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特許7130911全固体二次電池用正極、及びそれを含む全固体二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】全固体二次電池用正極、及びそれを含む全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220830BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220830BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220830BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220830BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20220830BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220830BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220830BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220830BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220830BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 D
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/131
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/587
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021033301
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2021141064
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0026798
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】權 泰 利
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106286(JP,A)
【文献】特開2019-096612(JP,A)
【文献】特開2016-103411(JP,A)
【文献】特開2012-248468(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163846(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/062079(WO,A1)
【文献】特開2008-251532(JP,A)
【文献】特開2012-018827(JP,A)
【文献】特開2008-234872(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057078(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/62
H01M 4/505
H01M 4/131
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 4/38
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池用正極であって、
前記全固体二次電池用正極は、平均粒径が15ないし20μmである第1正極活物質、平均粒径が2ないし6μmである第2正極活物質、及び固体電解質を含み、
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質からなる群から選択される1以上は、リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜を含み、
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質は、それぞれコア及びシェルを含み、
前記シェルは、下記化学式2で表される化合物であるコバルト(Co)を含むニッケル系活物質を含む、全固体二次電池用正極。
Li Ni 1-x-y-z Co M1 M2 (2)
(上記化学式2において、0.9≦a≦1.3であり、M1は、MnまたはAlであり、M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせであり、0.3≦x≦0.6、0.002≦y≦0.05、0≦z<1、x+y+z<1である。)
【請求項2】
前記コバルト(Co)を含むニッケル系活物質において、前記コバルトの含量は、30モル%以上である、請求項1に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項3】
前記リチウムイオン伝導体は、リチウムジルコニウム酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウムランタン酸化物、リチウムセリウム酸化物、またはこれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導体は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極。
aLiO-ZrO (1)
(上記化学式1において、0.1≦a≦2.0である。)
【請求項5】
前記第1正極活物質の含量は、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質との総重量100重量部に対して、60ないし80重量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項6】
前記固体電解質は、前記全固体二次電池用正極の総重量100重量部に対して、5ないし10重量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項7】
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質のコアは、下記化学式3で表される化合物である、請求項1~のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極。
Li(Ni1-x-y-zCoM1M2)O (3)
(上記化学式3において、M1は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせであり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせであり、
0.95≦a≦1.3、x≦(1-x-y-z)、y≦(1-x-y-z)、0<x<1、0≦y<1、0≦z<1である。)
【請求項8】
前記化学式3で表される化合物において、ニッケルの含量は、80ないし98モル%である、請求項に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項9】
前記リチウムイオン伝導体の含量は、前記ニッケル系活物質と前記リチウムイオン伝導体との総重量100重量部に対して、0.1ないし5重量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項10】
前記コバルトを含むニッケル系活物質の含量は、前記コア及び前記シェルを含むニッケル系活物質の総重量100重量部に対して、0.1ないし10重量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項11】
前記全固体二次電池用正極の合剤密度が3.4g/cmないし3.7g/cmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の全固体二次電池用正極と、負極と、前記全固体二次電池用正極と前記負極との間に配置されている固体電解質層と、を含み、
前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含む、全固体二次電池。
【請求項13】
前記硫化物系固体電解質は、LiS-P、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiCl-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)からなる群から選択される1以上である、請求項12に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
前記負極が、負極集電体及び前記負極集電体上に配置されている第1負極活物質層を含み、
前記第1負極活物質層が、負極活物質及びバインダを含み、
前記負極活物質が粒子形態を有し、
前記負極活物質の平均粒径が4μm以下である、請求項12または13に記載の全固体二次電池。
【請求項15】
前記負極活物質が、炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質からなる群から選択される1以上を含み、
前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素及び結晶質炭素からなる群から選択される1以上を含む、請求項14に記載の全固体二次電池。
【請求項16】
前記全固体二次電池用正極における固体電解質と、前記硫化物系固体電解質とは、互いに同一であるか、あるいは異なる、請求項12~15のいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池用正極、及びそれを含む全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウム二次電池は、使用される液体電解質が空気中の水分に触れると、発火しやすく、安定性問題が常に提起されてきた。そのような安定性問題は、電気自動車の登場により、さらに深刻な問題になっている。そこで、最近、安全性向上を目的に、無機材料を含む固体電解質を利用した全固体二次電池(all-solid-state secondary battery)の研究が活発になされている。全固体二次電池は、安定性、高エネルギー密度、高出力、長寿命、製造工程の単純化、電池の大型化・コンパクト化及び低価格化などの観点において、次世代二次電池として注目されている。
【0003】
全固体二次電池は、正極、固体電解質層及び負極によって構成され、全固体二次電池は、電池電極の内部抵抗が大きく、イオン伝導度が大きく、粒子サイズが小さい小粒の正極活物質を利用することが一般的である。
【0004】
