(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】硫化水素を選択的に除去するための吸収剤および方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20220829BHJP
C07C 213/02 20060101ALI20220829BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220829BHJP
C07C 217/08 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B01D53/14 210
C07C213/02
C01B32/50
C07C217/08
B01D53/14 220
(21)【出願番号】P 2019563130
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2018062355
(87)【国際公開番号】W WO2018210738
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】518377090
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Research & Engineering Company
【住所又は居所原語表記】1545 Route 22 East,Annandale,NJ 08801,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン エアンスト
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト フォアベルク
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ズィーダー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス イングラム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァージニア ライナー
(72)【発明者】
【氏名】カーラ ペレイラ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シスキン
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-504644(JP,A)
【文献】特表2015-515366(JP,A)
【文献】特表2018-531146(JP,A)
【文献】特表2018-531147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00
C01B 32/00
C07C 217/00
C07C 213/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去するための吸収剤であって、ここで、前記吸収剤は、
a)一般式(I)
【化1】
[式中、R
1は、C
1~C
5アルキルであり、R
2は、C
1~C
5アルキルであり、R
3は、水素およびC
1~C
5アルキルから選択され、xは、2~10の整数である]
のアミンまたはアミンの混合物と、
b)一般式(II)
【化2】
[式中、
R
4は、C
1~C
5アルキルであり、yは、2~10の整数であり、
R
1とR
4は、同一であり、
a)に対するb)の質量比は、
0.15~0.5である]のエーテルまたはエーテルの混合物と
を含む水溶液を含有する、吸収剤。
【請求項2】
xの数平均とyの数平均とが互いに1.0を超えて異ならない、請求項1記載の吸収剤。
【請求項3】
xとyが同一である、請求項2記載の吸収剤。
【請求項4】
xとyが3である、請求項3記載の吸収剤。
【請求項5】
前記アミンa)が、(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテルおよび(2-(2-(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテルから選択され、かつ
前記エーテルb)が、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノールおよび2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノールから選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の吸収剤。
【請求項6】
前記アミンa)が(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテルであり、かつエーテルb)が2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノールである、請求項5記載の吸収剤。
【請求項7】
a)に対するb)の質量比が0.15~0.35である、請求項1から6までのいずれか1項記載の吸収剤。
【請求項8】
前記吸収剤が酸c)を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の吸収剤。
【請求項9】
式(II)のエーテルを、一般式(III)
【化3】
[式中、R
2は、C
1~C
5アルキルであり、R
3は、水素およびC
1~C
5アルキルから選択される]の第一級アミンと反応させて、式(I)のアミンを形成する、請求項1から8までのいずれか1項記載の吸収剤を製造する方法であって、ここで、前記式(II)のエーテルは、前記反応で完全には消費されず、前記式(II)のエーテルは、前記式(I)のアミンから完全には分離されない、方法。
【請求項10】
前記式(III)の第一級アミンのモル量が、前記反応中に前記式(II)のエーテルのモル量を超える、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記反応を、水素化/脱水素化触媒の存在下で行う、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去するための方法であって、前記流体流を、請求項1から8までのいずれか1項記載の吸収剤と接触させ、ここで、負荷された吸収剤と処理された流体流とが得られる、方法。
【請求項13】
前記負荷された吸収剤を、加熱、減圧および不活性流体によるストリッピングのうちの少なくとも1つの手段によって再生する、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去するのに適した吸収剤に関する。本発明はまた、吸収剤を得る方法、ならびに硫化水素と二酸化炭素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去する方法に関する。
【0002】
天然ガス、精製ガスまたは合成ガスなどの流体流から、酸性ガス、たとえばCO2、H2S、SO2、CS2、HCN、COSまたはメルカプタンを除去することは、さまざまな理由で望ましい。天然ガス中の硫黄化合物は、特に天然ガスに頻繁に同伴される水と一緒に腐食性酸を形成する傾向がある。したがって、パイプラインにおける天然ガスの輸送または天然ガス液化プラント(LNG=液化天然ガス)における更なる処理のために、硫黄含有不純物の所与の限界値が観察されなければならない。さらに、多くの硫黄化合物は、低濃度であっても悪臭と毒性がある。
【0003】
CO2の濃度が高いとガスの発熱量が低下するため、天然ガスから二酸化炭素が除去されなければならない。さらに、CO2は水分とともにパイプやバルブの腐食をもたらす可能性がある。
【0004】
酸性ガスを除去するための既知の方法には、無機塩基または有機塩基の吸収剤水溶液による洗浄操作が含まれる。酸性ガスが吸収剤に溶解すると、該塩基によりイオンが形成される。吸収剤は、より低い圧力への減圧および/またはストリッピングによって再生することができ、それによってイオン種が逆反応し、酸性ガスが蒸気により放出および/またはストリッピングされる。再生プロセスの後、吸収剤は再利用することができる。
【0005】
