準信号出力部は、信号検出部により検出された信号に基づき、第1受光部と第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第1基準信号を出力し、第2受光部と第3受光部とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第2基準信号を出力するため、容易に第1基準信号と第2基準信号とを出力するタイミングを計ることができる。
【0024】
この際、複数の受光素子は、直交方向に沿って並設されることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、受光手段における複数の受光素子は、直交方向に沿って並設されているため、例えばPDA(Photo Diode Array)を直交方向に沿って並設することで容易に製造することができる。また、複数の受光素子は、直交方向に沿って並設されることで例えば受光手段に照射される干渉縞から角度を算出するための信号を読み取ることができる。
【0026】
また、複数の受光素子は、受光手段の受光面において測定軸方向と平行な方向である測定軸方向に沿って並設されるとともに直交方向に所定の大きさを有し、所定の数ずつ直交方向に沿って配置され、受光素子は、受光面において直交方向に沿って所定のピッチにて並設される複数のマスク格子を備えることが好ましい。
【0027】
ここで、複数の受光素子としてPDAを直交方向に沿って並設した場合、高分解能の測定結果を得るためにはPDA自体の大きさを小さくする必要がある。
しかしながら、このような構成によれば、受光素子は、測定軸方向に沿って並設されるとともに直交方向に所定の大きさを有し、受光面において直交方向に沿って所定のピッチにて並設される複数のマスク格子を備えることで、PDA自体の大きさを小さくしなくとも、マスク格子とマスク格子との間の受光素子の領域が個別のPDAと同様に作用するため、光学式角度センサは、高分解能の測定結果を得ることができる。
【0028】
この際、第1受光部は、測定軸方向に並設される2つ以上の受光素子を含み、第2受光部は、第1受光部とは異なるとともに第1受光部の直交方向に並設される他の2つ以上の受光素子を含み、複数のマスク格子は、2つ以上の受光素子のそれぞれにおいて、他の受光素子とは90度位相をずらして配置されていることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、測定軸方向に並設される第1受光部の2つ以上の受光素子と、第1受光部とは異なるとともに第1受光部の直交方向に並設される第2受光部の2つ以上の受光素子のそれぞれにおいて、複数のマスク格子は、90度ずつ位相がずれた位置に配置される。そして、演算手段は、受光素子が2つであった場合は、2つの受光素子から2相信号を検出することができる。2相信号からは角度を算出するための信号を検出することができる。これにより、光学式角度センサは、角度を算出するための信号と特定手段により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出することができる。
【0030】
この際、第1受光部は、測定軸方向に並設される4の倍数の数の受光素子を含み、第2受光部は、第1受光部とは異なるとともに第1受光部の直交方向に並設される他の4の倍数の数の受光素子を含んでいることが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、第1受光部は、測定軸方向に並設される4の倍数の数の受光素子を含み、第2受光部は、第1受光部とは異なるとともに第1受光部の直交方向に並設される他の4の倍数の数の受光素子を含んでいるため、演算手段は、例えば4つの受光素子を備えていた場合、4つの受光素子から4相信号を検出することができる。4相信号から検出された角度を算出するための信号は、2相信号から検出された角度を検出するための信号よりも高感度であるため、光学式角度センサは、より精度の高い角度を取得することができる。また、第1受光部と第2受光部とがそれぞれ4の倍数の数の受光素子を含むことで、各相の信号をバランスよく検出することができる。
【0032】
この際、第1受光部が含む受光素子と第2受光部が含む受光素子とは、同数であることが好ましい。
【0033】
このような構成によれば、第1受光部が含む受光素子と第2受光部が含む受光素子とは、同数であることで、演算手段は、第1受光部および第2受光部から同じ強度の信号を得ることができる。
【0034】
また、受光手段は、受光手段の受光面における光の位置を特定する位置特定センサを備え、特定手段は、位置特定センサからの信号に基づき基準角度を特定することが好ましい。
【0035】
このような構成によれば、特定手段は、位置特定センサからの信号に基づき、演算をしなくとも容易に基準角度を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図
図2】前記光学式角度センサを示す断面図
図3】前記光学式角度センサにおける受光手段を示す図
図4】前記光学式角度センサにおける演算手段を示すブロック図
図5】前記光学式角度センサにおける基準角度を特定する方法を示す図
図6】第2実施形態に係る光学式角度センサを示すブロック図
図7】前記光学式角度センサにおける基準角度を特定する方法を示す図
図8】前記光学式角度センサにおける基準角度を特定する方法を示すフローチャート
図9】第3実施形態に係る光学式角度センサにおける受光手段を示す図
図10】第4実施形態に係る光学式角度センサにおける受光手段を示す図
図11】第1変形例に係る光学式角度センサを示す断面図
図12】第2変形例に係る光学式角度センサを示す斜視図
図13】第2変形例に係る光学式角度センサを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図1から図5に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図である。
