(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20220829BHJP
C08F 4/52 20060101ALI20220829BHJP
C08F 236/04 20060101ALI20220829BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20220829BHJP
C08F 4/606 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F4/52
C08F236/04
C08L15/00
C08F4/606
(21)【出願番号】P 2020568452
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 KR2019018255
(87)【国際公開番号】W WO2020130738
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167686
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ス-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、トン-キル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウォン-ムン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スン-ホ
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-209439(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0058133(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00
C08F 4/52
C08F 236/04
C08L 15/00
C08F 4/606
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)希土類金属化合物を含む触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して有機金属が結合された活性重合体を製造する段階と、
2)前記活性重合体を下記化学式2で表される変性剤と反応させる段階とを含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化12】
[前記化学式2において、
Aは、炭素数2から12の炭化水素単位体、又はN又はOのうち何れか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2から12の炭化水素単位体であり、
R
xは、水素又はメチル基であり、
nは、2から6の整数である。]
【請求項2】
前記炭素数2から12の炭化水素単位体は、下記化学式3で表される単位体であり、前記N又はOのうち何れか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2から12の炭化水素単位体は、下記化学式4-1から4-4で表される単位体のうち何れか一つである、
請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
[化学式3]
*-R
a1-*
前記化学式3において、
R
a1は、炭素数2から12の直鎖状又は分枝状のアルキレン基、又は炭素数6から12のアリーレン基であり、
*は、前記化学式2の(メタ)アクリレートが結合する位置であり;
[化学式4-1]
(R
b1)
3C-R
b2-O-R
b3-C(R
b4)
m1(R
b5)
3-m1
前記化学式4-1において、
R
b1及びR
b4は、それぞれ独立して炭素数1から5のアルキル基であり、末端に前記化学式2の(メタ)アクリレートが結合し、
R
b2及びR
b3は、それぞれ独立して炭素数1から5のアルキレン基であり、
R
b5は、ヒドロキシ基であり、
m1は、1から3の整数であり;
[化学式4-2]
C(R
c1-O-R
c2)
m2(R
c3)
4-m2
前記化学式4-2において、
R
C1は、炭素数1から6のアルキレン基であり、
R
C2は、炭素数1から6のアルキル基であり、末端に前記化学式2の(メタ)アクリレートが結合し、
R
c3は、水素又は炭素数1から6のアルキル基であり、
m2は、1から4の整数であり;
[化学式4-3]
C(R
d1)
m3(R
d2)
4-m3
前記化学式4-3において、
R
d1は、炭素数1から6のアルキル基であり、末端に前記化学式2の(メタ)アクリレートが結合し、
R
d2は、ヒドロキシ基又は炭素数1から6のアルキル基であり、
m3は、1から4の整数であり;
【化13】
前記化学式4-4において、
R
e1からR
e3は、それぞれ独立して炭素数1から5のアルキレン基であり、
*は、前記化学式2の(メタ)アクリレートが結合する位置である。
【請求項3】
前記変性剤は、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,2-エタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-フェニレンジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシ化グリセロールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,2-エタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、イソシアヌレートトリメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、およびポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群から選択された一つ以上を含む、
請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記希土類金属化合物は、下記化学式5のネオジム化合物を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化14】
[前記化学式5において、R
1からR
3は、それぞれ独立して水素であるか、又は炭素数1から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。]
【請求項5】
前記希土類金属化合物は、前記化学式5において、R
1が炭素数6から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、R
2及びR
3がそれぞれ独立して水素原子であるか、又は炭素数2から8の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、但し、R
2及びR
3が同時に水素ではないネオジム化合物を含む、
請求項4に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記触媒組成物は、希土類金属化合物、アルキル化剤及びハロゲン化合物を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記触媒組成物は、共役ジエン系単量体をさらに含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月21日付韓国特許出願第10-2018-0167686号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも一末端が多官能性アクリレート系変性剤に変性され、高い加工性と配合物性及び低い冷間流れ性を有する変性共役ジエン系重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー節約及び環境問題に対する関心が高くなるにつれ、自動車の低燃費化が要求されている。これを実現するための方法の一つとして、タイヤ形成用ゴム組成物内のシリカ又はカーボンブラック等の無機充填剤を用いてタイヤの発熱性を下げる方法が提案されたが、ゴム組成物内の前記無機充填剤の分散が容易ではないため、むしろ耐磨耗性、耐クラック性又は加工性等をはじめとするゴム組成物の物性が全体的に低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、ゴム組成物内のシリカ又はカーボンブラック等の無機充填剤の分散性を高めるための方法として、有機リチウムを用いた陰イオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性部位を、無機充填剤と相互作用可能な官能基に変性する方法が開発された。具体的には、共役ジエン系重合体の重合活性末端をスズ系化合物に変性するか、アミノ基を導入する方法又はアルコキシシラン誘導体に変性する方法等が提案された。
【0005】
しかし、前述した方法で変性された共役ジエン系重合体を用いてゴム組成物の製造時、低発熱性は確保できるものの、耐磨耗性、加工性等のゴム組成物に対する物性改善の効果は十分でなかった。
【0006】
また他の方法として、希土類金属化合物を含む触媒を用いた配位重合によって得られるリビング重合体において、リビング活性末端を特定のカップリング剤や変性剤によって変性する方法が開発された。しかし、希土類金属化合物を含む触媒を用いて製造されたポリブタジエンのような変性共役ジエン系重合体は、高い1,4-シス含量、高い分子量及び狭い分子量分布を有することでタイヤ転がり特性等の向上された物性を示すが、低い加工性の問題及び高い冷間流れ性による保存性の問題を引き起こすことがある。
【0007】
冷間流れ性は、重合体の保存性、作業性、加工性に影響を与える物性であって、重合体を保存する時に重合体の重量によって初期の重合体の形態が押されて変形される特性を示す。高い冷間流れ性を有するほど製品規格の維持にならないため再定量による保存性及び作業性の下落を誘発し、深刻な場合は製品汚染及び廃棄に繋がり得る。冷間流れ性は、加工性向上のために重合物にオイルを添加して配合した重合体組成物においてより高く現れ、このような製品であるほどムーニー粘度及び重合度の上向き調節が非常に重要である。
【0008】
US5567784Aには、1,4-シスポリブタジエンの製造後に塩化硫黄を添加する方法に対して開示しており、悪臭の問題を解決するために未反応ブタジエン及び低沸点物質を除去する方法を開示していますが、塩化硫黄が後に入る過程であるため、硫黄による悪臭を完全に除去するには困難がある。KR10-0472649B1には、冷間流れ性を改善するために重合後一定時間が経ってからトリエチルボラン等の有機ボラン化合物を反応系に加える方法を開示していますが、有機ボラン化合物は、自然発火(沸騰点:約-20℃)及び爆発危険性があるため酸素及び水分がない条件で気を付けて扱わなければならないという問題があり、ムーニー粘度を調節することに限界がある。EP0386808A1は、PCl3を重合停止前に投入して冷間流れ性を改善しようとしたが、少量だけでもムーニー粘度が大きく変わり調節が困難という特性がある。US5064910Aは、ハロゲン化スズを重合物に投入して重合物の分子量分布を増加させ、冷間流れ性及び物性を改善しようとしたが、スズによる変性は炭素-スズ間の化学結合が加工添加剤及び環境要因により時間によって弱化され得、内在的な重金属汚染の問題を有している。
【0009】
前記のような従来の技術は、添加剤による悪臭の問題以外に変性剤由来基と活性重合体との弱い結合力、1,4-シス含量低下、冷間流れ性改善限界及びムーニー粘度調節に限界を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】US5567784A(1996.10.22)
【文献】KR10-0472649B1(2004.05.31)
