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特許7130922プリント配線板、プリプレグ、積層体及び半導体パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】プリント配線板、プリプレグ、積層体及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20220830BHJP
   C08F 22/40 20060101ALI20220830BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220830BHJP
   C08J 5/08 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H05K3/38 A
C08F22/40
C08J5/24 CER
C08J5/08
H01L23/12 N
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017121727
(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公開番号】P2019009195
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】小林 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】島岡 伸治
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊希
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129520(JP,A)
【文献】特開2014-024926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
C08F 22/40
C08J 5/24
C08J 5/08
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグの硬化物と、前記プリプレグの硬化物上に設けられた配線回路部と、を備えるプリント配線板であって、前記熱硬化性樹脂組成物が、
アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、を含有するが、酸性置換基を有するアミン化合物を含有しないもの、又は
前記(A)成分由来の構造単位と、前記(B)成分由来の構造単位と、を含有するが、酸性置換基を有するアミン化合物由来の構造単位を含有しない変性イミド樹脂(X)、を含有するものであ
前記(A)成分が下記一般式(A-1)で表される化合物である、プリント配線板。
【化1】

(式中、複数のR a1 は、各々独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示す。前記置換フェニル基の置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。R a2 及びR a3 は、各々独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた連結基を示す。nは1~11の整数を示す。)
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱可塑性エラストマー(C)を含有する、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(D)を含有する、請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、無機充填材(E)を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【請求項6】
熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、を含有するが、酸性置換基を有するアミン化合物を含有しないもの、又は
前記(A)成分由来の構造単位と、前記(B)成分由来の構造単位と、を含有するが、酸性置換基を有するアミン化合物由来の構造単位を含有しない変性イミド樹脂(X)を含有するものであ
前記(A)成分が下記一般式(A-1)で表される化合物である、2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
【化2】

(式中、複数のR a1 は、各々独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示す。前記置換フェニル基の置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。R a2 及びR a3 は、各々独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた連結基を示す。nは1~11の整数を示す。)
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱可塑性エラストマー(C)を含有する、請求項6に記載の、2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(D)を含有する、請求項6又は7に記載の2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、無機充填材(E)を含有する、請求項6~8のいずれか1項に記載の2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のプリプレグが、2枚以上重ねた状態で熱硬化されてなる積層体。
【請求項11】
請求項10の積層体を含有してなる、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、プリプレグ、積層体及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化及び高性能化に伴い、その中に搭載されるプリント配線板の、高多層化、薄型化及び高密度化が進んでいる。さらに、携帯電話、モバイルコンピュータ等の携帯情報端末機器に搭載されるプリント配線板には、マイクロプロセッシングユニット(Micro Processing Unit:MPU)をプリント配線板上に直接搭載するプラスチックパッケージ及び各種モジュール用のプリント配線板をはじめとして、大容量の情報を高速に処理することが求められている。そのためプリント配線板には、信号処理の高速化、低伝送損失化及び更なるダウンサイジングが必要となってきており、これまで以上の微細配線化が要求されている。
【0003】
プリント配線板用の積層板としては、絶縁性、耐熱性、コスト等のバランスに優れるエポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物をガラスクロスに含浸したプリプレグを硬化及び成形したものが一般的に用いられてきたが、近年の高密度実装、高多層化構成に伴う耐熱性向上への要請に対応するため、エポキシ樹脂に代えて、ポリビスマレイミド樹脂が広く使用されつつある。