光学式角度センサ1は、図1に示すように、光を照射する光源2と、所定の軸を測定軸として回動するとともに光源2から照射された光を反射する反射手段3と、光源2から照射された光を受光する受光手段4と、光源2から照射された光を回折する回折格子5,6と、を備える。回折格子5,6は、所定の配置ピッチにて配置される複数の格子51を有する第1回折格子5と、所定の配置ピッチにて配置される複数の格子61を有する第2回折格子6と、を備える。光学式角度センサ1は、回動する物体を測定する測定器の内部に設けられている。
【0038】
光源2は、一定の幅を有する平行光を第1回折格子5の一面に向かって照射する。光源2は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。なお、光源2はLEDに限らず、任意の光源であってもよい。
反射手段3は、回動する測定対象に取付けられている。反射手段3は、受光手段4と第1回折格子5と第2回折格子6と対向する反射面31を有する。反射手段3は、測定軸をY軸として、基準角度(原点)から±15度回動可能に設けられている。なお、以下の説明において、測定軸(Y軸)と平行な方向である測定軸方向をY方向として説明し、反射手段3の反射面31においてY軸と直交する方向をX軸とし、X軸と平行な方向を直交方向とする場合がある。
【0039】
図2は、前記光学式角度センサを示す断面図である。
光源2と反射手段3とは、図2に示すように、第1回折格子5を挟んで互いに向かい合せて設置されている。反射手段3と第2回折格子6および受光手段4とは、互いに向かい合せて設置されている。受光手段4は、第1回折格子5と第2回折格子6と反射手段3とを介した光源2からの光を受光し、その光によって受光手段4上に生成された干渉縞Cを受光する。
【0040】
第1回折格子5および第2回折格子6は、透光性のガラスにて形成される。第1回折格子5および第2回折格子6は、X方向に沿って長尺状に形成された1つの板状体に設けられ、光源2側を第1回折格子5とし、受光手段4側を第2回折格子6としている。なお、第1回折格子5および第2回折格子6は、ガラスに限らず、任意の透光性の部材により形成されていてもよい。また、第1回折格子5と第2回折格子6とは、1つの板状体に設けられていなくてもよく、第1回折格子5と第2回折格子6とは、個別に設けられていてもよい。
【0041】
光源2が第1回折格子5に照射した平行光は、第1回折格子5により回折されるとともに回折光となって反射手段3に照射され、反射手段3にて反射し反射光となる。反射光は、第2回折格子6によりさらに複数の回折光に回折される。第2回折格子6にて回折された複数の回折光は、再び反射手段3に照射され反射光となり、受光手段4に照射される。第1回折格子5と、第2回折格子6と、反射手段3とを介した反射光は、受光手段4において干渉することにより、受光手段4の受光面において測定軸と直交する直交方向(X方向)に沿って複数の格子51,61の配置ピッチに対応した周期で明暗を繰り返す干渉縞Cを生成する。なお、図2において、複数の回折光は、説明の都合上、光源2から照射されて受光手段4に到達する光のみを矢印にて記載している。また、以下の説明において、「位相」とは、特に言及がない限り、第1回折格子5および第2回折格子6によって生成される干渉縞Cの周期についての位相を意味するものとする。
【0042】
光源2から照射された平行光は、反射手段3が回動し傾斜角が変化すると、第2回折格子6へ反射する反射光の方向が変化する。これにより、光源2から照射された平行光の到達点は、第2回折格子6および受光手段4において変化する。到達点が変化することで、第1回折格子5から受光手段4までの光学距離が変化するため、受光手段4の受光面上での干渉縞Cは変位する。すなわち、受光手段4に照射された干渉縞Cは、反射手段3が回動することにより、受光手段4上を反射手段3の直交方向であるX方向に沿って、図2の矢印(紙面左右方向)のように移動する。光学式角度センサ1は、この干渉縞Cの移動である変位から反射手段3の傾斜角の変化を検出する。
【0043】
図3は、前記光学式角度センサにおける受光手段を示す図である。
受光手段4は、光源2から照射された平行光の幅よりも広い受光面を有し、図3に示すように、複数の受光素子40を備える。複数の受光素子40は、直交方向(X方向)に沿って並設されるとともに、光を受光して信号に変換する。また、複数の受光素子40は、複数の格子51,61(図1,2参照)の配置ピッチに対応して、X方向に沿って配置ピッチPにて並設されている。複数の受光素子40には、PDAが用いられる。PDAは、複数の干渉縞C(図2参照)を一度に測定することができる性質を持つ受光器である。なお、複数の受光素子40は、PDAに限らず、PSD(Position Sensitive Detector)やCCD(Charge-Coupled Device)等の任意の受光器を用いてもよい。
【0044】
また、受光手段4は、複数の受光素子40を含むとともに直交方向(X方向)に沿って並設される複数の受光部を備える。複数の受光部は、第1受光部41と、第2受光部42と、を備える。
第1受光部41は、所定の受光素子40を含み、第2受光部42は、第1受光部41とは異なる他の受光素子40を含んで構成される。第1受光部41および第2受光部42は、隣接して配置されている。
複数の受光素子40は、直交方向であるX方向に沿って並設され、それぞれ90度位相がずれた位置に配置されている。そして、第1受光部41が含む受光素子40と第2受光部42が含む受光素子40とは、同数となるように配置されている。
【0045】
図4は、前記光学式角度センサにおける演算手段を示すブロック図である。
図4に示すように、光学式角度センサ1は、受光手段4が受光した光を信号として演算する演算手段7をさらに備える。