【文献】EP0386808A1(1990.09.12)
【文献】US5064910A(1991.11.12)
【文献】US5064910A(1991.11.12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであり、分枝度調節を介して冷間流れ性に影響を与えるベータ値を下げることで冷間流れ性を効率的に制御し、加工性を改善でき、重合度及びムーニー粘度の上昇を調節できる変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表され、重合体鎖の末端が変性されたものである変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0015】
【0016】
前記化学式1において、
Aは、炭素数2から12の炭化水素単位体、又はN又はOのうち何れか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2から12の炭化水素単位体であってよく、
Rxは、水素又はメチル基であってよく、
nは、2から6の整数であってよい。
【0017】
また、本発明は、ベータ値が0.21以下の値を有する変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、1)希土類金属化合物を含む触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して有機金属が結合された活性重合体を製造する段階と、2)前記活性重合体を下記化学式2で表される変性剤と反応させる段階とを含む変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0019】
【0020】
前記化学式2において、
Aは、炭素数2から12の炭化水素単位体、又はN又はOのうち何れか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2から12の炭化水素単位体であってよく、
Rxは、水素又はメチル基であってよく、
nは、2から6の整数であってよい。
【0021】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体は、重合体鎖の末端が変性されたものであって、化学式1で表される構造を有することで重合体鎖間の強い炭素-炭素結合で連結された末端架橋結合を有し得、重合体の分枝度調節を介してベータ値を下げることによって冷間流れ性を効率的に制御し、加工性を大きく改善することができ、強い炭素-炭素結合により架橋結合を形成してゴム組成物配合時に添加され得る多様な添加剤による重合体の経時変化を抑制できる。
【0023】
また、本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体は、末端に変性剤由来基を含むことで重合体の鎖内の線形性を維持できるため優れた物性を確保でき、末端に特定の構造の変性剤由来基を含んで重合体鎖間の架橋結合により分枝度を調節して重合度及び変性前後のムーニー粘度の増加率を調節し、これによってゴム組成物への配合時に引張特性及び粘弾性特性のような配合物性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に対する理解を深めるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲において用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法によって説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0026】
[用語]
本明細書で用いられる用語『予備重合(preforming)』とは、共役ジエン重合用触媒組成物内での前(pre)重合を意味する。具体的には、希土類金属化合物、アルミニウム化合物を含むアルキル化剤、及びハロゲン化合物を含む共役ジエン重合用触媒組成物が前記アルミニウム化合物としてジイソブチルアルミニウムヒドリド(以下、DIBAH(diisobutyl aluminum hydride)と称する)のようなアルミニウムヒドリド系化合物を含む場合、多様な触媒活性種の生成可能性を減らすために、ブタジエン等の単量体を少量で共に含む。これにより、共役ジエン系重合体製造のための重合反応に先立って、前記共役ジエン系重合体製造用触媒組成物内でブタジエンの前(pre)重合が行われるが、これを予備重合という。
【0027】
また、本明細書で用いられる用語『予備混合(premixing)』とは、触媒組成物内で重合が行われずに、各構成成分が均一に混合した状態を意味する。
【0028】
また、本明細書に用いられる用語『触媒組成物』は、構成成分の単純混合物、物理的又は化学的引力によってもたらされる多様な複合体又は構成成分の化学反応物を含むものである。
【0029】
本明細書で用いられる用語『アルキル基(alkyl group)』は、一価の脂肪族飽和炭化水素を意味してよく、メチル、エチル、プロピル及びブチル等の直鎖状アルキル基及びイソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)及びネオペンチル(neo-pentyl)等の分枝状アルキル基を全て含んでよい。
【0030】
[測定方法]
本発明において『ムーニー粘度(mooney viscosity、MV)』は、重合体の加工性を判断する一尺度であって、ムーニー粘度が適正線に低いと流れが良いため加工性に優れたものと判断され、単位は、MU(Mooney Unit)で表示され、100℃でML(1+4)値を求めたものであり、ここで、MはMooney、Lはプレートの大きさ、1はpreheating時間である1分を、4はrotorを作動してから4分後の値を読み取ったことを示すものである。
【0031】
具体的に、前記ムーニー粘度は、MV2000E(Monsanto社)を用い、100℃でRotor Speed2±0.02rpm、Large Rotorで、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(platen)を作動させてトルクを印加しつつ測定した。
【0032】
本発明において『分子量分布(PDI;MWD、Mw/Mn)』は、重合体の分子量分布の程度を示すものであり、重合体の重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算したものである。前記重量平均分子量及び数平均分子量は、重合体を40℃条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて測定し、このとき、カラムはポリマーラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)の商品名PLgel Olexisカラム二本とPLgel mixed-Cカラム一本を組み合わせて用い、新たに交替したカラムは、全て混床(mixed bed)タイプのカラムを用い、ゲル浸透クロマトグラフィー標準物質(GPC Standard material)としてはポリスチレン(Polystyrene)を用いた。
【0033】
本発明において『ベータ値(β-value)』は、振動数の関数であって重合体の分枝程度を示すものである。前記値がより小さいほど分枝度が増加し値が大きいほど分枝度が減少することを示す。具体的に、前記ベータ値は、Montech社のD-RPA 3000(ゴム加工分析機;rubber process analyzer)を用いて測定し、周波数範囲(Frequency sweep range)0~100Hz、静的変形(static strain)3%、動的変形(dynamic strain)0.25%、測定温度100℃でtanδを測定してd(log(tanδ))/d(log(freq))傾きをベータ値(β-value)として示した。ここで、tanδは、一般的な粘弾性特性を示す指標として弾性係数(elastic modulus、G’)に対する粘性係数(viscosus modulus、G’’)の比率で示す値である。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表され、重合体鎖の末端が変性されたものである変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0035】
【0036】
前記化学式1において、
Aは、炭素数2から12の炭化水素単位体、又はN又はOのうち何れか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2から12の炭化水素単位体であってよく、
Rxは、水素又はメチル基であってよく、
nは、2から6の整数であってよい。
【0037】
具体的に、化学式1において、前記炭素数2から12の炭化水素単位体は下記化学式3で表される単位体のものであってよい。
【0038】
[化学式3]
*-Ra1-*
前記化学式3において、
Ra1は、炭素数2から12の直鎖状又は分枝状のアルキレン基、炭素数6から12のアリーレン(arylene)基であってよく、
*は、前記化学式1の(メタ)アクリレート由来基が結合する位置である。
【0039】
また、化学式1において、前記N又はOのうち何れか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2から12の炭化水素単位体は、下記化学式4-1から4-4で表される単位体のうち何れか一つのものであってよい。
【0040】
[化学式4-1]
(Rb1)3C-Rb2-O-Rb3-C(Rb4)m1(Rb5)3-m1
前記化学式4-1において、
Rb1及びRb4は、それぞれ独立して炭素数1から5のアルキル基であってよく、末端に前記化学式1の(メタ)アクリレート由来基が結合されてよく、
Rb2及びRb3は、それぞれ独立して炭素数1から5のアルキレン基であってよく、
Rb5は、ヒドロキシ基であってよく、
m1は、1から3の整数であってよく;
[化学式4-2]
C(Rc1-O-Rc2)m2(Rc3)4-m2
前記化学式4-2において、
RC1は、炭素数1から6のアルキレン基であってよく、
RC2は、炭素数1から6のアルキル基であってよく、末端に前記化学式1の(メタ)アクリレート由来基が結合されてよく、
Rc3は、水素又は炭素数1から6のアルキル基であってよく、
m2は、1から4の整数であってよく;
[化学式4-3]
C(Rd1)m3(Rd2)4-m3
前記化学式4-3において、
Rd1は、炭素数1から6のアルキル基であってよく、末端に前記化学式1の(メタ)アクリレート由来基が結合されてよく、
Rd2は、ヒドロキシ基又は炭素数1から6のアルキル基であってよく、
m3は、1から4の整数であってよく;
【0041】
【0042】
前記化学式4-4において、
Re1からRe3は、それぞれ独立して炭素数1から5のアルキレン基であってよく、
*は、前記化学式1の(メタ)アクリレート由来基が結合する位置である。
【0043】
ここで前記化学式1の(メタ)アクリレート由来基は、重合体鎖が結合された(メタ)アクリレート基を示すものであり、具体的に、前記化学式3から4-3において、末端に前記化学式1の(メタ)アクリレート由来基が結合されるのは炭化水素単位体の末端が化学式1のpolymer-CH2CHRxCOO-と結合されることを示すものである。また、化学式4-4において、*は、化学式1のpolymer-CH2CHRxCOO-が結合する位置を示すものである。
【0044】