しかしながら、前述の正極活物質を利用すれば、正極が低い合剤密度を示し、正極極板の抵抗が高く、全固体二次電池の高率特性及び寿命特性が低下し、それに対する改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、新規な全固体二次電池用正極、及びそれを含む全固体二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面により、
硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池用正極であって、
前記全固体二次電池用正極は、平均粒径が15ないし20μmである第1正極活物質、平均粒径が2ないし6μmである第2正極活物質、及び固体電解質を含み、
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質のからなる群から選択される1以上は、リチウムイオン伝導体を含んだコーティング膜を含み、
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質は、それぞれコア及びシェルを含み、
前記シェルは、コバルトを含むニッケル系活物質を含む全固体二次電池用正極が提供される。
【0007】
他の一側面により、
前述の全固体二次電池用正極と、負極と、前記全固体二次電池用正極と前記負極との間に配置されている固体電解質層と、を含み、前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一側面による全固体二次電池は、電極抵抗及び電流密度の特性が改善され、高率特性及び寿命特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一態様による、正極活物質上部に硫化物系固体電解質が配置されている一部構造を示した図面である。
図2】一態様による全固体二次電池の構造を示した図面である。
図3】他の一態様による全固体二次電池の構造を示した図面である。
図4】さらに他の一態様による全固体二次電池の構造を示した図面である。
図5】さらに他の一態様による全固体二次電池の構造を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付された図面を参照しながら、以下において、例示的な全固体二次電池用正極、それを含む全固体二次電池、及び全固体二次電池の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0011】
本実施形態は、硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池用正極であって、全固体二次電池用正極(以降、正極ともいう)は、平均粒径が15ないし20μmである第1正極活物質、平均粒径が2ないし6μmである第2正極活物質、及び固体電解質を含み、第1正極活物質及び第2正極活物質からなる群から選択される1以上は、リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜を含み、第1正極活物質及び第2正極活物質は、それぞれコア及びシェルを含み、シェルは、コバルトを含むニッケル系活物質を含む。リチウムイオン伝導体は、リチウムジルコニウム酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウムランタン酸化物、リチウムセリウム酸化物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0012】
シェルに含まれるコバルトを含むニッケル系活物質において、コバルトの含量は、30モル%以上であってもよい。
【0013】
全固体二次電池は、電池電極内部抵抗が大きく、イオン伝導度が大きい粒子サイズが約5ないし10μmの正極活物質を利用することが一般的である。しかしながら、このような正極活物質を利用すれば、低い合剤密度を示し、正極極板の抵抗が高く、全固体二次電池の高率特性及び寿命特性が低下し、それに対する改善が必要である。
【0014】
これを鑑み、本発明者らは、前述の問題点を解決するために、正極活物質として、大粒の第1正極活物質と小粒の第2正極活物質とを共に利用しながら、第1正極活物質及び第2正極活物質からなる群から選択される1以上に、リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜を形成し、正極合剤密度を高め、高エネルギー密度特性を有する全固体二次電池に係わる発明を完成させた。また、第1正極活物質及び第2正極活物質は、それぞれコア及びシェルを含み、シェルは、コバルトを含むニッケル系活物質を含むことにより、電解液に対する正極活物質の構造崩壊などを抑制し、正極活物質の構造的安定性を高め、寿命特性及び高率特性を向上することができる全固体二次電池を得ることができる。
【0015】
第1正極活物質及び第2正極活物質からなる群から選択される1以上に、リチウムイオン伝導体がコーティングされれば、正極と硫化物系固体電解質との間におけるCo、P及びSの拡散が抑制され、リチウム空乏層の生成が防止され、界面抵抗を低減することができる。
【0016】
本明細書において、「平均粒径」は、粒径が最小である粒子から最大である粒子を順に累積した分布曲線(distribution curve)において、粒子の50%に該当する粒径(D50)を意味する。ここで、累積された粒子(accumulated particles)の総数は、100%である。平均粒子サイズは、当業者に知られた方法によって測定可能である。例えば、該平均粒子サイズは、粒子サイズ分析機、透過電子顕微鏡(TEM)イメージ、または電子走査顕微鏡(SEM)イメージを利用して測定可能である。該平均粒径を測定する他の方法として、動的光散乱(dynamic light scattering)を利用した測定装置を利用する方法がある。該方法により、所定サイズ範囲を有する粒子数を数え、それにより、平均粒径が計算されうる。図1は、一態様による、正極活物質上部に硫化物系固体電解質が配置されている一部構造を示したものである。
【0017】
第1正極活物質の平均粒径は、15ないし20μmであればよく、例えば、16ないし20μm、16ないし20μm、または17ないし20μmであってもよい。第2正極活物質の平均粒径は、2ないし6μmであればよく、例えば、2ないし5μm、2ないし4μm、または2ないし3μmであってもよい。
【0018】
図1によると、第1正極活物質及び第2正極活物質からなる群から選択される1以上に含まれるコア112上部に、コバルトを含むニッケル系活物質を含むシェル113が配置され、その上部に、リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜114が存在する。コバルトを含むニッケル系活物質において、コバルトの含量が30モル%以上であってもよい。コーティング膜114は、硫化物系固体電解質30に接している。
【0019】
コバルトを含むニッケル系活物質を含むシェル113が、図1に示されているように配置されれば、界面抵抗が小さくなり、容量特性及び高率特性をさらに改善することができる。
【0020】
コバルトを含むニッケル系活物質を含むシェル113の厚みは、例えば、5ないし100nmであればよく、10ないし80nmであってもよく、リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜114の厚みは、例えば、1ないし50nmであればよく、5ないし30nmであってもよい。
【0021】
コバルトを含むニッケル系活物質において、コバルトの含量は、ニッケル活物質において、遷移金属10モル%に対して、例えば、30モル%以上であればよく、30ないし60モル%、35ないし58モル%、38ないし56モル%、または40ないし55モル%であってもよい。
【0022】
コバルトを含むニッケル系活物質の含量は、コア及びシェルを含むニッケル系活物質の総重量100重量部に対して、例えば、0.1ないし10重量部であればよく、0.2ないし8重量部、0.3ないし6重量部、または0.5ないし7重量部であってもよい。
【0023】
リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜において、リチウムイオン伝導体の含量は、コア及びシェルを含むニッケル系活物質と、リチウムイオン伝導体との総重量100重量部に対して、例えば、0.1ないし5重量部であればよく、0.1ないし3重量部、または0.1ないし2重量部であってもよい。
【0024】
リチウムイオン伝導体は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0025】
aLiO-ZrO (1)
【0026】
化学式1において、0.1≦a≦2.0である。
【0027】
化学式1の化合物は、例えば、LiO-ZrO(LZO)であってもよい。
【0028】
コバルトを含むニッケル系活物質は、ニッケルとコバルトとを含む活物質であり、コバルトの含量は、ニッケルとコバルトとを含む遷移金属総含量(100モル%)に対して、例えば、30モル%以上であってもよく、ニッケルの含量は、コバルトを含めた他の遷移金属の含量に比べて多い。
【0029】
コバルトを含むニッケル系活物質は、下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【0030】
LiNi1-x-y-zCoM1M2 (2)
【0031】
化学式2において、0.9≦a≦1.3であり、M1は、MnまたはAlであり、M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、またはその組み合わせであり、0.3≦x≦0.6、0.002≦y≦0.05、0≦z<1、x+y+z1である。
【0032】
化学式2において、ニッケルの含量は、例えば、40ないし70モル%であってもよく、コバルトの含量は、例えば、30ないし60モル%であってもよく、M1の含量は、例えば、0.2ないし5モル%であってもよい。
【0033】
化学式2で表される化合物は、例えば、LiNi0.47Co0.5Al0.03、LiNi0.88Co0.105Al0.015、LiNi0.917Co0.069Al0.014、またはLiNi0.93Co0.056Al0.014であってもよい。
【0034】
第1正極活物質の含量は、第1正極活物質と第2正極活物質との総重量100重量部に対して、例えば、10ないし90重量部であってもよく、20~80重量部であってもよく、好ましくは60ないし80重量部である。第1正極活物質の含量が上述の範囲であると、高エネルギー密度、かつ、寿命特性に優れた全固体二次電池を製造することができる。
【0035】
正極において、固体電解質は、正極総重量100重量部に対して、例えば、5ないし15重量部であってもよく、正極活物質の総含量は、例えば、80ないし90重量部であってもよく、導電剤は、例えば、0.5ないし1重量部であってもよく、バインダは1ないし2重量部であってもよい。ここで、該正極活物質は、第1正極活物質と第2正極活物質とを含む。
【0036】