CO2とH2Sが実質的に除去される方法は「全吸収」と呼ばれる。腐食問題を回避し、消費者に必要な発熱量を提供するためにCO2の除去が必要になり得るが、該CO2の除去を最小限に抑えながら混合物からH2Sを選択的に除去するようにCO2とH2Sの両方を含有する酸性ガス混合物を処理することが必要であったり望ましかったりする場合もある。たとえば、天然ガスパイプラインの仕様では、H2SはCO2よりも毒性と腐食性が強いため、CO2よりもH2Sレベルに厳しい制限が課されている。一般的なキャリアの天然ガスパイプラインの仕様では、通常、H2S含有量を4ppmvに制限しているが、CO2は2体積%と制限がより緩和されている。選択的なH2S除去は、下流のClausプラントなどの硫黄回収のために供給流中のH2Sレベルを富化するのにしばしば望まれている。
【0006】
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)などの立体障害が非常に大きい第二級アミンや、メチルジエタノールアミン(MDEA)などの第三級アミンは、CO2に対するH2Sの速度論的選択性を示す。したがって、そのようなアミンは、CO2とH2Sを含むガス混合物からH2Sを選択的に除去するのに適しており、一般に水性混合物として利用される。これらのアミンはCO2と直接反応しない。代わりに、CO2はアミンとのゆっくりとした反応において水と反応することで重炭酸塩を生じる。この反応速度論により、H2Sが吸着剤のアミン基とより迅速に反応して、水溶液中に水硫化物塩を形成することが可能である。
【0007】
上記のようなヒドロキシル置換アミン(アルカノールアミン)の使用が一般的になってきた理由は、ヒドロキシル基の存在が、幅広く使用されている水性溶媒系における吸収剤/酸性ガス反応生成物の溶解性を改善する傾向にあり、そうして従来の吸収塔/再生塔ユニットを介した溶媒の循環が相分離の抑制によって促進されるためである。
【0008】
しかしながら、この恩恵は、特定の状況でそれ自体の問題を提示する可能性がある。現在のビジネスを成功させる鍵は、隔離前に酸性ガスを再生し、再圧縮するためのコストを削減することである。天然ガス系の場合、酸性ガスの分離は、約2,000~15,000kPaa、より一般的には約4,000~10,000kPaaの圧力で起こり得る。アルカノールアミンは、これらの圧力で酸性ガスを効果的に除去するであろうが、H2S除去の選択性は、液体溶媒中のCO2の直接的な物理的吸収とアミン化合物のヒドロキシル基との反応の両方によって著しく低下すると予想され得る。CO2はアミノ窒素と優先的に反応するが、より高い圧力は酸素との反応を強め、より高い圧力下にヒドロキシルサイトでの反応によって形成された重炭酸塩/ヘミ炭酸塩/炭酸塩反応生成物が安定化され、圧力の増加に伴ってH2S選択性が漸進的に失われる。
【0009】
さらに、ヒドロキシル基の存在は、アミンの水溶性を改善するが、ヒドロキシル基は界面活性剤特性を吸収剤/酸性ガス反応生成物に付与する傾向にあり、それによって潜在的にガス処理ユニットの操作中に厄介な発泡現象を引き起こす。
【0010】
ガス混合物の吸収処理において水性アミン混合物を使用する別の既知の問題は、水性アミン混合物の再生温度の範囲内の温度で、いくつかの相への分離が起こり得ることであり、この温度は、通常、50℃~170℃の範囲である。
【0011】
米国特許第8486183号明細書は、アルキルアミノアルキルオキシモノアルキルエーテルを含む酸性ガス吸収剤、およびアルキルアミノアルキルオキシアルコールモノアルキルエーテルを含む吸収剤溶液を使用してH2SとCO2を含有するガス混合物からH2Sを選択的に除去する方法を記載している。
【0012】
米国特許出願公開第2015/0027055号明細書は、メトキシエトキシエトキシエタノール-t-ブチルアミンなどの立体障害のある末端エーテル化アルカノールアミンを含む吸収剤によりCO2含有ガス混合物からH2Sを選択的に除去する方法を記載している。アルカノールアミンの末端エーテル化と水の排除により、より高いH2S選択性が可能になることが見出された。
【0013】
国際公開第2013/181242号は、H2Sの選択的除去に有用な吸収剤組成物を記載しており、ここで、該吸収剤組成物は、tert-ブチルアミンのアミノ化反応生成物とポリエチレングリコール混合物の水性アミン混合物のほかに、スルホン、スルホン誘導体およびスルホキシドから選択される有機共溶媒を含む。該有機共溶媒は、水性アミン混合物の個々の成分の混和性を促進すると述べられている。国際公開第2013/181252号は、そのような吸収性組成物を適用する方法を記載している。
【0014】
国際公開第2013/181245号は、H2Sの選択的除去に有用な吸収剤組成物を記載しており、ここで、該吸収剤組成物は、tert-ブチルアミンのアミノ化反応生成物とポリエチレングリコール混合物の水性アミン混合物のほかに、スルホン、スルホン誘導体およびスルホキシドから選択される有機共溶媒、ならびに相分離を抑制するための強酸を含む。
【0015】
国際公開第2013/181252号は、H2Sの選択的除去に有用な吸収剤組成物を記載しており、ここで、該吸収剤組成物は、tert-ブチルアミンのアミノ化反応生成物とポリエチレングリコール混合物の水性アミン混合物のほかに有機共溶媒を含む。
【0016】
本発明の目的は、二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去するのに適した更なる吸収剤を提供することである。該吸収剤は、水性アミン混合物の再生温度の通常の範囲内にある温度で相分離の傾向が弱まることになる。吸収剤は簡単に入手可能であることが望ましい。吸収剤を得る方法、および二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去する方法も提供されることになる。
【0017】
この目的は、二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去するための吸収剤によって達成され、ここで、該吸収剤は、
a)一般式(I)
【化1】
[式中、R
1は、C
1~C
5アルキルであり、R
2は、C
1~C
5アルキルであり、R
3は、水素およびC
1~C
5アルキルから選択され、xは、2~10の整数である]
のアミンまたはアミンの混合物と、
b)一般式(II)
【化2】
[式中、
R
4は、C
1~C
5アルキルであり、yは、2~10の整数であり、
R
1とR
4は、同一であり、
a)に対するb)の質量比は、0.08~0.5である]のエーテルまたはエーテルの混合物とを含む水溶液を含有する。
【0018】
エーテル化合物b)は、末端ヒドロキシル部分を含む。そのようなヒドロキシル化合物の存在は、水性アミン混合物の個々の成分の混和性を促進すると考えられている。それによって、吸収剤は、水性アミン混合物の再生温度の通常の範囲内にある温度で相分離の傾向が弱まる。再生温度は、通常、50℃~170℃、好ましくは70℃~140℃、より好ましくは110℃~135℃の範囲である。
【0019】
驚くべきことに、水性アミン吸収剤中にエーテル化合物b)が存在すると、CO2に対するH2Sの吸収剤の選択性は有意に低下しないことが見出された。さらに驚くべきことに、スルホランなどの代替有機共溶媒の代わりにエーテル化合物b)が存在すると、場合によってはCO2に対するH2Sの選択性が向上することが見出された。
【0020】
吸収剤は、該吸収剤の重量に基づいて、好ましくは10~70重量%、より好ましくは15~65重量%、最も好ましくは20~60重量%のアミンa)を含む。
【0021】
一実施形態では、成分a)は、一般式(I)のアミンの混合物を含み、かつ/または成分b)は、一般式(II)のエーテルの混合物を含み、ここで、a)および/またはb)は、エトキシ化のモル分布を有し、すなわち、エトキシ化度xとyは、a)の個々の分子間および/またはb)の個々の分子間で異なる。この場合、xの数平均とyの数平均は、1.0を超えて、好ましくは0.5を超えて互いに異ならないことが好ましい。
【0022】