より具体的に、前記変性共役ジエン系重合体は、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,2-エタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-フェニレンジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシ化グリセロールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,2-エタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、イソシアヌレートトリメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群から選択された一つ以上の変性剤から由来した変性剤由来官能基を含むものであってよい。
【0045】
また、本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される変性共役ジエン系重合体は金属及び半金属を含まないものであってよい。金属及び半金属の具体的な例は、シリコン、ゲルマニウム、スズ等であってよく、具体的に、本発明の前記変性共役ジエン系重合体は、シリコン、ゲルマニウム及びスズを含まないものであってよい。変性共役ジエン系重合体が金属及び半金属を含まないことでゲル形成を抑制し純度が高い均一な重合体を得ることができ、ゲル形成による重合反応器の汚染を防止できる。また、金属又は半金属と炭素との間の結合力に比べて本発明で形成される炭素-炭素の間の結合力がより強いため、多様な添加剤と混合して高温加熱時に分枝度が減る現象を抑制でき、重金属の問題、有機金属物質の毒性等の影響を受けないため作業環境の安全性を高める利点がある。
【0046】
本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体は、化学式1で表される構造を有して重合体鎖の末端が変性されることで、鎖間の架橋結合を介して低いベータ値(β-value)を有し得、これによって冷間流れ性を効率的に制御できる特徴がある。また、本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体は、変性段階を経ながら分枝構造が導入されることで変性前重合体のムーニー粘度対比変性後重合体のムーニー粘度の増加率を大きく向上させることができ、このため、ゴム組成物への配合時に加工性が改善され、引張特性及び粘弾性特性のような配合物性の改善効果がある。
【0047】
また、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布(PDI;Polydispersity)が1.05から5.0のものであってよく、具体的には2.0から3.5以下、より具体的には2.5から3.5の広い分子量分布を有するものであってよい。前記広い分子量分布を有する場合には、ゴム組成物に適用時、加工特性及び粘弾性特性に優れた効果がある。
【0048】
ここで、前記分子量分布は、先立って言及した通り重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算されてよく、このとき、前記数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これらの分子量の総合を求めてnに分けて計算した個別重合体分子量の共通平均(common average)であり、前記重量平均分子量(Mw)は高分子組成物の分子量分布を示す。
【0049】
また、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、前記分子量分布条件を満たすとともに、重量平均分子量(Mw)が300,000g/molから1,500,000g/molであり、具体的には700,000g/molから1,100,000g/molであってよい。また、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000g/molから700,000g/molであり、具体的には150,000g/molから500,000g/molであってよい。この範囲内でゴム組成物に適用時に引張特性に優れ、加工性に優れてゴム組成物の作業性改善により混練が容易なため、ゴム組成物の機械的物性及び物性バランスに優れた効果がある。
【0050】
より具体的に、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、前記分子量分布とともに重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の条件を同時に充足する場合、ゴム組成物に適用時のゴム組成物に対する引張特性、粘弾性及び加工性に優れ、これらの間の物性バランスに優れた効果がある。
【0051】
また、前記共役ジエン系重合体は、変性前重合体の100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity、MV)が10から90、具体的には30から80、より具体的には30から60であってよい。また、変性後重合体の100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity、MV)が50から130、具体的には60から120、より具体的には65から120又は70から110であってよい。
【0052】
本発明において、前記ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000Eで、100℃でRotor Speed2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定してよい。このとき用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取しダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(Platen)を作動させて測定してよい。
【0053】
また、本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体は、変性前の共役ジエン系重合体のムーニー粘度基準に変性後の共役ジエン系重合体のムーニー粘度の増加率(以下、ムーニー粘度の増加率と記載する)が20%以上であってよく、冷間流れ性を効率的に制御して加工性を大きく改善する側面で、好ましくは35%以上、より好ましくは50%から150%であってよい。ここで、前記ムーニー粘度の増加率は、変性後の共役ジエン系重合体のムーニー粘度と変性前の共役ジエン系重合体のムーニー粘度の差を、変性前の共役ジエン系重合体のムーニー粘度で分けた値を百分率で示した値であり、下記数式1から算出できる。
【0054】
【0055】
ムーニー粘度の増加率が大きいほど変性後ムーニー粘度が大幅に上昇されたことを示し、前述した範囲内の増加率を示す場合、分枝度調節による冷間流れ性の減少、加工性及び配合物性が優れた水準に改善され得る。
【0056】
また、本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体は、ベータ値(β-value)が0.21以下であってよく、より低い冷間流れ性を有する側面で、好ましくは0.10から0.21、又は0.10から0.20以下であってよい。前記範囲を満たす場合、重合体の冷間流れ性の制御が大きく改善され得る。ここで、前記ベータ値は、振動数の関数であって重合体の分枝程度を示すものである。前記値がより小さいほど分枝度が増加し、値が大きいほど分枝度が減少することを示す。具体的に、前記ベータ値は、Montech社のD-RPA 3000(ゴム加工分析機;rubber process analyzer)を用いて測定し、周波数範囲(Frequency sweep range)0~100Hz、静的変形(static strain)3%、動的変形(dynamic strain)0.25%、測定温度100℃でtanδを測定してd(log(tanδ))/d(log(freq))傾きをベータ値(β-value)として示した。ここで、tanδは、一般的な粘弾性特性を示す指標として弾性係数(elastic modulus、G’)に対する粘性係数(viscosus modulus、G’’)の比率で示す値である。
【0057】
本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体を前記分子量分布、重量平均分子量及び数平均分子量条件を満たすとともに、ベータ値と変性前後のムーニー粘度範囲を同時に満たす場合、ゴム組成物に適用時にゴム組成物に対する引張特性、粘弾性特性のような配合物性及び加工性と冷間流れ性のうち何れか一つに偏らず、バランス良い物性改善効果を享受できる。
【0058】
また、本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体において、前記共役ジエン系重合体は、ポリブタジエンのようなブタジエン単独重合体であってよく、又はブタジエン-イソプレン共重合体のようなブタジエン共重合体であってよい。
【0059】
具体的な例として、前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位80から100重量%、及び、選択的に1,3-ブタジエンと共重合可能なそれ以外の共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位20重量%以下を含んでよく、前記範囲内で重合体内の1,4-シス結合含量が低下されない効果がある。このとき、前記1,3-ブタジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、又は2-エチル-1,3-ブタジエン等の1,3-ブタジエン又はその誘導体が挙げられ、前記1,3-ブタジエンと共重合可能なそれ以外の共役ジエン系単量体としては、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン又は2,4-ヘキサジエン等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の化合物が用いられてよい。
【0060】
本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体は、具体的に希土類金属触媒化変性共役ジエン系重合体であってよく、より具体的にはネオジム触媒化変性共役ジエン系重合体であってよい。前記ネオジム触媒化変性共役ジエン系重合体は、ネオジム化合物を含む触媒組成物を用いて製造した変性共役ジエン系重合体を示すものであってよい。より具体的に、前記変性共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位を含むネオジム触媒化変性ブタジエン系重合体であってよい。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、1)希土類金属化合物を含む触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して有機金属が結合された活性重合体を製造する段階と、2)前記活性重合体を下記化学式2で表される変性剤と反応させる段階とを含む変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0062】
【0063】
前記化学式2において、
Aは、炭素数2から12の炭化水素単位体、又はN又はOのうち何れか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2から12の炭化水素単位体であってよく、
Rxは、水素又はメチル基であってよく、
nは、2から6の整数であってよい。
【0064】
具体的に、本発明の化学式2で表される変性剤の前記炭化水素単位体及びヘテロ原子を含む炭化水素単位体の具体的な例は、変性共役ジエン系重合体で前述した通りであり、このとき、化学式3から化学式4-4において、『化学式1の(メタ)アクリレート由来基』は『化学式2の(メタ)アクリレート』に代替してよい。
【0065】
