IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許7130917接着剤組成物、回路接続材料、フィルム状接着剤、接続構造体及びその製造方法
<>
  • 特許-接着剤組成物、回路接続材料、フィルム状接着剤、接続構造体及びその製造方法 図1
  • 特許-接着剤組成物、回路接続材料、フィルム状接着剤、接続構造体及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】接着剤組成物、回路接続材料、フィルム状接着剤、接続構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/00 20060101AFI20220830BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220830BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20220830BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20220830BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20220830BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C09J4/00
C09J11/04
C09J7/00
H05K3/32 B
H05K1/14 J
C09J11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017014397
(22)【出願日】2017-01-30
(65)【公開番号】P2018123199
(43)【公開日】2018-08-09
【審査請求日】2019-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】大當 友美子
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】森谷 敏光
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-081713(JP,A)
【文献】特開2014-210878(JP,A)
【文献】特開2010-155896(JP,A)
【文献】特開平03-064389(JP,A)
【文献】特開平04-198270(JP,A)
【文献】特開2012-144704(JP,A)
【文献】特開2016-136625(JP,A)
【文献】特開2012-174345(JP,A)
【文献】特開2007-291313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01B 1/00-1/24,
5/00-5/16
H01R 11/00-11/32
H05K 1/14,3/32-3/34,
3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物と、前記メルカプト基と反応可能な炭素-炭素二重結合を有する化合物と、光重合開始剤と、を含有し、
前記シルセスキオキサン化合物の含有量が、接着剤組成物全量基準で0.1~(20.5/103)×100質量%であり、
前記炭素-炭素二重結合を有する化合物の含有量が、接着剤組成物全量基準で(34.5/103)×100~50質量%である、接着剤組成物。
(R-SiO3/2 (1)
[式(1)中、Rは、炭化水素基の少なくとも一部がメルカプト基、アルキル基、フェニル基、アミノ基、エポキシ基及びビニル基の少なくとも1つの置換基で置換された有機基、又は水素原子を表し、複数のRのうち2つ以上は、炭化水素基が少なくとも1つのメルカプト基で置換された有機基を表す。複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。mは、2以上の整数を表す。]
【請求項2】
導電性粒子を更に含有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
回路部材同士を接続する回路接続材料であって、請求項1又は2に記載の接着剤組成物を含有する回路接続材料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物をフィルム状にしてなる、フィルム状接着剤。
【請求項5】
第一の回路電極を有する第一の回路部材と、
第二の回路電極を有する第二の回路部材と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を互いに電気的に接続する回路接続部材と、を備え、
前記回路接続部材が請求項1又は2に記載の接着剤組成物の硬化物を含有する、接続構造体。
【請求項6】
第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材との間に、請求項1又は2に記載の接着剤組成物を配置し、前記接着剤組成物を介して前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を加圧して、前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続材料、フィルム状接着剤、接続構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。例えば、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、フレキシブルプリント配線基板(FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板との接続のための接着続材料として、接着剤中に導電性粒子が分散された異方導電性接着剤が使用されている。また、最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドではなく、半導体シリコンチップを基板に直接実装するいわゆるチップオングラス(COG)実装が行われており、この場合も異方導電性接着剤が適用されている。
【0003】