さらに、近年、半導体用パッケージ基板では、小型化及び薄型化に伴い、部品実装時及びパッケージ組み立て時において、チップと基板との熱膨張係数の差に起因した反りが大きな課題となっている。そのため、プリプレグ等の配線板材料に、シリカ等の無機充填材を高充填化する方法によって低熱膨張化を図っている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2740990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の高密度実装及び高多層化構成の要望に対応するため、積層板及びプリント配線板のパターン加工においては、プリプレグの硬化物からなる絶縁層と、該絶縁層上に形成される配線回路部との接着強度(以下、「金属箔接着性」ともいう)をより向上させることが求められている。また、金属箔接着性に加えて、ハンドリング性、加工性、耐熱性等をより優れたものとする観点から、2枚以上のプリプレグを積層及び硬化してなる積層板における、プリプレグの硬化物同士の接着強度(以下、「絶縁層間接着性」ともいう)も、更なる向上が求められている。
前記ポリビスマレイミド樹脂は、耐熱性に優れているものの、金属箔接着性に劣る問題がある。また、ポリビスマレイミド樹脂を含有するプリプレグを複数枚積層及び硬化してなる積層板は、絶縁層間接着性が劣ることに起因して、はんだ耐熱性が低下する場合があった。さらには、無機充填材の高充填化によって、金属箔接着性及び絶縁層間接着性は、より低下する傾向にあるため、ポリビスマレイミド樹脂を使用する場合において、金属箔接着性と耐熱性とをより高度に両立させることを求められている。
【0006】
本発明は、こうした現状に鑑み、金属箔接着性及び耐熱性に優れるプリント配線板、金属箔接着性及び耐熱性に優れる2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ、これを用いた積層体、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題に基づき鋭意研究を重ねた結果、以下の本願発明により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[12]に関する。
[1]熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグの硬化物と、前記プリプレグの硬化物上に設けられた配線回路部と、を備えるプリント配線板であって、前記熱硬化性樹脂組成物が、
アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、を含有するもの、又は
前記(A)成分由来の構造単位と、前記(B)成分由来の構造単位と、を含有する変性イミド樹脂(X)、を含有するものである、プリント配線板。
[2]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱可塑性エラストマー(C)を含有する、上記[1]に記載のプリント配線板。
[3]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(D)を含有する、上記[1]又は[2]に記載のプリント配線板。
[4]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、無機充填材(E)を含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載のプリント配線板。
[5]上記[1]~[4]のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
[6]熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、を含有するもの、又は
前記(A)成分由来の構造単位と、前記(B)成分由来の構造単位と、を含有するシロキサン化合物(X)を含有するものである、2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
[7]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱可塑性エラストマー(C)を含有する、上記[6]に記載の、2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
[8]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(D)を含有する、上記[6]又は[7]に記載の2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
[9]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、無機充填材(E)を含有する、上記[6]~[8]のいずれかに記載の2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ。
[10]上記[6]~[9]のいずれかに記載のプリプレグが、2枚以上重ねた状態で熱硬化されてなる積層体。
[11]上記[10]の積層体を含有してなる、プリント配線板。
[12]上記[11]のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、金属箔接着性及び耐熱性に優れるプリント配線板、金属箔接着性及び耐熱性に優れる2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ、これを用いた積層体、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグの硬化物と、前記プリプレグの硬化物上に設けられた配線回路部と、を備えるプリント配線板であって、
前記熱硬化性樹脂組成物が、アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)(以下、単に「アミノ変性シロキサン化合物(A)」又は「(A)成分」ともいう)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)(以下、単に「マレイミド化合物(B)」又は「(B)成分」ともいう)と、を含有するもの、又は
前記(A)成分由来の構造単位と、前記(B)成分由来の構造単位と、を含有する変性イミド樹脂(X)(以下、単に「変性イミド樹脂(X)」又は「(X)成分」ともいう)、を含有するものである、プリント配線板である。
なお、以下、上記のプリント配線板を「プリント配線板(1)」と表記し、後述する「2枚以上重ねて用いるためのプリプレグ」を用いて得られるプリント配線板を「プリント配線板(2)」と表記する。同様にして、プリント配線板(1)に用いられるプリプレグ、積層体、及びプリント配線板(1)から得られる半導体パッケージを、各々、「プリプレグ(1)」、「積層体(1)」、「半導体パッケージ(1)」と称し、プリント配線板(2)に用いられるプリプレグ、積層体、及びプリント配線板(2)から得られる半導体パッケージを、各々、「プリプレグ(2)」、「積層体(2)」、「半導体パッケージ(2)」と称する。
【0010】
<プリプレグ(1)>
プリプレグ(1)は熱硬化性樹脂組成物を含有するものである。本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、上記の通り、(A)成分及び(B)成分を含有するもの、又は変性イミド樹脂(X)を含有するものであればよく、変性イミド樹脂(X)と、(A)成分及び(B)成分からなる群から選ばれる1種以上と、を含有するものであってもよい。