第1正極活物質及び第2正極活物質のコアは、下記化学式3で表される化合物である。
【0037】
Li(Ni1-x-y-zCoM1M2)O (3)
【0038】
化学式3において、M1は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせであり、M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせであり、0.95≦a≦1.3、x≦(1-x-y-z)、y≦(1-x-y-z)、0<x<1、0≦y<1、0≦z<1である。化学式3において、ニッケル、コバルト、M1、M2の和は、1であり、x+y+z1である。
【0039】
化学式3において、0<x<0.5であってもよく、xは、例えば、0.005ないし0.3、0.01ないし0.25、または0.03ないし0.20であってもよい。
【0040】
化学式3において、0≦y<0.5であってもよく、yは、例えば、0.002ないし0.05、0.003ないし0.04または0.004ないし0.03であってもよい。さらに、0≦z<0.5であってもよく、zは、0.002ないし0.05、0.003ないし0.04または0.005ないし0.03であってもよい。
【0041】
化学式3において、ニッケルの含量は、コバルト、M1、M2の含量に比べて多い。化学式3において、1-x-yは、0.8ないし0.98、または0.8ないし0.95であってもよい。
【0042】
化学式3において、ニッケルの含量は、例えば、80ないし98モル%であればよく、80ないし95モル%であってもよく。このように、ニッケルの含量が多ければ、容量特性に優れた正極を得ることができる。また、コバルトの含量は、例えば、0.5ないし30モル%であればよく、1ないし25モル%、または3ないし20モル%であってもよい。
【0043】
化学式3において、M1がマンガンである場合、マンガンの含量は、例えば、0.2ないし5モル%であればよく、0.3ないし4モル%、0.4ないし3モル%であってもよい。また、化学式3において、M1がアルミニウムである場合、アルミニウムの含量は、例えば、0.2ないし5モル%であればよく、0.3ないし4モル%、または0.5ないし3モル%であってもよい。
【0044】
化学式3で表される化合物は、例えば、下記化学式4で表される化合物、または下記化学式5で表される化合物であってもよい。
【0045】
LiNi1-x-yCoAl (4)
【0046】
化学式において、0.005≦x≦0.6、0.002≦y≦0.05である。
【0047】
LiNi1-x-yCoMn (5)
【0048】
化学式5において、0.005≦x≦0.6、0.002≦y≦0.05である。
【0049】
化学式4で表される化合物がコバルトリッチ化合物である場合には、例えば、0.3≦x≦0.6、0.002≦y≦0.05であればよく、0.005≦x≦0.3、0.002≦y≦0.05であってもよい。
【0050】
一態様によれば、化学式4で表される化合物は、例えば、ニッケルの含量が40ないし80モル%、コバルトの含量が30ないし60モル%、アルミニウムの含量が0.2ないし5モル%であってもよい。他の一態様によれば、化学式4で表される化合物は、例えば、ニッケルの含量が80ないし98モル%、コバルトの含量が30ないし60モル%、アルミニウムの含量が0.2ないし5モル%であってもよい。
【0051】
一態様によれば、化学式5で表される化合物は、例えば、ニッケルの含量が40ないし80モル%、コバルトの含量が30ないし60モル%、マンガンの含量が0.2ないし5モル%であってもよい。他の一態様によれば、化学式5で表される化合物は、例えば、ニッケルの含量が80ないし98モル%、コバルトの含量が30ないし60モル%、マンガンの含量が0.2ないし5モル%であってもよい。
【0052】
一態様によれば、化学式3で表される化合物は、例えば、LiNi0.896Co0.072Mn0.0322、LiNi0.917Co0.069Al0.0142、LiNi0.88Co0.105Al0.0152、LiNi0.88Co0.105Mn0.015、またはLiNi0.845Co0.105Mn0.05であってもよい。
【0053】
以下、一態様による正極活物質の製造方法について説明する。
【0054】
一形態による正極活物質の製造方法は、平均粒径が15ないし20μmである第1正極活物質と、平均粒径が2ないし6μmである第2正極活物質とを混合することを含むことができる。第1正極活物質及び第2正極活物質からなる群から選択される1以上は、リチウムイオン伝導体を含んだコーティング膜を含むことが好ましい。第1正極活物質及び前記第2正極活物質は、それぞれ独立的にコア及びシェルを含むことが好ましい。第1正極活物質及び第2正極活物質にそれぞれ独立的に含まれるシェルは、コバルトを含むニッケル系活物質を含むことが好ましい。第1正極活物質及び第2正極活物質の詳細については上記した通りである。
【0055】
第1正極活物質及び第2の正極活物質の製造方法は、特に制限されないが、一例について以下に説明する。
【0056】
第1正極活物質または第2正極活物質の製造方法の一例では、正極活物質のコア前駆体にコバルト前駆体を付加して混合して前駆体混合物を得て、該前駆体混合物を、例えば、600℃ないし800℃、または650ないし750℃で熱処理する工程を実施するとよい。これによって、第1正極活物質または第2正極活物質を構成するようにコアと、コバルトを含むニッケル系活物質を含むシェルと、を含む第1正極活物質または第2正極活物質を得ることができる。熱処理は、酸素雰囲気または空気雰囲気で実施することができる。コバルトを含むニッケル系活物質において、コバルトの含量は、例えば、30モル%以上であってもよい。
【0057】
前駆体混合物には、水酸化ナトリウムなどを付加してpHを制御する。
【0058】
コバルト前駆体としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酸化コバルト、またはこれらの組み合わせを利用する。
【0059】
次に、正極活物質上部に、リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜を形成する。リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜は、リチウムイオン伝導体が化学式1で表される化合物である場合、韓国公開特許第10-2014-0074174号公報に開示された製造方法によって実施し、正極活物質上部に、リチウムイオン伝導体を含むコーティング膜を形成することができる。韓国公開特許第10-2014-0074174号公報に開示された内容は、本明細書に参照として取り込まれる。
【0060】
上記工程に従い、第1正極活物質、第2正極活物質を混合することにより、正極活物質を得ることができる。この際に、第1正極活物質の含量は、第1正極活物質と第2正極活物質との総重量100重量部に対して、10ないし90重量部であってもよく、20~80重量部であってもよく、好ましくは60~80重量部である。
【0061】
前述の正極活物質を利用し、合剤密度が3.4ないし3.7g/cmである正極を製造することができる。
【0062】
正極の製造方法の一方法では、上記製造方法によって得られる正極活物質と、固体電解質とを混合し、得られる正極活物質組成物を用いて正極を作製することができる。正極活物質と固体電解質とを含む正極活物質組成物には導電剤及びバインダ等が含まれてもよい。例えば、正極活物質組成物を正極集電体に塗工することで正極を作製することができる。
【0063】
製造過程において、コバルト前駆体と混合する出発物質である第1正極活物質及び/または第2正極活物質のコア前駆体は、一般的な製造方法によっても製造することができる。例えば、出発物質である第1正極活物質及び/または第2正極活物質のコア前駆体は、アルミニウム前駆体またはマンガン前駆体と、ニッケルコバルト水酸化物及びリチウム前駆体とを混合して混合物を得て、それを酸化性ガス雰囲気下で熱処理して製造することができる。
【0064】
混合物は、ドーピングする金属を含む前駆体をさらに付加することができる。前駆体は、例えば、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタンなどがある。
【0065】
熱処理条件は、前駆体の種類によって異なり、熱処理は、例えば、600ないし900℃、または650ないし750℃で実施されてもよい。酸化性ガス雰囲気とは、例えば、酸素雰囲気または大気雰囲気を指す。
【0066】
ニッケルコバルト水酸化物は、一般的な製造方法によって製造することができ、例えば、共沈法などを利用して製造することができる。このような製造方法によって得られたニッケルコバルト水酸化物を分級し、大粒のニッケルコバルト水酸化物及び小粒のニッケルコバルト水酸化物を得る。
【0067】
他の態様により、前述の全固体二次電池用正極、負極、及びそれらの間に介在している硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池が提供される。
【0068】
以下において、例示的な一態様による全固体二次電池についてさらに詳細に説明する。
【0069】
一態様による全固体二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配置されている固体電解質層と、を含み、正極が、正極集電体、及び正極集電体上に配置されている正極活物質層を含み、負極が、負極集電体、及び負極集電体上に配置されている第1負極活物質層を含む。
【0070】
上記正極は、上記一態様の全固体二次電池用正極である。
【0071】
[全固体二次電池]
図2によると、全固体二次電池1は、正極10と、負極20と、正極10と負極20との間に配置されている固体電解質層30と、を含み、正極10が正極集電体11、及び正極集電体11上に配置されている正極活物質層12を含み、負極20が負極集電体21、及び負極集電体21上に配置されている第1負極活物質層22を含む。なお、層(例えば、負極活物質層)などが、他の部分(例えば、負極集電体)の「上」に配置されているとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その表面に層がある場合も含む。
【0072】
[正極:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)、またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用することができる。正極集電体11は、設けなくてもよい。
【0073】
[正極:正極活物質]
正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極10に含まれる固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と同一であってもよいし、あるいは異なっていてもよい。固体電解質に係わる詳細な説明は、固体電解質層30の説明を参照することができる。