演算手段7は、角度信号検出部70と、基準角度を特定する特定手段8と、反射手段3の傾斜角度を算出する角度算出部9と、を備える。
角度信号検出部70は、受光手段4に照射された光に基づき角度を算出するための周期的な信号を干渉縞から検出する。
【0046】
特定手段8は、信号検出部81と、基準角度判定部82と、を備え、受光手段4が受光した光に基づいて基準角度を特定する。
信号検出部81は、第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれから信号を検出する。
基準角度判定部82は、信号検出部81にて検出された信号に基づいて基準角度を判定する。基準角度判定部82は、信号検出部81が第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれから所定の信号を検出したと判定した場合、信号を検出した位置を基準角度として特定する。本実施形態では、所定の信号を検出した場合とは、信号検出部81が第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれから同じ強度の信号を検出した場合である。
【0047】
具体的には、信号検出部81が第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれから検出する信号は、複数の受光素子40に照射された光の光量に基づく信号である。基準角度判定部82は、受光手段4に照射された光の光量に基づく信号から、第1受光部41と第2受光部42とにおいて、どこに光が照射されているかを判定する。そして、基準角度判定部82は、第1受光部41および第2受光部42の双方の受光素子40に光が照射され、第1受光部41および第2受光部42の境界に光が照射されているとき、すなわち、第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれに同じ光量の光が照射され、信号検出部81により同じ受光強度の信号が検出されたとき、その位置を基準角度として特定する。
【0048】
図5は、前記光学式角度センサにおける基準角度を特定する方法を示す図である。
具体的には、図5(A)は、受光手段4の概略図であり、角度信号検出部70と信号検出部81が受光手段4から検出する信号を示している。図5(B)は、基準角度判定部82が信号検出部81による信号に基づいて基準角度を特定する方法を示す図である。図5(B)(1)は、信号検出部81が検出した受光手段4に照射された光の受光強度を示し、図5(B)(2)は、角度信号検出部70が検出した反射手段3の傾斜角度を算出するための信号を示す。以下、図5に基づいて光学式角度センサ1における基準角度を特定する方法を説明する。
【0049】
先ず、光学式角度センサ1が設けられた測定器は、電源が投入されると、反射手段3(図1,2参照)を傾ける動作を実行する。この際、測定器は、反射手段3をフルストロークで傾ける。そして、光学式角度センサ1は、測定器による反射手段3を傾ける動作とともに、基準角度を特定するための平行光を光源2から照射する。これにより、反射手段3の傾きに応じて受光手段4に光が照射される。
【0050】
次に、特定手段8における信号検出部81は、反射手段3を介して照射された光の光量に基づく信号を検出する。
図5(A)に示すように、信号検出部81は、第1受光部41に光が照射された場合は第1信号Tを検出し、第2受光部42に光が照射された場合は第2信号Sを検出する。また、角度信号検出部70は、複数の受光素子40から反射手段3の傾斜角度を算出するための信号を検出する。
ここで、複数の受光素子40は、X方向に沿って1/4ずつずらして配置されている。このため、角度信号検出部70は、複数の受光素子40から1/4周期ずつ位相がずれた信号を検出する。
【0051】
具体的には、角度信号検出部70は、例えば所定の受光素子40からA相信号を検出する場合、A相信号を検出する受光素子40から1/2周期位相がずれた受光素子40からA相信号とは180度位相がずれたa相信号を検出する。また、信号検出部81は、A相信号を検出する受光素子40から1/4周期ずれた受光素子40からA相信号とは90度位相がずれたB相信号を検出し、B相信号を検出する受光素子40から1/2周期位相がずれた受光素子40からB相信号とは180度位相がずれたb相信号を検出する。角度信号検出部70により検出されたA相信号,a相信号,B相信号,b相信号は、後述する角度算出部9により角度を算出する際に用いられる。なお、角度信号検出部70がどの受光素子40からA相信号を検出するかは任意であり、どの受光素子40からどの信号を検出するかについては設計事項である。
【0052】
続いて、基準角度判定部82は、第1信号Tおよび第2信号Sに基づき、反射手段3を反射した光が受光手段4の受光面上のどの位置にあるかを判定する。
反射手段3を反射した反射光は、反射手段3の傾きに応じて受光手段4の受光面上を測定軸方向(X方向)に沿って移動する。すなわち、反射手段3を反射した光は、反射手段3の傾きに応じて第1受光部41と第2受光部42との受光面上を移動する。
【0053】
図5(B)の縦軸は、受光手段4に照射された光の受光強度であり、横軸は、反射手段3の傾斜角度である。この際、第1信号Tは、図5(B)(1)に示すように、光が第1受光部41に照射されている場合は受光強度が大きく、第2受光部42に向かうにしたがって徐々に減衰して変動し、第2受光部42では検出されなくなる。第2信号Sは、光が第2受光部42に照射されている場合は受光強度が大きく、第1受光部41に向かうにしたがって徐々に減衰して変動し、第1受光部41では検出されなくなる。
【0054】