以下、プリプレグ(1)が含有する熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
【0011】
(アミノ変性シロキサン化合物(A))
(A)成分は、アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物である。
アミノ変性シロキサン化合物(A)のアミン当量は、銅箔接着性及び耐熱性の観点から、1,000g/eq以下であり、500~1,000g/eqがより好ましく、600~950g/eqがさらに好ましく、700~930g/eqが特に好ましい。
(A)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
(A)成分が有するアミノ基は、1級アミノ基又は2級アミノ基が好ましく、1級アミノ基が好ましい。
(A)成分は、1分子中に2個~5個のアミノ基を有するシロキサン化合物が好ましく、1分子中に2個のアミノ基を有するシロキサン化合物がより好ましく、下記一般式(A-1)で表される化合物がさらに好ましい。
【0013】
【化1】

(式中、複数のRa1は、各々独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示すい。Ra2及びRa3は、各々独立に有機基を示す。nは1~11の整数を示す。)
【0014】
一般式(A-1)中、Ra1で表されるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。Ra1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。
a1で表される置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、これらの中でも、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、前記と同様のものが好ましく挙げられる。
a1で表される基の中でも、他の樹脂との溶解性の観点から、フェニル基又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
a2又はRa3で表される有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた連結基が挙げられる。これらの中でも、アルキレン基、アリーレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。アルキレン基は、炭素数6~10のアリール基等の置換基を有していてもよい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。アリーレン基は、炭素数1~5のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0015】
アミノ変性シロキサン化合物(A)としては、市販品を用いてもよい。市販品の(A)成分としては、「XF42-C5379」(アミン当量745g/eq)、「XF42-C6607」(アミン当量919g/eq)(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名)等が挙げられる。
【0016】
(マレイミド化合物(B))
マレイミド化合物(B)は、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物である。
マレイミド化合物(B)としては、高耐熱性、低比誘電率、高金属箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、1分子中に2個~5個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、1分子中に2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物がより好ましい。
マレイミド化合物(B)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
マレイミド化合物(B)としては、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に脂肪族炭化水素基を有するマレイミド化合物(以下、「脂肪族炭化水素基含有マレイミド」ともいう)、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に芳香族炭化水素基を含有するマレイミド化合物(以下、「芳香族炭化水素基含有マレイミド」ともいう)等が挙げられる。これらの中でも、高耐熱性、低比誘電率、銅箔接着性、高ガラス転移温度、低熱膨張性、成形性及びめっき付き回り性の観点から、芳香族炭化水素基含有マレイミドが好ましく、下記一般式(B-1)~(B-4)のいずれかで表される化合物がより好ましく、下記一般式(B-4)で表される化合物がさらに好ましい。
【0018】
【化2】

(式中、Rb1~Rb3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。Xb1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S-S-又はスルホニル基を示す。p、q及びrは、各々独立に、0~4の整数である。sは、0~10の整数である。)
【0019】
b1~Rb3が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
【0020】
b1が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。
b1が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。
【0021】
マレイミド化合物(B)としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高く、より高耐熱性化できるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、溶媒への溶解性の観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンがより好ましい。
【0022】
(変性イミド樹脂(X))
変性イミド樹脂(X)は、(A)成分由来の構造単位と、(B)成分由来の構造単位と、を含有するものである。
(A)成分由来の構造単位は、(A)成分が有する両末端のアミノ基のうち、1個又は2個のアミノ基が、(B)成分のマレイミド基と付加反応してなる構造単位であることが好ましく、(B)成分由来の構造単位は、(B)成分が有する2個のN-置換マレイミド基のうち、1個又は2個以上のマレイミド基が、(A)成分が有するアミノ基と付加反応してなる構造単位であることが好ましい。
【0023】
変性イミド樹脂(X)は、(A)成分と(B)成分とを反応(以下、該反応を「プレ反応」とも称する)させることにより得られる。
前記プレ反応は、有機溶媒中で加熱保温しながら(A)成分と(B)成分とを反応させることが好ましい。プレ反応の反応温度は、70~150℃が好ましく、100~130℃がより好ましい。プレ反応の反応時間は、0.1~10時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0024】
