(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】造形物を製造するためのAM装置およびAM装置におけるビームの照射位置を試験する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/31 20210101AFI20220829BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220829BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220829BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20220829BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220829BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220829BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220829BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220829BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220829BHJP
【FI】
B22F10/31
B22F10/28
B23K26/21 Z
B23K26/34
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2019095153
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 弘行
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 12/90
C22C 1/04- 33/02
B29C 64/00- 73/34
B29D 1/00- 29/10
B33Y 10/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物を製造するためのAM装置であって、
造形物を製造するための空間を画定するチャンバと、
前記チャンバ内に配置される、造形物の材料を支持するベースプレートと、
前記ベースプレート上の材料にビームを照射するためのビーム源と、
造形物の三次元データからビームの照射位置を決定する計算機と、
決定された照射位置に従ってビームを移動させる走査機構と、
前記チャンバ内に照射されたビームの照射位置を検出するための検出器と、
決定された照射位置と、検出された照射位置とを比較する評価器と、
を有し、
前記AM装置は、造形物の製造に先立って、前記造形物の材料が存在しない状態において、前記計算機により決定されたビームの照射位置に従って前記ビーム源および前記走査機構を動作させてビームを照射し、前記検出器により検出された照射位置と前記計算機により決定されたビームの照射位置とを前記評価器により比較するように構成されている、AM装置。
【請求項2】
請求項1に記載のAM装置であって、
照射するビームの強度を調整するための調整装置を有する、
AM装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のAM装置であって、
前記ビーム源は、レーザー源である、
AM装置。
【請求項4】
AM装置におけるビームの照射位置を試験する方法であって、
AM装置で製造する造形物の三次元データを用意するステップと、
前記三次元データに基づいてビームの照射位置を決定するステップと、
前記造形物の材料が存在しない状態において、前記決定されたビームの照射位置に従っ
てAM装置を動作させてビームを照射するステップと、
照射されたビームの位置を検出するステップと、
前記決定されたビームの照射位置と、前記検出されたビームの位置とを比較するステップと、
前記造形物の材料が存在する状態において、前記決定されたビームの照射位置に従ってAM装置を動作させてビームを照射するステップと、
を有する、
方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記ビームを照射するステップは、AM装置で造形物を製造するときに照射されるときのビーム強度よりも小さいビーム強度で行われる、
方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法であって、