【0074】
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)することができる。正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)のようなリチウム遷移金属酸化物;硫化ニッケル;硫化銅;硫化リチウム;酸化鉄;または酸化バナジウム(vanadium oxide)などであってよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で正極活物質として使用するものであるならば、いずれも可能である。正極活物質は、それぞれ単独であっても、また2種以上の混合物であってもよい。
【0075】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、Li1-bB’(化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);Li1-bB’2-c(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’4-c(化学式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoB’α(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’α(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’α(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’α(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMnGeO(化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMn(化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI’O;LiNiVO;Li3-f(PO(0≦f≦2);Li3-fFe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式からなる群から選択されるいずれか一つで表される化合物であってもよい。このような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせである。このような化合物表面に、コーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、前述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。このような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド・ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含んでもよい。このようなコーティング層をなす化合物は、非晶質であっても結晶質であってもよい。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、例えば、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはこれらの混合物であってもよい。コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内において選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者によく理解されている内容であるので、詳細な説明は、割愛する。
【0076】
正極活物質は、例えば、前述のリチウム遷移金属酸化物において、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に、酸素原子層と金属原子層とが相互に規則的に配され、それにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンのそれぞれ形成する面心立方格子(fcc:face centered cubic lattice)が、互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配置された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNiCoAl(NCA)、またはLiNiCoMn(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)のような三元系リチウム遷移金属酸化物である。正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー密度及び熱安定性をさらに向上することができる。
【0077】
正極活物質は、前述のように、被覆層によって覆われていてもよい。被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層として公知されているものであるならば、いずれでもよい。被覆層は、例えば、LiO-ZrO(LZO)などであってもよい。
【0078】
正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMのような三元系リチウム遷移金属酸化物であり、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態において、正極活物質の金属溶出の低減が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態でのサイクル特性を向上することができる。
【0079】
正極活物質の形状は、例えば、真球形、楕円球形のような粒子状であってもよい。正極10の正極活物質の含量も、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池の正極に適用可能な範囲であればよい。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば、5~50μm、または10~100μmである。負極活物質の平均粒径(D50)は、レーザ回折粒度分布計(laser diffraction particle diameter distribution meter)、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)、及び/または透過電子顕微鏡(transmission electron microscope:TEM)で測定することができる。
【0080】
[正極:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質を含んでもよい。正極10に含まれる固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と互いに同一であっても、異なっていてもよい。固体電解質に係わる詳細な説明は、固体電解質層30の説明を参照することができる。
【0081】
正極活物質層12に含まれる固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質に比べ、平均粒径(D50)が小さくてもよい。例えば、正極活物質層12に含まれる固体電解質の平均粒径は、固体電解質層30に含まれる固体電解質の平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または20%以下であってもよい。
【0082】
[正極:バインダ]
正極活物質層12は、バインダを含んでもよい。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであってもよい。
【0083】
[正極:導電剤]
正極活物質層12は、導電剤を含んでもよい。導電剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック(CB:carbon black)、アセチレンブラック(AB:acetylene black)、ケッチェン(KB:Ketjen black)ブラック、炭素ファイバ、金属粉末などであってもよい。
【0084】
[正極:その他添加剤]
正極10は、前述の正極活物質、固体電解質、バインダ、導電剤以外に、例えば、フィラ(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0085】
正極10に含まれるフィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般的に、全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0086】
正極10において、正極活物質の含量は、例えば、80ないし93重量部であればよく、固体電解質の含量は、例えば、5ないし10重量部であればよく、導電剤の含量は、例えば、0.5ないし5重量部であればよく、0.5ないし1重量部であってもよく、バインダの含量は、例えば、0.1ないし5重量部であればよく、0.1ないし2重量部であってもよい。ここで、前述の正極活物質、固体電解質、バインダ及び導電剤の各含量は、正極10の総重量100重量部に対するものである。正極10の総重量は、前述の正極活物質、固体電解質、バインダ及び導電剤の総含量を示す。
【0087】
正極10の厚みは、例えば、70ないし150μmであってもよい。
【0088】
[固体電解質層]
[固体電解質層:硫化物系固体電解質]
図2ないし図4によると、固体電解質層30は、正極10と負極20との間に配置されており、硫化物系固体電解質を含む。
【0089】
硫化物系固体電解質は、例えば、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Zn(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO、(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)からなる群から選択される1以上であってもよい。硫化物系固体電解質は、例えば、LiS、Pのような出発原料を、溶融急冷法や機械的ミリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。
【0090】
LiS-P-LiXには、例えば、LiS-P-LiCl、またはLiS-P-LiCl-LiBrがあってもよい。
【0091】
また、固体電解質は、非晶質であっても、結晶質であっても、またはこれらが混合された状態であってもよい。また、固体電解質は、例えば、前述の硫化物系固体電解質材料において、少なくとも構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものであってもよい。例えば、固体電解質は、LiS-Pを含む材料であってもよい。固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料として、LiS-Pを含むものを利用する場合、LiSとPとの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50ないし90:10ほどの範囲であればよい。