別の実施形態では、成分a)は、本質的に均一な程度のエトキシ化を有する一般式(I)のアミンから構成され、かつ成分b)は、本質的に均一なエトキシ化度を有する一般式(II)のエーテルから構成される。この場合、xとyは同一であることが好ましい。最も好ましくは、xとyは3である。
【0023】
好ましくは、アミンa)は、(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル、および(2-(2-(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテルから選択される。
【0024】
好ましくは、エーテルb)は、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノール、および2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノールから選択される。
【0025】
好ましい実施形態では、アミンa)は、(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル、(2-(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテルおよび(2-(2-(2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテルから選択され、かつエーテルb)は、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノール、および2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノールから選択される。アミンa)は、(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル(M3ETB)であり、エーテルb)は、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノール(MTEG)であることが特に好ましい。
【0026】
アミンa)に対するエーテルb)の質量比は、0.08~0.5、好ましくは0.15~0.35である。
【0027】
一実施形態では、吸収剤は、酸c)を含む。酸は、吸収剤を再生して負荷量を低くし、方法の効率を高めるのに役立つ。酸c)とアミンa)との間でプロトン化平衡が形成される。平衡の位置は温度に依存し、より高い温度では、遊離オキソニウムイオンおよび/またはプロトン化エンタルピーがより低いアミン塩に向かって平衡がシフトする。吸収工程で一般的な比較的低い温度では、より高いpHが効率的な酸性ガス吸収を促進するのに対して、脱着工程で一般的な比較的高い温度では、より低いpHが吸収された酸性ガスの放出を支持する。
【0028】
驚くべきことに、本発明の吸収剤中の酸の存在はまた、より高いH2S選択性をもたらし得ることが見出された。
【0029】
酸c)は、25℃で測定して、6未満、特に5未満のpKAを有することが好ましい。複数の解離段階、したがって複数のpKAを有する酸の場合、この要件は、pKA値の1つが指定された範囲内にあるときに満たされる。酸は、プロトン酸(ブレンステッド酸)から適切に選択される。
【0030】
酸は、120℃で測定された水溶液のpHが、7.9~9.5未満、好ましくは8.0~8.8未満、より好ましくは8.0~8.5未満、最も好ましくは8.0~8.2未満であるような量で加えることが好ましい。
【0031】
一実施形態では、酸の量は、該吸収剤の重量に基づいて、0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.5重量%、より好ましくは0.5~4.0重量%、最も好ましくは1.0~2.5重量%である。
【0032】
酸は、有機酸および無機酸から選択される。適切な有機酸は、たとえば、ホスホン酸、スルホン酸、カルボン酸およびアミノ酸を含む。特定の実施形態では、酸は多塩基酸である。
【0033】
適切な酸は、たとえば、
鉱酸、たとえば塩酸、硫酸、アミド硫酸、リン酸、リン酸の部分エステル、たとえば、モノアルキルリン酸エステルおよびジアルキルリン酸エステルならびにモノアリールリン酸エステルおよびジアリールリン酸エステル、たとえばトリデシルリン酸エステル、ジブチルリン酸エステル、ジフェニルリン酸エステルおよびビス(2-エチルヘキシル)リン酸エステル;ホウ酸;
カルボン酸、たとえば、飽和脂肪族モノカルボン酸、たとえばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、n-ヘプタン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸;飽和脂肪族ポリカルボン酸、たとえばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸;脂環式モノカルボン酸および脂環式ポリカルボン酸、たとえばシクロヘキサンカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、樹脂酸、ナフテン酸;脂肪族ヒドロキシカルボン酸、たとえばグリコール酸、乳酸、マンデル酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸;ハロゲン化脂肪族カルボン酸、たとえばトリクロロ酢酸または2-クロロプロピオン酸;芳香族モノカルボン酸および芳香族ポリカルボン酸、たとえば安息香酸、サリチル酸、没食子酸、位置異性体のトルイル酸、メトキシ安息香酸、クロロ安息香酸、ニトロ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸;工業用カルボン酸混合物、たとえば、バーサチック酸;
スルホン酸、たとえばメチルスルホン酸、ブチルスルホン酸、3-ヒドロキシプロピルスルホン酸、スルホ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-キシレンスルホン酸、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸およびジノニルナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸またはノナフルオロ-n-ブチルスルホン酸、カンファースルホン酸、2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-エタンスルホン酸(HEPES);
有機ホスホン酸、たとえば、式(IV)
R5-PO3H (IV)
[式中、R5は、カルボキシル、カルボキサミド、ヒドロキシルおよびアミノから独立して選択される最大4つの置換基で任意に置換されたC1~18アルキルである]のホスホン酸である。
【0034】
これらには、以下のものが含まれる:
アルキルホスホン酸、たとえばメチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸;ヒドロキシアルキルホスホン酸、たとえばヒドロキシメチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチルホスホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸;アリールホスホン酸、たとえばフェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸、たとえばアミノメチルホスホン酸、1-アミノエチルホスホン酸、1-ジメチルアミノエチルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、2-(N-メチルアミノ)エチルホスホン酸、3-アミノプロピルホスホン酸、2-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピル-2-クロロプロピルホスホン酸、2-アミノブチルホスホン酸、3-アミノブチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸、4-アミノブチルホスホン酸、2-アミノペンチルホスホン酸、5-アミノペンチルホスホン酸、2-アミノヘキシルホスホン酸、5-アミノヘキシルホスホン酸、2-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸;アミドアルキルホスホン酸、たとえば3-ヒドロキシメチルアミノ-3-オキソプロピルホスホン酸;ならびにホスホノカルボン酸、たとえば2-ヒドロキシホスホノ酢酸および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸;