異方導電性接着剤が使用される精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、例えば従来のエポキシ樹脂を主成分とする接着材料を用いた場合の回路接続条件では、配線の脱落、剥離、位置ずれ等が生じるといった問題があり、また、回路部材間(例えばチップと基板との間)の熱膨張差に起因する反りが発生するという問題がある。加えて、電子機器の製造コストを削減するために、スループットを向上させる必要がある。
【0004】
以上のような事情から、接着材料には、低温(例えば100~170℃)かつ短時間(例えば10秒間以内)で硬化(低温速硬化)することが要求されている。これに対し、例えば特許文献1では、低温での加熱により硬化する接着材料、又は硬化の際に加熱を必要としない接着材料として、光照射によって硬化する異方導電性接着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-210878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光照射により硬化する接着材料には、硬化物のガラス転移温度、弾性率等の物性の点で未だ改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、低温速硬化が可能であり、かつ硬化物の物性に優れた接着剤組成物、回路接続材料及びフィルム状接着剤、並びに、該硬化物を用いた接続構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一態様において、炭素-炭素二重結合を有する化合物と、メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物と、光重合開始剤と、を含有する接着剤組成物を提供する。
【0009】
シルセスキオキサン化合物の含有量は、好ましくは接着剤組成物全量基準で0.1~30質量%である。
【0010】
接着剤組成物は、好ましくは導電性粒子を更に含有する。
【0011】
本発明は、他の一態様において、回路部材同士を接続する回路接続材料であって、上記の接着剤組成物を含有する回路接続材料を提供する。
【0012】
本発明は、他の一態様において、上記の接着剤組成物をフィルム状にしてなるフィルム状接着剤を提供する。
【0013】
本発明は、他の一態様において、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、第一の回路部材及び第二の回路部材の間に配置され、第一の回路電極及び第二の回路電極を互いに電気的に接続する回路接続部材と、を備え、回路接続部材が上記の接着剤組成物の硬化物を含有する、接続構造体を提供する。
【0014】
本発明は、他の一態様において、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材との間に、上記の接着剤組成物を配置し、接着剤組成物を介して第一の回路部材及び第二の回路部材を加圧して、第一の回路電極及び第二の回路電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温速硬化が可能であり、かつ硬化物の物性に優れた接着剤組成物、回路接続材料及びフィルム状接着剤、並びに、該硬化物を用いた接続構造体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】フィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
図2】接続構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る接着性組成物は、(A)炭素-炭素二重結合を有する化合物(以下「(A)成分」ともいう)と、(B)メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物(以下「(B)成分」ともいう)と、(C)光重合開始剤(以下「(C)成分」ともいう)とを含有する。
【0018】
(A)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物であればよく、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アルケニル基、アルケニレン基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等を有する化合物であってよい。(A)成分は、炭素-炭素二重結合を1つ有していても2つ以上有していてもよい。(A)成分は、接着剤組成物の硬化物の弾性率、ガラス転移温度、機械特性等に更に優れる観点から、好ましくは、分子内にベンゼン環、イソシアヌル環等の剛直な骨格を更に有する化合物である。
【0019】
(A)成分の具体例としては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、m-トルイレンビスマレイミド、4,4’-ビフェニレンビスマレイミド、4,4’-(3,3’-ジメチル-ビフェニレン)ビスマレイミド、4,4’-(3,3’-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、4,4’-(3,3’-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルプロパンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2’-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス(1-(4マレイミドフェノキシ)-2-シクロヘキシルベンゼン、2,2’-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等のマレイミド化合物、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のビニルエーテル化合物、1,3-ジアリルフタレート、1,2-ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物、スチレン誘導体、アクリルアミド誘導体、ナジイミド誘導体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴムなどが挙げられる。(A)成分は、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等を導入した化合物であってもよい。