【0092】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)からなる群から選択される1以上を含むアルジロダイト型(argyrodite-type)の化合物であってもよい。特に、硫化物系固体電解質は、LiPSCl、LiPSBr、及びLiPSIからなる群から選択される1以上を含むアルジロダイト型の化合物であってもよい。
【0093】
アルジロダイト型の固体電解質の密度が、例えば、1.5ないし2.0g/ccであってもよい。アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が低減し、Li(例えば、Liデンドライト)による固体電解質層の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0094】
固体電解質の弾性係数は、例えば、15ないし35GPaであってもよい。
【0095】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダを含んでもよい。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラプルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであってもよいが、これらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用するものであるならば、いずれも可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12及び第1負極活物質層22に含まれるバインダと互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0096】
固体電解質層は、例えば、30ないし60μmの厚みを有していてもよい。
【0097】
[負極]
[負極:負極活物質]
第1負極活物質層22は、例えば、負極活物質及びバインダを含んでもよい。
【0098】
第1負極活物質層22に含まれる負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下であってもよい。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nmないし4μm、10nmないし3μm、10nmないし2μm、10nmないし1μm、または10nmないし900nmであってもよい。負極活物質がこのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時、リチウムの可逆的な吸蔵及び/または放出をさらに容易にすることができる。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ回折粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)径(D50)である。負極活物質の平均粒径は、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)、及び/または透過電子顕微鏡(transmission electron microscope:TEM)で測定することができる。
【0099】
第1負極活物質層22に含まれる負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質からなる群から選択される1以上を含む。
【0100】
炭素系負極活物質は、特に、非晶質炭素(amorphous carbon)であってもよい。非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック(FB:furnace black)、ケッチェンブラック(KB)、グラフェンなどであってもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、非晶質炭素に分類されるものであるならば、いずれも可能である。非晶質炭素は、結晶性を有さなくても、あるいは結晶性が非常に低い炭素(、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される)であってもよい。
【0101】
金属負極活物質または準金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1以上を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または準金属負極活物質として使用するものであるならば、いずれも可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属負極活物質ではない。
【0102】
第1負極活物質層22は、このような負極活物質のうち一種の負極活物質を含むか、あるいは複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、第1負極活物質層22は、非晶質炭素のみを含んでもよいし、あるいは金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1以上を含んでもよい。または、第1負極活物質層22は、非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1以上との混合物を含んでもよい。非晶質炭素と金などとの混合物の混合比は、重量比として、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または4:1ないし2:1であってもよいが、必ずしもこのような範囲に限定されるものではなく、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。負極活物質がこのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性をさらに向上することができる。
【0103】
第1負極活物質層22に含まれる負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子と、金属または準金属からなる第2粒子との混合物を含んでもよい。金属または準金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含んでもよい。準金属の代わりに半導体を含んでもよい。第2粒子の含量は、混合物の総重量に対して、例えば、8ないし60重量%、10ないし50重量%、15ないし40重量%、または20ないし30重量%であってもよい。第2粒子がこのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性をさらに向上することができる。
【0104】
[負極:バインダ]
第1負極活物質層22に含まれるバインダは、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどであってもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用するものであるならば、いずれも可能である。バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダによっても構成される。
【0105】
第1負極活物質層22がバインダを含むことにより、第1負極活物質層22が負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程において、第1負極活物質層22の体積変化、及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、第1負極活物質層22の亀裂が抑制される。例えば、第1負極活物質層22がバインダを含まない場合、第1負極活物質層22が負極集電体21から容易に分離されてしまう。負極集電体21から第1負極活物質層22が離脱した部分は、負極集電体21が露出され、固体電解質層30と接触することにより、短絡が発生する可能性が高まる。第1負極活物質層22は、例えば、第1負極活物質層22を構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21上に塗布し、乾燥させて作製される。バインダを第1負極活物質層22に含めることにより、スラリー中に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法でスラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による詰まり)を抑制することが可能である。
【0106】
[負極:その他添加剤]
第1負極活物質層22は、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などをさらに含むことが可能である。
【0107】
[負極:第1負極活物質層]
第1負極活物質層22の厚みは、例えば、正極活物質層12の厚みの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってもよい。第1負極活物質層22の厚みは、例えば、1μmないし20μm、2μmないし10μm、または3μmないし7μmであってもよい。第1負極活物質層22の厚みが過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが、第1負極活物質層22を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の厚みが過度に増大すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0108】