第1信号Tと第2信号Sとの受光強度が変動する際、図5(B)(1)における交点Oに示すように、第1信号Tと第2信号Sとの受光強度が同じ受光強度となるときがある。したがって、基準角度判定部82は、信号検出部81による第1信号Tと第2信号Sとの受光強度が同じ受光強度であると判定した場合、交点Oの位置を基準角度として特定する。基準角度が特定されると、光学式角度センサ1は、例えば予め備えているメモリに基準角度を記憶し、角度検出を開始する。なお、基準角度はメモリに記憶されなくてもよく、光学式角度センサ1が基準角度に基づき角度検出をすることができれば、どのようにしてもよい。
【0055】
角度算出部9は、図5(B)(2)に示すように、角度信号検出部70が検出したA相信号,a相信号,B相信号,b相信号と、基準角度と、に基づいて反射手段3の傾斜角度を算出する。具体的には、角度算出部9は、A相信号とa相信号から振幅を有する第1測定信号を算出し、B相信号とb相信号から第1測定信号とは位相がずれた振幅を有する第2測定信号を算出し、第1測定信号と第2測定信号から差動演算により反射手段3の傾斜角度を算出する。角度算出部9は、差動演算により反射手段3の傾斜角度を算出するため、差動演算を用いずに角度を算出した場合と比較して、光学式角度センサ1は、高精度な角度検出をすることができる。
【0056】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)光学式角度センサ1は、特定手段8により基準角度を特定することができ、角度算出部9により受光手段4が受光した光と特定手段8により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出することができる。したがって、光学式角度センサ1は、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定し、角度の絶対値を検出することができる。
【0057】
(2)演算手段7における特定手段8は、受光手段4が反射手段3と第1回折格子5と第2回折格子6とを介した光に基づいて基準角度を特定するため、反射手段3だけを介した光に基づいて基準角度を特定する場合と比較して、干渉縞Cを介して算出するため、高精度に基準角度を特定することができる。
(3)受光手段4は、第1受光部41と、第2受光部42と、を備え、基準角度判定部82は、信号検出部81が第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれから所定の信号を検出したと判定した場合、その信号を検出した位置を基準角度として特定することができる。したがって、光学式角度センサ1は、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定し、角度の絶対値を検出することができる。
【0058】
(4)基準角度判定部82は、信号検出部81が第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したと判定した場合、信号を検出した位置を基準角度として特定するため、光学式角度センサは、基準角度判定部82により容易に基準角度を特定することができる。
(5)受光手段4における複数の受光素子40は、X方向に沿って並設されているため、PDAをX方向に沿って並設することで容易に製造することができる。また、複数の受光素子40は、X方向に沿って並設されることで受光手段4に照射される干渉縞Cから角度を算出するための信号を読み取ることができる。
(6)第1受光部41が含む受光素子40と第2受光部42が含む受光素子40とは、同数であることで、演算手段7は、第1受光部41および第2受光部42から同じ強度の信号を得ることができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図6から図8に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図6は、第2実施形態に係る光学式角度センサを示すブロック図である。
前記第1実施形態では、受光手段4は、第1受光部41と、第2受光部42と、を備えていた。
本実施形態では、図6に示すように、光学式角度センサ1Aにおける受光手段4Aは、複数の受光部として、第1受光部41Aと、第2受光部42Aと、第3受光部43Aと、を備える点で前記第1実施形態と異なる。
また、前記第1実施形態では、特定手段8は基準角度判定部82を備えていた。
本実施形態では、演算手段7Aにおける特定手段8Aは、基準角度判定部82を備えず、基準信号出力部83Aと、基準角度演算部84Aと、を備える点で前記第1実施形態と異なる。
【0061】
第1受光部41Aは、所定の受光素子40を含み、第2受光部42Aは、第1受光部41Aとは異なる他の受光素子40を含んで構成される。そして、第3受光部43Aは、第1受光部41Aおよび第2受光部42Bの間の受光素子40であり、第1受光部41Aおよび第2受光部41Bとは異なる他の受光素子40を含んで構成される。そして、第1受光部41Aと第3受光部43Aとは隣接して設けられ、第2受光部42Aと第3受光部43Aとは隣接して設けられている。
【0062】
信号検出部81Aは、第1受光部41Aと第2受光部42Aと第3受光部43Aのそれぞれから信号を検出する。基準信号出力部83Aは、信号検出部81Aにより検出された信号に基づき、第1受光部41Aと第3受光部43Aとのそれぞれから所定の信号を検出したときには第1基準信号として検出し、第2受光部42Aと第3受光部43Aとのそれぞれから所定の信号を検出したときには第2基準信号として検出する。本実施形態では、所定の信号を検出したときとは、信号検出部81Aにより検出された信号に基づき、第1受光部41Aと第3受光部43Aとのそれぞれから同じ強度の信号を検出したとき、または、第2受光部42Aと第3受光部43Aとのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときである。
【0063】
基準角度演算部84Aは、基準信号出力部83Aにより第1基準信号および第2基準信号が検出された場合、第1基準信号および第2基準信号の一方の基準信号が検出され他方の基準信号が検出されるまでの間に角度信号検出部70により検出された角度を算出するための信号に基づいて、演算により基準角度を特定する。