より具体的に、前記化学式2で表される変性剤は、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,2-エタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-フェニレンジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシ化グリセロールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,2-エタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、イソシアヌレートトリメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群から選択された一つ以上を含むものであってよい。
【0066】
また、本発明の一実施形態によれば、前記化学式2で表される変性剤は金属及び半金属を含まないものであってよい。金属及び半金属の具体的な例は、シリコン、ゲルマニウム、スズ等であってよく、具体的に、本発明の前記変性剤は、シリコン、ゲルマニウム及びスズを含まないものであってよい。変性剤に金属及び半金属が含まれないことで変性反応時にゲル形成を抑制し純度が高い均一な重合体を得ることができ、重合体製造工程においてゲル形成による重合反応器の汚染を防止できる。また、変性剤に金属又は半金属が含まれる場合、重合体鎖と形成する金属又は半金属と炭素との間の結合力に比べて本発明で形成される炭素-炭素の間の結合力がより強いため、多様な添加剤と混合して高温加熱時に分枝度が減る現象を抑制でき、重金属の問題、有機金属物質の毒性等の影響を受けないため作業環境の安全性を高める利点がある。また、変性剤が金属及び半金属を含む場合、分枝構造の導入が十分ではないため本発明で要求する物性、特に低いベータ値及び高いムーニー粘度の増加率を達成できず、このため、重合体の冷間流れ性を効率的に制御できず配合物性もまた下がり得る。
【0067】
本発明の一実施形態による前記段階1)は、希土類金属化合物を含む触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造する段階であり、ここで活性重合体は有機金属が結合された活性重合体を示すものであってよい。
【0068】
本発明の一実施形態による前記重合は、配位重合によって実施されてよく、一例として溶液重合方で行われてよく、また、バッチ(batch)法、連続法、又は反連続法で行われてもよい。具体的な例として、前記共役ジエン系重合体製造のための重合は、有機溶媒中で前記触媒組成物に対し、共役ジエン系単量体を投入して反応させることで実施されてよい。
【0069】
具体的に、溶液重合によって製造する場合、本発明の一実施形態による共役ジエン重合体は、重合溶媒中で前記触媒組成物に対し、共役ジエン系単量体を投入して反応させることで行われてよい。
【0070】
前記共役ジエン系単量体としては、通常共役ジエン系重合体の製造に用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。前記共役ジエン系単量体は、具体的に、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、又は2,4-ヘキサジエン等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。より具体的に、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエンであってよい。
【0071】
また、前記重合反応時に最終製造される共役ジエン系重合体の物性的特性を考慮し、前記共役ジエン系単量体と共重合可能なそれ以外の単量体をさらに用いてもよく、前記それ以外の単量体は、具体的に、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等のような芳香族ビニル単量体等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。前記それ以外の単量体は、重合反応に用いられる単量体の全重量に対して、20重量%以下の含量で用いられてよい。
【0072】
このとき、前記共役ジエン系単量体は、ジエン系重合体製造のために用いられる量が全体で非極性溶媒に溶解されて用いられるものではなく、全体使用量の一部が重合溶媒に溶解され重合された後、重合転換率によって1回以上、具体的には2回以上、より具体的には2回から4回分割投入されてよい。
【0073】
また、前記重合時に含まれ得る溶媒は、炭化水素系溶媒であってよく、前記炭化水素系溶媒は、非極性溶媒であってよい。具体的に、前記炭化水素系溶媒は、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等のような脂肪族炭化水素系溶媒と、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のようなシクロ脂肪族炭化水素系溶媒と、又はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等のような芳香族炭化水素系溶媒等からなる群から選択された1種以上を用いてよい。具体的な例として、前記炭化水素系溶媒は、ヘキサン等のような脂肪族炭化水素系溶媒であってよい。前記重合溶媒の使用時、単量体の濃度は特に限定されないが、3重量%から80重量%、より具体的には、10重量%から30重量%であってよい。
【0074】
また、前記重合時、トリメチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド又はトリメチルシラン等のような分子量調節剤;ポリオキシエチレングリコールホスフェート等のような重合反応を完了させるための反応停止剤;又は2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール等のような酸化防止剤等の添加剤がさらに用いられてよい。それ以外にも、通常溶液重合を容易にする添加剤、具体的には、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤又は酸素捕捉剤(oxygen scavenger)のような添加剤が選択的にさらに用いられてよい。
【0075】
また、前記重合反応は、20℃から200℃、より具体的には、20℃から100℃の温度で行われてよい。
【0076】
また、前記重合反応は、共役ジエン系重合体の転換率100%に至るまで前記温度範囲内で5分から3時間行われてよく、具体的に15分から2時間、より具体的に30分から2時間行われてよい。
【0077】
本発明の一実施形態による希土類金属触媒組成物は、(a)希土類金属化合物、(b)アルキル化剤(c)ハロゲン化合物を含んでよく、ここで、共役ジエン系単量体をさらに含むものであってよい。
【0078】
具体的に、前記触媒組成物は、炭化水素系溶媒中に希土類金属化合物、アルキル化剤、ハロゲン化合物、そして選択的に共役ジエン系単量体を順次投入して混合することで製造されてよい。
【0079】
このとき、触媒活性種の生成を促進するために、前記混合工程が-10℃から30℃の温度範囲で行われてよく、このとき、前記温度条件を満たすようにするために熱処理が併行されてもよい。
【0080】
より具体的には、前記触媒組成物は、希土類金属化合物、アルキル化剤、溶媒の混合後-10℃から30℃の温度で第1熱処理し、結果として収得される混合物にハロゲン化合物を添加し、-10℃から30℃の温度範囲で第2熱処理して製造されてよい。
【0081】
前記のような製造方法によって製造される触媒組成物内には、構成成分の相互作用により触媒活性種が生成される。製造された触媒組成物は、低温条件で熟成する工程をさらに含んでよい。
【0082】
また、前記触媒組成物において炭化水素系溶媒は、重合時に含まれる前述した炭化水素系溶媒のうち何れか一つ以上を用いてよい。
【0083】
また、本重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の一部を前記触媒組成物と予備混合(premix)して予備重合(preforming)触媒組成物の形態で用いることで、触媒活性を向上させ、さらに製造された共役ジエン系重合体を安定化する効果がある。
【0084】
以下、各成分別に詳しく説明する。
【0085】
(a)希土類金属化合物
本発明の一実施形態による前記触媒組成物において、前記希土類金属化合物はアルキル化剤によって活性化にされた後、共役ジエンの重合のための触媒活性種を形成する。
【0086】
このような希土類金属化合物としては、通常共役ジエン系重合体の製造時に用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。具体的に、前記希土類金属化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、ガドリニウム又はプラセオジム等のような原子番号57から71の希土類金属のうち何れか一つ、又は、二つ以上の化合物であってよく、より具体的には、ネオジム、ランタン及びガドリニウムからなる群から選択される何れか一つ、又は、二つ以上を含む化合物であってよい。
【0087】
また、前記希土類金属化合物は、前記希土類金属含有カルボン酸塩(例えば、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム乳酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート等)、有機リン酸塩(例えば、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、又はネオジムジデシルリン酸塩等)、有機ホスホン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩又はネオジムオクタデシルホスホン酸塩等)、有機ホスフィン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩又はネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩等)、カルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩又はネオジムジベンジルカルバミン酸塩等)、ジチオカルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩又はネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩等)、キサントゲン酸塩(例えば、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩又はネオジムベンジルキサントゲン酸塩等 、β-ジケトネート(例えば、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート又はネオジムベンゾイルアセトネート等)、アルコキシド又はアリールオキシド(例えば、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジムフェノキシド又はネオジムノニルフェノキシド等)、ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物(ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物、ネオジムヨウ化物、ネオジムシアン化物、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、又はネオジムアジド等)、オキシハライド(例えば、ネオジムオキシフルオライド、ネオジムオキシクロリド、又はネオジムオキシブロミド等)、又は1以上の希土類金属-炭素結合を含む有機希土類金属化合物(例えば、Cp3Ln、Cp2LnR’、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR’、Ln(R’)3、Ln(アリル)3、又はLn(アリル)2Cl等、前記式のうち、Lnは希土類金属元素であり、R’は炭素原子を介して金属原子に結合する一価の有機基であって、ヒドロカルビル基であってよい)等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物を含んでよい。