第1負極活物質層22の厚みが薄くなれば、例えば、第1負極活物質層22の充電容量も少なくなる。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べ、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下であってもよい。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べ、0.1%ないし50%、0.1%ないし40%、0.1%ないし30%、0.1%ないし20%、0.1%ないし10%、0.1%ないし5%、または0.1%ないし2%であってもよい。第1負極活物質層22の充電容量が過度に少なければ、第1負極活物質層22の厚みが非常に薄くなるので、繰り返される充放電過程において、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増大すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0109】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、正極活物質層12中の正極活物質の質量を乗じて得られる。正極活物質がさまざまな種類使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22の充電容量も、同じ方法に計算される。すなわち、第1負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、第1負極活物質層22中の負極活物質の質量を乗じて得られる。負極活物質がさまざまな種類使用される場合、負極活物質ごとに、充電容量密度×質量値を計算し、その値の和が第1負極活物質層22の容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を利用して推定された容量である。全固体半電池を利用した充電容量測定により、正極活物質層12と第1負極活物質層22との充電容量が直接測定される。測定された充電容量を、それぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。または、正極活物質層12と第1負極活物質層22との充電容量は、初期サイクル充電時に測定される初期充電容量としてもよい。
【0110】
[負極:第2負極活物質層(析出層)]
全固体二次電池1は、充電により、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置されている第2負極活物質層23をさらに含んでもよい。全固体二次電池1は、充電により、固体電解質層30と第1負極活物質層22との間に配置されている第2負極活物質層をさらに含んでもよい。全固体二次電池1は、充電により、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間、及び固体電解質層30と第1負極活物質層22との間に配置されている第2負極活物質層23をさらに含んでもよい。第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。従って、第2負極活物質層は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであってもよいが、これらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウム合金として使用するものであるならば、いずれも可能である。第2負極活物質層は、このような合金のうち一つからなってもよいし、またはリチウムからなってもよいし、あるいはさまざまな種類の合金からなってもよい。
【0111】
第2負極活物質層23の厚みは、特別に制限されるものではないが、例えば、1ないし1,000μm、1ないし500μm、1ないし200μm、1μmないし150μm、1ないし100μm、または1ないし50μmであってもよい。第2負極活物質層の厚みが過度に薄ければ、第2負極活物質層によるリチウム貯蔵庫の役割を果たし難い。第2負極活物質層の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増大し、サイクル特性がむしろ低下してしまう。第2負極活物質層は、例えば、このような範囲の厚みを有する金属ホイルであってもよい。
【0112】
全固体二次電池1において第2負極活物質層23は、例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置されているか、あるいは全固体二次電池1の組み立て後、充電により、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に析出される。図3に示されているように、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第2負極活物質層23が配置されている場合、第2負極活物質層23がリチウムを含む金属層であるので、リチウム貯蔵庫として作用する。例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムホイルが配置されている。これにより、第2負極活物質層23を含む全固体二次電池1のサイクル特性をさらに向上することができる。全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層が析出される場合、全固体二次電池1の組み立て時、第2負極活物質層を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が上昇する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超えて充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。第1負極活物質層22に含まれる負極活物質は、正極10から移動してきたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超えて充電すれば、例えば、第1負極活物質層22の背面、すなわち、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、第2負極活物質層23に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層23は、主にリチウム(すなわち、金属リチウム)によって構成される金属層である。このような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質が、リチウムと合金または化合物を形成する物質によって構成されるによって得られる。放電時には、第1負極活物質層22及び第2負極活物質層23、すなわち、金属層のリチウムがイオン化され、正極10側に移動する。従って、全固体二次電池1において、リチウムを負極活物質として使用することが可能である。また、第1負極活物質層22が第2負極活物質層23を被覆するために、第2負極活物質層23、すなわち、金属層保護層(protecting layer)の役割を担うと共に、リチウムデンドライトの析出成長を抑制する役割を果たす。従って、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上することができる。また、全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層23が配置されている場合、負極集電体21及び第1負極活物質層22、ならびにそれらの間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態において、リチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0113】
[負極:第3負極活物質層]
図3によると、全固体二次電池1は、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第3負極活物質層23’を含んでもよい。第3負極活物質層23’は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。従って、第3負極活物質層23’は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであってもよいが、これらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウム合金として使用するものであるならば、いずれも可能である。第3負極活物質層23’は、このような合金のうち一つからなってもよいし、またはリチウムからなってもよいし、あるいはさまざまな種類の合金からなってもよい。
【0114】
第3負極活物質層23’の厚みは、特別に制限されるものではないが、例えば、1ないし100μm、1ないし50μm、1ないし40μm、1ないし30μm、1ないし20μm、1ないし15μm、1ないし10μm、または1ないし5μmであってもよい。第3負極活物質層23’の厚みが過度に薄ければ、第3負極活物質層23’によるリチウム貯蔵庫の役割を果たし難い。第3負極活物質層23’の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増大し、サイクル特性がむしろ低下してしまう。第3負極活物質層23’は、例えば、このような範囲の厚みを有する金属蒸着層または金属ホイルであってもよい。
【0115】
第3負極活物質層23’上部には、図4に示されているように、リチウムハライド層24がさらに配置されている。リチウムハライド層24が不動態化(passivation)層として作用し、第3負極活物質層23’の劣化を防止することができる。リチウムハライド層24は、高強度及び高硬度層であるので、第3負極活物質層23’を保護する保護層でもある。リチウムハライド層24は、LiF、LiCl、LiBr及びLiIからなる群から選択される1以上を含んでもよい。リチウムハライド層24は、LiF層であってもよい。リチウムハライド層は、蒸着により、第3負極活物質層23’上にも配置されている。リチウムハライド層24の厚みは、特別に制限されるものではないが、例えば、10μmないし300μm、10μmないし200μm、10μmないし150μm、10μmないし100μm、10μmないし90μm、10μmないし80μm、10μmないし60μm、または20μmないし50μmであってもよい。リチウムハライド層24の厚みが過度に薄ければ、リチウムハライド層24が第3負極活物質層23’の劣化を防止し難い。リチウムハライド層24の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下してしまう。
【0116】
リチウムハライド層24と固体電解質層30との間にカーボン層がさらに配置されていてもよい。カーボン層がさらに配置されていることにより、リチウムハライド層24と固体電解質層30との界面抵抗を低減することができる。カーボン層の厚みは、例えば、1μmないし10μm、2μmないし10μm、または1μmないし5μmであってもよい。カーボン層の厚みが過度に薄ければ、リチウムハライド層24と固体電解質層30との界面抵抗を効果的に低減させ難くなる。カーボン層の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下してしまう。カーボン層は、バインダ及び炭素系材料を含んでもよい。炭素系材料は、非晶質炭素、結晶質炭素などを含んでもよい。バインダは、前述の正極に使用されるバインダを含んでもよい。カーボン層が非晶質炭素及び結晶質炭素のいずれも含んでもよい。カーボン層に含まれる非晶質炭素と結晶質炭素との重量比は、例えば、4:6ないし6:4であってもよい。
【0117】
[負極:負極集電体]