【0064】
図7は、前記光学式角度センサにおける基準角度を特定する方法を示す図である。
具体的には、図7(A)は、受光手段4Aの概略図であり、角度信号検出部70と信号検出部81Aとが受光手段4Aから検出する信号を示している。図7(B)は、基準信号出力部83Aと基準角度演算部84Aとが角度信号検出部70と信号検出部81Aとによる信号に基づいて基準角度を特定する方法を示す図である。図7(B)(1)は、信号検出部81Aが検出した受光手段4Aに照射された光の受光強度を示し、図7(B)(2)は、角度信号検出部70が検出した反射手段3の傾斜角度を算出するための信号を示す。また、図8は、前記光学式角度センサにおける基準角度を特定する方法を示すフローチャートである。
以下、図7図8を用いて光学式角度センサ1Aにおける基準角度を特定する方法を説明する。
【0065】
先ず、光学式角度センサ1Aが設けられた測定器は、電源が投入されると、反射手段3(図1,2参照)を傾ける動作を実行する。この際、測定器は、反射手段3をフルストロークで傾ける。そして、光学式角度センサ1Aは、測定器による反射手段3を傾ける動作とともに、基準角度を特定するための平行光を光源2から照射する。これにより、反射手段3の傾きに応じて受光手段4Aに光が照射される。
【0066】
次に、特定手段8Aにおける信号検出部81Aは、図8に示すように、反射手段3を介して照射された光の光量に基づく信号を検出する信号検出工程を実行する(ステップST01)。図7(A)に示すように、信号検出部81Aは、第1受光部41Aに光が照射された場合は第1信号Tを検出し、第2受光部42に光が照射された場合は第2信号Sを検出し、第3受光部43Aに光が照射された場合は第3信号Uを検出する。また、角度信号検出部70は、複数の受光素子40から反射手段3の傾斜角度を算出するための信号を検出する。
【0067】
続いて、基準信号出力部83Aは、信号検出部81による第1信号Tと、第2信号Sと、第3信号Uと、に基づき受光手段4Aの第1受光部41Aと第3受光部43A、および第2受光部42Aと第3受光部43Aとの双方に光が照射されたか否かを判定する基準信号判定工程を実行する(ステップST02)。
反射手段3を反射した光は、反射手段3の傾きに応じて受光手段4Aの受光面上を測定軸方向(X方向)に沿って移動する。すなわち、反射手段3を反射した光は、反射手段3の傾きに応じて第1受光部41Aと第2受光部42Aと第3受光部43Aの受光面上を移動する。
【0068】
図7(B)の縦軸は、受光手段4Aに照射された光の受光強度であり、横軸は、反射手段3の傾きを示す角度である。この際、第1信号Tは、図7(B)(1)に示すように、光が第1受光部41Aに照射されている場合は受光強度が大きく、第3受光部43Aに向かうにしたがって徐々に減衰して変動し、第2受光部42Aおよび第3受光部43Aでは検出されなくなる。第2信号Sは、光が第2受光部42Aに照射されている場合は受光強度が大きく、第3受光部43Aに向かうにしたがって徐々に減衰して変動し、第1受光部41Aおよび第3受光部43Aでは検出されなくなる。第3信号Uは、光が第3受光部43Aに照射されている場合は受光強度が大きく、第1受光部41Aまたは第2受光部42Aに向かうにしたがって徐々に減衰して変動し、第1受光部41Aおよび第2受光部42Aでは検出されなくなる。
【0069】
第1信号Tと第3信号Uとの受光強度が変動する際、図7(B)(1)における交点O1に示すように、第1信号Tと第3信号Uとの受光強度が同じ受光強度となるときがある。基準信号出力部83Aは、信号検出部81Aによる第1信号Tと第3信号Uとの受光強度が同じ受光強度であると判定した場合(ステップST02)、交点O1を第1基準信号O1として出力する。すなわち、基準信号出力部83Aは、第1受光部41Aと第3受光部43Aとの境界に光が照射されたとき、第1基準信号O1を出力する。
【0070】
また、第2信号Sと第3信号Uとの受光強度が変動する際、図7(B)(1)における交点O2に示すように、第2信号Sと第3信号Uとの受光強度が同じ受光強度となるときがある。基準信号出力部83Aは、第2信号Sと第3信号Uとの受光強度が同じ受光強度であると判定した場合(ステップST02)、交点O2を第2基準信号O2として出力する。すなわち、基準信号出力部83Aは、第2受光部42Aと第3受光部43Aとの境界に光が照射されたとき、第2基準信号O2を出力する。
【0071】
そして、基準角度演算部84Aは、基準信号出力部83Aにより第1基準信号O1および第2基準信号O2の双方の信号が出力された場合(ステップST02でYES)、図7(B)(2)に示すように、第1基準信号O1から第2基準信号O2の一方の基準信号が出力され他方の基準信号が出力されるまでの間に角度信号検出部70により検出された反射手段3の傾斜角度を算出するための信号に基づいて、演算により基準角度を特定する基準角度特定工程を実行する(ステップST03)。
【0072】
この際、第3受光部43Aは、信号検出部81Aにて検出される第1基準信号O1から第2基準信号O2までの間の信号が1周期以内となるように受光素子40を含んで構成されている。基準角度演算部84Aは、例えば第1基準信号O1から第2基準信号O2の間に検出された第1測定信号(A相信号-a相信号)および第2測定信号(B相信号-b相信号)である2つの正弦波信号を差動演算する。そして、基準角度演算部84Aは、予め基準角度として定めた所定の角度と演算結果とを照合し、基準角度を特定する。ここで、第1基準信号O1から第2基準信号O2までの間の2つの正弦波信号を1周期以上とした場合、2つの正弦波信号を差動演算することで、予め基準角度として定めた所定の値と同じ値が、2以上算出される場合がある。
【0073】