前記プレ反応における、(B)成分のマレイミド基数〔(B)成分の使用量(g)/(B)成分のマレイミド基の官能基当量(g/eq)〕は、(A)成分のアミノ基数〔(A)成分の使用量(g)/(A)成分のアミノ基の官能基当量(g/eq)〕の、2~15倍が好ましい。2倍以上であると、ゲル化が抑制されると共に耐熱性が良好となり、15倍以下であると、有機溶媒への溶解性及び耐熱性が良好となる。
前記プレ反応におけるマレイミド化合物(B)の使用量は、上記のような関係を維持しつつ、(A)成分100質量部に対して、10~3,000質量部が好ましく、30~1,500質量部がより好ましく、40~300質量部がさらに好ましい。(B)成分の使用量が10質量部以上であると、良好な耐熱性が得られ、3,000質量部以下であると、低熱膨張性を良好に保つことができる傾向にある。
【0025】
前記プレ反応で使用される有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチルエステル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、溶解性の観点からは、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ-ブチロラクトンが好ましく、低毒性であること及び揮発性が高く残溶媒として残り難いという観点からは、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが好ましい。
有機溶媒の使用量は、(A)成分及び(B)成分の総和100質量部に対して、25~2,000質量部が好ましく、40~1,000質量部がより好ましく、40~500質量部がさらに好ましい。有機溶媒の使用量が25質量部以上であると、良好な溶解性が得られる傾向にあり、2,000質量部以下であると、反応速度が優れる傾向にある。
【0026】
前記プレ反応には任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミドなどが挙げられる。
【0027】
((A)成分、(B)成分及び(X)成分の含有量)
熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を含有し、(X)成分を含有しない場合(以下、「態様1」ともいう)、(X)成分を含有し、(A)成分及び(B)成分を含有しない場合(以下、「態様2」ともいう)、(X)成分と、(A)成分及び(B)成分からなる群から選ばれる1種以上と、を含有する場合(以下、「態様3」)がある。以下、態様1~3における各成分の好適含有量について説明する。
【0028】
≪態様1≫
前記態様1の場合、熱硬化性樹脂組成物中における、アミノ変性シロキサン化合物(A)の含有量は、低硬化収縮性、銅箔接着性、耐熱性及び耐薬品性の観点から、樹脂成分100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましく、8~18質量部がさらに好ましい。
また、熱硬化性樹脂組成物中における、マレイミド化合物(B)の含有量は、低硬化収縮性、銅箔接着性、耐熱性及び耐薬品性の点から、樹脂成分100質量部に対して、30~99質量部が好ましく、40~90質量部がより好ましく、50~85質量部がさらに好ましい。
≪態様2≫
前記態様2の場合、低硬化収縮性、銅箔接着性、耐熱性及び耐薬品性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中における、変性イミド樹脂(X)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の総和100質量部に対して、50~100質量部が好ましく、60~95質量部がより好ましく、70~90質量部がさらに好ましい。変性イミド樹脂(X)の含有量が50質量部以上であると、銅箔接着性、耐熱性及び低熱膨張性に優れる傾向にある。
≪態様3≫
前記態様3の場合、低硬化収縮性、銅箔接着性、耐熱性及び耐薬品性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中における、(A)成分由来の構造単位の含有量と、(A)成分の含有量との合計含有量が、前記態様1における(A)成分の含有量となることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物中における、(B)成分由来の構造単位の含有量と、(B)成分の含有量との合計含有量が、前記態様1における(B)成分の含有量となることが好ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂組成物は、単独で良好な熱硬化反応性を有するが、必要に応じて、硬化剤、ラジカル重合開始剤等を併用して、耐熱性、接着性、機械強度等を向上させることができる。
硬化剤としては、ジシアンジアミド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族アミン類;ヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類;メラミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン化合物類などが挙げられる。これらの中でも、反応性及び耐熱性の点から、芳香族アミン類が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アシル過酸化物、ハイドロパーオキサイド、ケトン過酸化物、t-ブチル基を有する有機過酸化物、クミル基を有する過酸化物等の有機過酸化物が挙げられる。
【0030】
(熱可塑性エラストマー(C))
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、熱可塑性エラストマー(C)(以下、「(C)成分」ともいう)を含有することが好ましい。
(C)成分としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、これらの誘導体等が挙げられる。これらは、通常、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分とを有し、一般に前者が耐熱性及び強度に寄与し、後者が柔軟性及び強靭性に寄与している。これらの中でも、耐熱性及び絶縁信頼性の観点から、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマーが好ましく、誘電特性の観点から、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーがより好ましい。
(C)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
熱可塑性エラストマー(C)としては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基が好ましく、銅箔接着性の観点から、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基がより好ましく、耐熱性及び絶縁信頼性の観点から、エポキシ基、水酸基、アミノ基がさらに好ましい。これらの反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、樹脂への相溶性が向上し、熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができ、結果として、基板の反りを顕著に低減することが可能となる。