前記ビームはレーザーである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、造形物を製造するためのAM装置およびAM装置におけるビームの照射位置を試験する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元物体を表現したコンピュータ上の三次元データから、三次元物体を直接的に造形する技術が知られている。たとえば、Additive Manufacturing(AM)(付加製造)法が知られている。一例として、金属紛体を用いるAM法においては、敷き詰められた金属紛体に対して、造形する部分に熱源であるレーザービームや電子ビームを照射して、金属紛体を溶融・凝固または焼結させることで三次元物体の各層を造形する。AM法においては、このような工程を繰り返すことで、所望の三次元物体を造形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-534234号公報
【文献】特開2017-77671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AM法においては、造形対象である三次元物体を表現した三次元CADデータから、各層ごとにレーザービームや電子ビームの照射位置やビーム軌跡などの実行データを作成する。AM装置は、コンピュータ制御により作成された実行データに基づいて、自動的に積層造形を行う。そのため、造形用に作成した実行データの検証は、実際に造形することで確認されることになる。コンピュータ上の仮想空間で造形のシミュレーションを実行することはできるが、実際のAM装置の動作や、照射されたビームの位置などは、実際にAM装置を動作させなければ検証することはできない。
【0005】
実際に造形物を製造している途中にAM装置の不具合や、作成された実行データにエラーがあると、意図した通りの造形物が出来なかったり、AM装置が造形の途中で停止したりすることがある。そうすると、材料や不具合を解消してから再び造形をやり直すことになり、材料や時間などが無駄になる。また、製造する造形物が大きくなれば、造形のやり直しの際の無駄が大きくなる。そこで、本願は、実際に造形を行う前に、AM装置を動作させて実行データおよびAM装置の動作を検証する技術を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、造形物を製造するためのAM装置が提供され、かかるAM装置は、造形物を製造するための空間を画定するチャンバと、前記チャンバ内に配置される、造形物の材料を支持するベースプレートと、前記ベースプレート上の材料にビームを照射するためのビーム源と、造形物の三次元データからビームの照射位置を決定する計算機と、決定された照射位置に従ってビームを移動させる走査機構と、前記チャンバ内に照射されたビームの照射位置を検出するための検出器と、決定された照射位置と、検出された照射位置とを比較する評価機と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態による、空AM工程を行っているAM装置を概略的に示す図である。
【
図3】一実施形態による、空AM工程を行う手順を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態による、ビームと検出器との位置合わせを行うときの様子を示す概略図であり、検出器の検出範囲とビームの走査範囲を示す図である。
【
図5】一実施形態による、AM装置を用いたAM工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明に係る造形物を製造するためのAM装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0009】
図1は、一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。
図1に示されるように、AM装置100は、プロセスチャンバ102を含む。プロセスチャンバ102の底面104には、ビルドアップチャンバ106が取り付けられている。ビルドアップチャンバ106には、リフトテーブル108が設置されている。リフトテーブル108は、駆動機構110により上下方向(z方向)に移動可能である。駆動機構110はたとえば、空圧式、油圧式の駆動機構としてもよく、モータおよびボールねじからなる駆動機構としてもよい。なお、図示しないが、プロセスチャンバ102に保護ガスを導入および排出するための入口および出口を配置してもよい。
【0010】
一実施形態において、
図1に示されるように、リフトテーブル108の上には、XYステージ112が配置される。XYステージ112は、リフトテーブル108の平面に平行な二方向(x方向、y方向)に移動可能なステージである。XYステージ112の上には、造形物の材料を支持するためのベースプレート114が配置される。
【0011】
プロセスチャンバ102内において、ビルドアップチャンバ106の上方に、造形物の材料を供給するための、材料供給機構150が配置されている。材料供給機構150は、造形物の材料となる粉末152、たとえば金属粉末を保持するための貯蔵容器154と、貯蔵容器154を移動させるための移動機構160と、を備える。貯蔵容器154には、材料粉末152をベースプレート114上に排出するための開口156を備える。開口156は、たとえば、ベースプレート114の一辺より長い直線状の開口156とすることができる。この場合、移動機構160を、開口156の直線に直行する方向にベースプレート114の他方の辺より長い範囲で移動させるように構成することで、ベースプレート114の全面に材料粉末152を供給することができる。また、貯蔵容器154は、開口156の開閉を制御するための弁158を備える。