したがって、一意に基準角度を特定し、2以上の基準角度と同じ値が算出されないようにするために、第3受光部43Aは、信号検出部81Aにて検出される第1基準信号O1から第2基準信号O2までの間の信号が1周期以内となるように受光素子40を含んで構成されている。これにより、基準角度演算部84Aは、1周期以内の信号を用いることで重複した基準角度を算出することなく、演算により基準角度を算出し、特定することができる。
【0074】
基準信号出力部83Aにより第1基準信号O1および第2基準信号O2の双方の信号が出力されなかった場合(ステップST02でNO)、第1基準信号O1および第2基準信号O2の双方の信号を出力するまで基準信号判定工程を実行する(ステップST02)。ここで、第1基準信号O1および第2基準信号O2の双方の信号が出力されない場合とは、第1基準信号O1のみ、あるいは、第2基準信号O2のみ信号を出力した場合や、第1基準信号O1および第2基準信号O2の双方の信号を出力しない場合である。
【0075】
基準角度が特定されると、光学式角度センサ1Aは、例えば予め備えているメモリに基準角度を記憶し設定する基準角度設定工程を実行し(ステップST04)、角度検出を開始する。
角度算出部9は、図7(B)(2)に示すように、角度信号算出部70が検出したA相信号,a相信号,B相信号,b相信号と、基準角度と、に基づいて反射手段3の傾斜角度を算出する。
【0076】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(6)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(7)特定手段8Aにおける基準角度演算部84Aは、基準信号出力部83Aにより出力された第1基準信号O1および第2基準信号O2に基づいて、第1基準信号O1および第2基準信号O2の一方の基準信号が検出され他方の基準信号が検出されるまでの間に角度信号検出部70により検出された角度を算出するための信号から、演算により基準角度を特定することができる。したがって、光学式角度センサ1Aは、第1実施形態のように演算をせずに基準角度を特定する場合と比較して、高精度に基準角度を特定することができる。
【0077】
(8)第3受光部43Aは、角度信号検出部70が周期的な信号を検出するため、基準信号出力部83Aから出力される第1基準信号O1および第2基準信号O2までの間の角度信号検出部70が検出する信号が1周期以内となるように受光素子40を含んでいることで、特定手段8Aにおける基準角度演算部84Aは、確実に基準角度を特定することができる。
【0078】
(9)基準信号出力部83Aは、信号検出部81Aにより検出された信号に基づき、第1受光部41Aと第3受光部43Aとのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第1基準信号O1を出力し、第2受光部42Aと第3受光部43Aとのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第2基準信号O2を出力するため、容易に第1基準信号O1と第2基準信号O2とを出力するタイミングを計ることができる。
【0079】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図9に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図9は、第3実施形態に係る光学式角度センサにおける受光手段を示す図である。
具体的には、図9は、受光手段4Bの概略図であり、信号検出部81が受光手段4Bから検出する信号を示している。
【0080】
前記第1実施形態では、複数の受光素子40は、直交方向(X方向)に沿って並設されていた。
本実施形態では、図9に示すように、光学式角度センサ1Bにおける複数の受光素子40Bは、受光手段4Bの受光面において測定軸方向と平行な方向である測定軸方向に沿って並設されるとともに直交方向に所定の大きさを有し、所定の数ずつ直交方向に沿って配置され、受光素子40Bは、受光面において直交方向に沿って所定のピッチにて並設される複数のマスク格子Mを備える点で、前記第1実施形態と異なる。
【0081】
図9(A)に示すように、第1受光部41Bは、測定軸方向に並設される2つ以上であり4の倍数の数である4つの受光素子40Bを含み、第2受光部42Bは、第1受光部41Bとは異なるとともに第1受光部41Bの直交方向に並設される他の2つ以上であり4の倍数の数である4つの受光素子を含んで構成されている。
複数のマスク格子Mは、4つの受光素子40Bのそれぞれにおいて、他の受光素子40Bとは90度位相をずらして配置されている。このように複数のマスク格子Mを配置することで、マスク格子Mとマスク格子Mの間の受光素子40Bの各領域は、前記第1実施形態における測定軸方向に沿って並設された複数の受光素子40と同様に信号を取得し、基準角度を特定することができる。
【0082】
具体的には、光学式角度センサ1Bは、図9(B)(1)に示すように、角度信号検出部70(図4参照)により検出されたA1相信号,a1相信号,A2相信号,a2相信号,B1相信号,b1相信号,B2相信号,b2相信号,の8つの信号を演算することにより交点Oを特定し、交点Oを基準角度として特定する。そして、光学式角度センサ1Bは、図9(B)(2)に示すように、角度信号検出部70により検出されたA1相信号,a1相信号,A2相信号,a2相信号,B1相信号,b1相信号,B2相信号,b2相信号,の8つの信号と、基準角度と、に基づいて角度算出部9にて演算することにより反射手段3の傾斜角度を算出する。
【0083】
また、マスク格子Mは回折格子と同様に機能し、受光素子40B上で回折を生じさせることができる。したがって、回折格子を設けるための空間を要することなく受光素子40B上で回折を生じさせることができるため、省スペース化を図ることができる。さらに、マスク格子Mを受光素子40B上に配置することで、受光素子40自体を小型化した場合よりも小さな受光素子を擬似的に受光素子40B上に形成することができるため、高分解能の信号を取得し、高精度化を図ることができる。