式(V)
【化3】
[式中、R
6は、HまたはC
1~
6アルキルであり、Qは、H、OHまたはNR
7
2であり、R
7は、HまたはCH
2PO
3H
2、たとえば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸である]のホスホン酸;
式(VI)
【化4】
[式中、Zは、C
2~6アルキレン、シクロアルカンジイル、フェニレン、またはシクロアルカンジイルまたはフェニレンによって中断されたC
2~6アルキレンであり、Yは、CH
2PO
3H
2であり、mは、0~4である]のホスホン酸、たとえばエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);
式(VII)
R
8-NY
2 (VII)
[式中、R
8は、C
1~6アルキル、C
2~6ヒドロキシアルキルまたはR
9であり、R
9は、CH
2PO
3H
2である]のホスホン酸、たとえばニトリロトリス(メチレンホスホン酸)および2-ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸);
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するアミノカルボン酸、たとえば
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するα-アミノ酸、たとえばN,N-ジメチルグリシン(ジメチルアミノ酢酸)、N,N-ジエチルグリシン、アラニン(2-アミノプロピオン酸)、N-メチルアラニン(2-(メチルアミノ)プロピオン酸)、N,N-ジメチルアラニン、N-エチルアラニン、2-メチルアラニン(2-アミノイソ酪酸)、ロイシン(2-アミノ-4-メチルペンタン-1-オイック酸)、N-メチルロイシン、N,N-ジメチルロイシン、イソロイシン(1-アミノ-2-メチルペンタン酸)、N-メチルイソロイシン、N,N-ジメチルイソロイシン、バリン(2-アミノイソ吉草酸)、α-メチルバリン(2-アミノ-2-メチルイソ吉草酸)、N-メチルバリン(2-メチルアミノイソ吉草酸)、N,N-ジメチルバリン、プロリン(ピロリジン-2-カルボン酸)、N-メチルプロリン、N-メチルセリン、N,N-ジメチルセリン、2-(メチルアミノ)イソ酪酸、ピペリジン-2-カルボン酸、N-メチルピペリジン-2-カルボン酸、
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するβ-アミノ酸、たとえば3-ジメチルアミノプロピオン酸、N-メチルイミノジプロピオン酸、N-メチルピペリジン-3-カルボン酸、
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するγ-アミノ酸、たとえば4-ジメチルアミノ酪酸、または
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するアミノカルボン酸、たとえばN-メチルピペリジン-4-カルボン酸
が含まれる。
【0035】
無機酸の中で、リン酸および硫酸、特に硫酸が好ましい。
【0036】
カルボン酸の中で、ギ酸、酢酸、安息香酸、コハク酸およびアジピン酸が好ましい。
【0037】
スルホン酸の中で、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸および2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)が好ましい。
【0038】
ホスホン酸の中で、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)およびニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が好ましく、これらの中で、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸が特に好ましい。
【0039】
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するアミノカルボン酸の中で、N,N-ジメチルグリシンおよびN-メチルアラニンが好ましい。
【0040】
より好ましくは、酸は無機酸である。
【0041】
一実施形態では、吸収剤は、一般式(I)の化合物以外の第三級アミンまたは立体障害が非常に大きい第一級アミンおよび/または立体障害が非常に大きい第二級アミンを含む。非常に大きな立体障害とは、第一級または第二級窒素原子に直接隣接した第三級炭素原子を意味すると理解される。この実施形態では、吸収剤は、一般式(I)の化合物以外の第三級アミンまたは立体障害が非常に大きいアミンを、該吸収剤の全重量に基づいて、一般に5~50重量%、好ましくは10~40重量%、より好ましくは20~40重量%の量で含む。
【0042】
適切な第三級アミンには、特に以下のものが含まれる:
1.第三級アルカノールアミン、たとえば
ビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン(メチルジエタノールアミン、MDEA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン(トリエタノールアミン、TEA)、トリブタノ-ルアミン、2-ジエチルアミノエタノール(ジエチルエタノールアミン、DEEA)、2-ジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミン、DMEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(N,N-ジメチルプロパノールアミン)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、2-ジイソプロピルアミノエタノール(DIEA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)メチルアミン(メチルジイソプロパノールアミン、MDIPA);
2.第三級アミノエーテル、たとえば
3-メトキシプロピルジメチルアミン;
3.第三級ポリアミン、たとえば、ビス第三級ジアミン、たとえば
N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-N’,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン(TEPDA)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジエチルエチレンジアミン(DMDEEDA)、1-ジメチルアミノ-2-ジメチルアミノエトキシエタン(ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテル)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(TEDA)、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン;
およびそれらの混合物。
【0043】
第三級アルカノールアミン、すなわち、窒素原子に結合した少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有するアミンが一般に好ましい。メチルジエタノールアミン(MDEA)が特に好ましい。
【0044】
一般式(I)の化合物以外の適切な高度に立体障害のあるアミン(すなわち、第一級窒素原子または第二級窒素原子に直接隣接した第三級炭素原子を有するアミン)には、特に以下のものが含まれる:
1.立体障害が非常に大きい第二級アルカノールアミン、たとえば