【0012】
一実施形態において、
図1に示されるように、AM装置100は、レーザー光源170、およびレーザー光源170から発されたレーザー172をベースプレート114上の材料粉末152に向けて案内する走査機構174を備える。図示の実施形態において、レーザー光源170および走査機構174は、プロセスチャンバ102内に配置されている。走査機構174は、任意の光学系から構成することができ、ベースプレート114上の造形面(フォーカス面)の任意に位置にレーザー172を照射することができるように構成される。
【0013】
一実施形態において、レーザー光源170に変えて、電子ビーム源を使用してもよい。
電子ビーム源を用いる場合、走査機構174は磁石等から構成され、ベースプレート114上の造形面の任意に位置に電子ビームを照射することができるように構成される。
【0014】
図1に示される実施形態において、AM装置100は制御装置200を有する。制御装置200は、AM装置100の各種の動作機構、たとえば上述の駆動機構110、移動機構160、レーザー光源170、走査機構174、開口156の弁158などの動作を制御するように構成される。制御装置200は、一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0015】
図1に示される実施形態によるAM装置100で三次元物体をする場合、概ね、以下の手順で行われる。まず、造形対象物の三次元データD1が制御装置200に入力される。制御装置200は、入力された造形物の三次元データD1から、造形用のスライスデータを作成する。また、制御装置200は、造形条件やレシピを含む実行データを作成する。すなわち、制御装置200は、造形物の三次元データD1からビームの照射位置を決定する計算機として機能する。造形条件およびレシピは、たとえば、ビーム条件、ビーム走査条件、および積層条件を含む。ビーム条件は、レーザーを使用する場合、レーザー光源170の電圧条件やレーザー出力などを含み、また、電子ビームを使用する場合、ビーム電圧やビーム電流などを含む。ビーム走査条件は、走査パターン、走査ルート、走査速度、および走査間隔などを含む。走査パターンとしては、たとえば、一方向に走査する場合、往復方向に走査する場合、ジグザグに走査する場合、小さい円を描きながら横方向に移動する場合などがある。走査ルートは、たとえばどのような順序で走査を行うか、などを決定する。積層条件は、たとえば、材料の種類、粉末材料の平均粒形、粒形状、粒度分布、積層厚さ(造形する際に材料粉末を敷き詰める厚さ)、造形厚さ係数(積層厚さと実際に造形された造形物の厚さとの割合)などを含む。なお、上述の造形条件およびレシピの一部は、入力された造形物の三次元データに応じて作成および変更してもよく、入力された造形物の三次元データにかかわらず予め決定されていてもよい。
【0016】
貯蔵容器154内に造形物の材料となる粉末152、たとえば金属粉末を入れる。ビルドアップチャンバ106のリフトテーブル108を上の位置まで移動させ、ベースプレート114の表面が、レーザー172のフォーカス面に来るようにする。次に、貯蔵容器154の開口156の弁158を開いて、貯蔵容器154を移動させて、材料粉末152をベースプレート114上に一様に供給する。材料供給機構150は、造形物の一層分に相当する(上述の「積層厚さ」に相当する)材料粉末152をフォーカス面に供給するように制御装置200により制御される。次に、レーザー光源170からレーザー172が発せられ、走査機構174により、所定の範囲にレーザー172をフォーカス面に照射して、所定の位置の粉末材料を溶融、焼結させて、一層分の造形物M1を形成する。この時、必要であれば、リフトテーブル108の上に配置されているXYステージ112も移動さて、レーザー172の照射位置を変更してもよい。
【0017】
一層分の造形が終了したら、ビルドアップチャンバ106のリフトテーブル108を一層分下げる。再び、材料供給機構150により、造形物の一層分に相当する材料粉末152をフォーカス面に供給する。そして、走査機構174によりレーザー172をフォーカス面上で走査して、所定の位置の材料粉末152を溶融、焼結させて、一層分の造形物M1を形成する。これらの動作を繰り返すことで、目標とする造形物M1の全体を粉末152から形成することができる。
【0018】
上述したように、実際に造形物M1を製造している途中にAM装置の不具合や、作成された実行データにエラーがあると、意図した通りの造形物が出来なかったり、AM装置が造形の途中で停止したりすることがある。そこで、本開示の一実施形態によるAM装置100は、AM装置100が、実際に造形物を製造できるように動作するかを検証するため
の構成を備える。なお、本明細書において、AM装置の動作を検証する工程を「空AM工程(air additive manufacturing process)」と称する。