【0084】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(6)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(10)受光素子40Bは、測定軸方向(Y方向)に沿って並設されるとともに直交方向に所定の大きさを有し、受光面において直交方向に沿って所定のピッチにて並設される複数のマスク格子Mを備えることで、PDA自体の大きさを小さくしなくとも、マスク格子Mとマスク格子Mとの間の受光素子40Bの領域が個別のPDAと同様に作用するため、光学式角度センサ1Bは、高分解能の角度を算出することができる。
【0085】
(11)第1受光部41Bは、測定軸方向に並設される4の倍数の数の受光素子40Bを含み、第2受光部42Bは、第1受光部41Bとは異なるとともに第1受光部41Bの直交方向に並設される他の4の倍数の数の受光素子を含んでいるため、演算手段7は、4つの受光素子40Bから4相信号を検出することができる。4相信号から検出された角度を算出するための信号は、2相信号から検出された角度を検出するための信号よりも高感度である。したがって、光学式角度センサ1Bは、より精度の高い角度を取得することができる。また、第1受光部41Bと第2受光部42Bとがそれぞれ4の倍数の数である4つの受光素子40Bを含むことで、各相の信号をバランスよく検出することができる。
【0086】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態を図10に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図10は、第4実施形態に係る光学式角度センサにおける受光手段を示す図である。
前記第1実施形態から前記第3実施形態では、特定手段8,8A,8Bは、角度信号検出部70からの信号と信号検出部81,81Aからの信号とに基づき基準角度を特定していた。
【0087】
本実施形態では、図10に示すように、光学式角度センサ1Cにおける特定手段は、受光手段4Cの受光面における光の位置を特定する位置特定センサ8Cを備え、位置特定センサ8Cからの信号に基づき基準角度を特定する点で、前記第1実施形態から前記第3実施形態と異なる。位置特定センサ8Cは、例えば、CCDやCMOS、PSDであり、受光手段4Cの受光面に照射された光スポットから絶対位置である基準角度を特定する。
【0088】
特定手段は、位置特定センサ8Cを用いることで、演算によらずに基準角度を特定することができる。このため、前記第1実施形態から前記第3実施形態では、基準角度を特定するために、光学式角度センサ1Cが設けられた測定器は、電源が投入されると、反射手段3(図1,2参照)を傾ける動作を実行するが、本実施形態では、このような動作をしなくとも、基準角度を特定することができる。したがって、他の実施形態の特定手段8,8A,8Bと比較して、効率的に基準角度を特定することができる。
【0089】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(6)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(12)特定手段は、位置特定センサ8Cからの信号に基づき、演算をしなくとも容易に基準角度を特定することができる。
【0090】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、光学式角度センサ1,1A~1Cは測定器に設けられていたが、測定器ではなく、その他のものに設けられていてもよく、どのようなものに設けられるかは特に限定されるものではない。
【0091】
図11は、第1変形例に係る光学式角度センサを示す断面図である。
前記各実施形態では、光源2の光は、第1回折格子5に照射され、第1回折格子5を介した回折光を反射手段3は反射していたが、図11に示す光学式角度センサ1Dのように、反射手段3は、光源2からの光を反射し、第1回折格子5は、反射手段3を反射した反射光を回折してもよい。
【0092】
また、前記各実施形態では、回折格子として第1回折格子5と第2回折格子6とを備えていたが、光学式角度センサは、2以上の回折格子を備えていてもよいし、図11に示すように、回折格子を1つだけ備えていてもよいし、回折格子を備えていなくてもよい。
要するに、受光手段は、反射手段を介した光源から照射された光を受光し、演算手段における特定手段は、受光手段が受光した光に基づいて基準角度を特定することができれば、受光手段に照射される光の経路は、どのようなものであってもよい。
【0093】
図12は、第2変形例に係る光学式角度センサを示す斜視図であり、図13は、第2変形例に係る光学式角度センサを示す断面図である。
前記各実施形態では、光学式角度センサ1,1A~1Dは、Y軸を測定軸としていたが、図12に示す光学式角度センサ1Eのように、Y軸だけではなくX軸も測定軸とし、2軸の光学式角度センサであってもよい。
【0094】
この場合、光学式角度センサ1Eは、光源2から照射された光を少なくとも2方向への光に分割し回折する回折格子10を備える。そして、測定軸であるX軸と直交する方向に並設される複数の格子51Eを有する第3回折格子5Eと、測定軸であるX軸と直交する方向に並設される複数の格子61Eを有する第4回折格子6Eと、第3回折格子5Eと第4回折格子6Eを介した光を受光するとともに、測定軸であるX軸と直交する方向に並設される複数の受光素子を有する受光手段4Eと、を備える点で前記各実施形態と異なる。
【0095】