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)、2-(2-tert-ブチルアミノ)プロポキシエタノール、2-(2-tert-アミルアミノエトキシ)エタノール、2-(2-(1-メチル-1-エチルプロピルアミノ)エトキシ)エタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、2-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-ブタノール、および3-アザ-2,2-ジメチルヘキサン-1,6-ジオール、2-N-メチルアミノプロパン-1-オール、2-N-メチルアミノ-2-メチルプロパン-1-オール;
2.立体障害が非常に大きい第一級アルカノールアミン、たとえば
2-アミノ-2-メチルプロパノール(2-AMP);2-アミノ-2-エチルプロパノール;および2-アミノ-2-プロピルプロパノール;
3.立体障害が非常に大きいアミノエーテル、たとえば
1,2-ビス(tert-ブチルアミノエトキシ)エタン、ビス(tert-ブチルアミノエチル)エーテル;
およびそれらの混合物。
【0045】
立体障害が非常に大きい第二級アルカノールアミンが一般に好ましい。2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノールおよび2-(2-tert-ブチルアミノエトキシエトキシ)エタノールが特に好ましい。
【0046】
一般に、吸収剤は、立体障害のない第一級アミンまたは立体障害のない第二級アミンを含まない。立体障害のない第一級アミンとは、水素原子または第一級炭素原子もしくは第二級炭素原子のみが結合している第一級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体障害のない第二級アミンとは、水素原子または第一級炭素原子のみが結合している第二級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体障害のない第一級アミンまたは立体障害のない第二級アミンは、CO2吸収の強力な活性剤として作用する。吸収剤中にそれらが存在すると、該吸収剤のH2S選択性が失われてしまう可能性がある。
【0047】
吸収剤はまた、腐食防止剤、酵素、消泡剤などの添加剤を含んでもよい。一般に、そのような添加剤の量は、吸収剤の約0.005~3重量%の範囲である。
【0048】
アミンa)は、上記の一般式(II)
【化5】
のエーテルを、一般式(III)
【化6】
[式中、R
2は、C
1~C
5アルキルであり、R
3は、水素およびC
1~C
5アルキルから選択される]の第一級アミンと反応させて、一般式(I)のアミンを形成する方法によって入手可能である。一般式(III)の第一級アミンは、一般式(II)のエーテルよりも一般に過剰に使用されるが、エーテルの完全な変換を得ることは困難である。長い反応時間および/または高められた温度によって一般式(II)のエーテルの完全な変換を強いる試みにより、分解生成物の過剰な形成がもたらされた。他方で、一般式(I)のアミンと一般式(II)の未反応エーテルは、たとえば蒸留により分離することが困難である。
【0049】
したがって、本発明は、上記で定義される式(II)のエーテルと、
一般式(III)
【化7】
[式中、R
2は、C
1~C
5アルキルであり、R
3は、水素およびC
1~C
5アルキルから選択される]の第一級アミンとの反応により、式(I)のアミンを形成することを含む、吸収剤の製造方法を提供し、ここで、式(II)のエーテルは、反応で完全には消費されず、式(II)のエーテルは、式(I)のアミンから完全には分離されない。本発明の方法では、式(II)のエーテルは、反応で完全には消費されず、式(II)のエーテルは、式(I)のアミンから完全には分離されない。有利には、この方法は、1つの反応工程と制限された量の後処理のみを含む反応で、本発明の吸収剤の製造を可能にする。
【0050】
好ましくは、式(III)の第一級アミンは、反応中に式(II)のエーテルのモル量に対してモル過剰で使用される。好ましい実施形態では、式(III)の第一級アミンのモル量は、該式(II)のエーテルの量に基づいて、反応の開始時に式(II)のエーテルのモル量を5~5,000モル%、好ましくは50~1,000モル%だけ超える。
【0051】
好ましくは、反応は、水素化/脱水素化触媒の存在下、たとえば、銅含有水素化/脱水素化触媒の存在下で行われる。触媒は、支持体、たとえばアルミナ支持体に適用されてもよい。
【0052】
一実施形態では、担持された銅、ニッケルおよびコバルト含有水素化/脱水素化触媒が使用され、ここで、触媒の触媒活性材料は、水素による還元前に、アルミニウム、銅、ニッケルおよびコバルトの酸素化合物と、SnOとして計算される0.2~5.0重量%の範囲のスズの酸素化合物を含む。好ましい実施形態では、国際公開第2011/067199号において特許請求された触媒に従った触媒、特に国際公開第2011/067199号の実施例5に記載の触媒が使用される。
【0053】
好ましい実施形態では、反応は150℃~260℃の温度で行われる。特に好ましい実施形態では、反応は170℃~240℃の温度で行われる。最も好ましい実施形態では、反応は190℃~220℃の温度で実施される。
【0054】
反応は、液相または気相で、5~300barの圧力で行うことができる。好ましい実施形態では、反応は60~200bar(絶対)の圧力で行われる。特に好ましい実施形態では、反応は70~130bar(絶対)の圧力で行われる。
【0055】
反応は、撹拌槽型反応器、固定床管型反応器および多管式反応器を使用して行うことができる。反応は、粗製反応混合物の再循環の有無にかかわらず、バッチ、セミバッチおよび連続モードで行うことができる。好ましい実施形態では、反応は、固定床管型反応器中で連続モードで行われる。
【0056】
触媒負荷量は、式(II)のエーテル0.01~2kg/(L・h)の範囲で、好ましくは0.1~1.0kg/(L・h)の範囲で、特に好ましい実施形態では、0.2~0.8kg/(L・h)の範囲で変えることができる。
【0057】
好ましい実施形態では、過剰の第一級アミン(III)は、一段階蒸留によって反応の生成物から分離される。「一段階蒸留」という用語は、リボイラーで生成された蒸気が直ちに凝縮器に送られる単純な蒸留配置の場合のように、単一の分離段階のみを伴う蒸留を意味すると理解される。対照的に、精留塔は、たとえば、いくつかの分離段階を有し、分留を表す。好ましくは、分離された過剰の第一級アミン(III)は、アミン(I)の更なる製造に再循環される。
【0058】
アミン(I)、エーテル(II)および第一級アミン(III)に加えて、反応生成物にはいくつかの他の物質が含まれている。通常、反応生成物は、水と副生成物、たとえばグリコールジエーテル、すなわち、エーテルb)が2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノール(MTEG)を含む場合、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)またはジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)を含む。
【0059】
好ましい実施形態では、水とグリコールジエーテルは、反応の生成物から分離される。特に好ましい実施形態では、水とグリコールジエーテルのほかに、上記の一段階蒸留後に反応生成物中にまだ残っている過剰の第一級アミン(III)は、第2の一段階蒸留によって反応生成物から除去される。この工程は、約90mbarAの圧力で行われることが好ましい。この工程には、適切なリボイラーを適用することができる。流下膜式蒸発器または薄膜式蒸発器を使用することができる。特に、「Sambay」式蒸発器を使用した薄膜蒸発を適用してよく、生成されたガスは室温で凝縮される。
【0060】
後処理工程の後、得られた生成物は、本発明の吸収剤を得るために水と混合してよい。上記のように、更なる物質を追加してもよい。
【0061】
あるいは後処理工程の後、得られた生成物を、ガス洗浄プラントなどの酸性ガス吸収剤の利用場所に輸送し、現場で水と混合して、本発明の吸収剤を得ることができる。上記のように、更なる物質を現場で追加してもよい。