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料によって構成される。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などであってもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当該技術分野で電極集電体として使用するものであるならば、いずれも可能である。負極集電体21は、前述の金属のうち1種によって構成されてもよいし、あるいは2種以上の金属の合金、または被覆材料によって構成されてもよい。負極集電体21は、例えば、板状またはホイル状であってもよい。
【0118】
全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21上に、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜をさらに含んでもよい。薄膜は、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置されている。薄膜は、例えば、リチウムと合金を形成することができる元素を含む。リチウムと合金を形成することができる元素は、例えば、金、銀、亜鉛、スズ、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビスマスなどであってもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金を形成することができる元素であるならば、いずれも可能である。薄膜は、それら金属のうち一つによって構成されてもよいし、あるいはさまざまな種類の金属の合金によって構成されてもよい。薄膜が負極集電体21上に配置されていることにより、例えば、薄膜24と第1負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層23の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性をさらに向上することができる。
【0119】
薄膜の厚みは、例えば、1nmないし800nm、10nmないし700nm、50nmないし600nm、または100nmないし500nmであってもよい。薄膜の厚みが1nm未満になる場合、薄膜による機能が発揮し難くなってしまう。薄膜の厚みが過度に厚ければ、薄膜自体がリチウムを吸蔵し、負極において、リチウムの析出量が減少し、全固体電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下してしまう。薄膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより、負極集電体21上に配置することができるが、必ずしもこのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野において、薄膜を形成することができる方法であるならば、いずれも可能である。
【0120】
一態様による全固体二次電池は、中大型電池または電力保存装置(ESS:energy storage system)に適用可能である。一態様による全固体二次電池は、例えば、自動車電池に利用可能である。
【実施例
【0121】
以下の実施例及び比較例を用いて、さらに詳細に説明する。ただし、実施例は、例示のためのものであり、それらだけによって限定されるものではない。
【0122】
(正極活物質の製造)
<製造例1:正極活物質LiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)=(コア)+CoリッチNCA(シェル)+LiO-ZrO(LZO)コーティング膜)(平均粒径:約16μm)の製造>
まず、NCA前駆体を製造した。
【0123】
硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、及び水酸化ナトリウム(NaOH)に対し、45℃、pH11.3で共沈反応を実施し、沈殿物を得た。
【0124】
沈殿物を90℃で乾燥させ、それを分級し、約18μmの大粒のニッケルコバルト水酸化物(NiCo(OH))、約3μmの小粒のニッケルコバルト水酸化物(NiCo(OH))を得た。
【0125】
大粒のニッケルコバルト水酸化物(NiCo(OH))150g、水酸化リチウム(LiOH・HO)42g及び水酸化アルミニウム(Al(OH))1.2gを混合し、この混合物に対し、酸素約750℃で12時間熱処理を施し、LiNi0.960Co0.028Al0.012(NCA)を得た。
【0126】
LiNi0.960Co0.028Al0.012(NCA)に、硫酸コバルト(CoSO)及び水酸化ナトリウム(NaOH)を付加し、これらを混合し、この混合物を空気中で約730℃で熱処理し、表面にCo(OH)コーティング膜を有する正極活物質を得た。このような製造過程によって実施すれば、熱処理されたNCAの表面の残炭を除去しつつ、コバルトコーティングを同時に実施することができる。
【0127】
正極活物質のコアは、LiNi0.966Co0.028Al0.006(NCA)を含み、正極活物質シェルは、CoリッチNCAであるLiNi0.563Co0.430Al0.007を含んでいる。シェルに含まれるCoリッチNCA(LiNi0.563Co0.430Al0.007)の含量は、コア及びシェルを含むニッケル系活物質総重量100重量部に対して、7重量部であった。
【0128】
以上の工程によって得た正極活物質は、平均粒径が約16μmであった。
【0129】
これとは別途に、リチウムメトキシド、ジルコニウムプロポキシド、エタノールと、アセト酢酸エチルとの混合液中において、30分間撹拌して混合させ、aLiO-ZrO(a=1)のアルコール溶液(aLiO-ZrO被覆用塗布液)を製造した。ここで、リチウムメトキシド及びジルコニウムプロポキシドの含量は、正極活物質の表面に被覆されるaLiO-ZrO(a=1)の含量であるが、コア及びシェルを含むニッケル系活物質とaLiO-ZrO(a=1)との総重量100重量部に対して、0.4重量部になるように調節した。
【0130】
次に、aLiO-ZrO被覆用塗布液を、前述の正極活物質微細粉末と混合し、その混合溶液を撹拌しながら、40℃ほどに加熱し、アルコールのような溶媒を蒸発乾燥させた。このとき、混合溶液には、超音波を照射した。
【0131】
以上の工程により、正極活物質微細粉末の粒子表面に、aLiO-ZrOの前駆体を担持させることができた。
【0132】
また、正極活物質の粒子表面に担持されたaLiO-ZrO(a=1)の前駆体に対し、約350℃で1時間酸素雰囲気下で熱処理した。熱処理過程において、正極活物質上部に存在するaLiO-ZrO(a=1)の前駆体が、aLiO-ZrO(a=1)に変化した。LiO-ZrO(LZO)の含量は、NCAとLZOとの総重量100重量部に対して、約0.4重量部であった。
【0133】
前述の製造工程によれば、NCA(コア)+CoリッチNCA(シェル)+LiO-ZrO(LZO)(コーティング膜)を得ることができた。コアのNCAの組成は、LiNi0.966Co0.028Al0.006であり、CoリッチNCAの組成は、LiNi0.563Co0.430Al0.007であり、コア及びシェルを含む正極活物質の組成は、LiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)であった。
【0134】
<製造例2:正極活物質{LiNi0.896Co0.072Al0.031(平均粒径:約3μm)={NCA(コア)+CoリッチNCA(シェル)+LiO-ZrO(LZO)コーティング膜}(平均粒径:約3μm)の製造>
18μmの大粒のニッケルコバルト水酸化物NiCo(OH)の代わりに、製造例1によって得た約3μmの小粒のニッケルコバルト水酸化物NiCo(OH)を利用し、目的とする正極活物質であるLiNi0.896Co0.072Al0.032(NCA)を得ることができるように、正極活物質前駆体であるニッケルコバルト水酸化物(NiCo(OH))、水酸化リチウム(LiOH・HO)、及び水酸化アルミニウム(Al(OH))の含量を、化学量論学的にそれぞれ制御されるように変化させたことを除いては、製造例1のLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約16μm)の製造方法と同様に実施してLiNi0.896Co0.072Al0.032(NCA)(平均粒径:約3μm)を得た。LiNi0.896Co0.072Al0.032は、正極活物質のコア及びシェルを合わせた全体組成を示したものである。
【0135】
<製造例3:正極活物質{LiNi0.896Co0.072Mn0.032=NCM(コア)+CoリッチNCM(シェル)+LiO-ZrO(LZO)コーティング膜}(平均粒径:約16μm)の製造>
水酸化アルミニウム(Al(OH))の代わりに、水酸化マンガンを利用し、LiNi0.896Co0.072Mn0.032(NCM)を得ることができるように、正極活物質前駆体であるニッケルコバルト水酸化物(NiCo(OH))、水酸化リチウム(LiOH・HO)、及び水酸化マンガンの含量を、化学量論学的に制御されるように変化させたことを除いては、製造例1のLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約16μm)の製造方法と同様に実施し、目的とする正極活物質であるLiNi0.896Co0.072Mn0.032(NCM)(平均粒径:約16μm)を得た。
【0136】
<製造例4:正極活物質{LiNi0.896Co0.072Mn0.032=NCM(コア)+CoリッチNCM(シェル)+LiO-ZrO(LZO)コーティング膜}(平均粒径:約16μm)の製造>
目的とする正極活物質LiNi0.896Co0.072Mn0.032(NCM)(平均粒径:約3μm)を得ることができるように、正極活物質前駆体の含量を変化させたことを除いては、製造例3の製造方法と同様に実施し、正極活物質を得た。
【0137】
正極活物質のコアは、LiNi0.95Co0.03Mn0.02を含み、正極活物質のシェルは、LiNi0.53Co0.45Mn0.02を含み、CoリッチNCMは、LiNi0.53Co0.45Mn0.02であり、コア及びシェルを含む正極活物質の組成は、LiNi0.896Co0.072Mn0.032であった。
【0138】
(全固体二次電池の製造)
<実施例1>
(正極製造)
第1正極活物質である製造例1によって得た正極活物質(LiNi0.966Co0.028Al0.007(NCA)(コア)+CoリッチNCA(シェル)+LiO-ZrO(LZO)コーティング膜)(平均粒径:約16μm)と、第2正極活物質である製造例2によって得たLiO-ZrO(LZO)コーティング膜を有するLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約3μm)とを2:8重量比で混合して正極活物質を準備した。
【0139】