図2は、一実施形態による、空AM工程を行っているAM装置を概略的に示す図である。なお、空AM工程は、材料粉末152が無い状態で行う。
【0019】
一実施形態によるAM装置100は、照射されたビームの照射位置を検出するための検出器202を備える。
図1に示される実施形態において、検出器202はカメラ202aである。カメラ202aは、プロセスチャンバ102内に配置されており、レーザー172のフォーカス面における走査範囲の全体を撮影可能に配置されている。また、カメラ202aは、レーザー172のフォーカス位置を撮影可能なカメラとする。カメラ202aは制御装置200に接続されており、カメラ202aで撮影したデータは制御装置200で処理することが可能である。
【0020】
本実施形態によるAM装置100は、カメラ202aでレーザー172の照射位置を撮影することで、AM装置の実際の動作、特にレーザーの照射位置および走査軌道を確認することができる。入力された造形物の全ての層におけるレーザー172の照射位置および走査軌道を確認することで、入力された造形物を適切に製造できるようにAM装置が動作するかどうかを確認することができる。かかる動作は、材料粉末152が無い状態で実行することができるので、実際に材料粉末152を使用して造形する前にAM装置100の動作を確認することができる。
【0021】
一実施形態において、AM装置100は、照射されたビームの照射位置を検出するための検出器202として、シート状の二次元の検出器202bを備えることができる(
図2参照)。検出器202bは、レーザー172の光を検出できるものとし、レーザー172のフォーカス面における走査範囲の全体をカバーする寸法とすることができる。シート状の検出器202bをレーザー172のフォーカス面に配置することで、上述のカメラ202aと同様に、レーザー172の照射位置および走査軌道を確認することができる。
【0022】
なお、レーザー172に代えて電子ビームを用いるAM装置とする場合、カメラ202aは電子ビームを撮影することができるものとし、シート状の検出器202bは、電子ビームを検出できるものとする。
【0023】
空AM工程を行う場合、レーザー172または電子ビームの強度は、実際に材料粉末152を焼結させるときよりも小さいビーム強度とすることが望ましい。一実施形態において、AM装置100は、照射するビームの強度を調整するための調整装置171を備える。かかる調整装置171は、レーザー光源や電子ビーム源に供給する電力の大きさを調整するように構成することができる。
【0024】
図3は一実施形態による、空AM工程を行う手順を示すフローチャートである。まず、制御装置200に入力された造形対象物の三次元データD1から、AM装置100で造形するための実行データを作成する。実行データは、AM装置100で造形対象物を造形する際の各層におけるビームの照射位置や、造形条件、およびレシピなどを含む。
【0025】
次に、照射するビームの基準位置とビームの照射位置を検出する検出器202の基準位置とを合わせる。
図4は、ビームと検出器202との位置合わせを行うときの様子を示す概略図であり、検出器202の検出範囲とビームの走査範囲を示す図である。
図4においては、外側の実線の四角形は検出器202の検出範囲210であり、具体的にはカメラ202aの撮像領域であり、シート状の検出器202bの検出範囲である。
図4中において破線はビームの走査範囲212を示しており、走査機構174によりビームを走査可能な範囲である。
図4中の一点鎖線は、検出器202の検出範囲の中心を示している。
【0026】
ビームの基準位置と検出器202の基準位置との位置合わせを行うには、まず、ビームの走査範囲212の全体が検出器202の検出範囲210に入るように検出器202を配置する。次に、ビームの走査範囲212の内側の任意の位置に基準マーク216を配置する。
図4に示される例においては、基準マーク216は、ビームの走査範囲212の四隅に各々1つ配置されている。基準マークは1つのでもよい。基準マーク216をビームの走査範囲212の中央に配置してもよい。なお、基準マーク216は、AM装置100のフォーカス面、たとえばベースプレート114の表面に予め設けられた特徴でもよい。
【0027】
次に、基準マーク216の位置にビームを照射し、照射されたビームを検出器202で検出する。検出器202で検出したビーム位置(検出器202上での基準マーク216の位置)、およびAM装置100でビームを照射した位置、たとえば走査機構174の動作位置(基準マーク216の位置へビームを照射するための走査機構174の動作位置)、が分かるので、検出器202で検出した任意のビーム位置がAM装置のフォーカス面のどの位置になるかを把握することができるようになる。
【0028】