【0062】
さらに提供されるのは、二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去する方法であって、流体流を、上記の実施形態のいずれかの吸収剤と接触させ、ここで、負荷された吸収剤と処理された流体流とが得られる。
【0063】
本文脈において、「硫化水素の選択性」とは、次の商の値を意味すると理解される:
【化8】
[式中、
【化9】
は、気相と接触している液相中でのH
2S/CO
2モル比であり、
【化10】
は、気相中でのH
2S/CO
2モル比である。]標準的なガス洗浄プロセスでは、液相は、吸収装置の底部にある負荷された吸収剤であり、気相は、処理すべき流体流である。
【0064】
驚くべきことに、本発明の吸収剤は、アミンa)の水溶液の選択性に匹敵する、CO2に対するH2Sの選択性を示すことが見出された。これは、エーテルb)などのヒドロキシル化合物が存在すると、通常、CO2とヒドロキシル部分の酸素との反応によりH2S選択性が低下するために予想外であった。これは、天然ガスなどの高圧下の流体の処理中に適用され得るため、より高い圧力下で特に当てはまる。
【0065】
本発明の吸収剤は、あらゆる種類の流体の処理に適している。流体はまず、天然ガス、合成ガス、コークス炉ガス、分解ガス、石炭ガス化ガス、サイクルガス、埋立地ガスおよび燃焼ガスなどのガスであり、次にLPG(液化石油ガス)またはNGL(天然ガス液体)などの吸収剤と本質的に不混和性の液体である。本発明の方法は、炭化水素質の流体流の処理に特に適している。存在する炭化水素は、たとえば、メタンなどのC1~C4炭化水素などの脂肪族炭化水素、エチレンもしくはプロピレンなどの不飽和炭化水素、またはベンゼン、トルエンもしくはキシレンなどの芳香族炭化水素である。
【0066】
吸収剤は、二酸化炭素と硫化水素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去するのに適しており、低い溶媒循環速度で選択的に高いH2Sを浄化することが可能である。吸収剤は、硫黄プラントテールガス処理ユニット(TGTU)の用途、該処理ユニットからの希薄酸オフガスをより高品質なClausプラント供給へと移し換える酸性ガス濃縮(AGE)プロセスにおいて有用であるか、または関連するガスおよび製油所ガスの処理に有用である。
【0067】
H2Sの選択的除去に加えて、流体流中に存在する可能性がある更なる酸性ガス、たとえば、SO3、SO2、CS2、HCN、COSおよびメルカプタンも除去することができる。
【0068】
本発明の方法では、流体流を、吸収装置における吸収工程において吸収剤と接触させ、その結果、二酸化炭素と硫化水素が少なくとも部分的に洗浄除去される。これにより、CO2とH2Sが低下した流体流と、CO2とH2Sで負荷された吸収剤が生じる。
【0069】
使用される吸収装置は、慣例のガス洗浄プロセスで使用される洗浄装置である。適切な洗浄装置は、たとえば、不規則充填物、規則充填物を有する塔、棚段を有する塔、膜接触器、ラジアルフロースクラバー、ジェットスクラバー、ベンチュリスクラバーおよびロータリースプレースクラバー、好ましくは規則充填物を有する塔、不規則充填物を有する塔、棚段を有する塔、より好ましくは棚段を有する塔および不規則充填物を有する塔である。流体流は、好ましくは、塔内で向流にて吸収剤で処理される。一般に、流体は下部領域に供給され、吸収剤は塔の上部領域に供給される。棚段塔には、シーブ棚段、バブルキャップ棚段またはバルブ棚段が取り付けられており、この棚段に液体が流れる。不規則充填物を有する塔には、異なる成形体を充填することができる。熱移動および物質移動は、通常約25~80mmの大きさの成形体によって引き起こされる表面積の増加によって改善される。既知の例は、ラシヒリング(中空円筒体)、ポールリング、ハイフローリング、インタロックスサドルなどである。不規則充填物は、塔に順序付けて導入したり、あるいは無作為に(ベッドとして)導入したりすることもできる。可能な材料には、ガラス、セラミック、金属およびプラスチックが含まれる。規則充填物は、順序付けられた不規則充填物をさらに発展させたものである。それらは規則的な構造を有している。その結果、充填物の場合、ガス流の圧力降下を減少させることが可能である。規則充填物のさまざまな設計、たとえば、織物状充填物またはシートメタル充填物が存在する。使用される材料は、金属、プラスチック、ガラスおよびセラミックであり得る。
【0070】
吸収工程での吸収剤の温度は、一般に約30℃~100℃であり、塔が使用される場合は、たとえば、塔の上部で30℃~70℃、下部で50℃~100℃である。
【0071】
本発明の方法は、1つ以上、特に2つの連続吸収工程を含み得る。吸収は、複数の連続する成分工程で実施することができ、この場合、酸性ガス成分を含む粗製ガスが、各成分工程における吸収剤のサブストリームと接触させられる。粗製ガスが接触させられる吸収剤は、すでに酸性ガスで部分的に負荷されていてもよく、たとえば、下流の吸収工程から最初の吸収工程に再循環された吸収剤、または部分的に再生された吸収剤であってよい。二段階吸収の性能に関して、刊行物である欧州特許出願公開第0159495号明細書、欧州特許出願公開第0190434号明細書、欧州特許出願公開第0359991号明細書および国際公開第00100271号が参照される。
【0072】
当業者は、吸収工程における条件、たとえば、より具体的には、吸収剤/流体流の比、吸収装置の塔高さ、吸収装置内の接触促進内部構造物、たとえば不規則充填物、棚段もしくは規則充填物の種類、および/または再生された吸収剤の残留負荷量を変えることによって、所定の選択性で高レベルの硫化水素除去を達成することができる。
【0073】
CO2はH2Sよりもゆっくりと吸収されることから、より短い滞留時間におけるよりも長い滞留時間においてより多くのCO2が吸収される。逆に言えば、滞留時間が長いと、H2S選択性が低下する傾向にある。したがって、より高い塔では選択吸収がより少なくなる。比較的高い液体滞留量を有する棚段または規則充填物の場合も同様に選択吸収がより少なくなる。再生に導入された加熱エネルギーは、再生された吸収剤の残留負荷量を調整するために使用することができる。再生された吸収剤の残留負荷量が低いほど、吸収の改善につながる。
【0074】
この方法は、好ましくは、CO2とで負荷された吸収剤を再生する再生工程を含む。再生工程では、CO2とH2Sおよび場合により更なる酸性ガス成分が、CO2とH2Sで負荷された吸収剤から放出されることで、再生された吸収剤が得られる。好ましくは、再生された吸収剤は、続いて吸収工程に再循環される。一般に、再生工程は、加熱、減圧および不活性流体によるストリッピングのうちの少なくとも1つの手段を含む。
【0075】
再生工程は、好ましくは、たとえば、ボイラー、自然循環蒸発器、強制循環蒸発器または強制循環フラッシュ蒸発器による、酸性ガス成分で負荷された吸収剤の加熱を含む。吸収された酸性ガスは、溶液を加熱することによって得られた蒸気により除去される。蒸気ではなく、窒素などの不活性流体を使用することも可能である。脱着装置内の絶対圧力は、通常0.1bar~3.5bar、好ましくは1.0bar~2.5barである。温度は、通常50℃~170℃、好ましくは70℃~140℃、より好ましくは110℃~135℃である。再生温度は、再生圧力に依存する。
【0076】
再生工程は、代替的または追加的に減圧を含むことができる。これには、負荷された吸収剤を、吸収工程の処置において存在する高圧から、より低い圧力に少なくとも1回減圧することが含まれる。減圧は、たとえば、スロットルバルブおよび/または減圧タービンにより達成することができる。減圧段階を伴う再生は、たとえば、刊行物である米国特許第4537753号明細書および米国特許第4553984号明細書に記載されている。
【0077】
酸性ガス成分は、再生工程で、たとえば減圧塔、たとえば垂直または水平に設置されたフラッシュ容器、または内部構造を備えた向流塔で放出され得る。
【0078】