図13に示すように、光源2から照射された平行光は、回折格子10にて分割されるとともに第3回折格子5Eの方向に向かって回折する。そして第3回折格子5EにてX方向に回折した回折光は、反射手段3にて反射し、第2回折格子6Eにて回折し、再び反射手段3にて反射した後、受光手段4Eにて受光される。これにより、光学式角度センサ1Eは、Y軸だけでなくX軸も測定軸とすることができるため、1つの光学式角度センサ1Eで複数軸の角度検出を可能にすることができる。
【0096】
前記各実施形態では、反射手段3は、基準角度から±15度回動可能に設けられていたが、±15度でなくてもよく、例えば±1度や±180度であってもよい。
また、前記第2実施形態では、受光手段4Aの第3受光部43Aは、角度信号検出部70にて検出される信号が1周期以内となるように受光素子40を含んでいたが、1周期以上となるように受光素子40を含んでいてもよい。
【0097】
前記第1実施形態および前記第2実施形態では、受光手段4,4A~4Eは、第1受光部41,41Aが含む受光素子40と第2受光部42,42Aが含む受光素子40とは、同数であったが、同数の受光素子を有していなくてもよい。要するに、特定手段における基準角度判定部が信号検出部による信号から基準角度を特定することができ、基準信号出力部が信号検出部による信号から第1基準信号および第2基準信号を検出することができれば、第1受光部と第2受光部とが含む受光素子の数はそれぞれ異なっていてもよい。
【0098】
前記第2実施形態では、第1受光部41Aと、第2受光部42Aと、第3受光部43Aと、において複数の受光素子40は、測定軸方向に沿って並設されていたが、前記第3実施形態のように複数のマスク格子Mを備える複数の受光素子40Bであってもよい。要するに、受光手段は、複数の受光素子を備えていればよい。
【0099】
前記各実施形態では、角度算出部9は、角度信号検出部70が検出する角度を算出するための信号に基づき、差動演算により反射手段3の傾斜角度を算出していたが、角度算出部は差動演算を用いずに反射手段の傾斜角度を算出してもよい。要するに、角度算出部は、複数の受光素子により変換された信号に基づいて角度を算出することができれば、どのような手法にて角度を算出してもよい。
【0100】
前記第1実施形態では、第1受光部41と第2受光部42とは隣接して設けられ、前記第2実施形態では、第1受光部41Aと第3受光部43Aとは隣接して設けられるとともに、第2受光部42Aと第3受光部43Aとは隣接して設けられていたが、複数の受光部は、それぞれ隣接して設けられていなくてもよい。
また、前記第1実施形態の基準角度判定部82は、信号検出部81が第1受光部41と第2受光部42とのそれぞれから同じ強度の信号を検出したと判定した場合、信号を検出した位置を基準角度として特定していたが、信号検出部が第1受光部と第2受光部とのそれぞれから異なる所定の信号を検出したと判定した場合であってもよい。要するに、基準角度判定部は、信号検出部が第1受光部と第2受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したと判定した場合、信号を検出した位置を基準角度として特定することができればよい。
【0101】
前記第2実施形態では、基準信号出力部83Aは、信号検出部81Aにより検出された信号に基づき、第1受光部41Aと第3受光部43Aとのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第1基準信号を出力し、第2受光部42Aと第3受光部43Aとのそれぞれから同じ強度の信号を検出したときには第2基準信号を出力していたが、第1受光部と第3受光部とのそれぞれから異なる所定の信号を検出したときには第1基準信号を出力し、第2受光部と第3受光部とのそれぞれから異なる所定の信号を検出したときには第2基準信号を出力してもよい。要するに、基準信号出力部は、信号検出部により検出された信号に基づき、第1受光部と第3受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したときには第1基準信号を出力し、第2受光部と第3受光部とのそれぞれから所定の信号を検出したときには第2基準信号を出力することができればよい。
【0102】
前記第3実施形態では、第1受光部41Bは、測定軸方向に並設される4つの受光素子40Bを含み、第2受光部42Bは、第1受光部41Bとは異なるとともに第1受光部41Bの直交方向に並設される他の4つの受光素子を含んでいたが、第1受光部と第2受光部とのそれぞれが含む受光素子の数は、2つであってもよいし、4の倍数の数である8つ等であってもよく、2つ以上であればよい。例えば、第1受光部と第2受光部とのそれぞれが2つの受光素子を含む場合、光学式角度センサは、2つの受光素子から2相信号を検出することができる。光学式角度センサは、角度を算出するための信号と特定手段により特定された基準角度とに基づいて角度の絶対値を算出することができる。
要するに、第1受光部は、測定軸方向に並設される2つ以上の受光素子を含み、第2受光部は、第1受光部とは異なるとともに第1受光部の直交方向に並設される他の2つ以上の受光素子を含んでいればよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上のように、本発明は、光学式角度センサに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
1,1A~1D 光学式角度センサ
2 光源
3 反射手段
4,4A~4B 受光手段
40,40B 受光素子
41,41A 第1受光部
42,42A 第2受光部
43A 第3受光部
5 第1回折格子(回折格子)
6 第2回折格子(回折格子)
7,7A 演算手段
70 角度信号検出部
8,8A 特定手段
81,81A 信号検出部
82 基準角度判定部
83A 基準信号出力部
84A 基準角度演算部
9 角度算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13