【0020】
接着剤組成物は、例えば接着剤組成物の増粘化及びフィルム化を目的として、上記のような化合物の硬化を阻害しない範囲で、上記の化合物以外にも、分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物を更に含有していてよい。
【0021】
(A)成分の含有量は、低温速硬化性に更に優れる観点から、接着剤組成物全量基準で、好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。
【0022】
(B)成分は、例えば下記式(1)で表される化合物であってよい。
(R-SiO3/2 (1)
式中、Rは、炭化水素基の少なくとも一部がメルカプト基、アルキル基、フェニル基、アミノ基、エポキシ基及びビニル基の少なくとも1つの置換基で置換された有機基、又は水素原子を表し、複数のRのうち2つ以上は、炭化水素基が少なくとも1つのメルカプト基で置換された有機基を表す。複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。該置換基の炭素数は、1~20であってよい。複数のRのうち2つ以上は、好ましくは、炭素数1~10の炭化水素基が少なくとも1つのメルカプト基で置換された有機基を表す。mは、2以上の整数を表す。(B)成分の構造は、かご型、ランダム型及びラダー型のいずれであってもよい。
【0023】
(B)成分の含有量は、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.1~25質量%、更に好ましくは10~15質量%である。(B)成分の含有量が0.1質量%以上であると、硬化物の弾性率の低下を更に抑制でき、また、30質量%以下であると、接着剤組成物のガラス転移温度が更に向上する。
【0024】
本実施形態に係る接着剤組成物では、(C)光重合開始剤から発生したラジカルが、主として(A)炭素-炭素二重結合を有する化合物の炭素-炭素二重結合と(B)メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物のメルカプト基との反応を促進することにより、低温であっても接着剤組成物の硬化反応が速やかに進行する(すなわち低温速硬化性が向上する)。
【0025】
(C)成分としては、150~750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物が好ましく用いられる。このような化合物は、特に制限されず、公知の化合物であってよい。(C)成分としては、例えば、オキシムエステル化合物、過酸化物、アゾ化合物、α-アセトアミノフェノン誘導体又はホスフィンオキサイド誘導体が用いられ、光照射に対する感度が高い観点から、オキシムエステル化合物が好ましく用いられる。
【0026】
(C)成分の含有量は、接着剤組成物全量基準で、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.1~15質量%、更に好ましくは0.5~10質量%である。含有量が0.1質量%以上であると、低温速硬化性に更に優れ、また、20質量%以下であると、接着剤組成物の貯蔵安定性が向上する傾向にある。
【0027】
接着剤組成物は、熱可塑性樹脂を更に含有していてもよい。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、接着性に優れる観点から、主鎖又は側鎖に水酸基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、アミド基、イミド基、カルボンキシル基等の極性基を有する樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、具体的には、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が好適に使用される。
【0028】
接着剤組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物全量基準で、例えば5~50質量%であってよい。
【0029】
接着剤組成物は、導電性粒子を更に含有する(異方)導電性接着剤組成物であってよい。導電性粒子としては、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子、導電性カーボン粒子などが挙げられる。導電性粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを核とし、この核を上記金属又は導電性カーボンで被覆した被覆導電性粒子であってもよい。これらの中でも、熱溶融性の金属で形成された金属粒子、又はプラスチックを核とし、この核を金属又は導電性カーボンで被覆した被覆導電性粒子が好ましく用いられる。この場合、接着剤組成物の硬化物を加熱又は加圧により変形させることが容易であるため、回路電極同士を電気的に接続する際に、回路電極と接着剤組成物との接触面積を増加させ、電極間の導電性を向上させることができる。
【0030】
導電性粒子は、上記の金属粒子、導電性カーボン粒子、又は被覆導電性粒子の表面を、樹脂等の絶縁材料で被覆した絶縁被覆導電性粒子であってもよい。導電性粒子が絶縁被覆導電性粒子であると、導電性粒子の含有量が多い場合であっても、導電性粒子の表面が樹脂で被覆されているため、導電性粒子同士の接触による短絡の発生を抑制でき、また、隣接する回路電極回路間の絶縁性も向上させることができる。導電性粒子は、上述した各種導電性粒子の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0031】
導電性粒子の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、好ましくは1~18μmである。導電性粒子の含有量は、接着剤組成物全量基準で、好ましくは5~50質量%、より好ましくは20~50質量%である。導電性粒子の含有量が5質量%以上であると、良好な導電性が得られ、また、50質量%以下であると、接続構造体における短絡を抑制できる。
【0032】