【0088】
より具体的に、前記希土類金属化合物は、下記化学式5のネオジム化合物であってよい:
【0089】
【0090】
前記化学式5において、 R1からR3は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は炭素数1から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0091】
より具体的に、前記希土類金属化合物は、前記化学式5において、R1が炭素数6から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は炭素数2から6の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、但し、R2及びR3が同時に水素原子ではないネオジム化合物であってよく、さらに具体的には、前記化学式5において、R1が炭素数6から8の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して炭素数2から6の直鎖状又は分枝状のアルキル基であるネオジム化合物であってよい。
【0092】
このように、前記化学式5のネオジム化合物が、a位置に炭素数2以上の多様な長さのアルキル基を置換基で含むカルボキシレートリガンドを含む場合、ネオジム中心金属の周りに立体的な変化を誘導し化合物間の凝集現象を遮断でき、その結果、オリゴマー化を抑制するため活性種への転換率が高い。このようなネオジム化合物は、重合溶媒に対する溶解度が高く、触媒活性種への転換に困難がある中心部分に位置するネオジムの比率が減少され、触媒活性種への転換率の高くなる効果がある。
【0093】
さらに具体的に、前記希土類金属化合物は、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3及びNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択された何れか一つ又は二つ以上の混合物であってよい。また、オリゴマー化に対する虞なく重合溶媒に対する優れた溶解度、触媒活性種への転換率、及び、これによる優れた触媒活性改善効果を考慮する際、前記ネオジム化合物は、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、及びNd(2,2-ジオクチルデカノエート)3からなる群から選択された何れか一つ又は二つ以上の混合物であってよい。
【0094】
また、前記希土類金属化合物は、溶解度が常温(23±5℃)で非極性溶媒6g当たり約4g以上のものであってよい。本発明において、ネオジム化合物の溶解度は、濁る現象なく清く溶解される程度を意味するものである。このように高い溶解度を示すことで、優れた触媒活性を示すことができる。
【0095】
前記希土類金属化合物は、一例として、重合に用いられる共役ジエン系単量体100g当たり0.1から0.5mmol、より具体的には、0.1から0.2mmolの含量で用いられてよく、この範囲内で触媒活性が高く、適正触媒濃度を有するため、別途の奪回工程を経なくても良い効果がある。
【0096】
前記希土類金属化合物は、一例として、ルイス塩基との反応物の形態で用いられてもよい。この反応物は、ルイス塩基によって、希土類金属化合物の溶媒に対する溶解性を向上させ、長期間安定した状態で保存できる効果がある。前記ルイス塩基は、一例として、希土類元素1モル当たり30モル以下、又は、1から10モルの比率で用いられてよい。前記ルイス塩基は、一例として、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物又は一価又は二価のアルコール等であってよい。
【0097】
(b)アルキル化剤
本発明の一実施形態による前記共役ジエン重合用触媒組成物において、前記アルキル化剤は、ヒドロカルビル基を他の金属に転移できる有機金属化合物であって、助触媒の役割をする。前記アルキル化剤は、通常ジエン系重合体の製造時にアルキル化剤として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。
【0098】
具体的に、前記アルキル化剤は、 非極性溶媒、具体的には、非極性炭化水素系溶媒に可溶性であり、1族、2族又は3族金属等の陽イオン性金属と炭素との結合を含む有機金属化合物又はホウ素含有化合物であってよい。より具体的に、前記アルキル化剤は、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物及び有機リチウム化合物からなる群から選択される何れか一つ又は二つ以上の混合物であってよい。
【0099】
前記アルキル化剤において、有機アルミニウム化合物は、具体的に、下記化学式6の化合物であってよい:
[化学式6]
Al(R)z(X)3-z
前記化学式6において、
Rは、それぞれ独立してそれぞれ炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基であって、炭素数1から20のアルキル基、炭素数3から20のシクロアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数3から20のシクロアルケニル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数7から20のアルキルアリール基、アリール基又は炭素数2から32のアルキニル基等のようなヒドロカルビル基;又はヒドロカルビル基構造内の炭素を代替して窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びイン原子からなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも1以上含むヘテロヒドロカルビル基であってよく、
Xは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン基、カルボキシル基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基からなる群から選択され、そして
zは1から3の整数である。
【0100】
より具体的に、前記有機アルミニウム化合物は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド又はベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリド等のジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド又はn-オクチルアルミニウムジヒドリド等のようなヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド等が挙げられ、好ましくはジイソブチルアルミニウムヒドリドを含んでよい。
【0101】
また、前記有機アルミニウム化合物はアルミノキサンであってよい。
【0102】
前記アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム系化合物に水を反応させることで製造されてよく、具体的には、下記化学式7aの線状アルミノキサン又は下記化学式7bの環状アルミノキサンであってよい:
【0103】
【0104】
【0105】
前記化学式7a及び7bにおいて、Rは、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基であって、先立って定義したRと同一であり、x及びyは、それぞれ独立して1以上の整数、具体的には1から100、より具体的には2から50の整数であってよい。
【0106】
より具体的に、前記アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン又は2,6-ジメチルフェニルアルミノキサン等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0107】
また、前記アルミノキサン化合物において、変性メチルアルミノキサンはメチルアルミノキサンのメチル基を修飾基(R)、具体的には、炭素数2から20の炭化水素基で置換したものであり、具体的には下記化学式8の化合物であってよい:
【0108】
【0109】
前記化学式8において、Rは、先立って定義した通りであり、m及びnは、それぞれ2以上の整数であってよい。また、前記化学式8において、Meは、メチル基(methyl group)を意味する。
【0110】
より具体的に、前記化学式8において、Rは、炭素数2から20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3から20のシクロアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数3から20のシクルロアルケニル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数7から20のアルキルアリール基、アリール基又は炭素数2から20のアルキニル基であってよく、より具体的には、エチル基、イソブチル基、ヘキシル基又はオクチル基等のような炭素数2から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、さらに具体的には、イソブチル基であってよい。
【0111】
さらに具体的に、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基の約50モル%から90モル%を前記炭化水素基で置換したものであってよい。変性メチルアルミノキサン内の置換された炭化水素基の含量が前記範囲内であるとき、アルキル化を促進させ触媒活性を増加させることができる。
【0112】
このような変性メチルアルミノキサンは、通常の方法によって製造されてよく、具体的には、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて製造されてよい。このとき、前記アルキルアルミニウムは、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム又はトリオクチルアルミニウム等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0113】
一方、前記アルキル化剤として有機マグネシウム化合物は、少なくとも一つのマグネシウム-炭素結合を含み、非極性溶媒、具体的に、非極性炭化水素系溶媒に溶解可能なマグネシウム化合物である。具体的に、前記有機マグネシウム化合物は、下記化学式8aの化合物であってよい:
[化学式9a]
Mg(R)2
前記化学式9aにおいて、Rは、それぞれ独立して一価の有機基であって、先立って定義したRと同一である。
【0114】
より具体的に、前記化学式9aの有機マグネシウム化合物は、ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、又はジベンジルマグネシウムのようなアルキルマグネシウム化合物等が挙げられる。
【0115】
また、前記有機マグネシウム化合物は、下記化学式9bの化合物であってよい:
[化学式9b]
RMgX
前記化学式9bにおいて、Rは、一価の有機基であって、先立って定義したRと同一であり、Xは、水素原子、ハロゲン基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基からなる群から選択されるものである。
【0116】