再生塔も同様に、不規則充填物を有する塔、規則充填物を有する塔、または棚段を有する塔であってよい。再生塔は、底部にヒーター、たとえば、循環ポンプを備えた強制循環蒸発器を有する。頂部では、再生塔は、放出される酸性ガス用の出口を有する。同伴された吸収媒体の蒸気は、凝縮器中で凝縮され、塔に再循環される。
【0079】
複数の減圧塔を直列に接続し、異なる圧力で再生を行うことが可能である。たとえば、再生は、予備減圧塔において、吸収工程における酸性ガス構成成分の分圧を典型的には約1.5bar上回る高い圧力で行い、主要減圧塔において、低い圧力、たとえば1~2bar(絶対圧)で行うことができる。2つ以上の減圧段階を伴う再生は、刊行物である米国特許第4537753号明細書、米国特許第4553984号明細書、欧州特許出願公開第0159495号明細書、欧州特許出願公開第0202600号明細書、欧州特許出願公開第0190434号明細書および欧州特許出願公開第0121109号明細書に記載されている。
【0080】
本発明を、添付の図面および以下の実施例によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】本発明の方法を実施するのに適したプラントの概略図である。
【
図2】メトキシエトキシエトキシエチル-tert-ブチルアミン(M3ETB、30重量%)の水溶液、ならびにM3ETB(30重量%)およびメチルトリエチレングリコール(MTEG、10重量%)の水溶液の酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性のプロットを示す図である。
【
図3】M3ETB(30重量%)の水溶液、ならびにM3ETB(30重量%)およびMTEG(10重量%)の水溶液の経時的な酸性ガス負荷量のプロットを示す図である。
【
図4】M3ETB(30重量%)の水溶液、M3ETB(30重量%)およびH
2SO
4(2重量%)の水溶液、ならびにM3ETB(30重量%)、MTEG(10重量%)およびH
2SO
4(2重量%)の水溶液の酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性のプロットを示す図である。
【
図5】M3ETB(30重量%)の水溶液、M3ETB(30重量%)およびH
2SO
4(2重量%)の水溶液、ならびにM3ETB(30重量%)、MTEG(10重量%)およびH
2SO
4(2重量%)の水溶液の経時的な酸性ガス負荷量のプロットを示す図である。
【
図6】M3ETB(30重量%)の水溶液、M3ETB(30重量%)およびMTEG(10重量%)の水溶液、ならびにM3ETB(30重量%)およびスルホラン(10重量%)の水溶液の酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性のプロットを示す図である。
【
図7】M3ETB(30重量%)の水溶液、M3ETB(30重量%)およびMTEG(10重量%)の水溶液、ならびにM3ETB(30重量%)およびスルホラン(10重量%)の水溶液の経時的な酸性ガス負荷量のプロットを示す図である。
【0082】
図1によれば、入口Zを介して、硫化水素と二酸化炭素を含む適切に前処理されたガスが、吸収装置A1において、吸収剤ライン1.01を介して供給される再生された吸収剤と向流で接触させられる。吸収剤は、吸収によってガスから硫化水素と二酸化炭素を除去する。これにより、オフガスライン1.02を介して硫化水素と二酸化炭素が減少したクリーンガスが得られる。
【0083】
吸収剤ライン1.03、熱交換器1.04(ここでは、CO2とH2Sで負荷された吸収剤が、吸収剤ライン1.05を通って導かれる再生された吸収剤からの熱で加熱される)、および吸収剤ライン1.06を介して、CO2とH2Sで負荷された吸収剤が、脱着塔Dに供給され、再生される。
【0084】
吸収装置A1と熱交換器1.04との間に、1つ以上のフラッシュ容器を設けることができ(
図1には図示せず)、ここでは、CO
2とH
2Sで負荷された吸収剤は、たとえば、3~15barまで減圧される。
【0085】
脱着塔Dの下部から、吸収剤はボイラー1.07に導かれ、そこで加熱される。発生した蒸気は、脱着塔Dに再循環され、その一方で、再生された吸収剤は、吸収剤ライン1.05、熱交換器1.04(ここでは、再生された吸収剤が、CO2とH2Sで負荷された吸収剤を加熱し、同時にそれ自体冷却する)、吸収剤ライン1.08、冷却装置1.09および吸収剤ライン1.01を介して吸収装置A1に返送される。図示されるボイラーの代わりに、自然循環蒸発器、強制循環蒸発器または強制循環フラッシュ蒸発器などの他のタイプの熱交換器をエネルギー導入に使用することも可能である。これらの蒸発器タイプの場合、再生された吸収剤と蒸気との混合相流が脱着塔Dの底部に戻され、ここで、蒸気と吸収剤との間の相分離が生じる。熱交換器1.04に向かう再生された吸収剤は、脱着塔Dの底部から蒸発器に向かう循環流から抜き出されるか、または脱着塔Dの底部から熱交換器1.04に直接向かう別個のラインを介して導かれる。
【0086】
脱着塔Dにおいて放出されたCO2とH2S含有ガスは、オフガスライン1.10を介して脱着塔Dを抜ける。それは一体化された相分離1.11を伴う凝縮器中に導かれ、ここで、同伴された吸収剤蒸気から分離される。本発明の方法を実施するのに適したこれと他のあらゆるプラントでは、凝縮と相分離が互いに別個に存在していてもよい。続いて、凝縮液は、吸収剤ライン1.12を通って脱着塔Dの上部領域に導かれ、CO2とH2S含有ガスがガスライン1.13を介して排出される。
【0087】
実施例の説明では、次の略語を使用した。
M3ETB:(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル
MTEG:2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノール
TBA:tert-ブチルアミン
【0088】
実施例1:(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル(M3ETB)を含む吸収剤の調製
H2とN2用の高圧入口、ならびに高圧ポンプ、高圧および低圧相分離器ならびに反応器の下流のサンプリングステーションを備えた液体MTEGおよびTBA供給ラインに接続されたオイル加熱式ジャケット付きの1.4L高圧管状反応器(長さ2,000mm、直径30mm、軸方向に配置された直径5mmの温度プローブを装備)に、500mLのセラミックボール、500mLのアミノ化触媒(国際公開第2011/067199号、実施例5に従って得られた、Al2O3上にNi、Co、Cu、Snを含む触媒)および400mLのセラミックボールを段階的に充填した。反応器を閉じ、空気をN2と置き換えた。続けて、H2400標準L/hを280℃および周囲圧力で24時間通すことによって、触媒を活性化した。24時間後、反応器を50℃に冷却し、H2100標準L/hの流量でH2圧力を200barに増加した。次いで、温度を100℃に上昇させ、TBAの計量供給を開始した。TBA流量は600g/hまで段階的に増加した。TBA負荷量が安定したら、MTEGを最初に51g/Lの流量で反応器にポンプ供給した。数日間かけて徐々に、触媒負荷量をMTEG0.3kg/(L・h)に増加し、TBA負荷量を0.4kg/(L・h)に調整した。これはTBA:MTEG 6:1のモル比に相当する。温度は225℃に設定した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー(塔:Restekの30m Rtx-5アミン、内径:0.32mm、df:1.5μm、5℃/分のステップにおける温度プログラム60℃~280℃)によって分析した。以下の分析値がGC面積パーセントで報告される(保持時間tR、表を参照)。変換率は99.2%で、サンプルには96.3%のM3ETB(TBA不含として計算)が含まれており、これは97%の選択率に相当する。収集された反応混合物のアリコートを蒸留のために収集した。
【0089】
TBAは、90℃の浴温度で回転蒸発器を使用して、周囲圧力下で大幅に除去した。TBA 13.26体積%、MTEG 1.01体積%、M3ETB 82.62体積%およびその他の化合物3.11体積%を含む残りの粗製生成物3.5kgを4Lのガラス容器に入れ、ポールリングが充填された直径40mm、長さ1,000mmの塔で蒸留した。16の留分を採取した。それらの沸点から決定されるように、最初の留分はTBAから成っていた。留分7~16(1,900g)を合わせた。このサンプルの純度は99.8%であった。