接着剤組成物は、接着性の更なる向上を目的として、カップリング剤を更に含有していてもよい。カップリング剤としては、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、イミダゾール基等の有機官能基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシチタネート誘導体、ポリジアルキルチタネート誘導体などが挙げられる。カップリング剤の含有量は、接着剤組成物全量基準で、例えば0.1~20質量%であってよい。
【0033】
接着剤組成物は、充填材、軟化剤、促進剤、劣化防止剤着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤などのその他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤の含有量は、接着剤組成物全量基準で、例えば0.1~10質量%であってよい。
【0034】
接着剤組成物が室温(25℃)で液体である場合には、接着剤組成物は、ペースト状接着剤として使用できる。接着剤組成物が室温で固体である場合には、接着剤組成物は、加熱によるペースト化する、又は溶剤に溶解させてペースト化することにより、ペースト状接着剤として使用できる。かかる溶剤としては、接着剤組成物と反応せず、かつ接着剤組成物が充分な溶解性を示す溶剤であれば特に制限されないが、室温、大気圧下での沸点が50~150℃である溶剤が好ましく用いられる。溶剤の沸点が50℃以上であると、溶剤が室温で揮発することが抑制され、ペース状接着剤を作製する際の作業性が向上する。溶剤の沸点が150℃以下であると、接着後に溶剤が揮発しやすくなり、残存する溶剤による接着強度の低下を抑制できる。
【0035】
接着剤組成物は、取扱性に優れ、スループットを向上させる観点から、フィルム状に成形されたフィルム状接着剤として好適に用いられる。フィルム状接着剤は、例えば、接着剤組成物と溶剤との混合溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、剥離紙等の剥離性基材上に塗布し、又は不織布等の基材に上記混合溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤を除去することによって得られる。
【0036】
接着剤組成物が導電性粒子を含有する場合、当該接着剤組成物をフィルム状にしてなるフィルム状接着剤は、(異方)導電性接着剤フィルムとして好適に用いられる。図1は、フィルム状接着剤の一実施形態((異方)導電性接着剤フィルム)を示す模式断面図である。図1に示すように、フィルム状接着剤((異方)導電性接着剤フィルム)1は、接着剤成分2中に導電性粒子3が分散されてなる。接着剤成分2は、上述の(A)成分、(B)成分及び(C)成分(場合により、熱可塑性樹脂等の他の成分)を含有している。フィルム状接着剤1の厚さは、例えば10~50μmであってよい。
【0037】
以上説明した接着剤組成物は、低温速硬化が可能であり、かつ硬化物の物性に優れるため、回路部材同士を接続する回路接続材料として好適に用いられる。この回路接続材料によれば、回路部材における接続抵抗等の電気的特性に優れた接続構造体が得られる。
【0038】
以下、回路接続材料としてフィルム状接着剤1を用いた場合の接続構造体の製造方法について説明する。図2は、接続構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【0039】
まず、図2(a)に示すように、第一の回路基板4と、第一の回路基板4の主面上に形成された第一の回路電極5とを備える第一の回路部材6、及び、第二の回路基板7と、第二の回路基板7の主面上に形成された第二の回路電極8とを備える第二の回路部材9を用意する。
【0040】
第一の回路部材6及び第二の回路部材9は、互いに同じであっても異なっていてもよい。第一及び第二の回路部材6,9は、電極が形成されているガラス基板又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等であってよい。第一及び第二の回路基板4,7は、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等の複合物などで形成されていてよい。第一及び第二の回路電極5,8は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、インジウム錫酸化物(ITO)等で形成されていてよい。
【0041】
次に、第一の回路部材6と第二の回路部材9とを、第一の回路電極5と第二の回路電極8とが対向するように配置し、第一の回路部材6と第二の回路部材9との間にフィルム状接着剤1を配置する。
【0042】
そして、矢印A及びB方向に全体を加圧しながら、フィルム状接着剤1に対して光を照射する。加圧時の圧力は、例えば10~100MPaであってよい。光照射には、150~750nmの照射光を用いることが好ましく、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を使用して光照射することができる。光照射量は、特に限定されず、例えば365nm積算光量で0.01~10J/cmである。加圧及び光照射の時間は、例えば1~180秒間であってよい。加圧及び光照射時に、必要に応じて加熱を行ってもよい。加熱温度は、例えば100~170℃であってよい。
【0043】
これにより、図2(b)に示すように、フィルム状接着剤1が硬化し、フィルム状接着剤1の硬化物10を介して第一の回路部材6と第二の回路部材9とが互いに接続され、接続構造体11が得られる。このとき、導電性粒子3が第一の回路電極5と第二の回路電極との間に介在することによって、第一の回路電極5と第二の回路電極8とが互いに電気的に接続される。すなわち、接着剤成分2の硬化物12及び導電性粒子3を含有する硬化物10が回路接続部材10として機能する。
【0044】
以上のようにして得られる本実施形態に係る接続構造体11は、第一の回路電極5を有する第一の回路部材6と、第二の回路電極8を有する第二の回路部材9と、第一の回路部材6及び第二の回路部材9の間に配置され、第一の回路電極5及び第二の回路電極8を互いに電気的に接続する回路接続部材10とを備えている。
【0045】
上記実施形態では、第一の回路部材6と第二の回路部材9との間にフィルム状接着剤1を配置したが、フィルム状接着剤1に代えて、ペースト状の接着剤組成物を、第一の回路部材6又は第二の回路部材9上に塗布してもよい。
【実施例