より具体的に、前記化学式9bの有機マグネシウム化合物は、メチルマグネシウム水素化物、エチルマグネシウム水素化物、ブチルマグネシウム水素化物、ヘキシルマグネシウム水素化物、フェニルマグネシウム水素化物、ベンジルマグネシウム水素化物等のヒドロカルビルマグネシウム水素化物と、メチルマグネシウム塩化物、エチルマグネシウム塩化物、ブチルマグネシウム塩化物、ヘキシルマグネシウム塩化物、フェニルマグネシウム塩化物、ベンジルマグネシウム塩化物、メチルマグネシウム臭化物、エチルマグネシウム臭化物、ブチルマグネシウム臭化物、ヘキシルマグネシウム臭化物、フェニルマグネシウム臭化物、ベンジルマグネシウム臭化物等のヒドロカルビルマグネシウムハロゲン化物と、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート等のヒドロカルビルマグネシウムカルボン酸塩と、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド等のヒドロカルビルマグネシウムアルコキシドと、又はメチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、ベンジルマグネシウムフェノキシド等のヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシド等であってよい。
【0117】
また、前記アルキル化剤として、有機リチウム化合物としてはR’-Liのアルキルリチウム(このとき、R’は、炭素数1から20の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、より具体的には、炭素数1から8の直鎖状アルキル基である)が用いられてよい。より具体的には、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、イソブチルリチウム、ペンチルリチウム、イソペンチルリチウム等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0118】
前記化合物の中でも、本発明で使用可能なアルキル化剤は、具体的に重合時に分子量調節剤としての役割が可能なジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)であってよい。
【0119】
また、触媒組成物の製造時に用いられる溶媒系を脂肪族炭化水素系の単一相溶媒にすることによって触媒活性及び反応性をより向上させることができるという点で、前記アルキル化剤は変性メチルアルミノキサンであってよい。
【0120】
(c)ハロゲン化合物
本発明の一実施形態による前記共役ジエン重合用触媒組成物において、前記ハロゲン化合物はその種類が特に限定されないが、通常ジエン系重合体の製造時にハロゲン化剤として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。
【0121】
具体的に、前記ハロゲン化合物としては、ハロゲン単体(simple substance)、ハロゲン間化合物(interhalogen compound)、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド又は有機金属ハライド等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。この中でも、触媒活性向上及びこれによる優れた反応性改善の効果を考慮する際、前記ハロゲン化合物としては、有機ハライド、金属ハライド及び有機金属ハライドからなる群から選択された何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0122】
より具体的に、前記ハロゲン単体としては、フッ素、塩素、ブロム又はヨードが挙げられる。
【0123】
また、前記ハロゲン間化合物としては、具体的にヨードモノクロリド、ヨードモノブロミド、ヨードトリクロリド、ヨードペンタフルオリド、ヨードモノフルオリド又はヨードトリフルオリド等が挙げられる。
【0124】
また、前記ハロゲン化水素としては、具体的にフッ化水素、塩化水素、臭化水素又はヨウ化水素が挙げられる。
【0125】
また、前記有機ハライドとしては、具体的にt-ブチルクロリド(t-BuCl)、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(TMSCl)、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、メチルブロモホルメート、ヨードメタン、ジヨードメタン、トリヨードメタン(「ヨードホルム」とも呼ばれる)、テトラヨードメタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、t-ブチルヨージド、2,2-ジメチル-1-ヨードプロパン(「ネオペンチルヨージド」とも呼ばれる)、アリルヨージド、ヨードベンゼン、ベンジルヨージド、ジフェニルメチルヨージド、トリフェニルメチルヨージド、ベンジリデンヨージド(「ベンザルヨージド」とも呼ばれる)、トリメチルシリルヨージド、トリエチルシリルヨージド、トリフェニルシリルヨージド、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンゾイルヨージド、プロピオニルヨージド又はメチルヨードホルマート等が挙げられる。
【0126】
また、前記非金属ハライドとしては、具体的に三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素(SiCl4)、四臭化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、四ヨウ化ケイ素、三ヨウ化ヒ素、四ヨウ化テルル、三ヨウ化ホウ素、三ヨウ化リン、オキシヨウ化リン又は四ヨウ化セレン等が挙げられる。
【0127】
また、前記金属ハライドとしては、具体的に四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二フッ化亜鉛、三ヨウ化アルミニウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四ヨウ化チタン、二ヨウ化亜鉛、四ヨウ化ゲルマニウム、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、三ヨウ化アンチモン又は二ヨウ化マグネシウム等が挙げられる。
【0128】
また、前記有機金属ハライドとしては、具体的にジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジブロミド、トリ-n-ブチルスズクロリド、トリ-n-ブチルスズブロミド、メチルマグネシウムヨージド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジ-n-ブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、ジ-n-オクチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、n-ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムヨージド、トリメチルスズヨージド、トリエチルスズヨージド、トリ-n-ブチルスズヨージド、ジ-n-ブチルスズジヨージド又はジ-t-ブチルスズジヨージド等が挙げられる。
【0129】
また、本発明の一実施形態による共役ジエン重合体製造用触媒組成物は、前記ハロゲン化合物の代わりに又は前記ハロゲン化合物とともに、非配位性陰イオン含有化合物又は非配位性陰イオン前駆体化合物を含んでもよい。
【0130】
具体的に、前記非配位性陰イオンを含む化合物において、非配位性陰イオンは、立体障害によって触媒系の活性中心と配位結合を形成しない、立体的に体積が大きい陰イオンであって、テトラアリールボレート陰イオン又はフッ化テトラアリールボレート陰イオン等であってよい。また、前記非配位性陰イオンを含む化合物は、前記非配位性陰イオンとともに、トリアリールカルボニウム陽イオンのようなカルボニウム陽イオン;N,N-ジアルキルアニリニウム陽イオン等のようなアンモニウム陽イオン、又はホスホニウム陽イオン等の相手陽イオンを含むものであってよい。より具体的に、前記非配位性陰イオンを含む化合物は、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、又はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等であってよい。
【0131】
また、前記非配位性陰イオン前駆体としては、反応条件下で非配位性陰イオンが形成可能な化合物であって、トリアリールホウ素化合物(BE3、このときRは、ペンタフルオロフェニル基又は3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等のような強い電子吸引性のアリール基である)が挙げられる。
【0132】
本発明の一実施形態による前記溶媒は、具体的に、前記触媒構成成分と反応性がない非極性溶媒であってよい。具体的には、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン又はメチルシクロヘキサン等のような線状、分枝状又は環状の炭素数5から20の脂肪族炭化水素;石油エーテル(petroleum ether)又は石油スピリット(petroleum spirits)、又はケロシン(kerosene)等のような炭素数5から20の脂肪族炭化水素の混合溶媒;又はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等のような芳香族炭化水素系溶媒等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。より具体的に、前記非極性溶媒は、前記線状、分枝状又は環状の炭素数5から20の脂肪族炭化水素又は脂肪族炭化水素の混合溶媒であってよく、さらに具体的には、n-ヘキサン、シクロヘキサン、又はこれらの混合物であってよい。
【0133】
また、前記反応溶媒は、触媒組成物を構成する構成物質、特にアルキル化剤の種類によって適切に選択されてよい。
【0134】
具体的に、アルキル化剤として、メチルアルミノキサン(MAO)又はエチルアルミノキサン等のアルキルアルミノキサンの場合、脂肪族炭化水素系溶媒に容易に溶解されないため、芳香族炭化水素系溶媒が適切に用いられてよい。
【0135】
また、アルキル化剤として、変性メチルアルミノキサンが用いられる場合、脂肪族炭化水素系溶媒が適切に用いられてよい。この場合、重合溶媒として主に用いられるヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒とともに単一溶媒システムの具現が可能であるため、重合反応にさらに有利である。また、脂肪族炭化水素系溶媒は触媒活性を促進させることができ、このような触媒活性によって反応性をさらに向上させることができる。
【0136】
前記のところのような触媒組成物内の構成成分は、相互間の相互作用を介して触媒活性種を形成する。これによって、本発明の一実施形態による前記触媒組成物は、共役ジエン系重合体形成のための重合反応時により高い触媒活性及び優れた重合反応性を示し得るよう、前記構成成分の含量を最適に組み合わせて含んでよい。
【0137】
具体的に、前記触媒組成物は、希土類金属化合物1モルに対して前記アルキル化剤を1モルから100モルを含んでよく、具体的には3から20モルを含んでよい。また、前記触媒組成物は、希土類金属化合物1モルに対して前記ハロゲン化合物を1モルから20モルで含んでよく、具体的には1モルから5モル、より具体的に1から3モルで含んでよい。アルキル化剤とハロゲン化合物を前記範囲に含むことで、触媒反応の制御が容易であり、副反応を効率的に抑制できる。
【0138】
また、前記触媒組成物は、希土類金属化合物1モルに対して溶媒を20モルから20,000モルでさらに含んでよく、より具体的には100モルから1,000モルで含んでよい。
【0139】