【0032】
熱硬化性樹脂組成物が熱可塑性エラストマー(C)を含有する場合、その含有量は、樹脂の相溶性に優れ、硬化物の低硬化収縮性、低熱膨張性、優れた誘電特性を効果的に発現できるという観点から、樹脂成分の総和100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましく、3~10質量部がさらに好ましい。
【0033】
(熱硬化性樹脂(D))
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(D)を含有していてもよい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物、並びにこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性及び難燃性の観点から、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0034】
シアネート樹脂としては、ノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;並びにこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性及び難燃性の観点から、ノボラック型シアネート樹脂が好ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(D)を含有する場合、必要に応じて、熱硬化性樹脂(D)の硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等の多官能フェノール化合物;ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等のアミン化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(D)を含有する場合、その含有量は、耐熱性及び耐薬品性の観点から、樹脂成分の総和100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましく、7~20質量部がさらに好ましい。
【0037】
(無機充填材(E))
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填材(E)を含有することが好ましい。
無機充填材(E)としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、ガラス粉、中空ガラスビーズ等が好ましく挙げられる。ガラス粉としては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、誘電特性、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、シリカが好ましい。
シリカとしては、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカ等が挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等に分類される。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性の観点から、溶融球状シリカが好ましい。
【0038】
無機充填材(E)の平均粒子径は、0.1~10μmが好ましく、0.2~5μmがより好ましく、0.3~3μmがさらに好ましい。無機充填材(E)の平均粒子径が0.1μm以上であると、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、10μm以下であると、粗大粒子の混入確率を低減し、粗大粒子起因の不良の発生を抑制することができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。同様の観点から、溶融球状シリカの平均粒子径は、0.1~2μmが好ましく、0.2~1μmがより好ましい。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物に無機充填材(E)を配合するに際しては、無機充填材(E)をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤などで前処理又はインテグラルブレンド処理することも好ましい。
【0040】
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(E)を含有する場合、その含有量は、樹脂成分の総和100質量部に対して、20~300質量部が好ましく、50~280質量部がより好ましく、100~260質量部がさらに好ましく、150~250質量部がよりさらに好ましく、180~240質量部が特に好ましい。無機充填材(E)の含有量が上記範囲内であると、熱硬化性樹脂組成物の成形性を良好に保ちつつ、低熱膨張性を向上させることができる。
【0041】
(硬化促進剤(F))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤(F)を含有することが好ましい。硬化促進剤(F)としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;イミダゾール類及びその誘導体;ホスフィン類、ホスホニウム塩等の有機リン系化合物;第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化促進効果及び保存安定性の観点から、ナフテン酸亜鉛、イミダゾール誘導体、ホスホニウム塩が好ましい。
【0042】
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤(F)を含有する場合、その含有量は、樹脂成分の総和100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.05~1.5質量部がより好ましく、0.1~1質量部がさらに好ましい。硬化促進剤(F)の含有量が上記範囲内であると、硬化促進効果及び保存安定性が優れる傾向にある。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物は、その目的に反しない範囲内で、任意に公知の前記各成分以外の熱可塑性樹脂、有機充填材、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等を使用できる。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
有機充填材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる樹脂フィラー、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂フィラーなどが挙げられる。
【0045】
難燃剤としては、臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤が挙げられる。
蛍光増白剤としては、スチルベン誘導体の蛍光増白剤等が挙げられる。
接着性向上剤としては、尿素シラン等の尿素化合物、前記カップリング剤などが挙げられる。
【0046】