【0046】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<フィルム状接着剤の作製>
以下に示す成分を表1に示す質量比で混合し、接着剤組成物を調製した。
(分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物)
A1:トリアリルイソシアヌレート(商品名:TAIC、日本合成化学株式会社製)
A2:ウレタンアクリレートオリゴマー(UA5500T、新中村化学工業株式会社製)
なお、ウレタンアクリレートオリゴマーは、70質量%トルエン溶液として用いた。
(メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物)
B1:ポリシルセスキオキサン溶液(商品名:コンポセラン SQ107、荒川化学工業株式会社製)
(光重合開始剤)
C1:オキシムエステル化合物(商品名:Irgacure(登録商標)Oxe02、BASF社製)
なお、オキシムエステル化合物は、10質量%メチルエチルケトン(MEK)溶液として用いた。
(熱可塑性樹脂)
D1:フェノキシ樹脂:(商品名:YP50、新日鉄住金化学株式会社)
【0048】
得られた接着剤組成物を、厚み40μmのPET樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、5分間の熱風乾燥によって、PET樹脂フィルム上に形成された厚みが20μmのフィルム状接着剤を得た。
【0049】
<フィルム状接着剤の硬化物の作製>
得られた各フィルム状接着剤を100℃に加熱した状態で、波長365nmの光を60秒間照射(250mW/cm)し、フィルム状接着剤の硬化物を得た。
【0050】
<硬化物の物性評価>
上述のとおり作製した硬化物を1.0cm×5.0cmに切断し、切断した試験片について、粘弾性測定装置(商品名:RSA-3、TAインスツルメンツ社製)を用いた引張り試験により、ガラス転移温度Tg(℃)、及び200℃における貯蔵弾性率E’(Pa)を評価した。測定条件は、測定温度:-10~250℃、昇温速度:5℃/min、周波数:1.0Hz、ひずみ:0.1%とした。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
硬化物の物性評価において、メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物を用いた実施例1~4では、メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物を用いなかった比較例1に比べ、Tg及びE’の向上が確認された。
【0053】
また、メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物を用いた場合、Tg及びE’が特に向上するのは実施例1~3(これらの中でも実施例2,3)であり、実施例1~3よりシルセスキオキサン化合物の含有量が多い実施例4では、実施例1~3に比べて、Tgの低下が確認された。
【0054】
<導電性粒子の作製>
ポリスチレン粒子の表面上に、層の厚さが0.2μmとなるようにニッケルからなる層を設け、このニッケル層上に、層の厚さが0.02μmとなるように金からなる層を更に設けた。このようにして、平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を得た。
【0055】
<異方導電性接着剤フィルムの作製>
上述した成分に加えて、以下に示す成分を表2に示す質量比で混合し、接着剤組成物を得た。
(導電性粒子)
E1:上述のとおり作製した導電性粒子
(シランカップリング剤)
F1:8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(商品名:KBM5803、信越化学工業株式会社製)
F2:3(又は2)-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンの加水分解縮合物(商品名:KBE9103、信越化学工業株式会社製)
(リン酸エステル)
G1:2-ヒドロキシエチルメタクリレートの6-ヘキサノリド付加物と無水リン酸との反応生成物(商品名:PM-21、日本化薬株式会社)
(無機微粒子)
H1:シリカ粒子(商品名:R202、日本エアロジル株式会社製)
なお、シリカ粒子は、18質量%トルエン溶液として用いた。
【0056】
得られた接着剤組成物を、厚み40μmのPET樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、5分間の熱風乾燥によって、PET樹脂フィルム上に形成された厚みが20μmの異方導電性接着剤フィルムを得た。
【0057】
<接続構造体の作製>
ガラス基板(外形38mm×28mm、厚さ0.3mm、表面にITO(酸化インジウム錫)配線パターンを有するもの)に、2.5×25mmの大きさでPET樹脂フィルム付き異方導電性接着剤フィルムを貼り付けた。次いで、70℃、0.5MPaで5秒間加熱及び加圧をして、ガラス基板に異方導電性接着剤フィルムを仮接続し、異方導電性接着剤フィルムからPET樹脂フィルムを剥離した。その後、ICチップ(外形0.9mm×20.3mm、厚さ0.3mm、バンプの大きさ12μm×70μm、バンプのピッチ7μm)を、ガラス基板と異方導電性接着剤フィルムとの積層体に、温度100℃、60MPa(バンプ面積換算)、2秒間で圧着後、温度及び圧力をそのままの状態にして、LED-UV装置を用いて波長365nmの光を2秒間照射(積算光量500mJ/cm)し、接続構造体を得た。
【0058】
<接続構造体の評価>
得られた接続構造体における隣接回路間の抵抗値を、マルチメーターで測定した。抵抗値は、隣接回路間の抵抗14点の平均値として求めた。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
メルカプト基を有するシルセスキオキサン化合物を用いた実施例5においては、比較例2より優れた接続抵抗が得られ、本発明に係る接着剤組成物は100℃で硬化可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1…フィルム状接着剤(異方導電性接着剤フィルム)、3…導電性粒子、5…第一の回路電極、6…第一の回路部材、8…第二の回路電極、9…第二の回路部材、10…回路接続部材、11…接続構造体。
図1
図2