本発明の一実施形態による共役ジエン重合用触媒の製造方法において、前記S2段階は、前記触媒組成物に共役ジエン系単量体を添加して予備重合(preforming)する段階である。このように予備重合を行う場合、触媒活性を向上させることができるだけでなく、製造される共役ジエン系重合体をより安定化させることができる。具体的に、前記共役ジエン系単量体としては、通常共役ジエン系重合体の製造に用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。具体的に、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、又は2,4-ヘキサジエン等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0140】
また、前記触媒の製造に使用可能な共役ジエン系単量体は、前記重合に用いられる単量体の全体使用量範囲内で一部の量が用いられてよく、具体的には、前記希土類金属化合物1モルに対して1から100モル、より具体的には1から50モル、さらに具体的には20から40モルを用いてよい。
【0141】
本発明の一実施形態による前記段階1)で製造された活性重合体は、具体的に希土類金属触媒化共役ジエン系重合体であってよく、より具体的にはネオジム触媒化共役ジエン系重合体であってよい。前記ネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、ネオジム化合物を含む触媒組成物から由来した、すなわち、触媒から活性化された有機金属部位を含む共役ジエン系重合体を示すものであってよい。より具体的に、前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位を含むネオジム触媒化ブタジエン系重合体であってよい。
【0142】
本発明において、共役ジエン系重合体の活性化された有機金属部位とは、共役ジエン系重合体の末端の活性化された有機金属部位(分子鎖末端の活性化された有機金属部位)、主鎖中の活性化された有機金属部位又は側鎖中の活性化された有機金属部位であってよく、この中でも陰イオン重合又は配位陰イオン重合によって共役ジエン系重合体の活性化された有機金属部位を得る場合、前記活性化された有機金属部位は、末端の活性化された有機金属部位であってよい。
【0143】
本発明の一実施形態による前記段階2)は、前記活性重合体を化学式2で表される変性剤と反応させる段階であって、変性共役ジエン系重合体を形成する段階である。
【0144】
前記変性工程は、本発明による共役ジエン系重合体を用いること以外には通常の変性方法により行われてよい。具体的に、前記段階2)は、重合段階で生成された混合物に前記化学式2で表される変性剤を投入して一定時間混合することで行われる。変性段階は、バッチ(batch)式反応器を用いて行われてもよく、多段連続式反応器やインラインミキサー等の装置を用いて行われてもよい。変性段階は、好ましくは重合段階と同一の温度及び圧力条件で行われてよい。具体的に、20℃から200℃の温度で行われてよい。
【0145】
また、本発明の一実施形態による前記変性剤は、共役ジエン系単量体100重量部基準に0.1から20重量部を投入して反応させるものであってよく、具体的には0.1から10重量部、より具体的には0.1から3重量部を投入して反応させるものであってよい。
【0146】
前記変性段階以後、全体反応を終結するために、ポリオキシエチレングリコールホスフェート等のような反応停止剤;又は2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール等のような酸化防止剤等の添加剤がさらに用いられてよい。それ以外にも、通常溶液重合を容易にする添加剤、具体的には、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤又は酸素捕捉剤(oxygen scavenger)のような添加剤が選択的にさらに用いられてもよい。以後、水蒸気の供給を介して溶剤の分圧を下げるスチームストリッピング等の脱溶媒処理や真空乾燥工程が選択的にさらに行われてもよい。また、沈澱及び濾過、乾燥、分離工程等をさらに実施して重合体を得ることができる。
【0147】
さらに、本発明は、前記共役ジエン系重合体を含むゴム組成物及び前記ゴム組成物から製造された成形品を提供する。
【0148】
本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体を0.1重量%以上100重量%以下、具体的には10重量%から100重量%、より具体的には20重量%から90重量%で含むものであってよい。もし、前記共役ジエン系重合体の含量が0.1重量%未満の場合、結果的に前記ゴム組成物を用いて製造された成形品、例えば、タイヤの耐磨耗性及び耐亀裂性等の改善効果が微々であり得る。
【0149】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体以外に必要に応じて他のゴム成分をさらに含んでよく、このとき、前記ゴム成分は、ゴム組成物全重量に対して90重量%以下の含量で含まれてよい。具体的には、前記変性共役ジエン系共重合体100重量部に対して1重量部から900重量部で含まれるものであってよい。
【0150】
前記ゴム成分は、天然ゴム又は合成ゴムであってよく、例えば、前記ゴム成分は、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR); 前記一般的な天然ゴムを変性又は精製したエポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴム等の変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のような合成ゴムであってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0151】
また、前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体100重量部に対して0.1重量部から150重量部の充填剤を含むものであってよく、前記充填剤は、シリカ系、カーボンブラック又はこれらを組み合わせたものであってよい。具体的には、前記充填剤はカーボンブラックであってよい。
【0152】
前記カーボンブラック系充填剤は、特に制限するものではないが、例えば、窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定する)が20m2/gから250m2/gのものであってよい。また、前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80cc/100gから200cc/100gのものであってよい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が250m2/gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞があり、20m2/g未満であれば、カーボンブラックによる補強性能が微々であり得る。また、前記カーボンブラックのDBP吸油量が200cc/100gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞があり、80cc/100g未満であれば、カーボンブラックによる補強性能が微々であり得る。
【0153】
また、前記シリカは、特に制限するものではないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム又はコロイダルシリカ等であってよい。具体的に、前記シリカは、破壊特性の改良効果及びウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も著しい湿式シリカであってよい。また、前記シリカは、窒素吸着比表面積(nitrogen surface area per gram、N2SA)が120m2/gから180m2/gであり、CTAB(cetyl trimethyl ammonium bromide)吸着比表面積が100m2/gから200m2/gであってよい。前記シリカの窒素吸着比表面積が120m2/g未満であれば、シリカによる補強性能が低下する虞があり、180m2/gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞がある。また、前記シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/g未満であれば、充填剤であるシリカによる補強性能が低下する虞があり、200m2/gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞がある。
【0154】
一方、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性及び低発熱性改善のために、シランカップリング剤が共に用いられてよい。
【0155】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、又はジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等を挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。より具体的には、補強性改善の効果を考慮する際、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド又は3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってよい。
【0156】
また、本発明による一実施形態によるゴム組成物は、硫黄仮橋性であってよく、これにより加硫剤をさらに含んでよい。
【0157】
前記加硫剤は、具体的に硫黄粉末であってよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部から10重量部で含まれてよい。前記含量範囲で含まれる時、加硫ゴム組成物の必要な弾性率及び強度を確保でき、同時に低燃費性を得ることができる。
【0158】
また、本発明による一実施形態によるゴム組成物は、前記成分以外に、通常ゴム工業界において用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂等をさらに含んでよい。
【0159】
前記加硫促進剤は、特に限定されるのではなく、具体的には、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系化合物、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系化合物が用いられてよい。前記加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部から5重量部で含まれてよい。
【0160】
また、前記プロセス油は、ゴム組成物内で軟化剤として作用するものであって、具体的には、パラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系化合物であってよく、より具体的には、引張強度及び耐磨耗性を考慮する際に芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損失及び低温特性を考慮する際にナフテン系又はパラフィン系プロセス油が用いられてよい。前記プロセス油は、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてよく、前記含量で含まれる時、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止できる。
【0161】
また、前記老化防止剤としては、具体的に、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、又はジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等が挙げられる。前記老化防止剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部から6重量部で用いられてよい。