【0090】
【0091】
例2~4では、次の手順を使用した。
【0092】
実験は、ガスをアップフローモードで供給することができる撹拌オートクレーブと凝縮器を含む吸収ユニット(セミバッチ系)で行った。オートクレーブには、圧力計とJ型熱電対が備わっていた。安全破裂板がオートクレーブヘッドに取り付けられていた。高ワット数のセラミックファイバーヒーターを使用して、オートクレーブに熱を供給した。ガス流はマスフローコントローラー(Brooks Instrument製)によって制御し、凝縮器の温度はチラーによって維持した。最大使用圧力と温度は、それぞれ1000psi(69bar)と350℃であった。
【0093】
大気圧での運転中、オートクレーブの底部に取り付けられたpHプローブ(Cole-Parmer製)を使用することによって、溶液のpHをその場でモニターした。このpHプローブは、それぞれ135℃と100psiの最高温度と圧力の制限を受けていた。したがって、大気圧を超える圧力(「より高い圧力」)で実験を行う前に、pHプローブを取り外し、オートクレーブに蓋をした。両方の場合(大気圧とより高い圧力)において、液体サンプルは、バイアル(大気圧)または苛性アルカリが充填されたステンレス鋼製シリンダー(より高い圧力)をサンプリングシステムに直接取り付けて収集した。特別に設計されたLabVlEWプログラムを使用して、吸収ユニットの操作を制御し、温度、圧力、撹拌速度、pH(大気圧)、ガス流量およびオフガス濃度などの実験データを取得した。
【0094】
実施例で使用したガス混合物は、次の特性を有していた:
ガス供給組成:CO2 10モル%、H2S 1モル%、N2 89モル%
ガス流量:154SCCM
温度:40.8℃
圧力:1bar
容量:15mL(τ=0.1分)
撹拌速度:200rpm
【0095】
実施例2~4の実験は、上記で指定されたガス混合物をオートクレーブに通して流すことによって実施した。オートクレーブには、以下に指定するように、それぞれのアミン水溶液があらかじめ入れられていた。酸性ガス混合物を反応器の底部に供給した。同伴されたいかなる液体も除去するために、オートクレーブを抜けるガスを凝縮器に通し、これを10℃に保った。凝縮器を抜けるオフガスのスリップ流を、分析のためにマイクロガスクロマトグラフ(micro-gas-phase chromatograph)(Infcon製マイクロGC)に供給し、メインガス流はスクラバーを通過した。破過点に達した後、窒素を使用して系をパージした。
【0096】
オフガスのスリップ流は、特注のマイクロGCを使用して分析した。マイクロGCは精製ガス分析装置として構成され、4つの塔(モレキュラーシーブ、PLOT U、OV-1、PLOT Q)[Aglient社]と4つの熱電子捕獲型検出器を含んでいた。オフガスの一部を約2分毎にマイクロGCに注入した。小型の内部真空ポンプを使用して、サンプルをマイクロGCに移した。サンプルティーとマイクロGCとの間で10倍のラインフラッシュ量を達成するために、公称ポンプ速度は約20mL/分であった。マイクロGCに注入された実際のガス量は約1μLであった。PLOT U塔を使用してH2SとCO2を分離し、同定し、マイクロTCDを使用してそれらを定量した。
【0097】
純度99%のM3ETBを使用して、以下で説明するさまざまな水溶液を得た。
【0098】
本明細書で使用される「酸性ガス負荷量」という用語は、アミン1モル当たりのガスのモル量で表される、吸収剤溶液に物理的に溶解および化学的に結合されたH2SとCO2のガス濃度を表す。
【0099】
実施例2
M3ETB(30重量%)の水溶液を、M3ETB(30重量%)およびMTEG(10重量%)を含む水溶液と比較した。経時的な酸性ガス負荷量を、酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性と同様に決定した。結果を
図2および3に示す。
【0100】
水性M3ETBの最大選択性は、約0.35モルの負荷量で約11である。選択性は、H2SとCO2の負荷量が高くなると低下する。MTEGの存在は、選択性にわずかな影響しか与えず、最大選択性は約10であり、最大値は低い負荷量にシフトしないことが示された。
【0101】
水性M3ETBの経時的な酸性ガス負荷量は、約600分後にアミン1モル当たり約0.62モルのCO2のCO2最大負荷量を示し、H2S負荷量は、約150分後にアミン1モル当たり最大約0.25モルのH2Sに上昇し、その後、約400分でアミン1モル当たり約0.15モルのH2Sに低下し、その後、本質的に安定したままである。結合したH2Sは、より高い負荷量ではCO2に取って代わるだろう。MTEGの存在は、約150分以降からわずかに低いH2S負荷量で同じ傾向をたどって、経時的な酸性ガスの負荷量にわずかな影響しか与えない。
【0102】
実施例3
M3ETB(30重量%)の水溶液を、M3ETB(30重量%)およびH
2SO
4(2重量%)の水溶液、ならびにM3ETB(30重量%)、MTEG(10重量%)およびH
2SO
4(2重量%)の水溶液と比較した。経時的な酸性ガス負荷量を、酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性と同様に決定した。結果を
図4および5に示す。
【0103】
例2で説明したように、水性M3ETBの最大選択性は、約0.35モルの負荷量で約11であり、これはH2SとCO2の負荷量が高くなると低下する。H2SO4の添加により、最大選択性が約10に減少し、最大値が約0.30モルのより低い負荷量にシフトする。H2SO4とMTEGの存在により、選択性が約13に増加し、最大値が約0.25モルのより低い負荷量に向かってわずかにシフトする。
【0104】
図5は、M3ETBの水溶液にH
2SO
4を添加すると酸性ガス容量が減少することを示している。CO
2の場合、最大負荷量は、H
2SO
4なしでアミン1モル当たり0.62モルのCO
2と比較して、アミン1モル当たり約0.47モルのCO
2である。H
2Sの場合、最終的なH
2S負荷量は、H
2SO
4なしで約400分にてアミン1モルあたり約0.15モルのH
2Sと比較して、約250分でアミン1モル当たり約0.10モルのH
2Sである。
【0105】
M3ETB、MTEGおよびH2SO4の水溶液は、M3ETBの水溶液の酸性ガス負荷量とM3ETBおよびH2SO4の水溶液の酸性ガス負荷量との間の酸性ガス負荷量を示す。
【0106】
実施例4
M3ETB(30重量%)およびMTEG(10重量%)の水溶液を、M3ETB(30重量%)およびスルホラン(10重量%)の水溶液と比較した。経時的な酸性ガス負荷量を、酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性と同様に決定した。結果を
図6および7に示す。
【0107】
M3ETBおよびMTEGの水溶液の最大選択性は約10である。M3ETBおよびスルホランの水溶液の最大選択性は約8.5である。
【0108】
例5
臨界溶液温度を決定するために、混和性ユニットを適用した。このユニットでは、相分離が発生する温度(「臨界溶液温度」)を測定することが可能である。
【0109】
ユニットは、圧力計と熱電対を備えたサイトガラス容器で構成されていた。ヒーターを使用して、容器に熱を供給した。最大140℃の温度で測定可能である。可能な相分離は、サイトグラスを介して視覚的に観察することができる。次の表に、アミンM3ETBとのさまざまな混合物の測定臨界溶液温度を示す。
【0110】
【符号の説明】
【0111】
A1 吸収装置、 Z 入口、 1.01 吸収剤ライン、 1.02 オフガスライン、 1.03 吸収剤ライン、 1.04 熱交換器、 1.05 吸収剤ライン、 1.06 吸収剤ライン、 D 脱着塔、 1.07 ボイラー、 1.08 吸収剤ライン、 1.09 冷却装置、 1.10 オフガラスライン、 1.11 相分離、 1.12 吸収剤ライン、 1.13 ガスライン