ビームと検出器202との位置合わせができたら、AM装置100を用いて実行データに基づいてビームを照射する。ただし、照射するレーザー172または電子ビームの強度は、実際に材料粉末152を焼結させるときよりも小さいビーム強度とする。また、空AM工程においては、造形用の実行データに基づいて、XYステージ112も動作させるが、リフトテーブル108の高さは変更しない。照射されたビームの位置は検出器202で検出される。空AM工程で検出されたビーム位置と、造形対象物の三次元データとを比較して、評価する。空AM工程で検出されたビーム位置と、造形対象物の三次元データD1とを比較および評価は制御装置200で行うことができる。すなわち、制御装置200は、空AM工程で検出されたビーム位置と、造形対象物の三次元データD1とを比較および評価するための評価器として機能する。検出されビーム位置が、造形対象物の三次元データと一致していなければ、実行データまたはAM装置の動作、特に、走査機構174の動作にエラーがあると考えられる。検出されビーム位置が、造形対象物の三次元データと一致しておらず、かつ、AM装置100が実行データのレシピ通りに動作しているのであれば、実行データの方にエラーがあると考えられる。また、補助的に、コンピュータ上の仮想空間で実行データに基づいて、AM装置を使用せずに仮想的に造形シミュレーションを実行することで、実行データを検証してもよい。空AM工程において、検出されビーム位置が造形対象物の三次元データと一致している場合でも、AM装置100が意図通りに動作していない場合や、同じ位置が過剰に重複して照射されている場合はAM装置および/または実行データにエラーがあると考えられる。
【0029】
図5は、一実施形態による、AM装置を用いたAM工程を示すフローチャートである。まず、造形対象物の三次元データが制御装置200に入力される。制御装置200は、造形条件やレシピを含む実行データを作成する。次に、AM装置は、上述の空AM工程を実施する。空AM工程で不具合がなければ、実際のAM工程を実施して造形物を製造する。空AM工程で不具合があれば、不具合を修正し、再び空AM工程を実施する。
【0030】
上述の実施形態によるAM装置においては、造形対象物をAM装置において実際に造形する前に、同一のAM装置を用いて空AM工程を実施することができるので、AM装置の誤作動や、造形用データの不具合を製造前に発見することができる。そのため、造形のための材料を消費することなく、AM装置の動作や造形データ、レシピを検証することができる。AM装置100のリフトテーブル108を駆動する駆動機構110や、ベースプレート114上のXYステージ112、走査機構174の動作などは、実際にAM装置100を動作させてみないと検証できないので、コンピュータ上の仮想シミュレーションではこれらのAM装置100の駆動機構の不具合を発見できない。本開示による実施形態にお
ける空AM工程は、実行データだけでなくAM装置の動作機構の動作も検証できる。
【0031】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0032】
上述の実施形態から少なくとも以下の技術的思想が把握される。
[形態1]形態1によれば、造形物を製造するためのAM装置が提供され、かかるAM装置は、造形物を製造するための空間を画定するチャンバと、前記チャンバ内に配置される、造形物の材料を支持するベースプレートと、前記ベースプレート上の材料にビームを照射するためのビーム源と、造形物の三次元データからビームの照射位置を決定する計算機と、決定された照射位置に従ってビームを移動させる走査機構と、前記チャンバ内に照射されたビームの照射位置を検出するための検出器と、決定された照射位置と、検出された照射位置とを比較する評価器と、を有する。
【0033】
[形態2]形態2によれば、形態1によるAM装置において、照射するビームの強度を調整するための調整装置を有する。
【0034】
[形態3]形態3によれば、形態1または形態2によるAM装置において、前記ビーム源は、レーザー源である。
【0035】
[形態4]形態4によれば、AM装置におけるビームの照射位置を試験する方法が提供され、かかる方法は、AM装置で製造する造形物の三次元データを用意するステップと、前記三次元データに基づいてビームの照射位置を決定するステップと、前記造形物の材料が存在しない状態において、前記決定されたビームの照射位置に従ってAM装置を動作させてビームを照射するステップと、照射されたビームの位置を検出するステップと、前記決定されたビームの照射位置と、前記検出されたビームの位置とを比較するステップと、を有する。
【0036】
[形態5]形態5によれば、形態4による方法において、前記ビームを照射するステップは、AM装置で造形物を製造するときに照射されるときのビーム強度よりも小さいビーム強度で行われる。
【0037】
[形態6]形態6によれば、形態4または形態5による方法において、前記ビームはレーザーである。
【符号の説明】
【0038】
102…プロセスチャンバ
106…ビルドアップチャンバ
108…リフトテーブル
110…駆動機構
112…ステージ
114…ベースプレート
150…材料供給機構
152…材料粉末
154…貯蔵容器
160…移動機構
170…レーザー光源
171…調整装置
172…レーザー
174…走査機構
200…制御装置
202…検出器
D1…三次元データ
M1…造形物