【0162】
本発明の一実施形態によるゴム組成物は、前記配合処方によってバンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練機を用いて混練することで収得でき、また、成形加工後の加硫工程によって低発熱性、且つ、耐磨耗性に優れたゴム組成物を収得できる。
【0163】
これによって前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダートレッド、サイドウォール、カカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラ、チェーファー、又はビードコーティングゴム等のタイヤの各部材や防振ゴム、ベルトコンベヤー、ホース等の各種工業用ゴム製品の製造に有用である。
【0164】
前記ゴム組成物を用いて製造された成形品は、タイヤ又はタイヤトレッドを含むものであってよい。
【0165】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらだけに本発明の範囲が限定されるのではない。
【0166】
[実施例]
[実施例1]
窒素の条件下で、10Lの反応器にヘキサン2.7kgと1,3-ブタジエン300gを投入し、70℃に昇温した。ここに、ネオジムバーサテート(neodymium versatate、NdV)0.38mmolのヘキサン溶液とジイソブチルアルミニウムヒドリド(diisobutylaluminum hydride、DIBAH)3.7mmol、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)0.96mmol、1,3-ブタジエン13.2mmolとの反応を介して製造した触媒組成物を添加した後、60分間重合を進行した。1,3-ブタジエンのポリブタジエンへの転換率は約100%であった。1,3-ブタジエンの重合反応が完了した後、変性剤として1,4-ブタンジオールジアクリレート1.5g(7.6mmol)が含まれたヘキサン溶液を前記重合溶液に添加してから、70℃で30分間反応させた。重合停止剤としてポリオキシエチレングリコールホスフェート0.5gが含まれたヘキサン溶液と、酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.5gが含まれたヘキサン溶液を添加した。その結果得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ホットロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、変性共役ジエン重合体を製造した。
【0167】
[実施例2]
前記実施例1において、変性剤として1,4-ブタンジオールジアクリレート2.4gが含まれたヘキサン溶液を用いることを除いては、前記実施例1と同一の方法で実施し変性共役ジエン重合体を製造した。
【0168】
[実施例3]
前記実施例1において、変性剤としてペンタエリトリトールテトラアクリレート4.74g(13.5mmol)が含まれたヘキサン溶液を用いることを除いては、前記実施例1と同一の方法で実施し変性共役ジエン重合体を製造した。
【0169】
[実施例4]
前記実施例1において、変性剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート4.0g(13.5mmol)が含まれたヘキサン溶液を用いることを除いては、前記実施例1と同一の方法で実施し変性共役ジエン重合体を製造した。
【0170】
[比較例1]
前記実施例1において、変性剤を用いずに70℃で30分間撹拌したことを除いては、前記実施例1と同一の方法で実施し未変性共役ジエン重合体を製造した。
【0171】
[比較例2]
前記実施例1において、変性剤としてn-ブチルアクリレート1.7g(13.5mmol)が含まれたヘキサン溶液を用いることを除いては、前記実施例1と同一の方法で実施し変性共役ジエン重合体を製造した。
【0172】
[比較例3]
前記実施例1において、変性剤としてn-ブチルアクリレート3.4g(27mmol)が含まれたヘキサン溶液を用いることを除いては、前記実施例1と同一の方法で実施し変性共役ジエン重合体を製造した。
【0173】
[比較例4]
前記実施例1において、変性剤としてジブチルスズジアクリレート2.9g(7.6mmol)が含まれたヘキサン溶液を用いることを除いては、前記実施例1と同一の方法で実施し変性共役ジエン重合体を製造した。
【0174】
このとき、ジブチルスズジアクリレートは、ジブチルスズオキシド(7.5g、30mmol)とアクリル酸(4.3g、60mmol)の混合物をトルエン300ml及びアセトニトリル(acetonitrile)200mlを混合した混合溶媒に入れ、5時間80℃で撹拌した後、前記混合溶液を1/4に濃縮して温度を0℃に下げ、48時間放置して再結晶する方法で製造した。(8.0g、21.3mmol、収率:71%)
<実験例1>
前記実施例及び比較例で製造された各重合体に対し、下記のような方法で数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(PDI)、ムーニー粘度(MV)、ベータ値(β-value)をそれぞれ測定した。
【0175】
1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(PDI)
各重合体を40℃条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)に積載して流すことで各分子量を測定し、重量平均分子量及び数平均分子量の比率から分子量分布を算出した。このとき、カラムは、ポリマーラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)の商品名PLgel Olexisカラム二本とPLgel mixed-Cカラム一本を組み合わせて用いた。また、新たに入れ替えたカラムは、全て混床(mixed bed)タイプのカラムを用い、ゲル浸透クロマトグラフィー標準物質(GPC Standard material)としてポリスチレン(Polystyrene)を用いた。
【0176】
2)ムーニー粘度(MV、ML1+4、@100℃)(MU)値
各重合体に対して、Monsanto社MV2000EのLarge Rotorを用い、100℃でRotor Speed2±0.02rpmの条件でムーニー粘度(ML1+4、@100℃)(MU)を測定した。このとき用いられた試料は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取しダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しつつムーニー粘度を測定した。
【0177】
一方、変性前重合体のムーニー粘度測定のための試料は、各実施例及び比較例において、変性剤を投入する前の段階で重合物の一部を反応器外部に排出してスチームで加熱された温水に入れ撹拌して溶媒を除去した後、ホットロール乾燥して残量の溶媒と水を除去して得ており、前記の方法で収得された試料を前述した方法を介してムーニー粘度を測定した。
【0178】
3)ベータ値(β-value)
Montech社のD-RPA 3000(ゴム加工分析機;rubber process analyzer)を用いて測定し、周波数範囲(Frequency sweep range)0~100Hz、静的変形(static strain)3%、動的変形(dynamic strain)0.25%、測定温度100℃でtanδを測定してd(log(tanδ))/d(log(freq))傾きをベータ値(β-value)として示した。
【0179】
【0180】
前記表1に示された通り、特定の構造の変性剤由来基を一末端に含む実施例1から4は、比較例1から4に比べてムーニー粘度の増加率が大幅に向上され、変性後の共役ジエン系重合体のベータ値もまた著しく低くなることが確認できる。
【0181】
<実験例2>
前記実施例及び比較例で製造した変性共役ジエン重合体と、比較例で製造した未変性共役ジエン重合体及び変性共役ジエン重合体を用いてゴム組成物及びゴム試料を製造した後、下記のような方法で加工性特性を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0182】
具体的に、前記ゴム組成物は、前記各重合体100重量部にカーボンブラック70重量部、プロセス油(process oil)22.5重量部、老化防止剤(TMDQ)2重量部、酸化亜鉛(ZnO)3重量部及びステアリン酸(stearic acid)2重量部を配合し、それぞれのゴム組成物を製造した。以後、前記各ゴム組成物に硫黄2重量部、加硫促進剤(CZ)2重量部及び加硫促進剤(DPG)0.5重量部を添加し、50℃で1.5分間50rpmで弱く混合してから50℃のロールを用いてシート状の加硫配合物を得た。得た加硫配合物を160℃で25分間加硫してゴム試料を製造した。
【0183】
1)冷間流れ性(cold flow、mg/min)
冷却流れ性テスター装置を用いて50℃のオーブンで前記各ゴム試料の冷間流れ性を測定した。このとき、冷却流れ性テスター装置は、支持台上に溶接された銅ホルダー(holder)及び銅ホルダーの上部を覆うことができるホルダーキャップからなる。具体的に銅ホルダーは、直径1.5cm、高さ約10cmの円柱形態を有し、この銅ホルダーの上部面に約1gのゴム試料を装着し、重さ318gのホルダーキャップをホルダーの上部から重力方向に締結する。ここで、ホルダーキャップは、銅材質で上部が塞がれた高さ約10cmの管形態を有し、塞がれた上部面の中心部に直径約5mmのホールが形成されたものである。また、ホルダーキャップの直径は約1.6cmで銅ホルダーの直径より大きいため、ホルダー上部を覆う場合ホルダーキャップの管内部にホルダーが入ることができ、銅ホルダーの上部面に装着されたゴム試料にホルダーキャップの重さと同一な荷重が加えられるようにすることができる。その後、ゴム試料を装着した冷却流れテスター装置をオーブンに入れ、装着されたゴム試料が50℃になるまでオーブンに約30分間放置する。このとき、テスター装置のホルダーキャップに形成されたホールを介して外部に流れ出たゴム試料を鋭いナイフで一度に除去する。その後、10分おきにホルダーの外に流れ出たゴムを切断し、切断されたゴムの重さを測定する段階を3回繰り返して3回のゴムの重さの平均値を算出し、平均値を用いて単位時間(分)当たり流れ出たゴムの重さを算出する。このとき、冷間流れ性の数値が大きいほど保存安定性が不良なことを示す。
【0184】
2)加工性
加工性は、前記加硫配合物を用いてムーニー粘度(FMB、Final Master Batch)を測定し、ムーニー粘度の差(△MV)を介して確認しており、ここで、ムーニー粘度の差は、前記表1に示された各重合体の変性後ムーニー粘度と配合物のムーニー粘度の差(△MV、FMB-RP)を示すものであり、ムーニー粘度の差が小さいほど加工性に優れることを示す。
【0185】
具体的に、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)(MU)は、前記製造された各加硫配合物を用いて測定した。Monsanto社MV2000EのLarge Rotorを用い、100℃でRotor Speed2±0.02rpmの条件でムーニー粘度(MV)を測定した。このとき用いられた試料は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取しダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しつつムーニー粘度(FMB)を測定した。
【0186】
【0187】
前記表2に示す通り、実施例1から4は、比較例1から4に比べて加工性に著しく優れ、冷間流れ性の特性が大きく改善されることが確認できる。