プリプレグ(1)は、前記熱硬化性樹脂組成物を含有するものであれば特に限定されないが、前記熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸してなるものが好ましい。
【0047】
(基材)
熱硬化性樹脂組成物を含浸する基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。基材の材質としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊;それらの混合物などが挙げられる。他の用途の基材としては、例えば、繊維強化基材であれば、炭素繊維を用いることが可能である。これらの基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状が挙げられる。材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせてもよい。基材の厚さは、例えば、0.03~0.5mmであり、シランカップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したもの等が、耐熱性、耐湿性及び加工性の観点から、好適である。
【0048】
プリプレグ(1)中における固形分換算の熱硬化性樹脂組成物の含有量は、20~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましく、50~60質量%が特に好ましい。
【0049】
プリプレグ(1)は、例えば、熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。
熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグ(1)の製造を容易にする観点から、各成分が有機溶媒中に溶解又は分散されたワニス(以下、「樹脂ワニス」ともいう)の状態とすることが好ましい。
樹脂ワニスに用いられる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中で、溶解性の観点から、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
樹脂ワニス中の固形分濃度は、40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。固形分濃度が前記範囲内であると、塗工性を良好に保ち、適切な樹脂組成物付着量のプリプレグを得ることができる。
【0050】
熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させる方法としては、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、含浸性の観点から、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。
含浸後の乾燥条件としては、例えば、乾燥温度が100~200℃、乾燥時間が1~30分間であり、加熱によって熱硬化性樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させることで、プリプレグ(1)を得ることができる。
【0051】
<プリプレグ(1)の硬化物>
プリプレグ(1)の硬化物としては、プリプレグ(1)を硬化したものであれば特に限定されない。
本発明のプリント配線板(1)は、プリプレグ(1)の硬化物を少なくとも1層備えていればよく、必要に応じて、2層以上備える積層体(1)としてもよい。積層体(1)が備える複数のプリプレグ(1)の硬化物の組成、形態等は、各々同一であっても異なっていてもよい。また、2層以上のプリプレグ(1)の硬化物は、プリプレグ(1)同士を重ねて硬化してなるものであってもよく、プリプレグ(1)同士の間に、例えば、配線回路部を備えた多層積層板であってもよい。
さらに、プリント配線板(1)は、プリプレグ(1)の硬化物と、プリプレグ(1)以外のプリプレグの硬化物を備えるものであってもよい。
【0052】
プリプレグ(1)の硬化条件は、プリプレグ(1)が含有する熱硬化性樹脂組成物の組成等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、硬化温度は、好ましくは100~280℃、より好ましくは150~260℃であり、硬化時間は、好ましくは10~120分間、より好ましくは30~80分間である。
プリプレグ(1)の硬化物を得る方法としては、例えば、プリプレグ(1)を2枚以上、好ましくは2~20枚重ね、その片面又は両面に金属箔を配置した構成で積層成形する方法が挙げられる。その際の成形条件は、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間の条件とすることができる。該方法によると、2枚以上のプリプレグ(1)を重ねて硬化してなる硬化物の片面又は両面に金属箔を有する金属張積層板が得られる。
金属箔としては、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。これらの中でも、銅、ニッケル、42アロイが好ましく、入手容易性及びコストの観点からは、銅がさらに好ましい。
【0053】
[プリプレグ(2)]
本発明のプリプレグ(2)は、熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグであって、前記熱硬化性樹脂組成物が、アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、を含有するもの、又は前記(A)成分由来の構造単位と、前記(B)成分由来の構造単位と、を含有する変性イミド樹脂(X)を含有するものである、2枚以上重ねて用いるためのプリプレグである。
【0054】
プリント配線板(1)は、必要に応じて、ドリル切削方法、YAGレーザー、COレーザー等を用いるレーザー加工方法などによってビアホールを形成したものであってもよく、その際に、必要に応じて表面粗化処理及びデスミア処理を行なったものであってもよい。
【0055】
[半導体パッケージ(1)]
本発明の半導体パッケージ(1)は、本発明のプリント配線板(1)に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージである。半導体パッケージ(1)は、例えば、プリント配線板(1)の所定の位置に、公知の方法により半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造することができる。
【0056】
[プリプレグ(2)]
本発明のプリプレグ(2)は、熱硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグであって、前記熱硬化性樹脂組成物が、アミン当量が1,000g/eq以下であり、両末端にアミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、を含有するもの、又は前記(A)成分由来の構造単位と、前記(B)成分由来の構造単位と、を含有するシロキサン化合物(X)を含有するものである、2枚以上重ねて用いるためのプリプレグである。
【0057】
プリプレグ(2)は、前記特定の熱硬化性樹脂組成物を含有することにより、特に、絶縁層間接着性に優れるため、該プリプレグを2枚以上重ねて用いる態様において好適である。プリプレグ(2)の好適な態様は、前記本発明のプリント配線板(1)に用いられるプリプレグ(1)の好適な態様と同じである。