固体電解質として、アジロダイト(argyrodite)型結晶体であるLiPSCl固体電解質(D50=0.6μm、結晶質)を準備した。バインダとして、ポリテトラフルルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロン(登録商標)バインダ)を準備した。導電剤として、炭素ナノファイバ(CNF)を準備した。これらのような材料を、正極活物質:固体電解質:導電剤:バインダ=89:8.8:1.2:1.0の重量比で、キシレン溶媒と混合させた正極活物質組成物をシート状に成形した後、40℃で8時間真空乾燥させ、正極活物質層を製造した。
【0140】
正極活物質層を、炭素コーティングされたAl(carbon-coated Al)集電体に積層し、ロールプレスで圧着して正極を準備した。
【0141】
(負極製造)
負極集電体として、厚み10μmのSUS箔(foil)を準備した。
【0142】
一次粒径が30nmほどであるカーボンブラック(CB)6gを容器に入れ、そこに、PVDFバインダ(クレハ社の#9300)が5重量%含まれるNMP溶液8gを投入して混合し、混合溶液を準備した。次に、混合溶液にNMPを少しずつ添加しながら混合溶液を撹拌し、スラリーを製造した。製造されたスラリーを、Ni集電体上部に、バーコータ(bar coater)を利用して塗布し、空気中で80℃で10分間乾燥させ、カーボンブラックと銀とを含むカーボン層を形成した。カーボン層の厚みは、3μmであった。
【0143】
以上の工程によって負極を製造した。負極に含まれるリチウム金属層/LiAg合金層/カーボン層の多層構造を有する第1負極活物質層の厚みは、38μmであった。
【0144】
(固体電解質層の製造)
Li-アジロダイト(LiPSCl、D50=3μm、結晶質)99重量部、アクリル系バインダであるポリ(スチレン-co-ブチルアクリレート)(8:2モル比)1重量部、キシレン495重量部を、シンクミキサ(Thinky mixer)(1,300rpm、5min)で混合し、正極活物質スラリーを準備した。スラリーを、離形ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚み:75μm)上の不織布(厚み:15μm)上に、バーコータを利用して膜を作り、コンベクションオーブン(convection oven)(80℃、10分)で液体成分をなくし、真空オーブン(40℃、10時間)で乾燥させ、固体電解質層(加圧前厚:90μm、WIP加圧後:45μm)を準備した。
【0145】
(全固体二次電池の製造)
以上の工程によって得た負極、固体電解質層及び正極の順に配置し、積層体を準備した。準備された積層体を、500MPaの圧力で1分間平板加圧(plate press)処理し、負極/固体電解質層/正極の単位セルを製造した。このような加圧処理によって固体電解質層が焼結され、電池特性を向上することができる。焼結された固体電解質層の厚みは、約45μmであった。
【0146】
<実施例2>
第1正極活物質として、LiO-ZrO(LZO)コーティング膜を有するNCAの代わりに、未コーティングNCAを使用したことを除いては、実施例1と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0147】
<実施例3>
第2正極活物質として、LiO-ZrO(LZO)コーティング膜を有するNCAの代わりに、未コーティングNCAを使用したことを除いては、実施例1と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0148】
<実施例4>
第1正極活物質である製造例1によって得たLiO-ZrO(LZO)コーティング膜を有するLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約16μm)と、第2正極活物質である製造例2によって得たLiO-ZrO(LZO)コーティング膜を有するLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約3μm)との代わりに、第1正極活物質として、製造例3によって得たNCMと、第2正極活物質として、製造例4によって得たNCMとを利用したことを除いては、実施例1と同様実施し、全固体二次電池を製造した。
【0149】
<実施例5、6>
第1正極活物質と第2正極活物質との混合重量比が、7:3及び6:4にそれぞれ変化されたことを除いては、実施例1と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0150】
<実施例7>
下記表1に示されているように、第1正極活物質及び第2正極活物質の平均粒径をそれぞれ変化させたことを除いては、実施例1と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0151】
【表1】
【0152】
<比較例1>
正極活物質として、LiO-ZrO(LZO)コーティング膜を有するLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約3μm)のみを使用したことを除いては、実施例1と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0153】
<比較例2>
正極活物質として、LiO-ZrO(LZO)コーティング膜を有するLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約16μm)のみを利用したことを使用したことを除いては、実施例1と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0154】
<比較例3>
第1正極活物質として、未コーティングLiNi0.917Co0.069Al0.014(NCA)(平均粒径:約16μm)と、第2正極活物質である未コーティングLiNi0.896Co0.072Al0.032(NCM(平均粒径:約3μm)とを使用したことを除いては、実施例1と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0155】
<比較例4>
第1正極活物質である未コーティングNCM(平均粒径:約16μm)と、第2正極活物質である未コーティングNCM(平均粒径:約3μm)とを2:8重量比で混合して正極活物質を得たことを除いては、実施例4と同様に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0156】
[評価例1:合剤密度]
実施例及び比較例の正極の合剤密度を厚みケージ(thickness gage)を使用して評価し、その結果を下記表2に示した。
【0157】
[評価例2:効率特性及び寿命特性]
実施例1及び比較例1によって作製された全固体二次電池において、充放電特性などを、充放電器(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0158】
初回充放電は、0.1Cの電流で、4.25Vに至るまで定電流充電した後、0.05Cの電流に至るまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.1Cの電流で電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を行った。2回目充放電サイクルは、0.2Cの電流で4.25Vに至るまで定電流充電した後、0.05Cの電流に至るまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で、電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を行った。
【0159】
寿命評価は、1Cの電流で4.25Vに至るまで定電流充電した後、0.05Cの電流に至るまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流で、電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを100回繰り返して評価した。
【0160】
容量維持率(CRR:capacity retention ratio)は、下記数式1から計算され、充放電効率は、数式2から計算され、容量維持率及び充放電効率の特性を調査し、下記表2に示した。
【0161】
(数式1)
容量維持率(寿命)[%]=[200回目サイクルの放電容量/最初サイクルの放電容量]×100
【0162】
(数式2)
充放電効率=[100回目サイクルの平均動作電圧/100回目サイクルの平均動作電圧]X100
【0163】
[評価例3:高率特性]
各全固体二次電池に対し、0.33C、1.0C、及び2.0Cで、2.5~4.25V領域で充放電を実施した後、それぞれのCレートによる放電容量を表2に示した。また、Cレートが0.33Cであるときの放電容量に対する1.0Cであるときの放電容量の比を下記表2に示した。
【0164】
[評価例4:平均電圧]
実施例1及び比較例1の全固体二次電池に対し、0.2Cレートで、3.0~4.2V領域で充放電を実施し、50%充電状態(DOC:depth of charge)での電圧(充電平均電圧)、及び50%放電状態(DOD:depth of discharge)での電圧(放電平均電圧)を測定し、下記表2に示した。さらに、充電平均電圧と放電平均電圧との差を計算し、電圧差として表記した。
【0165】
【表2】
【0166】
表2によれば、実施例1によって製造された全固体二次電池は、比較例1によって製造された全固体二次電池と比較し、正極の合剤密度が高いことにより、極板の抵抗が低く、優れた充放電効率、寿命、及び高率の特性が得られることが分かった。
【0167】
また、実施例2ないし実施例6の全固体二次電池について、充放電効率、寿命及び高率の特性を、実施例1の全固体二次電池と同一の方法によって評価した。評価した結果、実施例2ないし実施例6の全固体二次電池は、実施例1の全固体二次電池と同等レベル、例えば、類似したレベルの充放電効率、寿命及び高率の特性を示した。
【0168】
[評価例5:粒子サイズ及び粒子分布の特性]
実施例1の正極活物質、及び実施例5の第2正極活物質の粒子サイズ分布特性を、光透過式粒度分布測定器(シマズ製作所製SA-CP3)を利用し、光透過式粒度分布を測定して調査した。調査結果は、表3の通りである。
【0169】
【表3】
【0170】
以上において、図面及び実施例を参照し、一態様について説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の態様が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものの技術的思想の範囲内も含まれ、上記の多様な変形、及び均等な他の態様も、本創意的思想の技術的範囲に属するということは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0171】
1 全固体二次電池
10 正極
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極
21 負極集電体
22 第1負極活物質層
23 第2負極活物質層
24 リチウムハライド層
30 固体電解質層
図1
図2
図3
図4
図5