【0058】
[積層体(2)]
本発明の積層体(2)は、本発明のプリプレグ(2)が、2枚以上接した状態で熱硬化されてなる積層体である。
本発明の積層体(2)は、プリプレグ(2)を、例えば、2~20枚重ね、その片面又は両面に銅、アルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。
積層板を製造する際の成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間の範囲で成形することができる。
【0059】
[プリント配線板(2)及び半導体パッケージ(2)]
本発明のプリント配線板(2)は、本発明の積層体(2)を含有してなるものである。
本発明のプリント配線板(2)は、本発明のプリント配線板(1)と同様の方法により、製造することができる。
本発明の半導体パッケージ(2)は、本発明のプリント配線板(2)に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージである。
本発明の半導体パッケージ(2)は、本発明の半導体パッケージ(1)と同様の方法により、製造することができる。
【実施例
【0060】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
各例で得られた銅張積層板の評価方法を以下に示す。
【0061】
(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、外層銅箔を3mm幅の銅箔を形成し、この一端を外層銅層と絶縁層との界面で剥がしてつかみ具でつかみ、引張り試験機を用いて垂直方向に引張り速度約50mm/分、室温中で引き剥がしたときの銅箔ピール強度を測定した。
【0062】
(2)銅付き積層板のはんだ耐熱性
銅張積層板から25mm角の評価基板を作製し、温度288℃のはんだ浴に、120分間評価基板をフロートし、膨れの有無を目視にて観察することにより銅付き積層板のはんだ耐熱性を評価した。
【0063】
(3)銅無し積層板のはんだ耐熱性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を除去した後、25mm角の評価基板を作製し、温度288℃のはんだ浴に、120分間評価基板をフロートし、膨れの有無を目視にて観察することにより銅無し積層板のはんだ耐熱性を評価した。
【0064】
製造例1:変性イミド樹脂(X-1)の製造
温度計、撹拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、XF42-C6607(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名、アミン当量919g/eq)を46.7g、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンを262.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテルを440.7g投入し、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、変性イミド樹脂(X-1)含有溶液(樹脂含有量:60質量%)を得た。
【0065】
製造例2:変性イミド樹脂(X-2)の製造
温度計、撹拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、XF42-C5379(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名、アミン当量745g/eq)46.8g、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンを262.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルを440.6g投入し、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、変性イミド樹脂(X-2)含有溶液(樹脂含有量:60質量%)を得た。
【0066】
実施例1~4及び比較例1~2
表1に示した各成分を、表1に示した配合割合(質量部)で混合して、固形分換算の熱硬化性樹脂組成物の含有量が、65質量%の樹脂ワニスを得た。次に、上記樹脂ワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸し、160℃で10分加熱乾燥して、固形分換算の熱硬化性樹脂組成物の含有量が48質量%のプリプレグを得た。このプリプレグを4枚重ね、12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力3.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板の測定及び評価結果を表1に示す。なお、表1に示す各成分の詳細は以下の通りである。
【0067】
[マレイミド化合物(B)]
・BMI-4000:2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン〔大和化成工業株式会社製、商品名〕
【0068】
[シロキサン化合物(i)]
・X-22-161B:両末端アミノ変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名、アミン当量:1,500g/mol〕
【0069】
[アミン化合物(ii)]
・KAYAHARD A-A:3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0070】
[熱可塑性エラストマー(C)]
・CT-310:エポキシ変性スチレン-ブタジエン共重合樹脂〔株式会社ダイセル製、商品名〕
【0071】
[熱硬化性樹脂(D)]
・PT-30:ノボラック型シアネート樹脂〔ロンザジャパン株式会社製、商品名〕
・NC-7000L:α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0072】
[無機充填材(E)]
・SC2050-KNK:溶融球状シリカ〔株式会社アドマテックス製、平均粒子径0.5μm、商品名〕
・KEMGARD1100:モリブデン酸亜鉛〔シャーウィン・ウィリアムズ社製、商品名〕
【0073】
[硬化促進剤(F)]
・G-8009L:イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬株式会社製、商品名〕
【0074】
【表1】
【0075】
表1から明らかなように、本発明の実施例1~4で得られた銅張積層板は、銅箔ピール強度、銅付き積層板はんだ耐熱性及び銅無し積層板はんだ耐熱性の全てに優れており、金属箔接着性、絶縁層間接着性及び耐熱性を高度に両立していることが分かる。
一方、比較例1及び2で得られた銅張積層板は、銅箔ピール強度、銅付き積層板はんだ耐熱性及び銅無し積層板はんだ耐熱性の全てに劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のプリプレグ、積層体、プリント配線板及び半導体パッケージは、金属箔接着性、絶縁層間接着性及び耐熱性を高度に両立していることから、高集積化された半導体パッケージ及び高速通信に対応した電子機器用プリント配線板等、及びこれに用いられるプリプレグ、積層体として有用である。